特許第6097068号(P6097068)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6097068太陽電池およびその製造方法、ならびに太陽電池モジュール
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6097068
(24)【登録日】2017年2月24日
(45)【発行日】2017年3月15日
(54)【発明の名称】太陽電池およびその製造方法、ならびに太陽電池モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/0224 20060101AFI20170306BHJP
【FI】
   H01L31/04 260
   H01L31/04 262
【請求項の数】8
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2012-277527(P2012-277527)
(22)【出願日】2012年12月20日
(65)【公開番号】特開2014-123587(P2014-123587A)
(43)【公開日】2014年7月3日
【審査請求日】2015年10月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】100152571
【弁理士】
【氏名又は名称】新宅 将人
(74)【代理人】
【識別番号】100141852
【弁理士】
【氏名又は名称】吉本 力
(72)【発明者】
【氏名】足立 大輔
【審査官】 佐竹 政彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−158726(JP,A)
【文献】 特開2011−171015(JP,A)
【文献】 特表2013−507781(JP,A)
【文献】 特表2013−539230(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/045287(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/029847(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/043921(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/00−31/078、31/18−31/20、
51/42−51/48
H02S 10/00−10/40、30/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光電変換部と、前記光電変換部の一主面上の集電極とを有する太陽電池であって、
前記集電極は、前記光電変換部側から順に第一導電層と第二導電層とを含み、かつ、前記第一導電層と前記第二導電層の間に絶縁層を含み、
前記第一導電層は、粒径が5μm以上50μm以下である粒子状材料を有し、
前記粒子状材料により、第一導電層の表面に凸部が形成され、
前記粒子状材料の凸部により、前記第一導電層、前記光電変換部の一主面上の表面に平行な方向となす角(θs)が10°以上である傾斜部が形成され、
前記第一導電層は、前記粒子状材料よりも粒子径が小さく、前記傾斜部の形成に寄与しない導電性の微粒子をさらに有し、
前記絶縁層は、前記第一導電層の傾斜部上に開口部を有し、
前記第二導電層の一部が、前記開口部を通して前記第一導電層に導通されている太陽電池。
【請求項2】
前記粒子状材料の粒径が前記第一導電層の膜厚よりも大きい、請求項1に記載の太陽電池。
【請求項3】
前記第一導電層の膜厚が0.5μm以上である、請求項1または2に記載の太陽電池。
【請求項4】
前記絶縁層は、膜厚が20nm以上250nm以下である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の太陽電池。
【請求項5】
前記傾斜部のうちの少なくとも1つが、第一導電層の中央部に形成されたものである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の太陽電池。
【請求項6】
前記絶縁層が、前記光電変換部の第一導電層非形成領域上にも形成されている、請求項1〜のいずれか1項に記載の太陽電池。
【請求項7】
請求項1〜のいずれか1項に記載の太陽電池を備える太陽電池モジュール。
【請求項8】
請求項1〜のいずれか1項記載の太陽電池を製造する方法であって、
前記光電変換部上に第一導電層が形成される第一導電層形成工程;
前記第一導電層上に絶縁層が形成される絶縁層形成工程;および
めっき法により第二導電層が形成されるめっき工程、をこの順に有し、
前記絶縁層形成工程において前記第一導電層の傾斜部上に開口部を有する絶縁層を形成し、前記めっき工程において、絶縁層に生じた開口部を起点として、第二導電層を析出させる、太陽電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池およびその製造方法に関する。さらに、本発明は太陽電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
エネルギー問題や地球環境問題が深刻化する中、化石燃料にかわる代替エネルギーとして、太陽電池が注目されている。太陽電池では、半導体接合等からなる光電変換部への光照射により発生したキャリア(電子および正孔)を外部回路に取り出すことにより、発電がおこなわれる。光電変換部で発生したキャリアを効率的に外部回路へ取出すために、太陽電池の光電変換部上には集電極が設けられる。
【0003】
例えば、結晶シリコン基板上に、非晶質シリコン層および透明電極層を有するヘテロ接合太陽電池でも、透明電極層上に集電極が設けられる。
【0004】
このような構成においては、透明電極層が集電極としての機能を果たし得るため、原理的には別途の集電極を設けることは不要である。しかし、透明電極層を構成する酸化インジウム錫(ITO)や酸化亜鉛等の導電性酸化物は、金属に比べて抵抗率が高いために、太陽電池セルの内部抵抗が高くなる問題がある。そのため、透明電極層の表面に、集電極(補助電極としての金属電極)を設け、電流取出し効率を高めることが行われている。
【0005】
太陽電池の集電極は、一般に、スクリーン印刷法により、銀ペーストをパターン印刷することにより形成される。この方法は、工程自体は単純であるが、銀の材料コストが大きいことや、樹脂を含有する銀ペースト材料が用いられるために、集電極の抵抗率が高くなるなどの問題がある。銀ペーストを用いて形成された集電極の抵抗率を小さくするためには、銀ペーストを厚く印刷する必要がある。しかしながら、印刷厚みを大きくすると、電極の線幅も大きくなりやすいことから、電極の細線化が困難であり、集電極による遮光損が大きくなる。
【0006】
これらの課題を解決するための手法として、材料コストおよびプロセスコストの面で優れるめっき法により集電極を形成する方法が知られている。例えば、特許文献1〜3では、光電変換部を構成する透明電極上に、銅等からなる金属層がめっき法により形成された太陽電池法が開示されている。この方法においては、まず、光電変換部の透明電極層上に、集電極の形状に対応する開口部を有するレジスト材料層(絶縁層)が形成され、透明電極層のレジスト開口部に、電解めっきにより金属層が形成される。その後、レジストが除去されることで、所定形状の集電極が形成される。
【0007】
特許文献3では、下地電極層形成後にマスクを用いてめっき電極層を形成することにより、めっき電極の線幅を下地電極層以下とすることが開示されている。また特許文献4では、透明電極上にSiO等の絶縁層を設けた後、絶縁層を貫通する溝を設けて透明電極層の表面または側面を露出させ、透明電極の露出部と導通するように金属集電極を形成する方法が開示されている。具体的には、透明電極層の露出部に光めっき法等により金属シードを形成し、この金属シードを起点として電解めっきにより金属電極を形成する方法が提案されている。このような方法によれば、特許文献1,2のようにレジストを用いる必要がないため、材料コストおよびプロセスコスト面でより有利である。また、低抵抗の金属シードを設けることにより、透明電極層と集電極との間の接触抵抗を低下させることができる。特許文献2〜4では、下地の導電層(下地層)上にめっき法により金属層を形成して、低抵抗の集電極を形成している。
【0008】
特許文献5では、透明電極層上に高分子樹脂からなるパッシベーション層(絶縁層)を形成し、その上に、導電性ペーストからなる下地電極と金属層とからなる集電極を形成する方法が提案されており、金属層は下地電極上に電解めっきにより形成される。この方法では、下地電極形成時にペーストに含まれる溶剤やモノマー成分によりパッシベーション層が部分的に溶解され、透明電極と集電極との電気的なコンタクトが得られる。また、絶縁層上に下地電極が形成されるために、半導体層の欠陥部分と下地電極との接触によるシャントやショートが防止される。
【0009】
集電極を形成する別の方法として、非特許文献1では、結晶シリコン系太陽電池の表面に窒化シリコン等からなる絶縁層を形成した後、銀ペーストをスクリーン印刷法にてパターン印刷し、高温で焼成する方法が提案されている。この方法では、銀ペーストが高温で焼成されるために、絶縁層が溶融し、銀ペースト中の銀粒子と結晶シリコンとの電気的接続が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特昭60−66426号公報
【特許文献2】特開2000−58885号公報
【特許文献3】特開2010−98232号公報
【特許文献4】特開2011−199045号公報
【特許文献5】特平5−63218号公報
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】A.Nguyen他 35th IEEE Photovoltaic Specialist Conference 2009年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
特許文献1〜3の方法において、透明電極層は抵抗率が高いため、下地電極層を設けずに、透明電極層上に金属電極層からなるパターン集電極が電解めっきにより形成されると、透明電極層の面内での電圧降下により、集電極(金属電極層)の膜厚が不均一となるとの問題がある。また、特許文献3のように、集電極パターンに対応するマスクを用いる場合、マスクを形成するための費用や工数が必要となり、実用化に向かないという問題がある。
【0013】
特許文献4の方法によれば、高価なレジスト材料を用いることなく、めっき法により細線パターンの集電極を形成可能である。しかしながら、特許文献4のように、電解めっきの起点となる金属シードを光めっき法により形成する方法は、半導体接合のn層側には適用可能であるものの、p層側に適用することはできない。一般に、ヘテロ接合太陽電池では、n型単結晶シリコン基板を用い、p層側のヘテロ接合を光入射側とする構成の特性が最も高いことが知られているが、特許文献4の方法は、p層側を光入射側とするヘテロ接合太陽電池における光入射側の集電極の形成には適していないとの問題がある。また、透光性絶縁層の溝が透明導電層を貫通して形成されると、集電極と透明導電層との接触面積が著しく小さくなることから、透明導電層/集電極間の抵抗損により、太陽電池特性が低下するとの問題が生じ得た。
【0014】
特許文献5のように、パッシベーション層の一部を溶解する方法では、透明電極層と集電極との間の接触抵抗を十分に下げることが困難であるとの問題がある。また、非特許文献1に記載された方法では、銀ペーストの焼成のために高温(例えば700〜800℃)のプロセスが必要となるため、光電変換層を構成する薄膜の劣化や透明電極層の抵抗増大が生じるという問題がある。特に薄膜太陽電池やヘテロ接合太陽電池のように非晶質シリコン系薄膜を有する太陽電池では、焼成のための高温プロセスによって、変換特性が著しく低下する傾向がある。
【0015】
本発明は、上記のような太陽電池の集電極形成に関わる従来技術の問題点を解決し、太陽電池の変換効率を向上させること、および太陽電池の製造コストを低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは上記課題に鑑み鋭意検討した結果、所定の集電極を用いることにより、太陽電池の変換効率が向上可能であり、さらに当該集電極が低コストで形成可能であることを見出し、本発明に至った。
【0017】
すなわち、本発明は、以下に関する。
【0018】
光電変換部と、前記光電変換部の一主面上の集電極とを有する太陽電池であって、前記集電極は、前記光電変換部側から順に第一導電層と第二導電層とを含み、かつ、前記第一導電層と前記第二導電層の間に絶縁層を含み、前記第一導電層は、前記光電変換部の一主面上の表面に平行な方向となす角(θs)が10°以上である傾斜部を含み、前記絶縁層は、前記第一導電層の傾斜部上に変形部を有し、前記第二導電層の一部が、前記変形部を通して前記第一導電層に導通されている太陽電池。
【0019】
前記第一導電層は、粒子状材料を有し、前記粒子状材料により、第一導電層の表面に凸部が形成され、かつ前記傾斜部のうちの少なくとも1つが、前記粒子状材料の凸部により形成されたものであることが好ましい。
【0020】
前記粒子状材料は、粒径が5μm以上、50μm以下であることが好ましい。
【0021】
前記絶縁層は、膜厚が20nm以上250nm以下であることが好ましい。
【0022】
前記傾斜部のうちの少なくとも1つが、第一導電層の中央部に形成されたものであることが好ましい。
【0023】
前記第二導電層は、前記絶縁層の開口部を通して第一導電層に導通されていることが好ましい。
【0024】
前記絶縁層が、前記光電変換部の第一導電層非形成領域上にも形成されていることが好ましい。
【0025】
前記太陽電池を備える太陽電池モジュールを作製することが好ましい。
【0026】
前記太陽電池は、前記光電変換部上に第一導電層が形成される第一導電層形成工程;前記第一導電層上に絶縁層が形成される絶縁層形成工程;およびめっき法により第二導電層が形成されるめっき工程、をこの順に有し、前記絶縁層形成工程において前記第一導電層の傾斜部上に開口または局所的に薄い膜厚である、変形部を有する絶縁層を形成し、前記めっき工程において、絶縁層に生じた変形部を起点として、第二導電層を析出させる方法により製造することが好ましい。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、めっき法により集電極が形成可能であるため、集電極が低抵抗化され、太陽電池の変換効率を向上することができる。また、従来技術のめっき法による集電極の形成方法では、絶縁層のパターニングプロセスが必要であるが、本発明によればパターン形成のためのマスクやレジストを用いずにめっき法によるパターン電極の形成が可能である。また本発明では、集電極を構成する第一導電層と第二導電層の間に絶縁層を有し、第一導電層表面に傾斜部を含む。傾斜部の角度を所定の範囲にすることで、第一導電層と第二導電層の密着性を向上させることができる。そのため、高効率、高信頼性の太陽電池を安価に提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の太陽電池を示す模式的断面図である。
図2】一実施形態にかかるヘテロ接合太陽電池を示す模式的断面図である。
図3】本発明の一実施形態による太陽電池の製造工程の概念図である。
図4】本発明の一実施形態による集電極の概念図である。
図5】めっき装置の構造模式図である。
図6】実施例2、3および比較例1における集電極の評価結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1に模式的に示すように、本発明の太陽電池100は、光電変換部50の一主面上に集電極70を備える。集電極70は、光電変換部50側から順に、第一導電層71と第二導電層72とを含む。第一導電層71と第二導電層72との間には絶縁層9が形成されている。第二導電層72の一部は、例えば絶縁層9の開口部9hを介して、第一導電層71に導通されている。
【0030】
本発明における一実施形態に係る太陽電池100は、光電変換部50として、例えば、厚み100〜300μm程度の単結晶シリコンウェハや多結晶シリコンウェハ等の結晶系半導体ウェハからなり、正方形状もしくは略正方形状を有するものを使用することができる。このような太陽電池100内には、n型半導体領域とp型半導体領域とが存在し、n型半導体領域とp型半導体領域との界面部分で半導体接合部が形成されている。n型及びp型半導体領域は、結晶系半導体から構成しても良いし、非晶質半導体から構成しても良い。この他に単結晶シリコン基板と非晶質シリコン層との間に実質的に真性な非晶質シリコン層を挟むことで、その界面での欠陥を低減し、接合界面の特性を改善した構造を有する太陽電池であってもよい。
【0031】
以下、太陽電池100として、本発明の一実施形態であるヘテロ接合結晶シリコン太陽電池(以下、「ヘテロ接合太陽電池」と記載する場合がある)を例として、本発明をより詳細に説明する。ヘテロ接合太陽電池は、一導電型の単結晶シリコン基板の表面に、単結晶シリコンとはバンドギャップの異なるシリコン系薄膜を有することで、拡散電位が形成された結晶シリコン系太陽電池である。シリコン系薄膜としては非晶質のものが好ましい。中でも、拡散電位を形成するための導電型非晶質シリコン系薄膜と結晶シリコン基板の間に、薄い真性の非晶質シリコン層を介在させたものは、変換効率の最も高い結晶シリコン太陽電池の形態の一つとして知られている。
【0032】
図2は、本発明の一実施形態に係る結晶シリコン系太陽電池の模式的断面図である。結晶シリコン系太陽電池101は、光電変換部50として、一導電型単結晶シリコン基板1の一方の面(光入射側の面)に、導電型シリコン系薄膜3aおよび光入射側透明電極層6aをこの順に有する。一導電型単結晶シリコン基板1の他方の面(光入射側と反対側の面)には、導電型シリコン系薄膜3bおよび裏面側透明電極層6bをこの順に有することが好ましい。光電変換部50表面の光入射側透明電極層6a上には、第一導電層71および第二導電層72を含む集電極70が形成されている。第一導電層71と第二導電層72との間には絶縁層9が形成されている。
【0033】
一導電型単結晶シリコン基板1と導電型シリコン系薄膜3a,3bとの間には、真性シリコン系薄膜2a,2bを有することが好ましい。裏面側透明電極層6b上には裏面金属電極8を有することが好ましい。
【0034】
まず、本発明の結晶シリコン系太陽電池における、一導電型単結晶シリコン基板1について説明する。一般的に単結晶シリコン基板は、導電性を持たせるために、シリコンに対して電荷を供給する不純物を含有している。単結晶シリコン基板は、シリコン原子に電子を導入するための原子(例えばリン)を含有させたn型と、シリコン原子に正孔を導入する原子(例えばボロン)を含有させたp型がある。すなわち、本発明における「一導電型」とは、n型またはp型のどちらか一方であることを意味する。
【0035】
ヘテロ接合太陽電池では、単結晶シリコン基板へ入射した光が最も多く吸収される入射側のへテロ接合を逆接合として強い電場を設けることで、電子・正孔対を効率的に分離回収することができる。そのため、光入射側のヘテロ接合は逆接合であることが好ましい。一方で、正孔と電子とを比較した場合、有効質量および散乱断面積の小さい電子の方が、一般的に移動度が大きい。以上の観点から、ヘテロ接合太陽電池に用いられる単結晶シリコン基板1は、n型単結晶シリコン基板であることが好ましい。単結晶シリコン基板1は、光閉じ込めの観点から、表面にテクスチャ構造を有することが好ましい。
【0036】
テクスチャが形成された一導電型単結晶シリコン基板1の表面に、シリコン系薄膜が製膜される。シリコン系薄膜の製膜方法としては、プラズマCVD法が好ましい。プラズマCVD法によるシリコン系薄膜の形成条件としては、基板温度100〜300℃、圧力20〜2600Pa、高周波パワー密度0.004〜0.8W/cmが好ましく用いられる。シリコン系薄膜の形成に使用される原料ガスとしては、SiH、Si等のシリコン含有ガス、またはシリコン系ガスとHとの混合ガスが好ましく用いられる。
【0037】
導電型シリコン系薄膜3は、一導電型または逆導電型のシリコン系薄膜である。例えば、一導電型単結晶シリコン基板1としてn型が用いられる場合、一導電型シリコン系薄膜、および逆導電型シリコン系薄膜は、各々n型、およびp型となる。p型またはn型シリコン系薄膜を形成するためのドーパントガスとしては、BまたはPH等が好ましく用いられる。また、PやBといった不純物の添加量は微量でよいため、予めSiHやHで希釈された混合ガスを用いることが好ましい。導電型シリコン系薄膜の製膜時に、CH、CO、NH、GeH等の異種元素を含むガスを添加して、シリコン系薄膜を合金化することにより、シリコン系薄膜のエネルギーギャップを変更することもできる。
【0038】
シリコン系薄膜としては、非晶質シリコン薄膜、微結晶シリコン(非晶質シリコンと結晶質シリコンとを含む薄膜)等が挙げられる。中でも非晶質シリコン系薄膜を用いることが好ましい。例えば、一導電型単結晶シリコン基板1としてn型単結晶シリコン基板を用いた場合の光電変換部50の好適な構成としては、透明電極層6a/p型非晶質シリコン系薄膜3a/i型非晶質シリコン系薄膜2a/n型単結晶シリコン基板1/i型非晶質シリコン系薄膜2b/n型非晶質シリコン系薄膜3b/透明電極層6bの順の積層構成が挙げられる。この場合、前述の理由から、p層側を光入射面とすることが好ましい。
【0039】
真性シリコン系薄膜2a,2bとしては、シリコンと水素で構成されるi型水素化非晶質シリコンが好ましい。単結晶シリコン基板上に、CVD法によってi型水素化非晶質シリコンが製膜されると、単結晶シリコン基板への不純物拡散を抑えつつ表面パッシベーションを有効に行うことができる。また、膜中の水素量を変化させることで、エネルギーギャップにキャリア回収を行う上で有効なプロファイルを持たせることができる。
【0040】
p型シリコン系薄膜は、p型水素化非晶質シリコン層、p型非晶質シリコンカーバイド層、またはp型非晶質シリコンオキサイド層であることが好ましい。不純物拡散の抑制や直列抵抗低下の観点ではp型水素化非晶質シリコン層が好ましい。一方、p型非晶質シリコンカーバイド層およびp型非晶質シリコンオキサイド層は、ワイドギャップの低屈折率層であるため、光学的なロスを低減できる点において好ましい。
【0041】
ヘテロ接合太陽電池101の光電変換部50は、導電型シリコン系薄膜3a,3b上に、透明電極層6a,6bを備えることが好ましい。透明電極層は、透明電極層形成工程により形成される。透明電極層6a,6bは、導電性酸化物を主成分とする。導電性酸化物としては、例えば、酸化亜鉛や酸化インジウム、酸化錫を単独または混合して用いることができる。導電性、光学特性、および長期信頼性の観点から、酸化インジウムを含んだインジウム系酸化物が好ましく、中でも酸化インジウム錫(ITO)を主成分とするものがより好ましく用いられる。ここで「主成分とする」とは、含有量が50重量%より多いことを意味し、70重量%以上が好ましく、90%重量以上がより好ましい。透明電極層は、単層でもよく、複数の層からなる積層構造でもよい。
【0042】
透明電極層には、ドーピング剤を添加することができる。例えば、透明電極層として酸化亜鉛が用いられる場合、ドーピング剤としては、アルミニウムやガリウム、ホウ素、ケイ素、炭素等が挙げられる。透明電極層として酸化インジウムが用いられる場合、ドーピング剤としては、亜鉛や錫、チタン、タングステン、モリブデン、ケイ素等が挙げられる。透明電極層として酸化錫が用いられる場合、ドーピング剤としては、フッ素等が挙げられる。
【0043】
ドーピング剤は、光入射側透明電極層6aおよび裏面側透明電極層6bの一方もしくは両方に添加することができる。特に、光入射側透明電極層6aにドーピング剤を添加することが好ましい。光入射側透明電極層6aにドーピング剤を添加することで、透明電極層自体が低抵抗化されるとともに、透明電極層6aと集電極70との間での抵抗損を抑制することができる。
【0044】
光入射側透明電極層6aの膜厚は、透明性、導電性、および光反射低減の観点から、10nm以上140nm以下であることが好ましい。透明電極層6aの役割は、集電極70へのキャリアの輸送であり、そのために必要な導電性があればよく、膜厚は10nm以上であることが好ましい。膜厚を140nm以下にすることにより、透明電極層6aでの吸収ロスが小さく、透過率の低下に伴う光電変換効率の低下を抑制することができる。また、透明電極層6aの膜厚が上記範囲内であれば、透明電極層内のキャリア濃度上昇も防ぐことができるため、赤外域の透過率低下に伴う光電変換効率の低下も抑制される。
【0045】
透明電極層の製膜方法は、特に限定されないが、スパッタ法等の物理気相堆積法や、有機金属化合物と酸素または水との反応を利用した化学気相堆積(MOCVD)法等が好ましい。いずれの製膜方法においても、熱やプラズマ放電によるエネルギーを利用することもできる。
【0046】
透明電極層作製時の基板温度は、適宜設定される。例えば、シリコン系薄膜として非晶質シリコン系薄膜が用いられる場合、200℃以下が好ましい。基板温度を200℃以下とすることにより、非晶質シリコン層からの水素の脱離や、それに伴うシリコン原子へのダングリングボンドの発生を抑制でき、結果として変換効率を向上させることができる。
【0047】
裏面側透明電極層6b上には、裏面金属電極8が形成されることが好ましい。裏面金属電極8としては、近赤外から赤外域の反射率が高く、かつ導電性や化学的安定性が高い材料を用いることが望ましい。このような特性を満たす材料としては、銀やアルミニウム等が挙げられる。裏面金属電極層の製膜方法は、特に限定されないが、スパッタ法や真空蒸着法等の物理気相堆積法や、スクリーン印刷等の印刷法等が適用可能である。
【0048】
透明電極層6a上に、集電極70が形成される。集電極70は、第一導電層71と、第二導電層72とを含む。第一導電層71と第二導電層72との間には、絶縁層9が形成される。
【0049】
本発明においては、第二導電層72の一部が、絶縁層の変形部を通じて第一導電層71に導通されていればよい。ここで「一部が導通されている」とは、絶縁層に開口部が形成されている場合は、その開口部に第二導電層の材料が充填されていることによって、導通されている状態である。また局所的に薄い膜厚を有する場合は、例えば絶縁層9の一部の膜厚が、数nm程度と非常に薄くなることによって、第二導電層72が第一導電層71に導通していればよい。例えば、第一導電層71に、粒子状材料としてアルミニウム等の金属材料を含有する場合、その表面に形成された酸化被膜(絶縁層に相当)を介して第一導電層71と第二導電層との間が導通されている状態が挙げられる。
【0050】
以下、本発明における集電極の製造方法の好ましい形態を図面に基づいて説明する。図3は、太陽電池の光電変換部50上への集電極70の形成方法の一実施形態を示す工程概念図である。この実施形態では、まず、光電変換部50が準備される(光電変換部準備工程、図3(A))。例えば、ヘテロ接合太陽電池の場合は、前述のように、一導電型シリコン基板上に、シリコン系薄膜および透明電極層を備える光電変換部が準備される。
【0051】
光電変換部の一主面上に、第一導電層71が形成される(第一導電層形成工程、図3(B))。本発明の第一導電層71は、表面に、光電変換部の一主面上の表面に平行な平面となす角(θs)が10°以上である傾斜部を含む。第一導電層71上には、絶縁層9が形成される(絶縁層形成工程、図3(C))。絶縁層9は、第一導電層71上にのみ形成されていてもよく、光電変換部50の第一導電層71が形成されていない領域(第一導電層非形成領域)上にも形成されていてもよい。特に、ヘテロ接合太陽電池のように、光電変換部50の表面に透明電極層が形成されている場合は、第一導電層非形成領域上にも絶縁層9が形成されることが好ましい。本発明においては、絶縁層形成工程において、第一導電層の傾斜部上に開口部9hなどの変形部が形成される。
【0052】
絶縁層形成工程により絶縁層に開口部を形成した後に、めっき法により第二導電層72が形成される(めっき工程、図3(D))。第一導電層71は絶縁層9により被覆されているが、絶縁層9に開口部9hが形成された部分では、第一導電層71が露出した状態である。そのため、第一導電層がめっき液に曝されることとなり、この開口部9hを起点として金属の析出が可能となる。このような方法によれば、集電極の形状に対応する開口部を有するレジスト材料層を設けずとも、集電極の形状に対応する第二導電層をめっき法により形成することができる。
【0053】
第一導電層71は、めっき法により第二導電層が形成される際の導電性下地層として機能する層である。そのため、第一導電層は電解めっきのための下地層として機能し得る程度の導電性を有していればよい。なお、本明細書においては、体積抵抗率が10−2Ω・cm以下であれば導電性であると定義する。また、体積抵抗率が、10Ω・cm以上であれば、絶縁性であると定義する。
【0054】
第一導電層71の膜厚は、スクリーン印刷法により形成する場合は、コスト的な観点から20μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましい。一方、第一導電層71のライン抵抗を所望の範囲とする観点から、膜厚は0.5μm以上が好ましく、1μm以上がより好ましい。
【0055】
本発明の第一導電層71は、光電変換部の一主面上の表面に平行な平面となす角(θs)が10°以上である傾斜部を含む。ここで本発明における「傾斜部」とは、図4(A1)〜(E1)に第一導電層の断面形状を模式的に示すように、光電変換部の一主面上の表面に平行な平面となす角(θs)が10°以上である、第一導電層表面の領域あるいは点を意味する。また第一導電層表面において、前記傾斜部以外の部分(すなわちθsが10°未満の領域)を「平坦部」という。本発明の第一導電層は、表面に「傾斜部」を有し、さらに「平坦部」を有していてもよい。なお「第一導電層表面」とは、第一導電層の光入射側の表面を意味する。
【0056】
θsを10°以上にすることにより、第一導電層の傾斜部71hの上に形成される絶縁層に開口部を形成しやすくなる。中でも、より容易に絶縁層に開口部を形成しやすくできる観点から、θsが20°以上の領域あるいは点を有することが好ましく、30°以上がより好ましく、40°以上が特に好ましい。すなわちθsの最大値θmaxが20°以上が好ましく、30°以上がより好ましく、40°以上が特に好ましい。具体的には、ある傾斜部にはθs=10°の部分やθs=30°の部分のいずれも存在してもよく、θsのうちの最大値が大きい方が好ましい。θsを大きくすることにより、第一導電層の表面積が増加し、第二導電層との間の接触面積が増加することから、第一導電層と第二導電層との間の付着強度が増加することも期待できる。
【0057】
一方、θsの最大値θmaxは120°以下の領域あるいは点を有することが好ましく、90°以下であることがより好ましく、70°とすることが特に好ましい。上記範囲にすることにより、めっき工程後にめっき液が第一導電層の表面に残留することをより抑制することができ、めっき液の残留に伴い生じうる長期信頼性(すなわちモジュール化した際の信頼性)の低下をより抑制することができる。
【0058】
また第二導電層材料を形成するための起点の数を増やし、第二導電層のライン抵抗の低減や、第一導電層と第二導電層との間の抵抗の低減及び付着強度の向上の観点から、傾斜部の数もしくは面積は多い方がより好ましい。
【0059】
表面に水平な平面となす角度は、水平台に置いた測定器の水平な測定台上に四隅と中央が測定台と接触した状態にして太陽電池100を静置し、第一導電層の表面プロファイルを測定して、水平面との角度を算出することで求めることができる。θs測定用の測定器としては、触針式段差計や共焦点レーザー顕微鏡を用いることができる。また、測定器の水平方向及び高さ方向の精度は、それぞれ、第一導電層線幅の1/50〜1/100以上、第一導電層膜厚の1/50〜1/100以上あることが好ましい。また、θs算出時に、ノイズや微細な凹凸の影響を除去するため、水平方向で5μm程度の幅での平均化した高さの測定値を用いることが好ましい。
【0060】
第一導電層を、例えば、スクリーン印刷法により形成する場合は、高粘度の印刷ペースト材料や、所定の粒径を有する粒子状材料を含むペースト材料を用いることにより所定の傾斜部を形成することができる。高粘度の印刷ペースト材料を用いる場合は、図4(A1)に模式的に示すように第一導電層の端部に傾斜部が形成されやすい。また粒子状材料71pを含む高粘度のペースト材料を用いる場合は、図4(B1)に模式的に示すように第一導電層の端部および中央部に傾斜部を容易に形成することができる。
【0061】
粒子状材料の形状は、前記粒子状材料により、第一導電層の表面に凸部が形成され、かつ当該凸部によりθsが10°以上の傾斜部を第一導電層表面に形成できればよい。すなわち、図4(B’1)に示すように、粒子状材料が第一導電層の表面側に突出して凸部を形成し、前記傾斜部が当該凸部により形成される状態が得られれば特に限定されない。この際、前記凸部の表面は、粒子状材料がむき出しになっていてもよく、粒子状材料以外の第一導電層材料から構成されていてもよい(すなわち粒子状材料の表面に印刷ペースト材料等が付着していてもよい)。なお、前記凸部が複数集合して、凹部を形成してもよい。
【0062】
θsが10°以上である「傾斜部」は、第一導電層表面の任意の位置に形成し得る。傾斜部71hは、図4(A1)に示すように第一導電層の端部にあってもよいし、図4(B1)、(B’1)や(C1)に示すように第一導電層の中央部にあってもよい。傾斜部71hは、第一導電層の中央部に凸部(図4(B1)(B’1))や凹部(図4(C1))を有する場合、容易に形成することができる。なお、凸部は、図4(B1)に示すように粒子状材料を用いずに形成してもよいし、図4(B’1)に示すように粒子状材料71を用いて形成してもよい。凹部も凸部と同様、粒子状材料を用いて形成してもよい。また1つの傾斜部が、端部と中央部に亘って形成されていてもよい。
【0063】
この際、傾斜部が中央部に形成されていることが好ましい。「傾斜部が中央部に形成されている」とは、ある1つの傾斜部の少なくとも一部が中央部に形成されていればよく、上述のようにある1つの傾斜部が端部と中央部に亘って形成されているものも含む。中でも、ある1つの傾斜部が所定の領域を有する場合、当該領域のうち、より多くの領域が中央部に形成されていることが好ましい。
【0064】
上記のような傾斜部71hを形成することにより、例えば(A1)〜(C1)に示す第一導電層上に、図4(A2)〜(C2)に示すように、各々絶縁層を製膜した際に、前記傾斜部71h上に開口部9hなどの変形部を形成することができる。
【0065】
本発明における開口部は、前記傾斜部の少なくとも一部に形成されていればよい。例えば、θsが10°以上の領域を有するある傾斜部において、該領域の一部に開口部が形成され、他の部分は絶縁層で覆われていてもよい。また1つの傾斜部に複数の開口部が形成されていてもよい。なお、本発明における第一導電層の端部及び中央部とは、図4(F)に示すように、第一導電層を線幅方向と垂直方向に4等分したとき、両端部分を端部とし、端部で挟まれた部分を中央部とする。
【0066】
本発明において、例えば低粘度の印刷ペースト材料を使用した場合、端部のθsは小さくなる傾向があるが、粒子状材料を添加する場合、該粒子状材料の近傍においてθsを容易に10°以上にすることができる。
【0067】
粒子状材料の粒径は3μm以上、50μm以下であることが好ましい。中でも、5μm以上、40μm以下であることが好ましく、15μm以上、30μm以下がより望ましい。粒子状材料の粒径を3μm以上にすることにより、第一導電層の表面に凸部を形成しやすくなり、容易にθsを10°以上にすることができる。これにより、絶縁層に開口部を容易に形成できる。また、第一導電層の膜厚よりも大きい粒径のものを用いることによっても第一導電層の表面に凸部を形成でき、より容易にθsを10°以上にすることができる。粒径を50μm以下にすることにより、モジュール作製の際に、気泡のかみこみや接続配線(タブやインターコネクタともいう)の接着強度不良などの不具合を生じにくくすることができる。また、θsの最大値θmaxが120°以上となる傾斜部の生成を抑えやすくなる。
【0068】
粒子状材料の材質は、特に限定されない。導電性材料であっても、絶縁性材料であってもよい。また、有機物であってもよく、無機物であってもよい。熱的特性(融点や軟化点)も特に限定されない。しかしながら、第一導電層のライン抵抗を下げる観点からは、導電性材料であることが好ましい。また導電性材料を使用した場合、電解めっきにより第二導電層が形成される場合に、第二導電層の膜厚の均一性を高めることができる。また、粒子状材料が金属材料であれば、光電変換部50と集電極70との間の接触抵抗を低下させることも可能となる。
【0069】
導電性を有する材料としては、銀、銅、アルミニウム、ニッケル、錫、ビスマス、亜鉛、ガリウム、カーボン及びこれらの混合物等が一例として挙げられる。上記材料を用いることで、容易に傾斜部を形成することができ、その上に製膜する絶縁層に容易に変形部を形成することができる。これにより、粒子状材料の表面上に第二導電層をさせることができ、第一導電層と第二導電層との間の抵抗を低減できることが期待できる。
【0070】
前述のごとく、第一導電層71は導電性であり、体積抵抗率が10−2Ω・cm以下であればよい。第一導電層71の体積抵抗率は、10−4Ω・cm以下であることが好ましい。第一導電層構成材料の中で、電気伝導を担い得る材料として微粒子のみを有する場合、該微粒子が導電性を有するものであれば良い。例えば粒子状材料を有さない印刷ペースト等の材料を用いる場合、第一導電層には導電性の微粒子などが含まれる。一方、第一導電層に粒子状材料のみを有する場合、該粒子状材料が導電性を有していればよい。
【0071】
また第一導電層に、粒子状材料と、粒子状材料よりも粒子径が小さい微粒子を有する場合、少なくともいずれか一方が導電性を有していればよい。例えば、微粒子/粒子状材料の組合せとしては、絶縁性/導電性、導電性/絶縁性、導電性/導電性が挙げられるが、第一導電層をより低抵抗とするためには、微粒子および粒子状材料料の双方が導電性を有する材料であることが好ましい。
【0072】
ここで上記「微粒子」とは、粒子状材料よりも粒子径が小さく、θsが10°以上の傾斜部の形成に寄与しない材料を意味する。微粒子としては、例えば、銀、銅、アルミニウム、ニッケル、錫、ビスマス、亜鉛、ガリウム、カーボン及びこれらの混合物等が一例として挙げられる。中でも導電性の点からAg微粒子を用いることが好ましい。
【0073】
第一導電層の形成材料には、上記の微粒子や粒子状材料に、バインダー樹脂等を含有するペースト等を好ましく用いることができる。また、スクリーン印刷法により形成された第一導電層の導電性を十分向上させるためには、熱処理により第一導電層を硬化させることが望ましい。したがって、ペーストに含まれるバインダー樹脂としては、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、アクリル系樹脂等が適用可能である。
【0074】
第一導電層71は、インクジェット法、スクリーン印刷法、導線接着法、スプレー法、真空蒸着法、スパッタ法等の公知技術によって作製できる。第一導電層71は、櫛形等の所定形状にパターン化されていることが好ましい。パターン化された第一導電層の形成には、生産性の観点からスクリーン印刷法が適している。
【0075】
スクリーン印刷法では、金属粒子からなる導電性の微粒子を含む印刷ペースト、および集電極のパターン形状に対応した開口パターンを有するスクリーン版を用いて、集電極パターンを印刷する方法が好ましく用いられる。一方、印刷ペーストとして、溶剤を含む材料が用いられる場合には、溶剤を除去するための乾燥工程が必要となる。乾燥時間は、例えば5分間〜1時間程度で適宜に設定され得る。
【0076】
例えば、第一導電層に印刷ペーストを有するものを用いた場合、例えば図4(A1)のように、印刷ペーストの粘度を調整することによってもθsの調整は可能である。印刷ペーストの粘度は、20Pa・s以上500Pa・s以下が好ましい。上記範囲とすることで、第一導電層のθsをより容易に所定の範囲にすることが可能となる。印刷ペーストの粘度を20Pa・s以上とすることにより、高いアスペクト比とすることができ、θsを大きくすることができる。中でも50Pa・s以上であることがより好ましく、80Pa・s以上であることが特に好ましい。
【0077】
また、印刷ペーストの粘度は500Pa・s以下であることが好ましく、400Pa・s以下であることがより好ましく、300Pa・s以下であることが特に好ましい。印刷ペーストの粘度を500Pa・s以下にすることにより、例えば、結晶シリコン基板表面にテクスチャ構造を有するヘテロ接合太陽電池などを用いた場合、テクスチャ構造部分にも印刷ペーストを十分充填させ、第一導電層材料と透明導電層とのコンタクトをより良好にすることができる。
【0078】
また上述のように、印刷ペーストの粘度が小さい場合、該印刷ペーストにより形成された第一導電層の領域はθsが小さくなる傾向がある。しかしながら、粒子状材料を添加する場合、粒子状材料の粒径や含有量などを適宜調整することにより、該粒子状材料によりθsを所定の範囲に容易に設定できる。印刷ペーストの粘度は、ブルックフィールド社製B型粘度計を用い、測定温度25℃、回転数10rpmで測定することにより得られる。
【0079】
第一導電層は、複数の層から構成されてもよい。例えば、光電変換部表面の透明電極層との接触抵抗が低い下層と、粒子状材料を含む上層からなる積層構造であっても良い。このような構造によれば、透明電極層との接触抵抗の低下に伴う太陽電池の曲線因子向上が期待できる。
【0080】
以上、第一導電層が印刷法により形成される場合を中心に説明したが、第一導電層の形成方法は印刷法に限定されるものではない。例えば、第一導電層は、パターン形状に対応したマスクを用いて、蒸着法やスパッタ法により形成されてもよい。
【0081】
(絶縁層)
第一導電層71上には、絶縁層9が形成される。ここで、第一導電層71が所定のパターン(例えば櫛形)に形成された場合、光電変換部50の表面上には、第一導電層が形成されている第一導電層形成領域と、第一導電層が形成されていない第一導電層非形成領域とが存在する。
【0082】
絶縁層9は、少なくとも第一導電層形成領域に形成される。この際、上述のように第一導電層の傾斜部上に絶縁層が製膜されていない部分が存在する(すなわち第一導電層の傾斜部上に絶縁層の開口部が形成されている)ものを含む。本発明において、絶縁層9は、第一導電層71と第二導電層72との付着力の向上にも寄与すると考えられる。
【0083】
一般的に、集光効率を向上させる観点から細線化した集電極が好ましく用いられ、この場合、第一導電層と第二導電層の間の密着性をより向上させることが望まれている。本発明では、第一導電層と第二導電層の間に絶縁層を形成し、かつ、第一導電層が所定の角度を有する傾斜部を含むことにより、絶縁層に開口部などの変形部を形成することができる。また、その上に形成される第二導電層との密着性が向上すると考えられる。その結果、集電極を細線化した際も、第一導電層と第二導電層の間の剥離防止効果がより期待できる。これにより、歩留まりの向上(剥がれ防止による効果)や集光効率の向上(細線化による効果)などがより期待できると考えられる。
【0084】
特に第一導電層としてスクリーン印刷法で形成したAg層等を用い、その上にめっき法によりCu層が形成される場合などAg層とCu層の付着力は小さいが、酸化シリコン等の絶縁層上に、酸化シリコン等の絶縁層上にCu層が形成されることにより、第二導電層の付着力が高められ、太陽電池の信頼性を向上することが期待される。
【0085】
本発明において、絶縁層9は、第一導電層非形成領域上にも形成されていることが好ましく、第一導電層非形成領域の全面に形成されていることが特に好ましい。絶縁層が第一導電層非形成領域にも形成されている場合、めっき法により第二導電層が形成される際に、光電変換部をめっき液から化学的および電気的に保護することが可能となる。例えば、ヘテロ接合太陽電池のように光電変換部50の表面に透明電極層が形成されている場合は、透明電極層の表面に絶縁層が形成されることで、透明電極層とめっき液との接触が抑止され、透明電極層上への金属層(第二導電層)の析出を防ぐことができる。また、生産性の観点からも、第一導電層形成領域と第一導電層非形成領域との全体に絶縁層が形成されることがより好ましい。さらに、この場合、第一導電層が絶縁層により覆われているため、第一導電層を細線化した場合であっても、基板からの第一導電層の剥離を防止できるため、歩留まり向上効果がより期待できる。
【0086】
絶縁層9の材料としては、電気的に絶縁性を示す材料が用いられる。また、絶縁層9は、めっき液に対する化学的安定性を有する材料であることが望ましい。めっき液に対する化学的安定性が高い材料を用いることにより、第二導電層形成時のめっき工程中に、絶縁層が溶解しにくく、光電変換部表面へのダメージが生じにくくなる。また、第一導電層非形成領域上にも絶縁層9が形成される場合、絶縁層は、光電変換部50との付着強度が大きいことが好ましい。例えば、ヘテロ接合太陽電池では、絶縁層9は、光電変換部50表面の透明電極層6aとの付着強度が大きいことが好ましい。透明電極層と絶縁層との付着強度を大きくすることにより、めっき工程中に、絶縁層が剥離しにくくなり、透明電極層上への金属の析出を防ぐことができる。
【0087】
絶縁層9には、光吸収が少ない材料を用いることが好ましい。絶縁層9は、光電変換部50の光入射面側に形成されるため、絶縁層による光吸収が小さければ、より多くの光を光電変換部へ取り込むことが可能となる。例えば、絶縁層9が透過率90%以上の十分な透明性を有する場合、絶縁層での光吸収による光学的な損失が小さく、第二導電層形成後に絶縁層を除去することなく、そのまま太陽電池として使用することができる。そのため、太陽電池の製造工程を単純化でき、生産性をより向上させることが可能となる。絶縁層9が除去されることなくそのまま太陽電池として使用される場合、絶縁層9は、透明性に加えて、十分な耐候性、および熱・湿度に対する安定性を有する材料を用いることがより望ましい。
【0088】
絶縁層の材料は、無機絶縁性材料でも、有機絶縁性材料でもよい。無機絶縁性材料としては、例えば、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛等の材料を用いることができる。有機絶縁性材料としては、例えば、ポリエステル、エチレン酢酸ビニル共重合体、アクリル、エポキシ、ポリウレタン等の材料を用いることができる。
【0089】
このような無機材料の中でも、めっき液耐性や透明性の観点からは、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化窒化シリコン、酸化アルミニウム、サイアロン(SiAlON)、酸化イットリウム、酸化マグネシウム、チタン酸バリウム、酸化サマリウム、タンタル酸バリウム、酸化タンタルフッ化マグネシウム、酸化チタン、チタン酸ストロンチウム等が好ましく用いられる。中でも、電気的特性や透明電極層との密着性等の観点からは、酸化シリコン、窒化シリコン、酸化窒化シリコン、酸化アルミニウム、サイアロン(SiAlON)、酸化イットリウム、酸化マグネシウム、チタン酸バリウム、酸化サマリウム、タンタル酸バリウム、酸化タンタルフッ化マグネシウム等が好ましく、屈折率を適宜に調整し得る観点からは、酸化シリコンや窒化シリコン等が特に好ましく用いられる。なお、これらの無機材料は、化学量論的(stoichiometric)組成を有するものに限定されず、酸素欠損等を含むものであってもよい。
【0090】
絶縁層9の膜厚は、絶縁層の材料や形成方法に応じて適宜設定される。絶縁層9の膜厚は、第一導電層の傾斜部上の絶縁層に開口部などの変形部が形成され得る程度に薄いことが好ましい。かかる観点から、絶縁層9の膜厚は、250nm以下であることが好ましく、200nm以下であることがより好ましい。
【0091】
また、第一導電層非形成部における絶縁層9の光学特性や膜厚を適宜設定することで、光反射特性を改善し、太陽電池セル内部へ導入される光量を増加させ、変換効率をより向上させることが可能となる。このような効果を得るためには、絶縁層9の屈折率が、光電変換部50表面の屈折率よりも低いことが好ましい。また、絶縁層9に好適な反射防止特性を付与する観点から、膜厚は20nm以上で設定されることが好ましく、50nm以上で設定されることがより好ましい。なお、第一導電層形成領域上の絶縁層の膜厚と第一導電層非形成領域上の絶縁層の膜厚は異なっていてもよい。例えば、第一導電層形成領域では、第一導電層の傾斜部において開口部の形成を容易とする観点で絶縁層の膜厚が設定され、第一導電層非形成領域では、適宜の反射防止特性を有する光学膜厚となるように絶縁層の膜厚が設定されてもよい。
【0092】
また、傾斜部における絶縁層への開口部の形成しやすさは、後述の通り、絶縁層の厚さとθsと関係がある。θsが小さいほど、開口部を形成しにくくなることから絶縁層の厚さを小さくすることが好ましい。
【0093】
ヘテロ接合太陽電池のように、光電変換部50の表面に透明電極層(一般には屈折率:1.9〜2.1程度)を有する場合、界面での光反射防止効果を高めて太陽電池セル内部へ導入される光量を増加させるために、絶縁層の屈折率は、空気(屈折率=1.0)と透明電極層との中間的な値であることが好ましい。また、太陽電池セルが封止されてモジュール化される場合、絶縁層の屈折率は、封止剤と透明電極層の中間的な値であることが好ましい。かかる観点から、絶縁層9の屈折率は、例えば1.4〜1.9が好ましく、1.5〜1.8がより好ましく、1.55〜1.75がさらに好ましい。絶縁層の屈折率は、絶縁層の材料、組成等により所望の範囲に調整され得る。例えば、酸化シリコンの場合は、酸素含有量を小さくすることにより、屈折率が高くなる。なお、本明細書における屈折率は、特に断りがない限り、波長550nmの光に対する屈折率であり、分光エリプソメトリーにより測定される値である。また、絶縁層の屈折率に応じて、反射防止特性が向上するように絶縁層の光学膜厚(屈折率×膜厚)が設定されることが好ましい。
【0094】
絶縁層は、公知の方法を用いて形成できる。例えば、酸化シリコンや窒化シリコン等の無機絶縁性材料の場合は、プラズマCVD法、スパッタ法等の乾式法が好ましく用いられる。また、有機絶縁性材料の場合は、スピンコート法、スクリーン印刷法等の湿式法が好ましく用いられる。これらの方法によれば、ピンホール等の欠陥が少なく、緻密な構造の膜を形成することが可能となる。
【0095】
中でも、より緻密な構造の膜を形成する観点から、絶縁層9はプラズマCVD法で形成されることが好ましい。この方法により、200nm程度の厚いものだけでなく、30〜100nm程度の薄い膜厚の絶縁層を形成した場合も、緻密性の高い構造の膜を形成することができる。
【0096】
例えば、図2に示す結晶シリコン系太陽電池のように、光電変換部50の表面にテクスチャ構造(凹凸構造)を有する場合、テクスチャの凹部や凸部にも精度よく膜形成できる観点からも、絶縁層はプラズマCVD法により形成されることが好ましい。緻密性が高い絶縁層を用いることにより、めっき処理時の透明電極層へのダメージを低減できることに加えて、透明電極層上への金属の析出を防止することができる。このように緻密性が高い絶縁膜は、図2の結晶シリコン系太陽電池におけるシリコン系薄膜3のように、光電変換部50内部の層に対しても、水や酸素などのバリア層として機能し得るため、太陽電池の長期信頼性の向上の効果も期待できる。
【0097】
なお、第一導電層71と第二導電層72との間にある絶縁層9、すなわち第一導電層形成領域上の絶縁層9の形状は、必ずしも連続した層状でなくてもよく、島状であっても良い。なお、本明細書における「島状」との用語は、表面の一部に、絶縁層9が形成されていない非形成領域を有する状態を意味する。
【0098】
本発明においては、第一導電層71上に絶縁層9が形成される際、第一導電層の傾斜部上に形成される絶縁層9に開口部9hなどの変形部が形成されることが好ましい。絶縁層に開口部が形成されることにより、その後のめっき工程において、第一導電層71の表面の一部が、めっき液に曝されて導通するため、図3(D)に示すように、この導通部を起点として金属を析出させることが可能となる。
【0099】
なお、開口部は第一導電層71の傾斜部上に形成される。例えば、第一導電層が粒子状材料を含有し、該粒子状材料が絶縁性材料の場合、開口部の直下は絶縁性であるが、粒子状材料の周辺に存在する導電性の微粒子にもめっき液が浸透するために、第一導電層とめっき液とを導通させることが可能である。
【0100】
絶縁層9の形成において、絶縁層の製膜とほぼ同時に第一導電層の傾斜部上に変形部の形成が行われることが好ましい(図3(C))。ここで、「絶縁層の製膜とほぼ同時」とは、絶縁層形成工程以外の新たな工程を有さない、絶縁層の製膜中もしくは製膜直後の状態を意味する。例えば、加熱しながら絶縁層が製膜される場合、絶縁層の製膜終了後(加熱停止後)から基板表面温度が室温等に戻るまでの間に変形部が生じる場合などを含む。また、ある傾斜部上の絶縁層に変形部が形成される場合、該傾斜部上の絶縁層の製膜が終わった後であっても、該傾斜部周辺の絶縁層が製膜されることに追随して該傾斜部上の絶縁層に変形が生じる場合をも含む。
【0101】
絶縁層形成工程により、第一導電層の傾斜部71h上にも、平坦部上にも絶縁層は形成し得るが、平坦部よりも傾斜部の方が絶縁層の厚さは小さくなりやすい。特に、プラズマCVD法やスパッタ法などの薄膜形成技術を用いて絶縁層を形成する場合においては、この傾向は顕著である。
【0102】
絶縁層9の変形部は、典型的には、第一導電層の傾斜部71h上に絶縁層が製膜されない領域(すなわち開口部9hの形成)を意味する。なお、絶縁層形成工程において、第一導電層の傾斜部上の全体に絶縁層が形成されている(すなわち開口部が形成されていない)場合があるが、この場合、変形部は、傾斜部上の絶縁層に、局所的に薄い膜厚の領域が形成されていればよい。
【0103】
ここで、絶縁層の厚さと絶縁層の変形部の形成しやすさの関係について説明する。前述のように薄膜形成技術を用いて薄膜を形成する場合、薄膜の成長初期段階には薄膜材料の三次元的な島状成長(Volmer―Weber型)が生じ、その後、島状の薄膜材料がさらに成長し、互いに接触して、層状の薄膜が形成されることが多い。このことから、絶縁層の厚さが小さいときには、島状の薄膜材料の隙間に開口部が形成され得る。また、第一導電層表面に微細な凹凸構造を有する場合においては、凹凸構造により第一導電層表面への薄膜材料供給が妨げられ、薄膜材料が形成されにくい領域が生じ得る。第一導電層表面に微細な凹凸構造を形成する観点からは、第一導電層材料として、微粒子や粒子状材料に、バインダー樹脂などを含有するペースト材料を用いることが好ましい。
【0104】
また、上記のように、製膜後等に生じる応力により絶縁層に変形部が形成される場合においては、応力の影響は絶縁層の厚さが小さいときの方が大きくなりやすい。したがって、絶縁層の厚さが小さいときの方が、変形部が形成されやすくなる。なお、この場合は、絶縁層への変形部の形成を容易とする観点から、絶縁層の材料は破断伸びが小さい無機材料であることが好ましい。
【0105】
また、絶縁層の厚さが小さくなると、一般に絶縁層の絶縁耐圧は低くなる。このことから、めっき工程での通電直前まで絶縁層に変形部が形成されていない場合であっても、めっき工程において通電する(このとき、絶縁層に電圧が印加される)ことにより、絶縁層厚みが小さい領域から選択的に絶縁層の絶縁破壊が発生し、絶縁層に変形部が形成される場合もある。
【0106】
以上のように、絶縁層の厚さと変形部が形成されやすさには相関があり、また、第一導電層の平坦部上よりも傾斜部上の方が絶縁層の厚さは小さくなりやすことから、第一導電層の平坦部上よりも傾斜部上の絶縁層に開口が形成されやすくなる。すなわち第一導電層71の傾斜部上に、変形部を有する絶縁層を形成させることができる。
【0107】
本発明においては、絶縁層形成工程において絶縁層の材料および組成、製膜条件(製膜方法、基板温度、導入ガスの種類および導入量、製膜圧力、パワー密度等)を適宜調整することにより、絶縁層に変形部を形成することができる。
【0108】
本発明においては、絶縁層を形成する際の温度は特に制限されないが、膜厚の均一性を向上させる観点から加熱しながら製膜することが好ましい。また、光電変換部の耐熱温度よりも低い温度で形成することが好ましく、例えば、光電変換部に非晶質シリコン材料や透明電極層を含む場合は、250℃以下で形成することが好ましい。絶縁層として酸化シリコンを用いた場合の製膜を例に挙げると、プラズマCVDが用いられることが好ましい。製膜条件としては、基板温度145〜250℃、圧力30〜300Pa、パワー密度0.01〜0.160W/cmの条件で製膜が行われることが好ましい。
【0109】
なお、絶縁層形成工程後、めっき工程前に、さらにアニール処理を行うアニール工程を有していても良い。アニール条件などを適宜調整してアニール処理を行うことにより、例えば絶縁層形成工程における変形部の形成が不十分であった場合などにおいても容易に所定の変形部を形成することができる。なお、本発明においては、製造工程を低減させる観点から、上記アニール工程を有さないことがより好ましい。
【0110】
変形部が形成された後に、第一導電層形成領域の絶縁層9上に第二導電層72がめっき法により形成される。この際、第二導電層として析出させる金属は、めっき法で形成できる材料であれば特に限定されず、例えば、銅、ニッケル、錫、アルミニウム、クロム、銀、が適用可能である。
【0111】
太陽電池の動作時(発電時)には、電流は主として第二導電層を流れる。そのため、第二導電層での抵抗損を抑制する観点から、第二導電層のライン抵抗は、できる限り小さいことが好ましい。具体的には、第二導電層のライン抵抗は、1Ω/cm以下であることが好ましく、0.5Ω/cm以下であることがより好ましい。一方、第一導電層のライン抵抗は、電解めっきの際の下地層として機能し得る程度に小さければよく、例えば、5Ω/cm以下にすればよい。
【0112】
第二導電層は、無電解めっき法、電解めっき法のいずれでも形成され得るが、生産性の観点から、電解めっき法を用が好適である。電解めっき法では、金属の析出速度を大きくすることができるため、第二導電層を短時間で形成することができる。
【0113】
酸性銅めっきを例として、電解めっき法による第二導電層の形成方法を説明する。図5は、第二導電層の形成に用いられるめっき装置10の概念図である。光電変換部上に第一導電層および絶縁層が形成されアニール処理が施された基板12と、陽極13とが、めっき槽11中のめっき液16に浸されている。基板12上の第一導電層71は、基板ホルダ14を介して電源15と接続されている。陽極13と基板12との間に電圧を印加することにより、絶縁層9で覆われていない第一導電層の上、すなわち第一導電層の傾斜部上の絶縁層に生じた開口部を起点として、選択的に銅を析出させることができる。
【0114】
酸性銅めっきに用いられるめっき液16は銅イオンを含む。例えば硫酸銅、硫酸、水を主成分とする公知の組成のものが使用可能であり、これに0.1〜10A/dmの電流を流すことにより、第二導電層である金属を析出させることができる。適切なめっき時間は、集電極の面積、電流密度、陰極電流効率、設定膜厚等に応じて適宜設定される。
【0115】
第二導電層は、複数の層から構成させても良い。例えば、Cu等の導電率の高い材料からなる第一のめっき層を、絶縁層を介して第一導電層上に形成した後、化学的安定性に優れる第二のめっき層を第一のめっき層の表面に形成することにより、低抵抗で化学的安定性に優れた集電極を形成することができる。
【0116】
めっき工程の後には、めっき液除去工程を設けて、基板12の表面に残留しためっき液を除去することが好ましい。めっき液除去工程を設けることによって、第一導電層の傾斜部上に形成された絶縁層9の開口部9h以外を起点として析出し得る金属を除去することができる。開口部9h以外を起点として析出する金属としては、例えば絶縁層9のピンホール等を起点とするものが挙げられる。めっき液除去工程によってこのような金属が除去されることによって、遮光損が低減され、太陽電池特性をより向上させることが可能となる。
【0117】
めっき液の除去は、例えば、めっき槽から取り出された基板12の表面に残留しためっき液をエアーブロー式のエアー洗浄により除去した後、水洗を行い、さらにエアーブローにより洗浄液を吹き飛ばす方法により行うことができる。水洗の前にエアー洗浄を行い基板12表面に残留するめっき液量を低減することによって、水洗の際に持ち込まれるめっき液の量を減少させることができる。そのため、水洗に要する洗浄液の量を減少させることができるとともに、水洗に伴って発生する廃液処理の手間も低減できることから、洗浄による環境負荷や費用が低減されるとともに、太陽電池の生産性を向上させることができる。
【0118】
ここで一般的に、ITO等の透明電極層や、酸化シリコン等の絶縁層は親水性であるため、基板12の表面、すなわち光電変換部50の表面や絶縁層9の表面の水との接触角は、10°程度あるいはそれ以下である場合が多い。本発明においては、基板12の表面の接触角を20°以上にすることが好ましく、上記範囲とするために、基板12表面に撥水処理が行われることが好ましい。撥水処理は、例えば表面へ撥水層を形成することにより、基板表面のめっき液に対する濡れ性を低下させ、水に対する接触角を大きくすることができる。なお、本明細書における撥水処理とは、表面の水に対する濡れ性を低下させる(接触角を増大させる)処理を意味する。撥水処理を行うことにより、めっき液の除去を容易にすることができる。
【0119】
本発明においては、集電極形成後(めっき工程後)に絶縁層除去工程が行われてもよい。特に、絶縁層として光吸収の大きい材料が用いられる場合は、絶縁層の光吸収による太陽電池特性の低下を抑制するために、絶縁層除去工程が行われることが好ましい。絶縁層の除去方法は、絶縁層材料の特性に応じて適宜選択される。例えば、化学的なエッチングや機械的研磨により絶縁層が除去され得る。また、材料によってはアッシング(灰化)法も適用可能である。この際、光取り込み効果をより向上させる観点から、第一導電層非形成領域上の絶縁層が全て除去されることがより好ましい。また、絶縁層9上に撥水層91が形成されている場合、絶縁層9とともに撥水層91も除去されることが好ましい。なお、絶縁層として光吸収の小さい材料が用いられる場合は、絶縁層除去工程が行われる必要はない。
【0120】
以上、ヘテロ接合太陽電池の光入射側に集電極70が設けられる場合を中心に説明したが、裏面側にも同様の集電極が形成されてもよい。ヘテロ接合太陽電池のように結晶シリコン基板を用いた太陽電池は、電流量が大きいため、一般に、透明電極層/集電極間の接触抵抗の損失による発電ロスが顕著となる傾向がある。これに対して、本発明では、第一導電層と第二導電層を有する集電極は、透明電極層との接触抵抗が低いため、接触抵抗に起因する発電ロスを低減することが可能となる。
【0121】
また、本発明は、ヘテロ接合太陽電池以外の結晶シリコン太陽電池や、GaAs等のシリコン以外の半導体基板が用いられる太陽電池、非晶質シリコン系薄膜や結晶質シリコン系薄膜のpin接合あるいはpn接合上に透明電極層が形成されたシリコン系薄膜太陽電池や、CIS,CIGS等の化合物半導体太陽電池、色素増感太陽電池や有機薄膜(導電性ポリマー)等の有機薄膜太陽電池のような各種の太陽電池に適用可能である。
【0122】
本発明の太陽電池は、実用に供するに際して、モジュール化されることが好ましい。太陽電池のモジュール化は、適宜の方法により行われる。例えば、集電極にタブ等のインターコネクタを介してバスバーが接続されることによって、複数の太陽電池セルが直列または並列に接続され、封止剤およびガラス板により封止されることによりモジュール化が行われる。
【実施例】
【0123】
以下、図2に示すヘテロ接合太陽電池に関する実施例を挙げて、本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(粘度測定)
印刷ペーストの粘度は、株式会社ブルックフィールド社製の回転式粘度計により、温度25℃回転速度10rpmで測定した。
【0124】
(実施例1)
実施例1のヘテロ接合太陽電池を、以下のようにして製造した。
【0125】
一導電型単結晶シリコン基板として、入射面の面方位が(100)で、厚みが170μmのn型単結晶シリコンウェハを用い、このシリコンウェハを2重量%のHF水溶液に3分間浸漬し、表面の酸化シリコン膜が除去された後、超純水によるリンスが2回行われた。このシリコン基板を、70℃に保持された5/15重量%のKOH/イソプロピルアルコール水溶液に15分間浸漬し、ウェハの表面をエッチングすることでテクスチャが形成された。その後に超純水によるリンスが2回行われた。原子間力顕微鏡(AFM パシフィックナノテクノロジー社製)により、ウェハの表面観察を行ったところ、ウェハの表面はエッチングが最も進行しており、(111)面が露出したピラミッド型のテクスチャが形成されていた。
【0126】
エッチング後のウェハがCVD装置へ導入され、その光入射側に、真性シリコン系薄膜2aとしてi型非晶質シリコンが5nmの膜厚で製膜された。i型非晶質シリコンの製膜条件は、基板温度:170℃、圧力:100Pa、SiH/H流量比:3/10、投入パワー密度:0.011W/cmであった。なお、本実施例における薄膜の膜厚は、ガラス基板上に同条件にて製膜された薄膜の膜厚を、分光エリプソメトリー(商品名M2000、ジェー・エー・ウーラム社製)にて測定することにより求められた製膜速度から算出された値である。
【0127】
i型非晶質シリコン層2a上に、逆導電型シリコン系薄膜3aとしてp型非晶質シリコンが7nmの膜厚で製膜された。p型非晶質シリコン層3aの製膜条件は、基板温度が170℃、圧力60Pa、SiH/B流量比が1/3、投入パワー密度が0.01W/cmであった。なお、上記でいうBガス流量は、HによりB濃度が5000ppmまで希釈された希釈ガスの流量である。
【0128】
次にウェハの裏面側に、真性シリコン系薄膜2bとしてi型非晶質シリコン層が6nmの膜厚で製膜された。i型非晶質シリコン層2bの製膜条件は、上記のi型非晶質シリコン層2aの製膜条件と同様であった。i型非晶質シリコン層2b上に、一導電型シリコン系薄膜3bとしてn型非晶質シリコン層が4nmの膜厚で製膜された。n型非晶質シリコン層3bの製膜条件は、基板温度:170℃、圧力:60Pa、SiH/PH流量比:1/2、投入パワー密度:0.01W/cmであった。なお、上記でいうPHガス流量は、HによりPH濃度が5000ppmまで希釈された希釈ガスの流量である。
【0129】
この上に透明電極層6aおよび6bとして、各々酸化インジウム錫(ITO、屈折率:1.9)が100nmの膜厚で製膜された。ターゲットとして酸化インジウムを用い、基板温度:室温、圧力:0.2Paのアルゴン雰囲気中で、0.5W/cm2のパワー密度を印加して透明電極層の製膜が行われた。裏面側透明電極層6b上には、裏面金属電極8として、スパッタ法により銀が500nmの膜厚で形成された。光入射側透明電極層6a上には、第一導電層71および第二導電層72を有する集電極70が以下のように形成された。
【0130】
第一導電層71の形成には、導電性の微粒子として銀粉末(粒径DH=2〜3μm)とバインダー樹脂としてエポキシ系樹脂を含む印刷ペーストが用いられた(粘度=200P・s)。この印刷ペーストを、集電極パターンに対応する開口幅(L=80μm)を有する#230メッシュ(開口幅:l=85μm)のスクリーン版を用いて、スクリーン印刷し、160℃で乾燥が行われた。
【0131】
θsの測定は、キーエンス社製のレーザー顕微鏡VK−8510を用いて、第一導電層の表面形状を測定することにより実施した。その後、水平方向の位置と高さの測定結果から、水平方向の位置と傾きより、第一導電層の傾斜部における角度θsを算出した。この際、θsのうちの最大値をθmaxとした。
【0132】
第一導電層71が形成されたウェハが、CVD装置に投入され、絶縁層9として酸化シリコン層(屈折率:1.5)が、プラズマCVD法により80nmの厚みで光入射面側に形成された。絶縁層9の製膜条件は、基板温度:150℃、圧力133Pa、SiH/CO流量比:1/20、投入パワー密度:0.05W/cm(周波数13.56MHz)であった。
【0133】
以上のように絶縁層形成工程までが行われた基板12が、図5に示すように、めっき槽11に投入された。めっき液16には、硫酸銅五水和物、硫酸、および塩化ナトリウムが、それぞれ120g/l、130g/l、および70mg/lの濃度となるように調製された溶液に、添加剤(上村工業製:品番ESY−2B、ESY−H、ESY−1A)が添加されたものが用いられた。このめっき液を用いて、温度40℃、電流4A/dmの条件でめっきが行われ、第一導電層71上の絶縁層上に、15μm程度の厚みで第二導電層72として銅が均一に析出した。第一導電層が形成されていない領域への銅の析出はほとんど見られなかった。
【0134】
その後、レーザー加工機によりセル外周部のシリコンウェハが0.5mmの幅で除去され、本発明のヘテロ接合太陽電池が作製された。
【0135】
(実施例2)
第一導電層71形成用印刷ペーストの粘度を、粘度調整用溶剤を適宜追加することにより60Pa・sとした点を除いて、実施例1と同様にして太陽電池が作製された。
【0136】
(実施例3)
第一導電層71形成用印刷ペーストに、粒子状材料として、粒径25μmのカーボン粒子を2wt%添加し、また、粘度調整用溶剤を適宜追加することにより第一導電層71形成用印刷ペーストの粘度を20Pa・sとした点を除いて、実施例1と同様にして太陽電池が作製された。このとき、光学顕微鏡により第一導電層におけるカーボン粒子同士の平均間隔(粒子の中心―中心間隔)を測定した(間隔の測定点数:20)ところ、100μmであった。
【0137】
(実施例4)
第一導電層71形成用印刷ペーストとして、実施例3で用いた材料に含まれるカーボン粒子量を2.5倍とした点を除いて、実施例3と同様にして太陽電池が作製された。このとき、第一導電層におけるカーボン粒子同士の平均間隔は50μmであった。
【0138】
(比較例1)
第一導電層71形成用印刷ペーストの粘度を、粘度調整用溶剤を適宜追加することにより20Pa・sとした点を除いて、実施例1と同様にして太陽電池が作製された。
【0139】
(太陽電池セル特性測定)
各実施例、参考例および比較例のヘテロ接合太陽電池セルの太陽電池特性の測定を行った。また、比較例1に示す方法において作製した太陽電池セルにおける太陽電池特性評価結果と、実施例、参考例、比較例に係る太陽電池セルにおける太陽電池特性の曲線因子(FF)の評価結果を、実施例1の値を1として比較する事により、出力の相関を評価した。なお、太陽電池特性のなかで、比較例1を除き開放端電圧(Voc)と短絡電流密度(Jsc)の変化はFFよりも軽微であったことから、FFを太陽電池特性の代表値とした。上記の結果をまとめたものを表1に示す。
【0140】
【表1】
【0141】
実施例2及び比較例1におけるめっき工程前後の第一導電層形成領域近傍の光学顕微鏡写真を図6に示す。
【0142】
実施例1および2において、めっき工程開始直後(めっき時間30秒程度)にめっき工程を中断してめっき槽から基板12を取り出し、第二導電層の形成状況を確認した。実施例2における評価結果を図6(a)〜(d)に示す。図6(a)は、実施例2におけるめっき工程前の第一導電層近傍の光学顕微鏡写真である。図中に白線で記した箇所の表面形状を共焦点レーザー顕微鏡により測定した結果を図6(b)に、図6(b)のデータをもとにθsを算出した値を図6(c)に示す。図6(b)および(c)で「A」で示した領域が第一導電層の幅にあたる。また、本明細書における第一導電層の中央部を「B」で記した。なお「端部」は「A−B」に相当する部分である。
【0143】
図6(b)および(c)に10°以上の傾斜部に該当する部分を太線で示す。図6(c)から、10°以上のθsを有する傾斜部が第一導電層の端部と中央部に亘って形成されていることがわかる。また、図6(d)に、第二導電層を短時間形成した(第二導電層の形成を中断した)後の第一導電層の光学顕微鏡写真を示す。図6(d)から、θsが10°以上となる領域において、第二導電層材料が粒状に析出していることが確認できた。
【0144】
実施例1と実施例2との比較では、第二導電層の膜厚均一性は実施例1の方が実施例2よりも良好であった(図示せず)。また、実施例1の方が高いFFが得られた。これは、同じ膜厚の絶縁層を形成した場合、θsが大きい実施例1の方がより多くの開口部が形成されたためにめっき工程において、第一導電層上に第二導電層が均一に形成され、集電極のライン抵抗が低くなったためと考えられる。また、開口部数が増加したことにより第一導電層と第二導電層との間の抵抗が低減したことも原因として考えられる。
【0145】
実施例3及び4においては、第一導電層の粒子状材料を含まない領域においては、θsは10°未満であった。しかしながら図6(e)に示すように粒子状材料により第一導電層の表面に凸部が形成されており、当該凸部においてはθsが10°以上となり、ここを起点として第二導電層の析出が開始した。
【0146】
また実施例3と比べて、粒子状材料の間隔が狭い実施例4の方が、高いFFが得られた。これは、実施例4の方が粒子状材料により傾斜部が多数形成され、これに伴い開口部数も多くなり、該開口部からのめっきにより第二導電層の膜厚均一性が向上したことから、第二導電層における抵抗損がより減少したためと考えられる。また、実施例1と実施例2との比較の場合と同様に、開口部数が増加したことにより第一導電層と第二導電層との間の抵抗が低減したことも原因として考えられる。
【0147】
θsが10°未満である(すなわちθsが10°以上の傾斜部を有さずに平坦部のみを有する)比較例1において、上記と同様にめっき工程を短時間実施しめっき開始位置を確認したところ、図6(f)に示すように第一導電層上ではなく、第一導電層非形成部に局所的に第二導電層材料である銅が析出していることが分かった(図6(f)では白色の斑点状に銅が表示されている)。なお、第一導電層非形成部に析出した銅を明瞭に示すため図6(d)〜図6(f)とでは画像のコントラスト等を変化させている。
【0148】
また比較例1においては、実施例2に比べてFFが低下した。これは所定の時間めっき工程を実施した後にも、第一導電層上に第二導電層が十分形成されず、集電極における抵抗損が大きくなったためと考えられる。また、Jscも低下した。これは図6(f)に示したように第一導電層非形成部に第二導電層材料が析出したことから、遮光損が増えたためと考えられる。
【0149】
実施例においては、絶縁層の開口部においてめっき液と第一導電層が導通できることから、絶縁層での電圧降下は生じにくく、低電圧でめっき工程を実施することが可能であった。しかしながら、比較例においては、めっき工程開始直後の陰極と陽極との間の電圧が実施例1よりも高かった。このことは、めっき工程前の段階では、第一導電層形成領域及び第一導電層非形成領域が絶縁層に覆われているものの、高い電圧が印加されることにより、第一導電層形成領域上だけでなく、第一導電層非形成領域上の絶縁層の一部が、絶縁破壊するなどして除去され、第一導電層もしくは透明導電層がめっき液と導通し、導通部において第二導電層材料が析出したことを示唆している。
【0150】
第二導電層材料を第一導電層上に形成するためには、第一導電層上に形成された絶縁層に開口が形成され、第一導電層がめっき液と接する必要があるが、以上の結果から、θsを10°以上にすることにより、傾斜部上に絶縁層の開口部を形成できることが確認できた。あわせて、第二導電層を均一に形成することにより、高いFFが得られることも確認できた。第二導電層を均一に形成するためには、粒子状材料が有効であることが示された。
【0151】
以上、実施例を用いて説明したように、本発明によれば、絶縁層のパターニングを行うことなく、太陽電池の集電極を作製することができるため、高出力の太陽電池を低コストで提供することが可能となる。
【符号の説明】
【0152】
1.一導電型単結晶シリコン基板
2.真性シリコン系薄膜
3.導電型シリコン系薄膜
6.透明電極層
70.集電極
71.第一導電層
71h.傾斜部
71p.粒子状材料
72.第二導電層
8.裏面金属電極
9.絶縁層
9h.開口部
50.光電変換部
100.太陽電池
101.ヘテロ接合太陽電池
10.めっき装置
11.めっき槽
12.基板
13.陽極
14.基板ホルダ
15.電源
16.めっき液
図1
図2
図3
図4
図5
図6