(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6096870
(24)【登録日】2017年2月24日
(45)【発行日】2017年3月15日
(54)【発明の名称】乗客コンベア
(51)【国際特許分類】
B66B 23/04 20060101AFI20170306BHJP
B66B 23/06 20060101ALI20170306BHJP
F16H 7/06 20060101ALI20170306BHJP
F16H 55/54 20060101ALI20170306BHJP
【FI】
B66B23/04 B
B66B23/06
F16H7/06
F16H55/54
【請求項の数】9
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-231517(P2015-231517)
(22)【出願日】2015年11月27日
【審査請求日】2015年11月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076314
【弁理士】
【氏名又は名称】蔦田 正人
(74)【代理人】
【識別番号】100112612
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲士
(74)【代理人】
【識別番号】100112623
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 克幸
(74)【代理人】
【識別番号】100124707
【弁理士】
【氏名又は名称】夫 世進
(74)【代理人】
【識別番号】100163393
【弁理士】
【氏名又は名称】有近 康臣
(74)【代理人】
【識別番号】100189393
【弁理士】
【氏名又は名称】前澤 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100059225
【弁理士】
【氏名又は名称】蔦田 璋子
(72)【発明者】
【氏名】菊池 孝幸
【審査官】
今野 聖一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−150138(JP,A)
【文献】
実開昭57−019257(JP,U)
【文献】
特開昭52−143366(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 23/04 − 23/06
F16H 55/32 − 55/56
F16H 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トラスと、
無端状に連結され、前記トラスに沿って走行する複数の踏段と、
前記踏段の左右両側に立設された左右一対の欄干と、
前記欄干の上部から下部を回って循環走行する無端状の手摺りベルトと、
前記欄干の下部に配された前記手摺りベルトのベルト駆動装置と、
を有し、
前記ベルト駆動装置は、複数のベルト駆動輪と、前記各ベルト駆動輪の下方にそれぞれ配された複数の押圧ローラとを有し、前記ベルト駆動輪と前記押圧ローラとの間に前記手摺りベルトがそれぞれ挿通され、
前記ベルト駆動輪は、
前記踏段の走行速度と同期して回転する回転軸と、
前記回転軸の外周で、かつ、軸方向に沿って複数重ねて設けられ、径外ほど薄くなるように傾斜した傾斜面を有するリング状の傾斜板と、
隣接する前記傾斜板の前記傾斜面の間にそれぞれ挟持され、径外ほど厚くなるように傾斜した傾斜面を有するリング状の弾性リングと、
隣接する前記傾斜板の間の距離を調整する調整部材と、
を有し、
隣接する前記弾性リングの間に位置する前記傾斜板は、前記傾斜面を両面に有する、
乗客コンベア。
【請求項2】
前記弾性リングの直径が、前記傾斜板の直径より大きく、
前記弾性リンクの外周に前記手摺りベルトが常に接触している、
請求項1に記載の乗客コンベア。
【請求項3】
前記複数の前記ベルト駆動輪の前記弾性リングの下外周部が、直線状に並んでいる、
請求項2に記載の乗客コンベア。
【請求項4】
トラスと、
無端状に連結され、前記トラスに沿って走行する複数の踏段と、
前記踏段の左右両側に立設された左右一対の欄干と、
前記欄干の上部から下部を回って循環走行する無端状の手摺りベルトと、
前記欄干の下部に配された前記手摺りベルトのベルト駆動装置と、
を有し、
前記ベルト駆動装置は、複数のベルト駆動輪と、前記各ベルト駆動輪の下方にそれぞれ配された複数の押圧ローラとを有し、前記ベルト駆動輪と前記押圧ローラとの間に前記手摺りベルトがそれぞれ挿通され、
前記ベルト駆動輪は、
前記踏段の走行速度と同期して回転する回転軸と、
前記回転軸の外周で、かつ、軸方向に沿って複数重ねて設けられ、径外ほど薄くなるように傾斜した傾斜面を有するリング状の傾斜板と、
隣接する前記傾斜板の前記傾斜面の間にそれぞれ挟持され、径外ほど厚くなるように傾斜した傾斜面を有するリング状の弾性リングと、
隣接する前記傾斜板の間の距離を調整する調整部材と、
を有し、
前記調整部材は、
前記回転軸の外周に設けられた輪芯と、
前記輪芯の外周の一端から突出したフランジ部と、
前記輪芯の外周の他端に嵌め込まれたリング状の押し込み板と、
前記押し込み板から複数の前記傾斜板を経て前記フランジ部に向かって軸方向に貫通しているネジと、
を有する記載の乗客コンベア。
【請求項5】
前記ネジは、リング状の押し込み板と複数の前記傾斜板と前記フランジ部において等角度毎に複数設けられている、
請求項4に記載の乗客コンベア。
【請求項6】
複数の前記ベルト駆動輪と同軸にチェーンスプロケットがそれぞれ設けられ、
前記チェーンスプロケットに無端状のベルト駆動チェーンが掛け渡され、
前記ベルト駆動チェーンを駆動させて、複数の前記ベルト駆動輪を一体に回転させる、
請求項1又は4に記載の乗客コンベア。
【請求項7】
前記踏段を駆動させる主駆動スプロケットと、
前記主駆動スプロケットと同期して回転する手摺りベルトスプロケットと、
を有し、
前記手摺りベルトスプロケットに前記ベルト駆動チェーンが掛け渡されている、
請求項6に記載の乗客コンベア。
【請求項8】
前記弾性リングが、ゴム製である、
請求項1に記載の乗客コンベア。
【請求項9】
前記乗客コンベアは、エスカレータ、又は、動く歩道である、
請求項1又は4に記載の乗客コンベア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、乗客コンベアに関するものである。
【背景技術】
【0002】
エスカレータや動く歩道などの乗客コンベアの手摺りベルトは、手摺り駆動スプロケットによって駆動している。手摺り駆動スプロケットの回転数及び直径は、手摺りベルトの走行速度と踏段の走行速度とが同期するように設定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭59−120777号公報
【特許文献2】特許第4737819号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、乗客コンベアを設置する現地において、保守員は、手摺り駆動スプロケットの回転数や直径を変化させることができず、手摺りベルトの走行速度を調整できないという問題点があった。
【0005】
そこで本発明の実施形態は、上記問題点に鑑み、手摺り駆動スプロケットの直径を変化させて手摺りベルトの走行速度を調整できる乗客コンベアを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態は、トラスと、無端状に連結され、前記トラスに沿って走行する複数の踏段と、前記踏段の左右両側に立設された左右一対の欄干と、前記欄干の上部から下部を回って循環走行する無端状の手摺りベルトと、前記欄干の下部に配された前記手摺りベルトのベルト駆動装置と、を有し、前記ベルト駆動装置は、複数のベルト駆動輪と、前記各ベルト駆動輪の下方にそれぞれ配された複数の押圧ローラとを有し、前記ベルト駆動輪と前記押圧ローラとの間に前記手摺りベルトがそれぞれ挿通され、前記ベルト駆動輪は、前記踏段の走行速度と同期して回転する回転軸と、前記回転軸の外周で、かつ、軸方向に沿って複数重ねて設けられ、径外ほど薄くなるように傾斜した傾斜面を有するリング状の傾斜板と、隣接する前記傾斜板の前記傾斜面の間にそれぞれ挟持され、径外ほど厚くなるように傾斜した傾斜面を有するリング状の弾性リングと、隣接する前記傾斜板の間の距離を調整する調整部材と、を有
し、隣接する前記弾性リングの間に位置する前記傾斜板は、前記傾斜面を両面に有する、乗客コンベアである。また、本発明の実施形態は、トラスと、無端状に連結され、前記トラスに沿って走行する複数の踏段と、前記踏段の左右両側に立設された左右一対の欄干と、前記欄干の上部から下部を回って循環走行する無端状の手摺りベルトと、前記欄干の下部に配された前記手摺りベルトのベルト駆動装置と、を有し、前記ベルト駆動装置は、複数のベルト駆動輪と、前記各ベルト駆動輪の下方にそれぞれ配された複数の押圧ローラとを有し、前記ベルト駆動輪と前記押圧ローラとの間に前記手摺りベルトがそれぞれ挿通され、前記ベルト駆動輪は、前記踏段の走行速度と同期して回転する回転軸と、前記回転軸の外周で、かつ、軸方向に沿って複数重ねて設けられ、径外ほど薄くなるように傾斜した傾斜面を有するリング状の傾斜板と、隣接する前記傾斜板の前記傾斜面の間にそれぞれ挟持され、径外ほど厚くなるように傾斜した傾斜面を有するリング状の弾性リングと、隣接する前記傾斜板の間の距離を調整する調整部材と、を有し、前記調整部材は、前記回転軸の外周に設けられた輪芯と、前記輪芯の外周の一端から突出したフランジ部と、前記輪芯の外周の他端に嵌め込まれたリング状の押し込み板と、前記押し込み板から複数の前記傾斜板を経て前記フランジ部に向かって軸方向に貫通しているネジと、を有する記載の乗客コンベアである。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の一実施形態を示すエスカレータの側面から見た説明図。
【
図2】支持板に設けられたベルト駆動輪と押圧ローラの正面図。
【
図5】直径が小さいときの弾性リングと傾斜板の拡大縦断面図。
【
図6】直径が大きいときの弾性リングと傾斜板の拡大縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の実施形態の乗客コンベアについて
図1〜
図6に基づいて説明する。本実施形態では乗客コンベアとしてエスカレータ10で説明する。
【0009】
(1)エスカレータ10
エスカレータ10の構造について、
図1に基づいて説明する。
図1はエスカレータ10を側面から見た説明図である。
【0010】
エスカレータ10の枠組みであるトラス12が、建屋1の上階と下階に跨がって支持アングル2,3を用いて支持されている。
【0011】
トラス12の上端部にある上階側の機械室14内部には、踏段30を走行させる駆動装置18、左右一対の主駆動スプロケット24,24、左右一対の手摺りベルトスプロケット27,27が設けられている。この駆動装置18は、モータ20と、減速機と、この減速機の出力軸に取り付けられた出力スプロケットと、この出力スプロケットにより駆動する駆動チェーン22と、モータ20の回転を停止させ、かつ、停止状態を保持するディスクブレーキとを有している。この駆動チェーン22により左右一対の主駆動スプロケット24,24が回転する。左右一対の主駆動スプロケット24,24と左右一対の手摺りベルトスプロケット27,27とは、不図示の連結ベルトにより連結されて同期して回転する。また、上階側の機械室14内部には、モータ20やディスクブレーキなどを制御する制御部50が設けられている。
【0012】
トラス12の下端部にある下階側の機械室16内には、左右一対の従動スプロケット26,26が設けられている。上階側の左右一対の主駆動スプロケット24,24と下階側の左右一対の従動スプロケット26,26との間には、左右一対の無端の踏段チェーン28,28が掛け渡されている。左右一対の踏段チェーン28,28には、複数の踏段30が等間隔で取り付けられている。モータ20が回転すると踏段30の前輪301は、トラス12に固定された不図示の案内レールを走行し、後輪302はトラス12に固定された案内レール25を走行する。
【0013】
トラス12の左右両側には、左右一対の欄干36,36が立設されている。この欄干36の上部に手摺りレール39が設けられ、この手摺りレール39に沿って無端状の手摺りベルト38が移動する。欄干36の上階側の正面下部には上階側の正面スカートガード40が設けられ、下階側の正面下部には下階側の正面スカートガード42が設けられ、正面スカートガード40,42から手摺りベルト38の出入口であるインレット部46,48がそれぞれ突出している。
【0014】
欄干36の側面下部には、スカートガード44が設けられ、左右一対のスカートガード44,44の間を踏段30が走行する。上下階のスカートガード44の内側面には、操作盤52,56、スピーカ54,58がそれぞれ設けられている。
【0015】
左右一対の手摺りベルト38は、上階側のインレット部46から正面スカートガード40内にそれぞれ侵入し、各手摺りベルト38は、前記手摺りベルトスプロケット27によって駆動するベルト駆動装置70に基づいて駆動し、その後にスカートガード44内を移動し、下階側のインレット部46から正面スカートガード42外に表れる。そして、手摺りベルト38は、手摺りベルトスプロケット27が主駆動スプロケット24と共に回転することにより踏段30と同期して移動する。ベルト駆動装置70については、後から詳しく説明する。
【0016】
上階側の左右一対のスカートガード44,44の乗降口であって、機械室14の天井面には、上階側の乗降板32が水平に設けられている。下階側の左右一対のスカートガード44,44の乗降口であって、機械室16の天井面には、下階側の乗降板34が水平に設けられている。上階側の乗降板32の先端には櫛歯状のコム60が設けられ、このコム60に踏段30が侵入する。また、下階側の乗降板34の先端にも櫛歯状のコム62が設けられている。
【0017】
(2)ベルト駆動装置70
次に、ベルト駆動装置70の構造について
図2〜
図6に基づいて説明する。なお、ベルト駆動装置70は、左右一対の手摺りベルト38にそれぞれ設けられている。手摺りベルト38は、ゴム又はウレタン製であって断面C字型であり、中央の平らな部分と、その平らな部分の左右両側からそれぞれ湾曲するように延びた端部とからなる。
【0018】
図2に示すように、ベルト駆動装置70は、4個のベルト駆動輪72と、これらベルト駆動輪72と対になった押圧ローラ74を有する。4個のベルト駆動輪72は、支持板78に1列に並べて回転自在に設けられ、ベルト駆動輪72と同軸にチェーンスプロケット76がそれぞれ設けられている。2番目のチェーンスプロケット76と3番目のチェーンスプロケット76の間には、補助チェーンスプロケット80が支持板78に回転自在に設けられている。
図3に示すように、手摺りベルトスプロケット27と支持板78との間には案内チェーンスプロケット82が回転自在に設けられている。
【0019】
図2と
図3に示すように、無端状の手摺りベルト駆動チェーン84が、手摺りベルトスプロケット27、案内チェーンスプロケット82、1番目と2番目のチェーンスプロケット76の上部、補助チェーンスプロケット80の下部、3番目と4番目のチェーンスプロケット76に架け渡されている。踏段30を走行させる駆動スプロケット24が回転すると、不図示の連結ベルトにより手摺りベルトスプロケット27が同期して回転し、これにより手摺りベルト駆動チェーン84が駆動して、4個のチェーンスプロケット76と補助チェーンスプロケット80が回転する。4個のチェーンスプロケット76が回転すると、4個のベルト駆動輪72も回転する。これにより、駆動スプロケット24の回転速度と同期して、4個のベルト駆動輪72が回転する。
【0020】
支持板78の下部において、
図2に示すように2個の押圧板86が設けられている。2個の押圧板86には、2個の押圧ローラ74,74がそれぞれ取り付けられている。これら4個の押圧ローラ74,74の取り付け位置は、4個のベルト駆動輪72の位置にそれぞれ対応している。押圧板86の両側には、コイル状のバネによって押圧板86を上方に押圧する押圧部88,88が支持板78にそれぞれ設けられている。一対の押圧部88,88が押圧板86を上方に押圧することにより、押圧ローラ74が、ベルト駆動輪72をそれぞれ押圧する。
【0021】
手摺りベルト38は、欄干36内部においては、上下逆に走行しているので、手摺りベルト38は、4個のベルト駆動輪72と4個の押圧ローラ74の間の走行路を上下逆に走行する。この場合に、4個の押圧ローラ74によって手摺りベルト38の表面が押圧され、手摺りベルト38の裏面がベルト駆動輪72に接触し、このベルト駆動輪72が回転駆動することにより、手摺りベルト38が、踏段30の走行速度と同期して走行する。
【0022】
(3)ベルト駆動輪72の構造
次に、4個のベルト駆動輪72の構造について
図4と
図5に基づいて説明する。ベルト駆動輪72は、回転軸90、輪芯92、押し込み板96、6枚の傾斜板98、5枚の弾性リング100を有している。
【0023】
ベルト駆動輪72の回転軸90が、支持板78に回転自在に取り付けられている。
【0024】
チェーンスプロケット76が、回転軸90と同軸に支持板78の後方に取り付けられている。
【0025】
円筒状の輪芯92が、回転軸90と同軸に支持板78の前方に固定されている。輪芯92の外周部の後端部には、フランジ部94が径外方向に突出している。
【0026】
リング状の押し込み板96が、輪芯92の外周部の前端部に移動自在に配されている。
【0027】
6枚のリング状の傾斜板98が、フランジ部94と押し込み板96との間に配されている。リング状の傾斜板98は、径外ほど薄くなるように傾斜した傾斜面が形成されている。
【0028】
5枚のリング状の弾性リング100が、隣接する傾斜板の間にそれぞれ挟持されている。弾性リング100は、ゴム製であって、傾斜板98よりも直径が大きく、傾斜板98の外周部から常に突出している。弾性リング100は、径外ほど厚くなるように傾斜した傾斜面が形成されている。弾性リング100の傾斜面は、傾斜板98の傾斜面と対応するように形成されている。
【0029】
隣接する弾性リング100,100の間に位置する傾斜板98には、傾斜面が両面に形成されている。また、一方のみしか弾性リング100と接触しない傾斜板98、すなわち、輪芯92の両側に位置する傾斜板98には、弾性リング100と接触する面にのみしか傾斜面が形成されておらず、他の面は径方向と平行に形成されている。
【0030】
押し込み板96から6枚の傾斜板98を経てフランジ部94まで、ネジ102が貫通している。ネジ102は、
図2に示すように90°毎に4本設けられている。なお、弾性リング100は、このネジ102は貫通していない。
図5と
図6に示すように、ネジ102を締めると、押し込み板96がフランジ部94の方向に近づき距離が縮まる。そして、隣接する傾斜板98の間隔が狭まり、弾性リング100は、傾斜面に沿って外方に押し出される。これによって、ベルト駆動輪72の直径が増大する。
【0031】
図4が、ネジ102を緩めて押し込み板96とフランジ部94との距離がL1のときに、傾斜板98から突出している弾性リング100の寸法がaとなる。
【0032】
図5が、ネジ102を締めて押し込み板96とフランジ部94との距離がL2(但し、L1>L2である)のときに、傾斜板98から突出している弾性リング100の寸法がb(但し、a<bである)となる。
【0033】
保守員が、手摺りベルト38の走行速度を早くする場合には、4本のネジ102を締めて、弾性リング100を径外方向に押し出し、ベルト駆動輪72の直径を大きくする。他の3個のベルト駆動輪72も同様に調整して直径を大きくする。これによって、ベルト駆動輪72の外周部における回転速度が早くなり、手摺りベルト38の走行速度が早くなる。
【0034】
保守員が、手摺りベルト38の走行速度を遅くしたい場合には、4本のネジ102を緩めて、弾性リング100を径内方向に戻し、ベルト駆動輪72の直径を小さくする。他の3個のベルト駆動輪72も同様に調整して直径を小さくする。これによって、ベルト駆動輪72の外周部における回転速度が遅くなり、手摺りベルト38の走行速度が遅くなる。
【0035】
(4)効果
本実施形態によれば、4個のベルト駆動輪72のそれぞれのネジ102を締め付けたり緩めたりすることにより、傾斜板98から突出する弾性リング100の寸法を変更でき、これによって手摺りベルトの走行速度を簡単に変更できる。
【0036】
(5)変更例
上記実施形態では、6枚の傾斜板98の間に5枚の弾性リング100を挟持したが、その枚数はこれに限らず、例えば、7枚の傾斜板98の間に6枚の弾性リング100を挟持させてもよい。
【0037】
また、上記実施形態では4個のベルト駆動輪72を1列に並べたが、4個以上のベルト駆動輪72を並べてもよい。
【0038】
上記実施形態では、エスカレータ10に適用して説明したが、これに代えて動く歩道に適用してもよい。
【0039】
上記では本発明の一実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の主旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0040】
10・・・エスカレータ、24・・・駆動スプロケット、27・・・手摺りベルトスプロケット、70・・・ベルト駆動装置、72・・・ベルト駆動輪、74・・・押圧ローラ、76・・・チェーンスプロケット、78・・・支持板、90・・・回転軸、92・・・輪芯、94・・・フランジ部、96・・・押し込み板、98・・・傾斜板、100・・・弾性リング、102・・・ネジ
【要約】
【課題】手摺り駆動スプロケットの直径を変化させて手摺りベルトの走行速度を調整できる乗客コンベアを提供する。
【解決手段】手摺りベルト38を駆動させるベルト駆動装置70は、複数のベルト駆動輪72と、押圧ローラ74とを有し、ベルト駆動輪72は、踏段30の走行速度と同期して回転する回転軸90と、回転軸90の外周で、且つ、軸方向に沿って複数重ねて設けられ、径外ほど薄くなるように傾斜した傾斜面を有するリング状の傾斜板98と、隣接する傾斜板98の傾斜面の間にそれぞれ挟持され、径外ほど厚くなるように傾斜した傾斜面を有するリング状の弾性リング100と、隣接する傾斜板98,98の間の距離を調整するネジ102とを有する。
【選択図】
図4