【文献】
カタログ:SEEV−A,URL,http://tomenai.net/general/pdf/06_ctg/SEEV-A_jp.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであり、難燃剤の使用を抑えつつ、薄肉でありながら耐バーンスルー性に優れる難燃性ポリアルキレンテレフタレート樹脂成形品の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する本発明は以下の通りである。
(1)UL94燃焼試験に準拠した厚さ3.0mmでの難燃性が5VAである、ポリアルキレンテレフタレート樹脂組成物を用いた難燃性ポリアルキレンテレフタレート樹脂成形品の製造方法であって、
ポリアルキレンテレフタレート樹脂100質量部と、無機充填剤30〜150質量部と、難燃剤成分15〜40質量部とを含む組成物を、以下の(i)の条件で射出成形する工程を含む、少なくとも一部に肉厚1.5mm以上3.0mm未満の薄肉部を有する難燃性ポリアルキレンテレフタレート樹脂成形品の製造方法。
(i)金型温度≧−9/250×α+150℃
[ここで、αは、金型内において前記組成物が前記薄肉部の最小肉厚部を通過する時のせん断速度(単位:sec
−1)であり、前記せん断速度の値は、前記最小肉厚部の幅をW、前記最小肉厚部の厚さをT、成形機の射出速度をV、成形機のシリンダー半径をrとして、6Vπr
2/WT
2を計算して求めたものである(以下、「薄肉部せん断速度」という場合がある)。]
【0007】
(2)前記組成物が更にエラストマー1〜30質量部を含む、前記(1)に記載の難燃性ポリアルキレンテレフタレート樹脂成形品の製造方法。
【0008】
(3)前記組成物が更にポリテトラフルオロトエチレン0.1〜2質量部を含む、前記(1)又は(2)に記載の難燃性ポリアルキレンテレフタレート樹脂成形品の製造方法。
【0009】
(4)前記無機充填剤の添加量が30〜50質量部である前記(1)〜(3)のいずれかに記載の難燃性ポリアルキレンテレフタレート樹脂成形品の製造方法。
【0010】
(5)前記難燃性ポリアルキレンテレフタレート樹脂成形品が電気電子部品又はその筐体である前記(1)〜(4)のいずれかに記載の難燃性ポリアルキレンテレフタレート樹脂成形品の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、難燃剤の使用を抑えつつ、薄肉でありながら耐バーンスルー性に優れる、難燃性ポリアルキレンテレフタレート樹脂成形品の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の難燃性ポリアルキレンテレフタレート樹脂成形品の製造方法は、UL94燃焼試験に準拠した厚さ3.0mmでの難燃性が5VAであるポリアルキレンテレフタレート樹脂組成物を用いた難燃性ポリアルキレンテレフタレート樹脂成形品の製造方法であって、ポリアルキレンテレフタレート樹脂100質量部と、無機充填剤30〜150質量部と、難燃剤成分15〜40質量部とを含む組成物を、以下の(i)の条件で射出成形する工程を含み、前記難燃性ポリアルキレンテレフタレート樹脂成形品が、少なくとも一部に肉厚1.5mm以上3.0mm未満の薄肉部を有することを特徴としている。
(i)金型温度≧−9/250×α+150℃ (α:薄肉部せん断速度)
以下に先ず、本発明の製造方法に用いる組成物の各成分について説明する。
【0014】
[ポリアルキレンテレフタレート樹脂]
ポリアルキレンテレフタレート樹脂とは、ジカルボン酸化合物及び/ 又はそのエステル形成性誘導体を主成分とするジカルボン酸成分と、ジオール化合物及び/ 又はそのエステル形成性誘導体を主成分とするジオール成分との反応により得られる熱可塑性ポリエステル樹脂のうち、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸及び/又はそのエステル形成性誘導体を主成分とし、ジオール成分としてアルキレングリコール及び/又はそのエステル形成性誘導体を主成分とするものである。
【0015】
ポリアルキレンテレフタレート樹脂としては、主成分以外のジカルボン酸成分やジオール成分、さらに他の共重合可能なモノマーとして、オキシカルボン酸成分、ラクトン成分等(以下、共重合性モノマーという場合がある)を組み合わせたコポリエステルも使用できる。
【0016】
主成分以外のジカルボン酸成分としては、例えば、脂肪族ジカルボン酸(例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカンジカルボン酸、ドテカンジカルボン酸、ヘキサデカンジカルボン酸、ダイマー酸などのC
4−40程度のジカルボン酸、好ましくはC
4−14程度のジカルボン酸)、脂環族ジカルボン酸(例えば、ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ハイミック酸などのC
4−40程度のジカルボン酸、好ましくはC
8−12程度のジカルボン酸)、テレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸(例えば、フタル酸、イソフタル酸、メチルイソフタル酸、メチルテレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などのナフタレンジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、4,4’−ジフェノキシエーテルジカルボン酸、4,4’−ジオキシ安息香酸、4,4’−ジフェニルメタンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルケトンジカルボン酸などのC
8−16程度のジカルボン酸)、又はこれらの誘導体(例えば、低級アルキルエステル、アリールエステル、酸無水物などのエステル形成可能な誘導体)などが挙げられる。テレフタル酸と組み合わせて用いるのに好ましいジカルボン酸成分としては、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸などが挙げられ、これらを二種以上組み合わせて用いることもできる。ただし、共重合性モノマーとしてのジカルボン酸成分全体の50モル%以上、好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上が芳香族ジカルボン酸化合物であることが好ましい。さらに必要に応じて、トリメリット酸、ピロメリット酸などの多価カルボン酸又はそのエステル形成誘導体(アルコールエステル等)等を併用してもよい。このような多官能性化合物を併用すると、分岐状のポリアルキレンテレフタレート樹脂を得ることもできる。
【0017】
主成分以外のジオール成分としては、脂肪族アルカンジオール(例えば、エチレングリコール、トリメチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、デカンジオールなどのC
2−12程度の脂肪族ジオール、好ましくはC
2−10程度の脂肪族ジオールのうち、主成分として使用するもの以外の脂肪族アルカンジオール)、ポリオキシアルキレングリコール(C
2−4程度のオキシアルキレン単位を複数有するグリコール、例えば、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジテトラメチレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなど)、脂環族ジオール(例えば、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、水素化ビスフェノールAなど)などが挙げられる。また、ハイドロキノン、レゾルシノール、ビスフェノール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス−( 4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)プロパン、キシリレングリコールなどの芳香族ジオールを併用してもよい。ただし、共重合性モノマーとしてのジオール成分全体の50モル%以上、好ましくは80モル%以上、さらに好ましくは90モル%以上がアルキレングリコールであることが好ましい。さらに必要に応じて、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトールなどのポリオール又はそのエステル形成性誘導体を併用してもよい。このような多官能性化合物を併用すると、分岐状の熱可塑性ポリエステル樹脂を得ることもできる。
【0018】
オキシカルボン酸(又はオキシカルボン酸成分又はオキシカルボン酸類)には、例えば、オキシ安息香酸、オキシナフトエ酸、ヒドロキシフェニル酢酸、グリコール酸、オキシカプロン酸等のオキシカルボン酸又はこれらの誘導体等が含まれる。ラクトンには、プロピオラクトン、ブチロラクトン、バレロラクトン、カプロラクトン(例えば、ε−カプロラクトン等)等のC
3−12ラクトン等が含まれる。
【0019】
なお、コポリエステルにおいて、共重合性モノマーの割合は、例えば、0.01モル%以上30モル%以下程度の範囲から選択でき、通常、1モル%以上25モル%以下程度、好ましくは3モル%以上20モル%以下程度、更に好ましくは5モル%以上15モル%以下程度である。また、ホモポリエステルとコポリエステルとを組み合わせて使用する場合、ホモポリエステルとコポリエステルとの割合は、共重合性モノマーの割合が、全単量体に対して0.01モル%以上30モル%以下(好ましくは1モル%以上25モル%以下程度、更に好ましくは3モル%以上20モル%以下程度、特に好ましくは5モル%以上15モル%以下程度)となる範囲であり、通常、前者/後者=99/1〜1/99(質量比)、好ましくは95/5〜5/95(質量比)、更に好ましくは90/10〜10/90(重量比)程度の範囲から選択できる。
【0020】
好ましいポリアルキレンテレフタレート樹脂には、アルキレンテレフタレート単位を主成分(例えば、50〜100モル%、好ましくは75〜100モル%程度)とするホモポリエステル又はコポリエステル[例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)などのポリC
2−4アルキレンテレフタレート)などのホモポリエステル、アルキレンテレフタレート単位を主成分として共重合成分にアルキレンイソフタレート単位を含有するコポリエステル、アルキレンテレフタレート単位を主成分として共重合成分にアルキレンナフタレート単位を含有するコポリエステル]が含まれ、これらを1種単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
【0021】
特に好ましいポリアルキレンテレフタレート樹脂は、エチレンテレフタレート、トリメチレンテレフタレート、テトラメチレンテレフタレートなどのC
2−4アルキレンテレフタレート単位を80モル%以上(特に90モル%以上)含むホモポリエステル樹脂又はコポリエステル樹脂(例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリトリメチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、イソフタル酸変性ポリエチレンテレフタレート樹脂、イソフタル酸変性ポリトリメチレンテレフタレート樹脂、イソフタル酸変性ポリブチレンテレフタレート樹脂、ナフタレンジカルボン酸変性ポリエチレンテレフタレート樹脂、ナフタレンジカルボン酸変性ポリトリメチレンテレフタレート樹脂、ナフタレンジカルボン酸変性ポリブチレンテレフタレート樹脂など)である。
【0022】
これらの内、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂が好ましく、特にポリブチレンテレフタレート樹脂が好ましい。
【0023】
ポリアルキレンテレフタレート樹脂の末端カルボキシル基量は、本発明の効果を阻害しない限り特に限定されない。ポリアルキレンテレフタレート樹脂の末端カルボキシル基量は、30meq/kg以下が好ましく、25meq/kg以下がより好ましい。ポリアルキレンテレフタレート樹脂の末端カルボキシル基量が多過ぎると、耐加水分解性を損なう可能性がある。
【0024】
ポリアルキレンテレフタレート樹脂の固有粘度(IV)は本発明の効果を阻害しない範囲で特に制限されない。ポリアルキレンテレフタレート樹脂の固有粘度は0.6〜1.3dL/gであるのが好ましく、0.7〜1.2dL/gであるのがより好ましい。かかる範囲の固有粘度のポリアルキレンテレフタレート樹脂を用いる場合には、得られるポリアルキレンテレフタレート樹脂組成物が特に成形性に優れたものとなる。また、異なる固有粘度を有するポリアルキレンテレフタレート樹脂をブレンドして、固有粘度を調整することもできる。例えば、固有粘度1.0dL/gのポリアルキレンテレフタレート樹脂と固有粘度0.8dL/gのポリアルキレンテレフタレート樹脂とをブレンドすることにより、固有粘度0.9dL/gのポリアルキレンテレフタレート樹脂を調製することができる。ポリアルキレンテレフタレート樹脂の固有粘度(IV)は、例えば、o−クロロフェノール中で温度35℃の条件で測定することができる。
【0025】
なお、ポリアルキレンテレフタレート樹脂は、市販品を使用してもよく、ジカルボン酸成分又はその反応性誘導体と、ジオール成分又はその反応性誘導体と、必要により共重合可能なモノマーとを、慣用の方法、例えばエステル交換、直接エステル化法等により共重合(重縮合)することにより製造したものを使用してもよい。
【0026】
[無機充填剤]
無機充填剤は、成形品の強度向上を目的として使用され、各種の繊維状、粉粒状、板状の無機充填材を配合することができる。繊維状充填材としては、ガラス繊維、アスベスト繊維、シリカ繊維、シリカ・アルミナ繊維、アルミナ繊維、ジルコニア繊維、窒化硼素繊維、窒化珪素繊維、硼素繊維、チタン酸カリウム繊維、更にステンレス、アルミニウム、チタン、銅、真鍮等の金属の繊維状物等の無機質繊維状物質が挙げられる。一方、粉粒状充填材としては、カーボンブラック、黒鉛、シリカ、石英粉末、ガラスビーズ、ミルドガラスファイバー、ガラスバルーン、ガラス粉、珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、カオリン、タルク、クレー、珪藻土、ウォラストナイトのごとき珪酸塩、酸化鉄、酸化チタン、酸化亜鉛、三酸化アンチモン、アルミナのごとき金属の酸化物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムのごとき金属の炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウムのごとき金属の硫酸塩、その他フェライト、炭化珪素、窒化珪素、窒化硼素、各種金属粉末等が挙げられる。また、板状充填材としては、マイカ、ガラスフレーク、各種金属箔が挙げられる。これらの無機充填材は一種または二種以上併用することができる。また本発明に用いられる無機充填材は、所望される物性によっては公知の表面処理剤を併用することが可能である。例を示せば、エポキシ系化合物、イソシアネート系化合物、チタネート系化合物、シラン系化合物等の官能性化合物である。好ましくはエポキシ系化合物またはポリアミド系化合物などアミノ系化合物以外の化合物で処理したものが良い。これらの充填材は予め表面処理を施して用いるか、または材料の調製の際同時に添加してもよい。
本発明に係る組成物において、無機充填材は、ポリアルキレンテレフタレート樹脂100質量部に対し、30〜150質量部、好ましくは、30〜50質量部であり、より好ましくは30〜40質量部含有する。
【0027】
[難燃剤成分]
難燃剤成分としては、難燃剤を単独で使用する場合と、難燃剤と難燃助剤とを併用する場合とがある。
難燃剤は、本発明の難燃性ポリアルキレンテレフタレート樹脂成形品に難燃性を付与するために使用される。難燃剤の具体例としては、臭素系難燃剤などのハロゲン系難燃剤、リン系難燃剤、窒素系難燃剤、シリコーン系難燃剤が挙げられ、中でも、臭素系難燃剤、リン系難燃剤が好ましい。
難燃助剤の具体例としては、三酸化アンチモンなどのアンチモン化合物、トリアジンなどの窒素含有化合物が挙げられ、使用する難燃剤に応じて選択する。
本発明に係る組成物において、難燃剤成分は、ポリアルキレンテレフタレート樹脂100質量部に対し、15〜40質量部、好ましくは15〜35質量部、特に好ましくは15〜25質量部含有する。
【0028】
[エラストマー]
エラストマーは、耐衝撃性向上のために使用され、オレフィン系エラストマー、塩化ビニル系エラストマー、スチレン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ブタジエン系エラストマー、ウレタン系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、シリコーン系エラストマーが挙げられ、具体的には、エチレンエチルアクリレート(EEA)、メタクリル酸エステル・ブチレン・スチレン(MBS)、エチレングリシジルメタアクリレート(EGMA)、ポリテトラメチレングリコール(PTMG)系ポリエステルエラストマー等を使用することができる。
本発明に係る組成物において、エラストマーは、ポリアルキレンテレフタレート樹脂100質量部に対して1〜30質量部含有することが好ましく、1〜20質量部含有することがより好ましい。エラストマーを1〜30質量部含有することで、十分に耐衝撃性向上効果が発揮される。
【0029】
[滴下防止剤]
本発明の難燃性ポリアルキレンテレフタレート樹脂成形品において、滴下防止剤としてポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を添加することが好ましい。
本発明に係る組成物において、滴下防止剤は、ポリアルキレンテレフタレート樹脂100質量部に対して0.1〜2質量部含有することが好ましく、0.1〜1質量部含有することがより好ましい。滴下防止剤を0.1〜2質量部含有することで、十分に滴下防止効果が発揮される。
【0030】
[他の成分]
前記組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲で、必要に応じて他の成分を含有してもよい。他の成分としては、酸化防止剤、安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、可塑剤、結晶核剤、離型剤、着色剤、エステル交換反応触媒、エステル交換反応停止剤、ポリアルキレンテレフタレート以外の樹脂等を含有することができる。
【0031】
本発明においては、以上の組成物を押出機に投入して溶融混練してペレット化し、このペレットを射出成形に供することが好ましい。
【0032】
<難燃性ポリアルキレンテレフタレート樹脂成形品の製造方法>
本発明の難燃性ポリアルキレンテレフタレート樹脂成形品の製造方法においては、以上の組成物を用い、少なくとも一部に肉厚1.5mm以上3.0mm未満の薄肉部を有する成形品を、以下の(i)の条件で射出成形する。
(i)金型温度≧−9/250×α+150℃(α:薄肉部せん断速度)
【0033】
既述の本発明に係る組成物は、無条件に射出成形したのでは薄肉での耐バーンスルー性を満たすとは限らない。本発明においては、当該組成物を上記(i)の条件を満足するように射出成形することで、薄肉での耐バーンスルー性を実現したものである。すなわち、射出成形時における金型温度を「−9/250×α+150℃(α:薄肉部せん断速度)」以上の温度とすることにより、薄肉での耐バーンスルー性の達成を図ることができる。
【0034】
図1は、条件式(i)について説明する図であり、耐バーンスルー性を満たす、薄肉部せん断速度に対する金型温度の下限値を示すグラフである。当該グラフの上側の領域が耐バーンスルー性を満たす領域である。すなわち、耐バーンスルー性は成形時の薄肉部せん断速度に依存し、耐バーンスルー性を満たすには傾き−9/250の直線の上側領域とする、すなわち「金型温度≧−9/250×α+150℃(α:薄肉部せん断速度)」を満たすように金型温度と射出速度とを設定すればよい。なお、
図1には、後記実施例・比較例の射出成形時における、薄肉部せん断速度に対する金型温度をもプロットしている。
【0035】
本発明においては、金型温度と射出速度を上記条件に設定することを除き、射出成形自体は公知の射出成形機を用い定法に従って射出成形すればよい。
【0036】
本発明の製造方法により得られる難燃性ポリアルキレンテレフタレート樹脂成形品の具体例としては、リレー、スイッチ、コネクタ、アクチュエータ、センサー等の電気電子部品又はそのハウジング、カバー、シャーシ等の筐体部品が挙げられる。特に、これら電気電子部品又は筐体部品は薄肉での耐バーンスルー性を満たすため、1.5mm以上3.0mm未満の薄肉部を含むものであって、当該薄肉部の難燃性が求められる用途、例えば電気的接点又は発熱部材に接触する状態、又は近傍に位置する状態で使用される場合においても優れた難燃性を確保することができる。
【実施例】
【0037】
以下に、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0038】
[実施例1〜5、比較例1〜4]
(難燃性ポリアルキレンテレフタレート樹脂組成物の調製)
ポリアルキレンテレフタレート樹脂、エラストマー、ガラス繊維(無機充填剤)、難燃剤、難燃助剤、及び滴下防止剤を、下記表1に示す部数(質量部)をブレンドし、30mmφのスクリューを有する2軸押出機((株)日本製鋼所製)にて260℃で溶融混練し、ペレット状の難燃性ポリアルキレンテレフタレート樹脂組成物(組成物1及び組成物2)を得た。
なお、上記各成分の詳細は以下の通りである。
ポリアルキレンテレフタレート樹脂1:ウィンテックポリマー(株)製、ポリブチレンテレフタレート樹脂 ジュラネックス(登録商標)(IV=0.88)
ポリアルキレンテレフタレート樹脂2:帝人化成(株)製、ポリエチレンテレフタレート樹脂(IV=0.7)
エラストマー:日本ユニカー(株)製、エチレンエチルアクリレート NUC−6570
ガラス繊維:日東紡績(株)製、平均繊維系φ13μmチョップドストランド
難燃剤:ICL−IP製、臭素化エポキシ F3100
難燃助剤:日本精鉱(株)製、三酸化アンチモン PATOX−M
滴下防止剤:旭硝子(株)製、ポリテトラフルオロエチレン フルオンCD−076
【0039】
(難燃性評価)
各実施例・比較例において、上記のようにして得られたペレット(組成物1、組成物2)を用いて難燃性の評価を行った。なお、各難燃性評価において、評価用試験片は、表2に示す成形条件の下、射出成形により成形した。また、射出成形は、いずれも成形機として(株)日本製鋼所製 J180ADを用い、シリンダー温度:260℃、保圧力:80MPa、保圧時間:10sec、冷却時間:15sec、スクリュー回転数:120rpm、スクリュー背圧:5MPaとした。
【0040】
(a)アンダーライターズ・ラボラトリーズのサブジェクト94(UL94)の方法に準じ、5本の短冊状試験片(厚み3.0mm)を用いて燃焼性について試験するとともに、更に3枚の平板状試験片(厚み3.0mm)を用いて燃焼時の穴開き性の試験をし、UL94に記載の評価方法に従って評価した。表1において、5VAを満たす場合を○とし、満たさない場合を×として示した。
(b)アンダーライターズ・ラボラトリーズのサブジェクト94(UL94)の方法に準じ、3枚の平板状試験片(厚み1.5mm)を用いて燃焼時の耐バーンスルー性の試験をし、成形品(最薄部)の肉厚を測定の上、穴開きの有無および穴のサイズを評価した。表2において、穴が開かなかった場合または穴が3mm以下の場合を○とし、3mmを超える穴が開いた場合を×として示した。
【0041】
【表1】
【0042】
【表2】
【0043】
表2より、実施例1〜5においては、耐バーンスルー性に優れる成形品が得られた。これに対して、比較例1〜4においてはいずれも、樹脂組成物自体は実施例1と同じであるものの、成形条件が異なっており、耐バーンスルー性を満たすことができなかった。
なお、実施例・比較例においてはいずれも成形品の肉厚は同一であることから、各比較例の成形品において耐バーンスルー性が劣るのは、成形後の収縮により肉厚が薄くなったことが原因ではないことが分かる。つまり、成形条件が耐バーンスルー性の向上に寄与すると考えられる。