(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6097025
(24)【登録日】2017年2月24日
(45)【発行日】2017年3月15日
(54)【発明の名称】クラッチ用アクチュエータ
(51)【国際特許分類】
F16D 28/00 20060101AFI20170306BHJP
【FI】
F16D28/00 Z
【請求項の数】7
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-147285(P2012-147285)
(22)【出願日】2012年6月29日
(65)【公開番号】特開2013-122312(P2013-122312A)
(43)【公開日】2013年6月20日
【審査請求日】2015年6月18日
(31)【優先権主張番号】10-2011-0132266
(32)【優先日】2011年12月9日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】591251636
【氏名又は名称】現代自動車株式会社
【氏名又は名称原語表記】HYUNDAI MOTOR COMPANY
(73)【特許権者】
【識別番号】512172095
【氏名又は名称】啓洋電機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】312012151
【氏名又は名称】株式会社平和バレオ
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】特許業務法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】李 熙 羅
(72)【発明者】
【氏名】金 伯 猷
(72)【発明者】
【氏名】金 連 鎬
(72)【発明者】
【氏名】許 萬 大
(72)【発明者】
【氏名】文 洪 チョル
(72)【発明者】
【氏名】張 鎭 豪
(72)【発明者】
【氏名】張 佑 教
(72)【発明者】
【氏名】金 正 哲
(72)【発明者】
【氏名】李 南 訓
【審査官】
村上 聡
(56)【参考文献】
【文献】
特表2003−533652(JP,A)
【文献】
実開昭62−057561(JP,U)
【文献】
特開2010−255752(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 28/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータの駆動により変速機のクラッチを作動させるクラッチ用アクチュエータであって、
固定子と、
駆動軸及び回転子コアを含む回転子によって駆動するモータと、
前記モータの駆動軸に一部が連結され、前記モータの駆動によりその長さ方向に直線運動するリードスクリューと、
前記リードスクリューと離隔して提供されるロッドと、
前記リードスクリューと前記ロッドとを連結するスライダと、
前記スライダに接するように提供され、前記スライダの直線運動をガイドするガイドレールと、を含み、
前記スライダは、
一側面に前記リードスクリューが連結され、他側面に前記ロッドが連結され、上面及び下面は両側面を連結するように提供され、
前記ガイドレールは、
前記スライダの上面及び下面の少なくともいずれか一つに接するように提供され、
前記スライダと前記ロッドにそれぞれ連結され、前記ロッドが上下方向に移動するように、前記ロッドと前記スライダとを離隔して連結する遊隔部をさらに含むことを特徴とするクラッチ用アクチュエータ。
【請求項2】
前記モータの駆動軸は、内周と外周を含む中空の円筒状に形成されることを特徴とする請求項1に記載のクラッチ用アクチュエータ。
【請求項3】
前記リードスクリューの外周面にはねじ山が形成され、前記駆動軸の内周面の一部にはねじ山が形成されることにより、前記駆動軸の回転によって前記リードスクリューが直線運動することを特徴とする請求項2に記載のクラッチ用アクチュエータ。
【請求項4】
前記リードスクリューと前記ロッドは、同一軸線上に提供されることを特徴とする請求項1に記載のクラッチ用アクチュエータ。
【請求項5】
前記モータの駆動軸内に提供され、前記リードスクリューの先端に結合された弾性部材をさらに含むことを特徴とする請求項2に記載のクラッチ用アクチュエータ。
【請求項6】
前記モータの外部に位置した前記リードスクリューに結合されたカムをさらに含むことを特徴とする請求項2に記載のクラッチ用アクチュエータ。
【請求項7】
前記ガイドレールは、前記リードスクリューの長さ方向に提供されることを特徴とする請求項1に記載のクラッチ用アクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クラッチ用アクチュエータに係り、より詳しくは、電気自動車の変速機に適用されるクラッチ用アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、アクチュエータは、電気エネルギ、流体エネルギ及び圧縮空気などを機械的エネルギに変換させる機構をいう。また、変速機にはクラッチを作動させるアクチュエータが備えられる。
【0003】
手動変速機(Manual Transmission)の場合には、クラッチリリースシリンダ(Clutch Release Cylinder)またはコンセントリックスリーブシリンダ(Concentric Sleeve Cylinder)タイプのクラッチコントロールシステムが用いられる。クラッチリリースシリンダ(Clutch Release Cylinder)タイプは、運転者がクラッチペダル(Clutch pedal)を踏むと、クラッチマスタシリンダ(Clutch Master Cylinder)で発生した油圧によって、クラッチリリースシリンダのタペット(Tappet)が作動して、力が発生する。また、発生した力がクラッチリリースフォーク(Clutch Release Fork)を押して、クラッチリリースベアリング(Clutch Release Bearing)を軸方向に移動させる。ひいては、軸方向に移動したクラッチリリースベアリングがクラッチダイヤフラムスプリング(Clutch Diaphragm Spring)を作動させる。
【0004】
自動変速機(automatic transmission)の場合には、クラッチを自動的に結合及び解除させるクラッチアクチュエータが適用される。また、自動変速機のクラッチアクチュエータは、ECUから信号を伝達されて、クラッチを駆動させる。このようなクラッチアクチュエータは、マスタシリンダ、運動方向変換機構及びモータから構成される。
【0005】
マスタシリンダは、クラッチのリリース装置(release device)の近辺に配置されたスレーブシリンダ(slave cylinder)に連結される。また、運動変換機構は、ロッド、ウォームホイール(worm wheel)及びウォームギヤから構成される。ロッドは、マスタシリンダのピストンに接触する。ウォームホイールは、ロッドの他端に固定されてクランク機構を構成する。ウォームギヤは、ウォームホイールと結合し、モータの回転軸に固定される。つまり、モータが回転されると、ウォームギヤの回転によってウォームホイールが回転する。ひいては、ロッドが直線運動することによって、マスタシリンダのピストンが駆動される。したがって、マスタシリンダからスレーブシリンダに油圧が供給され、スレーブシリンダがリリース機構を駆動させることによって、クラッチが結合及び解除される。ところが、従来のクラッチアクチュエータは、構成部品の数が多いため、原価が上昇し、空間の活用度が低下する不具合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−13878号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述のような問題点を解決するためになされたものであって、本発明の目的は、製造原価が低減されるとともに、燃費及び空間活用度が向上できるクラッチ用アクチュエータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、モータの駆動により変速機のクラッチを作動させるクラッチ用アクチュエータであって、
固定子と、
駆動軸及び回転子コアを含む回転子によって駆動するモータと、
前記モータの駆動軸に一部が連結され、前記モータの駆動によりその長さ方向に直線運動するリードスクリューと、
前記リードスクリューと離隔して提供されるロッドと、
前記リードスクリューと前記ロッドとを連結するスライダと、
前記スライダに接するように提供され、前記スライダの直線運動をガイドするガイドレールと、を含み、
前記スライダは、
一側面に前記リードスクリューが連結され、他側面に前記ロッドが連結され、上面及び下面は両側面を連結するように提供され、
前記ガイドレールは、
前記スライダの上面及び下面の少なくともいずれか一つに接するように提供され、
前記スライダと前記ロッドにそれぞれ連結され、前記ロッドが上下方向に移動するように、前記ロッドと前記スライダとを離隔して連結する遊隔部をさらに含むことを特徴とする。
前記モータの駆動軸は、内周と外周を含む中空の円筒状に形成されることを特徴とする。
前記リードスクリューの外周面にはねじ山が形成され、前記駆動軸の内周面の一部にはねじ山が形成されることにより、前記駆動軸の回転によって前記リードスクリューが直線運動することを特徴とする。
前記リードスクリューと前記ロッドは、同一軸線上に提供されることを特徴とする。
前記モータの駆動軸内に提供され、前記リードスクリューの先端に結合された弾性部材をさらに含むことを特徴とする。
前記モータの外部に位置した前記リードスクリューに結合されたカムをさらに含むことを特徴とする。
前記ガイドレールは、前記リードスクリューの長さ方向に提供されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明のクラッチ用アクチュエータによれば、部品数が少なくなることによって、製造原価が低減できる。また、リードスクリューを用いることによって、空間の活用度が改善される。さらに、クラッチが結合されるための別途のエネルギを必要としない。よって、燃費(エネルギー効率)を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明によるクラッチ用アクチュエータの構成図である。
【
図3】本発明によるクラッチ用アクチュエータの作動図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の好ましい一実施形態について、添付した図面に基づいて詳細に説明する。本実施形態によるクラッチ用アクチュエータ10は、その構成図を
図1に示したように、モータ20、ケース60、リードスクリュー30、ロッド50、スライダ40及びガイドレール42を含む。モータ20は、アクチュエータ10の作動に必要な動力を発生させる。つまり、モータ20の駆動によりアクチュエータ10が作動する。
【0012】
ケース60の内部には、リードスクリュー30、ガイドレール42及びスライダ40等の構成要素が配置される。また、ケース60は、モータ20と結合して固定される。リードスクリュー30は、モータ20の駆動によりその長さ方向に直線運動する。また、リードスクリュー30の一部分は、モータ20の内部に挿入される。ロッド50は、リードスクリュー30と共にその長さ方向に直線運動する。ロッド50は、リードスクリュー30と同一軸線上に離隔して配設される。また、ロッド50の一部分は、ケース60の内部に位置し、ロッド50の他の一部分はケース60の外部に露出する。一方、ケース60の外部に露出するロッド50を保護するためにブーツ70が備えられる。また、ロッド50には、その長さ方向に第1支持部56及び第2支持部62が離隔して備えられ、ブーツ70の両端をそれぞれ支持する。
【0013】
スライダ40は、リードスクリュー30及びロッド50の直線運動が容易であるようにガイドする。つまり、スライダ40は、リードスクリュー30とロッド50との間に備えられ、リードスクリュー30とロッド50とを連結する。よって、リードスクリュー30、スライダ40及びロッド50は、リードスクリュー30の長さ方向の動きによって一体に直線運動する。スライダ40は、一側面にはリードスクリュー30を連結し、他側面にはロッド50を連結し、両側面を連結する上面及び下面で備えられる。
【0014】
ガイドレール42は、スライダ40が容易に移動するようにガイドする。ガイドレール42は、ケース60の内側面にスライダ40の上部及び/又は下部に固定的に備えられる。つまり、ガイドレール42は、スライダ40の上面及び下面の少なくともいずれか一つに接触するように備えられる。ガイドレール42は、リードスクリューの長さ方向に沿って備えられ、よって、スライダ40は、リードスクリュー30の動き方向にガイドレール42に沿って移動する。リードスクリュー30には、スライダ40とリードスクリュー30が分離することを防止する係止部32が備えられる。係止部32は、スライダ40と連結されたリードスクリュー30の先端に連結される。
【0015】
本実施形態によるクラッチ用アクチュエータ10におけるモータ20は、その断面図を
図2に示したように、環状の固定子21と、固定子内に提供された駆動軸22と駆動軸22の外周面に配設された回転子コア23が含まれている回転子25によって回転力が発生する。モータ20の駆動軸22は、内周と外周を含む中空の円筒状に形成される。また、駆動軸22の中空部分は、モータ20に挿入されるリードスクリュー30の一部分が収容されるリードスクリュー受容ホール24である。
【0016】
駆動軸22の内周面の一部にはねじ山が形成される。さらに、リードスクリュー30の外周面にねじ山が形成される。したがって、モータ20が駆動すると、駆動軸22の回転により、リードスクリュー30は駆動軸22のねじ山に沿って長さ方向に移動する。よって、駆動軸22が両方向に回転可能であるため、リードスクリュー30もその長さ方向の両方向に直線運動が可能である。
【0017】
リードスクリュー受容ホール24の内部には弾性部材26が備えられる。この弾性部材26は、リードスクリュー30の一端に連結される。よって、弾性部材26は、弾性力を用いてモータ20の駆動トルクを低減しながら、リードスクリュー30の直線運動を円滑にすることができる。モータ20に挿入されないリードスクリュー30の他の一部分にはカム34が備えられる。また、カム34は回転慣性力を増大させることによって、モータ20の駆動トルクを低減させることができる。
【0018】
上述のような本実施形態によるクラッチ用アクチュエータ10の作動は、その作動状態を
図3に示したように、ロッド50は、クラッチ連結部54及び遊隔部52を含む。クラッチ連結部54はロッドの先端に配設されている。つまり、ケース60の外部に露出したロッド50のうち、ブーツ70で覆われない部分に形成される。また、クラッチ連結部54は、クラッチ80と連結された連結レバー82に接触する。つまり、ロッド50が直線運動すると、クラッチ連結部54が連結レバー82に接触した後移動させ、クラッチ80は連結レバー82のレバー運動によって作動する。一方、ロッド50が両方向に直線運動することによって、クラッチ80を結合または解除することができる。
【0019】
遊隔部52は、ロッド50がスライダ40と連結される部分に備えられる。遊隔部52は、ロッド50とスライダ40が連結された部分で、ロッド50が上下方向に動くことができる遊隔を形成する。一つの点を中心に回転する連結レバー82のレバー運動によって、ロッド50にはその長さ方向の垂直方向に揺動が発生する。遊隔部52は、ロッド50の揺動を補償する。
【0020】
上述したように、本実施形態によるクラッチ用アクチュエータ10によれば、部品数が少なくなることによって、原価が節減できる。また、リードスクリュー30が用いられることによって、空間の活用度が改善される。さらに、クラッチ80が結合されるための別途のエネルギーを必要としない。よって、燃費を向上させることができる。
以上、本発明によるクラッチ用アクチュエータの好ましい一実施形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、上述の実施形態から多様に変更することができ、特許請求の範囲における記載範囲内で均等であると認められる範囲における全ての変更を含む。
【符号の説明】
【0021】
10 アクチュエータ
20 モータ
21 固定子
22 駆動軸
23 回転子コア
24 リードスクリュー受容ホール
25 回転子
26 弾性部材
30 リードスクリュー
32 係止部
34 カム
40 スライダ
42 ガイドレール
50 ロッド
52 遊隔部
54 連結部
56 第1支持部
60 ケース
62 第2支持部
70 ブーツ(boot)
80 クラッチ
82 連結レバー