(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6096904
(24)【登録日】2017年2月24日
(45)【発行日】2017年3月15日
(54)【発明の名称】デジタルアナログ変換器
(51)【国際特許分類】
H03M 1/66 20060101AFI20170306BHJP
【FI】
H03M1/66 B
【請求項の数】24
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2015-529145(P2015-529145)
(86)(22)【出願日】2013年7月26日
(65)【公表番号】特表2015-527021(P2015-527021A)
(43)【公表日】2015年9月10日
(86)【国際出願番号】IB2013056156
(87)【国際公開番号】WO2014033566
(87)【国際公開日】20140306
【審査請求日】2015年4月14日
(31)【優先権主張番号】13/597,371
(32)【優先日】2012年8月29日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】598036300
【氏名又は名称】テレフオンアクチーボラゲット エルエム エリクソン(パブル)
(74)【代理人】
【識別番号】100095957
【弁理士】
【氏名又は名称】亀谷 美明
(74)【代理人】
【識別番号】100096389
【弁理士】
【氏名又は名称】金本 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100101557
【弁理士】
【氏名又は名称】萩原 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100128587
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 一騎
(72)【発明者】
【氏名】スマイリー、ラッセル クリフォード
(72)【発明者】
【氏名】ウィヴィル、マーク
【審査官】
及川 尚人
(56)【参考文献】
【文献】
特開平03−242024(JP,A)
【文献】
特開平06−164249(JP,A)
【文献】
特開平05−259769(JP,A)
【文献】
特開2000−013226(JP,A)
【文献】
特開平01−117426(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03M 1/00−1/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
デジタル入力信号をアナログ出力信号へと変換するように構成されるデジタル−アナログ変換器(20,28,38)と、
専用クロック信号と前記アナログ出力信号とを乗算して、修正アナログ出力信号を提供するように構成される回路(22,24,30,40)と、
を含み、
前記専用クロック信号は、前記デジタル−アナログ変換器(20,28,38)のサンプリング周期に等しい周期を有する周期的な信号であり、前記デジタル−アナログ変換器(20,28,38)のクロックに同期され、
前記専用クロック信号の各周期は、整流される正弦関数に従って整形される、
システム(18,26,34)。
【請求項2】
前記専用クロック信号は、前記デジタル−アナログ変換器(20,28,38)による前記デジタル入力信号のデジタル−アナログ変換に由来する前記デジタル入力信号の1つ以上のナイキストイメージが所望のやり方で制御されるように、前記デジタル−アナログ変換器(20,28,38)のアナログインパルス応答を再整形する、請求項1のシステム(18,26,34)。
【請求項3】
前記専用クロック信号は、前記デジタル−アナログ変換器(20,28,38)による前記デジタル入力信号のデジタル−アナログ変換に由来する前記デジタル入力信号の1つ以上の望ましくないナイキストイメージが減衰されるように、前記デジタル−アナログ変換器(20,28,38)のアナログインパルス応答を再整形する、請求項1のシステム(18,26,34)。
【請求項4】
前記専用クロック信号の各周期は、バンドパス周波数応答を有する、請求項1のシステム(18,26,34)。
【請求項5】
前記専用クロック信号の各周期は、複数回繰り返されるウィンドウ関数に従って整形される、請求項1のシステム(18,26,34)。
【請求項6】
前記回路は、前記アナログ出力信号と前記専用クロック信号とを乗算して、前記修正アナログ出力信号を提供するように構成される乗算器(22,30,40)、を含む、請求項1のシステム(18,26,34)。
【請求項7】
前記回路は、前記専用クロック信号に応じて前記アナログ出力信号を増幅することにより前記アナログ出力信号と前記専用クロック信号とを乗算して、前記修正アナログ出力信号を提供するように構成される可変利得増幅器(24)、を含む、請求項1のシステム(18)。
【請求項8】
前記回路は、前記アナログ出力信号に応じて前記専用クロック信号を増幅することにより前記アナログ出力信号と前記専用クロック信号とを乗算して、前記修正アナログ出力信号を提供するように構成される可変利得増幅器(24)、を含む、請求項1のシステム(18)。
【請求項9】
前記デジタル−アナログ変換器(20,28,38)は、ゼロ次ホールドデジタル−アナログ変換器である、請求項1のシステム(18,26,34)。
【請求項10】
前記システムは、複数のデジタル入力信号を複数のアナログ出力信号へと変換するように構成される、前記デジタル−アナログ変換器(28,38)を含む複数のデジタル−アナログ変換器(28,38)、をさらに含み、
前記回路(30,40)は、前記専用クロック信号と前記複数のアナログ出力信号の各々とを乗算して、複数の修正アナログ出力信号を提供する、ようにさらに構成され、
前記システムは、前記複数の修正アナログ出力信号を合成して、合成アナログ出力信号を提供するように構成される合成器回路(32,44)、をさらに含む、
請求項1のシステム(26,34)。
【請求項11】
前記複数のデジタル入力信号は、主要デジタル入力信号からのN個のストリームの異なるデジタルサンプルであり、前記複数のデジタル−アナログ変換器(28,38)の各々のサンプリング周期は、Nを前記主要デジタル入力信号のサンプリングレートで除算した商に等しい、請求項10のシステム(26,34)。
【請求項12】
前記複数のアナログ出力信号の各アナログ出力信号について、当該アナログ出力信号へと前記回路により乗算される前記専用クロック信号は、周期的であって、前記複数のデジタル−アナログ変換器(28,38)の各々のサンプリング周期に等しい周期を有し、前記複数のデジタル−アナログ変換器(28,38)のうちの対応する1つのクロックに同期される、請求項11のシステム(26,34)。
【請求項13】
前記回路は、複数の乗算器(30,40)を含み、前記複数の乗算器(30,40)のうちの各乗算器(30,40)は、前記専用クロック信号と、前記複数のアナログ出力信号のうちの異なる1つとを乗算して、前記複数の修正アナログ出力信号のうちの対応する1つを提供する、ように構成される、請求項11のシステム(26,34)。
【請求項14】
前記複数の乗算器(30,40)のうちの各乗算器(30,40)について、前記専用クロック信号は、周期的であって、前記複数のデジタル−アナログ変換器(28,38)の各々の前記サンプリング周期に等しい周期を有し、前記複数のデジタル−アナログ変換器(28,38)のうちの対応する1つのクロックに同期される、請求項13のシステム(26,34)。
【請求項15】
前記回路は、複数の可変利得増幅器を含み、前記複数の可変利得増幅器のうちの各可変利得増幅器は、前記複数のアナログ出力信号のうちの異なる1つに応じて前記専用クロック信号を増幅して、前記複数の修正アナログ出力信号のうちの対応する1つを提供するように構成される、請求項11のシステム(26,34)。
【請求項16】
前記複数の可変利得増幅器のうちの各可変利得増幅器について、前記専用クロック信号は、周期的であって、前記複数のデジタル−アナログ変換器(28,38)の各々の前記サンプリング周期に等しい周期を有し、前記複数のデジタル−アナログ変換器(28,38)のうちの対応する1つのクロックに同期される、請求項15のシステム(26,34)。
【請求項17】
前記回路は、複数の可変利得増幅器を含み、前記複数の可変利得増幅器のうちの各可変利得増幅器は、前記専用クロック信号に応じて前記複数のアナログ出力信号のうちの異なる1つを増幅して、前記複数の修正アナログ出力信号のうちの対応する1つを提供するように構成される、請求項11のシステム(26,34)。
【請求項18】
前記複数の可変利得増幅器のうちの各可変利得増幅器について、前記専用クロック信号は、周期的であって、前記複数のデジタル−アナログ変換器(28,38)の各々の前記サンプリング周期に等しい周期を有し、前記複数のデジタル−アナログ変換器(28,38)のうちの対応する1つのクロックに同期される、請求項17のシステム(26,34)。
【請求項19】
デジタル−アナログ変換器(20,28,38)を介して、デジタル入力信号をアナログ出力信号へと変換することと、
専用クロック信号と前記アナログ出力信号とを乗算して、修正アナログ出力信号を提供することと、
を含み、
前記専用クロック信号は、前記デジタル−アナログ変換器(20,28,38)のサンプリング周期に等しい周期を有する周期的な信号であり、前記デジタル−アナログ変換器(20,28,38)のクロックに同期され、
前記専用クロック信号の各周期は、整流される正弦関数に従って整形される、
方法。
【請求項20】
N個の多相ブランチを含む多相構造を含むシステム(34)であって、
前記多相構造の前記N個の多相ブランチの各j番目の多相ブランチは、j=1,…,Nとして:
デジタル入力信号の(j−1)×TS,INにより遅延されたバージョンを、Nに等しい間引きファクタDにより間引いて、fS,IN/Dというサンプリングレートを有する前記j番目の多相ブランチのための間引き後デジタル入力信号を提供する、ように構成される間引き回路(36)と、TS,INは1/fS,INに等しく、fS,INは前記デジタル入力信号のサンプリングレートであることと;
前記j番目の多相ブランチのための前記間引き後デジタル入力信号を、前記j番目の多相ブランチのためのアナログ出力信号へと変換するように構成され、TS,IN×Dというサンプリング周期を有するデジタル−アナログ変換器(38)と;
専用クロック信号と前記j番目の多相ブランチのための前記アナログ出力信号とを乗算して、前記j番目の多相ブランチのための修正アナログ出力信号を提供する、ように構成される回路(40)と、前記専用クロック信号は、前記デジタル−アナログ変換器(38)の前記サンプリング周期に等しい周期を有する周期的信号であって前記デジタル−アナログ変換器(38)のクロックに同期されることと、前記専用クロック信号の各周期は、整流される正弦関数に従って整形されることと;
前記N個の多相ブランチからの前記修正アナログ出力信号を合成して、最終アナログ出力信号を提供する、ように構成される合成器回路(44)と、
を含む、システム(34)。
【請求項21】
前記N個の多相ブランチのための前記専用クロック信号は、対応する前記多相ブランチjについての前記遅延(j−1)×TS,INに対応する時間オフセットを有する同じ専用クロック信号である、請求項20のシステム(34)。
【請求項22】
前記N個の多相ブランチの各j番目の多相ブランチについて、前記回路は、前記j番目の多相ブランチのための前記アナログ出力信号に応じて前記専用クロック信号を増幅することにより前記アナログ出力信号と前記専用クロック信号とを乗算して、前記j番目の多相ブランチのための前記修正アナログ出力信号を提供する、ように構成される可変利得増幅器、を含む、請求項20のシステム(34)。
【請求項23】
前記N個の多相ブランチの各j番目の多相ブランチについて、前記回路は、前記専用クロック信号に応じて前記j番目の多相ブランチのための前記アナログ出力信号を増幅することにより前記アナログ出力信号と前記専用クロック信号とを乗算して、前記j番目の多相ブランチのための前記修正アナログ出力信号を提供する、ように構成される可変利得増幅器、を含む、請求項20のシステム(34)。
【請求項24】
前記N個の多相ブランチの各j番目の多相ブランチについて、前記専用クロック信号の各周期は、バンドパス周波数応答を有する、請求項20のシステム(34)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願]
本出願は、2012年8月29日に提出された米国特許出願第13/597,371号の利益を主張し、その開示は全体として参照によりここに取り入れられる。
【0002】
[開示の分野]
本発明は、デジタル−アナログ変換器(DAC)に関し、より具体的には、デジタル−アナログ変換に由来するナイキストイメージを所望のやり方で制御するための、DACのアナログインパルス応答を再整形(reshape)することに関する。
【背景技術】
【0003】
デジタル−アナログ変換器(DAC)は、今日の電子デバイスの多くにおける主要なコンポーネントである。例えば、近代の通信デバイスは、合理的な電力及びサイズの制約を遵守しながら、複雑な処理を実行するデジタルプロセッサを含む。情報を無線で送信するために、デジタルプロセッサにより出力されるデジタル信号は、アナログ信号へと変換される。この変換処理がDACにより実行される。
【0004】
デジタル信号の周波数領域の表現は、
図1に示したように、デジタル信号のサンプリングレート(f
S)の整数倍の所に位置する、所望のアナログ信号の無限個のレプリカからなる。これらレプリカを、ここではナイキストイメージあるいは単にイメージという。ナイキストイメージは、デジタル−アナログ変換後に望ましくないことから、アナログ領域においてナイキストイメージを除去するために、具体的にはアナログローパスフィルタリング、補間、高次サンプル−ホールド(high-order sample-and-holds)、及びオフセットクロックを有する複数のDACからの出力の合成といった、いくつものアプローチが開発されてきている。
【0005】
この点に関し、
図2は、DAC10の後にローパスフィルタ12が続く様子を示している。ローパスフィルタ12は、望ましくない全てのナイキストイメージを除去しつつDCを中心とする所望信号を通過させるように、f
S/2(
図1参照)から始まる遮断帯域を有する。ローパスフィルタ12の通過帯域は、所望信号の帯域幅と同じ程度に大きくなければならない。
図1においてそうであるように、所望信号の帯域幅がf
S/2に近い場合、通過帯域から遮断帯域までの遷移においてローパスフィルタ12には小さい領域しか存在しない。短い遷移領域(transition region)は、ローパスフィルタ12が高度に選択的であることを要し、これはローパスフィルタ12が物理的に大きくなければならず設計が複雑であることを意味する。
【0006】
周波数領域におけるナイキストイメージの間の間隔を増加させるために、デジタル領域における補間を使用することができ、それにより、ローパスフィルタ12についての選択性要件が緩和される。補間は、ナイキストレートよりも高速に信号をサンプリングすることと等価であり、ナイキストレートとは、信号のベースバンド帯域幅の2倍である。
図3に示したように、一例として、
図1のデジタル信号のサンプリングレートを4倍に増やすために補間が使用されてよく、増加したサンプリングレートfs´が提供される。サンプリングレートを4倍に増やすことにより、ナイキストイメージの間の間隔もまた4倍に増加し、転じて、ローパスフィルタ12の選択性要件(
図2)が緩和される。
図4に示したように、補間は、この例では4である所望のアップサンプリングファクタでの、アップサンプラ14を用いたデジタル信号のアップサンプリングと、その後のFIR(Finite Impulse Response)フィルタ16でのアップサンプリング済みデジタル信号のデジタルフィルタリングと、からなる。そして、結果としてのデジタル信号がDAC10によりデジタル−アナログ変換される。しかしながら、ローパスフィルタ12は、依然として望ましくないナイキストイメージを除去することを要する。
【0007】
ナイキストイメージは、DAC10がアナログ信号を生成するやり方によっても影響される。具体的には、DAC10がアナログ信号を生成するやり方は、DAC10のアナログ出力における実効的な周波数応答を整形(shape)する。アナログ出力は、典型的には、ゼロ次ホールド(ZOH)、一次ホールド(FOH)、二次ホールド(SOH)などとして特徴付けられる。ZOHでは、アナログ信号は、
図5Aに示したように、対応するデジタル信号を1つのクロックピリオドにわたって一定に維持される。FOHでは、アナログ信号は、
図5Bに示したように、2つの連続するデジタル値の間の直線を成す。SOHでは、アナログ信号は、
図5Cに示したように、3つの連続するデジタル値の間の二次曲線を成す。ZOH、FOH及びSOHというタイプのDACの対応する周波数応答は、それぞれsinc(πf/fs)、sinc2(πf/f
S)及びsinc3(πf/f
S)であり、ここでsinc関数はsinc(x)=sin(x)/xとして定義される。これら周波数応答は、望ましくない全てのナイキストイメージの中央で空値(null)を呈示する(即ち、fsの整数倍にて空値を有する)。各ホールド次数(hold order)は、デジタル領域における微分器と、アナログ領域における積分器とを要する。一例として、SOHは、2つのデジタル微分器及び2つのアナログ積分器とを要する。高次ホールドの周波数応答は、望ましくない信号の通過帯域上で、フラットではない。そのため、何らかの形式の補償を要する。加えて、高次ホールドは、周波数応答がf
S/2の近傍で(特に、補償の後に)十分な遮断帯域の減衰を提供しないことから、それほど顕著にはローパスフィルタ要件を緩和しない。しかしながら、高次ホールドを補間と共に用いて、ローパスフィルタの要件を緩和することはできる。補間は、ナイキストイメージの信号エネルギーのより多くを、高次ホールドの周波数応答の空値の付近へと制約する。
【0008】
多相クロック(multiphase clocking)は、並列的なDACの出力の加算を包含し、その際、DACの各々のクロックが互いを基準としてオフセットされる。異なるクロック位相を伴う複数のDACを用いて、周波数応答における追加的な空値を提供することができる。全てのDACへと、同じ入力信号が供給される。追加的な空値を用いて、ZOH sinc応答によって達成可能な程度以上に、イメージを減衰させることができる。
【0009】
望ましくないナイキストイメージを除去するための上述したアプローチの全てに伴う1つの問題は、そのアプローチの全てがローパスフィルタ12を要することである。モバイル通信デバイスの送信機の将来の世代について、単一の集積チップへとDAC機能及び周波数アップコンバージョン機能を統合することが望ましい。上のアプローチの全てにおけるローパスフィルタは、その規模の大きさとパッシブデバイスに関する精度の課題とに起因して、集積チップへと良好に統合されない。DAC機能及び周波数アップコンバージョン機能を統合するために、DAC出力での全ての望ましくないナイキストイメージを、小さい集積型のローパスフィルタで有意に減衰させなければならず(サイズの小ささは、劣悪な選択性に対応する)、さもなくば全くフィルタ無しとなる。望ましくないナイキストイメージが有意に減衰させられない場合には、2つの課題が存在する。第一に、ナイキストイメージの固有の周波数間隔に起因して、アップコンバージョンミキサでの非線形な動作が、通過帯域へと直接的に入り込む相互変調歪み(IMD)をもたらすことになる。第二に、通過帯域外のナイキストイメージ及びそれらのIMDコンポーネントは、アップコンバージョン後に、高度に選択的な無線周波数(RF)バンドパスフィルタによってフィルタリングされる必要があり、これは典型的には、置き換えようとするローパスフィルタよりも大きく複雑である。
【0010】
そのために、デジタル−アナログ変換からもたらされる望ましくないナイキストイメージを、複雑なポストDACアナログフィルタリングを必要とすることなく減衰させるための、システム及び方法についてのニーズが存在する。
【発明の概要】
【0011】
本開示は、専用クロック信号(specialized clock signal)を利用してデジタル−アナログ変換器(DAC)のアナログインパルス応答を再整形するデジタル−アナログ変換システムに関する。好適には、専用クロック信号の形状は、デジタル−アナログ変換に由来するナイキストイメージが所望のやり方で制御されるようになされる。1つの実施形態において、デジタル−アナログ変換システムは、デジタル入力信号をアナログ出力信号へと変換するDACを含む。DACは、好適には、ゼロ次ホールド(ZOH)DACであるが、それに限定されない。DACのアナログインパルス応答が専用クロック信号の形状に従って再整形されるように、専用クロック信号がDACのアナログ出力信号へと適用され、それにより、修正アナログ出力信号が提供される。専用クロック信号は、デジタル−アナログ変換に由来するナイキストイメージが所望のやり方で制御されるように、DACのアナログインパルス応答を再整形する。好適には、専用クロック信号は、1つ以上の望ましくないナイキストイメージが減衰されるように、DACのアナログインパルス応答を再整形する。
【0012】
当業者は、添付図面の図との関連において好適な実施形態の以下の詳細な説明を読んだ後に、本開示の範囲を理解し、その追加的な側面を認識するであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
本明細書に取り入れられその一部を形成する添付図面の図は、本開示のいくつもの観点を例示しており、本説明と共に本開示の原理を説明するために供される。
【0014】
【
図1】ナイキストイメージを示すデジタル信号の周波数領域表現を示している。
【
図2】旧来のデジタル−アナログ変換器(DAC)と、それに続く、望ましくないナイキストイメージを除去するアナログローパスフィルタとを示している。
【
図3】補間後のデジタル信号の周波数領域表現を示している。
【
図4】旧来のDACと、それに続くアナログローパスフィルタとを示しており、ナイキストイメージの間の間隔を増加させるために補間が利用され、それによりアナログローパスフィルタの選択性要件が緩和される。
【
図5A】ゼロ次ホールド(ZOH)DACの例示的な出力を示している。。
【
図5B】一次ホールド(FOH)DACの例示的な出力を示している。。
【
図5C】二次ホールド(SOH)DACの例示的な出力を示している。。
【
図6】本開示の1つの実施形態に係る、DACと、デジタル−アナログ変換に由来するナイキストイメージが所望のやり方で制御されるようにDACのアナログインパルス応答を再整形するために専用クロック信号でDACの出力を乗算する乗算器とを含むデジタル−アナログ変換システムを示している。
【
図7】本開示の1つの実施形態に従ってDACのアナログインパルス応答を再整形するために使用される専用クロック信号の1つの例を示している。
【
図8A】本開示の1つの実施形態に従って
図7の専用クロック信号によりDACの周波数応答が修正されるやり方をグラフィック的に示している。
【
図8B】本開示の1つの実施形態に従って
図7の専用クロック信号によりDACの周波数応答が修正されるやり方をグラフィック的に示している。
【
図9A】本開示のいくつかの追加的かつ例示的な実施形態に係る専用クロック信号を示している。
【
図9B】本開示のいくつかの追加的かつ例示的な実施形態に係る専用クロック信号を示している。
【
図9C】本開示のいくつかの追加的かつ例示的な実施形態に係る専用クロック信号を示している。
【
図9D】本開示のいくつかの追加的かつ例示的な実施形態に係る専用クロック信号を示している。
【
図10A】DACへ入力されるデジタル入力信号の1つの例を示している。
【
図10B】
図10Aのデジタル入力信号への応答としてのZOH DACの出力を示している。
【
図10C】本開示の1つの実施形態に係る専用クロック信号の適用後の修正出力信号を示している。
【
図10D】本開示の1つの実施形態に従った所望のやり方での、専用クロック信号の適用によってDACの周波数応答が修正されてナイキストイメージが制御されるやり方を示す、
図10Cの修正出力信号の周波数領域表現である。
【
図11】本開示の他の実施形態に係る、DACと、デジタル−アナログ変換に由来するナイキストイメージが所望のやり方で制御されるようにDACのアナログインパルス応答を再整形するためにDACの出力に応じて専用クロック信号を増幅する可変利得増幅器とを含むデジタル−アナログ変換システムを示している。
【
図12】本開示の他の実施形態に係る、DACと、デジタル−アナログ変換に由来するナイキストイメージが所望のやり方で制御されるようにDACのアナログインパルス応答を再整形するために専用クロック信号に応じてDACの出力を増幅する可変利得増幅器とを含むデジタル−アナログ変換システムを示している。
【
図13】本開示の他の実施形態に係る、デジタル−アナログ変換に由来するナイキストイメージが所望のやり方で制御されるようにDACの各々のアナログインパルス応答を再整形するために、複数のDACが主要デジタル信号の異なるサンプルのストリームを処理し、専用クロック信号が当該複数のDACの出力へと適用されるシステムを示している。
【
図14】本開示の他の実施形態に係る、デジタル−アナログ変換に由来するナイキストイメージが所望のやり方で制御されるようにDACの各々のアナログインパルス応答を再整形するために、複数のDACが主要デジタル信号の遅延され間引かれた複数のバージョンを処理し、専用クロック信号が当該複数のDACの出力へと適用される、多相構造を示している。
【
図15】本開示の1つの実施形態に係る、
図14のDACの出力へと適用される専用クロック信号の異なる遅延されたバージョンの一例を示している。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に説明される実施形態は、当業者が実施形態を実践することを可能とするために必要な情報を表現し、実施形態の実践の最良の形態を例示する。添付図面の図を踏まえて以下の説明を読めば、当業者は、本開示の概念を理解し、ここでは特に書かれていないそれら概念の応用を認識するであろう。それら概念及び応用は本開示及び添付の請求項の範囲に入ることが理解されるべきである。
【0016】
本開示は、専用クロック信号を利用してデジタル−アナログ変換器(DAC)のアナログインパルス応答を再整形するデジタル−アナログ変換システムに関する。好適には、専用クロック信号の形状は、デジタル−アナログ変換に由来するナイキストイメージが所望のやり方で制御されるようになされる。これに関し
図6は、本開示の1つの実施形態に係る、デジタル−アナログ変換システム18を示している。デジタル−アナログ変換システム18は、図示したように接続される、DAC20と、アナログ乗算器あるいはミキサ22とを含む。1つの実施形態において、DAC20は、ゼロ次ホールド(ZOH)DAC(即ち、サンプル及びホールドDAC)であり、但しそれに限定されない。例えば、DAC20は、代替的に、一次ホールド(FOH)DAC又は二次ホールド(SOH)DACなどであってもよい。
【0017】
動作中に、DAC20は、デジタル入力信号(d(n))をアナログ出力信号(x
〜(t))へと変換する(便宜的に、“X
〜”と記載した場合、アルファベットXの上に記号
〜があるものとする。以下同じ)。そして、アナログ乗算器22は、アナログ出力信号(x
〜(t))と専用クロック信号とを乗算して、修正された又は最終的なアナログ出力信号(x(t))を提供する。ここで使用されるところによれば、専用クロック信号は、非従来型のクロック信号形状を有するクロック信号であって、非従来型のクロック信号形状は、例えば、矩形クロック信号形状若しくは正弦波クロック信号形状等又は他の何らかの従来型のクロック信号形状とは異なる、クロック信号形状である。1つの好適な実施形態において、専用クロック信号は、周期的な信号であって、(1)専用クロック信号の各周期が非従来型のクロック信号形状を有し(即ち、矩形波又は正弦波形状を有しない)、(2)専用クロック信号の各周期がDAC20のサンプリング周期に等しく、(3)専用クロック信号はDAC20のクロック(CLK)に同期される。さらに、好適な実施形態において、専用クロック信号の各周期は、DAC20についての所望のアナログインパルス応答に等しい。
【0018】
アナログ出力信号(x
〜(t))と専用クロック信号とを乗算することにより、アナログ乗算器22は、専用クロック信号の形状に従ってDAC20のアナログインパルス応答が再整形されるように、アナログ出力信号(x
〜(t))へ専用クロック信号を適用する。さらに、専用クロック信号の形状は、デジタル入力信号(d(n))のデジタル−アナログ変換に由来するナイキストイメージを周波数領域において所望のやり方で制御するようなやり方でDAC20のアナログインパルス応答が再整形されるような形状とされる。より具体的には、専用クロック信号の形状は、周波数領域において、1つ以上の望ましくないナイキストイメージが所望アナログ信号に対して相対的に減衰するような形状とされる。所望アナログ信号は、複数のナイキストイメージのうちのいずれかのイメージであってもよい。とりわけ、ここで使用されるところによれば、ナイキストイメージは、0、f
S、2f
S、3f
Sなどといった周波数に位置するそれらイメージであり、f
SはDAC20のサンプリングレートである。
【0019】
1つの実施形態において、所望アナログ信号はベースバンドにあり、専用クロック信号の各周期はローパス周波数応答を有する。このやり方で、望ましくないナイキストイメージの1つ以上、及び好適には望ましくないナイキストイメージの全てが、ベースバンドでの所望アナログ信号に対して相対的に減衰される。同様に、他の実施形態において、所望アナログ信号はベースバンドにあり、専用クロック信号は、DAC20のアナログインパルス応答を再整形して、ローパス周波数応答に相当する再整形された又は実効的なアナログインパルス応答を提供する。他の実施形態において、所望アナログ信号は、非ゼロの周波数(即ち、f
S又は2f
Sなど)に位置するナイキストイメージのうちの1つであり、専用クロック信号は、1つ以上の望ましくないナイキストイメージが所望のナイキストイメージに対して相対的に減衰させられるようなバンドパス周波数応答を有する。同様に、他の実施形態において、所望アナログ信号は、非ゼロの周波数に位置するナイキストイメージのうちの1つであり、専用クロック信号は、DAC20のアナログインパルス応答を再整形して、バンドパス周波数応答に相当する再整形された又は実効的なアナログ応答を提供し、所望のナイキストイメージがバンドパス周波数応答の通過帯域に入る。
【0020】
また別の実施形態において、所望のアナログ信号はベースバンドにあり、専用クロック信号の各周期は、ノッチ又はマルチノッチ周波数応答を有し、ノッチ(複数のノッチ)は、望ましくないナイキストイメージ(複数のイメージ)上でセンタリングされる。このやり方で、望ましくないナイキストイメージの1つ以上が、好ましくは望ましくないナイキストイメージの全てが、ベースバンドにある所望のアナログ信号に対して相対的に減衰させられる。同様に、他の実施形態において、所望アナログ信号はベースバンドにあり、専用クロック信号は、DAC20のアナログインパルス応答を再整形して、ノッチ又はマルチノッチ周波数応答に相当する再整形された又は実効的なアナログ応答を提供する。ノッチ(複数のノッチ)は、周波数領域において望ましくないナイキストイメージ上でセンタリングされる。他の実施形態において、所望アナログ信号は、非ゼロの周波数(即ち、f
S又は2f
Sなど)に位置するナイキストイメージのうちの1つであり、専用クロック信号は、ノッチ又はマルチノッチ周波数応答を有し、ノッチ(複数のノッチ)は、望ましくないナイキストイメージ(複数のイメージ)上でセンタリングされる。このやり方で、望ましくないナイキストイメージの1つ以上が、好ましくは望ましくないナイキストイメージの全てが、所望のナイキストイメージに対して相対的に減衰させられる。同様に、他の実施形態において、所望アナログ信号は、非ゼロの周波数(即ち、f
S又は2f
Sなど)に位置するナイキストイメージのうちの1つであり、専用クロック信号は、DAC20のアナログインパルス応答を再整形して、ノッチ又はマルチノッチ周波数応答に相当する再整形された又は実効的なアナログインパルス応答を提供する。ノッチ(複数のノッチ)は、周波数領域において望ましくないナイキストイメージ上でセンタリングされる。
【0021】
図7は、専用クロック信号の1つの例を示しており、専用クロック信号の各周期は、トランケートされるsinc関数である。図示したように、専用クロック信号は、DAC20のサンプリング周期に等しい周期を有し、DAC20のクロック(CLK)へ同期される。sinc関数はローパス周波数応答を有する。そのために、
図7の専用クロック信号をアナログ出力信号(x
〜(t))へ適用することにより、DAC20のアナログインパルス応答は、再整形後の実効的なDAC20のアナログインパルス応答がローパス周波数応答を有するように再整形される。
【0022】
図8A及び
図8Bは、
図7の専用クロック信号がDAC20の周波数応答を再整形するやり方を示している。この例において、DAC20は、ZOH DACである。より具体的には、
図8Aは、1つの実施形態に係るDAC20の周波数応答を示している。図示したように時間領域において、DAC20の出力は、矩形波である。図示したように、時間領域において、DAC20の出力は矩形波である。そのために、周波数領域において、DAC20の周波数応答がDAC20のサンプリングレート(f
S)の整数倍において空値を有するsinc波である。DAC20のサンプリングレート(f
S)は、クロック(CLK)により定義される。より具体的には、DAC20のサンプリングレートは、1/T
DACに等しく、T
DACは、DAC20のサンプリング周期であって、クロック(CLK)により定義される。
図8Bは、
図7の専用クロック信号に従ってDAC20の周波数が再整形されるやり方を示している。図示したように、専用クロック信号は、DCにセンタリングされる(即ち、0という周波数に中央を合わせられる)周波数応答のメインローブの幅を広げ、f
Sの整数倍に位置するサイドローブの大きさを減少させる。
【0023】
図9A〜
図9Dは、専用クロック信号の追加的な例を示している。
図9Aにおいて、専用クロック信号の各周期は、整流される正弦関数状のクロック信号である。
図9Bにおいて、専用クロック信号の各周期は、鋸歯状のクロック信号である。
図9Cにおいて、専用クロック信号の各周期は、三角形状(triangular-shaped)のクロック信号である。
図9Dにおいて、専用クロック信号の各周期は、所望の周波数の正弦関数により変調される、トランケートされたsinc関数である。トランケートされたsinc関数は、ローパス周波数応答を有する。トランケートされたsinc関数を所望の周波数の正弦関数によって変調することにより、専用クロック信号の周波数応答は、所望の周波数に通過帯域を有するバンドパス周波数応答になる。所望の周波数は、好適には、所望のナイキストイメージの周波数である。なお、バンドパス周波数応答を有する専用クロック信号の他の例を生成するために、ローパス周波数応答を有する他のタイプの専用クロック信号が、所望の周波数の正弦関数によって変調されてもよい。
図9A〜
図9Dの例の各々において、専用クロック信号の周期は、DAC20のサンプリング周期に等しく(T
DAC)、専用クロック信号はDAC20のクロック(CLK)へ同期される。
【0024】
処理の前に、留意すべきこととして、上で与えられた専用クロック信号の例は、単なる例に過ぎない。他の形状が使用されてもよい。例えば、専用クロック信号の各周期は、トランケートされるsinc関数、整流される正弦関数、三角形状関数、鋸歯状関数、Hannウィンドウ、Hammingウィンドウ、Tukeyウィンドウ、余弦ウィンドウ、Lanczosウィンドウ、Bartlettウィンドウ、Gaussianウィンドウ、Bartlett−Hannウィンドウ、Blackmanウィンドウ、Kaiserウィンドウ、Nuttallウィンドウ、Blackman−Harrisウィンドウ、Blackman−Nuttallウィンドウ、Flat topウィンドウ、Besselウィンドウ、Dolph−Chebyshevウィンドウ、Hann−Poissonウィンドウ、指数関数ウィンドウ、Rife−Vincentウィンドウ又はデジタル長楕円体シーケンス(Digital Prolate Spheriodal Sequence)ウィンドウなどに従って整形されてもよい。FIR(Finite Impulse Response)フィルタ設計の分野では、有限期間のインパルス応答を用いて何らかの所望の周波数応答を近似するために使用される多くの技法が存在する。専用クロック信号の各周期が所望の周波数応答を有する有限期間のインパルス応答である当該専用クロック信号を提供するために、任意のそうした技法が使用されてよい。本質的ではないものの、専用クロック信号の周期のための形状として使用され得る信号処理ウィンドウに関するさらなる情報のために、興味のある読者には、例えばJ.G. Proakisらによる“Digital Signal Processing, Principles, Algorithms, and Applications”(3rd Edition, Prentice-Hall, 1996)のセクション8.2又は8.5が案内され、それは全体として参照によりここに取り入れられる。
【0025】
加えて、上の例では周期ごとに1つの波形のみが存在したが、専用クロック信号は、その代わりに、周期ごとに複数の波形を含んでもよい。例えば、専用クロック信号の各周期は、代替的に、波形又はウィンドウの複数回の繰り返しを含んでもよい。いくつかの例として、専用クロック信号の各周期は、2回以上繰り返されるトランケートされるsinc関数、2回以上繰り返される整流される正弦関数、2回以上繰り返される三角形状関数、2回以上繰り返される鋸歯状関数、2回以上繰り返されるHannウィンドウ、2回以上繰り返されるHammingウィンドウ、2回以上繰り返されるTukeyウィンドウ、2回以上繰り返される余弦ウィンドウ、2回以上繰り返されるLanczosウィンドウ、2回以上繰り返されるBartlettウィンドウ、2回以上繰り返されるGaussianウィンドウ、2回以上繰り返されるBartlett−Hannウィンドウ、2回以上繰り返されるBlackmanウィンドウ、2回以上繰り返されるKaiserウィンドウ、2回以上繰り返されるNuttallウィンドウ、2回以上繰り返されるBlackman−Harrisウィンドウ、2回以上繰り返されるBlackman−Nuttallウィンドウ、2回以上繰り返されるFlat topウィンドウ、2回以上繰り返されるBesselウィンドウ、2回以上繰り返されるDolph−Chebyshevウィンドウ、2回以上繰り返されるHann−Poissonウィンドウ、2回以上繰り返される指数関数ウィンドウ、2回以上繰り返されるRife−Vincentウィンドウ又は2回以上繰り返されるデジタル長楕円体シーケンスウィンドウなどを含み得る。
【0026】
上で与えられた専用クロック信号の例の多くがDAC20のアナログインパルス応答を修正してローパス又はバンドパス周波数応答を提供する一方で、専用クロック信号はそれらに限定されないことにも留意すべきである。他の実施形態において、専用クロック信号は、周波数領域で望ましくないナイキストイメージにより占められる周波数においてのみ遮断帯域が提供されるように、DAC20のインパルス応答を再整形するために提供される。このアプローチは、デジタル入力信号(d(n))がオーバーサンプリングされる場合の低次FIR応答について良好に適しているであろう。他の実施形態において、専用クロック信号は、ZOH DAC応答におけるノッチ又は空値が所望のイメージから離れたところへ移るように提供されてもよい。
【0027】
図10A〜
図10Dは、本開示の1つの実施形態に係るデジタル入力信号(d(n))の1つの例についてのデジタル−アナログ変換システム18の動作をグラフィック的に示している。より具体的には、
図10Aは、DAC20へ入力されるデジタル入力信号(d(n))の1つの例を表現する入力サンプルインパルスを示している。
図10Bは、
図10Aの入力サンプルインパルス、及びDAC20により出力されるアナログ出力信号(x
〜(t))の双方を示しており、この例においてDAC20はZOH DACである。
図10Cは、
図10Aの入力サンプルインパルス、
図10Bのアナログ出力信号(x
〜(t))、及び対応する修正アナログ出力信号(x(t))と共に、理想的なアナログ信号を示している。当該理想的な信号は、望ましくないイメージの全てが完全に除去されている所望のイメージである。この例において、DAC20のアナログインパルス応答を再整形するためにアナログ出力信号(x
〜(t))へ適用される専用クロック信号は、整流される正弦関数(rectified sinusoid)である。最後に、
図10Dは、アナログ出力信号(x
〜(t))の周波数領域表現、修正アナログ出力信号(x(t))及び理想的なアナログ信号を示している。この例において、専用クロック信号は、第1のナイキストゾーン内のナイキストイメージが減衰させられ、第2のナイキストゾーン内のナイキストイメージが高められ若しくは大きさが増加させられるようなバンドパス応答を有する。
【0028】
図11は、本開示の他の実施形態に係るデジタル−アナログ変換システム18を示している。本実施形態は、
図6の実施形態と同様であり、但し、アナログ乗算器22(
図6)よりもむしろ可変利得増幅器(VGA)24が、DAC20により出力されるアナログ出力信号(x
〜(t))へ専用クロック信号を適用する。より具体的には、VGA24は、DAC20により出力されるアナログ出力信号(x
〜(t))に応じて専用クロック信号を増幅する。アナログ乗算器22(
図6)と同様に、VGA24は、専用クロック信号とアナログ出力信号(x
〜(t))とを共に乗算し、但し、VGA24の特性によって、それら入力の動作帯域幅は同じではなく、DAC20により出力されるアナログ出力信号(x
〜(t))又は専用クロック信号のいずれかのために、一方の入力を他方に対して使用することが有利であり得る。
【0029】
図12は、本開示の他の実施形態に係るデジタル−アナログ変換システム18を示している。本実施形態は、実質的に
図11の実施形態と同様である。但し、本実施形態では、VGA24の入力が逆になっている。より具体的には、VGA24は、専用クロック信号に応じてDAC20により出力されるアナログ出力信号(x
〜(t))を増幅する。アナログ乗算器22(
図6)と同様に、VGA24は、専用クロック信号とアナログ出力信号(x
〜(t))とを共に乗算し、但し、VGA24の特性によって、それら入力の動作帯域幅は同じではなく、DAC20により出力されるアナログ出力信号(x
〜(t))又は専用クロック信号のいずれかのために、一方の入力を他方に対して使用することが有利であり得る。
【0030】
本開示の文脈におけるVGA24は一方の入力を他方の入力へ呈示される信号に基づいてスケーリングする2入力のデバイスの一般化された表現であること、及び、そうしたスケーリング又は乗算を生じさせることができる複数の代替的な手段が存在することが、当業者により理解されるであろう。VGA24は、動作周波数において入力が対称的ではない(即ち、一方の入力が典型的に他方よりもかなり低い帯域幅を有する)特殊な形式の乗算器として理解されるべきであり、その制限帯域幅は本開示の範囲の限定ではない。
【0031】
図13は、本開示の他の実施形態に係るデジタル−アナログ変換システム26を示している。本実施形態において、デジタル−アナログ変換システム26は、複数のDAC28−1〜28−Nを含み、Nは2以上である。主要デジタル信号は、N個のストリームの異なるデジタルサンプルへと分割され、N個のストリームはDAC28−1〜28−Nのそれぞれ1つへと入力され、それぞれデジタル入力信号d
1(n)〜d
N(n)として言及される。例えば、N=4である場合、サンプル0、4、8等がDAC28−1へ入力される第1のデジタル入力信号(d
1(n))として提供され、サンプル1、5、9等がDAC28−2へ入力される第2のデジタル入力信号(d
2(n))として提供され、サンプル2、6、10等がDAC28−3へ入力される第3のデジタル入力信号(d
3(n))として提供され、サンプル3、7、11等がDAC28−4へ入力される第4のデジタル入力信号(d
4(n))として提供され得る。このやり方で、デジタル入力信号d
1(n)〜d
N(n)の各々のサンプリングレートは、主要デジタル信号のサンプリングレートのN分の1になる。結果として、DAC28−1〜28−Nのサンプリング周期は、主要デジタル信号を単一のDACが変換する場合には必要とされるはずであったサンプリング周期よりもN倍長い。
【0032】
乗算器30−1〜30−Nによって、専用クロック信号がDAC28−1〜28−Nにより出力されるアナログ出力信号(x
〜1(t)〜x
〜N(t))へ上述したやり方で適用される。概して、乗算器30−1〜30−Nへ入力される専用クロック信号は、時間及び/又は大きさを揃えられ、そういった手法で、加算又は合成器回路32の出力にあたる所望の最終的なアナログ出力信号(x(t))の再構築が可能とされる。1つの具体的な実施形態において、乗算器28−1〜28−Nの各々へ入力される専用クロック信号の位相又は遅延は、当該専用クロック信号を対応するDAC28のクロックに同期させる目的で調整される。このやり方で、乗算器28−1〜28−Nの各々についての専用クロック信号は、互いに時間においてオフセットされる。DAC28−1〜28−Nのより長いサンプリング周期は、専用クロック信号のためのより長い周期を可能とし、それは転じて、周波数領域におけるナイキストイメージのより正確な制御を可能とする。最後に、乗算器30−1〜30−Nにより出力される修正アナログ出力信号(x
1(t)〜x
N(t))が加算又は合成器回路32により合成されて、最終アナログ出力信号(x(t))が提供される。とりわけ、本実施形態では乗算器30−1〜30−Nが使用されているものの、乗算器30−1〜30−Nは、
図11及び
図12に関連して上述したやり方で、VGAと置換えられてもよい。
【0033】
図14は、本開示の他の実施形態に係るデジタル−アナログ変換システム34を示している。本実施形態において、デジタル−アナログ変換システム34は、N個の多相ブランチを含む多相構造(polyphase structure)である。N個の多相ブランチは、図示されたように接続される、間引き器(decimator)36−1〜36−N、DAC38−1〜38−N及び乗算器40−1〜40−Nをそれぞれ含む。主要デジタル入力信号(d(n))は、一連の遅延器42−1〜42−(N−1)を通過して、対応するデジタル入力信号(d
1(n)〜d
N(n))をN個の多相ブランチへ提供する。好適には、遅延器42−1〜42−(N−1)の各々は、主要デジタル入力信号(d(n))をT
S,INだけ遅延させ、ここでT
S,INは1/f
S,INに等しく、f
S,INは主要デジタル入力信号(d(n))のサンプリングレートである。
【0034】
間引き器36−1〜36−Nは、デジタル入力信号(d
1(n)〜d
N(n))をそれぞれ所望の間引きファクタ(D)により間引いて、f
S,IN/Dに等しいサンプリングレートを各々有する間引き後デジタル入力信号(d
1´(n)〜d
N´(n))を提供し、あらためて言うと、f
S,INは主要デジタル入力信号(d(n))のサンプリングレートである。好適には、間引きファクタ(D)は、多相ブランチの数(N)に等しい(即ち、D=N)。間引き後デジタル入力信号(d
1´(n)〜d
N´(n))は、DAC38−1〜38−Nによりデジタル−アナログ変換されて、対応するアナログ出力信号(x
〜1(t)〜x
〜N(t))が提供される。間引きの結果として、DAC38−1〜38−Nの各々のサンプリング周期は、主要デジタル入力信号(d(n))を変換するために単一のDACが使用されたならば要するはずであったサンプリング周期である主要デジタル入力信号(d(n))のサンプリング周期よりもD倍長くなる。
【0035】
乗算器40−1〜40−Nによって、専用クロック信号がDAC38−1〜38−Nにより出力されるアナログ出力信号(x
〜1(t)〜x
〜N(t))へ上述したやり方で適用される。但し、本実施形態では、乗算器40−1〜40−Nの各々へ入力される専用クロック信号の位相又は遅延は、当該専用クロック信号を対応するDAC38のクロックに同期させる目的で調整される。具体的には、1つの好適な実施形態において、遅延器42−1〜42−(N−1)の各々は、T
S,INという遅延を適用し、ここであらためて言うと、T
S,INは1/f
S,INに等しく、f
S,INは主要デジタル入力信号(d(n))のサンプリングレートである。そのため、j番目の多相ブランチ(j=1,…,N)のためのデジタル入力信号d
j(n)は、(j−1)×T
S,INに等しい時間量だけ遅延される。j番目の多相ブランチ(j=1,…,N)のための専用クロック信号の位相オフセット又は遅延は、対応するデジタル入力信号(d
j(n))についての遅延に対応し、(j−1)×T
S,INに等しい。上で議論したように、多相構造及び間引きに起因して、DAC38−1〜38−Nのサンプリング周期(T
DAC)は、主要デジタル入力信号(d(n))のサンプリング周期T
S,INよりもD倍長い。DAC38−1〜38−Nのより長いサンプリング周期(T
DAC)は、専用クロック信号についてより長い周期を可能とし、それは転じて、周波数領域におけるナイキストイメージのより正確な制御を可能とする。最後に、乗算器40−1〜40−Nにより出力される修正アナログ出力信号(x
1(t)〜x
N(t))が加算又は合成器回路44により合成されて、最終アナログ出力信号(x(t))が提供される。とりわけ、本実施形態では乗算器40−1〜40−Nが使用されているものの、乗算器40−1〜40−Nは、
図11及び
図12に関連して上述したやり方で、VGAと置換えられてもよい。
【0036】
図15は、本開示の1つの実施形態に係る、専用クロック信号、及び、DAC38−1〜38−Nにより出力されるアナログ出力信号(x
〜1(t)〜x
〜N(t))へ適用される対応する位相オフセットの1つの例を示している。この例において、4つの多相ブランチが存在する。図示したように、アナログ出力信号x
〜1(t)へ適用される専用クロック信号についての遅延はゼロであり、アナログ出力信号x
〜2(t)へ適用される専用クロック信号についての遅延はT
DAC/4(デジタル入力信号d
2(n)についての遅延T
S,INに等しい)であり、アナログ出力信号x
〜3(t)へ適用される専用クロック信号についての遅延はT
DAC/2(デジタル入力信号d
3(n)についての遅延2T
S,INに等しい)であり、アナログ出力信号x
〜4(t)へ適用される専用クロック信号についての遅延は3T
DAC/4(デジタル入力信号d
4(n)についての遅延3T
S,INに等しい)である。このやり方で、
図14の多相構造の各多相ブランチについて、専用クロック信号は、対応するDAC38のクロックへ同期される。
【0037】
以下の頭字語が本開示を通じて使用されている。
・DAC Digital-to-Analog Converter
・FIR Finite Impulse Response
・FOH First-Order Hold
・IMD Intermodulation Distortion
・RF Radio Frequency
・SOH Second-Order Hold
・VGA Variable Gain Amplifier
・ZOH Zero-Order Hold
【0038】
当業者は、本開示の好適な実施形態についての改善及び修正を認識するであろう。そうした改善及び修正は、ここで開示された概念及び次の請求項の範囲内にあるものと見なされる。