特許第6097103号(P6097103)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6097103
(24)【登録日】2017年2月24日
(45)【発行日】2017年3月15日
(54)【発明の名称】土試料採取装置
(51)【国際特許分類】
   E02D 1/04 20060101AFI20170306BHJP
   G01N 1/08 20060101ALI20170306BHJP
【FI】
   E02D1/04
   G01N1/08 B
【請求項の数】4
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-49805(P2013-49805)
(22)【出願日】2013年3月13日
(65)【公開番号】特開2014-173398(P2014-173398A)
(43)【公開日】2014年9月22日
【審査請求日】2016年3月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】390025759
【氏名又は名称】株式会社ワイビーエム
(74)【代理人】
【識別番号】100093687
【弁理士】
【氏名又は名称】富崎 元成
(74)【代理人】
【識別番号】100106770
【弁理士】
【氏名又は名称】円城寺 貞夫
(74)【代理人】
【識別番号】100139789
【弁理士】
【氏名又は名称】町田 光信
(72)【発明者】
【氏名】奈須 徹夫
(72)【発明者】
【氏名】永石 孝司
【審査官】 喜々津 徳胤
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−332392(JP,A)
【文献】 特開2006−283426(JP,A)
【文献】 特開平11−303055(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D1/04
G01N1/08
E21B49/02−49/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
土質試験機のロッドの下端に取付けられて、予め地盤に形成された調査孔、又は調査孔の無い地盤の所望深度の土試料を採取するための土試料採取装置において、
前記ロッドの下端にその上端が連結可能な中実棒状のシャフトと、
前記シャフトの外周面に軸方向に摺動可能に外嵌された中空筒状の外筒体と、
前記外筒体の内周面と前記シャフトの外周面との間に介挿され、外筒体の内周面とシャフトの外周面に対して相対回転可能な中空筒状の内筒体と、
前記内筒体の内部空間に形成され土試料を収容する採取室と、
前記内筒体の外周面から内筒体の採取室に貫通して形成され、採取室に対する土試料の入口となる内採取口と、
前記外筒体の外周面から外筒体の内周面に貫通して形成され、土試料の入口となる外採取口と、
前記内採取口の周縁から内筒体の半径方向外側に延長して形成され、前記外採取口から半径方向外側に突出して形成された採取刃と、
前記外筒体の下端に着脱可能に取り付けられ、前記シャフトに対して前記外筒体を軸方向の上昇端に摺動させた時に、その上端が前記シャフトの下端に当接可能で、その下端が地盤に打ち込み可能なコーンとを備え、
前記外筒体が所望深度に達したら、前記外筒体に対して前記シャフトを軸方向の上昇端まで摺動させると、前記内筒体の採取室と内採取口とが連通し、前記内筒体の採取室に地中の土試料が取り込み可能になる
ことを特徴とする土試料採取装置。
【請求項2】
請求項1に記載の土試料採取装置において、
前記シャフトに対して前記外筒体を軸方向の上昇端に摺動させ、前記シャフトの外周面に対して前記外筒体の内周面を所定角度相対回転させると、前記シャフトに対する前記外筒体の軸方向の摺動が阻止される
ことを特徴とする土試料採取装置。
【請求項3】
請求項2に記載の土試料採取装置において、
前記シャフトの外周面に形成され、前記シャフトの中心軸線に対して平行で中心軸線方向に長いキー溝と、
前記外筒体に固定され、前記キー溝に案内されて前記シャフトの軸方向に摺動可能なキーとを備えている
ことを特徴とする土試料採取装置。
【請求項4】
請求項3に記載の土試料採取装置において、
前記キー溝には、
前記シャフトに対する前記外筒体の上昇端位置に、前記キーの幅よりも広い係止溝が前記キー溝に連続して形成され、
前記シャフトに対して前記外筒体を軸方向の上昇端に摺動させ、前記シャフトの外周面に対して前記外筒体の内周面を所定角度相対回転させると、前記係止溝の下端に前記キーの下端が当接して、前記シャフトに対する前記外筒体の軸方向の摺動が阻止される
ことを特徴とする土試料採取装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土質調査に際し、地盤における所望深度の土試料を採取するための土試料採取装置に関し、特に、スウェーデン式サウンディング試験やオートマチック・ラム・サウンディング試験を行う際に形成される調査孔を利用する、あるいは調査孔の無い地盤の土試料採取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
宅地建設予定地等の地盤調査においては、スウェーデン式サウンディング試験と、オートマチック・ラム・サウンディング試験とが代表的な試験方法として知られている。スウェーデン式サウンディング試験は、ロッドに3種類の錘を負荷して自沈させ、自沈停止時には、それ以上の負荷をかけずに試験用ロッドを回転駆動する試験方法である。オートマチック・ラム・サウンディング試験は、ハンマーを自由落下させ、試験用ロッドを打撃して地中に貫入させる試験方法である。
【0003】
スウェーデン式サウンデイング試験は、所定荷重による貫入と回転貫入により、原位置を測定する試験である。住宅地等の地盤の静的貫入抵抗を測定して、その土質の硬軟等を判定し、住宅等の建築地の地盤状況を把握することを目的としている。この試験方法は、装置及び操作が容易で迅速に試験できることから、深さが10m内程度の比較的浅い地盤を対象として、特に戸建住宅地の地盤調査方法として普及している。
【0004】
一方、オートマチック・ラム・サウンディング試験は、動的コーン貫入試験として知られている。試験方法としては、所定の重さのハンマーを所定の高さから落下させることにより、ロッドを地中に貫入させ、このロッドが地中に20cm貫入するのに要する打撃回数を計測する。この打撃回数からN値を求め、このN値から地盤の硬軟を判断するものである。このようなスウェーデン式サウンディング試験やオートマチック・ラム・サウンディング試験では、特許文献1に記載されている土試料採取装置を使用し、貫入試験で形成された調査孔を利用して所望深度の土試料を採取し、土の判別・分類と土の力学的性質を調査する土質試験を行っている。
【0005】
特許文献1に記載の土試料採取装置は、相対回転可能な内管と外管による採取部と、内管外周に開口された内採取口と、外管外周に開口された外採取口と、スウェーデン式サウンディング試験機のロッドと、採取部及びロッドを連結する連結部とで構成されている。内採取口は、外採取口に比べて小面積に開けられると共に、長手方向一側に外方へ採取刃が突出して形成され、内管内には円柱状の採取室が設けられている。
【0006】
このように構成された土試料採取装置を用いて所定深度の土試料を採取するには、内管を回転させて内採取口を外管によって閉じ、採取室を閉室状態としてから調査孔へ挿入する。採取部が所望深度に到達すると、外管を回転させ、内採取口を開口状態とする。この状態で、さらに同方向に外管を回転させると、外管の一側面が採取刃に当接し、外管と内管が同時に回転する。その回転によって、周囲の土試料が採取刃によって内管内の採取室へ取り込まれ、所望深度の土試料が採取可能となる。
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の土試料採取装置には次のような問題があった。すなわち、土試料採取装置を調査孔へ挿入し易くするために、土試料採取装置の外径寸法は調査孔の内径寸法よりも小径に形成されている。従って、土試料採取装置を調査孔の所望深度へ挿入する途中で、所望深度以外の深度で外管が回転し、内採取口が所望深度以外の深度で開口状態となってしまうことがあり、所望深度以外の土試料が採取されてしまうという問題があった。
【0008】
また、液状化を起こす地層では、調査孔が崩壊してしまうため、土試料採取装置を打撃して調査孔に挿入する必要がある。しかしながら、特許文献1に記載の土試料採取装置は、採取した土試料を収容するための空洞状の採取部を形成するために、薄肉で中空円筒状の内管と外管で構成されている。従って、剛性が小さく、挿入時の打撃力で土試料採取装置が変形してしまう。その結果、内管と外管による相対回転が出来なくなって、土試料採取装置としての機能が果たせなくなったり、土試料採取装置の耐久性が低下してしまうという問題があった。また、土試料採取装置を打撃して調査孔に挿入する場合にも、土試料採取装置を調査孔の所望深度まで打撃する途中で、所望深度以外の深度で外管が回転して、内採取口が所望深度以外の深度で開口状態となってしまい、所望深度以外の土試料が採取されてしまうという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004−332392号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、土試料採取装置を打撃して調査孔、又は調査孔のない地盤に挿入しても、打撃力で土試料採取装置が変形したり耐久性が低下しないようにした土試料採取装置を提供することにある。また、本発明の他の目的は、土試料採取装置を調査孔、又は調査孔のない地盤の所望深度まで挿入する途中で、所望深度以外の土試料が採取されないようにした土試料採取装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題は以下の手段によって解決される。
すなわち、本発明1の土試料採取装置は、土質試験機のロッドの下端に取付けられて、予め地盤に形成された調査孔、又は調査孔のない地盤の所望深度の土試料を採取するための土試料採取装置において、前記ロッドの下端にその上端が連結可能な中実棒状のシャフトと、前記シャフトの外周面に軸方向に摺動可能に外嵌された中空筒状の外筒体と、前記外筒体の内周面と前記シャフトの外周面との間に介挿され、外筒体の内周面とシャフトの外周面に対して相対回転可能な中空筒状の内筒体と、前記内筒体の内部空間に形成され土試料を収容する採取室と、前記内筒体の外周面から内筒体の採取室に貫通して形成され、採取室に対する土試料の入口となる内採取口と、前記外筒体の外周面から外筒体の内周面に貫通して形成され、土試料の入口となる外採取口と、前記内採取口の周縁から内筒体の半径方向外側に延長して形成され、前記外採取口から半径方向外側に突出して形成された採取刃と、前記外筒体の下端に着脱可能に取り付けられ、前記シャフトに対して前記外筒体を軸方向の上昇端に摺動させた時に、その上端が前記シャフトの下端に当接可能で、その下端が地盤に打ち込み可能なコーンとを備え、前記外筒体が所望深度に達したら、前記外筒体に対して前記シャフトを軸方向の上昇端まで摺動させると、前記内筒体の採取室と内採取口とが連通し、前記内筒体の採取室に地中の土試料が取り込み可能になることを特徴とする。
【0012】
本発明2の土試料採取装置は、本発明1において、前記シャフトに対して前記外筒体を軸方向の上昇端に摺動させ、前記シャフトの外周面に対して前記外筒体の内周面を所定角度相対回転させると、前記シャフトに対する前記外筒体の軸方向の摺動が阻止されることを特徴とする。
【0013】
本発明3の土試料採取装置は、本発明2において、前記シャフトの外周面に形成され、前記シャフトの中心軸線に対して平行で中心軸線方向に長いキー溝と、前記外筒体に固定され、前記キー溝に案内されて前記シャフトの軸方向に摺動可能なキーとを備えていることを特徴とする。
【0014】
本発明4の土試料採取装置は、本発明3において、前記キー溝には、前記シャフトに対する前記外筒体の上昇端位置に、前記キーの幅よりも広い係止溝が前記キー溝に連続して形成され、前記シャフトに対して前記外筒体を軸方向の上昇端に摺動させ、前記シャフトの外周面に対して前記外筒体の内周面を所定角度相対回転させると、前記係止溝の下端に前記キーの下端が当接して、前記シャフトに対する前記外筒体の軸方向の摺動が阻止されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の土試料採取装置は、土質試験機のロッドの下端にその上端が連結可能な中実棒状のシャフトと、シャフトの外周面に軸方向に摺動可能に外嵌された中空筒状の外筒体と、外筒体の内周面とシャフトの外周面との間に介挿され、外筒体の内周面とシャフトの外周面に対して相対回転可能な中空筒状の内筒体と、内筒体の内部空間に形成され土試料を収容する採取室と、内筒体の外周面から内筒体の採取室に貫通して形成され、採取室に対する土試料の入口となる内採取口と、外筒体の外周面から外筒体の内周面に貫通して形成され、土試料の入口となる外採取口と、内採取口の周縁から内筒体の半径方向外側に延長して形成され、外採取口から半径方向外側に突出して形成された採取刃と、外筒体の下端に着脱可能に取り付けられ、シャフトに対して外筒体を軸方向の上昇端に摺動させた時に、その上端がシャフトの下端に当接可能で、その下端が地盤に打ち込み可能なコーンとを備え、外筒体が所望深度に達したら、外筒体に対してシャフトを軸方向の上昇端まで摺動させると、内筒体の採取室と内採取口とが連通し、内筒体の採取室に地中の土試料が取り込み可能になる。
【0016】
従って、コーンに加わる打撃力は、剛性が大きな中実のシャフトで受け、中空で剛性が小さい外筒体、内筒体にはコーンに加わる打撃力は伝わらないため、土試料採取装置が変形したり耐久性が低下したりすることはない。また、土試料採取装置が下降する途中では、シャフトが内筒体の採取室に入り込んでいて、採取室を塞いでいるため、内筒体の採取室に地中の土試料が入り込むことを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1(a)は、本発明の実施の形態の土試料採取装置を示す正面図、図1(b)は図1(a)の右側面図、図1(c)は図1(a)の上部だけを示す左側面図である。
図2図2は、図1(a)のA−A拡大断面図である。
図3図3(a)は、図2のB−B断面図、図3(b)は図2のC−C断面図である。
図4図4(a)は、図1(a)の土試料採取装置にコーンと内筒体を取り付ける前の状態を示す正面図、図4(b)は図4(a)の縦断面図である。
図5図5(a)は、本発明の実施の形態の土試料採取装置のシャフト単体を示す正面図、図5(b)は図5(a)の縦断面図、図5(c)は図5(a)のD−D拡大断面図である。
図6図6(a)は、土試料採取装置の内筒体単体を示す正面図、図6(b)は図6(a)の右側面図、図6(c)は図6(b)のE−E拡大断面図である。
図7図7は、本発明の実施の形態の土試料採取装置の組付け手順を示す説明図である。
図8A図8Aは、図7のF−F拡大断面図であり、外筒体3に内筒体4を組み込む前の状態を示す説明図である。
図8B図8Bは、図7のF−F拡大断面図であり、外筒体3の外採取口34に内筒体4を挿入している状態を示す説明図である。
図9図9(a)は、本発明の実施の形態の土試料採取装置のシャフトの上端をオートマチック・ラム・サウンディング試験機のロッド下端に連結し、外筒体を下降した後、外筒体に内筒体を組み込み、内筒体の内採取口を開いた状態を示す正面図である。図9(b)は、図9(a)の状態から、外筒体を上昇させてシャフトの下端をコーンの上端に突き当てた後、外筒体を回転して係止溝にキーを係止した後、内筒体を回転して、内筒体の内採取口を閉じた状態を示す右側面図である。
図10A図10A(a)から図10A(d)は、図2の拡大断面図相当図であって、本発明の実施の形態の土試料採取装置の動作を示す説明図である。
図10B図10B(e)から図10B(g)は、図10A(d)の後の動作を示す説明図である。
図11A図11A(a)から図11A(c)は、図1(b)の右側面図相当図であって、本発明の実施の形態の土試料採取装置の動作を示す説明図である。
図11B図11B(d)から図11B(f)は、図11A(c)の後の動作を示す説明図である。
図11C図11C(g)は、図11B(f)の後の動作を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1(a)は、本発明の実施の形態の土試料採取装置を示す正面図、図1(b)は図1(a)の右側面図、図1(c)は図1(a)の上部だけを示す左側面図である。図2は、図1(a)のA−A拡大断面図、図3(a)は、図2のB−B断面図、図3(b)は図2のC−C断面図である。図4(a)は、図1(a)の土試料採取装置にコーンと内筒体を取り付ける前の状態を示す正面図、図4(b)は図4(a)の縦断面図である。図1(a)から図4(b)に示すように、本発明の実施の形態の土試料採取装置1は、シャフト2、外筒体3、内筒体4、コーン5、ロッド6で構成されている。
【0019】
本発明の実施の形態の土試料採取装置1は、土質試験機であるスウェーデン式サウンデイング試験機やオートマチック・ラム・サウンディング試験機等のロッド6の下端に取り付けられる。図5(a)は、土試料採取装置1のシャフト2単体を示す正面図、図5(b)は図5(a)の縦断面図、図5(c)は図5(a)のD−D拡大断面図である。
【0020】
図5(a)から図5(c)に示すように、中実棒状のシャフト2は、その上端に形成された大径軸部21、大径軸部21の下方に一体的に形成された小径軸部22で構成されている。大径軸部21には、シャフト2の中心軸線23上に、大径軸部21の上端に開口する雌ねじ24が形成され、この雌ねじ24にロッド6の下端の雄ねじ61がねじ込まれて取り付けられる。
【0021】
小径軸部22は、中心軸線23に平行に長く形成され、小径軸部22の外周面221には、軸方向に摺動可能に、中空筒状の外筒体3と中空筒状のカップリング7が外嵌されている。軸方向の長さが短いカップリング7の下端は、軸方向の長さが長い外筒体3の内周面31に外筒体3の上端側から挿入されている。カップリング7の下端近傍と外筒体3の上端との間に形成されたV形の開先71(図4参照)が、全周溶接によって接合され、外筒体3とカップリング7は一体的に形成されている。カップリング7の内周面72の内径寸法は、小径軸部22の外周面221に適度なすきまばめで外嵌する寸法に形成されている。一方、外筒体3の内周面31の内径寸法は、小径軸部22の外周面221との間に大きな隙間を有する寸法に形成されている。
【0022】
シャフト2の小径軸部22には、キー溝25が形成されている。キー溝25は、シャフト2の中心軸線23に平行に長く形成されている。カップリング7には、キー溝25に内嵌するキー73が固定され、キー73はキー溝25に案内されてシャフト2の軸方向に円滑に摺動可能である。キー73は、軸方向の両端が半円弧状の両丸キーである。キー溝25には、キー溝25の上端に、キー73の幅よりも広い(キー73の幅の約二倍の幅)係止溝26が形成されている。
【0023】
係止溝26は、キー溝25の上端部に連続して形成され、係止溝26の軸方向の長さL1は、キー73の軸方向の長さL2より若干長く形成されている。シャフト2に対してカップリング7、外筒体3を、シャフト2の軸方向の上昇端に摺動させ、シャフト2の外周面221に対してカップリング7、外筒体3を所定角度相対回転させると、係止溝26の下端にキー73の下端が当接して、シャフト2に対するカップリング7、外筒体3の軸方向の摺動が阻止される。
【0024】
外筒体3の下端には雌ねじ32(図3(a)、(b)参照)が形成され、この雌ねじ32にコーン5の雄ねじ51がねじ込まれて、外筒体3に対してコーン5が着脱可能に取り付けられている。上記したように、シャフト2に対して外筒体3を、シャフト2の軸方向の上昇端に摺動させると、コーン5の上端52がシャフト2の下端27に当接する。コーン5の下端は、角度が60度の円錐形に形成されていて、コーン5が地盤に打ち込まれた時に、地盤との間の抵抗が小さくなるようにしている。
【0025】
コーン5を地盤に打ち込む時には、上記したように、シャフト2に対して外筒体3を、シャフト2の軸方向の上昇端に摺動させ、コーン5の上端52をシャフト2の下端27に当接させた状態で打ち込む。従って、コーン5に加わる打撃力は、剛性が大きな中実のシャフト2で受け、中空で剛性が小さい外筒体3、内筒体4にはコーン5に加わる打撃力は伝わらない。従って、土試料採取装置1が変形したり耐久性が低下したりすることはない。
【0026】
図3に示すように、外筒体3の内周面31とシャフト2の小径軸部22の外周面221との間には、中空筒状の内筒体4が介挿されている。内筒体4は、外筒体3の内周面31とシャフト2の外周面221に対して相対回転可能に介挿されている。図6(a)は、内筒体4単体を示す正面図、図6(b)は図6(a)の右側面図、図6(c)は図6(b)のE−E拡大断面図である。内筒体4の内部空間には、土試料を収容する円柱状の採取室41が形成されている。内筒体4には、その外周面42から採取室41に貫通して形成された内採取口43が形成されている。内採取口43は、採取室41に対する土試料の入口となる開口部である。
【0027】
内採取口43は、図6(a)の側面視では矩形形状で、その軸方向の長さL4は、内筒体4の軸方向の長さL3よりも若干短い長さに形成されている。内採取口43には、内筒体4の中心軸線44に沿った周縁431、432のうちの一方の周縁431に、採取刃45が形成されている。採取刃45は内筒体4の周縁431を折り曲げて一体的に形成され、周縁431から半径方向外側に延長して形成されている。
【0028】
図1から図4に示すように、外筒体3には、外筒体3の外周面33から内周面31に貫通して形成された外採取口34が形成されている。外採取口34は土試料の入口となる開口である。前記した内筒体4の採取刃45は、外筒体3の外採取口34から半径方向外側に突出して形成されている。外採取口34は、図1(b)の側面視では矩形形状で、その軸方向の長さL5は、内筒体4の内採取口43の軸方向の長さL4よりも長く形成されている。また、図2に示すように、外採取口34の開口部の角度θ1は、内採取口43の開口部の角度θ2よりも大きく形成されている。すなわち、外採取口34の開口部の面積は、内採取口43の開口部の面積よりも大きく形成されている。
【0029】
図7は、本発明の実施の形態の土試料採取装置1の組付け手順を示す説明図、図8Aは、図7のF−F拡大断面図であり、外筒体3に内筒体4を組み込む前の状態を示す説明図である。図8Bは、図7のF−F拡大断面図であり、外筒体3の外採取口34に内筒体4を挿入している状態を示す説明図である。図7から図8に示すように、シャフト2に対して外筒体3を、シャフト2の軸方向の下降端に摺動させ、コーン5を外筒体3から外すと、外筒体3の外採取口34から内筒体4が組み込み可能になる。
【0030】
次に、図7に示すように、外筒体3の内周面31とシャフト2の小径軸部22の外周面221との間に、中空筒状のカラー8を介挿する。カラー8は、カップリング7の下端と内筒体4の上端との間に介挿され、内筒体4の軸方向の上端位置を位置決めする機能を有している。内筒体4の外周面42の外径寸法D1は、外筒体3の外採取口34の幅W1よりもわずかに小さな寸法(0.1ミリ程度)に形成されている。従って、外筒体3の外採取口34から内筒体4を挿入すると、外筒体3の内周面31に内筒体4をスムーズに組み込むことができる。その後、外筒体3の雌ねじ32にコーン5の雄ねじ51をねじ込む。内筒体4は、カラー8とコーン5に挟持され、外筒体3の内周面31内で、軸方向の位置が決まる。
【0031】
図9(a)は、図7から図8に示す手順で土試料採取装置1の組付けが完了した状態を示し、シャフト2の上端をオートマチック・ラム・サウンディング試験機のロッド6の下端に連結し、内筒体4の内採取口43を開いた状態を示す正面図である。図9(b)は、図9(a)の状態から、外筒体3を上昇させてシャフト2の下端27をコーン5の上端52に突き当てた後、外筒体3を回転して係止溝26にキー73を係止した後、内筒体4を回転し、内筒体4の内採取口43を閉じた状態を示す右側面図である。
【0032】
次に、本発明の実施の形態の土試料採取装置1の動作を説明する。図10A(a)から図10A(d)は、図2の拡大断面図相当図であって、土試料採取装置1の動作を示す説明図である。図10B(e)から図10B(g)は、図10A(d)の後の動作を示す説明図である。図11A(a)から図11A(c)は、図1(b)の右側面図相当図であって、土試料採取装置1の動作を示す説明図である。図11B(d)から図11B(f)は、図11A(c)の後の動作を示す説明図である。図11C(g)は、図11B(f)の後の動作を示す説明図である。
【0033】
[動作手順1]
まず、オートマチック・ラム・サウンディング試験機のロッド6の下端に貫入試験用のコーン(先端角度90度、外径寸法45ミリ)を取り付け、このコーンにハンマーを落下させて打撃し、貫入量20cm毎の打撃回数からN値を求める。この貫入試験が終了したら、ロッド6を引き抜く。次に、10A(a)、図11A(a)に示すように、土試料採取装置1のシャフト2の上端をオートマチック・ラム・サウンディング試験機のロッド6の下端に連結する。次に、外筒体3を下降端まで手で下降した後、外筒体3に内筒体4を組み込む。次に、外筒体3を手で握って上昇端まで上昇させた後、外筒体3を手で時計方向に回転し、キー73を係止溝26に係合させる。次に内筒体4を手で時計方向に回転し、内筒体4の内採取口43を閉じる。
【0034】
[動作手順2]
図10A(b)、図11A(b)に示すように、オートマチック・ラム・サウンディング試験機のロッド6を貫入試験で地盤に既に形成された調査孔に挿入し、この調査孔の所望の深度まで土試料採取装置1を下降しながら、コーン5を地盤に打ち込む。コーン5を地盤に打ち込む時には、上記したように、コーン5の上端52をシャフト2の下端27に当接させた状態で打ち込む。従って、コーン5に加わる打撃力は、剛性が大きな中実のシャフト2で受け、中空で剛性が小さい外筒体3、内筒体4にはコーン5に加わる打撃力は伝わらないため、土試料採取装置1が変形したり耐久性が低下したりすることはない。調査孔のない地盤に打ち込む場合も同じ方法で行う。
【0035】
次に、ロッド6、シャフト2を手で時計方向に回転し、キー73と係止溝26との係合を解除する。次に、外筒体3と内筒体4の組付け品をその深度の地中に残した状態で、オートマチック・ラム・サウンディング試験機のロッド6を上昇させる。シャフト2は、キー溝25がキー73に案内されて真っ直ぐ上昇する。
【0036】
[動作手順3]
図10A(c)、図11A(c)に示すように、オートマチック・ラム・サウンディング試験機のロッド6を時計方向に回転すると、キー溝25がキー73に係合しているため、シャフト2、外筒体3は一体的に時計方向に回転する。内筒体4は、地中側に突出した採取刃45とその周囲の土との間の抵抗によって、停止した状態が維持される。その結果、内筒体4の内採取口43と外筒体3の外採取口34とが連通し、内筒体4の採取室41に地中の土試料を取り込み可能になる。
【0037】
所望の深度まで土試料採取装置1が下降する途中で、内筒体4が土の抵抗等によって回転し、内筒体4の内採取口43と外筒体3の外採取口34とが連通する恐れがある。しかし、土試料採取装置1がコーン5を地盤に打ち込んでいる途中では、シャフト2の小径軸部22が内筒体4の採取室41に入り込んでいて、採取室41を塞いでいる。従って、内採取口43と外採取口34とが連通しても、内筒体4の採取室41に地中の土試料が入り込むことを防止できる。
【0038】
[動作手順4]
図10A(d)、図11B(d)に示すように、オートマチック・ラム・サウンディング試験機のロッド6を時計方向にさらに回転すると、シャフト2、外筒体3が一体的に時計方向にさらに回転する。外筒体3の外採取口34の周縁341、342のうちの一方の周縁341が採取刃45に当接する。
【0039】
[動作手順5]
図10B(e)、図11B(e)に示すように、オートマチック・ラム・サウンディング試験機のロッド6を時計方向にさらに回転すると、外筒体3が採取刃45を押し、シャフト2、外筒体3、内筒体4が一体的に時計方向に回転する。その結果、内筒体4の採取刃45が地中の土試料を掻き集めて、内筒体4の採取室41内に土試料を取り込む。
【0040】
[動作手順6]
図10B(f)、図11B(f)に示すように、オートマチック・ラム・サウンディング試験機のロッド6を反時計方向に回転すると、シャフト2、外筒体3が一体的に反時計方向に回転する。その結果、外筒体3の外採取口34の周縁341、342のうちの他方周縁342が採取刃45に当接し、外筒体3が内筒体4の内採取口43を閉じる。
【0041】
[動作手順7]
図10B(g)、図11C(g)に示すように、オートマチック・ラム・サウンディング試験機のロッド6を上昇させて、土試料が取り込まれた土試料採取装置1を地上に引き上げる。次に内筒体4を手で反時計方向に回転すると、内筒体4の内採取口43が外筒体3の外採取口34に連通し、内筒体4の内採取口43が開く。この状態で、内筒体4の採取室41内の土試料を採取し、土質試験を行って、土の判別・分類と土の力学的性質を調査する。内筒体4の上下を前記した実施の形態とは逆方向(図6(a)、図6(b)に示す内筒体4の上下方向を逆にした状態)にして外筒体3に組み込む場合もある。その場合、土試料の取り込みのためのロッド6の回転方向、及び内採取口43の開閉のための内筒体4の回転方向は、前記した回転方向とは逆方向になる。通常は、ロッド6の雄ねじ61は右ネジを使用する。図10B(e)に示すように、内筒体4の採取室41内に土試料を取り込む時には、ロッド6を時計方向に回転するが、地中の土試料が固くて採取しにくい場合には、無理にロッド6を時計方向に回転すると、ロッド6の雄ねじ61が弛む場合がある。その場合は、ロッド6を反時計方向に回転して土試料を取り込むようにするために、内筒体4の上下を逆方向にして外筒体3に組み込む場合もある。
【0042】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明はこの実施の形態に限定されることはない。本発明の目的、趣旨を逸脱しない範囲内での変更が可能なことはいうまでもない。例えば、前述した本発明の実施の形態では、オートマチック・ラム・サウンディング試験機のロッド6に本発明の実施の形態の土試料採取装置1を取り付けた例について説明したが、スウェーデン式サウンディング試験機等の他の土質試験機に取り付けることができる。
【符号の説明】
【0043】
1…土試料採取装置
2…シャフト
21…大径軸部
22…小径軸部
221…外周面
23…中心軸線
24…雌ねじ
25…キー溝
26…係止溝
27…下端
3…外筒体
31…内周面
32…雌ねじ
33…外周面
34…外採取口
341、342…周縁
4…内筒体
41…採取室(内筒体の内部空間)
42…外周面
43…内採取口
431、432…周縁
44…中心軸線
45…採取刃
5…コーン
51…雄ねじ
52…上端
6…ロッド
61…雄ねじ
7…カップリング
71…開先
72…内周面
73…キー
8…カラー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9
図10A
図10B
図11A
図11B
図11C