(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6096912
(24)【登録日】2017年2月24日
(45)【発行日】2017年3月15日
(54)【発明の名称】広帯域ラムダセンサの基準空気通路を診断するための方法および装置
(51)【国際特許分類】
G01N 27/26 20060101AFI20170306BHJP
G01N 27/419 20060101ALI20170306BHJP
【FI】
G01N27/26 391B
G01N27/419 327G
G01N27/419 327Z
【請求項の数】12
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-536062(P2015-536062)
(86)(22)【出願日】2013年9月30日
(65)【公表番号】特表2015-535073(P2015-535073A)
(43)【公表日】2015年12月7日
(86)【国際出願番号】EP2013070319
(87)【国際公開番号】WO2014063903
(87)【国際公開日】20140501
【審査請求日】2015年4月14日
(31)【優先権主張番号】102012219282.4
(32)【優先日】2012年10月23日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】501125231
【氏名又は名称】ローベルト ボッシュ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(72)【発明者】
【氏名】レダーマン,ベルンハルト
【審査官】
佐々木 龍
(56)【参考文献】
【文献】
特表2006−509151(JP,A)
【文献】
国際公開第00/037930(WO,A1)
【文献】
国際公開第2012/007238(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/26−27/49
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気ガス(18)内の酸素含有量を決定するのに使用される広帯域ラムダセンサの基準通路(15)を診断するための方法であって、ポンプセル(20)およびネルンストセル(30)を備えた少なくとも1つのセンサエレメント(10)を使用し、排気ガス(18)内の酸素含有量を決定するための測定モードにおいて閉ループ制御されたポンプ電流(102)が前記ポンプセル(20)を通って流れ、それによって測定室(12)と排気ガス(18)との間で酸素イオンの交換が行われ、ひいては前記測定室(12)内のラムダ値が1の値に閉ループ制御され、この際に、前記測定室(12)内のラムダ値が前記ネルンストセル(30)によって監視され、このために必要なポンプ電流(102)の値が、酸素濃度、およびひいては決定しようとする、排気ガス(18)のラムダ値に基づいており、前記センサエレメント(10)の電極が、前記広帯域ラムダセンサを制御および評価するための制御ユニットに接続されており、前記測定モード以外に少なくとも1つの診断モードも設けられている方法において、
前記診断モード中に、ポンプ電流閉ループ制御回路の切り替えを行い、電圧測定を介して基準通路(15)内の基準エアの品質の診断を実施することを特徴とする、広帯域ラムダセンサの基準通路を診断する方法。
【請求項2】
前記センサエレメント(10)内の酸素濃度を変えることで、高い酸素濃度を有する2つの個所間の比較測定が可能となるように、前記ポンプ電流閉ループ制御回路を変更することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
診断のために、強い負のポンプ電流(102)を調節することを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記ネルンストセル(30)に、負の閉ループ制御電圧を要求することを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
調節されたネルンスト電圧(101)が概ね定常値を示す診断段階中に、前記ネルンスト電圧を評価し、+50mV〜+150mVのネルンスト電圧(101)では、誤りのない基準エアを有する誤りのない基準通路(15)が前提とされ、これよりも低いまたは負の電圧に調節されている場合、誤った基準エアが前提とされる、請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
誤りが検知されると、空気若しくは酸素で前記基準通路(15)を集中的に満たすための前記センサエレメント(10)の回路が要求され、その間、前記診断段階の時間的に直近において測定されたラムダ値が無効であると識別されることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
特に0〜500mVの範囲内の測定された前記ネルンスト電圧(101)を、別の手段によって妥当化することを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記診断を、1秒の診断経過時間内で実施することを特徴とする、請求項1から7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記診断法を、広帯域ラムダセンサの耐用年数の開始時に、および/または耐用年数中に所定の間隔で実施することを特徴とする、請求項1から8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記診断を、走行サイクル中に、特に走行サイクルの開始時または終了時に一度実施することを特徴とする、請求項1から9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
排気ガス(18)内の酸素含有量を決定するための広帯域ラムダセンサの基準通路(15)を診断するための装置であって、ポンプセル(20)およびネルンストセル(30)を備えた少なくとも1つのセンサエレメント(10)が設けられていて、前記センサエレメント(10)の電極が、前記広帯域ラムダセンサを制御および評価するための制御ユニットに接続されている形式のものにおいて、
前記制御ユニットが、請求項1から10のいずれか1項に記載の方法を実施するための装置、特に前記ポンプセル(20)によってポンプ電流(102)のポンプ電流閉ループ制御を変えるための切り替え装置、並びに前記ネルンストセル(30)においてネルンスト電圧(101)を評価するためのコンパレータを有していることを特徴とする、広帯域ラムダセンサの基準通路を診断するための装置。
【請求項12】
前記制御ユニットが、CJ135ASICモジュールを有していることを特徴とする、請求項11に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気ガス内の酸素含有量を決定するために使用される広帯域ラムダセンサの基準通路を診断するための方法であって、ポンプセルおよびネルンストセルを備えた少なくとも1つのセンサエレメントを使用し、この場合、排気ガス内の酸素含有量を決定するための測定モードにおいて、閉ループ制御されたポンプ電流が前記ポンプセルを通って流れ、それによって測定室と排気ガスとの間で酸素イオンの交換が行われ、ひいては前記測定室内のラムダ値が1の値に閉ループ制御され、この際に、前記測定室内のラムダ値が前記ネルンストセルによって監視され、このために必要なポンプ電流の値が、酸素濃度、およびひいては決定しようとする、排気ガスのラムダ値に基づいており、前記センサエレメントの電極が、前記広帯域ラムダセンサを制御および評価するための制御ユニットに接続されており、前記測定モード以外に少なくとも1つの診断モードも設けられている方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明はさらに、本発明による方法を実施するための相応の装置に関する。
【0003】
ラムダセンサは、内燃機関の燃料空気混合気の気化を制御するために、排気ガスの酸素含有量を測定するための、例えば内燃機関の排ガス管路内に使用される。ラムダセンサは、ジルコン二酸化物セラミックスより形成された、約300℃の温度から酸素イオンを通過させる固体電解質の特性を利用する。固定電解質の少なくとも両側に白金電極が設けられている。一方側が、低下された酸素分圧を有する排気ガスに晒され、他方側が基準ガス例えば空気に晒されると、酸素イオンが固体電解質を通って拡散される。これによって生ぜしめられた、このような濃淡電池の両電極間の電圧差は、ネルンスト方程式によって記述され、ラムダ=1の狭い窓内で排気ガスのラムダ値を決定するために使用される。このラムダ値は、理論空気燃料混合比に対する、そのときの空気燃料比を示す。
【0004】
外部の電圧を電極に印加することによって、酸素イオンは固体電解質を通ってポンプ供給される。この特性は、ラムダ値を希薄排気ガスから過濃排気ガスまでの広い範囲内で決定できるようにするために、いわゆる広帯域ラムダセンサにおいて使用される。このために、電極、外側のポンプ電極が排気ガスに面している。第2の電極は内側のポンプ電極として、拡散バリアを介して排気ガスに接続されている。第2の電極は、拡散通路および拡散バリアによって排気ガスに接続された固体電解質内で測定室内に配置されていてよい。選択的な構成によれば、2つの電極は排気ガスに面した固体電解質の側に配置されていて、この場合、内側のポンプ電極は、被着された拡散バリア層によって覆われている。
【0005】
外側のポンプ電極と、内側のポンプ電極と、およびその間に配置された固定電解質とは、いわゆるポンプセルを形成する。電圧を印加することによって、酸素イオンは内側のポンプ電極から外側のポンプ電極へ送られる。この場合、十分に高い電圧において、拡散バリアを通る酸素イオンによって限界電流が調節される。酸素拡散およびひいてはラムダ値を決定するために測定された限界電流は、排気ガス内の酸素分圧並びに拡散バリアの拡散特性に直接に依存している。拡散バリアの公知の拡散特性において、排気ガスのラムダは、限界電流から決定される。
【0006】
ダブルセル型広帯域ラムダセンサとして公知の別の構成は、ポンプセルと濃淡電池との組み合わせから形成されている。この場合、外側のポンプ電極は排気ガスに面していて、内側のポンプ電極は、拡散バリアを通って排気ガスに接続された測定室内に配置されている。測定室内には、測定電極と呼ばれた、濃淡電池の別の第1の電極が配置されている。別個の基準通路内で、濃淡電池の第2の電極として基準電極が固体電解質に被着されている。基準通路は、規定された酸素含有量を有する基準ガスで、好適には外側の開口を通じて空気で満たされている。
【0007】
このようなダブルセル型広帯域ラムダセンサにおいては、ポンプセルを通して、測定室内のラムダ値が、酸素イオンをポンプ供給またはポンプ排出されることによって、好適には1のラムダに調節される。このために、測定室内のラムダ値は濃淡電池を介して測定され、ポンプセルを通してポンプ電流を相応に閉ループ制御することによって、λ=1に閉ループ制御される。このために必要なポンプ電流は、測定室内の拡散バリアによって拡散された酸素量に依存しており、ひいては排気ガスのラムダおよび拡散バリアの拡散特性に依存している。拡散バリアの公知の特性において、ポンプ電流から排気ガスのラムダが決定される。
【0008】
拡散バリアの拡散特性は、製造のばらつきに支配される。従って、個別の拡散特性は、広帯域ラムダセンサの信号を評価する際に考慮されなければならない。
【0009】
広帯域ラムダセンサの一例は、特許文献1に記載されている。
【0010】
評価ユニットおよび制御ユニットとして用いられる広帯域ラムダセンサを運転するための装置は、例えば特許文献2に記載されている。特許文献2に記載された制御ユニットの基本的な考え方、構造および基本機能は、本特許出願人による特許文献3に記載された、広帯域ラムダセンサのための評価および制御ユニットに概ね相当する。この場合、制御ユニットは、ASICの形状で構成されていて、CJ125若しくはCJ135の名称で公知である(本特許出願人による、“CJ135−Lambda Probe Interface IC”「CJ135ラムダプローブインターフェースIC」の製造インフォーメーション参照)。
【0011】
特許文献4には、測定室内のガスの少なくとも1つの特性を検出するための、特にガスのガス成分を検出するための方法が記載されている。この方法において、少なくとも1つのセルを有する少なくとも1つのセンサエレメントが使用される。このセルは、少なくとも1つの第1の電極と、少なくとも1つの第2の電極と、第1の電極と第2の電極とを接続する少なくとも1つの固体電解質とを有している。第1の電極は測定室からのガスによって負荷可能である。第2の電極は少なくとも1つの基準ガス室に接続されており、この基準ガス室は、ガスのガス成分の予備を蓄えるように、調整されている。この方法は、次の少なくとも2つの運転モードを有している:
少なくとも1つの測定モードを有しており、この場合、測定モードにおいて、セルはポンプセルとして駆動され、ポンプセルを通る少なくとも1つのポンプ電流から特性が推論される、
少なくとも1つの診断モードを有しており、この場合、診断モードにおいて基準ガス室の貯蔵能力が検査され、セルに印加されたネルンスト電圧によって影響を受ける少なくとも1つの測定値が検出され、この測定値から貯蔵能力が推論される。
【0012】
実際に市販されているラムダセンサの大部分は、その機能原理のために、いわゆる基準エア(本来の基準酸素)を必要とする。この基準エアは、この基準エアの酸素含有量が酸素21%またはそれより高い点で優れている。このような基準エアを提供するすべての方法は、この基準エアが十分でない酸素を含有しているか、若しくは負の酸素原子価を有する元素によって「被毒」されている、という所定のリスクを有している。このような誤った基準値の結果として、ラムダ特性曲線のずれが生じ、論理的な結論として誤ったラムダ決定が生じ、また、時としてエンジン制御器のソフトウエアに不都合な誤入力が生じる。基準エアの診断は、通常の評価回路においては大抵は不可能であり、上記残されたリスクを考慮しなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】ドイツ連邦共和国特許公開第102008002734号明細書
【特許文献2】ドイツ連邦共和国特許公開第102010000663号明細書
【特許文献3】ドイツ連邦共和国特許公開第102008001697号明細書
【特許文献4】ドイツ連邦共和国特許公開第102010039188号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
従って、本発明の課題は、広帯域ラムダセンサの前記基準エアの簡単かつ迅速な診断を実施することができる相応の方法を提供することである。
【0015】
さらに本発明は、このような方法を実施するための相応の装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
方法に関する前記課題は、診断モード中に、ポンプ電流閉ループ制御回路の切り替えが行われ、電圧測定を介して基準通路内の基準エアの品質の診断が実施されることによって、解決される。この方法によって、センサエレメント内の誤った基準通路が診断されて、場合によっては誤ったラムダ値を避けることができ、ひいては、内燃機関におけるラムダ閉ループ制御の動作信頼性が高められ、排出有害物質防止の手助けになる。
【0017】
この場合、ポンプ電流閉ループ制御回路は、センサエレメント内の酸素濃度を変えることで、高い酸素濃度を有する2つの個所間の比較測定が可能となるように、変更される。誤った基準値として判断され得る測定結果が得られると、結果として複数のシナリオが得られる。一方では、連続的な高い基準ポンプ電流によって、基準エアを洗浄し、酸素で満たすことが試みられる。他方では、誤入力によって、センサ交換が強制的に必要であると表示される。
【0018】
好適な方法変化例によれば、診断のための、最大可能な負のポンプ電流が調節される。これによって、測定室を酸素イオンの超過圧力で満たすことができる。この高い酸素分圧は、短時間で既に(典型的には<250ms後に既に)、静的状態に至り、その、新たに追加されたすべての酸素イオンの補正は、拡散バリアを通って排気ガス内へ拡散し、かつ流れることによって行われる。静的状態に達してから、時間的な変化が電圧測定を妨害することなしに、冒頭に述べた電圧測定が行われる。
【0019】
これは、また、ネルンストセルに、負の閉ループ制御電圧を要求することによっても得られる。
【0020】
この場合、調節されたネルンスト電圧が定常値を示す診断段階中に、ネルンスト電圧が評価され、+50mV〜+150mVのネルンスト電圧では、誤りのない基準エアを有する誤りのない基準通路が前提とされ、これよりも低いまたは負の電圧に調節されている場合、誤った基準エアが前提とされるようになっている。これは、相応のコンパレータによって簡単に監視され得る。
【0021】
誤りが検知されると、空気若しくは酸素で前記基準通路を集中的に満たすための前記センサエレメントの回路が要求され、その間、診断段階の時間的に直近において測定されたラムダ値が無効であると識別される。これによって、センサエレメントは、少なくとも部分的に再び再生若しくは「解毒」され得る。
【0022】
特に0〜500mVの範囲内の測定されたネルンスト電圧が、別の手段によって妥当化されると、特に高い診断信頼性が得られる。
【0023】
最大で1秒、典型的には約0.5秒の非常に短い診断経過時間に基づいて、ラムダ測定は短時間中断されるだけであるので、ほぼ隙間のない排気ガス監視が可能である。
【0024】
好適には、前記方法変化実施例を有する診断法は、広帯域ラムダセンサの耐用年数の開始時に、および/または耐用年数中に所定の間隔で実施される。これによって、耐用年数の開始時に、例えば排気ガスセンサが、長期間に亘って不適切に貯蔵されていたかどうかを、検知することができる。耐用年数中の使用は、劣化または機械的な損傷を検知することができる、という利点を提供する。これによって、一時的に「被毒された」センサは、そのラムダ信号が使用される前に、再生される。これによって、ラムダ信号を利用する機能性における、特定が困難である間違ったシーケンスエラーは避けられる。
【0025】
好適には、さらに、診断は、走行サイクル中、特に走行サイクルの開始時または終了時に一度実施するだけでよい。
【0026】
装置に関する前記課題は、制御ユニットが、前記方法変化実施例を有する前記方法を実施するための装置、特にポンプセルによってポンプ電流のポンプ電流閉ループ制御を変えるための切り替え装置、並びに前記ネルンストセルにおいてネルンスト電圧を評価するためのコンパレータを有している。この制御ユニットは、内燃機関の最優先されるエンジン制御装置の、少なくとも部分的に一体的な構成部分であってよい。この場合、機能性は、少なくとも部分的にまたは完全にソフトウエアに基づいて実行され、これは特に、非常に簡単にアダプションを可能にする。
【0027】
特に好適な装置変化例に示されているように、制御ユニットが、CJ135ASICモジュールを有していれば、この診断法を使用するための追加的な費用は比較的安価である。何故ならば、このモジュールは、通常運転に対して行わなければならない必要な切り替えを行うために、既に相応に多くの調節可能性を有しているからである。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】コネクタハウジングを備えたダブルセル型広帯域ラムダセンサのセンサエレメントの概略図である。
【
図2】ネルンスト電圧およびポンプ電流のための信号変化グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明を以下に、図面に示した実施例を用いて詳しく説明する。
【0030】
図1は、排気ガス18のラムダ値を決定するための、コネクタハウジング50を備えたフラットなダブルセル型広帯域ラムダセンサのセンサエレメント10の概略図を示す。センサエレメント10は概ね、固体電解質11より構成されている。固体電解質11は、ポンプセル20と、ネルンストセル30と加熱器16とを有している。固体電解質11は、図面では、酸素イオンを伝導するジルコン二酸化物より成る一体的な物体として示されているが、複数の固体電解質層より成る構造部として構成されてよい。
【0031】
ポンプセル20は、外側のポンプ電極21と、測定室12内に配置された内側のポンプ電極22とから成っている。外側のポンプ電極21は、保護層23によって被覆されていて、内燃機関の排気ガス18に晒されている。外側のポンプ電極21および内側のポンプ電極22は、拡散通路14の周りに環状に配置されている。拡散通路14は、排気ガスを拡散バリア13を介して測定室12へ供給する。
【0032】
測定室12の、内側のポンプ電極22とは反対側に、測定電極31が配置されている。この測定電極31は、基準通路15内に配置された基準電極32および、測定電極31と基準電極32との間に位置する固体電解質11と共に、ネルンストセル30または濃淡電池を形成する。基準通路15は、通気性の材料で満たされていて、基準ガスとしての外気に向かって開放されている。基準値が脈動する場合、基準通路15は、完全にまたは十分に閉鎖され、例えばジルコン二酸化物で満たされていてもよい。基準通路15は、基準エアまたは基準酸素を表わす。
【0033】
加熱器16は、絶縁材料17によって固体電界質11から電気的に分離されている。
【0034】
外側のポンプ電極21は、接続部APE40を介してコネクタハウジング50に接続されている。内側のポンプ電極22と測定電極31とは、並列接続されていて、共通の接続部IPN41を介してコネクタハウジング50にガイドされている。基準電極32は接続部RE42を介してコネクタハウジング50に接続されていて、加熱器16は第1の加熱接続部43および第2の加熱接続部44を介してコネクタハウジング50に接続されている。
【0035】
電極、つまり内側および外側のポンプ電極21,22、基準電極32および測定電極31は、白金より製造されている。
【0036】
広帯域ラムダセンサの運転中に、排気ガスは、拡散通路14および拡散バリア13を介して測定室12内に拡散する。測定室12内のラムダ値は、ネルンストセル30を介して、測定電極31と基準電極32との間のネルンスト電圧を測定することによって決定される。この場合、ネルンストセル30は、ラムダ=1の狭い測定窓内でラムダを決定することができる。外側のポンプ電極21と内側のポンプ電極22との間に、相応の極性を与えられた電圧を印加することによって、酸素イオンが、固体電解質11によって排気ガスから測定室12内に、または測定室12から排気ガスへポンプ供給される。
【0037】
ネルンストセル30は、例えば特許文献3に記載されているように、CJ135ASICであってよい制御ユニットにおける運転中に、基準ポンプ電流を利用して450mVの電圧に閉ループ制御されるので、ラムダセンサ内の測定室12(ラムダ−1−中空室)は、概ね無酸素であるとみなされる。これは、電源をポンプセル20に印加することによって行われる。ポンプ電極21,22間を流れるポンプ電流102(
図2参照)、およびひいては測定室12と排気ガスとの間の酸素イオンの交換を適当に閉ループ制御することによって、測定室12内のラムダ値は1の値に閉ループ制御される。この場合、測定室12内のラムダ値は、ネルンストセル30によって監視される。このために必要なポンプ電流の値は、酸素濃度およびひいては、排気ガスの決定しようとするラムダ値並びに拡散バリア13の拡散特性に基づいている。このような着想を機能させるための必須条件は、前記基準ポンプ電流によって、非常に高い酸素含有量、基準エアを有する室が提供される、ということである。
【0038】
この基準エア若しくは基準酸素が存在しなければ、印加されたポンプ電流102(
図2参照)は、もはや、センサの定義の意味で、排気ガス18の酸素含有量のための有効な値とみなされない。
【0039】
基準エアの診断中に、制御ユニット(例えばCJ135ASIC)は、診断継続時間中に、測定室12(ラムダ−1−中空室)を酸素イオンの超過圧力で満たす最大の負のポンプ電流102(
図2参照)を調節するために用いられる。最大の負のポンプ電流102は、例えばこの段階では、−10mA〜−15mAの値である。これは、ネルンストセル30における負の閉ループ制御電圧の要求を介して、または制御ユニット内に設定されたポンプ電流運転の要求によって生じる。
【0040】
前記の酸素超過圧力(高い酸素分圧)は、短時間で静的状態になり、新たに追加供給されたすべての酸素イオンの酸素超過圧力の補正は、拡散バリア13を通って排気ガス18内へ拡散し、かつ流れ込むことによって行われる。
【0041】
図2には、信号変化グラフ100に、ネルンスト電圧変化104およびポンプ電流変化105が示されており、この場合、横座標は時間103を示し、縦座標は、ネルンスト電圧101およびポンプ電流102の高さを示す。
【0042】
相応のポンプ電流102を有する、450mVで一定に閉ループ制御されたネルンスト電圧101を前提として、前記手段に従って、第1のエッジ106において約250ms内で新たな静的状態が得られる。この場合、測定室12(ラムダ−1−中空室)と基準エアとの間に、約+100mVの範囲内にあるネルンスト電圧101が形成される。何故ならば、典型的な形式で、基準エア内の酸素分圧は、いまや酸素だけが満たされている測定室12内におけるよりも、まだ高いからである。通常運転時には、ネルンスト電圧101は+450mVである。
【0043】
明らかな負電圧が形成されている場合は、誤った基準エアが前提とされているものであり、またこれが本来機能するべき場合は、センサエラーが検知されるか、または、基準エアを集中的に満たすための反応が要求され、その間、ラムダ信号は無効であるとみなされる。
【0044】
ネルンスト電圧変化104内若しくはポンプ電流変化105内の第2のエッジ107により示される、通常運転への切り替えは、ポンプ電流102が再び正しい値を表示し、かつネルンスト電圧101が再び450mVの値に調整されるまで、約200msしかかからない。診断サイクルの時間は、全部で、約1秒およびそれより小さい(典型的には<500ms)範囲内である。診断は、走行サイクル毎に1回より多く実施する必要はない。診断のための可能な時点は、例えば車両の走行動作の開始時または終了時である。
【符号の説明】
【0045】
10 センサエレメント
11 固体電解質
12 測定室
13 拡散バリア
14 拡散通路
15 基準通路
16 加熱器
17 絶縁材料
18 排気ガス
20 ポンプセル
21 外側のポンプ電極
22 内側のポンプ電極
23 保護層
30 ネルンストセル
31 測定電極
32 基準電極
40 接続部APE
41 接続部IPN
42 接続部RE
43 第1の加熱接続部
44 第2の加熱接続部
50 コネクタハウジング
100 信号変化グラフ
101 ネルンスト電圧
102 ポンプ電流
103 時間
104 ネルンスト電圧変化
105 ポンプ電流変化
106 第1のエッジ
107 第2のエッジ