(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ステップd)において前記ポリオレフィン粒子と接触する窒素の少なくとも一部は、以前にステップf)において前記ポリオレフィン粒子との接触に用いられたものである、請求項1又は2にポリオレフィン粒子の処理方法。
【背景技術】
【0002】
気相重合工程は、エチレン又はプロピレンの単独重合、或いはエチレン又はプロピレンとその他のオレフィンとの共重合のようなオレフィンの重合に用いられる経済的な工程である。上記気相重合を行うのに適した反応器としては、例えば流動床反応器、攪拌気相反応器又は別の相互連結される2つの異なる気相重合区域を有するマルチゾーン循環反応器が挙げられる。通常、このような工程は単量体及び共単量体、そして往々にして重合希釈剤として機能するその他のガス成分である窒素又はアルカン、或いは分子量調節剤又は低分子量反応生成物に該当する水素をさらに含む気相で行われる。通常、取得した生成物は一般的に微粒子状触媒固体を含む重合触媒系によって形成される固形ポリオレフィン粒子である。
【0003】
生成物質を連続的又は断続的に気相重合反応器から取り出す場合、排出された生成物は純粋なポリオレフィンだけでなく粒間ガス又は分解炭化水素に該当する気相の一部を含有する。環境上、安全上及び品質上の理由から、上述した気相の混入部分は、混入部分の成分が環境に影響を及ぼすためポリオレフィン粒子から取り除く必要があるが、気体状の炭化水素は下流側の装備で爆発性混合物を形成することがあり、又、最終的なポリオレフィン重合体内の非重合残余成分は、悪臭等の品質上の問題を引き起こす可能性がある。さらに、未反応の単量体及び共単量体は重合工程に再循環させることが好ましい。
【0004】
ポリオレフィン粒子から気相の混入部分を取り除くための一般的な方法は、粒子を不活性ガスストリーム、一般的に逆流状態にあるストリームに接触させることである。このようなステップは「脱気」又は「パージ」と呼ばれる。このような脱気又はパージステップは往々にして、例えば触媒及び/又は共触媒を水分と反応させる方法により、重合触媒及び/又は共触媒を不活性化するステップと組み合わされる。
【0005】
例えば、EP339122A1は、単一容器内で未重合の気体状単量体を固形オレフィン重合体から取り除き、前記固形オレフィン重合体に存在するチーグラー・ナッタ触媒と有機金属触媒の残余物を不活性化する2段階での方法を開示している。上述した固形オレフィン重合体は、好ましくは純粋窒素である第1パージガスとパージ容器の上部区域で向流的に接触した後、パージ容器の下部区域に移送され、そこで水分と、好ましくは純粋窒素及び蒸気を含有する第2パージガスと向流的に接触する。
【0006】
US5,071,950は、結果的に得たエチレン共重合体を減圧区域に移送し、気体状エチレンで1次洗浄し窒素及び蒸気の混合物で2次洗浄する2段階の方式により固形共重合体から残余単量体と悪臭及び臭い成分を取り除くエチレン/α−オレフィン共重合体の連続重合工程を開示している。これと同様に、EP683176A1は、気相内でエチレン(共)重合体を連続製造する工程を開示している。ここでは、固形の(共)重合体が減圧区域を通過した後、該(共)重合体に対し、(1)活性触媒残余物の不活性化を伴わない洗浄、次いで(2)窒素、水分及び酸素の気体状混合物での不活性化洗浄を行う。不活性化未同伴洗浄に用いられるガスは重合区域で循環する気体状反応混合物であることが好ましい。
【0007】
WO2006/082007A1は、気相反応器内におけるエチレン重合工程を開示している。ここでは、取得した重合体粒子を反応器から排出し、付随的に排出される反応器ガスの主要部分から分離した後に脱気する。上述した脱気は、付随的に排出される反応器ガスから分離したプロパン留分を用いて行われる。
【0008】
WO2008/015228A2は、C
3−C
5アルカンから選ばれる重合希釈剤の存在下に1種以上のα−オレフィンの気相触媒重合によって生成したポリオレフィンの仕上げ処理を行う工程を開示している。ここで、気相反応器から排出されたポリオレフィン粒子は、前記ポリオレフィン粒子を少なくとも85mol%のC
3−C
5アルカンからなるガスストリームと向流的に接触させる第1脱気ステップと、前記ポリオレフィン粒子を蒸気と向流的に接触させる第2脱気ステップとを経る。蒸気がポリオレフィン粒子との接触により部分的に
凝縮されるため、上記の工程は後続の乾燥ステップが必要となる。
【0009】
これら工程は、気相重合で製造されたポリオレフィン重合体に対する十分な脱気の可能性を提示している。しかしながら、上記の工程は特にC
3−C
5アルカンを重合希釈剤として用いて重合を行う場合、残余物の量を所望のレベルまで低めるために投資コストはもちろん稼働費用の面でも相当の努力を要するという欠点がある。
【0010】
したがって、本発明の目的は、従来技術の欠点を克服し、重合希釈剤として機能するC
3−C
5アルカンの存在下に気相重合で取得したポリオレフィン粒子の脱気を行うことである。上述した気相重合は、投資コスト及び稼働費用面において安価に実施可能であり、ポリオレフィン粒子と同時に排出される単量体及び共単量体のほとんどを再循環させ、揮発性成分を非常に低い水準で含有するポリオレフィン生成物を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、重合触媒系の存在下に1種以上のオレフィンの気相重合で取得したポリオレフィン粒子の処理方法を提供する。上記の重合に好適に用いられるオレフィンとしては、特に1−オレフィン、すなわち末端二重結合を有する炭化水素が挙げられるが、これに限定されない。一方、官能化オレフィンの不飽和化合物も好適なオレフィン単量体となり得る。直鎖又は分枝状のC
2−C
12の1−アルケン、特にエチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン等の直鎖のC
2−C
10の1−アルケン;4−メチル−1−ペンテン等の分枝状のC
2−C
10の1−アルケン;1,3−ブタジエン、1,4−ヘキサジエン、1,7−オクタジエン等の共役又は非共役ジエンが好ましい。好適なオレフィンとしては、1個以上の環系を有していてもよい環状構造の一部が二重結合であるオレフィン、例えばシクロペンテン、ノルボルネン、テトラシクロドデセン、メチルノルボルネン、或いは5−エチリデン−2−ノルボルネン、ノルボルナジエン、エチルノルボルナジエン等のジエンが含まれる。2種以上のオレフィンの混合物を重合することもできる。
【0016】
本方法は特にエチレン又はプロピレンの気相単独重合又は共重合に適合しており、中でもエチレンの単独重合又は共重合に好適に用いることができる。プロピレン重合に好適に用いられる共単量体は40重量%以下のエチレン及び/又は1−ブテンであり、より好ましくは0.5重量%〜35重量%のエチレン及び/又は1−ブテンである。エチレン重合の共単量体としては、C
3−C
8の1−アルケン、特に1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン及び/又は1−オクテンがあり、20重量%以下が好ましく、0.01重量%〜15重量%がより好ましく、0.05重量%〜12重量%が特に好ましい。中でもエチレンが0.1重量%〜12重量%の1−ヘキセン及び/又は1−ブテンと共重合される工程が最も好ましい。
【0017】
オレフィンの重合には通常のオレフィン重合触媒を全て用いることができる。すなわち、酸化クロム系のフィリップス触媒、チタン系のチーグラー又はチーグラー・ナッタ触媒、又はシングルサイト触媒を用いて重合を行うことができる。本発明の目的において、シングルサイト触媒は化学的に均一な遷移金属配位化合物系触媒である。特に好適なシングルサイト触媒としては、σ結合又はπ結合のバルキー有機配位子を含む触媒、すなわちモノ−Cp錯体系触媒、ビス−Cp錯体系触媒(一般的にメタロセン触媒として知られている)、又は後期遷移金属(特に鉄−ビスイミン錯体)系触媒が挙げられる。さらに、上記の触媒のうち2種以上の混合物をオレフィン重合に用いることもできる。混合触媒はよくハイブリッド触媒と呼ばれる。これらオレフィン重合用触媒の製造及び使用方法は周知となっている。
【0018】
チーグラータイプ触媒も好適に用いられるが、中でも特にチタン又はバナジウム化合物、マグネシウム化合物、必要に応じて電子供与体化合物及び/又は担持体として機能する微粒子状無機化合物を含む触媒が好ましい。このようなチーグラータイプ触媒は、一般的に共触媒の存在下に重合される。好ましい共触媒には、元素周期表の第1族、第2族、第12族、第13族又は第14族に属する金属の有機金属化合物、中でも第13族に属する金属の有機金属化合物、特に有機アルミニウム化合物が該当する。好ましい共触媒の例としては、有機金属アルキル、有機金属アルコキシド又は有機金属ハロゲン化合物が挙げられる。
【0019】
取得したポリオレフィン粒子は、触媒の形態と大きさ、及び重合条件によって大よその標準的な形態と大きさを有することとなる。ポリオレフィン粒子の平均粒径は用いられた触媒に左右され、一般的に数百〜数千μmである。クロム触媒の場合、平均粒径は一般的に約300〜約1600μmであり、チーグラータイプ触媒の場合、平均粒径は一般的に約500〜約3000μmである。
【0020】
ポリオレフィン重合体を取得する方法は、気相重合、すなわち固形重合体を単量体からなる気相から取得する方法である。上記の重合は、一般的に0.1〜10MPa、好ましくは0.5〜8MPa、特に好ましくは1.0〜3MPaの圧力で行われる。重合温度は通常30℃〜160℃であり、好ましくは65℃〜125℃である。
【0021】
適合する反応器としては、例えば、攪拌気相反応器、マルチゾーン気相反応器又は気相流動床反応器が挙げられる。これら反応器は当業者には既知となっている。攪拌気相反応器は、水平或いは垂直方向に攪拌が行われる。
【0022】
好ましい反応器は、流動床反応器、すなわち下側からガスを導入することによって流動状態を維持する重合体粒子の重合床からなる反応器である。上記ガスを一般的に反応器の上端で排出され、冷却を通じて重合熱が取り除かれた後、反応器の下端で反応器内部に再循環される。本発明の方法において、循環する反応ガスは一般的に重合対象のオレフィン、重合希釈剤として機能するC
3−C
5アルカン、必要に応じてその他の不活性ガス(窒素又はアルカン)及び/又は水素等の分子量調節剤からなる混合物である。重合を
凝縮又は超高度
凝縮モードで行ってもよく、この場合、循環ガスの一部は露点未満の温度まで冷却されて液相と気相とに分離され、或いは二相混合物として共に反応器に戻り反応ガスを冷却する蒸発エンタルピーとしてさらに用いられる。
【0023】
その他の好ましい反応器としては、例えばWO97/04015及びWO00/02929に開示された、2つの相互連結される重合区域を有するマルチゾーン循環反応器が挙げられる。相互連結される重合区域は、成長した重合体粒子が高速流動や搬送条件によって上方へ流れる上昇部と、成長した重合体粒子が重力の作用によって密集状態で流れる下降部とを含む。上昇部を離れた重合体粒子は下降部に進入し、下降部を離れた重合体粒子は上昇部に再導入されて2つの重合区域間における重合体の循環状態を形成する。重合体はこれら2つの区域を数回交互に通過する。さらに、上昇部と下降部の重合条件を異なる構成とすることで、1つのマルチゾーン循環反応器において2つの重合区域を異なる重合条件で運用することもできる。このために、重合体粒子が混入されている上昇部を離れたガス混合物の一部又は全部が下降部に進入することを阻止できる。例えば、ガス及び/又は液体の混合物の状態の遮断液を下降部、好ましくは下降部の上部に供給することで阻止することができる。遮断液は、上昇部に存在するガス混合物とは異なるが、適切な成分を含有していなければならない。添加する遮断液の量を調節して、重合体粒子流に対向する、特に頂部で生成されたガスの上昇流が、上昇部から出た粒子が混入されているガス混合物の遮断膜として機能できるようにする。この場合、1つのマルチゾーン循環反応器から2つの異なるガス組成区域を得ることができる。さらに、補充用の単量体、共単量体、水素等の分子量調節剤及び/又は不活性流体を下降部の任意の地点、好ましくは遮断液供給点よりも下部において導入することができる。したがって、下降部における単量体、共単量体及び水素の濃度を多様に変化させ、その結果として重合条件を容易に差別化できる。
【0024】
本発明の方法は、特にエチレンの単独重合又は共重合の場合、重合希釈剤として機能するC
3−C
5アルカンの存在下に、好ましくはプロパンの存在下に行われる。
【0025】
本発明によれば、処理方法のステップa)において、気相重合で取得したポリオレフィン粒子が、気相重合反応器から排出されて第1脱気容器に移送される。反応器からの排出は空気圧によって、又は機械的排出系によってなされるが、空気圧による排出が好ましい。最も簡単かつ好ましくは、排出は重合反応器とその下流側に位置する最初の容器の間の圧力勾配によってなされる。ポリオレフィン粒子は気相重合反応器から連続的に排出されることが好ましい。
【0026】
反応器から排出されたポリオレフィン粒子は、付随的に排出される反応ガスの主要部分から分離されるが、該分離ステップとポリオレフィン粒子の第1脱気ステップとは、時間と空間の両方の観点からともに又は別々に行われてもよい。つまり、好ましい実施形態において、固形ポリオレフィン粒子は一般的に重合反応器の圧力と第1脱気容器の圧力の範囲の圧力で、好ましくは0.5MPa〜3MPa、より好ましくは1MPa〜2MPaの圧力で作動する分離容器内で反応ガスの主要部分から分離され、その後ポリオレフィン粒子は第1脱気容器に移送され、処理方法のステップb)、すなわち固形ポリオレフィン粒子と少なくとも85mol%のC
3−C
5アルカンからなるガスストリームの接触ステップに進む。或いは、断続的排出の場合、ポリオレフィン粒子を第1脱気容器で直接排出した後、同一容器で反応ガスの主要部分をポリオレフィン粒子から分離し、前記粒子を少なくとも85mol%のC
3−C
5アルカンからなるガスストリームと接触させてもよい。本発明の他の好ましい実施形態においては、ポリオレフィン粒子は第1脱気容器に直接排出され、該脱気容器でポリオレフィン粒子は、付随的に排出される反応ガスの主要部分から同時に分離されると共に、少なくとも85mol%のC
3−C
5アルカンからなるガスストリームと接触することとなる。さらに、第1脱気ステップb)を2個以上の第1脱気容器で並行して行うことも可能である。
【0027】
気相重合反応器から出たポリオレフィン粒子と少なくとも85mol%のC
3−C
5アルカンからなるガスストリームとの接触が向流的に行われることが好ましい。好ましくはポリオレフィン粒子は第1脱気容器の上部側で導入され、重力により下向きに移動し、脱気容器の底部側に導入されて逆流するガスストリームと接触することとなる。該ガスストリームは、少なくとも85mol%、好ましくは95mol%を超えるC
3−C
5アルカン、すなわちプロパン、ブタン又はペンタン、或いはこれらの混合物もしくはこれらの異性体の混合物からなる。該C
3−C
5アルカンは、気相重合反応器で重合希釈剤として用いられたC
3−C
5アルカンと同一の物質であることが好ましい。C
3−C
5アルカンはプロパンであることが特に好ましい。少なくとも85mol%のC
3−C
5アルカンからなるガスストリームは、処理対象であるポリオレフィン粒子1000kgに対し、10kg〜200kgの量で脱気容器に供給されることは好ましい。
【0028】
少なくとも85mol%のC
3−C
5アルカンからなるガスストリームとポリオレフィン粒子の接触に続いて、未反応単量体、共単量体、オリゴマー及びその他の炭化水素を豊富に含有するガス混合物を第1脱気容器から、好ましくは頂部から引き出す。好ましくは、該ガス混合物はアルカン及び単量体回収ユニットに運搬される。ここで、ガス混合物は、重合工程に再循環することが容易な精製された状態の留分に分離される。本発明による処理方法のステップb)のガスストリームを形成する物質は、前記アルカン及び単量体回収ユニットから直接出されることが好ましい。ガス混合物を分離及び精製する方法と装置は、該当分野において周知の事実であり、例えばWO2006/082007A1に開示されている。第1脱気容器から引き出されたガス混合物は、コンプレッサーによってアルカン及び単量体回収ユニットに運搬されることが好ましい。運搬ステップの過程で、ガス混合物が熱交換器を通過するようにしてもよい。
【0029】
ポリオレフィン粒子の処理方法のステップb)は、好ましくは0.1MPa〜0.4MPa、より好ましくは0.12MPa〜0.35MPa、特に好ましくは0.15MPa〜0.3MPaの圧力、及び好ましくは50℃〜120℃、より好ましくは60℃〜100℃、特に好ましくは70℃〜90℃の温度で行われる。ポリオレフィン粒子の第1脱気容器における平均滞留時間は5分〜5時間であり、好ましくは10分〜4時間であり、特に好ましくは15分〜2時間である。
【0030】
処理方法のステップb)の終了後、4個以上の炭素原子を有する炭化水素、例えば1−ブテン、1−ヘキセン又はヘキサンとポリオレフィン粒子との重合体の残留負荷は、炭化水素の損失が最大限少なくなるように維持するために、低くなければならない。残留負荷は2500重量ppm以下であることが好ましく、1000重量ppm以下であることが特に好ましい。
【0031】
第1脱気容器における処理の終了後、ポリオレフィン粒子は本発明による方法のステップc)において第2脱気容器に移送される。該脱気容器内で、ステップd)として、ポリオレフィン粒子は窒素及び蒸気からなるストリームと接触する。重力と第1及び第2脱気容器間の圧力勾配とによってポリオレフィン粒子が移送されることが好ましい。
【0032】
第2脱気容器で、ポリオレフィン粒子と、窒素及び蒸気からなるストリームとが向流的に接触することが好ましい。この場合、ポリオレフィン粒子は第2脱気容器の頂部から導入され、重力により下向きに移動し、脱気容器の底部側に導入されて逆流する窒素及び蒸気からなるストリームと接触することとなる。
【0033】
第2脱気容器でポリオレフィン粒子を脱気するストリームは、第2脱気容器内部の条件で
水の凝縮が発生しない量の蒸気からなる。該ストリームは、好ましくは2mol%〜20mol%、より好ましくは5mol%〜15mol%の水蒸気を含む。蒸気は過熱又は飽和蒸気の形態で添加されることが好ましく、わずかに過熱された蒸気であることが特に好ましい。本発明の好ましい実施形態において、窒素及び蒸気からなるストリームを形成する窒素の少なくとも一部は未使用の窒素ではなく、第2脱気容器で第3脱気容器に移送されたポリオレフィン粒子と、以前に接触が行われた第3脱気ステップの窒素をリサイクルしたものである。窒素及び蒸気からなるストリームは、処理対象であるポリオレフィン粒子1000kg当たり10kg〜150kgの量で第2脱気容器に供給されることが好ましく、処理対象であるポリオレフィン粒子1000kg当たり20kg〜80kgの量で供給されることが特に好ましい。
【0034】
窒素及び蒸気からなるストリームとポリオレフィン粒子との接触に続いて、未反応単量体、共単量体、オリゴマー及びその他の炭化水素を豊富に含有すると共に重合触媒系の成分と水蒸気の反応による反応混合物を含むガス混合物を第2脱気容器から、好ましくは頂部から引き出す。本発明の好ましい実施形において、該ガス混合物はオフガスとして該当重合系から排出され、簡単な構造の中和ユニットを通過した後、例えば触媒酸化ユニットを経て廃棄される。
【0035】
水蒸気が触媒成分、特に重合触媒系の有機アルミニウム化合物を不活性化する機能を主に担うことから、本発明の方法の実施において、第2脱気容器内で蒸気を相対的に少量用いることもできる。
【0036】
ポリオレフィン粒子の処理方法のステップd)は、好ましくは0.1MPa〜0.35MPa、より好ましくは0.11MPa〜0.25MPaの圧力と、好ましくは50℃〜120℃、より好ましくは60℃〜100℃、特に好ましくは70℃〜90℃の温度で行われる。ポリオレフィン粒子の第2脱気容器における平均滞留時間は5分〜2時間であり、好ましくは10分〜1時間である。
【0037】
処理方法のステップd)の終了後、4個以上の炭素原子を有する炭化水素、例えば1−ブテン、1−ヘキセン又はヘキサンとポリオレフィン粒子との重合体の残留負荷は1000重量ppm以下であることが好ましく、400重量ppm以下であることが特に好ましい。
【0038】
第2脱気容器における処理の終了後、ポリオレフィン粒子は本発明による方法のステップe)において第3脱気容器に移送される。該脱気容器内で、ステップf)として、ポリオレフィン粒子が窒素ストリームと接触する。ステップf)において以前ポリオレフィン粒子と接触された、すなわち第3脱気容器から引き出されて第2脱気容器から第3脱気容器への粒子移送用運搬媒体として再利用される窒素ストリームによってポリオレフィン粒子が移送されることが好ましい。さらに、第3脱気ステップf)を2つ以上の第3脱気容器で並行して行うことも可能である。
【0039】
第3脱気容器で、ポリオレフィン粒子と窒素ストリームは向流的に接触することが好ましい。この場合、ポリオレフィン粒子は第2脱気容器の頂部から導入され、重力により下向きに移動し、脱気容器の底部側に導入されて逆流する窒素ストリームと接触することとなる。
【0040】
窒素ストリームとポリオレフィン粒子との接触に続いて、未反応単量体、共単量体、オリゴマー及びその他の炭化水素を豊富に含有するガス混合物を第3脱気容器から、好ましくは頂部から引き出す。該ガス混合物は好ましくは熱交換器で冷却されて圧縮された後、第2脱気容器で脱気に用いられるガスストリームの一部を構成する際に再使用され、或いは他の熱交換器でさらに冷却された後、第2脱気容器から第3脱気容器へのポリオレフィン粒子移送に再使用されてもよい。
【0041】
ポリオレフィン粒子の処理方法のステップf)は、好ましくは0.1MPa〜0.2MPa、より好ましくは0.1MPa〜0.15MPaの圧力と、及び好ましくは50℃〜120℃、より好ましくは60℃〜100℃、特に好ましくは70℃〜90℃の温度で行われる。ポリオレフィン粒子の第3脱気容器における平均滞留時間は5分〜10時間であり、好ましくは10分〜6時間であり、特に好ましくは20分〜4時間である。
【0042】
処理方法のステップf)の終了後、4個以上の炭素原子を有する炭化水素、例えば1−ブテン、1−ヘキセン又はヘキサンとポリオレフィン粒子との重合体の残留負荷は50重量ppm以下であることが好ましい。
【0043】
第3脱気容器における処理の終了後、ポリオレフィン粒子は追加的な作業、例えば重合体添加剤の供給及び/又は押出ステップにおけるペレット化のために移送される。
【0044】
本発明の好ましい実施形態において、第3脱気容器は一部のみがポリオレフィン粒子で満たされる。第3脱気容器内の空き空間は、追加作業のためにポリオレフィン粒子第3脱気容器からの移送が中止された場合、或いはステップe)のポリオレフィン粒子が第2脱気容器から第3脱気容器に一定の速度を維持しながら連続的に移送される場合に、少なくとも3時間、好ましくは4時間ポリオレフィン粒子をさらに導入する上で十分な容積である。このような方式で第3脱気容器の運用が行われる場合、該容器はステップf)の処理に用いられるハウジングとして機能するだけでなく、例えばブレード交換のため押出機を停止させる間にポリオレフィン粒子の下流側作業が一時的に中断されたときの緩衝材としても機能する。したがって、一定の速度で重合を続け、下流側の作業が再開されるまで生成されたポリオレフィン粒子を第3脱気容器に一時的に貯留することが可能になる。第3脱気容器が緩衝容器として機能するように重合系を構成すると、第3脱気容器の下流側、及び押出機等の溶融混合装置の上流側に緩衝ユニットをさらに設ける必要がなくなる。
【0045】
図1は、本発明の方法によって取得したポリオレフィン粒子を処理する重合系を概略的に示したものである。
【0046】
気相重合反応器(1)は、ポリオレフィン粒子の流動床(2)とガス分配グリッド(3)、及び減速区域(4)を含む流動床反応器である。減速区域(4)は、一般的に反応器の流動床部分の直径よりも大きな直径を有する。ポリオレフィン床は、反応器(1)の底部に位置するガス分配グリッド(3)を通じて供給されたガスが上方へ流れることによって流動状態を維持する。再循環ライン(5)を通じて減速区域(4)の頂部を離れた反応ガスのガスストリームがコンプレッサー(6)によって圧縮され、熱交換器(7)に移送されて冷却され、特定位置(8)にあるガス分配グリッド(3)の下部の地点で流動床反応器(1)の底部に再循環される。再循環ガスは、必要に応じて熱交換器で再循環ガス成分の1種以上の露点よりも低い温度まで冷却され、
凝縮物質と共に、すなわち
凝縮モードで反応器が作動するようにする。再循環ガスは、未反応単量体の他にさらに重合希釈剤として機能するC
3−C
5アルカンを含む。補充用の単量体、分子量調節剤及び工程添加剤を多くの位置で、例えばコンプレター(6)の上流側に位置するライン(9)を通じて反応器(1)の内部に供給することが可能である。これは発明の範囲を限定するものではない。一般的に、触媒は好ましくは流動床(2)の下部に位置するライン(10)を通じて反応器(1)の内部に供給される。
【0047】
流動床反応器(1)で取得したポリオレフィン粒子は、ライン(11)を通じて排出され、プロパンのガスストリームとポリオレフィン粒子とが接触する脱気容器(12)に供給される。しかし、ポリオレフィン粒子を脱気容器(12)に直接排出することに代え、先ず分離容器(図示せず)にポリオレフィン粒子を排出し、ポリオレフィン粒子を付随的に排出される反応ガスの主要部分から分離した後、分離容器から脱気容器(12)に粒子を移送する可能である。プロパンは脱気容器(12)の底部の特定位置(13)で供給されてポリオレフィン粒子流に対し逆流して上方へ流れる。ライン(14)を通じて脱気容器(12)を離れたガスは、特定位置(13)で供給されたプロパンの他、流動床反応器(1)からポリオレフィン粒子と付随的に排出される反応ガス、ポリオレフィン粒子から出たガス成分を含む。ライン(14)を通じて脱気容器(12)を離れたガスストリームは、熱交換器(15)で冷却され、コンプレッサー(16)によってプロパン及び単量体回収ユニット(17)に移送される。精製された単量体及び精製されたプロパンは、該当回収ユニットから1つ以上のライン(18)を通じて流動床反応器(1)に再循環される。さらに、精製されたプロパンはライン(19)を通じてプロパン及び単量体回収ユニット(17)から脱気容器(12)に供給されて第1脱気ステップに用いられる。
【0048】
脱気容器(12)の底部でポリオレフィン粒子が引き出され、重力により第2脱気容器(20)に移送される。ポリオレフィン粒子は、脱気容器(20)の底部の特定位置(21)で内部に供給され、ポリオレフィン粒子流に対して逆流して上方へ流れる窒素と蒸気からなるストリームと接触する。脱気容器(20)の内部の条件は
水の凝縮が発生しない方式で選択される。
【0049】
ライン(22)を通じて脱気容器(20)を離れたガスはオフガスとして重合系から放出される。第2脱気ステップでポリオレフィン粒子を処理するガス混合物は、ライン(23)を通じて供給された蒸気と窒素で構成されている。該窒素は、ライン(24)を通じて供給された未使用窒素、又はライン(25)を通じて後続の第3脱気ステップから運ばれてきた再使用窒素であってもよい。少なくとも特定位置(21)で脱気容器(20)に供給された窒素の主要部分は、ライン(25)を通じて運ばれてきた再使用窒素であることが好ましい。
【0050】
脱気容器(20)の底部でポリオレフィン粒子が引き出され、ライン(27)を通じて運ばれてきた再使用窒素によって第3脱気容器(26)に移送される。第3脱気容器(26)で、ポリオレフィン粒子は、特定位置(29)でライン(28)を通じて供給された未使用窒素である窒素ストリームと向流的に接触する。ライン(30)を通じて第3脱気容器(26)を離れたガスは熱交換器(31)で冷却され、コンプレッサー(32)によって圧縮された後、2つのライン(25)に供給されて第2脱気容器(20)におけるガスストリームの一部として再び用いられるか、熱交換器(33)に供給されて冷却された後にライン(27)を通じてポリオレフィン粒子を脱気容器(20)から脱気容器(26)に移送することに用いられる。
【0051】
脱気容器(26)の底部でポリオレフィン粒子が引き出され、ライン(34)を通じて追加的な作業、例えば重合体添加剤の供給及び/又は押出ステップにおけるペレット化のために移送される。
【0052】
本発明は、さらに気相重合反応器内で重合触媒系及び重合希釈剤として機能するC
3−C
5アルカンの存在下に1種以上のオレフィンの気相重合を行うことにより、ポリオレフィン重合体、好ましくはエチレンの単独重合体又は共重合体を製造する方法に関する。ここで取得したポリオレフィン粒子は上述した方法によって処理される。
【0053】
本発明による方法の利点は、重合触媒系の不活性化を行う脱気容器のサイズが比較的小さいということである。重合触媒系の不活性化は結果的に腐食性副産物を生成し、該副産物と接触する物質は耐食性とされる必要があるが、本発明の場合、比較的小さなサイズの脱気容器1つのみを耐食性に設計すればよい。したがって、本発明によるポリオレフィン粒子の処理用装置に対する投資コストを従来技術による装置に比べて減らすことができる。
【0054】
さらに、本発明の方法はポリオレフィン粒子を脱気するので、ポリオレフィン粒子と同時に排出される単量体及び共単量体のほとんど主要部分を重合に再循環させることができ、取得したポリオレフィン生成物は感覚刺激性に優れ、悪臭を防止でき、稼働費用が低く、新しく供給するパージ物質の量を相対的に少なくするため、費用面での効率性が高い。
【実施例】
【0055】
2mmの厚さの圧縮成形板の密度をDIN EN ISO 1183−1:2004の方法A(沈澱)によって判定した。圧縮成形板は所定の熱履歴によって製造した。180℃、20MPaで8分間圧着し、続いて沸騰水で30分間結晶化させた。
【0056】
メルトフローレートMFR
2.16はDIN EN ISO 1133:2005の条件Dにより温度190℃、負荷2.16kg下で判定した。
【0057】
製造したエチレン共重合体内の揮発性有機和合物の含有量は静的ヘッドスペース押出法によって測定した。本方法では、4gのエチレン共重合体の試料をオーブンにより130℃で60分間加熱する。重合体試料から放出された気相の一部をガスクロマトグラフィー装置GC−MS Agilent 6890−5973Nに注入して異なる有機化合物を検出した。
【0058】
実施例1
重合条件
1−ヘキセンを共単量体として用いて、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)を
図1に示す流動床反応器で製造した。
【0059】
重合触媒としては、
−酢酸エチルを内部供与体化合物として用いる、WO2004/106388A2の実施例1に記載の手順により製造したチタン固形触媒成分、
−共触媒として機能する、トリイソブチルアルミニウム(TIBAL)と塩化ジエチルアルミニウム(DEAC)を重量比7:1で混合した混合物、
−外部供与体として機能する、テトラヒドロフランを含むチーグラー・ナッタ触媒を用いた。
【0060】
上述した固形触媒成分を触媒活性化系に共触媒及び外部供与体と共に供給した。共触媒/固形成分の重量比は10、共触媒/外部供与体の重量比は7であった。上述した触媒成分はプロパンと予め50℃で60分間接触させた。
【0061】
活性化系を離れた後、活性化された触媒を流動床反応器(1)に供給して、重合希釈剤として機能するプロパンの存在下に1−ヘキセンとエチレンを共重合した。分子量調節剤として水素を用いた。エチレンと1−ヘキセンとの重合は、温度85℃、圧力2.5MPaで実施した。気体状反応混合物の組成は、エチレン30mol%、1−ヘキセン5mol%、水素5mol%及びプロパン60mol%であった。
【0062】
結果的に取得したLLDPE共重合体の密度は0.919g/cm
3、MFR
2.16は1.0g/10minであった。重合体粒子の平均粒径は約1200μmであった。
【0063】
第1脱気ステップ
LLDPE粒子50kg/hを流動床反応器(1)から連続的に排出して第1脱気容器(12)の頂部に移送した。
【0064】
プロパン99mol%とエチレン1mol%を含有するガスストリームを前記脱気容器の底部で連続的に導入した。LLDPE粒子は重力により脱気容器に沿って下方に移動してプロパン99mol%を含有するガスストリームと向流的に接触した。
【0065】
オリゴマー及び重質炭化水素を豊富に含有するプロパンを第1脱気容器の頂部で取得した。プロパン、オリゴマー及び重質炭化水素を含むガス混合物をプロパン及び単量体回収ユニット(17)に移送して、プロパン99mol%を含有し、第1脱気容器(12)の底部で連続的に導入された上記ストリームを得た。
【0066】
第1脱気容器(12)は、温度75℃、圧力0.25MPaで操作を行った。第1脱気容器におけるLLDPE粒子の平均滞留時間は約1時間であった。
【0067】
第1脱気ステップで重合体粒子に吸着された、炭素原子を4個以上有する炭化水素のほとんどと1−ヘキセンの第1除去を行った。その後、LLDPE粒子は第1脱気容器(12)から引き出されて第2脱気容器(20)に運搬された。
【0068】
第2脱気ステップ
第1脱気容器(12)から引き出されたLLDPE粒子を第2脱気容器(20)の頂部で内部に導入した。LLDPE粒子は重力により脱気容器に沿って下方に移動して、第2脱気容器(20)の底部で導入された窒素及び蒸気を含有するガスストリームと向流的に接触した。
【0069】
第2脱気容器(20)に供給された窒素の総量は、処理対象であるポリオレフィン粒子1000kg当たり窒素40kgに対応する2kg/hであり、供給された蒸気の量は約0.1kg/hであった。第2脱気容器は温度70℃で操作を行い、重合体粉末の滞留時間は20分であった。プロパン、オリゴマー及び重質有機化合物を豊富に含有する窒素/蒸気ストリームは第2脱気容器(20)の頂部から排出された。続いてLLDPE粒子を第2脱気容器(20)から引き出し、第3脱気容器(26)に運搬した。
【0070】
第3脱気ステップ
第2脱気容器(20)から排出された後、LLDPE粒子は、貯蔵及びバッファサイロとしても機能する第3脱気容器(26)で窒素流によってさらにパージされた。第3脱気容器(26)内でLLDPE粒子は重力により下方に移動して窒素ストリームと向流的に接触した。第3脱気容器(26)の操作温度は70℃であり、操作水準は最大許容水準の25%に維持した。第3脱気容器(26)の頂部から残余の炭化水素を含有する窒素ストリームを取得した。該ストリームはコンプレッサー(32)で圧縮され、一部はLLDPE粒子を第2脱気容器(20)から第3脱気容器(26)に移送する際に再使用され、一部は第2脱気容器(20)に未使用窒素及び蒸気と共に供給される窒素として用いられた。
【0071】
第3脱気容器(26)から排出されたLLDPE粒子の試料を用いて、揮発性有機和合物の含有量を測定して以下の結果を得た(単位:重合体1g当たり重量ppm)。
C
6炭化水素(飽和及び不飽和;分枝状及び直鎖):10ppm
イソ−C
8炭化水素:5ppm
ノルマルC
8炭化水素:0ppm
n−C
10炭化水素:8ppm
n−C
12炭化水素:15ppm
n−C
14炭化水素:9ppm
n−C
16炭化水素:3ppm
【0072】
データによると、本発明によるポリオレフィン粒子の処理方法は、処理されたポリオレフィン粒子内でオリゴマー及びC
5を超過する(すなわち炭素原子が5個よりも多い)炭化水素の総重量比を50重量ppm未満の値まで低減する。その結果、取得したLLDPE重合体は不快な悪臭を発生させることがなく、食品及び医薬品用の可塑性製品の製造に好適に採択することができる。