【実施例】
【0042】
以下、実施例等を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、これらは例示的なものであり、本発明はこれらに限定されるものではない。したがって、当業者は以下に示す実施例に様々な変更を加えて本発明を実施することができる。
【0043】
まず、本実施例で行った測定方法について説明する。
(重量平均分子量の測定方法)
重量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定した。試料0.007gをギ酸(和光純薬株式会社製、98%、試薬特級)に溶解させて全体を7.0gとし、試料濃度が0.1質量%となるよう調製し、1.5mLのバイアル瓶に充填して下記の条件で測定した。
装置:東ソー株式会社製高速GPC装置 HLC−8320GPC
カラム:親水性ビニルポリマー微粒子ゲル系カラム TSKgelSuperA
WM−H
溶離液:98%ギ酸(和光純薬株式会社製、特級)
流速:0.4mL/min
カラム温度:40℃
注入量:0.1μL
検出器:示唆屈折率検出器
【0044】
なお、重量平均分子量は、分子量が異なる分子量既知の単分散ポリエチレンオキサイド4種類(東ソー株式会社製の分子量2,000、21,000、44,900、101,000の標準試料)を用いて、溶出時間−分子量の検量線を作成し、該検量線上において、該当する溶出時間分布から東ソー株式会社製GPC解析プログラムEcoSEC−WSによって、重量平均分子量を算出した。
【0045】
(紫外可視吸収スペクトルの測定方法)
紫外可視吸収スペクトルは、試料0.01gをギ酸(和光純薬株式会社製、98%、試薬特級)に溶解させて全体を8.0gとし、その溶液を0.5g採取してさらにギ酸で希釈して、最終的に試料濃度が0.01質量%となるよう調製した。その溶液を厚さ2mmの石英セルに充填して紫外可視吸収スペクトルを測定し、得られた紫外可視スペクトルから、厚さ2mmの石英セルにギ酸を充填した場合(ブランク)の紫外可視吸収スペクトルをバックグラウンドとして差し引くことで得た。
装置:日本分光株式会社製、紫外可視吸収分光光度計 V−670
光源:重水素ランプ、ハロゲンランプ
測定波長範囲:1100〜250nm
検出器:光電子増倍管、冷却型PbS光導電素子
バンド幅:1.0nm
走査速度:400nm/min
【0046】
(CHN分析)
ジェイサイエンスラボ社製、MICRO CORDER JM10を用い、2,500μgの試料を試料台に充填してCHN分析を行った。試料炉は950℃、燃焼炉(酸化銅触媒)は850℃、還元炉(銀粒+酸化銅のゾーン、還元銅のゾーン、酸化銅のゾーンからなる)は550℃に設定した。酸素は15mL/min、Heは150mL/minに設定した。検出器は熱伝導度検出器(TCD)を用いた。アンチピリン(Antipyrine)を用いてマニュアルに記載の方法でキャリブレーションを行った。
【0047】
[実施例1]
酢酸9gと水99gを混合し、これに青酸72gを混合して、酸を含有する青酸溶液とした。さらに25%アンモニア水14gを用意した。
【0048】
全ての操作は、ドラフト内に設置された排気装置付グローブボックス内で行った。300mLのSUS製ビーカーに五つ口のガラス製カバーを被せて固定した。中管に撹拌羽、側管に温度計、pHメーター、滴下ロート、冷却管をセットした。撹拌羽は空気駆動式の撹拌機に接続した。冷却管は空トラップ、続いてアルカリトラップに接続して、反応器内が加圧条件にならないようにした。冷却管内には水と不凍液の混合液を流通させて、−5℃から−10℃に冷却した。反応器下部がウォーターバスに浸るように、全体を固定した。上記の酸を含有する青酸溶液を、滴下ビュレットを使用して反応器内に充填した。ウォーターバスで反応液を加温して、液温が30℃になった段階で、滴下ビュレットを用いて上記のアンモニア水を添加した。アンモニア水添加から10分後にウォーターバス設定温度を40℃とし、その後青酸濃度が20%以下で50℃、10%以下で60℃、5%以下で70℃、2%以下で80℃となるよう、反応温度を調節した。反応過程において、急激な発熱、爆発等は観察されなかった。7時間後、反応器をウォーターバスから外してカバーを取り外し、黒褐色固形物をADVANTEC社製、型式:No.5C(保留粒子径1μm(カタログ記載値))のろ紙を用いて吸引ろ過により回収した。回収した黒褐色固形物はジメチルスルホキシドで洗浄し、その後水、アセトンで洗浄を行い、120℃で減圧乾燥を行った。水、青酸が残存しないことを確認した後に重量を測定し、仕込みの青酸重量から収率を計算した。青酸重合物を37.4g回収した。収率は51.9%であった。なお、N/Cが高いこと、π共役構造が発達していることから、C=N共役結合を多く含む青酸重合物が得られたと推定した。
【0049】
[実施例2]
アンモニア水の量を20gに変更したこと以外は実施例1と同様の操作を行った。上記青酸・酸混合液とアンモニア水を反応器に充填して重合反応を実施したところ、反応過程において、急激な発熱、爆発等は観察されず、7時間後には青酸重合物を50.5g回収した。収率は70.1%であった。
【0050】
[実施例3]
アンモニア水の量を28gに変更したこと以外は実施例1と同様の操作を行った。上記青酸・酸混合液とアンモニア水を反応器に充填して重合反応を実施したところ、反応過程において、急激な発熱、爆発等は観察されず、7時間後には青酸重合物を60.1g回収した。収率は83.5%であった。
【0051】
[実施例4]
アンモニア水の量を48gに変更したこと以外は実施例1と同様の操作を行った。上記青酸・酸混合液とアンモニア水を反応器に充填して重合反応を実施したところ、反応過程において、急激な発熱、爆発等は観察されず、7時間後には青酸重合物を67.3g回収した。収率は93.5%であった。
【0052】
[実施例5]
アンモニア水の量を48gに変更したことと、反応温度を60℃まで上げた段階で温度を維持したこと以外は実施例1と同様の操作を行った。上記青酸・酸混合液とアンモニア水を反応器に充填して重合反応を実施したところ、反応過程において、急激な発熱、爆発等は観察されず、7時間後には青酸重合物を22.3g回収した。収率は31.0%であった。
【0053】
[実施例6]
アンモニア水の量を48gに変更したことと、反応温度を120℃まで温度を上げて全圧を0.2MPaとして維持したこと以外は実施例1と同様の操作を行った。上記青酸・酸混合液とアンモニア水を反応器に充填して重合反応を実施したところ、反応過程において、急激な発熱、爆発等は観察されず、7時間後には青酸重合物を64.8g回収した。収率は90.0%であった。
【0054】
[実施例7]
アンモニア水の量を84gに変更したこと以外は実施例1と同様の操作を行った。上記青酸・酸混合液とアンモニア水を反応器に充填して重合反応を実施したところ、反応過程において、急激な発熱、爆発等は観察されず、7時間後には青酸重合物を62.0g回収した。収率は86.1%であった。
【0055】
[実施例8]
アンモニア水の量を120gに変更したこと以外は実施例1と同様の操作を行った。上記青酸・酸混合液とアンモニア水を反応器に充填して重合反応を実施したところ、反応過程において、急激な発熱、爆発等は観察されず、7時間後には青酸重合物を58.2g回収した。収率は80.8%であった。
【0056】
[実施例9]
アンモニア水の量を192gに変更したこと以外は実施例1と同様の操作を行った。上記青酸・酸混合液とアンモニア水を反応器に充填して重合反応を実施したところ、反応過程において、急激な発熱、爆発等は観察されず、7時間後には青酸重合物を25.2g回収した。収率は35.0%であった。
【0057】
[実施例10]
酢酸の量を27gに変更し、アンモニア水の量を40gに変更したこと以外は実施例1と同様の操作を行った。上記青酸・酸混合液とアンモニア水を反応器に充填して重合反応を実施したところ、反応過程において、急激な発熱、爆発等は観察されず、7時間後には青酸重合物を35.4g回収した。収率は49.2%であった。
【0058】
[実施例11]
酢酸の量を27gに変更し、アンモニア水の量を56gに変更したこと以外は実施例1と同様の操作を行った。上記青酸・酸混合液とアンモニア水を反応器に充填して重合反応を実施したところ、反応過程において、急激な発熱、爆発等は観察されず、7時間後には青酸重合物を45.3g回収した。収率は62.9%であった。
【0059】
[実施例12]
酢酸の量を27gに変更し、アンモニア水の量を72gに変更したこと以外は実施例1と同様の操作を行った。上記青酸・酸混合液とアンモニア水を反応器に充填して重合反応を実施したところ、反応過程において、急激な発熱、爆発等は観察されず、7時間後には青酸重合物を51.1g回収した。収率は71.0%であった。
【0060】
[実施例13]
アンモニア水を用いずに、代わりにジエチルアミン33gを用いたこと以外は実施例1と同様の操作を行った。上記青酸・酸混合液とジエチルアミンを反応器に充填して重合反応を実施したところ、反応過程において、急激な発熱、爆発等は観察されず、7時間後には青酸重合物を58.2g回収した。収率は80.8%であった。
【0061】
[実施例14]
アンモニア水を用いずに、代わりにジエチルアミン55gを用いたこと以外は実施例1と同様の操作を行った。上記青酸・酸混合液とジエチルアミンを反応器に充填して重合反応を実施したところ、反応過程において、急激な発熱、爆発等は観察されず、7時間後には青酸重合物を65.9g回収した。収率は91.5%であった。
【0062】
[実施例15]
アンモニア水を用いずに、代わりにトリエチルアミン45gを用いたこと以外は実施例1と同様の操作を行った。上記青酸・酸混合液とトリエチルアミンを反応器に充填して重合反応を実施したところ、反応過程において、急激な発熱、爆発等は観察されず、7時間後には青酸重合物を58.7g回収した。収率は81.5%であった。
【0063】
[実施例16]
酢酸を用いずに、代わりに硫酸4gを用いたこと以外は実施例1と同様の操作を行った。上記青酸・酸混合液とアンモニア水を反応器に充填して重合反応を実施したところ、反応過程において、急激な発熱、爆発等は観察されず、7時間後には青酸重合物を60.7g回収した。収率は84.3%であった。
【0064】
[実施例17]
酢酸を用いずに、代わりに硫酸4gを用い、アンモニア水を用いずに、代わりにジエチルアミン33gを用いたこと以外は実施例1と同様の操作を行った。上記青酸・酸混合液とジエチルアミンを反応器に充填して重合反応を実施したところ、反応過程において、急激な発熱、爆発等は観察されず、7時間後には青酸重合物を59.2g回収した。収率は82.2%であった。
【0065】
[実施例18]
アンモニア水を用いずに、代わりにジエチルエチレンジアミン41gを用いたこと以外は実施例1と同様の操作を行った。上記青酸・酸混合液とジエチルエチレンジアミンを反応器に充填して重合反応を実施したところ、反応過程において、急激な発熱、爆発等は観察されず、7時間後には青酸重合物を26.4g回収した。収率は33.0%であった。
【0066】
[比較例1]
酸を含有しない青酸72gと水108gを用意し、混合して青酸水溶液とした。塩基を用いずに、上記混合液体を密閉容器に保管した。1ヵ月後に着色が見られ、内圧の上昇が観察された。青酸重合物は回収できなかった。
【0067】
[比較例2]
酸を含有しない青酸72gとジエチルアミン55gを用意し、混合した。上記混合液体を密閉容器に保管した。数分後には着色が見られ、1時間後には黒褐色固形物の生成と、内圧の上昇が観察された。5時間後には密閉容器内で破裂音が発生し始めたため、この段階で容器の弁を開放した。容器からは黒褐色固形物を60g回収した。黒褐色固形物は、ジメチルスルホキシドで洗浄したところ、大部分が溶解した。溶解した成分は重合度の低いオリゴマーと考えられる。最終的に残留した黒色粉末を120℃で減圧乾燥後、1.2gの青酸重合物を回収した。収率は1.7%であった。
【0068】
[比較例3]
アンモニア水の量を10gに変更したこと以外は実施例1と同様の操作を行った。上記青酸・酸混合液とジエチルアミンを反応器に充填して重合反応を実施したところ、1週間で徐々に黄色く変色したが、青酸重合物は回収できなかった。
【0069】
[比較例4]
アンモニア水の量を12gに変更したこと以外は実施例1と同様の操作を行った。上記青酸・酸混合液とアンモニア水を反応器に充填して重合反応を実施したところ、反応過程において、急激な発熱、爆発等は観察されず、7時間後には青酸重合物を0.7g回収した。収率は1.0%であった。
【0070】
[比較例5]
アンモニア水の量を246gに変更したこと以外は実施例1と同様の操作を行った。上記青酸・酸混合液とアンモニア水を反応器に充填して重合反応を実施したところ、反応過程において、急激な発熱、爆発等は観察されず、7時間後には青酸重合物を3.6g回収した。収率は5.0%であった。
【0071】
[比較例6]
アンモニア水を用いずに、代わりにジエチルアミン274gを用いたこと以外は実施例1と同様の操作を行った。上記青酸・酸混合液とアンモニア水を反応器に充填して重合反応を実施したところ、反応過程において、急激な発熱、爆発等は観察されず、7時間後には青酸重合物を2.4g回収した。収率は3.3%であった。
【0072】
実施例1〜15及び参考例1及び比較例1〜6における、重合反応条件及び重合物の物性等を、表1に示す。
【0073】
実施例1で得られた青酸重合物の紫外可視吸収スペクトルと、比較例2で得られた青酸重合物(黒褐色固形物試料)の紫外可視吸収スペクトルとを比較するグラフを、
図1に示す。図中で太線が実施例1の吸収スペクトル、細線が比較例2の吸収スペクトルを示す。
図1に示されるように、比較例2と比べ実施例1で得られた青酸重合物の方が吸収強度が高く、共役構造が十分に発達していることが示された。
【0074】
実施例15で得られた青酸重合物の紫外可視吸収スペクトルと、比較例2で得られた青酸重合物(黒褐色固形物試料)の紫外可視吸収スペクトルとを比較するグラフを、
図2に示す。図中で太線が実施例15の吸収スペクトル、細線が比較例2の吸収スペクトルを示す。
図2に示されるように、比較例2と比べ実施例15で得られた青酸重合物の方が吸収強度が高く、共役構造が十分に発達していることが示された。
【0075】
式(I)におけるx値と青酸重合物収率の関係を示すグラフを
図3に示す。
図3に示されるように、Xが1以上20以下であると青酸重合物収率が高くなることがわかる。
【0076】
【表1】