(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
単層又は多層の透明基材上にパターン形成されている透明導電膜上に形成されている、請求項1から3のいずれかに記載のエネルギー線硬化性組成物を硬化してなる保護膜。
単層又は多層の透明基材上に透明導電膜がパターン形成されており、前記透明導電膜上に、請求項4に記載の保護膜からなる絶縁層及び/又は保護層が形成されており、前記透明基材の少なくとも1層が透明樹脂フィルムであるタッチパネル部材。
前記透明基材は、ポリエチレンフィルム、ポリエステルフィルム、(メタ)アクリル系フィルム、ポリアミド系フィルム、ポリアセタール系フィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、トリアセチルセルロースフィルム、シンジオタクティック・ポリスチレンフィルム、ポリフェニレンサルファイドフィルム、ポリエーテルケトンフィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルム、フッ素樹脂フィルム、ポリエーテルニトリルフィルム、ポリカーボネートフィルム、変性ポリフェニレンエーテルフィルム、ポリシクロヘキセンフィルム、ポリノルボルネン系樹脂フィルム、ポリサルホンフィルム、ポリアリレートフィルム、ポリアミドイミドフィルム、ポリエーテルイミドフィルム、熱可塑性ポリイミドフィルム、トリアセチルセルロースフィルム又はシクロオレフィンポリマーフィルムから選ばれるフィルムを少なくとも1層以上含む、請求項5に記載のタッチパネル部材。
請求項5又は6に記載のタッチパネル部材の製造方法であって、請求項1から3のいずれかに記載のエネルギー線硬化性樹脂組成物を熱処理する際の温度が50℃〜150℃であるタッチパネル部材の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の具体的な実施形態について、詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
【0020】
<エネルギー線硬化性組成物>
本発明のエネルギー線硬化性組成物(以下単に組成物ともいう)は少なくとも以下のa)からf)を含有する。また、g)を含有してもよい。以下順に説明する。
a)酸価30mgKOH/g以上の脂環式炭化水素基含有(メタ)アクリル共重合体
b)多官能(メタ)アクリレートモノマー
c)(メタ)アクリロイル基含有リン酸エステル化合物
d)エポキシ系、イソシアネート系、酸無水物系又はエポキシオリゴマー系から選択される1種以上であるシランカップリング剤
e)エネルギー線重合開始剤
f)溶剤
g)その他
【0021】
[a)酸価30mgKOH/g以上の脂環式炭化水素基含有(メタ)アクリル共重合体]
本発明に用いる(メタ)アクリル共重合体は、酸価が30mgKOH/g以上であり、脂環式炭化水素基を含有する。酸価が30mgKOH/g未満である場合、透明樹脂フィルムを基材とする保護膜を製造する際にアルカリ現像を行うことができない点や密着性の点で好ましくない。脂環式炭化水素基を含まない場合、透明樹脂フィルムの劣化を防ぐために熱処理温度を50℃〜150℃にすると、透明樹脂フィルム又はアンダーコート層と電極とに対する十分な密着性が得られない可能性がある点で好ましくない。
【0022】
酸価を30mgKOH/g以上にするため、カルボキシル基等に例示される酸性官能基を含めることが挙げられる。本実施形態において、酸価は、JIS−K0070にしたがって測定され、30mgKOH/g以上であることが好ましく、40mgKOH/g以上であることがより好ましく、50mgKOH/g以上であることがさらに好ましい。一方、上限は、特に限定されるものではないが、通常200mgKOH/g以下が好ましく、150mgKOH/g以下がさらに好ましい。なお、酸価は、フェノールフタレインを指示薬として用い、水酸化カリウムエタノール溶液にて滴定し求めた値である。酸価が上記範囲内であれば、パターン露光時のパターン形状を制御しやすく、現像時に膜厚が減る(膜減り)問題が抑えられ、かつレジスト化したときの粘度が高くなり過ぎにくいため、好ましい。また、酸価が上記範囲内であれば、塩基性を示すガラスやITOなどの金属酸化物界面に対して酸−塩基相互作用が働き、さらに密着助材であるリン酸系材料と親和性がよいことから、密着性が良くなる効果がある。
【0023】
本発明に用いる(メタ)アクリル共重合体は酸性官能基を有するモノマー、脂環式炭化水素基含有モノマー等から重合される共重合体であり、酸性官能基を有するモノマーとしては、1分子中に酸性官能基を少なくともひとつとエチレン性不飽和二重結合をひとつ有する化合物が挙げられ、酸性官能基としてはカルボキシル基が好ましい例として挙げられる。例えば、(メタ)アクリル酸、アクリル酸の2量体、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、ビニル酢酸、コハク酸モノ[2−(メタ)アクリロイロキシエチル]、フタル酸モノ[2−(メタ)アクリロイロキシエチル]、ω−カルボキシポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、これらの酸無水物から選ばれる1種以上が挙げられる。中でも、アルカリ水溶液に対する現像性に優れる点で、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、コハク酸モノ[2−(メタ)アクリロイロキシエチル]、フタル酸モノ[2−(メタ)アクリロイロキシエチル]、ω−カルボキシポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート等が好ましく、(メタ)アクリル酸が特に好ましい。なお、酸性官能基を有するモノマーは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0024】
脂環式炭化水素基含有モノマーとしては、1分子中に脂環式炭化水素基を少なくともひとつ有し、エチレン性不飽和二重結合をひとつ有する化合物が挙げられ、脂環式炭化水素基を有する(メタ)アクリルモノマーが好ましく用いられる。例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、tert−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジメタノールモノアクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート、トリシクロデカン(メタ)アクリレート、アダマンタン(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、2−メチル−3,4−エポキシ−シクロヘキシル(メタ)アクリレート等、及びこれらのマクロモノマー類;N−シクロヘキシルマレイミド等のN置換マレイミド類;(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)メチルメタクリレート等が挙げられる。好ましくは、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、アダマンタン(メタ)アクリレートが挙げられる。上記の脂環式炭化水素基含有(メタ)アクリルモノマーを用いることで、熱処理温度を50℃〜150℃にした場合でも、透明樹脂フィルム又はアンダーコート層と電極とに対する十分な密着性が得られるという効果がある。
【0025】
本発明に用いる(メタ)アクリル共重合体には、酸性官能基を有するモノマーと脂環式炭化水素基含有モノマーの他に、本発明の目的を達成可能な限りで、これらと共重合可能な化合物(以下、「その他の共重合可能な化合物)と記載することがある)を含めることができる。その他の共重合可能な化合物としては水酸基含有(メタ)アクリレートモノマーや脂肪族(メタ)アクリレートモノマー等が挙げられ、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ジメチルアクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの(メタ)アクレートモノマーは、一種単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0026】
また、分子内にエポキシ基とエチレン性不飽和基とを併せ持つ化合物、例えばグリシジル(メタ)アクリレート等を付加させ、側鎖にエチレン性不飽和基を導入すると、活性エネルギー線の照射時に、b)成分である多官能(メタ)アクリレートモノマーと重合することが可能となり、絶縁層又は保護層を構成する硬化膜層がより安定なものとなる点で好ましい。
【0027】
(メタ)アクリル共重合体の質量平均分子量(以下、「Mw」という。)は特に制限されるものではないが、耐熱性及びアルカリ現像性を適切に発揮させるという観点から、6,000以上40,000以下であることがより好ましく、6,000以上15,000以下がさらに好ましい。なお、本発明における質量平均分子量とは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定した際の、ポリスチレン換算の質量平均分子量である。
【0028】
(メタ)アクリル共重合体の含有量は、樹脂組成物の全固形分中の割合で、通常5〜40質量%であり、好ましくは10〜30質量%である。共重合体の含有量が少な過ぎると、充分な光硬化性が得られないことや、現像時に残渣の発生や硬化収縮による密着性低下が生じ、含有量が多過ぎると、現像不良や硬化不良により膜強度が低下し、耐久性の低下が生じる恐れがあるので好ましくない。
【0029】
また、脂環式炭化水素基含有(メタ)アクリル共重合体のうち、脂環式炭化水素含有(メタ)アクリルモノマーの含有量は、脂環式炭化水素基含有(メタ)アクリル共重合体の固形分中の割合で、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、20質量%以上がさらに好ましい、また、80質量%以下であることが好ましく、65質量%以下であることがさらに好ましい。5質量%以下の場合、密着不良が起きる可能性があり、80質量%を超えると、現像するための十分な酸価が得られないことがあるため、好ましくない。
【0030】
また、脂環式炭化水素基含有(メタ)アクリル共重合体を構成するモノマーのうち、芳香環を有するモノマーの含有率は5質量%以下であることが好ましく、含まないことがさらに好ましい。5質量%を超えると、黄変や密着不良を生じる可能性があるため、好ましくない。
【0031】
[b)多官能(メタ)アクリレートモノマー]
本発明で使用する多官能(メタ)アクリレートモノマーは、e)成分であるエネルギー線重合開始剤によって重合可能なものであればよく、特に限定されない。例えば、エチレン性不飽和二重結合を2つ以上有する化合物が用いられる。中でも、十分に光硬化が進むことにより、露光部分の溶出が抑えられ、かつ未露光箇所分の現像がより確実にできるという観点から、(メタ)アクリロイル基を2つ以上有する、二官能(メタ)アクリレート及び三官能以上の(メタ)アクリレートであることが好ましく、三官能以上の(メタ)アクリレートであることがより好ましい。エチレン性不飽和二重結合を2つ以上有する化合物は、1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用して使用してもよい。
【0032】
二官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、長鎖脂肪族ジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ステアリン酸変性ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、プロピレンジ(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレンジ(メタ)アクリレート、トリグリセロールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、メトキシ化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、アクリル化イソシアヌレート、ビス(アクリロキシネオペンチルグリコール)アジペート、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、テトラブロモビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールSジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、フタル酸ジ(メタ)アクリレート、リン酸ジ(メタ)アクリレート、亜鉛ジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0033】
三官能以上の(メタ)アクリレートとしては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、アルキル変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、リン酸トリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、トリス(メタクリロキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、カルボン酸変性ジペンタエリストールペンタ(メタ)アクリレート類、ウレタントリ(メタ)アクリレート、エステルトリ(メタ)アクリレート、ウレタンヘキサ(メタ)アクリレート、エステルヘキサ(メタ)アクリレート等の三官能以上の(メタ)アクリレートが挙げられる。好ましくは、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、カルボン酸変性ジペンタエリストールペンタ(メタ)アクリレート、コハク酸変性ジペンタエリストールペンタ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレートが挙げられる。ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カルボン酸変性ジペンタエリストールペンタ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレートを用いることで、十分に光硬化が進むことにより、露光部分の溶出が抑えられ、かつ未露光箇所分の現像がより確実にできる。
【0034】
上記の多官能(メタ)アクリレートモノマー市販品を使用することができ、具体的には、アロニックスM−403、アロニックスM−315、アロニックスM520(いずれも東亞合成社製)等が挙げられる。
【0035】
上記多官能(メタ)アクリレートモノマーの含有量は、樹脂組成物の全固形分中の割合で、通常10〜70質量%であり、好ましくは20〜60質量%であり、より好ましくは30〜55質量%である。多官能(メタ)アクリレートモノマーの含有量が少な過ぎると、充分な光硬化性が得られない場合が生じ、含有量が多過ぎると、硬化収縮による密着不良や現像適性の低下を生じる恐れがあるので好ましくない。
【0036】
[c)(メタ)アクリロイル基含有リン酸エステル化合物]
本発明に用いるリン酸エステル化合物は、(メタ)アクリロイル基を含有する。(メタ)アクリロイル基含有リン酸エステル化合物は、透明樹脂フィルム又はアンダーコート層と電極への密着性を高めるために用いられる。リン酸エステル化合物は特に限定されないが、透明樹脂フィルム又はアンダーコート層と電極への高い密着性を有するとともに、脂環式炭化水素基含有(メタ)アクリル共重合体や多官能(メタ)アクリレートモノマーとの相溶性がよく、硬化膜の透明性を担保できる点で、下記一般式(I)又は(II)で表される化合物を用いることが好ましい。
【化3】
(式(I)中、nは1以上10以下の整数を示し、a+b=3であり、aは1〜2であり、bは1〜2であり、R
1及びR
2は水素又はメチル基であることを示す。)
【0037】
【化4】
(式(II)中、nは1以上10以下の整数を示し、a+b=3であり、aは1〜2であり、bは1〜2である。R
3は水素又はメチル基であることを示す。)
【0038】
一般式(I)で表される化合物の具体例として、モノ[ポリ(エチレンオキシド)メタクリレート]リン酸エステル(商品名:PAM−100、ローディア日華社製)、モノ[ポリ(プロピレンオキシド)メタクリレート]リン酸エステル(商品名:PAM−200、ローディア日華社製)、モノ[ポリ(プロピレンオキシド)アクリレート]リン酸エステル(商品名:PAM−300、ローディア日華社製)等を挙げることができる。
【0039】
一般式(II)で表される化合物の具体例として、2−(メタ)アクリロイロキシエチルカプロエートアシッドホスフェート(商品名:PM−21、日本化薬社製)等を挙げることができる。
【0040】
上記のように、エチレンオキサイド変性−リン酸ジメタクリレート等、(メタ)アクリロイル基とリン酸基との間に長鎖を含むことで、脂環式炭化水素基含有(メタ)アクリル共重合体や多官能(メタ)アクリレートモノマーとの相溶性がよくなって樹脂組成物の液状態や塗膜状態での透明性が向上し、ヘイズ値が低く、光学特性にも優れた絶縁膜及び/又は保護膜を得ることができる。
【0041】
上記リン酸エステル化合物の含有量は、透明樹脂フィルム又はアンダーコート層と電極に対する所望の密着性を有するものとすることができるものであれば特に限定されるものではないが、樹脂組成物の全固形分中の割合で、通常2〜10質量%であり、好ましくは3〜8質量%であり、より好ましくは4〜6質量%である。リン酸エステル化合物の含有量が2質量%未満であると、透明樹脂フィルム又はアンダーコート層と電極に対する所望の密着性が得られない場合が生じ、10質量%を超えると、密着不良を生じる恐れがあるので好ましくない。また、リン酸エステル化合物はシランカップリング剤と併用することで、シランカップリング剤のアルコキシ基がシラノール化し、透明電極などの金属酸化物との反応が活性化する効果がある。結果、透明電極などの金属酸化物との密着力が増大する。
【0042】
[d)エポキシ系、イソシアネート系、酸無水物系又はエポキシオリゴマー系から選択される1種以上であるシランカップリング剤]
シランカップリング剤は、透明樹脂フィルム又はアンダーコート層と電極とに対する密着性を高めるために用いられる。本発明のシランカップリング剤は、エポキシ系、イソシアネート系、酸無水物系又はエポキシオリゴマー系から選択される1種以上である。(メタ)アクリロイル系やメルカプト系であると、透明樹脂フィルムを基板とする導電性積層体を製造する際、熱処理温度を低くした場合に透明樹脂フィルム又はアンダーコート層と電極とに対する十分な密着性を得られない可能性がある点で好ましくない。
【0043】
エポキシ系シランカップリング剤としては、エポキシ基を少なくとも1つ有するアルコキシシランが挙げられ、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン3−グリシドキシプロピルエチルジエトキシシラン、3−(N.N−グリシジル)アミノプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0044】
イソシアネート系シランカップリング剤としては、イソシアネート基を少なくとも1つ有するアルコキシシランが挙げられ、2−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルメチルジメトキシラン、γ−イソシアネートプロピルジメチルメトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルメチルジエトキシシラン、γ−イソシアネートプロピルジメチルエトキシシラン等が挙げられる。
【0045】
酸無水物系シランカップリング剤としては、分子中に少なくとも1つ酸無水物環を有するアルコキシシラン化合物であり、上記酸無水物環は有機カルボン酸無水物であり、上記有機カルボン酸無水物環の例としては、コハク酸無水物環、グルタール酸無水物環、アジピン酸無水物環が挙げられ、中でもコハク酸無水物環が好ましい。このようなシラン化合物としては、具体的には、トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物、メチルジメトキシシリルプロピルコハク酸無水物、トリエトキシシリルプロピルコハク酸無水物、トリメトキシシリルメチルコハク酸無水物、トリメトキシシリルヘキシルコハク酸無水物等が挙げられる。
【0046】
エポキシオリゴマー系シランカップリング剤としては、少なくとも1つのエポキシ基と少なくとも1つのアルコキシ基とを併せ持つアルコキシシランが挙げられ、具体的には、X−41−1053、X−41−1059A、X−12−1056、X−12−981、X−12−984(いずれも信越シリコーン社製)等が挙げられる。
【0047】
上記のシランカップリング剤は市販品を使用することができ、好ましい例としては、エポキシ系の具体例としてKBM−403、イソシアネート系の具体例としてKBM9007、酸無水物系の具体例としてX−12−967C、エポキシオリゴマー系の具体例として上記X−41−1053等(いずれも信越シリコーン社製)が挙げられる。
【0048】
上記シランカップリング剤の含有量は、透明樹脂フィルム又はアンダーコート層と電極とに対する密着性を高めることができれば特に限定されるものではないが、樹脂組成物の全固形分中の割合で、通常0.1〜25質量%、より好ましくは1〜15質量%、さらに好ましくは3〜10質量%である。シランカップリング剤の含有量が少な過ぎると、透明樹脂フィルムを基板とする保護膜を製造する際、熱処理温度を低くした場合に、透明樹脂フィルム又はアンダーコート層と電極とに対する十分な密着性を得られない可能性があり、含有量が多過ぎると、硬化不良や現像不良を生じる恐れや形成した樹脂組成物層の上にさらに層を重ねる場合に、塗布時にハジキを生じたり、上の組成物の密着性を下げる可能性があるので好ましくない。
【0049】
[e)エネルギー線重合開始剤]
本発明のエネルギー線硬化性樹脂組成物には、さらにエネルギー線重合開始剤を配合する。このようなエネルギー線重合開始剤としては、例えば、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−ジメチルアミノ−2−(4−メチル−ベンジル)−1−(4−モリフォリン−4−イル−フェニル)−ブタン−1−オン、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(O−アセチルオキシム)等を挙げることができる。また、感度や透明性、製版適性の観点から2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オンや1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニルチオ)−,2−(O−ベンゾイルオキシム)]が好ましい。
【0050】
エネルギー線重合開始剤の配合割合は、樹脂組成物の全固形分中の割合で1〜10質量%が好ましく、より好ましくは4〜9質量%である。
【0051】
[f)溶剤]
本発明のエネルギー線硬化性樹脂組成物は、適宜溶剤を添加して固形分調整を行うことができる。溶剤としては、エネルギー線硬化性樹脂組成物の各成分に対して反応せず、これらを溶解もしくは分散可能な有機溶剤であれば特に限定されるものではない。具体的には、メタノール、エタノール等のアルコール類;テトラヒドロフラン等のエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールメチルエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)等のグリコールエーテル類;メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート等のエチレングリコールアルキルエーテルアセテート類;ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のジエチレングリコール類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のプロピレングリコールアルキルエーテルアセテート類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;メチルエチルケトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン等のケトン類;及び、2−ヒドロキシプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルブタン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート等のエステル類;等が挙げられる。これらの溶剤は単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせてもよい。これらのなかでも、塗布適性や溶解性の観点からPGMEA、PGME、又は両者の混合溶媒が好ましい。
【0052】
溶剤量は、目的とする塗布性や分散溶解性に応じて適宜選択可能であるが、好ましくはエネルギー線硬化性樹脂組成物中の固形分が10〜40質量%となるように調整すればよい。
【0053】
[g)その他]
本発明のエネルギー線硬化性樹脂組成物は、界面活性剤、重合禁止剤、酸化防止剤、光安定剤、分散剤、レベリング剤、および硬度向上等のため無機微粒子(コロイダルシリカ等)等を適宜使用してもよい。例えば、界面活性剤として、フッ素系であるDIC社製「メガファック」F−477、F−555、F−552等、シリコーン系であるビックケミー・ジャパン社製BYK−333、BYK−301等を、樹脂組成物の全固形分中の割合で0.1〜5質量%配合できる。
【0054】
<透明積層部材10/タッチパネル>
上記の本発明のエネルギー線硬化性組成物は、上記のパターン形成された薄膜の電極を有する基盤上に塗布され、紫外線等によって光硬化されて硬化物となり絶縁層及び/又は保護層を形成することで本発明の透明積層部材を構成し、当該透明積層部材がタッチパネルの一部を構成する。
【0055】
図1を再度用いて本発明を説明すると、透明積層部材10のセンサー部分は、通常、透明基板1上に、第1電極2、絶縁層3、第2電極4、保護層5を所望の形状にパターニングして積層することにより製造されている。本発明における絶縁層及び/又は保護層は、この絶縁層3、保護層5のいずれか又は両方に適用できる。
【0056】
[透明基板1]
本発明において、透明基板1は、樹脂のTgが80℃以上、好ましくは100℃以上の樹脂部材であり、光透過性のシート、フィルム、膜等の可撓性を有する部材であり、タッチパネル部材の基材となりえるものであれば、適宜選択して使用してよい。例えば、光透過性の樹脂によって形成されるフィルムの例としては、光透過可能な絶縁性フィルムであれば特に限定されることなく適宜選択可能である。上記フィルムの例としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)、あるいはポリエーテルサルフォンフィルム(PESフィルム)などの他、ポリメチルメタクリレート等のアクリル、ポリアミド、ポリアセタール、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、もしくはシンジオタクティック・ポリスチレン等、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、フッ素樹脂、もしくはポリエーテルニトリル等、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリシクロヘキセン、もしくはポリノルボルネン系樹脂等、または、ポリサルホン、ポリアリレート、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、もしくは熱可塑性ポリイミド等からなるフィルムを挙げることができるが、これに限定されない。また、トリアセチルセルロースフィルム(TACフィルム)やシクロオレフィンポリマーフィルム(COPフィルム)があり、好ましくは、ポリエチレンテレフタレートフィルムやシクロオレフィンポリマーフィルムが透明性や耐熱性の観点から好ましい。
【0057】
透明基板1が多層構成の場合、もっとも耐熱性が低い層に熱処理温度の最高値を合わせる必要がある。たとえば、基材がガラスの場合でも、他層で耐熱性が低い層がある場合は、熱処理温度を低温に設定する必要がある。このことを踏まえると、上記フィルムは、単層又は多層の透明基板1の中の1層以上あれば足り、そうであれば、他層に上記フィルムとは異なる層、例えば、ガラス層があっても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0058】
基材1の厚みは、特に限定されないが、可撓性の観点から、一般的には、10μmから300μm程度である。
【0059】
[電極2,4]
第1電極2及び第2電極4の配置態様としては、タッチ操作を検出できるものであれば特に限定されるものではなく、
図1の(b)に示すように、第1電極2及び第2電極4の間に絶縁層3が形成される態様のほか、透明基板の一方の面に第1電極2が形成され、他方の面に第2電極4が形成される態様(
図2)、透明基板上に第1電極と第2電極との両方が直接形成される態様(
図3)が挙げられる。中でも、
図1の(b)に示す態様が好ましい。絶縁層3上の電極を透明電極とし、その透明電極の形成時に高温での熱処理が行われたとしても、絶縁層3として本発明のエネルギー線硬化性組成物の硬化膜を用いることにより、絶縁層3の劣化を抑えることができるためである。したがって、本発明の効果をより効果的に発揮できる。
【0060】
第1電極2及び第2電極4は、所望の導電性を有するものであればよく、透明性を有する透明電極材料を用いて形成された透明電極であってもよいし、遮光性を有する遮光性電極材料を用いて形成された遮光電極であってもよい。
【0061】
電極2,4が透明電極である場合、具体例として、インジウム錫酸化物(ITO)、酸化亜鉛、酸化インジウム、アンチモン添加酸化錫、フッ素添加酸化錫、アルミニウム添加酸化亜鉛、カリウム添加酸化亜鉛、シリコン添加酸化亜鉛や、酸化亜鉛−酸化錫系、酸化インジウム−酸化錫系、酸化亜鉛−酸化インジウム−酸化マグネシウム系等の金属酸化物や、これらの金属酸化物が2種以上複合された材料が挙げられる。また、グラフェン透明電極等の有機系透明電極も挙げられる。
【0062】
電極2,4が遮光電極である場合、例えば、特開2010−238052号公報等に記載のものを用いることができる。具体的には、アルミニウム、モリブデン、銀、クロム等の金属及びその合金等を用いることができる。
【0063】
第1電極2及び第2電極4の平面視上のパターン及び厚みについては、一般的なタッチパネルと同様とすることができる。具体的には、特開2011−210176号公報や2010−238052号公報に記載のパターン等とすることができる。
【0064】
なお、本発明は、透明基板1上に第1電極2及び/又は第2電極4が直接形成される態様に限るものではなく、透明基板1上にアンダーコート層が形成され、このアンダーコート層上に第1電極2及び/又は第2電極4が形成される態様も技術的範囲に含むものである。アンダーコート層の例として、透明基板1上への印刷や蒸着により形成される層が挙げられ、具体的には、有機層や金属酸化物層、ガラス層等の無機物層などが挙げられ、密着性向上、耐熱性向上、耐薬品性向上、不可視化(例えばITO等の透明電極を見えにくくするため、1.65〜1.75程度の高屈折率の層を設ける)などの目的で設けられる。前記アンダーコート層は前記透明基板の全面を覆うものであっても、一部を覆うものであってもいい。
【0065】
<透明積層部材10の製造方法>
ここでは、
図1に例示される透明積層部材10の製造方法について説明する。なお、先に説明したとおり、第1電極2及び第2電極4の間に絶縁層3が形成される態様に限らず、透明基板の一方の面に第1電極2が形成され、他方の面に第2電極4が形成される態様、透明基板上に第1電極と第2電極との両方が直接形成される態様等、
図1に例示される態様とは異なる導電性積層体であっても、本発明の技術的範囲に含まれる。
【0066】
まず、透明基板1上に公知の方法で所望の形状にパターン化した第1電極2を形成する。その後、第1電極2を有する基板上に、本発明のエネルギー線硬化性樹脂組成物を塗布して絶縁層3を形成する。塗布方法としては、特に限定されるものではなく、例えばスプレーコート法、ディップコート法、バーコート法、ロールコート法、スピンコート法等を挙げることができる。
【0067】
次に、塗布された絶縁層3を、必要に応じて熱を加えて乾燥させる(プリベイク)。乾燥条件は、通常と同様の範囲、例えば、50〜150℃、0.5〜10分間の範囲で適宜設定できる。また、この時、減圧乾燥機で0.2Torr(27Pa)程度まで減圧乾燥処理してもよい。
【0068】
次に、エネルギー線硬化性樹脂組成物上に所定形状の開口パターンを有するマスクを載置し、活性エネルギー線の照射を行なう。活性エネルギー線としては、例えば、紫外線、電子線等が挙げられる。照射量は、通常のパターニングに用いる範囲で適宜設定できるが、例えば、30〜300mJ/cm
2、好ましくは50〜150mJ/cm
2の範囲で設定できる。
【0069】
活性エネルギー線の照射後、塗膜は通常の方法によりアルカリ現像される。現像液として、例えば、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物の水溶液;炭酸ナトリウム、炭酸カリウム及び炭酸水素ナトリウム等の炭酸塩の水溶液;ヒドロキシテトラメチルアンモニウム、及びヒドロキシテトラエチルアンモニウム等の有機アルカリの水溶液が挙げられる。これらを単独又は2種以上組み合わせて用いることもでき、また、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン界面活性剤等の界面活性剤を添加して用いることもできる。アルカリ現像の方法として、ディップ方式とシャワー方式等が挙げられるが、シャワー方式が好ましい。現像液の温度は、好ましくは25〜40℃である。現像時間は、膜厚やエネルギー線硬化性樹脂組成物の溶解性に応じて適宜決定される。
【0070】
次に、アルカリ現像処理後のエネルギー線硬化性樹脂組成物を加熱(ポストベイク)する。本発明では透明基板1が透明樹脂フィルムであるため、通常の絶縁層及び/又は保護層の形成と同じ条件(200〜300℃)で加熱すると、加熱温度が高すぎて透明基板1を劣化させたり、カールや歪み等の変化が生じる可能性があるため、好ましくない。透明基板1の前記劣化等を防ぐため、本発明では低温で加熱することが好ましい。加熱温度は50℃〜150℃にすることがより好ましく、50℃〜100℃にすることがさらに好ましい。加熱時間は10分〜90分であることが好ましく、30分〜60分にすることがより好ましい。カールや歪み等の変化をより少なくすることができるからである。
【0071】
上記の工程を経ることで、本発明のエネルギー線硬化性樹脂組成物の硬化物からなる絶縁層3がパターン形成される。絶縁層の膜厚(乾燥時)としては、特に限定されないが、通常、0.5〜5μm、好ましくは0.75〜3μmの範囲で適宜設定できる。
【0072】
その後、上記と同様にして、第2電極4、保護層5を順次形成して、
図1に例示される透明積層部材10を製造する。ここで保護層5は上記の絶縁層3と同様の組成物を上記同様の方法で形成すればよい。
【0073】
本発明では、酸価30mgKOH/g以上の脂環式炭化水素基含有(メタ)アクリル共重合体を含み、かつ、(メタ)アクリロイル基含有リン酸エステル化合物と、エポキシ系、イソシアネート系、酸無水物系又はエポキシオリゴマー系から選択される1種以上であるシランカップリング剤とを密着助剤とした。これにより、透明樹脂フィルムを透明基板1とする透明積層部材10を製造する際、熱処理温度が50℃〜150℃と低い場合であっても、透明樹脂フィルム又はアンダーコート層と電極とに対する高い密着性を有する。そのため、本発明のエネルギー線硬化性組成物は、透明樹脂フィルムを透明基板1とするタッチパネルの絶縁層3及び/又は保護層5の材料として特に適する。
【0074】
<画像表示装置>
本発明は、上記タッチパネルを備えた画像表示装置も提供する。かかる画像表示装置としては、例えば、ブラウン管(CRT)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、液晶表示装置等が挙げられる。また、本発明の画像表示装置には、上記液晶表示装置を備えたスマートフォン、パソコン、ゲーム機等も含まれる。
【実施例】
【0075】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、配合は固形分の質量部である。
【0076】
<a)酸価30mgKOH/g以上の脂環式炭化水素基含有(メタ)アクリル共重合体の合成>
【表1】
酸価の単位はmgKOH/gである。
【0077】
[合成例A]
重合槽に、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)7質量部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)を300質量部仕込み、窒素雰囲気下で100℃に昇温した後、シクロヘキシルメタクリレート(CHMA)34.3質量部、メタクリル酸メチル(MMA)21.4質量部及びメタクリル酸(MAA)21.9質量部を含む主鎖形成用混合物を1.5時間かけて連続的に滴下した。その後、100℃を保持して反応を続け、上記主鎖形成用混合物の滴下終了から2時間後に重合禁止剤として、p−メトキシフェノール0.1質量部を添加して重合を停止した。次に、空気を吹き込みながら、分子内にエポキシ基とエチレン性不飽和基とを併せ持つ化合物としてグリシジルメタクリレート(GMA)22.4質量部を添加して、110℃に昇温した後、トリエチルアミン0.8質量部を添加して110℃で15時間付加反応させ、合成例Aに係る(メタ)アクリル共重合体(酸価:64mgKOH/g、質量平均分子量(Mw):8,700)を得た。なお、酸価は、JIS K 0070に基づいて測定し、質量平均分子量は、ポリスチレンを標準物質とし、THFを溶離液としてショウデックスGPCシステム−21H(Shodex GPC System−21H)により測定した。
【0078】
[合成例B]
主鎖形成用混合物の脂環式(メタ)アクリレートとして、1−アダマンチルメタクリレート(ADAMA)及びCHMAを用い、配合を表1の配合(固形分の質量部)としたこと以外は、合成例Aと同じ方法にて合成例Bに係る(メタ)アクリル共重合体(酸価:73mgKOH/g、質量平均分子量(Mw):11,900)を得た。
【0079】
[合成例C]
主鎖形成用混合物の脂環式(メタ)アクリレートとしてADAMAを用い、その他の主鎖形成用混合物として2−ヒドロキシエチルメタクリレート(2−HEMA)を用い、配合を表1の配合(固形分の質量部)としたこと以外は、合成例Aと同じ方法にて合成例Cに係る(メタ)アクリル共重合体(酸価:67mgKOH/g、質量平均分子量(Mw):11,200)を得た。
【0080】
[合成例D]
主鎖形成用混合物の脂環式(メタ)アクリレートとして、CHMA及びジシクロペンタニルメタクリレート(DCPMA)を用い、配合を表1の配合(固形分の質量部)としたこと以外は、合成例Aと同じ方法にて合成例Dに係る(メタ)アクリル共重合体(酸価:70mgKOH/g、質量平均分子量(Mw):11,000)を得た。
【0081】
[合成例E]
主鎖形成用混合物の脂環式(メタ)アクリレートとしてDCPMAを用い、その他の主鎖形成用混合物として2−HEMAを用い、配合を表1の配合(固形分の質量部)としたこと以外は、合成例Aと同じ方法にて合成例Eに係る(メタ)アクリル共重合体(酸価:72mgKOH/g、質量平均分子量(Mw):9,800)を得た。
【0082】
[合成例F]
主鎖形成用混合物の脂環式(メタ)アクリレートとしてイソボニルメタクリレート(IBX)を用い、配合を表1の配合(固形分の質量部)としたこと以外は、合成例Aと同じ方法にて合成例Fに係る(メタ)アクリル共重合体(酸価:68mgKOH/g、質量平均分子量(Mw):8,300)を得た。
【0083】
[合成例G]
主鎖形成用混合物の脂環式(メタ)アクリレートとして1,4−シクロヘキサンジメタノールモノアクリレート(CHDMMA)を用い、配合を表1の配合(固形分の質量部)としたこと以外は、合成例Aと同じ方法にて合成例Gに係る(メタ)アクリル共重合体(酸価:79mgKOH/g、質量平均分子量(Mw):12,000)を得た。
【0084】
<a’)脂環式炭化水素基を含有しない(メタ)アクリル共重合体の合成>
【表2】
表1、表2とも、酸価の単位はmgKOH/gである。
【0085】
[合成例H]
主鎖形成用混合物としてCHMAの代わりにベンジルメタクリレート(BzMA)を用い、配合を表2の配合(固形分の質量部)としたこと以外は、合成例Aと同じ方法にて合成例Hに係る(メタ)アクリル共重合体(酸価:74.5mgKOH/g、質量平均分子量(Mw):9,200)を得た。
【0086】
[合成例I]
主鎖形成用混合物としてCHMAの代わりにスチレン(St)を用い、配合を表2の配合(固形分の質量部)としたこと以外は、合成例Aと同じ方法にて合成例Iに係る(メタ)アクリル共重合体(酸価:74mgKOH/g、質量平均分子量(Mw):13,100)を得た。
【0087】
<(メタ)アクリル共重合体の比較>
下記のa)からg1)を表3の配合(固形分の質量部)として実施例及び比較例における組成物を得た。
a)酸価30mgKOH/g以上の脂環式炭化水素基含有(メタ)アクリル共重合体:上記合成例A〜Gのいずれか
a’)脂環式炭化水素基を含有しない(メタ)アクリル共重合体:上記合成例H又はI
b)多官能(メタ)アクリレートモノマー(商品名:アロニックスM−403、DPHA系多官能アクリレート、東亞合成社製)
c)(メタ)アクリロイル基含有リン酸エステル化合物(商品名:PAM−200、モノ[ポリ(プロピレンオキシド)メタアクリレート]リン酸エステル、ローディア日華社製)
d)エポキシ系、イソシアネート系、酸無水物系又はエポキシオリゴマー系から選択される1種以上であるシランカップリング剤(商品名:KBM403、エポキシ系シランカップリング剤、信越シリコーン社製)
e)エネルギー線重合開始剤(商品名:イルガキュア907、光ラジカル重合開始剤、BASF社製)
f)溶剤(プロピレングリコール−1−モノメチルエーテルアセタート(PGMEA)、固形分が25%となるように調整)
g1)レベリング剤(商品名:メガファックF-555、DIC社製)
【0088】
【表3】
本実施例において、「特定のシランカップリング剤」とは、エポキシ系、イソシアネート系、酸無水物系又はエポキシオリゴマー系から選択される1種以上であるシランカップリング剤をいう。実施例1〜7及び比較例1、2では、一例としてエポキシ系のシランカップリング剤を用いている。
【0089】
[評価項目及び評価方法]
下記の評価を行った結果をまとめて表4に示す。
(1)解像度/現像残渣
表面にSiO
2を蒸着した上にITO膜が形成されたPETフィルム(商品名:ルミラーU46、東レ社製)上に、実施例及び比較例で得られた組成物を乾燥後の厚みが1.5μmとなるようにスピンコートし、100℃ホットプレート上にて2分間静置(プリベイク)しマスク露光を行った。次いで、アルカリ現像液として、0.05%水酸化カリウム水溶液を用いて60秒間の現像を行い、未露光部の現像性を評価した。なお、露光条件は以下のとおりとした。また、現像性の評価は、解像度は10〜100μmの線幅を有するラインアンドスペース型のパターンを有するマスクを置き、上記の条件にて紫外線を照射後、現像処理を行った。得られた基板について、光学顕微鏡で観察を行い、基板上に残っていて、かつ、解像している最も線幅の小さいパターンの線幅を解像度とした。100μmのパターンが現像できなかった場合、あるいは現像時に膜が流れた場合は、「−」と評価した。また、現像残渣の有無について、未露光部を目視で観察し、○:目視で残渣なし、△:目視で残渣はないが、パターンエッジの乱れがある、×:目視で残渣あり、の基準で評価した。解像度評価で100μmのパターンが現像できなかったものは、残渣評価不可で「−」と評価した。○、△が実用範囲である。
(露光条件)
露光機:プロキシ露光機
マスク:クロムマスク
露光ギャップ:150μm
光源:超高圧水銀灯
露光量:100mJ/cm
2
【0090】
(2)密着性
上記PETフィルム上に、上記「(1)解像度/現像性」と同様の条件で製膜した塗膜について、100℃で30分ポストベイク処理を行った後、セロハン粘着テープにて碁盤目剥離試験を行った。ここで、碁盤目剥離試験は、カッターナイフでITO膜の素地に到達するように、直行する縦横11本ずつの平行な直線を1mm間隔で引いて1mm×1mmのマス目を100個作製し、セロハン粘着テープ(商品名:セロテープ(登録商標)、品番:CT405AP−24、ニチバン株式会社製)を消しゴムですって貼り付け、直角に瞬間的に剥離して、マス目の残存数を目視によって評価した。なお、マス目の剥離面積を以下の基準で判定した。評価4〜5が実用範囲であり、5が好ましい。
5:剥離面積が0%
4:剥離面積が0%超〜25%以内
3:剥離面積が25%超〜50%以内
2:剥離面積が50%超〜75%以内
1:剥離面積が75%超〜100%
【0091】
(3)透明性
上記PETフィルム上に上記(1)と同様の条件で製膜した塗膜について、100℃で30分ポストベイク処理を行った後、目視にて透明性を評価し、○:透明、△:やや不透明、×:白化の3段階で判定した。○が実用範囲である。
【0092】
(4)屈折率
まず、上記PETフィルム上に上記(1)と同様の条件で製膜した塗膜について、100℃で30分ポストベイク処理を行った。
その後、裏面反射を防止するためにPET基材側に黒色テープを貼り、硬化膜面から、島津製作所製分光光度計UV−3150を用い、波長域380から780nmでの反射率を測定し、その平均である平均反射率Rを算出した。
その後、平均反射率Rを用いて下記式より本発明の屈折率n1を計算した。但し、n0は空気の屈折率であり1.000として計算した。
R=(n0−n1)
2/(n0+n1)
2
【0093】
【表4】
【0094】
表4から明らかなように、本発明の組成物は、酸価30mgKOH/g以上の脂環式炭化水素基含有(メタ)アクリル共重合体を樹脂成分とし、(メタ)アクリロイル基含有リン酸エステル化合物と、エポキシ系、イソシアネート系、酸無水物系又はエポキシオリゴマー系から選択される1種以上であるシランカップリング剤とを密着助剤としているため、絶縁層及び/又は保護層を形成する際、熱処理温度が低温であるにもかかわらず、透明樹脂フィルム又はアンダーコート層とITO電極との密着性に優れる。また、解像度/現像残渣、透明性及び屈折率も好適である。
【0095】
一方、比較例の組成物は、樹脂成分が脂環式炭化水素基を含有していないので、熱処理温度が低いと透明樹脂フィルム又はアンダーコート層とITO電極に対する密着性が評価3と悪く、好ましくない。
【0096】
<リン酸エステル化合物の比較>
下記のa)からg1)を表5の配合(固形分の質量部)として実施例及び比較例における組成物を得た。
a)酸価30mgKOH/g以上の脂環式炭化水素基含有(メタ)アクリル共重合体:上記合成例A
b)多官能(メタ)アクリレートモノマー:上記M−403
c)(メタ)アクリロイル基含有リン酸エステル化合物
c1)商品名:PM−21、2−(メタ)アクリロイロキシエチルカプロエートアシッドホスフェート、日本化薬社製
c2)商品名:PM−2、エチル(メタ)アクリレートアシッドホスフェート、日本化薬社製
c3)商品名:PAM−100、モノ[ポリ(エチレンオキシド)メタクリレート]リン酸エステル、ローディア日華社製
c4)商品名:PAM−200、モノ[ポリ(プロピレンオキシド)メタクリレート]リン酸エステル、ローディア日華社製
c5)商品名:PAM−300、モノ[ポリ(プロピレンオキシド)アクリレート]リン酸エステル、ローディア日華社製
d)エポキシ系、イソシアネート系、酸無水物系又はエポキシオリゴマー系から選択される1種以上であるシランカップリング剤:上記KBM403
e)エネルギー線重合開始剤:上記イルガキュア907
f)溶剤:PGMEA、固形分が25%となるように調整
g1)レベリング剤:上記メガファックF―555
【0097】
【表5】
本実施例において、「特定のシランカップリング剤」とは、エポキシ系、イソシアネート系、酸無水物系又はエポキシオリゴマー系から選択される1種以上であるシランカップリング剤をいう。実施例1、11〜16及び比較例11では、一例としてエポキシ系のシランカップリング剤を用いている。
【0098】
実施例及び比較例について上記(1)解像度/現像残渣及び(2)密着性のほか、(5)ヘイズ(Hz)、(6)透過率(Tt)、(7)インキ透明性及び(8)インキ安定性を評価した。(1)解像度/現像残渣及び(2)密着性については、上記と同じ手法にて評価した。(5)ヘイズ、(6)インキ透明性及び(7)インキ安定性については、以下のとおり評価した。結果をまとめて表6に示す。
【0099】
(5)ヘイズ
ヘイズの測定は、JIS K7361−1(プラスチック−透明材料の全光透過率の試験方法)に準拠し、ヘイズ値はJIS K7105に準拠し、ヘイズメーターHM−150(村上色彩技術研究所製)を用いて測定した値である。ヘイズはPETフィルムを基材に使用した場合、1.5以下が好ましい。
【0100】
(6)インキ透明性
上記組成物を目視し、白濁の有無を評価した。○:透明(白濁なし)、△:やや不透明、×:白濁あり、の基準で評価した。
【0101】
(7)インキ安定性
インキ安定性は、作製したインキを40℃オーブンで1ヶ月保管したインキを目視で観測し、析出物の有無で評価した。○:析出物なし、△:やや不透明、×:析出物あり(沈殿物も発生)、の基準で評価した。
【0102】
【表6】
【0103】
表6から明らかなように、本発明の組成物は、酸価30mgKOH/g以上の脂環式炭化水素基含有(メタ)アクリル共重合体を樹脂成分とし、(メタ)アクリロイル基含有リン酸エステル化合物と、エポキシ系シランカップリング剤とを密着助剤としているため、絶縁層及び/又は保護層を形成する際、熱処理温度が低温であるにもかかわらず、透明樹脂フィルム又はアンダーコート層とITO電極との密着性に優れる。また、解像度/現像残渣、透明性及び屈折率も好適である。特に、リン酸エステル化合物が上記一般式(I)及び(II)で表される化合物であると好適であり(実施例1、11〜16)、リン酸エステル化合物の含有量が樹脂組成物の全固形分中の割合で0.1〜10質量%であると好適である。
【0104】
一方、比較例の組成物は、リン酸エステル化合物を含有しないため、熱処理温度が低いと透明樹脂フィルム又はアンダーコート層とITO電極に対する十分な密着性が得られないこと、また、現像時に膜が流れる可能性があり、好ましくない(比較例11)。
【0105】
<シランカップリング剤の比較>
下記のa)からg1)を表7の配合(固形分の質量部)として実施例及び比較例における組成物を得た。
a)酸価30mgKOH/g以上の脂環式炭化水素基含有(メタ)アクリル共重合体:上記合成例A
b)多官能(メタ)アクリレートモノマー:上記M−403
c)(メタ)アクリロイル基含有リン酸エステル化合物:上記PAM−200
d)エポキシ系、イソシアネート系、酸無水物系又はエポキシオリゴマー系から選択される1種以上であるシランカップリング剤
d1)エポキシ系:上記KBM403
d2)イソシアネート系(商品名:KBM9007、イソシアネート系シランカップリング剤、信越シリコーン社製)
d3)酸無水物系(商品名:X−12−967C、無水コハク酸系シランカップリング剤、信越シリコーン社製)
d4)エポキシオリゴマー系(商品名:X−41−1053、エポキシオリゴマー系シランカップリング剤、信越シリコーン社製)
d’)上記d)とは異なるシランカップリング剤
d’1)メタクリロイル系(商品名:KBM503、メタクリロイル系シランカップリング剤、信越シリコーン社製)
d’2)メルカプト系(商品名:KBM803、メルカプト系シランカップリング剤、信越シリコーン社製)
e)エネルギー線重合開始剤:上記イルガキュア907
f)溶剤:PGMEA、固形分が25%となるように調整
g1)レベリング剤:上記メガファックF−555
【0106】
【表7】
【0107】
実施例及び比較例について上記(1)解像度/現像残渣、(2)密着性、(3)透明性及び(4)屈折率を評価した結果をまとめて表8に示す。
【0108】
【表8】
【0109】
表8から明らかなように、本発明の組成物は、酸価30mgKOH/g以上の脂環式炭化水素基含有(メタ)アクリル共重合体を樹脂成分とし、(メタ)アクリロイル基含有リン酸エステル化合物と、エポキシ系、イソシアネート系、酸無水物系又はエポキシオリゴマー系から選択される1種以上であるシランカップリング剤とを密着助剤としているため、絶縁層及び/又は保護層を形成する際、熱処理温度が低温であるにもかかわらず、透明樹脂フィルム又はアンダーコート層とITO電極との密着性に優れる。また、解像度/現像残渣、透明性及び屈折率も好適である。
【0110】
一方、比較例の組成物のうち、シランカップリング剤を含有しない組成物(比較例21)、シランカップリング剤が(メタ)アクリロイル系である組成物(比較例22)又はシランカップリング剤がメルカプト系である組成物(比較例23)は、熱処理温度が低いと透明樹脂フィルム又はアンダーコート層とITO電極に対する十分な密着性が得られず、また、現像性も悪化する可能性があり、好ましくない。
【0111】
<e)ポストベイク温度の比較>
表9に示す基材上に、表9に示す組成物を乾燥後の厚みが1.5μmとなるようにスピンコートし、100℃ホットプレート上にて2分間静置(プリベイク)しマスク露光を行った。次いで、アルカリ現像液として、0.05%水酸化カリウム水溶液を用いて60秒間の現像を行った。そして、表9に示すポストベイク温度で30分間熱処理を行い、ポストベイク前後での基材の寸法の変化率を測定した。この変化率について、○:3%以内、×:3%以上、の基準で評価した。結果を表10に示す。また、(1)解像度/現像残渣、(2)密着性及び(3)透明性を上記と同じ手法で評価した。結果を表10に示す。
【表9】
※表9において、PETは、表面にSiO
2を蒸着した上にITO膜が形成されたPETフィルム(商品名:ルミラーU46、東レ社製)を示す。
COPは、表面にSiO
2を蒸着した上にITO膜が形成されたシクロオレフィンポリマーフィルム(商品名:ZeonorFilm ZF14、日本ゼオン社製)を示す。
TACは、表面にSiO
2を蒸着した上にITO膜が形成されたトリアセチルセルロースフィルム(商品名:フジタック、富士フィルム社製)を示す。
ガラスは表面にITO膜が形成された厚さ0.7mmのガラス基材(コーニング社製、1737)を示す。
※表9において、「実1」、「比1」及び「比2」はそれぞれ実施例1、比較例1、比較例2を示す。
【0112】
【表10】
【0113】
表10から明らかなように、本発明の組成物は、酸価30mgKOH/g以上の脂環式炭化水素基含有(メタ)アクリル共重合体を樹脂成分とし、(メタ)アクリロイル基含有リン酸エステル化合物と、エポキシ系、イソシアネート系、酸無水物系又はエポキシオリゴマー系から選択される1種以上であるシランカップリング剤とを密着助剤としているため、絶縁層及び/又は保護層を形成する際、熱処理温度が100℃と低温であるにもかかわらず、基材がガラスで熱処理温度が230℃である場合と同様、基材又はアンダーコート層とITO電極との密着性に優れる(実施例31〜33)。また、解像度/現像残渣及び透明性も好適である(実施例31〜33)。
【0114】
一方、比較例の組成物では、基材がガラスで熱処理温度が230℃である場合には好適な密着性を示したにもかかわらず、基材が透明樹脂フィルムで熱処理温度が100℃であると十分な密着性が得られなかった(比較例31,32)。また、基材が透明樹脂フィルムで熱処理温度が230℃であるとポストベイクの前後で基材の寸法に変化が生じ、好ましくない(比較例33)。