(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6096978
(24)【登録日】2017年2月24日
(45)【発行日】2017年3月15日
(54)【発明の名称】ガムロジン保護コーティング及び使用方法
(51)【国際特許分類】
C08L 93/04 20060101AFI20170306BHJP
C09D 193/04 20060101ALI20170306BHJP
C09D 7/12 20060101ALI20170306BHJP
C09D 5/02 20060101ALI20170306BHJP
【FI】
C08L93/04
C09D193/04
C09D7/12
C09D5/02
【請求項の数】14
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-500167(P2016-500167)
(86)(22)【出願日】2014年1月15日
(65)【公表番号】特表2016-519689(P2016-519689A)
(43)【公表日】2016年7月7日
(86)【国際出願番号】US2014011740
(87)【国際公開番号】WO2014143400
(87)【国際公開日】20140918
【審査請求日】2015年9月11日
(31)【優先権主張番号】13/831,452
(32)【優先日】2013年3月14日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503455363
【氏名又は名称】レイセオン カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100122404
【弁理士】
【氏名又は名称】勝又 秀夫
(72)【発明者】
【氏名】ルーク エム.フラエティ
(72)【発明者】
【氏名】ランドル イー.ナー
(72)【発明者】
【氏名】ティファニー ティー.ランドル
【審査官】
岡▲崎▼ 忠
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−003722(JP,A)
【文献】
特開平04−313491(JP,A)
【文献】
特開昭47−004061(JP,A)
【文献】
特開平04−057899(JP,A)
【文献】
特表平06−509368(JP,A)
【文献】
特表2003−515456(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 93/00−93/04
C09D 5/00−5/46
7/00−7/14
193/00−193/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガムロジン;
トリクロロエタン、アセトン イソプロピルアルコール(IPA)、IPAと水との組み合わせ、トルエン、ベンゼン、2−プロパノール(IPA)、メチルエチルケトン(MEK)、トルエン/アセトン/メチルエチルケトン(MEK)とIPAとの組み合わせ、1,1−ジクロロエタン、酢酸イソアミル、酢酸セロソルブ、アセトン、キシレン、1,1,1,1−テトラクロロメタン、1,1,2,2−テトラクロロエテン、1,1,1−トリクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、1,1−ジクロロエタン、1,1−ジクロロエテン、1,2−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエテン、1,1−ジクロロ−1−ブロモエタン、1,1−ジクロロ−1−ブロモエテン、1−ブロモ−1−クロロ−2−クロロエテン、1,1,1−トリブロモエタン、1,1,2−トリブロモエテン、水中のエチレングリコール、水中のジエチレングリコール、水中のポリエチレングリコール(PEG)、ポリエチレンジグリコール、テルペン系有機化合物、及びこれらの組み合わせよりなる群から選択される乳化剤;並びに
炭化水素油、天然由来オイル、グリセロール、及びこれらの組み合わせよりなる群から選択されるランダム化添加剤;
を含有し、
ガムロジンと乳化剤とが、乳化剤1〜3部に対してガムロジン4〜8部の比で混合されており、そして
ランダム化添加剤が3質量%〜45質量%の範囲の量で存在する、
ハンダ濡れ性を維持するための保護コーティング組成物。
【請求項2】
ガムロジンがウォーターホワイトガムロジンである、請求項1に記載の保護コーティング組成物。
【請求項3】
水中のPEGの分子量が5,000ダルトン以下である、請求項1に記載の保護コーティング組成物。
【請求項4】
ポリエチレンジグリコールが、メチルジグリコール、エチルジグリコール、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ブチルジグリコール、グリコールブチルエーテル、アリルジグリコール、及びこれらの組み合わせよりなる群から選択される、請求項1に記載の保護コーティング組成物。
【請求項5】
テルペン系有機化合物が、ヘミテルペン、モノテルペン、セスキテルペン、ジテルペン、セステルペン、トリテルペン、及びリン酸塩置換イソプレン、並びにこれらの組み合わせよりなる群から選択される、請求項1に記載の保護コーティング組成物。
【請求項6】
ランダム化添加剤が、トウゴマ種子油、コーン油、グレープシード油、オリーブ油、ピーナッツ油、大豆油、ひまわり種子油、クルミ油、グリセリン、ヘンプ油、ホホバ油、ラノリン油、ティーツリーオイル、小麦胚芽油、ポリエチレングリコール、アジピン酸エチレン、及びベンゾアルキルジオールよりなる群から選択される、請求項1に記載の保護コーティング組成物。
【請求項7】
ランダム化添加剤が10質量%の量で存在する、請求項1に記載の保護コーティング組成物。
【請求項8】
フィラーを更に含有する、請求項1に記載の保護コーティング組成物。
【請求項9】
フィラーが、ホウ酸ナトリウム水和物、ホウ酸、コハク酸、ヒュームドシリカ、カットグラスファイバー、酸化アルミニウム、微粉化セラミクス、絶縁性カーボンナノチューブ(CNT)、カーボンジオデシックボール、ナッツ殻粒子、ナイロン66粉砕物、ナイロン66誘導体、二酸化シリカ粉砕物、硫酸カリウム、及びこれらの混合物よりなる群から選択される、請求項8に記載の保護コーティング組成物。
【請求項10】
回路カード上に請求項1の保護コーティング組成物を塗布する工程;
該回路カードを乾燥して被覆された回路カードを得る工程;
該被覆されたカードを1年以下の期間貯蔵する工程;及び
該被覆された回路カードから保護コーティング組成物を除去する工程
を含む、回路カードを貯蔵のために保護する方法。
【請求項11】
保護コーティング組成物を除去する工程が石ケン溶液又は有機溶媒を用いることを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
保護コーティング組成物を除去する工程が、トリクロロエタン、アセトン、トルエン、ベンゼン、イソプロピルアルコール、テトラクロロフルオロエタン、及びこれらの組み合わせよりなる群から選択される有機溶媒を用いることを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
保護コーティング組成物を除去する工程が、洗剤を用いることを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
回路カード上に請求項1の保護コーティング組成物を塗布する工程;
該回路カードを乾燥して被覆された回路カードを得る工程;
該被覆されたカードを1年以下の期間貯蔵する工程;及び
該被覆された回路カードをハンダ付けする工程
を含む、回路カードを貯蔵のために保護する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガムロジン組成物及び該組成物を含有する保護コーティングに関する。
【背景技術】
【0002】
製造前の回路カード(CC)アセンブリの貯蔵寿命は、通常のプロセス環境下で約6か月である。世界の電子機器サプライヤーが、中国及びインドのような地域を含む地球規模で拡大していることに鑑みると、プリント配線板(PWB)回路アセンブリ工程に到達する前に4か月までの輸送に供されるものと思われる。米国及び欧州において、危険物質の使用を考慮した環境上の制限が実施されていることから、電子デバイスの鉛系塗料及び鉛系表面仕上げは、鉛フリーのバージョンに置き換えられている。しかし、鉛フリーの表面仕上げ剤は、腐食又は高レベル酸化の存在下でスズウィスカー突起を形成するスズを高レベルで含有する。この金属突起は、隣接する回路トレースと架橋した時に、高レベルの電流を伝導することが可能である。
【0003】
プリント配線板(PWB)の表面仕上げ剤には、信頼性のあるハンダ接合を可能とするために、明確なエンヴィロンメント及び/又は長い貯蔵寿命が要求される。風媒の汚染物質による表面仕上げの劣化及び酸化表面の形成は、双方とも、PWBのハンダ付け貯蔵寿命を決定するための重要な因子である。過去の軍事用途においては無電解金上の無電解ニッケル(ENIG)が使用されていた。バリアを形成し、ハンダ付けされる表面仕上げの貯蔵寿命を延長するためには、無電解スズ、無電解銀、プリフラックス(OSP)、及びその他のイミダゾールコーティングのような商業的な頑強な表面仕上げ剤が使用されている。ハンダ付け工程を妨げる程度は、OSP及びイミダゾールコーティングの厚さ及び表面積の減少に依存する。これらの標準的な有機コーティングを使用すると、継時的に「より劣悪な」状況が発生する。OSP被覆PWBについては、被覆のを損なう指脂及び他の製造上のサポート物質が、プラスチック中に混入することが可能である。被覆されていないPWBについては、メタライズされた表面上に形成される酸化物が、リフロー時にハンダの融点を上げる。保護されていないPWBにおける酸化物の浸透濃度が十分に高いと、コールドハンダ接続が発生し、早期に劣化する。このことは、エレクトロニックデザインにおける微細ピッチ、高密度コンポーネントにとって致命的である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、回路カードアセンブリ及びプリント配線板の製造を改善するために、貯蔵中における回路カードのハンダ濡れ性を維持するための保護コーティングが要求されている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のいくつかの実施態様では、ロジン組成物は、ガムロジン、乳化剤、及びランダム化添加剤を含有する。ガムロジンはウォーターホワイトガムロジンであることができる。乳化剤は、溶媒系又は半水溶性であることができ、ポリビニルアルコールを包含してもよい。ランダム化添加剤は、炭化水素油、天然由来オイル、グリセロール、及びこれらの組み合わせから選択されることができる。
【0006】
本発明のいくつかの実施態様では、回路カードを貯蔵のために保護する方法が提供される。この方法は、ガムロジン、乳化剤、及びランダム化添加剤を含有するロジン組成物を塗布する工程、該回路カードを乾燥して被覆された回路カードを得る工程、該回路カードを貯蔵する工程、及び任意的に該回路カードからロジン組成物を除去する工程、を含む。ロジン組成物を除去する工程は、石ケン溶液及び/又は有機溶媒を用いることを含んでもよい。
【0007】
本発明のこれらの及びその他の特徴及び利点は、添付の図面を組み合わせて考慮しつつ詳細な説明を参照することによって、下記の詳細説明よりよく理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本発明の実施態様によって洗浄する前の銅テスト基板の写真である。
【
図2】
図2は、洗浄、リンス、及び乾燥された銅テスト基板の写真である。
【
図3】
図3は、洗浄され、分離された銅テスト基板に押された2つの親指指紋のうち、左側の1つを示す写真である。
【
図4】
図4は、洗浄され、分離された銅テスト基板に押された2つの親指指紋のうち、右側の1つを示す写真である。
【
図5】
図5は、分離された銅テスト基板の片側に本発明の実施態様によってガム組成物を塗布した後の、
図4の銅テスト基板の写真である。
【
図6】
図6は、銅テスト基板の片側に本発明の実施態様によってガム組成物を塗布し、室温、30〜50%湿度において8か月貯蔵した後の、
図5の銅テスト基板の写真である。
【
図7】
図7は、銅テスト基板の左側に本発明の実施態様によってガム組成物を塗布し、室温、30〜50%湿度において8か月貯蔵した後に洗浄した、
図6の銅テスト基板の写真である。
【
図8】
図8は、本発明の実施態様によって8か月貯蔵した後の、ハンダ付け可能な銅テスト基板の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のいくつかの実施態様では、ガムロジン組成物は効果的であり、容易に除去される保護コーティングである。本発明の実施態様によるガムロジン組成物は、ガムロジン、乳化剤、及びランダム化添加剤を含有する。いくつかの実施態様では、ガムロジン組成物は、銅テスト基板又は回路カードのどのような部分をも、貯蔵及び/又は輸送時にハンダ濡れ性が維持されるように、被覆して保護することが可能であるとの特性を有する。即ち、ガムロジン組成物は、保護するだけではなくハンダ付けすることができ、従って、被覆を除去する必要が排除される。更に、ここに開示されるガムロジン組成物は、ハンダ濡れ性を損なわずに基板から除去することができる。いくつかの実施態様では、本発明のガムロジン組成物は、回路カードのハンダ濡れ性を維持する回路カートアセンブリ(CCA)のための保護コーティングとして使用される。
【0010】
いくつかの実施態様では、ガムロジンとしては、例えば、以下のグレード:N、X、XX、W−G、及びW−Wを挙げることができるが、これらに限定されない。ガムロジンは、種々の企業から入手可能である。企業としては、例えば、Alfa Aesar,Ward Hill,MA,USA;Arizona Chemical Company,Pensacola,FL,USA;Mead Westvaco,Richmond,VA,USA; GEA Barr−Rosin,Maidenhead Berkshire, UK; Cray Valley HSC, Paris La Defense Cedex,France; Jai Bharat Resin and Chemical,Rishikesh,India;Balram Sri Krisna Overseas,Amritsar (Punjab),India;Shanghai Xiaoxiang Chemical Company,Shanghai,China;Shanghai Polymet Commodities,Ltd.,Shanghai,China;Dalian Chemical Import and Export Group Company,Dalian City (Liaoning Prov.),China;Fuzhou Farwell Import and Export Company,Fuzhou,China;Guangxi Qinzhou Capital Success Chemical Company,Qinzhou City,China;及びRoveda Ind. Quim Ltda,Santa Catarina,Brazilを挙げることができるが、これらに限定されない。
いくつかの実施態様ではガムロジンはウォーターホワイトガムロジンである。本発明の実施態様による乳化剤は溶媒系乳化剤及び半水溶性乳化剤を包含する。溶媒系乳化剤としては、例えば、トリクロロエタン、アセトン イソプロピルアルコール(IPA)、IPAと水との組み合わせ、トルエン、ベンゼン、2−プロパノール(IPA)、メチルエチルケトン(MEK)、トルエン/アセトン/メチルエチルケトン(MEK)とIPAとの組み合わせ、1,1−ジクロロエタン、酢酸イソアミル、酢酸セロソルブ、アセトン、キシレン、1,1,1,1−テトラクロロメタン、1,1,2,2−テトラクロロエテン、1,1,1−トリクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、1,1−ジクロロエタン、1,1−ジクロロエテン、1,2−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエテン、1,1−ジクロロ−1−ブロモエタン、1,1−ジクロロ−1−ブロモエテン、1−ブロモ−1−クロロ−2−クロロエテン、1,1,1−トリブロモエタン、1,1,2−トリブロモエテン、及びこれらの組み合わせを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0011】
半水溶性乳化剤としては、例えば、水中のエチレングリコール、水中のジエチレングリコール、水中のポリエチレングリコール(PEG)、水中のポリエチレンジグリコール、水中のテルペン系有機化合物、水中の有機硫酸塩化合物、及びこれらの組み合わせを挙げることができるが、これらに限定されない。有機硫酸塩化合物の非限定的な例は、イソプロピルアルコールと水とのエマルジョン中の、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド、ナトリウムメチルスルフィニルメチリド、トリメチルスルフォニウムヨージド、ジメチルスルホニオプロピオン酸、及びメチルスルホニオメタンを包含する。
【0012】
いくつかの実施態様では、半水溶性乳化剤はポリエチレングリコール(PEG)を包含する。ただし、付加基が添付されてPEGの炭素鎖が増強されている(butteressed)とき(多価グリコール)、高分子量成分はエマルジョンを形成する能力を有さない。いくつかの実施態様では、半水溶性乳化剤は分子量が約5,000ダルトン以下のPEGを包含する。いくつかの実施態様では、半水溶性乳化剤は分子量が約3,000ダルトン以下のPEGを包含する。いくつかの実施態様では、半水溶性乳化剤は分子量が約2,000ダルトン以下のPEGを包含する。いくつかの実施態様では、半水溶性乳化剤はPEGのアジピン酸誘導体である。
【0013】
半水溶性乳化剤として使用されるポリエチレングリコールとしては、例えば、メチルジグリコール、エチルジグリコール、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ブチルジグリコール、グリコールブチルエーテル、アリルジグリコール、及びこれらの組み合わせを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0014】
テルペン化学は、メチルブタ−1,3−ジエン(ヘミテルペンC
5H
8)系の半水溶性洗浄用溶媒に関する仕事として知られている。温水溶液中のテルペン化合物は、水不混和性フラックスの重合生成物を、5%の低い濃度で溶解する。更に、溶液中のモノテルペン(C
10H
16);セスキテルペン(C
15H
24);ジテルペン(C
20H
32);セステルペン(sesterpenes、C
25H
40);及びトリテルペン(C
30H
48)は、水不混和性フラックスの重合生成物を溶解する。
【0015】
イソプレンのリン酸塩置換も、水不混和性フラックスの重合生成物を溶解する働きをする。テルペンのリン酸塩の非限定的な例はイソペンテニルピロリン酸(C
5H
12O
7P
2)である。
【0016】
テルペン(イソプレン)系洗浄用溶液の市販品としては、例えば:Bioact EC7R、Bioact EC7M、Axarel 36、Pinsol、Citraflor EG3、Citraflor EGS、Citraflor EGX、d−limonese FG、及びd−limonese HGを挙げることができる。
【0017】
いくつかの実施態様では、ランダム化添加剤は、炭化水素油、天然由来オイル、及びグリコールを包含するが、これらに限定されない。炭化水素油としては、例えば、トウゴマ種子油、コーン油、グレープシード油、オリーブ油、ピーナッツ油、大豆油、ひまわり種子油、クルミ油、アボカド油、亜麻仁油、及びこれらの組み合わせを挙げることができるが、これらに限定されない。天然由来オイルとしては、例えば、グリセリン、ヘンプ油、ホホバ油、ラノリン油、ティーツリーオイル、及び小麦胚芽油を挙げることができるが、これらに限定されない。グリコールとしては、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、アジピン酸エチレン、ベンゾアルキルジオール、及びこれらの組み合わせを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0018】
いくつかの実施態様では、ガムロジン及び乳化剤とともに、1種のランダム化添加剤を使用することができる。しかし、他の実施態様では、2種以上の添加剤を組み合わせて使用することができる。例えば、2種又はそれ以上の炭化水素油のように、同じ群から2種又はそれ以上を組み合わせて使用することができる。或いは、いくつかの実施態様では、1種の炭化水素油及び1種の天然由来オイル、又は1種のオイル及び1種のグリセロールのように、異なる群からの2種又はそれ以上を使用することができる。添加剤の組み合わせが同じ群からの2種の物質を含む場合(例えば2種の炭化水素油)、いかなる混合比であってもよい。同様に、添加剤の組み合わせが異なる群からの2種以上の物質を含む場合、いかなる混合比であってもよい。しかしながらいくつかの実施態様では、組み合わせがオイル(炭化水素油又は天然由来オイルのいずれであっても)とグリセロールとの混合物を含む場合、オイルのグリセロールに対する質量比は、オイル中にグリセロール約5〜約20%の範囲である。
オイルの鎖が長いほど(即ち、分子量が大きいものほど)テルピン(terpine)ポリマーのランダム化の効果は少なく、分岐鎖の炭化水素は直鎖の炭化水素よりも効果は少ない。グリセロールのオイルに対する比がオイル中に約20%グリセロールよりも多くなると、炭化水素油を単独で使用した場合に比べて、ガムロジン組成物の性能に悪影響を及ぼす。いくつかの実施態様では、これらのランダム化添加剤の混合物は、可溶化されたガムロジン(即ち、乳化剤と混合されたガムロジン)と混合されたときに、約3%〜約45%の量が効果的である。ランダム化添加剤の適合性は、その長期的な効果において変化する。しかし、一般的に、上記のいかなる組み合わせ又は順列についても、ランダム化添加剤の濃度が高いほど、保護コーティングの硬化時間が長くなる。
【0019】
更に、保護ベースコートに乳化剤をより多く加えるほど、乾燥されたコーティングにおける保護コーティングは薄膜となる。いくつかの実施態様では、ガムロジン及び乳化剤混合物中の乳化剤の量は、約30質量%以下である。
【0020】
いくつかの実施態様では、ガムロジンコーティング組成物の調製方法は、ガムロジンを室温において可溶化することを含む。例えば、ガムロジンを乳化剤に加えて可溶化されたガムロジン組成物を形成する。ガムロジン及び乳化剤は、約4〜約8部のガムロジンを約1〜約3部の乳化剤と組み合わせた比で混合される。いくつかの実施態様では、ガムロジン及び乳化剤は、約2部の乳化剤に対して約8部のガムロジンの比で混合される。次いで、可溶化されたガムロジン組成物をランダム化添加剤と混合する。ランダム化添加剤を添加した後、可溶化されたガムロジンとランダム化添加剤との組成物を、約30〜約90℃の範囲に加熱、及び/又は、電磁波動力源に曝露する。電磁波動力源に曝露することにより、ガムロジンコーティング組成物の準プレポリマーが形成される。準プレポリマーは、活性硬化剤又は架橋点リッチ(curative rich)なプレポリマーに混合された過剰の樹脂と部分的に反応したポリマーの混合物である。正味の結果は、糊又はプラスチックのどちらかを形成する、分子量が増大されたポリマー構造である。
【0021】
いくつかの実施態様では、準プレポリマーガムロジン組成物に任意的に表面安定化剤が添加される。表面安定化剤は、ガムロジン組成物の粘着性を減少することができる。表面安定化剤としては、例えば、Dupont’s Zonyl 8857Aのようなフッ素系界面活性剤、及びOmnova PolyFox PF−651のようなフッ素系界面活性剤を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0022】
いくつかの実施態様では、本発明の実施態様によるガムロジン組成物は、ガムロジン、乳化剤、ランダム化添加剤の他に、フィラーを含有する。フィラーは、組成物の粘度を上げて組成物をより揺変性とするために添加することができる。フィラーは、ポリマー化学的に反応性又は非反応性の物質であることができる。反応性物質であるフィラーの非限定的な例は、ポリビニルアルコールへのホウ酸ナトリウム又はコハク酸の付加物を包含する。非反応性物質であるフィラーの非限定的な例は、ヒュームドシリカ(CAB−O−SIL(登録商標)、カットグラスファイバー、酸化アルミニウム、微粉化セラミクス、絶縁性カーボンナノチューブ(CNT)、カーボンジオデシックボール(バッキーボール又はフラーレン)、自然有機系ナッツ殻の微粒子(ナッツ殻粒子)、合成有機微粒子(ナイロン66又は誘導体の微粉砕物)、ガラスビーズ(二酸化シリカ)の微粉砕物、及び無機非反応性微粒子(硫酸カリウム)を包含する。いくつかの実施態様では、ガムロジンコーティング組成物中に使用されるフィラーは、約240℃まで熱的に安定である。
【0023】
いくつかの実施態様では、本発明のガムロジンコーティング組成物は、保護コーティングとして塗布することができる。例えば、本発明のガムロジンコーティング組成物は、回路カードアセンブリ(CCA)を組み立てる前に、プリント配線版(PWB)に塗布することができる。銅テスト基板の例として、洗浄前のものを
図1に、洗浄及び乾燥後のものを
図2に示した。
図3及び4は基板のハンダ濡れ性の比較のために親指の指紋を付けられた銅テスト基板を示し、
図5は左側表面上に(例えばブラシ塗布により)コーティングを塗布した後の銅テスト基板を示す。被覆された表面は、室温又は約60℃以下における約2時間の加熱により、硬化する(即ち乾燥される)。いくつかの実施態様では、部分的に組み立てられたPWBを本発明のガムロジン組成物で被覆して、工程途中に素子及び基板の双方を保護する。
【0024】
ここに開示されたようにガムロジン組成物で被覆されたPWBは、倉庫に貯蔵することができる。この被覆されたPWBは、例えば、約1年間まで貯蔵することができる。
図6は、室温、30〜50%湿度下における8か月後の
図5の銅テスト基板を示す。
【0025】
いくつかの実施態様では、倉庫から移動した後、PWBから保護コーティングを除去する。本発明の実施態様によると、表面に塗布された保護コーティングは、石ケン性水溶液中に浸漬することにより、溶媒和(solvate)することができる。いくつかの実施態様では、石ケン性水溶液は工業用洗剤を含有する。工業用洗剤の例としては、Kyzen洗剤、例えばKyzen 4615(Aquanox(登録商標)、Kyzen Corp.,Nashville,Tennessee)を挙げることができる。いくつかの実施態様では、開示された保護コーティングは、12%Kyzen 4615の石ケン性水溶液中で除去される。いくつかの実施態様では、石ケン性水溶液を用いる除去は、約65〜70℃まで加熱することを含む。
図7及び8は、Kyzen 4615で洗浄した後の
図6の銅テスト基板を示す。拡大図を
図8に示してある
図7の左側は、保護コーティングを有していた左側がハンダ付け可能であることを示す。
【0026】
或いは、組み立て後の感水性のデバイスへの適用については、保護コーティングは、トリクロロエタン、アセトン、トルエン、ベンゼン、2−プロパノール(IPA)、及びテトラクロロフルオロエタン(即ちフレオン)のような溶媒を使用することにより、表面から溶媒和することができる。保護コーティングを除去した後、PWBを脱イオン水でリンスし、次いで必要に応じて素子のハンダ付けのためにフラックスを塗布する。
【0027】
いくつかの実施態様では、ガムロジン保護コーティング組成物は、開示されたガムロジンフラックス/乳化剤/ランダム化剤混合物が、水性溶媒又は有機ポリマー溶媒を含む残余の成分を含めた質量の約20〜約100質量%の範囲内となるように調整される。アクリル系又は変性アクリレート−ウレタンコーティングは、優れた酸素バリア性能を有する。しかし、ポリスチレン又は他のカルボニル変性ポリマー材料のような物質を使用する場合には、ガムロジンフラックス組成物中に低い濃度で添加して、保護コーティングの「洗浄性」(即ち除去性)を維持することができる。
【0028】
本発明の別の実施態様では、ここに開示したガムロジン保護コーティング組成物を塗布し、ハンダ付け前に除去しない。即ち、開示されたガムロジン保護コーティング組成物は、ハンダ付けされることが可能である。従って、保護コーティングの除去工程を排除することができる。
【実施例】
【0029】
以下の実施例は、説明の目的でのみ提示されるものであり、本願の範囲又は内容を限定するものではない。
【0030】
実施例
イソプロピルアルコール(乳化剤)を、ウォーターホワイトロジン8部に対してIPA2部の割合でウォーターホワイトガムロジンと混合した。このロジン及びIPAの混合物を、23℃〜30℃において2時間撹拌及び加熱した。IPAガムロジン混合物9部に対してグレープシード油1部を添加し、被覆保護混合物を形成した。この被覆保護混合物を銅テスト基板上にコートし、終夜で風乾した(
図5)。この銅テスト基板を、室温において30〜50%湿度中に8か月貯蔵した。8か月の貯蔵後、65℃に加熱した12%Kyzen 4615(Kyzen Corp.、ナッシュビル、テネシー)の石ケン性水溶液を用い、該洗浄液中で被覆をブラシでこすり落として、銅テスト基板の被覆面から保護コーティングを除去した。次いで、銅テスト基板を脱イオン水でリンスした。ここで、この基板上に素子をハンダ付けすることができる。
【0031】
ここに記載し、例えば
図7〜8に示したように、本発明の実施態様によるウォーターホワイトガムロジン組成物は、ハンダ付け可能な表面を残して除去し得る効果的なコーティングである。この保護コーティングは、むき出しの銅、ハンダの他、基板、例えばPWB、の上のその他の貯蔵寿命に敏感な材料を保護する酸素及び湿気のバリアとして機能し得る。ここに記載し示したように(例えば
図6)、保護コーティングは製造後のPWBの基板上に残存し、例えば輸送及びCCA製造拠点におけるアセンブリが必要となるまでの貯蔵の間中、表面上に残存することができる。必要な時(例えば素子のハンダ付けのために)、PWB表面上の保護コーティングは水性又は有機溶媒によって容易に除去される。洗浄後の表面は、酸素又はその他の汚染物質の濃度が低く、高活性である。この保護コーティングは、CCAの製造において、歩留りが極めて高く、故障製品の報告率が低い。
【0032】
本発明について、いくつかの例示的実施態様を参照しながら説明し、記述した。当業界において通常の能力を有する者は、以下の特許請求の範囲により定義される本発明の要旨及び範囲を逸脱しない限り、記述された実施態様に対して種々の改変及び変更をなし得ることを理解できるであろう。