【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 ▲1▼平成24年12月5〜7日、SEMICON Japan 2012、幕張メッセ(千葉県千葉市美浜区) ▲2▼平成25年1月29日〜2月1日、ISPlasma 2013併設展示会、名古屋大学(愛知県名古屋市千種区) ▲3▼平成25年2月14日、東海広域ナノテクものづくりクラスター 最終成果報告会、「知の拠点」あいち産業科学技術総合センター(愛知県豊田市八草町)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
導体板にスロットとこのスロットの一端部に設けられたスロットの幅よりも大きく形成された開放部とからなる半開放端スロットを備えたアンテナ部と、前記アンテナ部に同軸ケーブルの外皮導体を接続するとともに前記開放部内に同軸ケーブルの芯線の先端部を配置することにより同軸接合した同軸結合部と、を備えた電子密度測定部と、
前記アンテナ部から先端が露出するように配置されたファイバ状またはロッド状に形成された光伝送路を備え前記電子密度測定部と一体的に形成されたプラズマ発光測定部と、
が設けられ、
前記電子密度測定部を用いて、前記同軸ケーブルにより前記アンテナに周波数を掃引しながら高周波パワーを供給することにより電界励起し、前記アンテナから反射されるパワーにより得られる反射係数のスペクトルから前記アンテナに対応する共振周波数を測定するとともに、前記プラズマ発光測定部を用いてプラズマ中の発光種の発光スペクトルを検出可能に構成されたことを特徴とするプラズマ状態測定プローブ。
透光性を有する誘電体からなり、前記アンテナ部及び前記光伝送路の前面を覆うカバーを備えたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のプラズマ状態測定プローブ。
プラズマ処理装置内部でプラズマ状態測定プローブの位置を可動な状態で、プラズマ処理装置のポートに対して取付可能に構成されたことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1つに記載のプラズマ電子密度測定プローブ。
【背景技術】
【0002】
反応性プラズマを用いた材料プロセスは、ナノスケールの薄膜の創製・加工、材料表面の改質、新素材創製などの分野に広く利用されている先端基盤技術である。その代表例が半導体デバイスの製造工程であり、薄膜のCVD(化学気相成長)、エッチング、アッシングなどの工程にはプラズマが不可欠になっている。このプラズマプロセスの高度化・精密化に向けて、プラズマ内の電子、イオン、各種の中性ラジカル(発光種)の密度を計測し、その情報に基づいてプラズマを制御することが求められている。量産現場においては、簡易にプラズマ状態の情報が得られる簡易モニターが求められているが、反応性プラズマの計測は困難であり、高価な測定器による特殊技術を駆使して初めて可能になる場合がほとんどで、主に研究開発段階で実施されてきた。
【0003】
従来、電子密度の空間分布の測定方法として、金属探針からなるプローブをプラズマに挿入して直流電圧をかけ、プラズマから流入する電流を調べるラングミュアプローブ法が用いられてきた。しかし、材料プロセス用プラズマにこの方法を適用しようとすると、探針に絶縁膜が付着して電流が流れず、実用的ではない。一方、絶縁膜堆積に左右されずに電子密度を測定できる方法としてマイクロ波干渉法がある。マイクロ波干渉法では、プラズマ処理装置のチャンバーに設けられた窓からマイクロ波を入射し、プラズマを通過して対向する窓から出てくるマイクロ波の位相遅れを測定することにより、電子密度の平均値が得られるが、電子密度の場所による違いを測定する空間分解測定はできない。
【0004】
本願の発明者らは、絶縁膜がついても電子密度の空間分解測定ができる新しい方法として、プラズマ中にアンテナを挿入し、絶縁膜が付着するプロセスプラズマでもそのマイクロ波共振周波数から電子密度を求めるという、簡易に電子密度の測定が可能な測定プローブを開発した(特許文献1)。これによって、プラズマプロセスの最も基本的な情報である電子の挙動を容易にモニターできるが、この測定プローブではプラズマ内の発光種の種類や密度の情報を得ることができない。
【0005】
プラズマ内の発光種の種類やその密度の情報を得る方法として、プラズマチャンバに設けた測定用ポートのガラス窓からプラズマの発光を分光器に導き、発光する観測したいラジカルあるいは分子に特有な波長のスペクトル線強度をモニターすることによって、当該発光種の挙動を知る発光分光分析法が提案されている(例えば、特許文献2)。本測定方法は、半導体プロセスの量産装置において、プラズマから放射される発光を測定用ポートからモニターしてエッチングの終了時刻を知るエンドポイント(終点)検出にしばしば用いられている。この測定方法によれば、観測した波長から発光種(ラジカル、分子)を同定することができるが、その発光種の密度を測定することができない。発光種の密度を求めるためには、プラズマ中に微量の希ガスを混ぜて、その希ガスの発光強度を同時に測定し、発光線の強度比から発光種密度の相対値を求めるアクチノメトリー法が提案されている(例えば、非特許文献1)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、希ガスを混ぜることによってプラズマ状態が変化してしまい、正確な発光種密度が測定できないおそれがあるという問題がある。そこで、異種ガスを混ぜることなく、発光種の密度を求める方法の開発が求められる。
電子密度を測定可能な測定プローブと発光分光分析法を併用することにより、発光強度と電子密度の比を求めることにより、アクチノメトリー法を用いずに発光種(ラジカルや分子)の密度をモニターできると考えられる。
しかし、
図6に示すように、発光分光分析法によれば、分光器には測定用ポートを介して視野角θ(例えば〜25°)の中に入っているプラズマの光が導入されるが、光ファイバやCCDカメラなどの検出器から離れるほど光量は激減するので、測定用ポートの極近くの領域Aの情報を検知していることになり、内奥にあるプラズマの状態を検知することができない。一方、電子密度を測定可能な測定プローブにより検出されるのは測定プローブ前面の数mmの領域Bにあるプラズマの密度である。プラズマは不均一であって電子密度や発光種密度は領域Aと領域Bで異なる値を示すため、領域Aの発光強度と領域Bの電子密度の比をとっても、領域Aの発光種密度を正しく評価することはできない。つまり、同じ位置で発光強度と電子密度を測って比をとらないと発光種密度の局所的な値を得ることができないため、
図6に示す測定方法ではプラズマ中の発光種の分布を調べる空間分解測定を正確に行うことができない。
測定したい発光種の密度を測定する他の技術としては、外部から目的とする粒子に特有な波長の光を照射し、その吸収率から測定する吸収分光法がある。この場合は光の吸収路に沿った平均密度しか得られない。また、測りたい粒子種に固有な波長の強力なレーザーを照射したとき、当該粒子種に特有な波長の蛍光が放射されるのを利用して粒子密度の局所的な値を測定するレーザー誘起蛍光(LIF)法が知られている。この方法で粒子の密度分布を得るには照射レーザーを掃引しながら受光系も動かす必要があり、煩雑で高度な測定システムを構築しなければならない。更に、高価なレーザー光源と高度の光学技術を必要とするので、量産装置用の簡易モニターには不向きである。
【0009】
そこで本発明は、電子密度、発光種の種類及びその密度の空間分解測定を正確に行うことができる簡易モニターとしてのプラズマ状態測定プローブ及びプラズマ状態測定装置を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、プラズマの状態を測定するためのプラズマ状態測定プローブであって、導体板にスロットとこのスロットの一端部に設けられたスロットの幅よりも大きく形成された開放部とからなる半開放端スロットを備えたアンテナ部と、前記アンテナ部に同軸ケーブルの外皮導体を接続するとともに前記開放部内に同軸ケーブルの芯線の先端部を配置することにより同軸接合した同軸結合部と、を備えた電子密度測定部と、前記アンテナ部から先端が露出するように配置されたファイバ状またはロッド状に形成された光伝送路を備え前記電子密度測定部と一体的に形成されたプラズマ発光測定部と、が設けられ、前記電子密度測定部を用いて、前記同軸ケーブルにより前記アンテナに周波数を掃引しながら高周波パワーを供給することにより電界励起し、前記アンテナから反射されるパワーにより得られる反射係数のスペクトルから前記アンテナに対応する共振周波数を測定するとともに、前記プラズマ発光測定部を用いてプラズマ中の発光種の発光スペクトルを検出可能に構成された、という技術的手段を用いる。
【0011】
請求項1に記載する発明によれば、電子密度測定部を用いて電界励起したときの共振周波数を測定して、その共振周波数に基づいてプラズマ電子密度を測定することができる。また、プラズマ発光測定部によりプラズマ中の発光種の発光を検出し、発光種の種類及びその密度を測定することができる。電子密度測定部とプラズマ発光測定部とは一体的に形成されているので、プラズマ処理を行うチャンバーに1箇所の測定ポートを設けるだけで、プラズマ中の同じ場所の電子密度、発光種の種類及びその密度を測定することができ、同一プラズマ条件下で簡易に正確な空間分解測定を行うことができる。
【0012】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載のプラズマ状態測定プローブにおいて、前記光伝送路の先端を前記開放部内に配置する、という技術的手段を用いる。
【0013】
請求項2に記載の発明によれば、光伝送路の先端を開放部内に配置して露出させているため、プラズマ状態測定プローブを小型化することができる。また、アンテナに形成された開放部を利用するため、電子密度測定部による測定に影響を及ぼすことがなく好ましい。
【0014】
請求項3に記載の発明では、請求項1または請求項2に記載のプラズマ状態測定プローブにおいて、透光性を有する誘電体からなり、前記アンテナ部及び前記光伝送路の前面を覆うカバーを備えた、という技術的手段を用いる。
【0015】
請求項3に記載の発明によれば、プラズマ状態測定プローブの内部にプラズマが侵入することによる測定誤差をなくすことができるため好ましい。また、金属不純物の発生を嫌う半導体プロセス等に用いる場合に好適である。
【0016】
請求項4に記載の発明では、請求項1ないし請求項3のいずれか1つに記載のプラズマ電子密度測定プローブにおいて、プラズマ処理装置内部でプラズマ状態測定プローブの位置を可動な状態で、プラズマ処理装置のポートに対して取付可能に構成された、という技術的手段を用いる。
【0017】
請求項4に記載の発明によれば、測定プローブの位置を動かしながら測定を行うことができるので、同一プラズマ条件下で簡易に正確な空間分解測定を行うことができる。
【0018】
請求項5に記載の発明では、プラズマ状態測定装置であって、請求項1ないし請求項4のいずれか1つに記載のプラズマ電子密度測定プローブと、前記アンテナに、周波数を掃引しながら高周波パワーを供給する高周波発振器と、前記光伝送路によりプラズマの発光を導入し、分光スペクトルを測定する分光器と、前記アンテナから反射されるパワーにより得られる反射係数のスペクトルから、前記アンテナの共振周波数を測定し、前記共振周波数に基づいてプラズマの電子密度を算出するとともに、前記分光スペクトルに基づいて発光種の種類及び発光種密度を測定するプラズマ特性算出部と、を備えた、という技術的手段を用いる。
【0019】
請求項5に記載の発明によれば、請求項1ないし請求項4のいずれか1つに記載のプラズマ電子密度測定プローブを用い、プラズマ処理を行うチャンバーに1箇所の測定ポートを設けるだけで、プラズマ中の同じ場所の電子密度、発光種の種類及びその密度を測定することができ、正確な空間分解測定を行うことができる。これにより、請求項1ないし請求項4のいずれか1つに記載のプラズマ電子密度測定プローブの効果を奏する測定装置を実現することができる。更に、プラズマ処理装置に、電子密度、発光種の種類及びその密度などプラズマ状態を示す情報を送出し、プラズマ生成用の高周波パワー(放電電力)やガス圧などのプラズマ状態を支配する因子を制御することもできる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明のプラズマ状態測定プローブ及びプラズマ状態測定装置について、図を参照して説明する。
【0022】
(プラズマ状態測定装置の構成)
図1に示すように、プラズマ状態測定装置1は、プラズマ処理装置30のチャンバー31内部に取り付けられているプラズマ状態測定プローブ10(以下、測定プローブ10、という)と、測定プローブ10と接続され、チャンバー31外部に配設されているプローブ制御装置20とを備えている。
【0023】
プラズマ処理装置30は、放電用電源により生成されたプラズマPと被処理体を内部に有するチャンバー31と、放電電力などプラズマ密度の制御因子を制御する制御部32とを備えている。
【0024】
測定プローブ10は、先端がプラズマ内に配置されるように、またはチャンバー31内壁面と一致するように、チャンバー31に取り付けられており、同軸ケーブル13及び光伝送路14を介してプローブ制御装置20に接続されている。
【0025】
プローブ制御装置20は、周波数掃引式の高周波発振器21、方向性結合器22、減衰器23、フィルタ24、反射係数スペクトル表示部25、プラズマ特性算出部26及び分光器27を備えており、それぞれが
図1に示すように接続されている。
【0026】
高周波発振器21は、所定の周波数範囲、例えば、100kHzから3GHzまで、周波数を掃引しながらパワーを供給する。高周波発振器21により出力された高周波パワーは、方向性結合器22、減衰器23、フィルタ24を経て、測定プローブ10に印加される。高周波発振器21から出力される高周波パワーは反射係数スペクトル表示部25に送られ、その周波数はプラズマ特性算出部26に送出される。
【0027】
方向性結合器22は、測定プローブ10から供給された高周波パワーのプラズマによる反射率の周波数変化を検出し、反射係数スペクトル表示部25へ出力する。
【0028】
減衰器23は、測定プローブ10へ送り込む測定用高周波パワーの量を調整する。フィルタ24は、測定プローブ10を経由してプローブ制御装置20へ混入してくるプラズマ励起用の高周波信号雑音を除去する。
【0029】
反射係数スペクトル表示部25は、測定プローブ10の反射率の周波数変化を共振スペクトルとして検出する。
【0030】
分光器27は、光伝送路14により受光したプラズマ発光を分光し、その分光されたプラズマ発光スペクトルをプラズマ特性算出部26に送出する。
【0031】
プラズマ特性算出部26は、反射係数スペクトル表示部25から送出された共振スペクトルに基づいて共振周波数を求め、これらに基づいて、後述する測定原理により、プラズマの電子密度を算出する。また、分光器27から送出されたプラズマ発光の分光スペクトルに基づいて、発光分光法により発光種特有な波長のスペクトル線強度をモニターし、プラズマの発光種の種類及びその密度を測定する。
【0032】
プラズマ特性算出部26は、プラズマ処理装置30の制御部32に接続されており、プラズマ特性算出部26において算出された電子密度は、制御部32に送出される。制御部32は測定された電子密度、発光種の種類及びその密度などプラズマ状態を示す情報に基づいて、プラズマ生成用の高周波パワー(放電電力)やガス圧などのプラズマ状態を支配する因子を制御することができる。
【0033】
(プラズマ状態測定プローブの構成)
測定プローブ10は、
図2に示すように、電子密度を測定するための電子密度測定部10Aとプラズマの発光種から発せられるプラズマ発光を測定するためのプラズマ発光測定部10Bとを備えている。
【0034】
電子密度測定部10Aは、導体板からなる面状のアンテナ部11、アンテナ部11を電界励起するための同軸結合部12及びアンテナ部11に給電し反射信号を受けるための同軸ケーブル13を備え、プラズマ発光測定部10Bは光伝送路14を備えている。光伝送路14として、ファイバ状に形成された光ファイバやロッド状の光伝送路、例えば、可撓性に乏しい石英円柱、などを採用することができる。測定プローブ10が誘電体カバー16を備える構成では、電子密度測定部10A及びプラズマ発光測定部10Bはそれぞれ誘電体カバー16を備えている。ここで、アンテナ部11から見て、測定対象のプラズマ側を前方、反対側を後方とする。プラズマの電子密度測定時には、アンテナ部11の前面は測定対象のプラズマ(比誘電率ε
p)で満たされている。
【0035】
アンテナ部11は、直径dの薄い導体円板からなり、溝状に形成されたスロット11aと、スロット11aの一端にスロット11aよりも幅広く形成された開放部11bとにより半開放端スロット11cが形成されている。
【0036】
本実施形態では、スロット11aは主にスパイラル状に形成されており、先端部に長さpの半径方向の直線状スロット11dが形成されている。また、開放部11bは、導体円板の中心部に円形状に形成されており、スロット11aの直線状スロット11dで接続されている。スロット11aをスパイラル状に形成することにより、面積の小さいアンテナ部11に長いスロット11aを形成することができるので、測定プローブ10を小型化することができる。ここで、長さp=0としてスパイラル状のスロット11aを開放部11bに直接接続することもできる。
【0037】
アンテナ部11は、導体板であればよく、例えば、ステンレス鋼で形成することができる。その他、金、白金、タングステン、モリブデン、タンタルなどの耐食性金属で形成すれば、プラズマによる腐食を受けにくく寿命を長くすることができる。
【0038】
開放部11bには、アンテナ部11の後方より同軸ケーブル13が配置され、開放部11bの中心に芯線13aの先端部が露出している。同軸ケーブル13の外皮導体13bは、アンテナ部11を接地し、これらにより同軸結合部12が構成されている。
【0039】
本実施形態では、同軸結合部12はアンテナ部11の後方に設けられ、外皮導体13bが接続された外部導体12aは、アンテナ部11を底面とする筒状に形成されている。
【0040】
光伝送路14は、導入パイプ15の中に同軸ケーブル13とともに挿入され、プラズマが放射する光を受光できるようにその先端が開放部11bから露出し、開放部11b内部に芯線13aの先端部と隣接するように設置されている。
【0041】
アンテナ11及び光伝送路14の前面は、プローブ10内部へのプラズマ侵入を防ぐために、石英などの透光性を有する誘電体カバー16で覆われている。これは、金属不純物の発生を嫌う半導体プロセス等の場合に特に好適である。
【0042】
同軸結合部12の長さhが同軸結合部12内における電磁波の1/4波長の偶数倍になるように同軸結合部12を構成すると、同軸ケーブル13の芯線13aの先端の電界が最大になり、半開放端スロットの共振が強く起きるので、大きい共振信号が得られることとなり好ましい。
【0043】
測定プローブ10は、チャンバー31の測定用ポート31aからアンテナ11が前面となるように気密に挿入され、前後方向に可動に保持される。例えば、測定プローブ10は、太さが一様な導入パイプ15において測定用ポート31aのシール部材を介して水平方向に可動に保持される。
【0044】
(プラズマ状態の測定方法)
測定プローブ10を用いて、測定プローブ10の前面の数mm程度の領域のプラズマに関する局所情報として、電子密度、電子温度などの電子状態、発光種の種類の同定とその密度を同時に測定することができる。
【0045】
電子密度の測定方法について説明する。まず、測定プローブ10の先端を測定領域まで挿入する。電子密度は、半開放端スロット11cを励起する同軸型電界励起法により測定する。高周波発振器21により周波数を掃引しながら同軸ケーブル13により高周波パワーを供給すると、同軸結合部12はマイクロ波共振器を形成し、アンテナ11の後方面にマイクロ波表面電流が流れる。この表面電流は、開放部11bにより切断されるため、円周に沿った強いマイクロ波電界が発生し、その電界が開放部11bを励振する。
【0046】
反射パワーは、方向性結合器22において、測定プローブ10から供給される高周波パワーのプラズマによる反射率の周波数変化として検出され、反射係数スペクトル表示部25において、反射率の周波数変化を共振スペクトルとして検出する。
【0047】
励起された半開放端スロット11cは、マイクロ波の波長がスロット11aの長さであるアンテナ長の1/4となるときに周波数fにおいて共振し反射パワーが共鳴的に減少する。プラズマ特性算出部26において、共振周波数fを求める。
【0048】
マイクロ波の共振周波数fは、アンテナ11周囲の媒質の誘電率で決まり、プラズマの誘電率は電子密度の関数であるから、電子密度が変わると共振周波数fが真空のときの共振周波数f
0から変化する。この変化量を測定することにより電子密度を求めることができる。共振周波数fに基づいて、プラズマ中の電子密度n
eを算出することができる。
【0049】
低圧力のプラズマの電子密度を測定する場合は、下記の式により算出することができる。ここで、「低圧力のプラズマ」とは、電子の衝突周波数がアンテナの共振周波数より小さい状態であるプラズマを示す。定数γは、アンテナ長35mm、石英の誘電体カバー16の厚さが0.2mmのときに0.159となる。
【0051】
次に、プラズマ内の発光種の種類及びその密度の測定方法について説明する。まず、プラズマの発光種に起因する発光を、プラズマに面して先端が露出した光伝送路14により分光器27に導く。
【0052】
分光器27では、光伝送路14により受光したプラズマ発光を分光し、その分光されたプラズマ発光スペクトルをプラズマ特性算出部26に送出する。
【0053】
プラズマ特性算出部26では、分光器27から送出されたプラズマ発光スペクトルに基づいて、発光分光法により発光種特有な特定波長域のスペクトル線強度をモニターし、プラズマの発光種の種類及びその密度を測定する。
【0054】
プラズマの発光は、電子とラジカルの衝突によって生じ、発光強度I
rは電子密度n
e及び発光種の密度n
rに比例し下式で表わされる。ここでαは、発光種の種類と電子温度によって決まる比例係数である。
【0056】
発光強度I
rが強いほど発光種の密度n
rが高いと言えるが、同じ発光種密度でも電子密度が高いと発光が強くなる。したがって、電子密度の情報がない限り、発光強度だけでは発光種の密度を評価することはできない。
【0057】
本発明の測定プローブ10では、同一場所(例えば、プローブ前面1〜5mmの領域)の電子密度が測定されているため、発光強度と電子密度との比をとることにより、発光種の密度を測定することができる。アクチノメトリー法のように希ガスを混合する必要がないので、プラズマ状態が変化してしまうおそれがない。
【0058】
プラズマ特性算出部26は、プラズマ処理装置30の制御部32に接続されており、プラズマ特性算出部26において算出された電子密度などの電子状態の情報、発光種の種類及びその密度は、制御部32に送出される。制御部32は測定された電子密度、発光種の種類及びその密度などプラズマ状態を示す情報に基づいて、プラズマ生成用の高周波パワー(放電電力)やガス圧などのプラズマ状態を支配する因子を制御することができる。
【0059】
測定プローブ10をチャンバー31内の所望の位置に動かして測定位置を変えることにより、電子密度、発光種の種類及びその密度の空間分解測定を容易に行うことができる。また、測定に際して複数の測定用ポートが不要で単一のポートで済むことになり、ポート数が厳しく制限される半導体プロセスの量産装置に好適に採用することができる。
【0060】
ここで、測定プローブ10は、低圧力プラズマのみならず大気圧プラズマにも適用可能である。また、希ガスを微量添加してアクチノメトリー法を用いることにより電子温度の評価を行うこともできる。
【0061】
更に、測定プローブ10を用いて成膜プロセスにおける膜厚測定を行うこともできる。例えば、アンテナ部11をプラズマ処理を行う被処理品の近傍に配置し、アンテナ部11(誘電体カバー16を備えた構成では、誘電体カバー16)にも成膜をされるようにすると、膜厚の増加に伴い測定される共振周波数fが低下する。この共振周波数fの低下と膜厚の関係をあらかじめ取得しておくことにより、インプロセスで膜厚をモニターすることもできる。
【0062】
(変更例)
本実施形態では、スロット11aはスパイラル状に形成されているが、これに限定されるものではない。例えば、ジグザグなど他の形状で屈曲して形成することによっても、面積の小さいアンテナ部11に長いスロット11aを形成することができるので、測定プローブ10を小型化することができる。また、開放部11bは、円形状に形成されているが、これに限定されるものではない。例えば、楕円形、矩形状に形成することもできる。
【0063】
同軸結合部12の外部導体12aの内部に、真空(比誘電率1)よりも高い比誘電率ε
1を有する円柱状の誘電体を芯線13a及び光伝送路14を覆うように充填する構成を採用することができる。誘電体としては、石英、アルミナなど、比誘電率の高い材料を好適に用いることができる。これによれば、プラズマの比誘電率と充填された誘電体の比誘電率との平均の比誘電率を大きくすることができるので、共振周波数fを下げることができる。これにより、高周波数に対応した高価なネットワークアナライザを用いなくても、汎用のネットワークアナライザによりプラズマの電子密度n
eを測定することができる。また、測定プローブ10の内部にプラズマが侵入するおそれもないため、誘電体カバー16を設けなくてもよい。
【0064】
[実施形態の効果]
本発明の測定プローブ10及び測定プローブ10を備えたプラズマ状態測定装置1によれば、電子密度測定部を用いて電界励起したときの共振周波数を測定して、その共振周波数に基づいてプラズマ電子密度を測定することができる。また、プラズマ発光測定部10Bによりプラズマ中の発光種の発光を検出し、発光種の種類及びその密度を測定することができる。電子密度測定部10Aとプラズマ発光測定部10Bとは一体的に形成されているので、プラズマ処理を行うチャンバーに1箇所の測定用ポートを設けるだけで、プラズマ中の同じ場所の電子密度、発光種の種類及びその密度を測定することができ、同一プラズマ条件下で簡易に正確な空間分解測定を行うことができる。
更に、プラズマ状態測定装置1からプラズマ処理装置30に、電子密度、発光種の種類及びその密度などプラズマ状態を示す情報を送出し、プラズマ生成用の高周波パワー(放電電力)やガス圧などのプラズマ状態を支配する因子を制御することもできる。
【実施例】
【0065】
半導体プロセスの一つであるレジストアッシング用のプラズマ装置に、本発明の測定プローブを装着しておこなった実験例を示す。直径50cmの金属円筒容器内に、2.45GHzのマイクロ波放電によってプラズマを生成する。
図4のように、測定プローブは、金属円筒容器側面に設けられた測定用ポートから半径方向に挿入し、アンテナ部を金属円筒容器の中心部に配置した。測定プローブの先端部の外径は16mm、アンテナ長は100mm、スロットの幅は0.3mm、開口部は直径2.5mmの円形である。光伝送路として、外径0.6mm、視野角25.4°の光ファイバを用いた。
【0066】
プラズマによるクリーニングを模擬するために、まず、メタン(CH
4)放電を30分行い、厚さ約200nmの炭化水素膜を、ウエハ上と金属円筒容器内面に堆積させた。次に酸素(O
2)を導入して60分間放電し、堆積した炭化水素膜を除去するクリーニングを行った。クリーニングを開始してから3分経過後のプラズマ発光を分光器により分光して取得した発光スペクトルを
図3に示す。O
2分子の分解で生じたO原子の発光(λ=777.19nm)、O原子と壁上の炭化水素膜の反応で生じたCO分子の発光(λ=519.80nm)、H原子からの発光(H
α線、H
β線)を検出することができた。
【0067】
酸素プラズマによる炭化水素膜アッシングの際に発生するラジカル、分子の代表例として、H
α線(λ=656.28nm)とCO発光の強度を縦軸にとり、酸素のクリーニング放電を開始してからの時間を横軸にとって、発光強度の経時変化を調べた結果を
図4(A)に示す。H
α、COともに放電時間(クリーニング時間)とともに減少し、約45分後に検出されなくなった。このことから、約45分で壁に付着した炭化水素膜は消失し、クリーニングが終了したと判断される。このように、クリーニングのエンドポイント(終点)検出に有効に用いることができることが確認された。
【0068】
クリーニング放電中の電子密度の経時変化は
図4(B)のように得られる。ここで、測定プローブはメタン放電中からプラズマに挿入されていたので、アンテナ表面には炭化水素膜(厚さ約200nm)が付着しているが、絶縁膜が付着していても電子密度を測定可能であった。電子密度は時間の経過とともに増加し、約45分後にエンドポイントに達するとほぼ一定値に落ち着くことがわかる。電子密度の増加は、クリーニングが進むにつれて壁から放出されるCO、H
2O、H
2などのガスが減少するので、それらの解離に消費されるエネルギーが減り、その分だけプラズマの電離生成に使われるエネルギーが増えるためと理解される。
図4(A)の発光強度を
図4(B)の電子密度で除することにより、アクチノメトリー法を使わずに発光種(活性種)の密度を求めることができる。発光種密度の測定結果を
図5に示す。
図5(A)はH原子密度、
図5(B)はCO分子密度をそれぞれ発光強度と比較して示した図であり、それぞれ時間0の値で規格化した値を示す。H原子、CO分子ともに、発光強度の低下に比べ発光種密度の低下度合いが大きく、発光強度のみで相対的な評価を行う場合に比べ、より正確に発光種密度を評価することができることが確認された。