特許第6097142号(P6097142)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6097142
(24)【登録日】2017年2月24日
(45)【発行日】2017年3月15日
(54)【発明の名称】光学接続構造及びファイバレーザ装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/02 20060101AFI20170306BHJP
   H01S 3/067 20060101ALI20170306BHJP
【FI】
   G02B6/02 421
   H01S3/067
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-98036(P2013-98036)
(22)【出願日】2013年5月8日
(65)【公開番号】特開2014-219523(P2014-219523A)
(43)【公開日】2014年11月20日
【審査請求日】2015年7月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000226932
【氏名又は名称】日星電気株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】592032636
【氏名又は名称】学校法人トヨタ学園
(72)【発明者】
【氏名】小松 隆宏
(72)【発明者】
【氏名】西川 慎二
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 朋也
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 彰生
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 和也
【審査官】 鈴木 俊光
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/016419(WO,A1)
【文献】 特開2005−201996(JP,A)
【文献】 特開平05−249329(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/02
H01S 3/067
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバの端面に、光学部品の一端を接続した光学接続構造であって、
該光学部品はコアと、コアの周囲に設けられた単層のクラッドを有し、該光学部品のコア径は、該光ファイバのコア径と略等しく、該光学部品のクラッド径は、該光ファイバの最も外周に存在するクラッド径と略等しく、該光学部品のコアの屈折率は、該光ファイバのコアの屈折率より大きく、該光学部品のクラッドの屈折率は、該光ファイバの最も外周に存在するクラッドの屈折率より大きく、該光ファイバのコアと該光学部品のコアは光学接続されていると共に、
該光学部品の他端は、屈折率調整領域を介して該光ファイバとは別の導光部材に光学接続されていることを特徴とする、光学接続構造。
【請求項2】
該光学部品のコアの屈折率とクラッドの屈折率の差が、該光ファイバのコアの屈折率とクラッドの屈折率の差に略等しいことを特徴とする、請求項1に記載の光学接続構造
【請求項3】
請求項1または2に記載の光学接続構造を使用したファイバレーザ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主にファイバレーザ装置において、光ファイバの端面に取り付けられることに
よって、光ファイバを伝搬する光を反射させる機能を有する、光学部品を使用した光学接続構造に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ加工や医療用途などへの適用を目的として、ファイバレーザは、高効率でしかも高ビーム品質のレーザ光を簡単に取り出せるという理由で注目を集めている。
一般的なファイバレーザ装置は、図1に示すような構成をしている。
すなわち、信号光源1から発生した信号光2と、励起光源3から発生する励起光4を、光結合器5を介して希土類元素を添加したコアを有する増幅用光ファイバ7へ入力し、励起光4がコアに添加された希土類元素に作用することで、増幅用光ファイバ7のコアを伝搬する信号光2を増幅し、高エネルギーを有するレーザ光10を得る。
【0003】
増幅用光ファイバ7の出射端にはFBG8、あるいは反射膜、ミラーなどが設けられ、出射端に到達した光の数%を反射するよう構成されていることが多い。これは励起光4、及び増幅が不十分な信号光2を反射させて増幅用光ファイバ7内へ戻し、再度増幅させるためである。なお、増幅用光ファイバ7内に戻った光は増幅用光ファイバの入射端に設けられたFGB6などによって反射され、再び増幅用光ファイバ7の出射端側へと向かう。
【0004】
ところで、増幅用光ファイバの出射端に設けられるFBGは特許文献1に記載されたように、感光剤が添加された材料に紫外線を照射し、グレーティング構造を形成することによって作られるものが多い。紫外線に反応する材料で構成されているため、誤って強い紫外線を照射された際にグレーティング構造が破壊され、FBGとしての機能が失われてしまうという欠点がある。
【0005】
また、反射膜、ミラーなどは特許文献2、3に記載のように、特定の波長を透過し、特定の波長を反射させるなど、波長選択性を有するものが多い。このため、ファイバレーザ装置の使用波長に合わせた設計が都度必要であり、設計の手間・コストが掛かると共に、他の装置に転用しにくいといった問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−326669
【特許文献2】特開2007−250951
【特許文献3】特開2005−109150
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、強い紫外線を照射されてもその機能を失わず、波長選択性も必要としない、光反射機能を有する光学部品を使用した光学接続構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、光ファイバの端面に、コアと、コアの周囲に設けられたクラッドを有し、そのコアの屈折率とクラッドの屈折率がそれぞれ、光ファイバのコアの屈折率とクラッドの屈折率より大きい光学部品を取り付けることで、従来の問題を解消できることを究明した。
【0009】
本発明によって提供される光学接続構造は、光ファイバの端面に、光学部品の一端を光学接続したものであって、該光学部品はコアと、コアの周囲に設けられたクラッドを有し、
この光学部品のコア径とクラッド径は接続される光ファイバのコア径、クラッド径と略等しく、さらに光学部品のコアの屈折率とクラッドの屈折率はそれぞれ、該光ファイバのコアの屈折率とクラッドの屈折率より大きいとともに、
該光学部品の他端には、屈折率調整領域を介して該光ファイバとは別の導光部材が光学接続されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の光学部品にあっては、以下に記載した優れた効果が期待できる。

(1)反射機能が周期的構造によるものではないため、強い紫外線を照射されても反射機能が失われない。

(2)屈折率の差を利用して光を反射させるため、使用波長に依存しない反射機能を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】一般的なファイバレーザ装置の一例である。
図2】本発明に使用される光学部品の一端を、光ファイバに取り付けた図である。
図3】屈折率調整領域を介して、光学部品の他端を導光部材と接続した、本発明の光学接続構造の一例を示す図である。
図4】屈折率調整領域を介して、光学部品の他端を導光部材と接続した本発明の光学接続構造の一例における、各部材の屈折率の変化の様子を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の基本的構成を、添付図面を参照しながら説明する。
図2において、11は光学部品、12は光学部品のコア、13は光学部品のクラッド、14は光ファイバ、15は光ファイバのコア、16は光ファイバのクラッドである。
本発明で特徴的なことは、光学部品11のコア12、クラッド13の屈折率がそれぞれ、光ファイバ14のコア15、クラッド16の屈折率より大きいことである。
【0013】
異なった屈折率を有する媒質が接触する境界面に光が入射する際、その境界面で一部の光が反射する、フレネル反射が発生する。フレネル反射率は、接触した物質の屈折率の差と入射角によって決まる。
屈折率nの媒質からn’の媒質に向かって、その境界面に垂直に光が入射するときのフレネル反射率R(%)は、以下の(1)式で表される。

【数1】

本発明はこのフレネル反射を利用して、光ファイバを伝搬してきた光の一部を反射させるものである。
【0014】
光学部品11のコア12及びクラッド13の材料の屈折率を、光ファイバ14のコア15及びクラッド16の材料の屈折率より高いものとすることで、フレネル反射が発生する。また屈折率の低い材料から高い材料に光が入射する際は全反射が起きないため、一部の光を反射させるのに好ましい。
【0015】
加えて、光学部品11のコア12の屈折率とクラッド13の屈折率の差と、光ファイバ14のコア15の屈折率とクラッド16の屈折率の差を、略等しくすると好ましい。略等しいというのは、完全に等しい場合だけでなく、製造ばらつきによる誤差以下の差が存在する場合も含む。
【0016】
屈折率差を略等しくすることで光学部品11と光ファイバ14の開口数が同程度となり、光ファイバ14のコア15から光学部品11のコア12への光の伝搬がスムーズに行われる。開口数の差が大きい場合、光が光学部品11から漏れたり、多モードになってしまったりするなどの不都合が発生する。
【0017】
学部品11に使用される材料としては、レーザ光を通すという用途が想定されるため、耐熱性・耐久性・光学特性に優れた石英ガラスを使用するのが好ましい。石英ガラスはゲルマニウムなどの添加剤を加えることによって屈折率を上げることができ、使用条件に適した屈折率を得ることができる。
【0018】
フレネル反射率は接触した媒質の屈折率の差と接触面への入射角によって決まるため、使用波長に依存することなく一定の反射率を有する。このため所望する反射率が同じであれば、使用波長が異なる光学系にも使用できるという利点があり、反射膜やミラーのように使用波長ごとに設計を変更する必要が無い。
【0019】
加えて、反射機能を材料固有の値である屈折率を基に得ているため、FBGのように強い紫外線によって反射機能が失われることも無い。
【0020】
学部品11は、実際の使用環境において、その出射側にレーザ出射用光ファイバ、光学窓と言った、別の導光部材17が接続される。この場合、光学部品11と導光部材17との境界面でもフレネル反射が発生すると共に、光学部品11を構成する材料の屈折率よりも導光部材17を構成する材料の屈折率が小さい場合が殆どであるため、全反射も発生しやすい条件である。この光学部品11と導光部材17との境界面における反射は、必要な光を導光部材17へと伝搬させる観点から、少ない方が好ましい。
【0021】
そのため、本発明においては、光学部品11と導光部材17との境界面における反射を減らすために、光学部品11と導光部材17との間に屈折率調整領域20を設ける。この屈折率調整領域20の光学部品11と接する側は、光学部品11と略等しい屈折率を有し、導光部材17側に進むにつれてその屈折率は変化し、導光部材17と接する側は導光部材17と略等しい屈折率を有する。
【0022】
すなわち、屈折率調整領域20と、光学部品11、もしくは導光部材17との境界面における屈折率の差を実質0とし、フレネル反射を低減し、全反射が発生しないようにする。
このような屈折率調整領域20を設けることにより、光学部品11と導光部材17との境界面での反射が低減され、光学部品11から導光部材17への光の伝搬が十分に行われる。
【0023】
この屈折率減少領域20を設ける方法としては、長さ方向に屈折率が変化する光ファイバを接続する、各層毎に屈折率を変えてガラス層を堆積させるといった方法が挙げられるが、光学部品11がコア/クラッド構造を有していることから、光学部品側のコア21、クラッド22の屈折率が、光学部品11のコア12、クラッド13の屈折率に略等しい、長さ方向に屈折率が変化する光ファイバを使用するのが好ましい。
【0024】
また、図3に示したように屈折率調整領域20、導光部材17とも光ファイバである場合は、屈折率調整領域20として使用される光ファイバの導光部材17に接する側のコア21、クラッド22の屈折率を、導光部材17として使用される光ファイバのコア18、クラッド19の屈折率に略等しくする。すなわち、光ファイバ14から導光部材17に至るまでの、各部材における屈折率は、図4に示したように変化する。
【実施例】
【0025】
光ファイバ14として、コア径20μm、クラッド径400μm、NA=0.06の光ファイバを用意した。この光ファイバ14のコア15の屈折率は1.4515、クラッド16の屈折率は1.45である。この光ファイバ14はコア15にYbが添加されており、ファイバレーザ装置の増幅用光ファイバとして使用できるものである。
【0026】
この光ファイバ14に取り付ける光学部品11として、コア径20μm、クラッド径400μm、長さ10mm、コア12の屈折率1.9、クラッド13の屈折率1.8985のものを使用した。
この光学部品11はNA=0.07であり、NA=0.06の光ファイバ14に接続されても光の伝搬がスムーズに行われる範囲である。
【0027】
以上の光ファイバ14と光学部品11を光学接続し、さらに光ファイバを使用した屈折率調整領域20を介して光学部品11と、導光部材7としてレーザ出射用ファイバを光学接続して、図1と同様のファイバレーザ装置に組み込んだ。すなわち、図1において、FBG8の代わりに光学部品11と屈折率調整領域20を使用した状態となる。光ファイバ14と光学部品11の接続面におけるフレネル反射率は、接続面に対して垂直に入光する光で1.8%となる。
【0028】
本発明を使用したファイバレーザ装置のレーザ照射試験を行ったところ、安定したレーザ光が得られ、本発明の光学部品は、反射膜、ミラー、FBGといった従来の反射手段と比較して遜色無い反射機能を有し、ファイバレーザ装置に使用される部品として十分な性能が確保できていることが確認できた。
【0029】
以上の例は、本発明の一例に過ぎず、本発明の思想の範囲内であれば、種々の変更および応用が可能であることは言うまでもない。例えば、本発明に使用される光学部品は、使用されるファイバレーザ装置などに応じて、長さを増減したり、使用材料を変更したりするなど、種々変形されて供されることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0030】
1 信号光源
2 信号光
3 励起光源
4 励起光
5 光結合器
6 FBG
7 増幅用光ファイバ
8 FBG
9 レーザ出射用光ファイバ
10 レーザ光
11 光学部品
12 光学部品のコア
13 光学部品のクラッド
14 光ファイバ
15 光ファイバのコア
16 光ファイバのクラッド
17 導光部材(光ファイバ)
18 導光部材のコア
19 導光部材のクラッド
20 屈折率調整領域
21 屈折率調整領域のコア
22 屈折率調整領域のクラッド
図1
図2
図3
図4