特許第6097092号(P6097092)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6097092
(24)【登録日】2017年2月24日
(45)【発行日】2017年3月15日
(54)【発明の名称】青酸重合物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01C 3/00 20060101AFI20170306BHJP
【FI】
   C01C3/00 Z
【請求項の数】4
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-29198(P2013-29198)
(22)【出願日】2013年2月18日
(65)【公開番号】特開2014-156381(P2014-156381A)
(43)【公開日】2014年8月28日
【審査請求日】2015年12月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】小島 綾一
(72)【発明者】
【氏名】日名子 英範
【審査官】 村岡 一磨
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2007/043311(WO,A1)
【文献】 特開2010−260773(JP,A)
【文献】 特開昭54−125700(JP,A)
【文献】 特開昭48−023727(JP,A)
【文献】 特開平02−191244(JP,A)
【文献】 特開昭51−037099(JP,A)
【文献】 特表2011−513425(JP,A)
【文献】 特開2001−346596(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01C 3/00− 3/20
C08G 73/00−73/26
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
0.01質量%ギ酸溶液の紫外可視吸収スペクトルにおいて、600nmの波長の光の吸収強度が、0.10以上である、青酸重合物。
【請求項2】
重量平均分子量が5,000以上である、請求項1に記載の青酸重合物。
【請求項3】
炭素原子に対する窒素原子のモル比率(N/C)が、0.8〜1.0である、請求項1又は2に記載の青酸重合物。
【請求項4】
酸と青酸とを混合し、酸を含有する青酸を得る工程1と、前記酸を含有する青酸と塩基とを混合し、青酸重合物を得る工程2とを有し、前記工程1及び前記工程2において、前記酸のモル数をa、前記青酸のモル数をb、前記塩基のモル数をcとしたときに、下記式(I)のx値が、1以上20以下を満たす、請求項1〜3に記載の青酸重合物の製造方法。
x=c/(a+0.01×b) ・・・(I)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、青酸重合物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
青酸重合物はその構造中の窒素含有量の高さから、新規な窒素含有炭素材料の前駆体として有用であることが知られている。含窒素炭素材料は、例えばリチウムイオン二次電池負極、キャパシタ用電極、及び燃料電池電極の酸化還元触媒としての電極材料用途が有望視されている。特許文献1には、青酸重合物に対して不活性ガスにより賦活処理を行い、燃料電池電極の酸化還元触媒用の含窒素炭素材料を製造する方法が記載されている。
【0003】
青酸重合物は、青酸を種々の方法で重合させることにより製造することができる。非特許文献1には、青酸重合物を得る方法として、液体青酸や青酸水溶液を加熱する方法、青酸を長時間放置する方法、青酸に塩基を添加する方法、青酸に光を照射する方法、青酸に対し種々の放電を行う方法、又はシアン化カリウム水溶液を電気分解する方法が開示されている。
【0004】
非特許文献1には、青酸に塩基を添加する方法として、具体的には、青酸にアンモニア水を添加して青酸重合物を得る方法が開示されている。青酸重合物の構造に関しては諸説あるが、非特許文献1には、青酸構造の原型を留めず、六員環による平面二重ラダー構造中に炭素−窒素二重結合によるπ共役系構造を有する、下記式(1)で示される構造を有する青酸重合物が提案されている。
【化1】
(式中、mは任意の数である。)
【0005】
また、非特許文献2には、溶媒を使用せず青酸に直接アンモニアガスを接触させて、室温で青酸重合物を合成する方法が開示されている。得られた重合物はジメチルスルホキシドに溶解する性質を示すことが開示されており、溶液核磁気共鳴法で構造解析の結果より、下記式(2)で示される構造を有する青酸重合物が提案されている。
【化2】
(式中、mは任意の数である。)
【0006】
さらに、非特許文献3には、液体青酸にトリエチルアミン等の塩基を添加して青酸重合物を製造する方法が開示されている。非特許文献3に記載の方法で得られた重合物は分子量の低い重合物を含有していることが開示されている。さらに、分子量の低い重合物とされる成分がジメチルスルホキシドに溶解する性質を示す一方で、一般の有機溶媒に溶解しない成分も存在することも開示している。
【0007】
一方、非特許文献4には、青酸は不安定な性質を有するため、青酸重合物の製造過程において、特に青酸が微量の水等の不純物を含む場合に、重合反応の爆発的進行による保存容器内圧の上昇、急激な発熱、ときには爆発が起きる危険性があることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】WO2007/043311
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】TH.Voelker,「Polymere Brausauere」,Angewante Chemie,72,379−384 (1960)
【非特許文献2】Chao He,et.al,「Structural Investigation of HCN Polymer Isotopomers by Solution−State Multidimensional NMR」,The Journal of Physical Chemistry A,116,4751−4759 (2012)
【非特許文献3】倉林正弘、柳谷康新、安本昌彦、鎌倉卓郎、「シアン化水素のアルカリによる重合生成物」、工業科学雑誌、70巻、7号、1106−1111(1967)
【非特許文献4】倉林正弘、柳谷康新、安本昌彦、「液体シアン化水素の重合による危険性と水分の影響」、工業科学雑誌、71巻、8号、1119−1123(1968)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
青酸重合物が新規な含窒素炭素材料の前駆体として有望である。一方、従来の製造方法により得られる青酸重合物は、分子量の低い重合物、又は分子量の低い重合物を多く含む重合物である。このように分子量の低い従来の青酸重合物は、紫外可視吸収スペクトルの長波長側の吸収強度が弱く、π共役系も十分に発達していない。青酸重合物は高分子量体になるほどπ共役系が発達すると考えられ、これに伴い導電性等の電気化学的特性が発現する。電気化学的特性が発現することにより、青酸重合物自体を高分子系材料として利用できることも期待できる。しかしながら、従来の青酸重合物の製造方法では、得られる青酸重合物の分子量、純度の観点で問題がある。また、青酸重合物を製造する方法は、青酸の不安定性ゆえに安全面の観点からも十分に確立されておらず、改善の余地がある。
【0011】
本発明は、上記問題点に鑑みなされたものであり、比較的高い分子量を有し、紫外可視吸収スペクトルの長波長側吸収強度が大きく、十分に共役構造の発達した青酸重合物を得ることができる、安全かつ高効率な青酸重合物の製造方法及び上記の物性を有する青酸重合物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、驚くべきことに、酸で安定化された青酸に塩基を添加して重合させることで、安全かつ高効率で、青酸重合物を製造できることを見出し、また得られた青酸重合物が比較的高い分子量を有し、紫外可視吸収スペクトルの長波長側吸収強度が大きく、十分に共役構造の発達したものとなることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
即ち、本発明は以下の通りである。
〔1〕
0.01質量%ギ酸溶液の紫外可視吸収スペクトルにおいて、600nmの波長の光の吸収強度が、0.10以上である、青酸重合物。
〔2〕
重量平均分子量が5,000以上である、前項〔1〕に記載の青酸重合物。
〔3〕
炭素原子に対する窒素原子のモル比率(N/C)が、0.8〜1.0である、前項〔1〕又は〔2〕に記載の青酸重合物。
〔4〕
酸と青酸とを混合し、酸を含有する青酸を得る工程1と、前記酸を含有する青酸と塩基とを混合し、青酸重合物を得る工程2とを有し、前記工程1及び前記工程2において、前記酸のモル数をa、前記青酸のモル数をb、前記塩基のモル数をcとしたときに、下記式(I)のx値が、1以上20以下を満たす、前項〔1〕〜〔3〕に記載の青酸重合物の製造方法。
x=c/(a+0.01×b) ・・・(I)
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、比較的高い分子量を有し、紫外可視吸収スペクトルの長波長側吸収強度が大きく、十分に共役構造の発達した青酸重合物を得ることができる、安全かつ高効率な青酸重合物の製造方法、及び上記の物性を有する青酸重合物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施例1と、比較例2で得られた青酸重合物の紫外可視吸収スペクトルを示すグラフである。
図2】実施例15と、比較例2で得られた青酸重合物の紫外可視吸収スペクトルを示すグラフである。
図3】式(I)におけるx値と青酸重合物収率の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明する。本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明はその実施の形態のみに限定されるものではない。すなわち、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【0017】
〔青酸重合物〕
(紫外可視吸収スペクトル)
本実施形態に係る青酸重合物は、青酸重合物を0.01質量%含むギ酸溶液の紫外可視吸収スペクトルにおいて、600nmの波長の光の吸収強度が0.10以上であり、好ましくは0.12以上であり、より好ましくは0.15以上である。なお、600nmの波長の光の吸収強度の上限は特に限定されず、高いほど好ましい。本実施形態の青酸重合物は、このように長波長側に強い吸収を有するということは、十分に発達したπ共役系構造を有することを示しており、有機電子材料として望ましい構造を有している重合物といえる。このような青酸重合物は、上記青酸重合物の製造方法により得ることができる。青酸重合物の重合度を高くし、π共役構造を発達させることにより、600nmの波長の光の吸収強度をより高く制御することができる。なお、600nmの波長の光の吸収強度は実施例に記載の方法により測定することができる。
【0018】
(重量平均分子量)
本実施形態の青酸重合物は、高重合度の重合物であることが好ましい。かかる観点から、本実施形態の青酸重合物の重量平均分子量は、好ましくは5,000以上であり、より好ましくは7,500以上であり、さらに好ましくは10,000以上である。また、重量平均分子量の上限は、特に限定されないが、100,000以下が好ましく、75,000以下がより好ましく、50,000以下がさらに好ましい。なお、重量平均分子量は後述する実施例に記載の方法により求めることができる。
【0019】
(炭素原子に対する窒素原子のモル比率)
本実施形態の青酸重合物において、炭素原子に対する窒素原子のモル比率(以下、「N/C」という場合がある。)は、好ましくは0.8〜1.0であり、より好ましくは0.85〜1.0であり、さらに好ましくは0.9〜1.0である。このように、本実施形態の青酸重合物は、窒素原子を高い割合で導入された重合物とすることができる。反応温度を低くすると、N/Cは高くなる傾向にあり、反応温度を高くすると、N/Cは低くなる傾向にある。また、重合に用いる塩基の量、種類によってもN/Cは変化する。塩基の量が多くなると、N/Cの値は小さくなる傾向にある。塩基の種類による影響については、一概に述べることは難しいが、嵩高い有機アミンを用いると、N/Cは小さくなる傾向にある。なお、N/Cは有機微量元素分析装置(ジェイサイエンスラボ社製、MICRO CORDER JM10)により求めることができる。
【0020】
〔青酸重合物の製造方法〕
本実施形態に係る青酸重合物の製造方法は、
酸と青酸とを混合し、酸を含有する青酸を得る工程1と、
酸を含有する青酸と塩基とを混合し、青酸重合物を得る工程2とを有し、
工程1及び工程2において、酸のモル数をa、青酸のモル数をb、塩基のモル数をcとしたときに、下記式(I)のx値が、1以上20以下を満たす。
x=c/(a+0.01×b) ・・・(I)
【0021】
〔工程1〕
本実施形態の工程1は、酸と青酸とを混合し、酸を含有する青酸を得る工程である。青酸と酸とを混合する方法は、特に限定されず、青酸に酸を添加してもよいし、酸に青酸を添加してもよい。いずれの場合も酸を含有する青酸とすることができる。ここで、青酸と混合させる「酸」とは、青酸に含有される青酸以外の酸をいう。
【0022】
(青酸及びその製造方法)
青酸重合物の製造に用いる青酸は、特に限定されず、公知の方法で製造されるものを用いることができる。例えば、プロピレン、イソブチレン、tert−ブチルアルコール、プロパン、又はイソブタンを触媒存在下にアンモニア、酸素含有ガスと反応させる気相接触反応によってアクリロニトリルやメタクリロニトリルを製造する方法において、副生される青酸を用いることができる。このときメタノール等、アンモ酸化反応によって青酸を生成するような原料を、反応器に供給してもよい。また、青化ソーダ等を用いる実験室的な製造方法であってもかまわない。
【0023】
(酸)
青酸と混合させる青酸以外の酸としては、特に限定されないが、例えば、次亜硝酸、亜硝酸、硝酸、発煙硝酸、亜硫酸、硫酸、ペルオキソ一硫酸、ペルオキソ二硫酸、発煙硫酸、塩化スルホン酸、スルファミン酸、フルオロスルホン酸、塩酸、炭酸、次亜塩素酸、亜塩素酸、塩素酸、過塩素酸、次亜臭素酸、亜臭素酸、臭素酸、過臭素酸、亜リン酸、リン酸、次亜ヨウ素酸、ヨウ素酸、過ヨウ素酸、次亜フッ素酸、フッ化水素酸、ホウ酸、クロム酸、二クロム酸、亜ヒ酸、ヒ酸、亜セレン酸、セレン酸、キセノン酸、過キセノン酸等の無機酸;乳酸、クエン酸、酢酸、蟻酸、蓚酸、スルフィン酸、タイコ酸、ホスホン酸、安息香酸、2−ヨードキシ安息香酸、トリフルオロメタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ペルフルオロオクタンスルホン酸、インドール−3−酢酸、4−クロロインドール-−3−酢酸、アクリル酸、アコニット酸、マレイン酸、フマル酸、シアル酸、アリストロキア酸、N−アセチルノイラミン酸、アセト酢酸、アビエチン酸、アブシシン酸、アミノレブリン酸、アンゲリカ酸、酪酸、イソ酪酸、プロピオン酸、イミダゾール−4−オン−5−プロピオン酸、ウロカニン酸、エチレンジアミン四酢酸(エデト酸)、グリコールエーテルジアミン四酢酸、オカダ酸、コハク酸、オキサロコハク酸、3−ヒドロキシ安息香酸、3−ヒドロキシプロピオン酸、4−ヒドロキシ酪酸、イソクエン酸、カルチニン、クエン酸、グリコール酸、グリセリン酸、サリチル酸、シキミ酸、酒石酸、4−ヒドロキシ安息香酸、3−ヒドロキシイソ酪酸、ヒドロキシクエン酸、3−ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ酪酸、2−ヒドロキシ酪酸、プレフェン酸、マンデル酸、メバロン酸、モノヒドロキシ安息香酸、リンゴ酸、10−カンファースルホン酸、システイン酸、ジノニルナフチルスルホン酸、ジヨードメチルパラストリルスルホン、タウリン、トリフルオロメタンスルホン酸塩、トリフルオロメタンスルホナート、トリフルオロメタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、メタンスルホン酸等の有機酸が挙げられる。これらの酸は、青酸、又はその溶液に含有されることで青酸を安定化する効果を有するが、中でも特に好ましいのは、酢酸、硫酸である。酢酸、硫酸を用いることにより、長期にわたる安全性がより向上する傾向にある。上記酸は、1種単独で用いても、2種以上併用してもよい。
【0024】
青酸と混合する酸の量は、0.1〜60質量%であることが好ましい。酸の量が上記範囲であることにより、青酸をより安定化させることができ、安全性により優れる傾向にある。また、酸の量は、より好ましくは0.5〜15質量%であり、さらに好ましくは1〜10質量%である。酸の量が上記範囲であることにより、工程2で発生しうる酸と塩基の中和熱をより低く抑えられる傾向にある。
【0025】
酸を含有する青酸は無溶媒で用いてもよいが、溶媒と混合して溶液として用いることが好ましい。このような溶媒としては、特に限定されないが、例えば、水;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類;アセトン;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類;ジクロロメタン、クロロホルム、ジクロロエチレン、トリクロロエチレン、四塩化炭素等の塩素系炭化水素類;エチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類;アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル類;N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類;N−メチル−2−ピロリドン等のラクタム類;ジメチルスルホキシド;n−ペンタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン等の脂肪族炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素類等が挙げられる。このなかでも、水、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド等がより好ましい。上記溶媒は、1種単独で用いても、2種以上併用してもよい。
【0026】
酸を含有する青酸溶液の青酸濃度は1〜99質量%であることが好ましく、より好ましくは5〜90質量%、さらに好ましくは15〜60質量%であり、よりさらに好ましくは25〜50質量%である。青酸濃度が1質量%以上であることにより、重合速度がより速くなる傾向にある。一方、青酸濃度が99質量%以下であることにより、急激な重合熱の発生がより抑制される傾向にある。
【0027】
〔工程2〕
本実施形態の工程2は、酸を含有する青酸と塩基とを混合し、青酸重合物を得る工程である。酸を含有する青酸溶液と塩基とを混合する方法は、特に限定されず、酸を含有する青酸溶液に塩基を混合してもよいし、塩基に酸を含有する青酸溶液を混合してもよい。好ましくは酸を含有する青酸溶液に塩基を混合する方法である。
【0028】
(塩基)
酸を含有する青酸を重合させうる塩基としては、特に限定されないが、例えば、アンモニア水;メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ブチルアミン、アミルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ウンデシルアミン、ドデシルアミン、トリデシルアミン、テトラデシルアミン、ペンタデシルアミン、セチルアミン、シクロプロピルアミン、シクロブチルアミン、シクロペンチルアミン、シクロヘキシルアミン、アニリン、カテコールアミン、フェネチルアミン、アマンタジン、トルイジン、ベンジルアミン、ナフチルアミン、アリルアミン等の第1級アミン;ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン等の第2級アミン;トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、ジシクロヘキシルメチルアミン、N−メチルピロリジン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン−5(DBN)、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7(DBU)、N,N−ジイソプロピルエチルアミン、トリエタノールアミン等の第3級アミン;テトラメチルアンモニウムヒドロキサイド、テトラメチルアンモニウムクロリド、テトラメチルアンモニウムブロミド、テトラエチルアンモニウムクロリド、テトラエチルアンモニウムブロミド等の第4級アミン;ピリジン、4−ジメチルアミノピリジン、ピリミジン、ピペリジン、モルホリン、ピペラジン、キヌクリジン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン等の環状アミン;トリメチレンジアミン、エチレンジアミン、ジエチルエチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタン、1,9−ジアミノノナン、1,10−ジアミノデカン、フェニレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、テトラメチルエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、1,2,3−トリアミノプロパン、トリアミノベンゼン、トリアミノフェノール、メラミン、スペルミジン、1,8−ビス(ジメチルアミノ)ナフタレン、スペルミン等の多価アミン;水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム、水酸化フランシウム、シアン化ナトリウム、酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、シアン化カリウム、酢酸カリウム、炭酸カリウム、ホウ酸カリウム、酸化リチウム、酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化ルビジウム、酸化セシウム、酸化フランシウム等のアルカリ金属塩;水酸化ベリリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウム、水酸化ラジウム、シアン化マグネシウム、酢酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、シアン化カルシウム、酢酸カルシウム、炭酸カルシウム等のアルカリ土類金属水酸化物;リチウムメトキシド、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、リチウムエトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムエトキシド、ナトリウムイソプロポキシド、カリウム−tert−ブトキシド、リチウム−tert−ブトキシド、アルミニウムトリブトキシド等の金属アルコキシド;ジエチルマグネシウム、トリエチルアルミニウム、フェニルリチウム等の有機金属化合物;フェニルマグネシウムブロミド、エチルマグネシウムクロリド、アリルマグネシウムヨージド等のグリニャール試薬;リチウムアミド、琥珀酸イミドカリウム、アセトアミドカリウム等の金属アミド化合物が例示できる。上記塩基は、1種単独で用いても、2種以上併用してもよい。
【0029】
これらの中でも、アンモニア水;ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン−5(DBN)、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7(DBU)等のアミン類;シアン化カリウム等のアルカリ金属塩;リチウム−tert−ブトキシド等の金属アルコキシド等が好ましい。このような塩基を用いることにより、重合反応がより促進しやすく、取扱がより容易で、青酸重合物の精製工程がより簡便となる傾向にある。
【0030】
青酸は、その他のモノマーと共重合させてもよい。その他のモノマーとしては、特に限定されないが、例えば、アクリロニトリル、エチレン、プロピレン、ブタジエン、スチレン、メタクリル酸メチル、ジアミノマレオニトリル等が例示できる。青酸をその他のモノマーと共重合させる場合、その他のモノマーは、酸を含有する青酸溶液に混合してもよいし、その他のモノマーと青酸とを混合した後、酸を添加し、溶媒や触媒をさらに混合してもよい。すなわち、各成分及び溶媒の添加のタイミングは限定されない。
【0031】
重合反応温度は、特に限定されないが、好ましくは10〜200℃であり、より好ましくは30〜150℃であり、さらに好ましくは50〜120℃であり、よりさらに好ましくは80〜100℃である。重合反応温度が高いと、得られる重合物の分子量も大きくなる傾向にあるが、N/Cは小さくなる傾向にある。重合反応温度が上記範囲であると、分子量が高く、N/Cも高い重合物が得られる。
【0032】
重合反応圧力は、特に限定されないが、好ましくは0.05〜2.0MPaであり、より好ましくは0.08〜1.5MPaであり、さらに好ましくは0.1〜1.0MPaである。重合反応圧力が上記範囲であることにより、反応速度がより速くなり、安全性がより向上する傾向にある。
【0033】
重合反応時間は、特に限定されないが、好ましくは1分〜240時間であり、好ましくは10分〜100時間であり、さらに好ましくは30分〜50時間である。重合反応時間が上記範囲であることにより、反応速度がより速くなり、安全性がより向上する傾向にある。
【0034】
工程2の重合反応は、バッチ式反応器を用いてもよいし、流通式反応器を用いてもよい。流通式反応器は完全混合槽でもよいし、管状反応器でもよいし、完全混合槽と管状反応器を組み合わせたものでもよい。
【0035】
反応器内の雰囲気は、空気でもよいが、窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガスであってもよい。
【0036】
(混合割合)
工程1及び工程2において、酸のモル数をa、青酸のモル数をb、塩基のモル数をcとしたときに、下記式(I)のx値が、1以上20以下を満たす。xの上限は、10以下であることが好ましく、7以下であることがより好ましい。また、xの下限は、2以上であることが好ましく、3以上であることがより好ましい。x値が上記範囲であることにより、重合反応がより高効率となり収率がより高くなる。
x=c/(a+0.01×b) ・・・(I)
【0037】
式(I)における酸のモル数aは、式(II)のように定義される。ここで、「価数」とは、1分子が放出できるプロトンの数をいう。例えば、酢酸、硝酸、塩酸の場合は1、硫酸の場合は2、リン酸の場合は3となる。
a(mol)=酸の質量(g)÷酸の分子量×価数 ・・・(II)
【0038】
式(I)における塩基のモル数cは、式(III)のように定義される。ここで、「価数」とは、ブレンステッド塩基の場合は1分子中の水酸基の数であり、アレニウス塩基の場合は、1分子が受容できるプロトンの数をいう。例えば水酸化ナトリウム、アンモニア、ジエチルアミン、トリエチルアミンの場合は1、エチレンジアミン、ジエチルエチレンジアミン場合は2、ジエチレントリアミンの場合は3となる。
c(mol)=塩基の質量(g)÷塩基の分子量×価数・・・(III)
【0039】
〔分離、回収、精製の工程〕
本実施形態の青酸重合物の製造方法では、上記した重合反応の後、青酸重合物が溶媒中で固形物として析出するため、分離、回収、精製の工程が比較的容易である。固体として析出した青酸重合物は、吸引濾過等の液固分離方法で、回収することができる。回収した青酸重合物は、水やアセトニトリル、アセトン等を用いて洗浄、精製することができる。精製した青酸重合物は、減圧乾燥等の方法で洗浄液を除去し、粉末状とすることができる。
【0040】
本実施形態の青酸重合物は、窒素含有量が高いため、含窒素炭素材料の前駆体として用いることができる。含窒素炭素材料は、リチウムイオン二次電池、キャパシタ、燃料電池等の電極材料用途として有用である。
【0041】
本実施形態の青酸重合物は、上述したπ共役系構造を有するため、高分子系材料としても用いることができるため、導電性ポリマー材料、電気二重層キャパシタ、有機EL素子、有機薄膜トランジスタ、太陽電池材料、帯電防止材料、透明導電フィルム、固体電解コンデンサ等の部材として有用な有機電子材料として用いることができる。
【実施例】
【0042】
以下、実施例等を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、これらは例示的なものであり、本発明はこれらに限定されるものではない。したがって、当業者は以下に示す実施例に様々な変更を加えて本発明を実施することができる。
【0043】
まず、本実施例で行った測定方法について説明する。
(重量平均分子量の測定方法)
重量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定した。試料0.007gをギ酸(和光純薬株式会社製、98%、試薬特級)に溶解させて全体を7.0gとし、試料濃度が0.1質量%となるよう調製し、1.5mLのバイアル瓶に充填して下記の条件で測定した。
装置:東ソー株式会社製高速GPC装置 HLC−8320GPC
カラム:親水性ビニルポリマー微粒子ゲル系カラム TSKgelSuperA
WM−H
溶離液:98%ギ酸(和光純薬株式会社製、特級)
流速:0.4mL/min
カラム温度:40℃
注入量:0.1μL
検出器:示唆屈折率検出器
【0044】
なお、重量平均分子量は、分子量が異なる分子量既知の単分散ポリエチレンオキサイド4種類(東ソー株式会社製の分子量2,000、21,000、44,900、101,000の標準試料)を用いて、溶出時間−分子量の検量線を作成し、該検量線上において、該当する溶出時間分布から東ソー株式会社製GPC解析プログラムEcoSEC−WSによって、重量平均分子量を算出した。
【0045】
(紫外可視吸収スペクトルの測定方法)
紫外可視吸収スペクトルは、試料0.01gをギ酸(和光純薬株式会社製、98%、試薬特級)に溶解させて全体を8.0gとし、その溶液を0.5g採取してさらにギ酸で希釈して、最終的に試料濃度が0.01質量%となるよう調製した。その溶液を厚さ2mmの石英セルに充填して紫外可視吸収スペクトルを測定し、得られた紫外可視スペクトルから、厚さ2mmの石英セルにギ酸を充填した場合(ブランク)の紫外可視吸収スペクトルをバックグラウンドとして差し引くことで得た。
装置:日本分光株式会社製、紫外可視吸収分光光度計 V−670
光源:重水素ランプ、ハロゲンランプ
測定波長範囲:1100〜250nm
検出器:光電子増倍管、冷却型PbS光導電素子
バンド幅:1.0nm
走査速度:400nm/min
【0046】
(CHN分析)
ジェイサイエンスラボ社製、MICRO CORDER JM10を用い、2,500μgの試料を試料台に充填してCHN分析を行った。試料炉は950℃、燃焼炉(酸化銅触媒)は850℃、還元炉(銀粒+酸化銅のゾーン、還元銅のゾーン、酸化銅のゾーンからなる)は550℃に設定した。酸素は15mL/min、Heは150mL/minに設定した。検出器は熱伝導度検出器(TCD)を用いた。アンチピリン(Antipyrine)を用いてマニュアルに記載の方法でキャリブレーションを行った。
【0047】
[実施例1]
酢酸9gと水99gを混合し、これに青酸72gを混合して、酸を含有する青酸溶液とした。さらに25%アンモニア水14gを用意した。
【0048】
全ての操作は、ドラフト内に設置された排気装置付グローブボックス内で行った。300mLのSUS製ビーカーに五つ口のガラス製カバーを被せて固定した。中管に撹拌羽、側管に温度計、pHメーター、滴下ロート、冷却管をセットした。撹拌羽は空気駆動式の撹拌機に接続した。冷却管は空トラップ、続いてアルカリトラップに接続して、反応器内が加圧条件にならないようにした。冷却管内には水と不凍液の混合液を流通させて、−5℃から−10℃に冷却した。反応器下部がウォーターバスに浸るように、全体を固定した。上記の酸を含有する青酸溶液を、滴下ビュレットを使用して反応器内に充填した。ウォーターバスで反応液を加温して、液温が30℃になった段階で、滴下ビュレットを用いて上記のアンモニア水を添加した。アンモニア水添加から10分後にウォーターバス設定温度を40℃とし、その後青酸濃度が20%以下で50℃、10%以下で60℃、5%以下で70℃、2%以下で80℃となるよう、反応温度を調節した。反応過程において、急激な発熱、爆発等は観察されなかった。7時間後、反応器をウォーターバスから外してカバーを取り外し、黒褐色固形物をADVANTEC社製、型式:No.5C(保留粒子径1μm(カタログ記載値))のろ紙を用いて吸引ろ過により回収した。回収した黒褐色固形物はジメチルスルホキシドで洗浄し、その後水、アセトンで洗浄を行い、120℃で減圧乾燥を行った。水、青酸が残存しないことを確認した後に重量を測定し、仕込みの青酸重量から収率を計算した。青酸重合物を37.4g回収した。収率は51.9%であった。なお、N/Cが高いこと、π共役構造が発達していることから、C=N共役結合を多く含む青酸重合物が得られたと推定した。
【0049】
[実施例2]
アンモニア水の量を20gに変更したこと以外は実施例1と同様の操作を行った。上記青酸・酸混合液とアンモニア水を反応器に充填して重合反応を実施したところ、反応過程において、急激な発熱、爆発等は観察されず、7時間後には青酸重合物を50.5g回収した。収率は70.1%であった。
【0050】
[実施例3]
アンモニア水の量を28gに変更したこと以外は実施例1と同様の操作を行った。上記青酸・酸混合液とアンモニア水を反応器に充填して重合反応を実施したところ、反応過程において、急激な発熱、爆発等は観察されず、7時間後には青酸重合物を60.1g回収した。収率は83.5%であった。
【0051】
[実施例4]
アンモニア水の量を48gに変更したこと以外は実施例1と同様の操作を行った。上記青酸・酸混合液とアンモニア水を反応器に充填して重合反応を実施したところ、反応過程において、急激な発熱、爆発等は観察されず、7時間後には青酸重合物を67.3g回収した。収率は93.5%であった。
【0052】
[実施例5]
アンモニア水の量を48gに変更したことと、反応温度を60℃まで上げた段階で温度を維持したこと以外は実施例1と同様の操作を行った。上記青酸・酸混合液とアンモニア水を反応器に充填して重合反応を実施したところ、反応過程において、急激な発熱、爆発等は観察されず、7時間後には青酸重合物を22.3g回収した。収率は31.0%であった。
【0053】
[実施例6]
アンモニア水の量を48gに変更したことと、反応温度を120℃まで温度を上げて全圧を0.2MPaとして維持したこと以外は実施例1と同様の操作を行った。上記青酸・酸混合液とアンモニア水を反応器に充填して重合反応を実施したところ、反応過程において、急激な発熱、爆発等は観察されず、7時間後には青酸重合物を64.8g回収した。収率は90.0%であった。
【0054】
[実施例7]
アンモニア水の量を84gに変更したこと以外は実施例1と同様の操作を行った。上記青酸・酸混合液とアンモニア水を反応器に充填して重合反応を実施したところ、反応過程において、急激な発熱、爆発等は観察されず、7時間後には青酸重合物を62.0g回収した。収率は86.1%であった。
【0055】
[実施例8]
アンモニア水の量を120gに変更したこと以外は実施例1と同様の操作を行った。上記青酸・酸混合液とアンモニア水を反応器に充填して重合反応を実施したところ、反応過程において、急激な発熱、爆発等は観察されず、7時間後には青酸重合物を58.2g回収した。収率は80.8%であった。
【0056】
[実施例9]
アンモニア水の量を192gに変更したこと以外は実施例1と同様の操作を行った。上記青酸・酸混合液とアンモニア水を反応器に充填して重合反応を実施したところ、反応過程において、急激な発熱、爆発等は観察されず、7時間後には青酸重合物を25.2g回収した。収率は35.0%であった。
【0057】
[実施例10]
酢酸の量を27gに変更し、アンモニア水の量を40gに変更したこと以外は実施例1と同様の操作を行った。上記青酸・酸混合液とアンモニア水を反応器に充填して重合反応を実施したところ、反応過程において、急激な発熱、爆発等は観察されず、7時間後には青酸重合物を35.4g回収した。収率は49.2%であった。
【0058】
[実施例11]
酢酸の量を27gに変更し、アンモニア水の量を56gに変更したこと以外は実施例1と同様の操作を行った。上記青酸・酸混合液とアンモニア水を反応器に充填して重合反応を実施したところ、反応過程において、急激な発熱、爆発等は観察されず、7時間後には青酸重合物を45.3g回収した。収率は62.9%であった。
【0059】
[実施例12]
酢酸の量を27gに変更し、アンモニア水の量を72gに変更したこと以外は実施例1と同様の操作を行った。上記青酸・酸混合液とアンモニア水を反応器に充填して重合反応を実施したところ、反応過程において、急激な発熱、爆発等は観察されず、7時間後には青酸重合物を51.1g回収した。収率は71.0%であった。
【0060】
[実施例13]
アンモニア水を用いずに、代わりにジエチルアミン33gを用いたこと以外は実施例1と同様の操作を行った。上記青酸・酸混合液とジエチルアミンを反応器に充填して重合反応を実施したところ、反応過程において、急激な発熱、爆発等は観察されず、7時間後には青酸重合物を58.2g回収した。収率は80.8%であった。
【0061】
[実施例14]
アンモニア水を用いずに、代わりにジエチルアミン55gを用いたこと以外は実施例1と同様の操作を行った。上記青酸・酸混合液とジエチルアミンを反応器に充填して重合反応を実施したところ、反応過程において、急激な発熱、爆発等は観察されず、7時間後には青酸重合物を65.9g回収した。収率は91.5%であった。
【0062】
[実施例15]
アンモニア水を用いずに、代わりにトリエチルアミン45gを用いたこと以外は実施例1と同様の操作を行った。上記青酸・酸混合液とトリエチルアミンを反応器に充填して重合反応を実施したところ、反応過程において、急激な発熱、爆発等は観察されず、7時間後には青酸重合物を58.7g回収した。収率は81.5%であった。
【0063】
[実施例16]
酢酸を用いずに、代わりに硫酸4gを用いたこと以外は実施例1と同様の操作を行った。上記青酸・酸混合液とアンモニア水を反応器に充填して重合反応を実施したところ、反応過程において、急激な発熱、爆発等は観察されず、7時間後には青酸重合物を60.7g回収した。収率は84.3%であった。
【0064】
[実施例17]
酢酸を用いずに、代わりに硫酸4gを用い、アンモニア水を用いずに、代わりにジエチルアミン33gを用いたこと以外は実施例1と同様の操作を行った。上記青酸・酸混合液とジエチルアミンを反応器に充填して重合反応を実施したところ、反応過程において、急激な発熱、爆発等は観察されず、7時間後には青酸重合物を59.2g回収した。収率は82.2%であった。
【0065】
[実施例18]
アンモニア水を用いずに、代わりにジエチルエチレンジアミン41gを用いたこと以外は実施例1と同様の操作を行った。上記青酸・酸混合液とジエチルエチレンジアミンを反応器に充填して重合反応を実施したところ、反応過程において、急激な発熱、爆発等は観察されず、7時間後には青酸重合物を26.4g回収した。収率は33.0%であった。
【0066】
[比較例1]
酸を含有しない青酸72gと水108gを用意し、混合して青酸水溶液とした。塩基を用いずに、上記混合液体を密閉容器に保管した。1ヵ月後に着色が見られ、内圧の上昇が観察された。青酸重合物は回収できなかった。
【0067】
[比較例2]
酸を含有しない青酸72gとジエチルアミン55gを用意し、混合した。上記混合液体を密閉容器に保管した。数分後には着色が見られ、1時間後には黒褐色固形物の生成と、内圧の上昇が観察された。5時間後には密閉容器内で破裂音が発生し始めたため、この段階で容器の弁を開放した。容器からは黒褐色固形物を60g回収した。黒褐色固形物は、ジメチルスルホキシドで洗浄したところ、大部分が溶解した。溶解した成分は重合度の低いオリゴマーと考えられる。最終的に残留した黒色粉末を120℃で減圧乾燥後、1.2gの青酸重合物を回収した。収率は1.7%であった。
【0068】
[比較例3]
アンモニア水の量を10gに変更したこと以外は実施例1と同様の操作を行った。上記青酸・酸混合液とジエチルアミンを反応器に充填して重合反応を実施したところ、1週間で徐々に黄色く変色したが、青酸重合物は回収できなかった。
【0069】
[比較例4]
アンモニア水の量を12gに変更したこと以外は実施例1と同様の操作を行った。上記青酸・酸混合液とアンモニア水を反応器に充填して重合反応を実施したところ、反応過程において、急激な発熱、爆発等は観察されず、7時間後には青酸重合物を0.7g回収した。収率は1.0%であった。
【0070】
[比較例5]
アンモニア水の量を246gに変更したこと以外は実施例1と同様の操作を行った。上記青酸・酸混合液とアンモニア水を反応器に充填して重合反応を実施したところ、反応過程において、急激な発熱、爆発等は観察されず、7時間後には青酸重合物を3.6g回収した。収率は5.0%であった。
【0071】
[比較例6]
アンモニア水を用いずに、代わりにジエチルアミン274gを用いたこと以外は実施例1と同様の操作を行った。上記青酸・酸混合液とアンモニア水を反応器に充填して重合反応を実施したところ、反応過程において、急激な発熱、爆発等は観察されず、7時間後には青酸重合物を2.4g回収した。収率は3.3%であった。
【0072】
実施例1〜15及び参考例1及び比較例1〜6における、重合反応条件及び重合物の物性等を、表1に示す。
【0073】
実施例1で得られた青酸重合物の紫外可視吸収スペクトルと、比較例2で得られた青酸重合物(黒褐色固形物試料)の紫外可視吸収スペクトルとを比較するグラフを、図1に示す。図中で太線が実施例1の吸収スペクトル、細線が比較例2の吸収スペクトルを示す。図1に示されるように、比較例2と比べ実施例1で得られた青酸重合物の方が吸収強度が高く、共役構造が十分に発達していることが示された。
【0074】
実施例15で得られた青酸重合物の紫外可視吸収スペクトルと、比較例2で得られた青酸重合物(黒褐色固形物試料)の紫外可視吸収スペクトルとを比較するグラフを、図2に示す。図中で太線が実施例15の吸収スペクトル、細線が比較例2の吸収スペクトルを示す。図2に示されるように、比較例2と比べ実施例15で得られた青酸重合物の方が吸収強度が高く、共役構造が十分に発達していることが示された。
【0075】
式(I)におけるx値と青酸重合物収率の関係を示すグラフを図3に示す。図3に示されるように、Xが1以上20以下であると青酸重合物収率が高くなることがわかる。
【0076】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明に係る青酸重合物の製造方法は、例えばリチウムイオン二次電池負極、キャパシタ用電極、燃料電池電極の酸化還元触媒等の含窒素炭素材料の前駆体として利用できる青酸重合物の製造において産業上の利用可能性を有する。また、有機電子材料として導電性ポリマー材料、電気二重層キャパシタ、有機EL素子、有機薄膜トランジスタ、太陽電池材料、帯電防止材料、透明導電フィルム、固体電解コンデンサ等に利用できる青酸重合物の製造においても産業上の利用可能性を有する。
図1
図2
図3