(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、IEC61850では、IEDの設定をCID(Configured IED Description)ファイルという設定ファイルに記述する。以下、設定ファイルを設定情報とも称す。設定情報には、IEDのデータモデルの定義や通信設定の他に、データモデルの設定値を記載することが可能である。
【0006】
IEDは、専用の設定ツールを介して設定情報を取り込む。この設定情報の取り込みは、保守作業として行われるものであり、以降では、この処理をオフライン設定とも称す。オフライン設定で設定された設定情報に基づいてデータモデルが生成され、このデータモデルの設定値を用いて機器が制御される。
【0007】
一方、データモデルの設定値は、IEC61850に準拠したクライアントから通信によって変更されることも可能である。以降では、この処理をオンライン設定とも称す。
【0008】
IEDのオンライン設定によりデータモデルの設定値が変更されると、最初に設定ツールによりオフライン設定された設定情報の設定値と異なる設定でIEDが動作することになる。
【0009】
上記のオンライン設定によりデータモデルの設定値が変更されると、変更されたデータモデルの設定値を用いて機器が制御されるが、オフライン設定時に使用された設定情報には、その変更は反映されない。なぜなら、IEDの機器のリソースの観点から、設定情報をそのまま解析する余裕がないため、管理側で設定情報のデータ形式を変換し、IED独自の形式で設定情報が保持されることが考えられているからである。よって、データモデルの設定値が変更されても、その変更内容が設定情報に直接的に反映される形式にはなっていないのが現状である。
【0010】
また、機器が設定情報をオリジナルのデータ形式で受け取り、起動時にそれを解析してデータモデルの設定値に反映する場合でも、その逆、すなわちデータモデル内の設定値をオリジナルのデータ形式の設定情報に反映することが困難なケースがある。
【0011】
通常、設定情報ファイルを更新するにはファイル全体をメモリに読み込む必要がある。起動時には、運用中に他の用途に用いるメモリを一時的に利用することも可能だが、運用中の機器において、データモデル内の設定値を設定情報ファイルに反映させるためには、そのファイルサイズに応じて機器のメモリ容量を大きくしなければならない。
【0012】
このため、機器は、設定情報の解析は可能であるが、オリジナルの設定情報を書き換える機能や、データモデルに保持している内容をオリジナルの設定情報に反映させる機能を有していないのが現状である。
【0013】
また、データモデルに含まれている情報だけでは、設定情報を完全に復元することは難しいケースがある。これは、設定情報に含まれる全ての設定値が、データモデルに反映されるとは限らないからである。
【0014】
上記の現状を踏まえると、次のような問題が発生する。例えば、IEC61850に準拠した運用中の制御システムの設定を変更する場合に、作業者が管理装置から取得した最初の設定情報に基づいて設定内容を検討すると、実際のIEDの設定との不整合が生じる恐れがある。この不整合により、無駄な設定値の調整が生じたり、適切な設定値の設定ができなくなったりする恐れがある。
【0015】
そのため、IEDの実際の設定を反映した設定情報を取得することが重要になってくる。しかしながら、従来技術では、IEC61850に準拠したクライアントなどから設定値が変更されると、IEDのデータモデルの設定内容と、管理装置側の設定情報の設定内容とが整合がとれなくなり、最新の設定情報の設定値を取得することが困難になってしまう。
【0016】
また、上記の問題点は、IEC61850に準拠したシステムだけに限られるものではない。例えば、管理装置から取得した設定情報で制御され、設定情報から生成されたデータモデルを用いて制御される機器に対し、他の機器からデータモデルの設定値を変更することが可能な場合にも同様の問題点が発生する。
【0017】
そこで、本発明は、管理装置により機器の設定情報が登録される制御システムにおいて、管理装置側で管理される設定情報と機器側で記憶される設定情報との整合を取ることができることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の一態様における制御システムは、管理装置から受信された、機器を制御するための設定項目に対する設定値を含む設定情報を記憶する第1記憶部と、前記設定情報に基づき生成される、前記設定項目及び前記設定値を含むデータモデルを記憶する第2記憶部と、前記設定情報を識別するためのファイル情報と、前記データモデルの設定値が変更された場合に、変更後の設定値及び該設定値に対する設定項目を含む設定変更情報とを記憶する第3記憶部と、前記管理装置から前記ファイル情報及び前記設定変更情報の取得要求を受信した場合に、前記ファイル情報と前記設定変更情報とを前記管理装置に送信する通信部と、
を備える電子装置と、前記管理装置に記憶される設定情報を、前記通信部により送信された前記ファイル情報と前記設定変更情報に基づいて更新する更新部と、
を備える前記管理装置と、前記電子装置が前記データモデルの設定値を用いて制御する複数の前記機器とを有する。
【0019】
また、本発明の他の態様における制御方法は、
電子装置と、前記電子装置が前記データモデルの設定値を用いて制御する複数の機器と、前記電子装置に接続される管理装置とを有する制御システムが行う制御方法であって、前記電子装置が、管理装置から受信された、機器を制御するための設定項目に対する設定値を含む設定情報を第1記憶部に記憶する第1記憶ステップと、
前記電子装置が、前記設定情報に基づき生成される、前記設定項目及び前記設定値を含むデータモデルを第2記憶部に記憶する第2記憶ステップと、
前記電子装置が、前記設定情報を識別するためのファイル情報と、前記データモデルの設定値が変更された場合に、変更後の設定値及び該設定値に対する設定項目を含む設定変更情報とを第3記憶部に記憶する第3記憶ステップと、
前記電子装置が、前記管理装置から前記ファイル情報及び前記設定変更情報の取得要求を受信した場合に、前記ファイル情報と前記設定変更情報とを前記管理装置に送信する通信ステップと、
前記管理装置が、前記管理装置に記憶される設定情報を、前記通信ステップにより送信された前記ファイル情報と前記設定変更情報に基づいて更新する更新ステップと、を有する。
【発明の効果】
【0020】
開示の技術によれば、管理装置により機器の設定情報が登録される制御システムにおいて、管理装置側で管理される設定情報と機器側で記憶される設定情報との整合を取ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、上記課題を解決する実施例について、添付図面を参照しながら説明する。
【0023】
[実施例]
<システム構成>
図1は、実施例におけるシステム構成の一例を示す図である。
図1に示す制御システム1は、管理装置10と、情報処理装置20と、電子装置30と、主装置40とを備える。管理装置10と電子装置30とは、例えば通信網を介して接続される。情報処理装置20と、電子装置30と、主装置40とは、例えば施設50内のLAN(Local Area Network)を介して接続される。主装置40は、主装置40−1、主装置40−2の総称であり、個々を分けて説明する必要がない場合は主装置40と表記する。
【0024】
なお、管理装置10は、施設50内のLANに接続されて、電子装置30と通信可能になってもよい。また、電子装置30と主装置40とは、シリアル通信ケーブル、アナログ信号やデジタル(ON/OFF)信号を伝送する銅線などで接続されてもよい。
【0025】
施設50は、例えば変電所であり、電子装置30は、例えばIEDであり、主装置40は、例えば開閉器、駆動装置、発電機、又は変圧器であるが、この例に限られない。以降では、管理装置10、情報処理装置20、電子装置30、及び主装置40を総称して機器とも称す。管理装置10や情報処理装置20は、PC(Personal Computer)、ノートPC、サーバなどである。
【0026】
管理装置10は、電子装置30の保守を行う保守ツールを有し、保守ツールにより、システムの構築時、増築時、変更時などに電子装置30の保守を行う。例えば、管理装置10は、システム構築時や変更時などに、電子装置30に対して設定情報(例えばCIDファイル)を登録する。管理装置10は、制御システム1に必ずしも常時接続されている必要はなく、必要なときに接続されればよい。
【0027】
情報処理装置20は、施設50内でローカルに電子装置30に接続し、電子装置30や主装置40を制御する設定値を変更したり、制御指示を出したりする。情報処理装置20は、クライアントとも称される。また、情報処理装置20は、通信網を介して電子装置30に接続されてもよい。
【0028】
電子装置30は、プロセッサと通信機能とを有するインテリジェントな電子装置であり、主装置40の制御を行う。電子装置30は、管理装置10から設定情報を取得し、この設定情報に基づいて各主装置40を制御するためのデータモデルを生成する。電子装置30は、データモデルの設定値に基づいて機器を制御する。主装置40は、電子装置30により制御される。
【0029】
<ハードウェア構成>
次に、制御システム1内の各機器のハードウェアについて説明する。
図2は、実施例における制御システム1内の各機器のハードウェアの一例を示すブロック図である。
【0030】
図2に示す管理装置10は、記憶部101と、制御部103と、ツール通信部105とを有する。管理装置10内の各部は、データのやり取りが可能なように相互にバスを介して接続されている。
【0031】
記憶部101は、管理テーブルと、設定情報Aとを記憶する。設定情報Aは、機器(電子装置30や主装置40)を制御するための設定項目に対する設定値を含む設定情報である。設定情報Aは、設定変更されて更新されるので、更新される毎に新たに追加されて記憶される。管理テーブルは、設定情報Aの更新履歴を管理するための管理テーブルである。
【0032】
制御部103は、記憶部101に記憶される情報の管理を行ったり、設定情報Aそのものの登録要求を電子装置30に送信したり、必要があれば設定情報Aのデータ形式を変換し、変換後の設定情報の登録要求を電子装置30に送信したりする。また、制御部103は、電子装置30に対してファイル情報や設定変更情報の取得要求を行ったりする。制御部103の詳細は、
図3を用いて後述する。
【0033】
ツール通信部105は、電子装置30のツール通信部301と通信網を介してデータの送受信を行う。ツール通信部105は、例えば、電子装置30に対して、設定情報A又は設定情報Aが変換された設定情報Bの登録要求を送信したり、ファイル情報や設定変更情報の取得要求を送信したり、電子装置30から、ファイル情報や設定変更情報を受信したりする。
【0034】
図2に示す情報処理装置20は、制御部201と、LAN通信部203とを有する。情報処理装置20内の各部は、データのやり取りが可能なように相互にバスを介して接続されている。
【0035】
制御部201は、電子装置30に対して、LAN通信部203を介して設定値の変更を要求する。例えば、制御部201は、後述する電子装置30内のデータモデルの設定値を変更することが可能である。
【0036】
LAN通信部203は、電子装置30のLAN通信部311とLANを介してデータの送受信を行う。LAN通信部203は、例えば、電子装置30に対して、後述するデータモデルの設定値の変更要求を送信する。
【0037】
図2に示す電子装置30は、ツール通信部301と、制御部303と、第1記憶部305と、第2記憶部307と、第3記憶部309と、LAN通信部311とを有する。電子装置30内の各部は、データのやり取りが可能なように相互にバスを介して接続されている。
【0038】
ツール通信部301は、管理装置10のツール通信部105と通信網を介してデータの送受信を行う。ツール通信部301は、例えば、管理装置10から、設定情報A又は設定情報Aが変換された設定情報Bの登録要求を受信したり、ファイル情報及び設定変更情報の取得要求を受信したり、管理装置10に対して、ファイル情報及び設定変更情報を送信したりする。
【0039】
制御部303は、ツール通信部301から取得した要求を実行したり、LAN通信部311から取得した要求を実行したりする。制御部303は、例えば、設定情報を登録したり、設定情報からデータモデルを生成したり、データモデルの設定情報を変更したりする。制御部303の詳細は、
図4を用いて後述する。
【0040】
第1記憶部305は、例えばフラッシュメモリなどの不揮発性メモリであり、設定情報A又は設定情報Bを記憶するファイルシステムとして機能する。
図2に示す例では、第1記憶部305は、設定情報Bを記憶するとする。
【0041】
第2記憶部307は、例えば、RAMであり、設定情報A又は設定情報Bに基づいて生成されるデータモデルを記憶する。データモデルは、揮発メモリ上に展開されたデータであり、主装置40を制御するために生成されたモデルである。また、データモデルは、制御される主装置40の数だけ生成されてもよい。
【0042】
第3記憶部309は、例えば不揮発性メモリであり、設定情報を識別するためのファイル情報と、データモデルの設定値が変更された場合に、変更後の設定値及びこの設定値に対する設定項目を含む設定変更情報とを記憶する。
【0043】
ファイル情報は、例えば、設定情報A又は設定情報BからID、バージョン、リビジョン番号を読み取って生成される。設定変更情報は、データモデルが変更された場合、変更された設定項目と、その設定値とから生成される。
【0044】
LAN通信部311は、情報処理装置20のLAN通信部203とLANを介してデータの送受信を行う。LAN通信部311は、例えば、情報処理装置20から、データモデルの設定値の変更要求を受信する。
【0045】
<機能構成>
次に、各制御部の機能について説明する。
図3は、実施例における管理装置10の制御部103の機能の一例を示すブロック図である。なお、以降では、制御システム1は、IEC61850に準拠したシステムを例にして説明する。なお、
図3に示す例は、管理装置10側で、設定情報Aを設定情報Bに変換する例である。
【0046】
制御部103は、形式変換部131と、登録部133と、要求部135と、更新部137とを有する。制御部103内の各部は、所定のプログラムが実行されることで機能する。
【0047】
形式変換部131は、管理装置10内に記憶される設定情報Aを、電子装置30用にデータ形式を変換する。形式変換部131は、例えば、xml形式の設定情報A(例えばCIDファイル)を、電子装置30で扱いやすいように、複数のファイルに分割したり、バイナリの独自形式に変換したりする。変換前の設定情報を設定情報A、変換後の設定情報を設定情報Bと表記する。
【0048】
電子装置30では、xmlを解析するリソースを十分に有していない場合が多い。そのため、管理装置10は、電子装置30で扱いやすいように設定情報を変換し、変換後の設定情報を電子装置30に登録するとよい。
【0049】
登録部133は、形式変換部131により変換された設定情報Bを、電子装置30に対し、ツール通信部105を介して登録する。また、登録部133は、設定情報の内容が変更され、更新された場合には、例えば保守作業者の指示により、更新後の設定情報が変換された設定情報Bを、電子装置30に対し、ツール通信部105を介して登録する。
【0050】
要求部135は、保守作業者の指示により、電子装置30に記憶されたファイル情報及び設定変更情報の取得を、ツール通信部105を介して要求する。
【0051】
更新部137は、要求部135の取得要求に対応して取得されたファイル情報及び設定変更情報に基づいて、設定情報Aを更新する。更新部137は、例えば、設定情報のID、バージョン、リビジョン番号を指定して、記憶部101を検索し、該当する設定情報Aを取得する。更新部137は、該当する設定項目の設定情報Aの設定値を、設定変更情報の設定値に書き換える。更新部137は、設定変更情報の内容を全て反映した場合、リビジョン番号を更新し、新たな設定情報Aとして記憶部101に記憶する。
【0052】
なお、管理装置10と電子装置30とで記憶する設定情報のデータ形式を統一してもよい。この場合、管理装置10は、形式変換部131を設けなくてもよいが、電子装置30側に、設定情報Aを解析する解析部が設けられる。この解析部は、例えば起動時にオリジナルの設定情報Aを解析し、設定情報Aに含まれる設定値をデータモデルに反映したりする。
【0053】
解析部は、オリジナルの設定情報を解析して取り込む処理が形式変換部131と同様の処理であるが、オリジナルの設定情報から抽出した設定値をデータモデルに直接反映させる点が形式変換部131とは異なる。また、この解析部の機能は、後述するデータモデル生成部335にもたせてもよい。
【0054】
図4は、実施例における電子装置30の制御部303の機能の一例を示すブロック図である。なお、
図4に示す例は、電子装置30は、設定情報Aが変換された設定情報Bを取得する例である。
【0055】
図4に示す制御部303は、登録部331と、ファイル情報生成部333と、データモデル生成部335と、設定変更部337と、変更情報生成部339とを有する。制御部303内の各部は、所定のプログラムが実行されることで機能する。
【0056】
登録部331は、ツール通信部301が受信した登録要求と共に取得した設定情報Bを第1記憶部305に記憶する。
【0057】
ファイル情報生成部333は、第1記憶部305に設定情報Bが記憶されたことを検知し、設定情報Bを識別するために、設定情報BのID、バージョン、リビジョン番号を読み取ってファイル情報を生成する。ファイル情報生成部333は、生成したファイル情報を第3記憶部309に記憶する。
【0058】
データモデル生成部335は、電子装置30の起動時に、第2記憶部307にデータモデルを生成し、第1記憶部305から設定情報Bを読み取って、設定情報B内の設定値をデータモデルに反映する。
【0059】
また、データモデル生成部335は、設定変更が第3記憶部309に記憶されている場合は、設定変更情報内の設定値を、設定情報Bの設定値の反映後にデータモデルに反映する。
【0060】
この場合、データモデル生成部335は、例えば電子装置30の再起動時に、第1記憶部305に記憶される設定情報Bと、第3記憶部309に記憶される設定変更情報とに基づき生成された、変更後の設定値を有するデータモデルを第2記憶部307に記憶することになる。
【0061】
よって、電子装置30の再起動時に、最新の設定値が反映されたデータモデルを生成することができ、最新の設定値で主装置40を制御することができる。
【0062】
設定変更部337は、LAN通信部311が受信した変更要求に基づき、データモデルの設定値を変更する。
【0063】
変更情報生成部339は、データモデルの設定値が変更されたことを検知すると、変更された設定項目と、変更後の設定値とを含む設定変更情報を生成する。
【0064】
<各種データ>
次に、実施例で用いられる各種データの具体例について説明する。
図5は、設定情報Aの一例を示す図である。
図5に示す設定情報Aは、CIDファイルの一例を示し、xml形式で記述されている。
図5に示す設定情報Aは、管理装置10の記憶部101に記憶されている。
【0065】
図6は、設定情報Bの一例を示す図である。
図6に示す設定情報Bは、
図5に示す設定情報Aに基づき、形式変換部131によりデータ形式が変換されている。例えば、設定情報Bの部分P11の情報は、CIDファイルの管理情報を示し、
図5に示すHeader要素から生成される。
【0066】
また、設定情報Bの部分P12の情報は、CIDファイルの設定情報を示し、
図5に示す電子装置30の要素から生成される。また、
図6に示す設定情報Bは、電子装置30の第1記憶部305に記憶される。
【0067】
図7は、ファイル情報の一例を示す図である。
図7に示すファイル情報は、
図6に示す設定情報Bに基づき、ファイル情報生成部333によりファイルID、バージョン、リビジョン番号が読み取られて生成される。
図7に示す例では、ID「sample」、バージョン「1.0」、リビジョン番号「1」を含むファイル情報が生成される。
【0068】
なお、ファイル情報は、設定情報Aの解析結果に基づいて生成されてもよい。この場合、第1記憶部305には設定情報Aが記憶され、ファイル情報生成部333は、解析部(不図示)により設定情報Aが解析されることで取得される設定値に基づいてファイル情報を生成する。
【0069】
図8は、変更前のデータモデル(一部)の一例を示す図である。
図8に示すデータモデルは、
図6に示す設定情報Bに基づき、データモデル生成部335により生成されるデータモデルの一部である。
【0070】
例えば、CIDファイルには、<Val>要素に「direct-with-normal-security」という設定値が記載されている。この設定値は、<DataTypeTemplate>要素の中で列挙形として定義されており、対応する値は1である。この設定値が反映されたデータモデルが
図8に示され、データ項目が「LD1$CBR0$CF$Pos$ctlModel」であり、データ項目の種別が「設定」であり、値が「1」である。
【0071】
ここで、情報処理装置20からオンラインでデータモデル上のデータが書き換えられる場合について説明する。例えば、
図8に示す「LD1$XCBR0$CF$Pos$ctlModel」で指定されるデータ項目に対し、設定値「3」を書き込むよう、情報処理装置20が電子装置30に要求するものとする。
【0072】
電子装置30の設定変更部337は、LAN通信部311から変更要求を受け取り、データモデル上に該当データを書き込む。このとき、変更情報生成部339は、種別が「設定」である場合には、設定変更情報に該当データを書き込む。
【0073】
図9は、変更後のデータモデル(一部)の一例を示す図である。
図9に示すデータモデルは、
図8に示すデータモデルから設定値が「1」から「3」に変更されている。
【0074】
図10は、設定変更情報の一例を示す図である。
図10に示す設定変更情報は、
図9に示す変更後のデータモデルに対して、変更情報生成部339により生成された情報である。設定変更情報は、設定項目(データ項目)名と、変更された設定値とを含む。
【0075】
図11は、更新後の設定情報Aの一例を示す図である。
図11に示す設定情報Aは、更新部137により、
図10に示す設定変更情報と、
図7に示すファイル情報とに基づき更新された情報である。
【0076】
図11に示す設定情報Aでは、<IED>の<Val>要素が、設定値「3」に対応する「direct-with-enhanced-security」に変更されている。また、「revision」が「2」に更新されている。
【0077】
これにより、管理装置10が保持する設定情報と、電子装置30の最新の設定情報との整合を取ることができる。更新された設定情報Aは、新たな情報として記憶部101に記憶され、その履歴が管理テーブルに記録される。
【0078】
図12は、管理テーブルの一例を示す図である。
図12に示す管理テーブルは、管理番号と、ファイル名と、IDと、バージョン(version)と、リビジョン(revision)とを含む。
【0079】
管理番号は、設定情報のファイルを管理するために付与される番号である。ファイル名は、設定情報のファイル名である。IDは、設定情報を識別するためのIDである。バージョンは、設定情報のバージョンを表す。リビジョンは、設定情報の修正回数を表す。例えば、管理番号「3」の設定情報は、管理番号「1」の設定情報を更新(修正)した設定情報である。管理テーブルで設定情報を管理することで、設定情報の履歴を残すことができ、必要に応じて作業者が適切な設定情報を取得することができるようになる。
【0080】
<動作>
次に、実施例における制御システム1の動作について説明する。以下では、各場面での制御システム1の動作を順に説明する。
【0081】
《設定情報の登録》
まずは、設備構築時などに、管理装置10を用いて電子装置30に設定情報を登録する処理について説明する。
図13は、設定情報登録処理の一例を示すシーケンス図である。
図13に示すステップS101で、保守作業者は、管理装置10の保守ツールを用いて、電子装置30を起動させる。例えば、電子装置30の電源をONにする操作を行う。
【0082】
ステップS102で、保守作業者は、管理装置10に対して、設定情報の書き込み指示を行う。設定情報は例えばCIDファイルである。
【0083】
ステップS103で、管理装置10(登録部133)は、電子装置30に対し、設定情報を送信する。このとき、管理装置10は、形式変換部131により設定情報のデータ形式を変換して設定情報を送信してもよいし、オリジナルの設定情報を送信してもよい。
【0084】
ステップS104で、電子装置30(登録部331)は、設定情報の保存処理を行う。この保存処理は、
図14を用いて後述する。
【0085】
ステップS105で、電子装置30は、設定情報の受信完了を管理装置10に通知する。ステップS106で、管理装置10は、設定情報の書込みが完了したことを保守作業者に通知する。管理装置10は、例えば表示画面に書込み完了の旨を表示することで、保守作業者に通知する。
【0086】
図14は、設定情報の保存処理の一例を示すフローチャートである。
図14に示すステップS201で、電子装置30(登録部331)は、受信した設定情報を第1記憶部305に保存する。
【0087】
ステップS202で、電子装置30(ファイル情報生成部333)は、設定情報のID、バージョン、リビジョン番号を読み取り、第3記憶部309のファイル情報に記録する。
【0088】
ステップS203で、電子装置30は、第3記憶部309に記憶された設定変更情報を消去する。これは、今回第1記憶部305に記憶された設定情報が最新の情報であるため、設定変更情報が消去される。
【0089】
《電子装置の起動》
次に、電子装置30の起動時の処理について説明する。
図15は、電子装置30の起動処理の一例を示すシーケンス図である。
図15に示すステップS301で、運転作業者は、電子装置30を起動させる。例えば、運転作業者が、電子装置30の電源をONにする操作を行う。ステップS302で、電子装置30は、設定情報の読込み処理を行う。
【0090】
図16は、設定情報の読込み処理の一例を示すフローチャートである。ステップS401で、電子装置30(データモデル生成部335)は、電源ONされたときに、第1記憶部305に保存された設定情報を解析し、設定値を抽出する。
【0091】
ステップS402で、電子装置30(データモデル生成部335)は、第2記憶部307に記憶されたデータモデルの該当項目に設定情報の設定値を反映する。
【0092】
ステップS403で、電子装置30(データモデル生成部335)は、第3記憶部309に設定変更情報が記憶されているか否かを判定する。設定変更情報が記憶されていれば(ステップS403−YES)ステップS404に進み、設定変更情報が記憶されていなければ(ステップS403−NO)処理を終了する。
【0093】
ステップS404で、電子装置30(データモデル生成部335)は、第3記憶部309に記憶されている設定変更情報を第2記憶部307に記憶されているデータモデルの該当項目に反映する。
【0094】
《情報処理装置20からのデータ書込み(変更)》
次に、制御システム1の運用中に、情報処理装置20から電子装置30にデータを書込む処理について説明する。
図17は、情報処理装置20によるデータ書込み処理の一例を示すシーケンス図である。
【0095】
図17に示すステップS501で、運転作業者は、情報処理装置20に対してデータ書込み指示を行う。
【0096】
ステップS502で、情報処理装置20は、電子装置30に対して、運転作業者から指示されたデータの書込み指示を行う。
【0097】
ステップS503で、電子装置30は、情報処理装置20から指示されたデータのデータ書込み処理を行う。データ書込み処理は、
図18を用いて後述する。
【0098】
ステップS504で、電子装置30は、情報処理装置20に対して、データ書込み完了を通知する。
【0099】
ステップS505で、情報処理装置20は、データの書込みが完了したことを運転作業者に通知する。情報処理装置20は、例えば表示画面に書込み完了の旨を表示することで、運転作業者に通知する。
【0100】
図18は、データ書込み処理の一例を示すフローチャートである。
図18に示すステップS601で、電子装置30(設定変更部337)は、データ書込み指示で指定されたデータ項目を検索する。
【0101】
ステップS602で、電子装置30(設定変更部337)は、第2記憶部307に記憶されたデータモデルの該当項目に設定値を書込む。
【0102】
ステップS603で、電子装置30(設定変更部337)は、書込み対象の種別は「設定」であるか否かを判定する。書込み対象の種別が「設定」であれば(ステップS603−YES)ステップS604に進み、書込み対象の種別が「設定」でなければ(ステップS603−NO)処理を終了する。「設定」以外の書込み対象種別は、例えば「制御指示」などがある。
【0103】
ステップS604で、電子装置30(変更情報生成部339)は、第3記憶部309に記憶されている設定変更情報に設定項目と設定値とを記録する。なお、第3記憶部309に設定変更情報が記憶されていなければ、変更情報生成部339は設定変更情報を生成して第3記憶部309に記憶する。
【0104】
《最新設定情報の取得処理》
次に、電子装置30のデータモデルに設定されている最新の設定値を含む設定情報を取得する処理について説明する。
図19は、最新設定情報の取得処理の一例を示すシーケンス図である。
【0105】
図19に示すステップS701で、保守作業者は、最新の設定情報の取得要求を管理装置10に対して行う。
【0106】
ステップS702で、管理装置10(要求部135)は、電子装置30に対して、ファイル情報の取得要求を行う。
【0107】
ステップS703で、電子装置30は、第3記憶部309に記憶しているファイル情報を管理装置10に送信する。
【0108】
ステップS704で、管理装置10(要求部135)は、電子装置30に対して、設定変更情報の取得要求を行う。
【0109】
ステップS705で、電子装置30は、第3記憶部309に記憶している設定変更情報を管理装置10に送信する。
【0110】
ステップS706で、管理装置10(更新部137)は、設定情報の更新処理を行う。設定情報の更新処理は、
図20を用いて後述する。
【0111】
ステップS707で、管理装置10は、更新処理が完了すると、最新の設定情報の取得が完了したことを保守作業者に通知する。管理装置10は、例えば表示画面に最新の設定情報を表示するなどして書込み完了の旨を保守作業者に通知する。
【0112】
図20は、設定情報の更新処理の一例を示すフローチャートである。
図20に示すステップS801で、管理装置10(更新部137)は、電子装置30から取得した設定情報のファイル情報のID、バージョン、リビジョン番号などを指定して、記憶部101から該当する設定情報を検索する。
【0113】
ステップS802で、管理装置10(更新部137)は、電子装置30から取得した設定変更情報を解析し、設定項目名で指定される項目に対応する設定情報内の項目に対して、設定値を反映する。
【0114】
ステップS803で、管理装置10(更新部137)は、設定変更情報を全て反映した設定情報のリビジョン番号を更新し、最新の設定情報として記憶部101に保存する。このとき、更新部137は、管理テーブルに設定情報の履歴を管理する。
【0115】
保守作業者は、最新の設定情報を取得すると、この設定情報を用いて電子装置30の保守作業を行う。保守作業において、設定値が変更された場合は、この変更後の設定値を含む設定情報を新たに作成し、管理テーブルに管理させる。
【0116】
保守作業者は、保守作業後に、最新の設定情報を電子装置30に登録するよう指示を行うことで、
図13や
図14に示す処理と同様の処理が行われる。
【0117】
以上、実施例によれば、管理装置により機器の設定情報が登録される制御システムにおいて、管理装置側で管理される設定情報と機器側で記憶される設定情報との整合を取ることができる。
【0118】
例えば、実施例の制御システム1は、IEC61850に準拠した変電所内のIEDに適用される。このとき、IEDには、データモデルの情報のうち、設定に関する情報がオンライン設定で変更された場合、データモデル内の設定値を変更するのと同時に、不揮発メモリに設定項目名と新しい設定値を設定変更情報として記録する機能を設けるとよい。
【0119】
さらに、IEDには、保守ツールからの要求に対して、オフライン設定で取り込んだCIDファイルのID、バージョン、リビジョン情報、及び不揮発メモリに記録されている設定変更情報を返す機能を設けるとよい。
【0120】
さらに、IEDには、オフライン設定で新しいCIDファイルを取り込んだ場合、不揮発メモリに記録されている設定変更情報をクリアする機能を設けるとよい。
【0121】
保守ツールには、IEDからCIDファイルのID、バージョン、リビジョン情報、及び設定変更情報を取得する機能を設けるとよい。さらに、保守ツールには、バージョン、リビジョン情報が一致するCIDファイルをメモリに記憶されたファイル群から検索して取得する機能を設けるとよい。
【0122】
さらに、保守ツールには、CIDファイルの記載内容のうち、設定変更情報がある設定項目は、設定変更情報の設定値に書き換えた、新しいCIDファイルを作成、保存する機能を設けるとよい。
【0123】
なお、前述した実施例で説明した制御処理を実現するためのプログラムを記録媒体に記録することで、実施例での制御処理をコンピュータに実施させることができる。例えば、このプログラムを記録媒体に記録し、このプログラムが記録された記録媒体をコンピュータに読み取らせて、前述した制御処理を実現させることも可能である。
【0124】
なお、記録媒体は、CD−ROM、フレキシブルディスク、光磁気ディスク等の様に情報を光学的、電気的或いは磁気的に記録する記録媒体、ROM、フラッシュメモリ等の様に情報を電気的に記録する半導体メモリ等、様々なタイプの記録媒体を用いることができる。この記録媒体には、搬送波は含まれない。
【0125】
以上、実施例について詳述したが、特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲内において、種々の変形及び変更が可能である。また、前述した実施例の構成要素を全部又は複数を組み合わせることも可能である。
【0126】
<総括>
電子装置は、データモデルの設定値に基づいて機器を制御する。電子装置とその電子装置を管理する管理装置間及び電子装置間において、情報交換を標準化(例えばIEC61850)する技術がある。この技術を用いることで、マルチベンダシステムの相互運用性を向上させ、システムのライフサイクルコストを下げることができる。
【0127】
電子装置は、標準化した情報交換により得た設定情報を基にしてデータモデルの設定値を設定している。
【0128】
しかしながら、電子装置には限られた資源しかない。このため、オンライン設定でデータモデルの設定値が直接変更されると、管理装置で管理されている設定情報は変更されない。よって、電子装置と管理装置とで保持する設定値に矛盾が生じてしまう。
【0129】
上記問題に対して、本実施例による制御システムは、管理装置が保持する設定情報と、電子装置で機器を制御している設定情報との整合を取ることができる。