(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記区画部材は、前記吸入孔が形成されたバルブプレートと、前記吸入室が形成されたシリンダヘッドとの間に介在させたヘッドガスケットの前記吸入室に面した部分を、前記吸入室内に突出させて形成したことを特徴とする請求項1又は2に記載の圧縮機。
前記バルブプレートに面した前記シリンダヘッドの吸入室形成壁面に前記ヘッドガスケットの区画部材部分の周縁部を前記バルブプレート側に押圧する突起部を突設したことを特徴とする請求項3に記載の圧縮機。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明が適用された圧縮機の一例である斜板式の可変容量圧縮機100の断面図である。この可変容量圧縮機100は、図示省略した冷媒回路(蒸発器及び凝縮器)に接続され、ピストン136を往復移動させ、当該冷媒回路から吸入した冷媒ガスを圧縮して吐出する。本実施形態において、可変容量圧縮機100は車両エアコンシステムに使用されるものとする。
【0012】
図1に示すように、可変容量圧縮機100は、ピストン136のシリンダボア101aが複数形成されたシリンダブロック101と、シリンダブロック101の一端に設けられたフロントハウジング102と、シリンダブロック101の他端にバルブプレート103等を介して設けられたシリンダヘッド104と、を備えている。
【0013】
シリンダブロック101とフロントハウジング102とによって、ピストン136の背方のクランク室140が形成され、このクランク室140内を横断するように駆動軸110が設けられ回転可能に支持されている。
【0014】
駆動軸110の軸方向の中間部分の周囲には、斜板111が配置されている。この斜板111の中央部には貫通孔111bが形成されており、駆動軸110はこの貫通孔111bを挿通している。また、斜板111は、駆動軸110に固定され駆動軸110と一体に回転するロータ112とリンク機構120を介して連結されている。このリンク機構120により、斜板111は駆動軸110及びロータ112とともに回転し、かつ、駆動軸110の軸線に対するその傾斜角が変更可能となっている。
【0015】
リンク機構120は、ロータ112に突設された第1アーム112aと、斜板111に突設された第2アーム111aと、一端が第1連結ピン122を介して第1アーム112aに回動可能に連結されると共に他端が第2連結ピン123を介して第2アーム111aに回動可能に連結されたリンクアーム121と、を含む。
【0016】
斜板111の貫通孔111bは、斜板111が最大傾斜角から最小傾斜角の範囲で傾動可能な形状に形成されている。本実施形態において、貫通孔111bには、駆動軸110と当接することによって傾斜角を小さくする方向への斜板111の傾斜角変位(傾動)を規制する最小傾斜角規制部が形成されている。例えば、斜板111が駆動軸110に対して直交するときの斜板111の傾斜角を0度(最小傾斜角)とした場合、前記最小傾斜角規制部は、斜板111の傾斜角がほぼ0度となるまでの傾斜角変位(傾動)を許容するように形成されている。また、傾斜角を増大させる方向の斜板111の傾斜角変位(傾動)は、斜板111がロータ112に当接することによって規制される。したがって、斜板111の傾斜角は、斜板111がロータ112に当接したときに最大傾斜角となる。
【0017】
駆動軸110には、傾斜角を減少させる方向に斜板111を付勢する傾斜角減少バネ114と、傾斜角を増大させる方向に斜板111を付勢する傾斜角増大バネ115とが、斜板111を挟んで装着されている。具体的には、傾斜角減少バネ114は、斜板111とロータ112との間に装着されており、傾斜角増大バネ115は、斜板111と駆動軸110に設けられたバネ支持部材116との間に装着されている。
【0018】
ここで、斜板111の傾斜角が最小傾斜角であるときに、傾斜角増大バネ115の付勢力の方が傾斜角減少バネ114の付勢力よりも大きくなるように設定されている。このため、駆動軸110が回転していないとき、すなわち、可変容量圧縮機100が停止しているときに、斜板111は、傾斜角減少バネ114の付勢力と傾斜角増大バネ115の付勢力とがバランスする傾斜角(>最小傾斜角)に位置する。
【0019】
駆動軸110の一端は、フロントハウジング102のボス部102aを貫通してフロントハウジング102の外側まで延在して、図示省略した動力伝達装置に連結されている。なお、駆動軸110とボス部102aとの間には軸封装置130が挿入されており、クランク室140内部は外部空間から遮断されている。
【0020】
駆動軸110は、ラジアル方向においてはラジアル軸受131、132によって支持され、スラスト方向においてはスラストプレート134によって支持されている。なお、駆動軸110のスラストプレート134側の端部とスラストプレート134とは、調整ネジ135によって所定の隙間を有するように調整されている。そして、駆動軸110は、図示省略した外部駆動源からの動力が前記動力伝達装置に伝達されることにより、前記動力伝達装置と同期して回転する。
【0021】
また、ロータ112は、ラジアル方向においては駆動軸110によって支持され、スラスト方向においてはスラスト軸受133によって支持されている。
【0022】
シリンダボア101a内には、ピストン136が配設され、ピストン136のクランク室140側に突出している端部の内側空間には、斜板111の外周部が収容され、斜板111は、一対のシュー137を介して、ピストン136と連動する。このシュー137によって、斜板111の回転運動をピストン136の往復運動に変換し、ピストン136がシリンダボア101a内を往復移動する。
【0023】
シリンダヘッド104には、駆動軸110の軸線Oの延長上に配設された吸入室141と、吸入室141を環状に取り囲むように配置された吐出室142と、が区画形成されている。吸入室141は、バルブプレート103とシリンダヘッド101との間に介在させたバルブプレート103に形成された吸入孔103a、吸入弁形成体に形成された吸入弁(図示省略)を介して各シリンダボア101aと連通する。各吐出室142は、吐出弁形成体138に形成された吐出弁138a、バルブプレート103に形成された吐出孔103bを介して、対応するシリンダボア101aと連通する。吸入室141と吐出室142とは、隔壁104b(後述の
図4、
図6及び
図8参照)により仕切られている。隔壁104bは、駆動軸110の軸線Oを中心としてほぼ円環状に形成されており、吸入室141全体はほぼ円形状となっている。
【0024】
ここで、フロントハウジング102、センターガスケット(図示省略)シリンダブロック101、シリンダガスケット(図示省略)、吸入弁形成体(図示省略)、バルブプレート103、吐出弁形成体138、ヘッドガスケット139及びシリンダヘッド104が複数の通しボルト105によって締結されてハウジングが形成される。なお、
図2にバルブプレート103、
図3に吐出弁形成体138、
図4にシリンダヘッド104、
図5にヘッドガスケット139を示す。
【0025】
シリンダヘッド104には、接続ポート104a’を備えた吸入通路104aが形成され、この接続ポート104a’は、前述の車両用エアコンシステムの吸入側冷媒回路(蒸発器)と接続する。これにより吸入通路104aから冷媒ガスが吸入室141に流入する。吸入通路104aは、シリンダヘッド104の外周から吐出室142の一部を横切るように吸入室14側へ直線状に延設されている。
【0026】
吸入室141は、区画部材150によって吸入通路104aと接続する第1空間部141aと、吸入孔103aと接続する第2空間部141bとに区画されている。本実施形態において、区画部材150には、第1空間部141aと第2空間部141bとを連通し、潤滑オイルが分離された冷媒ガスを、第1空間部141aから第2空間部141bに導入する連通路としての連通孔150aが形成されている。これら区画部材150及び連通孔150aについては、後に詳述する。
【0027】
また、
図1に示すように、シリンダブロック101の外側には、マフラ143を設けてある。マフラ143は、有底筒状の蓋部材106を、シリンダブロック101の外面に立設した筒状壁101bに対してシール部材(図示省略)を介して連結して形成される。蓋部材106には、吐出ポート106aが形成され、この吐出ポート106aは、車両エアコンシステムの吐出側冷媒回路(凝縮器)に接続される。マフラ143内のマフラ空間143aと吐出室142とを連通させる連通路144が、シリンダブロック101、バルブプレート103、シリンダヘッド104にわたって形成され、マフラ143と連通路144とは、吐出室142と吐出ポート106aとの間を連通させる吐出通路を形成し、マフラ143は、吐出通路途上のマフラ空間143aを形成する。
【0028】
また、マフラ143の入口を開閉する逆止弁200が、マフラ143内に配置されている。逆止弁200は、連通路144とマフラ空間143aとの接続部に配置され、連通路144(上流側)とマフラ空間143(下流側)との圧力差に応答して動作し、例えば、連通路144内の圧力(上流側圧力)Puとマフラ空間143内の圧力(下流側圧力)Pdの差(圧力差)が所定値SLより大きい場合(Pu−Pd>SL>0)に開弁し、上記圧力差が所定値SL以下の場合に閉弁する。
【0029】
シリンダヘッド104にはさらに制御弁300が設けられている。
制御弁300は、吐出室142とクランク室140とを連通する圧力供給通路145の開度を調整し、クランク室140への吐出ガス導入量を制御する。
また、クランク室140内の冷媒ガスは、放圧通路146(後に詳述する)を介して吸入室141(第1空間部141a)へ流れる。
【0030】
これにより、制御弁300によりクランク室140への吐出冷媒の導入量を調整してクランク室140の圧力を変化させ、斜板111の傾斜角、つまりピストン136のストロークを変化させることにより可変容量圧縮機100の吐出容量を可変制御することができる。
【0031】
制御弁300は、具体的には、外部信号に基づいて内蔵するソレノイドへの通電量を調整し、圧力導入通路147(後に詳述する)を介して制御弁300の感圧室に導入される吸入室141(第2空間部141b)の圧力が所定値になるように、吐出容量を可変制御し、また、ソレノイドへの通電を遮断することにより、連通路145を強制開放して、可変容量圧縮機100の吐出容量を最小に制御する。
【0032】
以下では、
図2〜
図8を参照して、特に、OCR低減の構造に関連する区画部材150、連通孔150a、放圧通路146について詳細に説明する。
【0033】
区画部材150は、前述したように吸入室141を、吸入通路104aと接続する第1空間部141aと、吸入孔103aと接続する第2空間部141bとに区画する。このようにして、吸入室141は、吸入孔103aと直接的に接続する第2空間部141bと、第2空間部の上流側の空間である第1空間部141aとに区画される。区画部材150は、後述するようにヘッドガスケット139を突出させて形成されており、第2空間部141bは、
図5及び
図6に示すように、中央空間141b1と、中央空間141b1から各吸入孔103aに向けて放射状に延設され吸入冷媒ガスを案内する案内通路141b2とを備えている。案内通路141b2は、
図7に示すように、底壁150bと側壁150cとによって形成され、底壁150bは、
図6に示すように、吸入孔103aに向かうに従い通路断面積が小さくなるように傾斜壁部分が形成される。
【0034】
区画部材150に形成される前記連通孔150aは、第1空間部141aの重力方向上側、例えば、駆動軸110の軸線Oより重力方向上側(
図1〜
図5の図中上側が重力方向上側)の位置で、第1空間部141aと第2空間部141bとを連通するように形成されている。なお、連通孔150aは、吸入通路104aを吸入室141内に延長した領域から外れた位置に開口し、吸入通路104aから第1空間部141aに流入した冷媒ガスの主流が、下流側である第2空間部141bに直接流入しないようになっている。
【0035】
ここで、第2空間部141bは、吸入孔103aに直接的に接続し、かつ、吸入通路とは区画部材150によって仕切られているため、実質的な吸入室となり、吸入通路と直接的に接続される第1空間部141aは、吸入通路の一部と見なせ、連通孔150aは、実質的な吸入通路の出口となる。連通孔150aを、例えば、駆動軸110の軸線Oより重力方向上側で第1空間部141aと第2空間部141bとを連通するように形成することにより、第1空間部141aは、吸入冷媒ガスとともに車両エアコンシステムから還流される潤滑オイルを貯留する貯油室となる。このようにして、連通孔150aは、第1空間部141aと第2空間部141bとを連通し、潤滑オイルが分離された冷媒ガスを、第1空間部141aから第2空間部141bに導入する。
【0036】
また、バルブプレート103に面したシリンダヘッド104の吸入室形成壁面に、ヘッドガスケット139の区画部材部分の周縁部をバルブプレート側に押圧する複数の突起部104dを突設している。突起部104dは、具体的には、各案内通路141b2の間の領域を押圧するようにシリンダヘッド104の底壁104c(上記吸入室形成壁面)から延設され、ヘッドガスケット139および吐出弁形成体138を介してバルブプレート103を押圧しており、シリンダヘッド104の中心周りにほぼ等間隔で環状に配列されている(
図4参照)。またバルブプレート103に形成されている各吸入孔103a(
図2等参照)は、駆動軸110の軸線Oからの距離が等しく、駆動軸110の軸線周りにほぼ等間隔で環状に配列されている。
【0037】
区画部材150は、例えば、ヘッドガスケット139の吸入室141に面した部分を、吸入室内に突出させて形成されている。具体的には、ヘッドガスケット139の吸入室141に対応する領域を突出させて、ヘッドガスケット139を利用して区画部材150を形成している。このため区画部材150として新たに部品を追加する必要がない上、区画部材150を吸入室141内に固定する構造も別途追加する必要がないので、区画部材150を備えることによるコストアップを抑制できる。なお、ヘッドガスケット139は、金属の薄板をラバーコーティングしたものであり、区画部材150は、ヘッドガスケット139に一体にプレス加工されてラバーコーティングが施されている。また、ヘッドガスケット139には径方向外側の吐出室142に対応した領域に吐出弁138aの開度を規制するリテーナが139a形成されている。
【0038】
区画部材150の案内通路141b2形成部分における側壁150cの両側はヘッドガスケット139の平坦部139bとなっており、この平坦部139bを突起部104dが押圧することにより、区画部材150をバルブプレート103側に確実に保持することができる。
【0039】
また、各案内通路141b2のうち、例えば、駆動軸110の軸線Oより重力方向下側に配置された案内通路141b2の底壁150bには、第1空間部141aと案内通路141b2(つまり第2空間部141b)とを連通する小孔150d(
図5及び
図6参照)が形成されている。なお、小孔150bは、第1空間部141aに適切な量のオイルが貯留されるように、その開口面積及び貯留室としての第1空間部141aの底からの高さが設定されている。
【0040】
放圧通路146は、ピストン136の背方のクランク室140と第1空間部141aとを連通してクランク室内の圧力を放出するものであり、例えば、シリンダブロック101に駆動軸110と平行して形成された連通路101c(
図1参照)、駆動軸110の端部側に形成された空間101d(
図1及び
図8参照)、シリンダブロック101のシリンダヘッド104側の端面に形成された連通路101e(
図8参照)、シリンダガスケット及び吸入弁形成体にそれぞれ形成された連通孔(図示省略)、バルブプレート103に形成されたオリフィス103c(
図2及び
図8参照)、吐出弁形成体138に形成された連通孔138b(
図3参照)、ヘッドガスケット139に形成された連通孔139c(
図5参照)、突起部104dの端面に形成され、第1空間部141aと連通されている溝104e(
図8参照)で構成されている。これにより、クランク室140内の潤滑オイルを含んだ冷媒ガスは、放圧通路146を介して第1空間部141aへ流入する。
【0041】
また、放圧通路146は、第1空間部141aの重力方向上側、例えば、駆動軸110の軸線Oより重力方向上側で第1空間部141aと接続している。具体的には、放圧通路146の溝104eを駆動軸110の軸線Oより重力方向上側で第1空間部141aに接続させ、かつ、この溝104eは、
図4に示すように、隔壁104bに向かって延設されている。
【0042】
次に、以上のような構成を有する可変容量圧縮機100の作用について、
図6〜
図8に基いて説明する。
【0043】
吸入通路104aから第1空間部141aに流入した冷媒ガスは、連通孔150aを介して第2空間部141bに流入し、案内通路141b2に沿って各吸入孔103aに向かって流れる。ここで、吸入通路104aから冷媒ガスとともにエアコンシステムから潤滑オイルが還流された場合、この潤滑オイルは、その自重によって貯留室である第1空間部141aの底に貯留され、冷媒ガスから分離される。そして、連通孔150aを介して、潤滑オイルが分離された冷媒ガスを第1空間部141aから第2空間部141bに導入し、吸入孔103aを介して、第2空間部141b内の冷媒ガスをシリンダボア101a内に導入し、その冷媒ガスをピストン136で圧縮して吐出し、可変容量圧縮機100から車両エアコンシステム側への潤滑オイル量の流出を抑制する。一方、クランク室140内に貯留されている潤滑オイルが、放圧通路146を介してクランク室140から第1空間部141aに流入した場合、この潤滑オイルは同様にその自重によって第1空間部141aに貯留され冷媒ガスから分離される。そして、この場合も、連通孔150aから潤滑オイルが分離された冷媒ガスを第2空間部141bに導入し、第2空間部141bひいては外部冷媒回路に潤滑オイルが流出することが抑制される。ここで、第1空間部141a内に貯留された潤滑オイルの油面高さが小孔150dを越えると、第1空間部141aから第2空間部141bに潤滑オイルが還流し、可変容量圧縮機100の各部の潤滑に寄与する。
【0044】
このように、本実施形態に係る可変容量圧縮機100によれば、区画部材150により吸入室141を第1空間部141aと第2空間部141bとに区画し、吸入通路104aを第1空間部141aと接続し、吸入孔103aを第2空間部141bと接続し、第1空間部141aから、吸入孔103aに直接接続する第2空間部141bに潤滑オイルを分離した冷媒ガスを、連通路150aを介して導入するので、エアコンシステムから冷媒ガスとともに潤滑オイルが還流して吸入室141に流入したとしても、潤滑オイルを分離した冷媒ガスを圧縮して吐出することができる。
また、放圧通路146は、第2空間部141bの上流側である第1空間部141aに接続されているため、放圧通路146を介して、潤滑オイルが冷媒ガスとともにクランク室140から吸入室141に流出したとしても、第1空間部から第2空間部に潤滑オイルを分離した冷媒ガスを、連通路を介して導入するので、潤滑オイルを分離した冷媒ガスを圧縮して吐出することができる。
このようにして、吸入室141の一部である第1空間部141aを利用して潤滑オイルを分離することができるため、簡素な構造で、外部冷媒回路への潤滑オイルの流出を抑制して、OCRを低減することができる。
【0045】
また、クランク室から流出した潤滑オイルが第1空間部で分離されて貯留されるので、クランク室内に過剰な潤滑オイルが貯留せず、高速回転時のオイル粘性の低下を抑制することができ、ひいては、クランク室に異物が滞留して圧縮機内部の摺動部位が異常磨耗するリスクを低減することができる。第1空間部141aでは、クランク室140から流出した高温の潤滑オイルを、吸入通路104aから吸入した冷媒ガスにより冷却することができ、潤滑オイルの粘度低下をより確実に抑制することができる。
【0046】
そして、第1空間部141aは、潤滑オイルを貯留するだけでなく、車両エアコンシステムから液冷媒が戻ってきたときの貯液空間としても機能し、ピストン136により液冷媒を圧縮するリスクを軽減できる。
【0047】
また、各吸入孔103aは、案内通路141b2を形成する形成壁(底壁150b、側壁150c)により仕切られているので、冷媒ガスを各吸入孔103aに向けてスムーズに流すことができる上、各吸入孔103aに向けて流れる吸入冷媒ガスの相互干渉を防止することができるため、吸入圧力脈動レベルを低減することができる。
【0048】
さらに、放圧通路146(溝104e)は、第1空間部141aの重力方向上側、例えば、駆動軸110の軸線Oより重力方向上側で接続しているので、第1空間部141a内に貯留されている潤滑オイルの液面が、例えば駆動軸110の軸線Oより重力方向下側に位置していれば、クランク室140から第1空間部141aに向けて流れる冷媒ガスによって第1空間部141a内に貯留されている潤滑オイルが攪拌されにくくなり、貯留されているオイルが跳ねて連通孔150aから第2空間部141bへの流出、ひいては外部冷媒回路への流出を抑制することができ、さらなるOCRの低減を実現することができる。
【0049】
第1空間部141aと第2空間部141bとを連通する連通路(連通孔150a)を、区画部材150に形成しているので、区画部材150の位置調整と同時に連通路の位置調整をすることができ、連通路の位置調整を容易に行うことができる。なお、連通孔150aは、
図5では、2つ形成されているが、1つであってもよく、また、3つ以上であってもよい。また、第1空間部141aと第2空間部141bとを連通する連通路150aは、
図6では区画部材150を単に貫通させて形成した場合を示したが、これに限らず、第1空間部141a側に筒状壁を突出させて形成してもよい。この場合、第1空間部141aでの潤滑オイル分離効果をさらに高めることができる。なお、潤滑オイル分離効果を向上させる構造は、上記筒状壁で連通路150aを形成する構造に限らず、他の構造であってもよい。また、第1空間部141aと第2空間部141bとを連通する連通路(連通孔150a)は、区画部材150に形成する場合で説明したが、これに限らず、例えば、配管等で別に通路を設けてもよい。
【0050】
以上、好ましい実施形態を参照して本発明の内容を具体的に説明したが、本発明の基本的技術思想及び教示に基づいて、当業者であれば、種々の変形態様を採り得ることは自明である。
本実施形態では、区画部材150は、ヘッドガスケット139に一体形成されている場合で説明したが、これに限らず、区画部材150をヘッドガスケット139と別体で形成してもよい。
【0051】
また、放圧通路146は、駆動軸110の軸線Oより重力方向上側で第1空間部141aに接続させた場合で説明したが、これに限らず、例えば、駆動軸110の軸線Oより重力方向下側で第1空間部141aに接続して、可変容量圧縮機100の回転が停止したとき第1空間部141aで貯留されている潤滑オイルをクランク室140側に還流可能なようにしてもよい。
【0052】
そして、小孔150dは、第1空間部141aと第2空間部141bとを連通して形成したが、これに限らず、第1空間部141aとクランク室140とを連通して形成してもよい。このようにすれば可変容量圧縮機100の回転が停止したとき、第1空間部141aに貯留されている潤滑オイルをクランク室140側に還流させることができる。
【0053】
また、圧縮機100は、斜板式の可変容量圧縮機の他、揺動板式の可変容量圧縮機とすることができる。更に、本願発明は、電磁クラッチを装着した可変容量圧縮機、電磁クラッチの無いクラッチレス圧縮機、固定容量型の往復動圧縮機、モータで駆動される往復動圧縮機などの公知の種々の圧縮機に適用できる。