(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
5〜95重量%の前記ポリ(フェニレンエーテル)繰り返し単位と、5〜40重量%の前記ジイソシアネート残基繰り返し単位とを含むことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の直鎖熱可塑性ポリウレタン。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明者は、特定のポリ(フェニレンエーテル)部分を含み、吸水性の低減、熱耐性の向上、及び高伸張における強度の向上のうちの1以上において改良された熱可塑性ポリウレタンを調整した。
【0014】
1つの実施の形態は、下記の構造を有する複数のポリ(フェニレンエーテル)繰り返し単位であって、
【化6】
Q
1は、それぞれ個々に、ハロゲン原子、C
1−C
12のヒドロカルビルチオ基、C
1−C
12のヒドロカルビロキシ基、少なくとも2つの炭素原子がハロゲン原子と酸素原子を隔てているC
2−C
12のハロヒドロカルビロキシ基、又は三級ヒドロカルビル基ではない置換又は無置換のC
1−C
12のヒドロカルビル基であり、Q
2は、それぞれ個々に、水素原子、ハロゲン原子、C
1−C
12のヒドロカルビルチオ基、C
1−C
12のヒドロカルビロキシ基、少なくとも2つの炭素原子がハロゲン原子と酸素原子を隔てているC
2−C
12のハロヒドロカルビロキシ基、又は三級ヒドロカルビル基ではない置換又は無置換のC
1−C
12のヒドロカルビル基であり、R
1及びR
2は、それぞれ個々に、水素原子、ハロゲン原子、C
1−C
12のヒドロカルビルチオ基、C
1−C
12のヒドロカルビロキシ基、少なくとも2つの炭素原子がハロゲン原子と酸素原子を隔てているC
2−C
12のハロヒドロカルビロキシ基、又は三級ヒドロカルビル基ではない置換又は無置換のC
1−C
12のヒドロカルビル基であり、m及びnは、それぞれ個々に、0〜20であり、ただし、mとnの和は少なくとも3であり、Yは下記から選択され、
【化7】
R
3〜R
6は、それぞれ個々に、水素原子又はC
1−C
12のヒドロカルビル基であるポリ(フェニレンエーテル)繰り返し単位と、下記の構造を有する複数のジイソシアネート残基繰り返し単位であって、
【化8】
R
7は、それぞれ個々に、C
4−C
18のヒドロカルビル基であるジイソシアネート残基繰り返し単位とを含み、それぞれのポリ(フェニレンエーテル)繰り返し単位の少なくとも1つの末端酸素原子は、ジイソシアネート残基繰り返し単位の末端カルバモイル基に共有結合して、ウレタン部分を形成することを特徴とする熱可塑性ポリウレタンである。
【0015】
本明細書において用いられる「複数」という用語は、少なくとも3つを意味する。「ヒドロカルビル基」という用語は、それ自体で用いられる場合も、接頭辞、接尾辞、又は別の用語のフラグメントとして用いられる場合も、「置換されたヒドロカルビル基」ととくに明記しない限り、炭素及び水素のみを含む残基を指す。ヒドロカルビル残基は、脂肪族、芳香族、直鎖、環状、二環式、分岐鎖、飽和、又は不飽和であってもよい。ヒドロカルビル残基は、脂肪族、芳香族、直鎖、環状、二環式、分岐鎖、飽和、及び不飽和の炭化水素部分の組み合わせを含んでもよい。ヒドロカルビル残基が置換されているものとして記載される場合、ヒドロカルビル残基は、炭素及び水素原子に加えてヘテロ原子を含んでもよい。例えば、Q1は、末端の3,5−ジメチル−1,4−フェニル基と酸化重合触媒のジ−n−ブチルアミン成分との反応により生成されたジ−n−ブチルアミノメチル基であってもよい。
【0016】
ポリ(フェニレンエーテル)繰り返し単位構造において、Q
1は、それぞれ個々に、ハロゲン原子、C
1−C
12のヒドロカルビロキシ基、少なくとも2つの炭素原子がハロゲン原子と酸素原子を隔てているC
2−C
12のハロヒドロカルビロキシ基、又は三級ヒドロカルビル基ではない置換又は無置換のC
1−C
12のヒドロカルビル基、C
1−C
12のヒドロカルビルチオ基であり、Q
2は、それぞれ個々に、水素原子、ハロゲン原子、C
1−C
12のヒドロカルビルチオ基、C
1−C
12のヒドロカルビロキシ基、少なくとも2つの炭素原子がハロゲン原子と酸素原子を隔てているC
2−C
12のハロヒドロカルビロキシ基、又は三級ヒドロカルビル基ではない置換又は無置換のC
1−C
12のヒドロカルビル基である。ある実施の形態において、Q
1は、それぞれ個々に、C
1−C
12のアルキル基、とくにメチル基である。ある実施の形態において、Q
2は、それぞれ個々に、水素原子又はメチル基である。
【0017】
また、ポリ(フェニレンエーテル)繰り返し単位構造において、R
1及びR
2は、それぞれ個々に、水素原子、ハロゲン原子、C
1−C
12のヒドロカルビルチオ基、C
1−C
12のヒドロカルビロキシ基、少なくとも2つの炭素原子がハロゲン原子と酸素原子を隔てているC
2−C
12のハロヒドロカルビロキシ基、又は三級ヒドロカルビル基ではない置換又は無置換のC
1−C
12のヒドロカルビル基である。ある実施の形態において、それぞれのR
1はメチル基であり、それぞれのR
2は水素原子である。一般的に、m及びnは、それぞれ個々に、0〜20であり、ただし、mとnの和は少なくとも3である。ある実施の形態において、mとnの和は4〜16である。一般的に、Yは下記から選択される。
【化9】
ここで、R
3〜R
6は、それぞれ個々に、水素原子又はC
1−C
12のヒドロカルビル基である。ある実施の形態において、Yは下記である。
【化10】
ここで、R
3は、それぞれ個々に、水素原子又はC
1−C
6のアルキル基である。ある実施の形態において、それぞれのR
3はメチル基である。
【0018】
ある実施の形態において、ポリ(フェニレンエーテル)繰り返し単位は、下記の構造を有する。
【化11】
ここで、Q
5及びQ
6は、それぞれ個々に、メチル基又はジ−n−ブチルアミノメチル基であり、a及びbは、それぞれ個々に、0〜20であり、ただし、aとbの和は少なくとも3である。ある実施の形態において、aとbの和は4〜16である。
【0019】
上記の熱可塑性ポリウレタンは、ポリ(フェニレンエーテル)に加えて、下記の構造を有する複数のジイソシアネート残基繰り返し単位を含む。
【化12】
ここで、R
7は、それぞれ個々に、C
4−C
18のヒドロカルビル基である。ジイソシアネート残基繰り返し単位は、有機ジイソシアネート反応物質の残基であり、多数の例を下記に示す。ある実施の形態において、ジイソシアネート残基繰り返し単位は、それぞれ個々に、下記から選択された構造を有する。
【化13】
【0020】
それぞれのポリ(フェニレンエーテル)繰り返し単位の少なくとも1つの末端酸素原子は、ジイソシアネート残基繰り返し単位の末端カルバモイル基に共有結合して、ウレタン部分(−O−C(=O)−NH−)を形成する。このようなポリ(フェニレンエーテル)繰り返し単位とジイソシアネート残基繰り返し単位との間のウレタン結合の例は、下記の構造により示される。
【化14】
【0021】
熱可塑性ポリウレタンは、ポリ(フェニレンエーテル)繰り返し単位及びジイソシアネート残基繰り返し単位に加えて、オプションで、複数のジオール繰り返し単位を更に含んでもよい。ジオール繰り返し単位は、ポリ(フェニレンエーテル)繰り返し単位とは異なる。それぞれのジオール繰り返し単位は、アルキレンジオール、アルキレンエーテルジオール、ポリエーテルジオール、芳香族ジオールのアルコキシレート、又はポリエステルジオールの残基であってもよい。
【0022】
アルキレンジオールの例は、1,2−エタンジオール(エチレングリコール)、1,2−プロパンジオール(プロピレングリコール)、1,4−ブタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、1,3−ブタンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタンジオール、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、及びそれらの組み合わせを含む。
【0023】
アルキレンエーテルジオールの例は、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコール、ジブチレングリコール、トリブチレングリコール、テトラブチレングリコール、及びそれらの組み合わせを含む。
【0024】
ポリエーテルジオールの例は、ポリエチレンエーテルジオール、ポリプロピレンエーテルジオール、ポリブチレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルジオール、エチレンオキシドキャップされたポリプロピレンオキシド、及びそれらの組み合わせを含む。
【0025】
芳香族ジオールのアルコキシレートの例は、ヒドロキノン、レゾルシノール、カテコールのエトキシ化及びプロポキシ化された誘導体、1,1−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−1,2−ジフェニルエタン、1,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−1,2−ジフェニルエタン、1,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2'−ビナフトール、2,2'−ビフェノール、2,2'−ジヒドロキシ−4,4'−ジメトキシベンゾフェノン、2,2'−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2'−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2−ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−ブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−1−フェニルプロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)ヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)ペンタン、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシナフチル)プロパン、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルプロパン、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサン、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2'−メチレンビス(4−メチルフェノール)、2,2'−メチレンビス[4−メチル−6−(1−メチルシクロヘキシル)フェノール]、3,3',5,5'−テトラメチル−4,4'−ビフェノール、3,3'−ジメチル−4,4'−ビフェノール、ビス(2−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−2,6−ジメチル−3−メトキシフェニル)メタン、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)シクロヘキシルメタン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)フェニルメタン、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシルメタン、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,2',3,3',5,5'−ヘキサメチル−4,4'−ビフェノール、オクタフルオロ−4,4'−ビフェノール、2,3,3',5,5'−ペンタメチル−4,4'−ビフェノール、1,1−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、テトラブロモビフェノール、テトラブロモビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールS、2,2'−ジアリル−4,4'−ビスフェノールA、2,2'−ジアリル−4,4'−ビスフェノールS、3,3',5,5'−テトラメチル−4,4'−ビスフェノールスルフィド、3,3'−ジメチルビスフェノールスルフィド、及び3,3',5,5'−テトラメチル−4,4'−ビスフェノールスルホンを含む。
【0026】
ポリエステルジオールの例は、脂肪族ポリエステルジオール(脂肪族ポリエステルポリオールとも呼ばれる)、芳香族ポリエステルジオール(芳香族ポリエステルポリオールとも呼ばれる)、及びポリカプロラクトンジオールを含む。芳香族ポリエステルジオールは、芳香族繰り返し単位を含み、ポリ(エチレンテレフタラート)及びポリ(ブチレンテレフタラート)のように、オプションで脂肪族繰り返し単位を更に含んでもよいことは理解されよう。
【0027】
ポリマー鎖の末端における未反応の官能基は、熱可塑性ポリウレタンを溶融加工する間に更なる反応を受けうるので、分子量を制御し、より安定な材料を得るために、1価フェノール又は1価アルコール又はモノイソシアネートがポリマーのエンドキャップのために用いられてもよい。
【0028】
熱可塑性ポリウレタンのポリ(フェニレンエーテル)繰り返し単位及びジイソシアネート残基繰り返し単位の重量%は、熱可塑性ポリウレタンを生成するヒドロキシ二末端ポリ(フェニレンエーテル)及び有機ジイソシアネートの分子量に依存する。一般に、熱可塑性ポリウレタンは、熱可塑性ポリウレタンの重量を基準として、5〜95重量%のポリ(フェニレンエーテル)繰り返し単位と、5〜40重量%のジイソシアネート残基繰り返し単位を含む。熱可塑性ポリウレタンは、オプションで、5〜70重量%のジオール繰り返し単位を更に含んでもよい。それぞれのジオール繰り返し単位は、アルキレンジオール、アルキレンエーテルジオール、ポリエーテルジオール、芳香族ジオールのアルコキシレート、又はポリエステルジオールの残基を含む。
【0029】
ある実施の形態において、熱可塑性ポリウレタンは、10000〜250000原子質量単位、具体的には50000〜250000原子質量単位の重量平均分子量を有する。
【0030】
熱可塑性ポリウレタンのとくに具体的な実施の形態において、ポリ(フェニレンエーテル)繰り返し単位は、下記の構造を有し、
【化15】
Q
5及びQ
6は、それぞれ個々に、メチル基又はジ−n−ブチルアミノメチル基であり、a及びbは、それぞれ個々に、0〜20であり、ただし、aとbの和は少なくとも3であり、ジイソシアネート残基繰り返し単位は、下記から選択された構造を有し、
【化16】
熱可塑性ポリウレタンは、複数のジオール繰り返し単位を更に含み、それぞれのジオール繰り返し単位は、アルキレンジオール、アルキレンエーテルジオール、ポリエーテルジオール、芳香族ジオールのアルコキシレート、又はポリエステルジオールの残基を含む。
【0031】
本発明は、熱可塑性ポリウレタンにより形成された物品を含む。このような物品を形成する好適な方法は、単層及び多層のシート押出、射出成形、ブロー成形、フィルム押出、異形押出、引抜成形、圧縮成形、熱成形、圧力成形、液圧成形、真空成形などを含む。上記の物品製造方法の組み合わせが用いられてもよい。ある実施の形態において、物品は射出成形又は異形押出により形成される。押し出しにより形成可能な物品の例は、ケーブル被覆材、スパイラルチューブ、気送管、ブロー成形されたベロー、及びフィルムを含む。射出成形により形成可能な物品の例は、スキーブーツシェル、スポーツシューズのソール、キャスタータイヤ、自動車車体パネル、及び自動車ロッカーパネルを含む。
【0032】
本発明は、熱可塑性ポリウレタンを生成する方法であって、ヒドロキシ二末端ポリ(フェニレンエーテル)と有機ジイソシアネートとを反応させて熱可塑性ポリウレタンを生成するステップを含み、前記ヒドロキシ二末端ポリ(フェニレンエーテル)は、下記の構造を有し、
【化17】
Q
1は、それぞれ個々に、ハロゲン原子、C
1−C
12のヒドロカルビルチオ基、C
1−C
12のヒドロカルビロキシ基、少なくとも2つの炭素原子がハロゲン原子と酸素原子を隔てているC
2−C
12のハロヒドロカルビロキシ基、又は三級ヒドロカルビル基ではない置換又は無置換のC
1−C
12のヒドロカルビル基であり、Q
2は、それぞれ個々に、水素原子、ハロゲン原子、C
1−C
12のヒドロカルビルチオ基、C
1−C
12のヒドロカルビロキシ基、少なくとも2つの炭素原子がハロゲン原子と酸素原子を隔てているC
2−C
12のハロヒドロカルビロキシ基、又は三級ヒドロカルビル基ではない置換又は無置換のC
1−C
12のヒドロカルビル基であり、R
1及びR
2は、それぞれ個々に、水素原子、ハロゲン原子、C
1−C
12のヒドロカルビルチオ基、C
1−C
12のヒドロカルビロキシ基、少なくとも2つの炭素原子がハロゲン原子と酸素原子を隔てているC
2−C
12のハロヒドロカルビロキシ基、又は三級ヒドロカルビル基ではない置換又は無置換のC
1−C
12のヒドロカルビル基であり、m及びnは、それぞれ個々に、0〜20であり、ただし、mとnの和は少なくとも3であり、Yは下記から選択され、
【化18】
R
3〜R
6は、それぞれ個々に、水素原子又はC
1−C
12のヒドロカルビル基であり、前記有機ジイソシアネートは、下記の構造を有し、
【化19】
R
7は、それぞれ個々に、C
4−C
18のヒドロカルビレン基であることを特徴とする方法を含む。
【0033】
ポリ(フェニレンエーテル)繰り返し単位について上述した構造上の変形例は全て、それらに由来するヒドロキシ二末端ポリ(フェニレンエーテル)にも適用される。ヒドロキシ二末端ポリ(フェニレンエーテル)を調整する方法は既知である。例えば、それらは、Carrilloらによる米国特許第7,541,421号などに記載されるように、1価フェノールと2価フェノールの共重合により調整できる。ヒドロキシ二末端ポリ(フェニレンエーテル)は、例えば、Sabic Innovative Plastics社のPPOTM SA90樹脂として入手することも可能である。
【0034】
反応に使用可能な有機ジイソシアネートの例は、1,4−テトラメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、1,12−ドデカメチレンジイソシアネート、シクロヘキサン−1,3−ジイソシアネート、及びシクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、1−イソシアネート−2−イソシアネートメチルシクロペンタン、1−イソシアネート−3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチル−シクロヘキサン(ジイソシアン酸イソホロン、IPDI)、ビス(4−イソシアネートシクロヘキシル)メタン、2,4'−ジシクロヘキシル−メタンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)−シクロヘキサン、1,4−ビス(イソシアネートメチル)−シクロヘキサン、ビス(4−イソシアネート−3−メチル−シクロヘキシル)メタン、α,α,α',α'−テトラメチル−1,3−キシリレンジイソシアネート、α,α,α',α'−テトラメチル−1,4−キシリレンジイソシアネート、1−イソシアネート−1−メチル−4(3)−イソシアネートメチルシクロヘキサン、2,4−ヘキサヒドロトルエンジイソシアネート、2,6−ヘキサヒドロトルエンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、2,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ジイソシアネートナフタレン、及びそれらの混合物を含む。ある実施の形態において、ジイソシアネートは、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、1−イソシアネート−3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン(ジイソシアン酸イソホロン、IPDI)、ビス(4−イソシアネートシクロヘキシル)メタン、α,α,α',α'−テトラメチル−1,3−キシリレンジイソシアネート、α,α,α',α'−テトラメチル−1,4−キシリレンジイソシアネート、1−イソシアネート−1−メチル−4(3)−イソシアネートメチルシクロヘキサン、2,4−ヘキサヒドロトルエンジイソシアネート、2,6−ヘキサヒドロトルエンジイソシアネート、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルイレンジイソシアネート、2,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3−ジメチル−4,4−ビフェニルジイソシアネート、ナフタレン−1,5−ジイソシアネート、1−イソシアネート−3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、ポリフェニレンジイソシアネート、又はそれらの混合物を含む。
【0035】
上述したように、有機ジイソシアネートは、ヒドロキシ二末端ポリ(フェニレンエーテル)に加えて、ジオールと反応されてもよい。ジオールは、アルキレンジオール、アルキレンエーテルジオール、ポリエーテルジオール、芳香族ジオールのアルコキシレート、ポリエステルジオール、及びそれらの組み合わせから選択される。
【0036】
有機ジイソシアネートは、ヒドロキシ二末端ポリ(フェニレンエーテル)に加えて、オプションで、ジアミンと反応されてもよい。特定のジアミンは、例えば、トルエンジアミン、ジメチルチオトルエンジアミン、3,5−ジエチルトルエン−2,4−ジアミン、3,5−ジエチルトルエン−2,6−ジアミン、メチレンビス(2,6−ジエチルアニリン)、及びそれらの組み合わせを含む。ジアミンが使用される場合、生成物のポリウレタンは、それぞれのアミン基がイソシアネート基と反応してウレア部分を形成した繰り返し単位を含む。
【0037】
有機ジイソシアネートと、ヒドロキシ二末端ポリ(フェニレンエーテル)及びオプションでジオールとの反応により、直鎖熱可塑性ポリウレタンが生成される。分岐鎖又は架橋されたポリウレタンが必要であれば、3以上のヒドロキシ基を有するポリ(フェニレンエーテル)、及び/又は、3以上のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物、及び/又は、少なくとも3つのヒドロキシル基を有するポリオールが使用されてもよい。
【0038】
下記の実施例において示されるように、ヒドロキシ二末端ポリ(フェニレンエーテル)と有機ジイソシアネートとの反応は、触媒の不存在下で実行されてもよい。
【0039】
または、下記の実施例において示されるように、反応は触媒の存在下で実行されてもよい。好適な触媒は、第三級アミン、及びスズ、ビスマス、及び亜鉛の金属化合物を含む。第三級アミン触媒は、トリエチレンジアミン(TEDA、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、DABCO)、ジメチルシクロヘキシルアミン(DMCHA)、ジメチルエタノールアミン(DMEA)、及びN−エチルモルホリンを含む。特定の金属化合物は、カルボン酸ビスマス及びカルボン酸亜鉛、有機スズ化合物(ジラウリン酸ジブチルスズ、及びオクタン酸第一スズなどのカルボン酸スズを含む)、スズ、ビスマス、及び亜鉛の酸化物、及びスズ、ビスマス、及び亜鉛のメルカプチドを含む。
【0040】
ヒドロキシ二末端ポリ(フェニレンエーテル)と有機ジイソシアネートとの反応は、溶媒の存在下で実行されてもよい。好適な溶媒は、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、アニソール、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、及びそれらの組み合わせなどの芳香族系溶媒を含む。
【0041】
または、ヒドロキシ二末端ポリ(フェニレンエーテル)と有機ジイソシアネートとの反応は、溶媒の不存在下、すなわち塊状で実行されてもよい。
【0042】
熱可塑性ポリウレタンを生成する方法のとくに具体的な実施の形態において、ヒドロキシ二末端ポリ(フェニレンエーテル)は、下記の構造を有し、
【化20】
Q
5及びQ
6は、それぞれ個々に、メチル基又はジ−n−ブチルアミノメチル基であり、a及びbは、それぞれ個々に、0〜20であり、ただし、aとbの和は少なくとも3であり、有機ジイソシアネートは、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、トルエン−2,6−ジイソシアネート、トルエン−2,4−ジイソシアネート、及びそれらの組み合わせからなる群から選択され、この方法は、有機ジイソシアネートと、ヒドロキシ二末端ポリ(フェニレンエーテル)、及び、アルキレンジオール、アルキレンエーテルジオール、ポリエーテルジオール、芳香族ジオールのアルコキシレート、ポリエステルジオール、及びそれらの組み合わせからなる群から選択されたジオールとを反応させるステップを含む。
【0043】
本明細書において開示される全ての範囲は端点を含み、端点は独立して互いに組み合わせ可能である。
【0044】
本発明は、少なくとも以下の実施の形態を含む。
【0045】
実施の形態1:下記の構造を有する複数のポリ(フェニレンエーテル)繰り返し単位であって、
【化21】
Q
1は、それぞれ個々に、ハロゲン原子、C
1−C
12のヒドロカルビルチオ基、C
1−C
12のヒドロカルビロキシ基、少なくとも2つの炭素原子がハロゲン原子と酸素原子を隔てているC
2−C
12のハロヒドロカルビロキシ基、又は三級ヒドロカルビル基ではない置換又は無置換のC
1−C
12のヒドロカルビル基であり、Q
2は、それぞれ個々に、水素原子、ハロゲン原子、C
1−C
12のヒドロカルビルチオ基、C
1−C
12のヒドロカルビロキシ基、少なくとも2つの炭素原子がハロゲン原子と酸素原子を隔てているC
2−C
12のハロヒドロカルビロキシ基、又は三級ヒドロカルビル基ではない置換又は無置換のC
1−C
12のヒドロカルビル基であり、R
1及びR
2は、それぞれ個々に、水素原子、ハロゲン原子、C
1−C
12のヒドロカルビルチオ基、C
1−C
12のヒドロカルビロキシ基、少なくとも2つの炭素原子がハロゲン原子と酸素原子を隔てているC
2−C
12のハロヒドロカルビロキシ基、又は三級ヒドロカルビル基ではない置換又は無置換のC
1−C
12のヒドロカルビル基であり、m及びnは、それぞれ個々に、0〜20であり、ただし、mとnの和は少なくとも3であり、Yは下記から選択され、
【化22】
R
3〜R
6は、それぞれ個々に、水素原子又はC
1−C
12のヒドロカルビル基であるポリ(フェニレンエーテル)繰り返し単位と、下記の構造を有する複数のジイソシアネート残基繰り返し単位であって、
【化23】
R
7は、それぞれ個々に、C
4−C
18のヒドロカルビル基であるジイソシアネート残基繰り返し単位とを含み、それぞれのポリ(フェニレンエーテル)繰り返し単位の少なくとも1つの末端酸素原子は、ジイソシアネート残基繰り返し単位の末端カルバモイル基に共有結合して、ウレタン部分を形成することを特徴とする熱可塑性ポリウレタン。
【0046】
実施の形態2:前記ポリ(フェニレンエーテル)繰り返し単位は、下記の構造を有し、
【化24】
Q
5及びQ
6は、それぞれ個々に、メチル基又はジ−n−ブチルアミノメチル基であり、a及びbは、それぞれ個々に、0〜20であり、ただし、aとbの和は少なくとも3であることを特徴とする実施の形態1に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【0047】
実施の形態3:ジイソシアネート残基繰り返し単位は、それぞれ個々に、下記から選択された構造を有する
【化25】
ことを特徴とする実施の形態1又は2に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【0048】
実施の形態4:複数のジオール繰り返し単位を更に含み、それぞれのジオール繰り返し単位は、アルキレンジオール、アルキレンエーテルジオール、ポリエーテルジオール、芳香族ジオールのアルコキシレート、又はポリエステルジオールの残基を含むことを特徴とする実施の形態1から3のいずれかに記載の熱可塑性ポリウレタン。
【0049】
実施の形態5:5〜95重量%の前記ポリ(フェニレンエーテル)繰り返し単位と、5〜40重量%の前記ジイソシアネート残基繰り返し単位とを含むことを特徴とする実施の形態1から3のいずれかに記載の熱可塑性ポリウレタン。
【0050】
実施の形態6:5〜70重量%のジオール繰り返し単位を更に含み、それぞれのジオール繰り返し単位は、アルキレンジオール、アルキレンエーテルジオール、ポリエーテルジオール、芳香族ジオールのアルコキシレート、又はポリエステルジオールの残基を含むことを特徴とする実施の形態5に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【0051】
実施の形態7:10000〜250000原子質量単位の重量平均分子量を有することを特徴とする実施の形態1から6のいずれかに記載の熱可塑性ポリウレタン。
【0052】
実施の形態8:前記ポリ(フェニレンエーテル)繰り返し単位は、下記の構造を有し、
【化26】
Q
5及びQ
6は、それぞれ個々に、メチル基又はジ−n−ブチルアミノメチル基であり、a及びbは、それぞれ個々に、0〜20であり、ただし、aとbの和は少なくとも3であり、前記ジイソシアネート残基繰り返し単位は、下記から選択された構造を有し、
【化27】
前記熱可塑性ポリウレタンは、複数のジオール繰り返し単位を更に含み、それぞれのジオール繰り返し単位は、アルキレンジオール、アルキレンエーテルジオール、ポリエーテルジオール、芳香族ジオールのアルコキシレート、又はポリエステルジオールの残基を含むことを特徴とする実施の形態1に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【0053】
実施の形態9:下記の構造を有する複数のポリ(フェニレンエーテル)繰り返し単位であって、
【化28】
Q
1は、それぞれ個々に、ハロゲン原子、C
1−C
12のヒドロカルビルチオ基、C
1−C
12のヒドロカルビロキシ基、少なくとも2つの炭素原子がハロゲン原子と酸素原子を隔てているC
2−C
12のハロヒドロカルビロキシ基、又は三級ヒドロカルビル基ではない置換又は無置換のC
1−C
12のヒドロカルビル基であり、Q
2は、それぞれ個々に、水素原子、ハロゲン原子、C
1−C
12のヒドロカルビルチオ基、C
1−C
12のヒドロカルビロキシ基、少なくとも2つの炭素原子がハロゲン原子と酸素原子を隔てているC
2−C
12のハロヒドロカルビロキシ基、又は三級ヒドロカルビル基ではない置換又は無置換のC
1−C
12のヒドロカルビル基であり、R
1及びR
2は、それぞれ個々に、水素原子、ハロゲン原子、C
1−C
12のヒドロカルビルチオ基、C
1−C
12のヒドロカルビロキシ基、少なくとも2つの炭素原子がハロゲン原子と酸素原子を隔てているC
2−C
12のハロヒドロカルビロキシ基、又は三級ヒドロカルビル基ではない置換又は無置換のC
1−C
12のヒドロカルビル基であり、m及びnは、それぞれ個々に、0〜20であり、ただし、mとnの和は少なくとも3であり、Yは下記から選択され、
【化29】
R
3〜R
6は、それぞれ個々に、水素原子又はC
1−C
12のヒドロカルビル基であるポリ(フェニレンエーテル)繰り返し単位と、下記の構造を有する複数のジイソシアネート残基繰り返し単位であって、
【化30】
R
7は、それぞれ個々に、C
4−C
18のヒドロカルビル基であるジイソシアネート残基繰り返し単位とを含み、それぞれのポリ(フェニレンエーテル)繰り返し単位の少なくとも1つの末端酸素原子は、ジイソシアネート残基繰り返し単位の末端カルバモイル基に共有結合して、ウレタン部分を形成することを特徴とする熱可塑性ポリウレタンを含む物品。
【0054】
実施の形態10:前記物品は、フィルム、ケーブル被覆材、スパイラルチューブ、気送管、ブロー成形されたベロー、スキーブーツシェル、スポーツシューズのソール、キャスタータイヤ、自動車車体パネル、及び自動車ロッカーパネルからなる群から選択されることを特徴とする実施の形態9に記載の物品。
【0055】
実施の形態11:熱可塑性ポリウレタンを生成する方法であって、ヒドロキシ二末端ポリ(フェニレンエーテル)と有機ジイソシアネートとを反応させて熱可塑性ポリウレタンを生成するステップを含み、前記ヒドロキシ二末端ポリ(フェニレンエーテル)は、下記の構造を有し、
【化31】
Q
1は、それぞれ個々に、ハロゲン原子、C
1−C
12のヒドロカルビルチオ基、C
1−C
12のヒドロカルビロキシ基、少なくとも2つの炭素原子がハロゲン原子と酸素原子を隔てているC
2−C
12のハロヒドロカルビロキシ基、又は三級ヒドロカルビル基ではない置換又は無置換のC
1−C
12のヒドロカルビル基であり、Q
2は、それぞれ個々に、水素原子、ハロゲン原子、C
1−C
12のヒドロカルビルチオ基、C
1−C
12のヒドロカルビロキシ基、少なくとも2つの炭素原子がハロゲン原子と酸素原子を隔てているC
2−C
12のハロヒドロカルビロキシ基、又は三級ヒドロカルビル基ではない置換又は無置換のC
1−C
12のヒドロカルビル基であり、R
1及びR
2は、それぞれ個々に、水素原子、ハロゲン原子、C
1−C
12のヒドロカルビルチオ基、C
1−C
12のヒドロカルビロキシ基、少なくとも2つの炭素原子がハロゲン原子と酸素原子を隔てているC
2−C
12のハロヒドロカルビロキシ基、又は三級ヒドロカルビル基ではない置換又は無置換のC
1−C
12のヒドロカルビル基であり、m及びnは、それぞれ個々に、0〜20であり、ただし、mとnの和は少なくとも3であり、Yは下記から選択され、
【化32】
R
3〜R
6は、それぞれ個々に、水素原子又はC
1−C
12のヒドロカルビル基であり、前記有機ジイソシアネートは、下記の構造を有し、
【化33】
R
7は、それぞれ個々に、C
4−C
18のヒドロカルビレン基であることを特徴とする方法。
【0056】
実施の形態12:前記有機ジイソシアネートと、前記ヒドロキシ二末端ポリ(フェニレンエーテル)、及び、アルキレンジオール、アルキレンエーテルジオール、ポリエーテルジオール、芳香族ジオールのアルコキシレート、ポリエステルジオール、及びそれらの組み合わせからなる群から選択されたジオールとを反応させるステップを含むことを特徴とする実施の形態11に記載の方法。
【0057】
実施の形態13:前記反応させるステップは、触媒の不存在下で実行されることを特徴とする実施の形態11又は12に記載の方法。
【0058】
実施の形態14:前記反応させるステップは、触媒の存在下で実行されることを特徴とする実施の形態11又は12に記載の方法。
【0059】
実施の形態15:前記反応させるステップは、溶媒の不存在下で実行されることを特徴とする実施の形態11から14のいずれかに記載の方法。
【0060】
実施の形態16:前記ヒドロキシ二末端ポリ(フェニレンエーテル)は、下記の構造を有し、
【化34】
Q
5及びQ
6は、それぞれ個々に、メチル基又はジ−n−ブチルアミノメチル基であり、a及びbは、それぞれ個々に、0〜20であり、ただし、aとbの和は少なくとも3であり、前記有機ジイソシアネートは、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、トルエン−2,6−ジイソシアネート、トルエン−2,4−ジイソシアネート、及びそれらの組み合わせからなる群から選択され、前記方法は、前記有機ジイソシアネートと、前記ヒドロキシ二末端ポリ(フェニレンエーテル)、及び、アルキレンジオール、アルキレンエーテルジオール、ポリエーテルジオール、芳香族ジオールのアルコキシレート、ポリエステルジオール、及びそれらの組み合わせからなる群から選択されたジオールとを反応させるステップを含むことを特徴とする実施の形態11に記載の方法。
【0061】
本発明は、以下の限定的でない実施例により更に説明される。
【0062】
[物質及び方法]
熱可塑性ポリウレタンの合成に用いた試薬を表1に要約する。
【表1-1】
【表1-2】
【0063】
熱可塑性ポリウレタンの特性を明らかにするために下記の試験方法を用いた。
【0064】
物理機械的特性。無単位のショアA及びショアD硬度は、ASTM D2240−05(2010)に準拠して、23℃で測定した。MPaの単位で表される引張強さ、及び、%の単位で表される引張伸びは、ASTM D412−06a(2013)の試験方法Aに準拠し、Instron Universal Testerのモデル1122を用いて、試験速度50.8cm/分(20インチ/分)、23℃で測定した。N/cmの単位で表される引裂強さは、ASTM D624 00(2012)に準拠し、Instron Universal Testerのモデル1122、ダイCを用いて、試験速度50.8cm/分(20インチ/分)、23℃で測定した。%の単位で表される圧縮永久ひずみは、ASTM D395 03(2008)に準拠して、23℃で測定した。%の単位で表されるバショア反発弾性は、ASTM D2632 01(2008)に準拠して、23℃で測定した。%の単位で表されるテーバー摩耗試験の重量減少は、テーバー摩耗試験機を用いて、2000回転、CALIBRADE(登録商標)H-22摩耗輪、及び500g重で測定した。
【0065】
形態及び熱特性。℃の単位で表されるガラス転移温度(Tg)は、ASTM D3418−12e1に準拠し、TA Instruments社のDSC Q10を用いて、80℃で平衡させた後、毎分20℃で200℃まで加熱する熱サイクルで測定した。ガラス転移温度は、TA Instruments社のDMA2980を用いて、窒素雰囲気下、−80〜130℃の温度範囲で、毎分3℃の加熱速度、10Hzの周波数で、動的機械分析(DMA)によっても測定した。μm/m・℃の単位で表される熱膨張係数(CTE)は、TA Instruments社のTMA Q400を用いて、窒素雰囲気下、−80〜130℃の温度範囲、毎分10℃の加熱速度で、熱機械分析により測定した。熱抵抗は、50℃及び70℃で引っ張り特性を測定することにより推測した。熱及び酸化安定性は、空気中で7日間100℃に曝した後の引張応力ひずみ特性及びガラス転移温度の変化を測定することにより推測した。両者とも無単位である比誘電率及び誘電正接は、76A、1MHzの自動静電容量ブリッジ(Boonton Electronic社、モデル76A)の平行プレートを用いて測定した。
【0066】
溶媒耐性及び加水分解安定性。酸耐性は、試料をpH1の塩酸に23℃で3日間浸し、試験前の試料の重量を100%として、試験後の試料の重量の%で表した。塩基耐性は、試料をpH13の水酸化ナトリウムに23℃で3日間浸し、試験前の試料の重量を100%として、試験後の試料の重量の%で表した。溶媒耐性は、試料をトルエン、メチルエチルケトン(MEK)、又はモービルバキュームポンプオイル(SAEグレード20、ISO粘度グレード68)に23℃で3日間浸し、試験前の試料の重量を100%として、試験後の試料の重量の%で表した。吸水性は、50℃、相対湿度100%に7日間曝した後の重量変化%により測定した。
【0067】
それぞれ原子質量単位(amu)で表される重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、2つのPhenomenex PHENOGEL(登録商標)5μmリニアカラム及び紫外線検出器とともに、Agilent1100シリーズHPLCシステムを用いて測定した。ジブチルアミン50ppmとクロロホルムを溶出液とした。注入量は50μlとした。分子量はポリエステル標準により補正しなかった。
【0068】
炭化(char)重量%は、Perkin Elmer社のTGA装置Pyris1を用いて測定した。試料を空気及び窒素中で50℃から800℃まで毎分20℃で加熱した。600、700、及び800℃における残留物を炭化%とした。
【0069】
ポリウレタン生成の反応速度。50℃、60℃、及び70℃におけるPPE−OH
2 0.09と4,4'−MDIの反応の反応速度データを測定した。PPE−OH
2 0.09と4,4'−MDIの反応の反応速度の測定は、磁気スターラー、環流濃縮器、熱電対、及び窒素注入口を装備した300mlの三つ口円筒フラスコ中で実行した。反応フラスコは、温度コントローラを装備した加熱マントルを介して加熱した。
【0070】
PPE−OH2 0.09(0.039当量)を95mlの乾燥トルエンに予備溶解し、スターラープレート上で室温で撹拌した。PPE−OH
2 0.09は、1時間かけて少量ずつトルエンに加えた。得られたPPE−OH
2 0.09の均一なトルエン溶液をメスシリンダーに移し、乾燥トルエンを追加して全量を100mlに調整した。この溶液を反応フラスコに移し、窒素を絶えず流しつつ、混合しながら所望の温度になるまで加熱した。4,4'−MDI(0.045当量)を予め80℃に加熱し、25mlのメスフラスコに入れ、25mlの目盛りに達するまでトルエンを加え、完全に均一になるまで混合し、反応温度まで加熱した。反応フラスコ中の温度が所望の温度に達すると、PPE−OH
2 0.09の溶液に漏斗を介してジイソシアネートの溶液を加えた。溶液のほぼ半分がフラスコに追加された時点を反応の開始時刻とした。特定の時間間隔で反応溶液の試料を除去し、ジ−n−ブチルアミンの滴定(ASTM D5155−10試験方法に準拠)によりジイソシアネート含量を測定した。
【0071】
[実施例1]
PPE−OH
2 0.09と4,4'−MDIの50℃トルエン中での反応の反応速度データを表2に示す。
【表2】
【0072】
[実施例2]
PPE−OH
2 0.09と4,4'−MDIの60℃トルエン中での反応の反応速度データを表3に示す。
【表3】
【0073】
[実施例3]
PPE−OH
2 0.09と4,4'−MDIの70℃トルエン中での反応の反応速度データを表4に示す。
【表4】
【0074】
実施例1、2、及び3は、触媒なしでのヒドロキシ二末端ポリ(フェニレンエーテル)とジイソシアネートの反応を示す。反応速度は温度の上昇とともに増加する。データを
図1において比較する。
【0075】
[実施例4]
この実施例は、50℃におけるPPE−OH
2 0.09と4,4'−MDIの反応に対する0.01%ジラウリン酸ジブチルスズ触媒の効果を示す。データを表5に示す。
【表5】
【0076】
実施例1と実施例4を比較すると、50℃における反応において測定されたスズ触媒の存在下でのPPE−OH
2 0.09とジイソシアネートの反応の速度は、急激な増加(ほぼ12倍)を示す。データを
図2において比較する。
【0077】
50℃(触媒あり及びなし)、60℃、及び70℃におけるイソシアネートの高次の変換に至る2次反応速度を、それぞれ
図3、4、及び5に示す。
【0078】
反応速度パラメータを表6に要約する。ここで、「k」は2次反応速度定数である。
【表6】
【0079】
[実施例5〜11]
予備実施例。PPE−OH
2 0.09、他のポリオールコモノマー、及び鎖延長剤と、4,4'−MDIの溶液重合を、磁気スターラー、環流濃縮器、熱電対、及び窒素注入口を装備した500mlの三つ口円筒フラスコ中で実行した。反応フラスコは、温度コントローラを装備した加熱マントルを介して加熱した。反応温度は反応中±3℃に維持した。
【0080】
特定量の乾燥トルエンを室温で反応フラスコに追加した。PPE−OH
2 0.09を60℃で1時間かけて少量ずつトルエンに追加した。コポリオール、鎖延長剤、及び触媒を反応フラスコに直接追加し、撹拌して均一にした。窒素を絶えず流しつつ、混合物を所望の反応温度に加熱した。測量したイソシアネートをシリンジから反応フラスコに追加し、この時点を反応の開始時刻とした。特定の時間間隔で反応溶液の試料を採取し、ジ−n−ブチルアミンの滴定(ASTM D5155−10)により未反応のジイソシアネートの量を測定した。重合化中にポリマー溶液の粘度が顕著に増大した場合、反応混合物にトルエンを追加した。それぞれの合成において使用したトルエンの総量を表7及び8に示す。
【0081】
PPE−OH
2 0.09、低分子量コポリオール、及び鎖延長剤と2,4'/4,4'MDIを用いた熱可塑性ポリウレタンの合成のフォーミュレーションを表7に示す。PPE−OH
2 0.09、高分子量コポリオール、及び鎖延長剤と2,4'/4,4'MDIを用いた熱可塑性ポリウレタンの合成のフォーミュレーションを表8に示す。
【表7】
【表8】
【0082】
PPE−OH
2 0.09、低分子量コポリオール、及び鎖延長剤と2,4'/4,4'MDIの重合反応の度合いを、溶液重合による合成中、異なる時間間隔でイソシアネートレベル(NCO%)を測定することにより追った。実施例5、6、7、及び8のデータを表9に示す。
【表9】
【0083】
PPE−OH
2 0.09及び高分子量コポリオールと2,4'/4,4'MDIの重合反応の度合いを、溶液重合による合成中、異なる時間間隔でイソシアネートレベル(NCO%)を測定することにより追った。実施例9、10、及び11のデータを表10に示す。
【表10】
【0084】
表9及び10のデータは、ヒドロキシ二末端ポリ(フェニレンエーテル)がポリオールとともにジイソシアネートと反応して熱可塑性ポリウレタンが得られたことを示す。
【0085】
実施例5〜11において調整された熱可塑性ポリウレタン溶液からキャストしたフィルムの特性を調べた。データを表11及び12に示す。全ての熱可塑性ポリウレタンは、高いガラス転移温度(Tg値)と高い炭化物収量を示した。
【表11】
【表12】
【0086】
[実施例12及び13]
実施例12において、高分子量ヒドロキシ二末端ポリ(フェニレンエーテル)(PPE−OH
2 0.12)と4,4'−MDIから、溶液重合法を用いてポリウレタンを合成した。
【0087】
実施例13において、低分子量ヒドロキシ二末端ポリ(フェニレンエーテル)(PPE−OH
2 0.06)と4,4'−MDIから、溶液重合法を用いてポリウレタンを合成した。
【0088】
実施例12及び13のフォーミュレーション及び特性を表13に要約する。ここで、ヒドロキシ二末端ポリ(フェニレンエーテル)の量は、ジオール及びジイソシアネートの総量を基準とした重量%で表し、ジラウリン酸ジブチルスズの量は、100重量部の樹脂に対する重量部(すなわち、ジオール及びジイソシアネート100重量部に対する重量部)で表す。実施例12及び13において生成された熱可塑性ポリウレタンは、高いTg値及び高い炭化物収量を示した。
【表13】
【0089】
[実施例14、比較実施例A]
塊状重合を用いて熱可塑性ポリウレタンを調整した。ヒドロキシ二末端ポリ(フェニレンエーテル)及びジオールとジイソシアネートのバルク重合によりTPUを生成する一般的な手順は以下の通りである。
1.ヒドロキシ二末端ポリ(フェニレンエーテル)及びジオールの脱気して予熱した混合物をスピードミキサーのカップに加えた;
2.スピードミキサーカップの内容物を毎分2200回転(rpm)で30秒間混合した;
3.得られた混合物をオーブンで15分間120℃に加熱した;
4.80℃の液体ジイソシアネートをシリンジから加熱した混合物に加えた;
5.得られた混合物をスピードミキサーにより2200rpmで30秒間混合した;
6.ポリテトラフルオロエチレンのシートで覆われた120℃のアルミニウム鋳型に混合物を移した;
7.ゲルタイムにおいて、鋳型を閉じ、120℃で2時間反応を進めた;
8.反応混合物を100℃で20時間更に反応させた;
9.得られた物質のシートをCarverプレス機において圧縮成形により調整した。
【0090】
実施例14において、PPE−OH
2 0.09、ポリ(オキシテトラメチレン)グリコール、ブタンジオール、及び4,4'−MDIを用いて塊状重合により熱可塑性ポリウレタンを調整した。フォーミュレーション及び特性を表14に要約する。材料は、熱可塑性エラストマーの特徴である非常に高い破断伸度を示す。ヒドロキシ二末端ポリ(フェニレンエーテル)を用いずに調整した比較実施例Aに比べて、実施例14は、より高いビカット軟化温度、及びより高い炭化物収量、及び高温においてより良好な機械的特性を有した。
【0092】
[実施例15〜17、比較実施例B]
ヒドロキシ二末端ポリ(フェニレンエーテル)、ポリエーテルジオール2(エチレンオキシドでキャップされたオキシプロピル化ポリエーテルジオール)、ブタンジオール、及び4,4'−MDIを用いて塊状重合により一連の熱可塑性ポリウレタンを調整した。ヒドロキシ二末端ポリ(フェニレンエーテル)の量は、比較実施例B、実施例15、実施例16、及び実施例17において、それぞれ、0、10、20、及び30重量%であった。フォーミュレーション及び特性を表15に要約する。全ての材料は、熱可塑性エラストマーの特徴である非常に高い破断伸度を示した。炭化物収量は、ヒドロキシ二末端ポリ(フェニレンエーテル)のレベルとともに増加した。さらに、テーバー摩耗は、ヒドロキシ二末端ポリ(フェニレンエーテル)のレベルの増加とともに減少した。さらに、引裂強度は、ヒドロキシ二末端ポリ(フェニレンエーテル)のレベルの増加とともに増加した。フォーミュレーション及び特性を表15に要約する。
【表15】
【0093】
比較実施例B及び実施例15〜17の更なる特性を表16に要約する。メチルエチルケトン(MEK)による溶媒耐性試験において、比較実施例B及び実施例15の試料は完全に溶解し、実施例16の試料は一部溶解して構造的一体性を失い、実施例17の試料はおそらく溶媒を吸収したことにより重量が増加した。更なる観測結果は以下を含む。
・ヒドロキシ二末端ポリ(フェニレンエーテル)の残基を含む熱可塑性ポリウレタンではガラス転移温度が上昇した。
・比較実施例B及び実施例17の熱膨張係数は、それぞれのガラス転移温度よりも低い温度では同様であったが、実施例17の熱膨張係数は、そのガラス転移温度よりも高い温度では比較実施例Bよりも低かった。
・ヒドロキシ二末端ポリ(フェニレンエーテル)の残基を含む熱可塑性ポリウレタンの酸化耐性特性(100℃で7日間経過)は、比較実施例Bよりも勝っていた。
・極性及び無極性溶媒に対する溶媒耐性は、ヒドロキシ二末端ポリ(フェニレンエーテル)のレベルの増加とともに向上した。
・強塩基及び強酸に対する耐性は、ヒドロキシ二末端ポリ(フェニレンエーテル)のレベルの増加とともに向上した。
・比誘電率及び誘電正接(loss tangent)は、ヒドロキシ二末端ポリ(フェニレンエーテル)のレベルの増加とともに減少した。
・吸水性は、ヒドロキシ二末端ポリ(フェニレンエーテル)のレベルの増加とともに減少した。
【表16】