(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
一の側面において、本明細書に開示される実施形態は、フェイスマスク、毛穴シート(pore strip)、角栓リムーバー、除毛剤(epilatory)、及び他の化粧品用途において有用な化粧品組成物に関する。別の側面において、本明細書に開示される実施形態は化粧品組成物に関し、該化粧品組成物は、付着強度、柔らかさ、引張強度、活性送達、又は他の様々な機械的特性等の選択された特性を提供することができる。さらに別の側面において、本明細書に開示される実施形態は、選択された機械的特性又は機械的特性の組み合わせ、すなわち機械的特性セットを提供するための、化粧品組成物の設計又は選択に関する。
【0012】
本明細書の実施形態による化粧品組成物は、水、少なくとも1つのポリビニルアルコールコポリマー、及び任意で、1つ又はそれより多い添加剤を含んでよい。例えば、いくつかの実施形態では、本明細書の実施形態による化粧品組成物は、水を40〜80重量パーセント;少なくとも1つのポリビニルアルコールコポリマーを3〜30重量パーセント、例えば5〜30重量パーセント;及び、1又はそれより多い添加剤を40重量パーセントまで含んでよい。他の実施形態では、本明細書の実施形態による化粧品組成物は、水を45〜70重量パーセント;少なくとも1つのポリビニルアルコールコポリマーを10〜20又は10〜30重量パーセント;及び、1又はそれより多い添加剤を40重量パーセントまで含んでよい。さらに他の実施形態では、本明細書の実施形態による化粧品組成物は、水を50〜60重量パーセント;少なくとも1つのポリビニルアルコールコポリマーを12〜15重量パーセント;及び、1又はそれより多い添加剤を35重量パーセントまで含んでよい。
【0013】
ポリビニルアルコールコポリマーを合成するためには、これらに限定されないが、フリーラジカル重合、グラフト法、又はレドックス開始等の任意の既知のプロセスを使用できる。例えば、本明細書の実施形態において有用なコポリマーは、特に、バルク重合、溶液重合、乳化重合、及び懸濁重合を介した、ビニルエステルモノマーとコモノマーの共重合によって形成できる。ビニルエステルモノマーは、例えば、特に、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、酪酸ビニル、ピバル酸ビニル、及びバーサティック酸ビニル等の、各種脂肪酸を含んでよい。このようにして得られるビニルエステルコポリマーを鹸化して、ビニルアルコールコポリマーを形成できる。得られるビニルアルコールコポリマーは、C
13NMR分析によって示したときに、加水分解度が、いくつかの実施形態では約65〜約99%の範囲であってよく、他の実施形態では約75〜約95%の範囲であってよい。
【0014】
ポリビニルアルコールコポリマーは、約1000〜約1000000の範囲又はそれより大きい数平均分子量、例えば、約10000〜約300000の範囲等の数平均分子量を有してよい。他の実施形態では、ポリビニルアルコールコポリマーは、約10〜約25000の範囲又はそれより大きい重合度、例えば、約500〜約15000の範囲等の重合度を有してよい。
【0015】
ポリビニルアルコールコポリマーは、少なくとも1つのコモノマーを50%まで含んでよい。本明細書の実施形態において有用なコモノマーは、特に、アミドコモノマー、アミンコモノマー、ピロリドンコモノマー、及びスルホン酸基含有コモノマーを含んでよい。いくつかの実施形態において、これらのコモノマーを、ビニルエステルの重合の間にポリマー鎖に組み込んで、ランダムビニルアルコールコポリマーを形成できる。
【0016】
本明細書の実施形態で有用なピロリドンコモノマーの例としては、重合性炭素−炭素二重結合とピロリドン環含有基とを有する化合物を挙げることができる。ピロリドン環含有基の例としては、2−オキソピロリジン−1−イル、3−プロピル−2−オキソピロリジン−1−イル、5−メチル−2−オキソピロリジン−1−イル、5,5−ジメチル−2−オキソピロリジン−1−イル、3,5−ジメチル−2−オキソピロリジン−1−イル等が挙げられる。ピロリドン環含有コモノマーに含まれる炭素−炭素二重結合は、ビニル、アリル、スチリル、アクリロキシ、メタクリロキシ、ビニルオキシ、アリルオキシ、及び、上記脂肪酸のビニルエステルと共重合可能な他の基を含んでよく、ビニルアルコールコポリマーを形成するために、コポリマーの加水分解時に高い耐アルカリ性を有してよい。ピロリドン環含有コモノマーの例としては、特に、N−ビニル−2−ピロリドン、N−ビニル−3−プロピル−2−ピロリドン、N−ビニル−5−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−5,5−ジメチル−2−ピロリドン、N−ビニル−3,5−ジメチル−2−ピロリドン、及びN−アリル−2−ピロリドンが挙げられる。
【0017】
本明細書の実施形態で有用なアミドコモノマーの例としては、特に、アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、及びN−メチル−N−ビニルアセトアミド等のアミド基含有モノマーを挙げることができる。
【0018】
スルホン酸基含有コモノマーの例としては、特に、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、エチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−1−メチルプロパンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−メタクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−スルホエチルアクリレート、及びこれらの塩を挙げることができる。
【0019】
本明細書の実施形態に従って用いることのできる他のコモノマーの例としては、特に、アニオン性モノマー、例えば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸等、及びこれらの塩等の、カルボキシル基を含有するモノマー;カチオン性モノマー、例えば、3−メタクリルアミド−プロピルトリメチルアンモニウムクロリド等の第四級アンモニウム構造を有するモノマー;及び、非イオン性モノマー、例えば、エチレン及びプロピレン等のα−オレフィン;メチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート;エチルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテル;トリメトキシビニルシラン等のシリル基含有モノマー;アリルアルコール、ジメチルアリルアルコール及びイソプロペニルアルコール等のヒドロキシル基含有モノマー;酢酸アリル、ジメチルアリルアセテート及びイソプロペニルアセテートを含むが酢酸ビニルを含まない、アセチル基含有モノマー;塩化ビニル、塩化ビニリデン等のハロゲン原子含有モノマー;ビニルアミンを含むアミン含有モノマー;及びスチレン等の芳香族モノマーが挙げられる。
【0020】
ポリビニルアルコールコポリマーは、上記コモノマーの少なくとも1つを50%まで含んでよく、例えば、約0.5、約0.75、約1、約1.25、約1.5、約1.75、約2、約3、約4、又は約5重量パーセントの下限から、約5、約10、約15、約20、又は約25重量パーセントの上限まで含んでよく、各種実施形態において、任意の下限を任意の上限と組み合わせてよい。いくつかの実施形態においては、例えば、ポリビニルアルコールコポリマーは、N−ビニルピロリドンコモノマーを20重量パーセントまで含んでよい。他の実施形態においては、例えば、ポリビニルアルコールコポリマーは、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸コモノマーを10重量パーセントまで含んでよい。さらに他の実施形態においては、例えば、ポリビニルアルコールコポリマーは、N−ビニルホルムアミドコモノマーを20重量パーセントまで含んでよい。
【0021】
本明細書に開示される組成物は、2又はそれより多い上記ポリビニルアルコールコポリマーの混合物を含んでよい。本明細書に開示される組成物はまた、1又はそれより多い上記ポリビニルアルコールコポリマーと、1又はそれより多いポリビニルアルコールとの混合物を含んでよい。混合にて使用する場合、前記ポリマーは、任意の割合、例えば、約20:1〜約1:20の範囲、又は約1:10〜約10:1の範囲で用いることができる。ポリビニルアルコール(存在する場合)とポリビニルアルコールコポリマーの総量は、約3〜約30重量パーセントの範囲であってよく、例えば、5、6、7、8、9又は10wt%の下限から、12、15、20、25又は30wt%の上限までで、任意の下限を任意の上限と組み合わせてよい。本明細書の実施形態において有用なポリビニルアルコールは、特に、バルク重合、溶液重合、乳化重合及び懸濁重合を介した、1又はそれより多いビニルエステルモノマーの重合により形成できる。ビニルエステルモノマーは、例えば、特に、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、酪酸ビニル、ピバル酸ビニル及びバーサティック酸ビニル等の、各種脂肪酸を含んでよい。こうして得られたビニルエステルポリマーを鹸化して、ポリビニルアルコールを形成できる。得られるポリビニルアルコールは、C
13NMR分析によって示したときに、いくつかの実施形態においては、約65〜約99%の範囲の加水分解度を有してよく、他の実施形態においては、約75〜約95%の範囲の加水分解度を有してよい。ポリビニルアルコールは、約1000〜約1000000の範囲の数平均分子量又はそれより高い数平均分子量、例えば、約10000〜約300000の範囲の数平均分子量又はそれより高い数平均分子量を有してよい。他の実施形態では、ポリビニルアルコールは、約10〜約25000の範囲の重合度又はそれより高い重合度、例えば、約500〜約15000の範囲の重合度又はそれより高い重合度を有してよい。
【0022】
本明細書の実施形態で有用な添加剤は、特に、レオロジー調整剤、増粘剤、界面活性剤、顔料、分散助剤、保湿剤、ワックス、オイル、封入剤、ビタミン、活性成分、タンパク質、防腐剤、可塑剤、塗膜形成要素、水和物質、シリコーン、UVフィルタ及び吸収剤、アルファヒドロキシ酸、酸化防止剤、精油、乳化剤(emulsifier)及びエマルジョン安定剤、安定性又は性能付加剤、乳化性薬剤(emulsifying agent)、感覚調整剤、湿潤剤、スリップ剤、溶媒、ゲル化剤、固定剤、泡促進剤、沈殿剤、毛髪保護剤、乳白剤、パーライザー、植物エキス、ポリクオタニウム、又はこれらの組み合わせを含んでよい。
【0023】
いくつかの実施形態では、添加剤は、エタノール、プロピレングリコール、及グリセリンの少なくとも1つを含んでよい。例えば、本明細書の実施形態による化粧品組成物は、水を40〜80重量パーセント、ポリビニルアルコール・N−ビニルホルムアミド・コポリマー、ポリビニルアルコール・N−ビニルアミン・コポリマー、又はポリビニルアルコール・N−ビニルピロリドン・コポリマー等のポリビニルアルコールランダムコポリマーを5〜30重量パーセント、及び1又はそれより多い添加剤を約40重量パーセントまで、例えば、エタノールを10〜25重量パーセント、プロピレングリコール、グリセリン及びポリエチレングリコールの少なくとも1つを3〜5重量パーセント、及び、任意に他の添加剤を約20重量パーセントまで、含んでよい。
【0024】
別の例として、本明細書の実施形態による化粧品組成物は、水を40〜80重量パーセント;少なくとも1つのポリビニルアルコールと少なくとも1つのポリビニルアルコールコポリマーの混合物を5〜30重量パーセント;及び、1又はそれより多い添加剤を40重量パーセントまで含んでよい。
【0025】
一定の実施形態においては、ポリビニルアルコールとポリビニルアルコールコポリマーの混合物の使用により、ポリマーを個別に用いた化粧品組成物に基づいては予期できない特性を示す化粧品組成物をもたらし得ることを発見した。例えば、ポリビニルアルコールとポリ(ビニルアルコール)−コ−(ビニルアミン)との混合物を含む化粧品組成物から形成されるフィルムの付着性は、いずれかを単独で用いる場合より、有意に大きくなり得ることを発見した。いくつかの実施形態においては、通常は付着性を低減すると考えられる、OHを3〜15wt%有する可塑剤を用いた場合に、混合物の付着性の強化が実現され得る。例えば、可塑剤は、OHの含有量が約3、約4、約5、約6又は約7wt%から約10、約11、約12、約13、約14又は約15wt%の範囲のポリエチレングリコールを含んでよく、このとき、任意の下限を任意の上限と組み合わせてよい。この相乗効果は、調整された特性を有する組成物を開発するのに有利となり得る。
【0026】
ポリビニルアルコールとポリ(ビニルアルコール)−コ−(ビニルアミン)コポリマーとの混合物の付着性は、有利には、高い付着性を求める除毛剤組成物に使用され得る。例えば、除毛剤組成物は、水を40〜80wt%;少なくとも1つのポリビニルアルコールと少なくとも1つのポリビニルアルコールコポリマーの混合物を5〜30wt%;可塑剤を1〜15wt%;及び1又はそれより多い添加剤を40wt%まで含んでよく、前記可塑剤は、3〜15wt%のOHを有する直鎖又は分岐の成分である。このような可塑剤の選択は、組成物の所望する付着性を提供し得る。可塑剤は、ポリエチレングリコールを含んでよく、ポリビニルアルコールコポリマーは、ビニルアルコール−ビニルアミンコポリマーを含んでよく、これは、ビニルアミンコモノマーを0より多く20wt%未満を有してよく、例えば、いくつかの実施形態では3〜15wt%のビニルアミンを、さらに他の実施形態では6又は8〜12又は15wt%のビニルアミンを有してよい。いくつかの実施形態では、前記組成物は、少なくとも1つのポリビニルアルコールと少なくとも1つのポリビニルアルコールコポリマーの混合物を、10〜25wt%含んでよい。除毛剤組成物は、約20000cPより高い粘度(これは、液だれのない(drip-free)用途を提供し得る)、少なくとも5のブルックフィールド降伏値(これは、保存安定性をのばしたり、適用/拡散のし易さを提供し得る)、及び、少なくとも500gのガラス付着性(皮膚から毛を除去するのに十分な強さを提供する)を有してよい。ブルックフィールド降伏値は、本明細書に定義するように、0.5rpmでの見掛け粘度から1rpmでの見掛け粘度を引いたものを、100で割った値である。いくつかの実施形態では、組成物は、約500又は約600〜約900又は約1000gの範囲のガラス付着性を有してよい。除毛剤組成物は、いくつかの実施形態では15分未満の乾燥時間を有し、他の実施形態では10分未満の乾燥時間を有してよい。いくつかの実施形態では、組成物は、乾燥すると、少なくとも0.5、他の実施形態では少なくとも0.6の引張強度対弾性率の比を有してよく、基本的に一片で皮膚から除去可能であることが特徴とされてよい。本明細書で用いる「基本的に一片」とは、1回の剥離動作で徐々に取り去ることのできるフィルムのことであって、フィルムの大部分(例えば、80%、85%、90%又はそれより多く)が、さらなる剥離を必要とせずに取り去られる。除毛剤組成物は、8.5まで等、わずかに高いpH値を用いることもできるが、組成物の刺激性作用を制限して、約5.5〜約7.5の範囲、例えば、約5.5〜約6.5のpHを有してよい。
【0027】
ポリビニルアルコールとポリ(ビニルアルコール)−コ−(ビニルアミン)コポリマーとの混合物の付着性は、有利には、脱毛剤、毛穴シート、角栓除去、又は他の化粧品組成物のために用いることができる。例えば、毛穴シート及び角栓除去組成物は、水を40〜80wt%;少なくとも1つのポリビニルアルコールと少なくとも1つのポリビニルアルコールコポリマーとの混合物を5〜30wt%;可塑剤を1〜15wt%;及び1又はそれより多い添加剤を40wt%まで含んでよく、前記可塑剤は、OHを25wt%より多く有する、直鎖、環状又は分岐の成分である。このような可塑剤の選択は、組成物の所望の付着性を提供し得る。可塑剤は、いくつかの実施形態では、グリセリン、プロピレングリコール、ブチレングリコール、及びデキストロースの少なくとも1つを含んでよく、ポリビニルアルコールコポリマーは、ビニルアルコール−ビニルアミンコポリマーを含んでよく、これは、0より多く20wt%未満のビニルアミンコモノマーを有してよく、例えば、いくつかの実施形態では3〜15wt%のビニルアミンを、さらに他の実施形態では8〜15wt%のビニルアミンを有してよい。いくつかの実施形態では、前記組成物は、少なくとも1つのポリビニルアルコールと少なくとも1つのポリビニルアルコールコポリマーの混合物を、10〜25wt%含んでよい。前記組成物は、約20000cPより高い粘性(これは、液だれのない用途を提供し得る)、少なくとも5のブルックフィールド降伏値(これは、保存安定性をのばしたり、適用/拡散のし易さを提供し得る)、及び、少なくとも125gのガラス付着性(皮膚の処置のために十分な強さを提供する)を有してよい。いくつかの実施形態では、組成物は、約175〜約350gの範囲のガラス付着性を有してよい。組成物は、いくつかの実施形態においては15分未満、他の実施形態においては10分未満の乾燥時間を有してよい。いくつかの実施形態では、組成物は、乾燥すると、少なくとも0.5、他の実施形態では少なくとも0.6の引張強度対弾性率の比を有してよく、基本的に一片で皮膚から除去可能であることが特徴とされてよい。前記組成物は、8.5まで等、わずかに高いpH値を用いることもできるが、組成物の刺激性作用を制限して、約5.5〜約7.5の範囲、例えば、約5.5〜約6.5のpHを有してよい。
【0028】
いくつかの実施形態では、本明細書の実施形態による化粧品組成物は、水を40〜80wt%;少なくとも1つのポリビニルアルコールと少なくとも1つのポリビニルアルコールコポリマーの混合物を5〜30wt%;及び、1又はそれより多い添加剤を40wt%まで含んでよく、前記ポリビニルアルコールは、約900〜約1500の範囲の重合度、及び、約87〜約89の範囲の加水分解度を有し;前記ポリビニルアルコールコポリマーは、約300〜600の範囲の重合度を有し、約3モル%〜約15モル%のビニルアミン、例えば約8モル%〜約15モル%のビニルアミンを含有する、ポリ(ビニルアルコール)−コポリ(ビニルアミン)のコポリマーを含む。いくつかの実施形態では、ポリビニルアルコールとポリビニルアルコールコポリマーは、約15:85〜約65:35の範囲の重量比(ポリビニルアルコール対ポリビニルアルコールコポリマー)で存在してよく、例えば、約20:80〜約60:40の範囲、又は約25:75〜約55:45の範囲で存在してよい。
【0029】
いくつかの実施形態では、例えばアイライナーとして用いることのできる、本明細書の実施形態による化粧品組成物は、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ビニルアミンコポリマー等のポリビニルアルコールコポリマー、水、及び1又はそれより多い添加剤を含んでよい。いくつかの実施形態では、このアイライナー組成物は、水を30〜80wt%;ポリビニルピロリドン(15〜25wt%)と、少なくとも1つのポリビニルアルコール(1.5〜7.5wt%)と、少なくとも1つのポリビニルアルコールコポリマー(1.5〜7.5wt%)との混合物を10〜30wt%;及び、酸化鉄、エタノール、プロピレングリコール、及びアイライナー配合物の技術分野において技術者に既知の他のもの等の、1又はそれより多い添加剤を60wt%まで含んでよい。ポリビニルアルコールは、約900〜約1500の範囲の重合度と、約87〜約89の範囲の加水分解度とを有してよい。ポリビニルアルコールコポリマーは、約300〜約600の範囲の重合度を有し、約3モル%〜約15モル%のビニルアミンを含む、ポリ(ビニルアルコール)−コポリ(ビニルアミン)を含んでよい。いくつかの実施形態では、ポリビニルアルコールとポリビニルアルコールコポリマーは、約15:85〜約65:35の範囲の重量比(ポリビニルアルコール対ポリビニルアルコールコポリマー)で存在してよく、例えば、約20:80〜約60:40の範囲、又は約25:75〜約55:45の範囲で存在してよい。
【0030】
別の例として、本明細書に開示される実施形態はまた、柔らかい感触を提供し得るが、基本的に一片で皮膚からはがせるよう十分に弾力的であり得る化粧品組成物に関する。本組成物は、水を40〜80wt%、ピロリドンコモノマーを20wt%まで含む、少なくとも1つのポリビニルアルコールランダムコポリマーを3〜30wt%、及び1又はそれより多い添加剤(可塑剤、香料、防腐剤等を含む)を40wt%まで含んでよい。本化粧品組成物は、約100psi〜約500psiまでの範囲、例えば約150psi〜約350psiの範囲の、弾性率を有してよい。いくつかの実施形態においては、本組成物は、少なくとも180%、少なくとも190%、又は少なくとも200%の破断点伸びを有してよい。
【0031】
いくつかの実施形態において、前記柔らかいが弾力性のある化粧品組成物は、約0.7より大きい引張強度対弾性率の比を有してよく、例えば、各種実施形態において、約0.8を超える、約0.9を超える、約1.0を超える、又は約1.1を超えてよい。本化粧品組成物はまた、ポリビニルアルコールコポリマーと混ぜて用いられるポリビニルアルコールを約3〜約30wt%含んでよい。混ぜて用いられる場合、ポリビニルアルコールとポリビニルアルコールコポリマーは、約1:10〜約10:1の範囲の重量比で用いてよく、例えば、約1:5〜約5:1の範囲、又は約1:3〜約3:1の範囲、又は約1:2〜約2:1の範囲であってよく、約0.9:1〜約1.1:1及び1:1の比を含む。このような組成物は、例えば、各種実施形態において、約2g〜約40gの範囲等、少なくとも2g、少なくとも10g、少なくとも20g、又は少なくとも30gのガラス付着性を有すると特徴付けられてよく、基本的には一片で皮膚から取り外すことができることも特徴としてよい。
【0032】
これらの実施形態に記載の、柔らかいが弾力性のある化粧品組成物は、例えば、同様の柔らかい感触を得るために過度の量の可塑剤を加えることによって生じる恐れのある油っぽい感触を有せずに所望の特性を提供することができ;むしろ、所望の特性を、同様の柔らかい感触を得るために他の望ましい品質を犠牲にすることなく、主に、ポリマー、コポリマー、又はこれらの混合物によって、提供することができる。例えば、前記柔らかいが弾力性のある化粧品組成物は、いくつかの実施形態では可塑剤を10wt%未満含んでよく;他の実施形態では8wt%以下;他の実施形態では7wt%以下;他の実施形態では6wt%以下;他の実施形態では5wt%以下;他の実施形態では4wt%以下;さらに他の実施形態では3wt%以下含んでよい。
【0033】
本明細書のいくつかの実施形態はまた、保存期間をのばすこと(すなわち、時間とともに沈殿したり分離したりしない)のできる液だれのない組成物(すなわち、一度塗布したら皮膚から容易に流れない)を目的とする。例えば、のせたときは厚いが、ずらすと薄い組成物は、塗布後の流れ(滴り)を制限することができ、皮膚に塗布する際、容易に広げられ薄くなることができる。本明細書の実施形態による組成物の粘度は、10,000cPを超えてよく、20,000cPを超えてよく、30,000cPを超えてよく、又は40,000cPを超えさえしてよい。シアシニングを表すブルックフィールド降伏値は、各種実施形態において、5より大きくてよく、50より大きくてよく、75より大きくてよく、又は100より大きくてよい。基本的に液だれのない組成物のためには、約5より大きい降伏値を提供でき、約20より大きい降伏値は、本明細書の実施形態において、基本的に液だれがないと見なされる。いくつかの実施形態において、本明細書の組成物は、約5〜約
500の範囲、例えば、約20〜約400の範囲のブルックフィールド降伏値を有してよい。
【0034】
本明細書の実施形態による化粧品組成物は、水、ポリビニルアルコールコポリマー及び1又はそれより多い添加剤を含む混合物を形成するために任意の方法によって製造してよい。例えば、化粧品組成物は、混合、ブレンド、溶融混練、又は、水性の(水又は水/アルコール混合物を含む)ベース流体中に前記ポリビニルアルコールコポリマーと前記1又はそれより多い添加剤を溶かす又は分散させるために用いることのできる他の方法により形成してよい。
【0035】
上述の化粧品組成物は、人の皮膚の処置、洗浄又は調子を整えるために用いてよい。例えば、上述の化粧品組成物は、クレンジング、除毛、壊死した皮膚の除去や、薬剤活性、保湿活性、予防活性(UV遮断薬等)等の活性成分を送達するためのトリートメントマスク又はリムーバルマスク等のフェイスマスクに用いたり、又は当該技術分野で周知の他の用途で用いたり、又は人の皮膚の処置、洗浄又は調子を整えるために有用な他の最終生成物にて用いてよい。
【0036】
本化粧品組成物は、例えば、組成物を処置すべき領域の上に広げる等により、人の皮膚に塗布してよい。本化粧品組成物は、その後、ある期間皮膚と接触したままにされてよく、この期間中に、化粧品組成物が、乾燥又は固化してフィルムやケーキを形成したり;皮膚に薬剤、保湿剤、染料又はクレンジング剤等の活性を送達したり;接触領域の皮膚や毛髪に付着したり、又は、接触領域の皮膚の毛穴に入っているような汚れや他の物質に付着したりしてよい。所望の目的とする結果又は効果が達成された後、化粧品組成物は、引きはがし、こすり、ごしごし洗い、すすぎ洗い、洗浄等により、人の皮膚から取り除くことができる。
【0037】
本明細書のいくつかの実施形態による除毛剤組成物は、例えば、処置されるべき領域の上に組成物を広げる等により、皮膚に塗布してよい。他の実施形態では、除毛剤組成物は、裏当て又はフィルムに付着させる等、基板上に配置して、皮膚と接触して置かれる「パッチ」を形成してよく、該裏当ては、乾燥後皮膚から除毛剤を取り除くためのつかみ面を提供する。
【0038】
本明細書の他の組成物はまた、毛穴シートや角栓リムーバー等、裏当てと共に用いてもよい。しかしながら、本明細書の化粧品組成物は、容易に広げられ、基本的に一片で皮膚から取り除くことができるため、裏当ての必要性のないこのような処置にとって有用であり得る。このような実施形態は、有利には、皮膚表面と化粧品組成物の改良された接触を提供でき、裏当てによる制限がないので、組成物をエンドユーザーの顔の特徴に容易に合わせることができる。
【0039】
本明細書の実施形態で有用なコモノマーは、以下の実施例で記載するように、幅広い特性を有する化粧品組成物を提供し得る。例えば、本明細書の実施形態によるポリビニルアルコール・N−ビニルピロリドン・コポリマーは、ポリビニルアルコールから形成される通常の市販のマスク組成物に比べ、より柔らかいフィルムを提供できる。別の実施例として、本明細書の実施形態によるポリビニルアルコール・N−ビニルホルムアミド・コポリマーは、ポリビニルアルコールから形成される通常の市販のマスク組成物に比べて、付着強度が高く、及び/又はよりぴったりとした感触を有するマスクを提供できる。他のコモノマー、コモノマーの混合物、又はポリビニルアルコールコポリマーの混合物は、得られる化粧品組成物の特性に他の多様な効果を提供できる。
【0040】
本明細書に開示の実施形態は、また、化粧品組成物を選択する又は設計する方法を提供する。上で述べたように、エンドユーザーの、化粧品組成物の機能の仕方や皮膚との相互作用の仕方に対する好みは多数である。例えば、エンドユーザーは、特定の化粧品組成物を購入するかしないか、又は繰り返して購入するかしないかを決めるとき、最終製品の1又はそれより多い特性に注目するかもしれない。フェイスマスク、毛穴シート、及び除毛剤に対して、購入者にとって重要な複数の特質がある。例えば、1)皮膚への付着性;2)フィルム又はマスクを皮膚から基本的に一片で取り除けること;3)皮膚へのマスクの相対的なぴったり度又はゆるさ;4)マスクの洗い落としやすさ;5)皮膚表面との適合性(つまり、皮膚の炎症を引き起こすか、炎症がないか);6)皮膚に活性成分を送達する能力;7)速乾性であること(例えば、乾くまで15分以下);8)べたつき感がないこと;9)よく広がること(粘性が高すぎても低すぎてもいけない);及び10)皮膚への塗布の容易度及び清潔感(液だれしない)である。
【0041】
コモノマー及び他の組成変動の選択は、例えば、数あるファクタの中で、感触、付着強度、剥離性、活性送達有効性、必要な乾燥時間、塗布及び除去の容易さ、並びに、匂いや色等の所望のターゲットとなる機械的特性又は機械的特性セットに合わせた化粧品組成物の調整を可能とする。この機械的特性を調整する能力は、保存期間を延ばす要求(混合物の沈殿や分離がない)や皮膚への液だれのない塗布を満たすことをも提供できる。
【0042】
ターゲットとなる特性を満たすような配合物を作り出す一例として、フェイスマスク、毛穴シート及び除毛剤の3つの異なる処置領域を挙げる。これらの組成物のそれぞれは、異なる目的を有するが、例えばポリビニルアルコールとポリビニルアルコールコポリマー等の同様のベース成分を用いて配合することができる。例えば、本明細書の実施形態は、ガラス付着性の値が400gを超える除毛剤、ガラス付着性の値が約125gから約350gの範囲の毛穴シートや、ガラス接着性の値が20g未満のフェイスマスク等、所望する付着強度を提供するように組成物を調整するために使用されてよい。
【0043】
本明細書の実施形態によって提供される、特定の用途に組成物を調整することはまた、先行技術に関する様々な改良を可能にする。例えば、本明細書の実施形態は、液だれのないフェイスマスクを提供でき、これは、基本的に一片で皮膚からはがれ、塗布中に滴らないが容易に広げられ、痛みなく皮膚から取り外せるが顔上にとどまるには十分に強力である。別の例として、本明細書の実施形態は、痛みを最小にしつつ角栓を取り除くのに適した付着性を有し、塗布中に滴らないが容易に広げられ、顔に適合してくっつく、毛穴シート及び角栓リムーバーを提供することができ、このような実施形態は、このような用途のための付加的なアプリケータ又は裏当てシートの必要性をなくすことができる。
【0044】
さらに別の例として、本明細書の実施形態は、基本的に一片ではがれ、改良された美観を有し、塗布時に滴らないが室温で容易に広げられ(加熱を必要としない)、顔や体の他の領域に適合してくっつく除毛剤を提供することができる。このような実施形態は、付加的なアプリケータ又は裏当てシートの必要性なく用いることができるが、アプリケータや裏当てシートは、皮膚からフィルムを取り除くことを容易にし得る。
【0045】
図1を参照すると、本明細書に開示の実施形態による化粧品組成物の特性を選択、設計又は調整するための方法の流れ図が示されている。工程10では、選択された特性、又は、2又はそれより多い特性を含む選択された特性セットを有する化粧品組成物のリクエストが受け入れられる。その後、データストアが、同等である選択された特性又は選択された特性セットを有する少なくとも1つの化粧品組成物に対しチェックされる20。このデータストアは、例えば、ポリビニルアルコールポリマー及びコポリマー、モノマー及びコモノマー、添加剤、並びにこれらを含む樹脂組成物及び化粧品組成物と関連するデータを含む1又はそれより多いコンピュータベースのファイルを含んでよい。データストアに蓄積されるデータは、とりわけ、分子量、重合度、粘度、物理化学特性、及び以下に述べるような他の情報を含んでよい。
【0046】
前記同等である選択された特性又は選択された特性セットを備える化粧品組成物が存在する場合は、前記同等である選択された特性又は選択された特性セットを備える少なくとも1つの化粧品組成物が選択され得る30。前記同等である選択された特性又は選択された特性セットを備える化粧品組成物が存在しない場合は、前記同等である選択された特性又は選択された特性セットを有する少なくとも1つの化粧品組成物が推定又は決定され得る40。
【0047】
推定工程40は、例えば、データストア内のデータを分析し、化粧品組成物の選択された特性又は選択された特性セットを提供するために用いることのできる、ポリビニルアルコールコポリマーで用いるためのコモノマー又はコモノマーの混合物、ポリビニルアルコールコポリマーのコモノマー含有量、ポリビニルアルコールコポリマーの重合度、ポリビニルアルコールコポリマーの鹸化度、水分含有量、ポリビニルアルコールコポリマーの含有量、化粧品組成物添加剤、及び化粧品組成物添加剤含有量の少なくとも1つを推薦する(すなわち、推定又は予測する)ことを含んでよい。
【0048】
図2を参照すると、推薦工程40の1つの実施形態の流れ図が示されており、これは、例えば、コンピュータ支援の方法又はシミュレーションであってよい。推定工程40は、例えば、少なくとも1つの化粧品組成物を推薦する工程50;分析リクエストを作成する工程60;前記分析リクエストに基づき前記少なくとも1つの化粧品組成物を分析する工程70;分析結果を生成する工程80;及び前記分析結果に基づいて少なくとも1つの化粧品組成物を選択する工程90を含んでよい。この方法はまた、前記分析結果を前記データストアに保存する工程100を含んでよい。
【0049】
分析リクエストは、組成物の機械的特性を定量するための数ある分析の中で、例えば、引張特性分析、付着特性分析、テクスチャ分析、活性送達分析、及び乾燥時間分析の少なくとも1つに対するリクエストを含んでよい。前記分析工程は、それゆえ、ポリビニルアルコールコポリマー又はその混合物、ポリビニルアルコール又はポリビニルアルコールコポリマーを含む樹脂、及びポリビニルアルコール又はポリビニルアルコールコポリマーを含む化粧品組成物の少なくとも1つの、例えば、引張特性、付着特性、テクスチャ特性、及び乾燥特性の少なくとも1つを決定する工程を含んでよい。従って、データは、分析される各種特性にモノマー、コモノマー、ポリビニルアルコールコポリマー組成物、ポリビニルアルコール樹脂、及びポリビニルアルコールコポリマーを含む化粧品組成物を関連づけて保存されてよく、このようなデータを、将来のアクセス及び分析のためにデータストアに追加し保存することができる。いくつかの実施形態では、推薦工程40及び/又は分析工程70は、例えば、フィルム取り外し時皮膚にダメージを与えないよう、付着強度/剥離強度が十分低いことを保証するなど、推薦された化粧品組成物が人の皮膚に用いるのに適していることを検証する工程130をさらに含んでよい。
【0050】
前記推薦工程は、化粧品組成物の選択された特性又は選択された特性セットを提供するための、ポリビニルアルコールコポリマーで用いるためのコモノマー又はコモノマーの混合物、ポリビニルアルコールコポリマーのコモノマー含有量、ポリビニルアルコールコポリマーの重合度、ポリビニルアルコールコポリマーの鹸化度、化粧品組成物添加剤、及び、化粧品組成物添加剤含有量の少なくとも1つの最初の選択を推定又は作成することを含んでよい
【0051】
分析結果に基づく、推薦工程50、作成工程60、分析工程70及び生成工程80は、その後、選択された特性又は選択された特性セットを満たす化粧品組成物が設計されるまで繰り返すことができる。分析結果、及び/又は推定工程40に基づいて選択された化粧品組成物は、その後プリンタ又はコンピュータモニタ等に出力され110、この出力又は推定工程40に基づく化粧品組成物が、その後、選択された特性又は選択された特性セットを有する化粧品組成物を顧客に提供するために製造120され得る。
【0052】
実施例
異なるポリビニルアルコールポリマーとポリビニルアルコールコポリマーを用いて、多数の模擬マスク組成物を生成した。この組成物は、香料等の添加剤や他のマイナーな成分を使用しなかったので、「模擬」マスク組成物と見なされ得る。使用したポリビニルアルコールとポリビニルアルコールは、表1に記載のものを含む。模擬マスク組成物とそれらの特性を、表2に示す。
【0054】
これらポリマー組成物を脱イオン水(DI水)に溶かして添加剤のないベース樹脂を形成した。これは、適当な量のポリマーを、非加熱の(<40℃)DI水に3〜5分の間、混合容器にてかき混ぜながら、ゆっくりと添加することによって達成した。この溶液を85℃まで加熱し、その後この温度で30分〜2時間保持し、その後、溶液を室温まで冷やした。室温になった時点で、「マスク配合物」を形成するために、ベース樹脂に添加剤を混ぜながら加えた。この溶液をその後、透き通って基本的に気泡がなくなるまで、室温で放置した。その後、得られた組成物のフィルムを、水性組成物をドローダウンバー・フィルムアプリケータ(BYK ガードナー、コロンビア、メリーランドから入手可能)を用いてガラス板上にキャスティングすることにより形成し、一定温度70℃、湿度50%の制御された温度湿度室にて、12〜24時間の期間乾燥させた。こうして、全てのフィルムを、特性付けられる前に調節した。約40マイクロメータのフィルムターゲット厚みは、適当なドローダウンバーを用いることによって得られた。制御された温度湿度室にて最低でも12時間調節した後、得られたフィルムを所望のテストに適したサイズを有するテストサンプルにカットする。
【0055】
溶液の粘性を、ブルックフィールド粘度計を用い、25℃で、配合物の粘度に応じてスピンドルの数を3〜6にして測定した。配合物の多くは、非ニュートン流動を示すため、粘度は、少なくとも3つのせん断速度に対して測定し、理論的にゼロのせん断速度にて報告する。ブルックフィールド降伏値(cP)に関して報告する場合、報告値は、0.5rpmでの見掛け粘度から1.0rpmでの見掛け粘度を引いたものを、100で割った値である。
【0056】
得られたフィルムの引張特性は、INSTRONモデル5542(Norwood,MA)を用いて測定した。水溶解特性は、以下の方法によって測定した。600mLのビーカーを、室温の水道水500mLで満たした。ビーカーにマグネチックスターラーを入れて、このビーカーをスターラープラットフォーム上に置き、ボルテックスを400mlマークのちょうど上に合わせた。フィルムは、35mm×23mmのPOLAROIDスライドホルダー内部にしっかりとフィットするようにカットした。このスライドをその後、中のサンプルとともに秤量し、重量を記録した。スライドをその後ホルダー内に置いて、ボルテックス内に下ろした(壁から5mm離し、水面下6mm)。サンプルを水中で沈めてすぐに、ストップウォッチをスタートさせ、フィルムが完全に溶ける時間を記録した。これを、溶解時間とする。
【0057】
これら樹脂及びマスク組成物から形成されたフィルムの特性(引張特性及び溶解特性を含む)を測定して、これを表2に示す。
【0061】
上に述べたように、フェイスマスク、毛穴シート及び除毛剤を求める消費者にとって重要ないくつかの特質がある、例えば:1)皮膚への付着性;2)フィルム又はマスクを皮膚から基本的に一片で取り除けること;3)皮膚へのマスクの相対的なぴったり度又はゆるさ;4)マスクの洗い落としやすさ;5)皮膚表面との適合性(つまり、皮膚の炎症を引き起こすか、炎症がないか);6)皮膚に活性成分を送達する能力;7)速乾性であること(例えば、乾くまで15分以下);8)べたつき感がないこと;9)よく広がること(流れやすくなく、粘着性があって広げるのが難しいと感じずに容易に均一に広げられなければならず、このとき、一般的には、約4000cSt〜約12000cStの範囲の粘度を有する配合物をよく広がると見なしてよい);及び10)皮膚への塗布の容易性及び清潔感(液だれしない)である。表1の実施例の特性により示されるように、本明細書に開示される実施形態は、配合物に用いられるPVOH及びPVOHコポリマーを変えることにより、これらの特質の全てを予想通りに制御するために用いることができる。例えば、実施例4及び11は、配合物にPVOH−ビニルアミンコポリマーを使用することにより付着性が改良されることを示す。PVOH−コ−ビニルピロリドン含有配合物、実施例8,9及び12は、弾性率(マスクがどれぐらい柔らかいかに対する代用物)が、他のグレードのPVOHを用いて得られるより低く、また、溶解時間(除去のし易さに対する代用物)がより速いことを示す。VYTEK
TM(スルホン酸塩)コポリマーも、PVOHホモポリマーより溶解時間が速いことを示す。さらに、実施例11は、フェイスマスク配合物を作るために、PVOHホモポリマーとPVOH−コ−ビニルアミンのブレンドから成る樹脂を用いた場合の、予期しない「相乗的な」付着効果を示す。
【0062】
この相乗効果は、さらに、SELVOL ULTALUX FAに対するSELVOL ULTALUX ADの割合を体系的に変えた、実施例17〜24に示される。予想外に、SELVOL ULTALUX FAに対するSELVOL ULTALUX ADの中間的な割合は、SELVOL ULTALUX AD又はSELVOL ULTALUX FA単独から作成したフィルムに比べて、付着性が大幅に上昇することを発見した。実施例17〜24に対する付着試験の結果を、
図3にグラフで表す。サンプルのそれぞれはサンプル18(SELVOL ULTALUX ADだけ)より付着性が大きかったのと同時に、混合物を用いた付着性結果、特にサンプル19,22,23及び24の付着性結果は、SELVOL ULTALUX ADとSELVOL ULTALUX FAを単独で用いた場合の両方に対するデータに基づいて当該技術者が予想しただろうものより、大幅に大きい。
【0063】
上記表2と、表3は、PVOHコポリマー含有量に応じた付着性を示す。ガラス付着性は、上述のように、ガラス板上にフィルムをキャスティングし、その後、90°剥離リグを取り付けた、Stable Micro Systems社のテクスチャーアナライザーTA.XT Plusを用いて、90°剥離テストを行うことにより決定した。皮膚付着性は、人の前腕上に「マスク」溶液を4インチ平方塗布して決めた。この溶液を、乾燥させて、2時間その場に置いたままにした。2時間後まだ皮膚と最初の接触状態にあるフィルムの面積を測定して、皮膚付着性(%)を決定した。
【0064】
表2及び3は、本明細書に開示される実施形態が、1)コポリマー含有量に応じて付着性を制御するため、及び2)フェイスマスク中の最も一般的に使用される市販のグレードのPVOH、SELVOL ULTALUX FAによって達成される付着性より優れた付着性を達成するために、どのように用いることができるかを示す。マスク組成物の付着性を制御する能力は、例えば塗布時、マスクの剥離特性の調整を可能にし得る。
【0066】
表4は、本明細書に開示される実施形態を、1)コポリマーの官能性を変えることにより、簡単に、市販のフェイスマスクの範囲に及ぶフィルム特質を備えたフェイスマスクを製造するため、及び2)市販のマスクより優れた性質を備えたマスクを製造するために、どのように用いることができるかを示す。比較サンプルである、市販のマスク組成物は、典型的には、SELVOL ULTALUX FAと同様、ポリビニルアルコールを10〜15wt%含む。
【0067】
各フィルムに対し、これらを1インチ幅の均一の細長片にカットして、INSTRONモデル5542を用いて引張特性を測定することにより、引張強度、破断点伸び及び弾性率を決定した。ガラスへの付着性は、上記方法で測定した。より定性的な触覚及び性能特性は、各マスク配合物の1オンスサンプルを、被験者の顔に塗布して、30分の間にわたってマスクを乾燥させ、その後引きはがすことにより決定した。結果を表4に示す。ここで、「+」は優れた性能を示し、一方「−」は非常に劣っており、容認できない性能に相当する。
【0069】
実施例9,11及び16は、マスク組成物のどの程度の柔らかさや剥離特性を調整し得るかを示す。実施例9,11及び16に対する弾性率(柔らかさを示す)は、各種市販のマスク組成物より低い又はそれに匹敵し、一方、ガラスへの付着性(剥離特性を示す)は、市販のマスク組成物より大きい〜大幅に大きい。
【0070】
化粧品組成物の特性を調整する別の例として、実施例19の優れた付着性を、脱毛剤(depilatory)及び除毛剤(epilatory)(毛の除去)用途に対し使用してもよい。ここで、本明細書で用いられる「除毛剤」製品及び組成物は、毛髪の物理的除去に対し使用し、「脱毛剤」製品及び組成物は、処理工程中、毛包を化学的に破壊するための化学成分を含む。現在の脱毛剤製品及び除毛剤製品は、使用前の加熱を必要とし、比較的面倒で、不快な臭いを有する傾向があり、及び/又は皮膚を刺激するおそれがある。これに対し、実施例19や同様に調整された組成物の付着特性は、より便利に使用でき(加熱不要)、臭いが大幅に減り、例えば「クラス最高の」市販の製品「Professional Surgi Wax Brazilian Waxing Kit」や「Sally Hansen Lavender Spa Wax Kit」に比べて、効果的に毛を除去できる。
【0071】
上記実施例により示されるように、コモノマーとその量は、本明細書に開示される化粧品組成物の機械的特性を調整するように選択できる。フェイシャルケアやスキンケアに有用なマスクや他の化粧品組成物は、例えば、配合物に使用されるポリビニルアルコール及びポリビニルアルコールコポリマーを選択することによって、柔らかさ、付着性、溶解時間等の所望する最終製品の条件を満たすように、本明細書の実施形態により調整することができる。そうすることにより、このようなマスクは、付着性(剥離特性を示す)や弾性率(柔らかさを示す)、並びに引きはがし特性、水での洗浄性、及び他の特性の独特な組み合わせを提供することができる。
【0072】
一例として、スキンケア産業界における挑戦の1つは、ぴったり感又は柔らかさ(感触、弾性率)、壊死した皮膚の除去(付着力)、及び一片で引きはがせる能力及び/又は皮膚からの容易な取り外し能力、の所望の組み合わせを提供するマスクの開発にある。市販の典型的な組成物は、剥離時適当な任務を遂行するのに十分に皮膚に付着しない。本明細書に記載するように、ポリビニルアルコールコポリマーを用い、組成物の調整をすることにより、このような特性の組み合わせを提供し得る。
【0073】
本明細書の実施形態による、柔らかい感触を有しながら、皮膚を洗浄及び剥離するためのフェイス及びスキンケアマスクで有用な組成物は、少なくとも1つのポリビニルアルコールコポリマーを含んでよく、少なくとも30gのガラス付着性と、約1800psi未満の弾性率(上記テスト方法によって定義する)を有してよい。このような組成物はまた、少なくとも95%の%皮膚付着性、及び約190psi〜約2000psiの範囲の引張強度を1又はそれより多く有してよい。いくつかの実施形態では、前記組成物は、少なくとも200gのガラス付着性を有してよい。例えば、前記ポリビニルアルコールは、ビニルアルコールとビニルアミンのコポリマーを含んでよく、この組成物は、少なくとも200gのガラス付着性を有する。
【0074】
本明細書の実施形態による、皮膚を処置するためのフェイス又はスキンケアマスクで有用な別の組成物は、ポリビニルアルコールとポリビニルアルコールコポリマーとの混合物を含んでよい。ポリビニルアルコールは、約900〜約1500の範囲の重合度を有し、約87〜約89の範囲の加水分解度を有してよい。ポリビニルアルコールコポリマーは、ビニルアルコールとビニルアミンのコポリマーであってよく、約300〜約600の範囲の重合度を有し、約3モル%〜約15モル%のビニルアミンを含んでよい。ポリビニルアルコールコポリマーに対するポリビニルアルコールの重量比は、約15:85〜約65:35の範囲にあってよく、例えば、約20:80〜60:40の範囲、又は約25:75〜約55:45の範囲であってよい。前記組成物は、また、少なくとも300gのガラス付着性及び1500psi未満の弾性率の少なくとも1つを有してよい。
【0075】
別の例として、スキンケア産業界における挑戦の1つは、塗布しやすく、除去しやすく、匂いがほとんどないか全くない除毛剤組成物を提供することである。市販の典型的な組成物は、除毛時適当な仕事をするのに十分に皮膚に付着しない。本明細書に記載するように、ポリビニルアルコールコポリマーを用い、組成物の調整をすることにより、このような特性の組み合わせを提供し得る。
【0076】
本明細書の実施形態による、液だれのないフェイス又はスキンケアマスクで有用な組成物は、ポリビニルアルコールと各種添加剤を含んでよい。本明細書の実施形態による、除毛剤等の除毛用フェイス又はスキンケアマスクにおいて有用な組成物は、ビニルアルコールとビニルアミンのコポリマーを含むポリビニルアルコールコポリマーを含んでよい。効果的な除毛を提供するために、前記組成物は、少なくとも400gのガラス付着性値を有し、他の実施形態では少なくとも500g、さらに他の実施形態では少なくとも600gのガラス付着性値を有してよい。本明細書の実施形態による、毛穴シート又は角栓リムーバーにおいて有用な組成物は、ビニルアルコールとビニルアミンのコポリマーを含むポリビニルアルコールコポリマーを含んでよい。効果的な処置を提供するため、毛穴シート又は脱毛剤組成物は、約150〜約350gの範囲のガラス付着性値を有してよい。基本的に「液だれしない」ことで容易に塗布でき従来の製品よりべとべとしにくい除毛剤、毛穴シート及び他の化粧品組成物に対する必要性が存在する。裏当てシートによって邪魔されることなく、鼻や口の周りの輪郭等、体に適合する毛穴シートや除毛剤に対する必要性も存在する。以下の表5〜7は、毛穴シートや除毛剤等の、化粧品組成物で用いることのできる例示の液だれしない組成物と、その組成物及びそのような組成物から生まれるフィルムの測定した特性を示す。
【0077】
表5には、4つの例示の液だれしないフェイスマスクの実施例が示される。液だれしないフェイシャルマスクを得るために、様々な一般的な増粘剤を用いることができる。表5の組成物を、表5Aの市販のフェイスマスクと比較すると、実施例28〜31は全て、基本的に一片ではがれ、速乾性で、液だれせず、広げやすく、取り外す際に痛みを引き起こさないが、市販の製品はどれも、これらの要求の全てを満たさないことがわかる。表6の組成物は、角栓を取り除くのに必要な正確な付着性を有するが(表6Aの市販の製品に比べて)、使用者に与える痛みは最小限である。表6の比較サンプル実施例の付着性は、角栓を効果的に取り除くのに十分な大きさではない。組成物33は、一片で引きはがせ、裏当てシートを必要としない(顔の輪郭に効果的に形成できる)ため、表6Aの市販の毛穴シートより優れている。表7及び7Aには、組成物34〜36が、裏当てシートの必要性がないという利点を有しながら市販の製品と同程度の付着性を達成することが示される。以下の表において、●=最良、○=良好、△=許容範囲、及び×=許容できない、である。
【0081】
【表10】
上記n/aの値は、重い裏当てシートにより測定できなかったことを示す。この部類の他の製品は、皮膚上で広げることができ、裏当てシートを必要としない。
【0084】
化粧品産業界の挑戦に対処する予期しない相乗付着効果の有用性の別の例として、SELVOL ULTALUX ADとSELVOL ULTALUX FAと、ポリビニルピロリドンとのブレンドを用いて、長持ちする、にじみにくい(smudge resistant)アイライナーを作ることができる。アイライナーの配合物は、表8に与えた配合により調製し、2つの追加の配合物と比べた。比較サンプル26は、US5013543に記載の配合物と同様である。比較サンプル27は、PVP及びPVOHを用いた配合物である。比較の結果を表9に示す。
【0087】
皮膚付着試験は上述のように行った。にじみ/しみ耐性試験は、MuruiとSaitohによるUS特許第4,423,031号に記載の試験と同様に行った。表8の結果に示すように、PVOHコポリマーの混合物の使用は、優れた付着性と、持続性のあるアイライナー組成物を提供し得る。
【0088】
本明細書の実施形態による化粧品組成物の特性を調整する能力は、さらに、以下で説明する
図4〜17に示される。
【0089】
図4を参照して、上記サンプルのいくつかに対し、引張強度対弾性率の比を図で示す。各種サンプルに対する引張強度は、200psi未満の低いところから約1200psiの高いところまで広がっており、弾性率は160psiから3150psiまで広がっていた。従って、組成物で用いられる、ポリビニルアルコールポリマー、ポリビニルアルコールコポリマー、又はこれらの混合物のタイプは、広範囲の引張強度及び弾性率を生み出し得る。引張強度対弾性率の比(TS/M)は、化粧品組成物から得られるフィルムの凝集性を示し得る。TS/M比が小さいフィルムは、はがれ落ちやすく引きちぎりやすく、TS/M比が大きいフィルムは、基本的に一片で皮膚からはがせると仮定される。この傾向はまた、TS/M比が破断点伸びに関連することをも示し、ここで、少なくとも0.6又は少なくとも0.7のTS/M比は、少なくとも180%の破断点伸びと関連し、これは、市販の製品に対するパッケージングについて一般的に指示されるように、製品を10〜15分だけ乾燥させるとき、基本的に一片で皮膚からはがすことができるフィルムをも示す。このことを、
図5に、表2の実施例1〜8について、TS/Modに対する破断点伸びをプロットして示す(注:破断点伸びの値は、用いた分析機器により上限204であり、表2の>200という値は
図5には「200」として示す)。所望のTS/M比及び伸び値が得られるように、ポリマー、コポリマー、又はこれらの混合物を適当に選択できることは、基本的に一片ではがすことのできる化粧品組成物の設計に有用であり得る。
【0090】
化粧品組成物の特性は、可塑剤等の添加剤の適当な選択により変化させてもよい。SELVOL ULTALUX FAと、以下の表による様々な組成範囲の各種可塑剤を用いて、多数のサンプルを作成した。
【0094】
上述のように、サンプルのフィルムを製造し、分析した。可塑剤と可塑剤の含有量に応じて、得られたフィルムの特性を、
図7〜9に示す。全体的に、引張強度及び弾性率は可塑剤の含有量の増加とともに減少し、破断点伸びは可塑剤の含有量の増加とともに増加することが認められる。しかしながら、特定の可塑剤及び含有量の全体的な影響は、弾性率に関して
図7に示すように、大きく異なり得る。例えば、他は一定の組成物において可塑剤を1%用いると、5000psi未満から50000psiを超える範囲の弾性率の値を結果として生じる。それゆえ、本明細書の実施形態による組成物の適切な選択及び調整は、そうしなければ、有用な化粧品組成物に到達するまでのランダムな配合及び試験に伴う試行錯誤の量を最小限にし得る。
【0095】
他の可塑剤の影響はまた、
図7〜9に示すデータの分析に基づいて予測し得る。可塑剤の大きさ、水酸基含有量、幾何学的構造、及び流体力学的容積、並びに、可塑剤が溶液中でどのように巻き付き、作用するかが、化粧品組成物の特性に影響を与え得る。このような関係の知識を、有利には、化粧品組成物の特性を調整するために、本明細書の実施形態に従って用いてよい。
【0096】
例えば、弾性率と引張強度が、可塑剤中の末端OH基の重量%に関して逆相関を有してよく、弾性率と引張強度が、可塑剤の大きさ(分子量)に関して比例関係を有してよく、破断点伸びが可塑剤中の%末端OH基に関して比例していてよい。
図10に示すように、重量パーセントOHに対する可塑剤の分子量の平方根の割合に対し、弾性率(単位psi)をプロットすると、0.9より大きなR
2値を有する直線当てはめになる(良好な適合を示す)。従って、与えられたポリビニルアルコールまたはポリビニルアルコールコポリマーに対し、可塑剤及びその量を、所望の弾性率になるように選択し得る。同様の相関関係は、引張強度、TS/M比、及び伸びに対しても存在し得、データストア内及び各種特性間において保存されてよく、これらの関係を、所望の結果に応じるように組成物を選び組成物を調整するために、効果的に用いてよい。
【0097】
上記表4は、また、添加量(例えば、可塑剤、香料、防腐剤等)と得られるマスク特性との間の関係の理解の有用性を示す、2つの完全に配合されたフェイスマスク配合物を含んでよい。Cucmber Mellon及びFresh Flowersの完全配合した製品は、以下の組成物を有する:
【表17】
これらの完全に配合されたサンプルは、模擬フェイスマスクの結果を強調し、さらに、TS/MOD、破断点伸び、一片での剥離能力、感触等により示されるように、実用的なフェイスマスク製品を、所望する特性のセットを有するように、本明細書の実施形態によって、設計または調整し得ることを示す。
図6は、表4の実施例についてTS/Modに対する破断点伸びをプロットしたものであり、完全に配合されたサンプルを含む。
【0098】
可塑剤の付着性への影響も調べた。いくつかのサンプルを、表12に示す配合に従って、SELVOL ULTALUX FA、SELVOL ULTALUX AD、又はSELVOL ULTALUX SCの1つを用いて配合した。
【0100】
その後、上述のように、サンプルのフィルムを製造し、分析した。フィルムの付着性を
図11に示す。付着性は、プロピレングリコール含有量の増加とともに減少するが、フィルムの付着性は大きく異なり得る。
【0101】
付着性はまた、使用されるコモノマーに応じて、予想外に変化し得る。SELVOL ULTALUX ADを用いる配合物への可塑剤の影響を調べた。組成物を上記表11に示したものと同様に配合した。その後、上述のようにサンプルのフィルムを製造し、分析した。フィルムの付着性を
図12に示す。グリセリン、プロピレングリコール、及びTMP(トリメチロールプロパン)に対する付着性の値は、可塑剤含有量の増加にともなって減少した。しかしながら、PEG300については、アミンコポリマーに対する付着性の値が、可塑剤含有量の増加にともない増加した。これは、可塑剤の組成物内での順応の仕方、又は、ポリマーのアミン基との他の化学的相互作用の結果かもしれない。比較上、
図13に、SELVOL ULTALUX FAを用いた同様の配合物に対する付着性の結果を示すが、ここでは、PEG300可塑剤は、可塑剤含有量の増加にともなう付着性の増加を示さなかった。
【0102】
図3に関して上に述べたように、SELVOL ULTALUX FA及びSELVOL ULTALUX ADの混合物は、付着性に関し相乗的な結果を示したが、この混合物は、個々のポリマーに対する結果に基づいて予測されるより大きな付着性の値を有した。
図14〜16は、表11と同様に配合し上述のように分析した各種可塑剤をSELVOL ULTALUX FA(
図14)、SELVOL ULTALUX AD(
図15)、及びこれら2つの50:50の混合物(
図16)に添加した結果を示す。付着性への可塑剤の影響は、明らかに、ポリマー、コポリマー、及び可塑剤の間の相互作用に依存する。これはさらに、上の実施例34〜36でも例示され、増粘剤及びポリマー比をこれらのサンプル内でわずかに変えたことを注意しなければならないけれども、実施例36において可塑剤を除去すると、ガラスへの付着性が際だって減少し、OH含有量の高い可塑剤を添加すると、500g超えから350g未満へと付着性が低下する。
【0103】
付着性の相乗効果は、
図18にも示される。3つの組成物を、水82wt%、ポリマー15wt%、ポリソルベート20を3wt%含むように作成した。調査したポリマーには、ULTALUX AD、99%を超える加水分解度を有し、室温での4%溶液粘度が28〜32cPsの高分子量グレードのポリビニルアルコールSelvol
TM125、及び、ULTALUX ADとSelvol
TM125の同量混合物が含まれた。これらの組成物を2つの基板、ガラス及びPETに塗布して、付着性を上記のように測定した。
図18に示すように、Selvol
TM125のPET上での付着性は、ULTALUX ADに対する付着性より小さく、混合物の付着性は、個々の組成物両方の付着性の中間である。対照的に、Selvol
TM125に対するガラス上への付着性は、ULTALUXに対する付着性より小さいが、混合物の付着性は、個々の組成物両方の付着性より大幅に大きい。
図18は、使用された混合物が各種基板に対し所望の特性を達成するためにはどのように調整され得るかを示す。
【0104】
従って、可塑剤及びポリマーの相対的な効果は、可塑剤の大きさ、OH含有量、対象とする基板の特性、及び上で述べた他の特性、並びに、使用されているポリビニルアルコールポリマー又はコポリマーの性質に依存し得る。これらの効果は、有利には、
図17に示したように、3桁にわたって付着性を調整するために用いられてよく、フェイスマスクの剥離性、除毛剤の改良、持ちの良いカラー化粧品の提供及び角栓の最適化を含む、本明細書の実施形態による化粧品組成物の特性を調整するために用いられてよい。このような組成物の調整は、以下、表13にさらに示し得る。
【0106】
表13は、増粘剤及びポリマーの種類のマイナーな変化が、どのように、付着特性、粘度、及び降伏値に大きな揺れを生じるかを示す。配合Cは、十分な粘度及び降伏値を有し、ガラスへの付着性が比較的低い、液だれしないフェイスマスク(例えば、剥離フェイスマスク)に類似である。配合Bは、毛穴シート及び角栓で使用されるのに要求される下限に近い付着性を有し、配合A及びDは、毛穴シート及び角栓で使用されるのに要求される上限に近い付着性を有する。
【0107】
上で述べたように、ポリビニルアルコール、及び、アミドコモノマー、ピロリドンコモノマー、及びスルホン酸コポリマーを含むもの等のポリビニルアルコールコポリマーは、フェイスマスク、毛穴シート及び除毛剤等の各種化粧品組成物を形成するために用いることができる。このような組成物は、有利な範囲の、引張、付着及びテクスチャ特性を提供し得る。そして、得られる特性を、改良された付着性、剥離性、活性送達、寿命、又は他の所望する特性を有する化粧品組成物を製造するために用いてよい。例えば、本明細書に開示の組成物は、有利には、液だれせず、所望の付着性を提供し、一片で引きはがすことができる。本明細書に開示の実施形態は、また、マスク組成物の機械的特性を調整する能力を提供し、有利には、化粧品組成物製造業者、又はポリマー供給業者が、新しい改良された製品に対する顧客の需要を満たすコポリマー及び化粧品組成物成分を決定できるようにする。
【0108】
本開示は、限られた数の実施形態を含むが、この開示の利益を有する当業者は、本開示の範囲から逸脱しない他の実施形態が考案され得ることを認識するであろう。従って、本開示の範囲は添付の特許請求項の範囲によってのみ限定されるべきである。