(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6097144
(24)【登録日】2017年2月24日
(45)【発行日】2017年3月15日
(54)【発明の名称】車両用自動変速機の遊星ギヤトレイン
(51)【国際特許分類】
F16H 3/66 20060101AFI20170306BHJP
【FI】
F16H3/66 B
【請求項の数】8
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-99281(P2013-99281)
(22)【出願日】2013年5月9日
(65)【公開番号】特開2014-92273(P2014-92273A)
(43)【公開日】2014年5月19日
【審査請求日】2016年4月1日
(31)【優先権主張番号】10-2012-0124112
(32)【優先日】2012年11月5日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】591251636
【氏名又は名称】現代自動車株式会社
【氏名又は名称原語表記】HYUNDAI MOTOR COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】特許業務法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】盧 明 勳
(72)【発明者】
【氏名】沈 烋 台
(72)【発明者】
【氏名】徐 カン 壽
(72)【発明者】
【氏名】鞠 再 昌
(72)【発明者】
【氏名】李 昌 郁
(72)【発明者】
【氏名】朴 鍾 述
【審査官】
前田 浩
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2009/0082165(US,A1)
【文献】
特開2000−304110(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 3/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの動力の伝達を受ける第1軸と、
前記第1軸と平行に配置される第2軸と、
前記第1軸上に配置されており、選択的に出力要素または固定要素として作動する第1サンギヤと、選択的に出力要素として作動する第1遊星キャリアと、前記第1軸と直接連結されて常に入力要素として作動する第1リングギヤを回転要素として保有する第1遊星ギヤセットと、
前記第2軸上に配置されており、前記第1遊星キャリアと外接ギヤを通じて連結される第2サンギヤと、第2遊星キャリアと、前記第1遊星キャリアおよび第1リングギヤと外接ギヤを通じて選択的に連結される第2リングギヤを回転要素として保有する第2遊星ギヤセットと、
前記第2軸上に配置されており、前記第2リングギヤと連結される第3サンギヤと、前記第2遊星キャリアと選択的に連結されると同時に出力ギヤと直接連結されて出力要素として作動する第3遊星キャリアと、前記第1サンギヤと外接ギヤを通じて選択的に連結される第3リングギヤを回転要素として保有する第3遊星ギヤセットと、
前記外接ギヤを形成する3つのトランスファギヤと、
前記第1、第2、第3遊星ギヤセットの回転要素を相互選択的に連結するか、前記回転要素を変速機ハウジングに選択的に連結する摩擦要素と、を含むことを特徴とする車両用自動変速機の遊星ギヤトレイン。
【請求項2】
前記第1遊星ギヤセットはダブルピニオン遊星ギヤセットからなり、前記第2、第3遊星ギヤセットはシングルピニオン遊星ギヤセットからなることを特徴とする請求項1に記載の車両用自動変速機の遊星ギヤトレイン。
【請求項3】
前記3つのトランスファギヤは、
前記第1リングギヤを第2リングギヤと連結する第1トランスファギヤと、
前記第1遊星キャリアを第2サンギヤと直接連結し、第2リングギヤと選択的に連結する第2トランスファギヤと、
前記第1サンギヤと第3リングギヤを選択的に連結する第3トランスファギヤと、を含むことを特徴とする請求項1に記載の車両用自動変速機の遊星ギヤトレイン。
【請求項4】
前記摩擦要素は、
前記第1サンギヤと変速機ハウジングの間に配置される第1ブレーキと、
前記第1サンギヤと第3トランスファギヤの間に配置される第1クラッチと、
前記第2トランスファギヤと第2リングギヤの間に配置される第2クラッチと、
前記第2遊星キャリアと第3遊星キャリアの間に配置される第3クラッチと、
前記第1トランスファギヤと第2リングギヤの間に配置される第4クラッチと、を含むことを特徴とする請求項3に記載の車両用自動変速機の遊星ギヤトレイン。
【請求項5】
前進1速変速段は前記第1ブレーキと第1、第4クラッチが同時に作動して実現され、
前進2速変速段は前記第1ブレーキと第1、第2クラッチが同時に作動して実現され、
前進3速変速段は前記第1、第2、第4クラッチが同時に作動して実現され、
前進4速変速段は前記第1、第2、第3クラッチが同時に作動して実現され、
前進5速変速段は前記第1、第3、第4クラッチが同時に作動して実現され、
前進6速変速段は前記第2、第3、第4クラッチが同時に作動して実現され、
前進7速変速段は前記第1ブレーキと第3、第4クラッチが同時に作動して実現され、
前進8速変速段は前記第1ブレーキと第2、第3クラッチが同時に作動して実現され、
後進変速段は前記第1ブレーキと第1、第3クラッチが同時に作動して実現されることを特徴とする請求項4に記載の車両用自動変速機の遊星ギヤトレイン。
【請求項6】
エンジンの動力の伝達を受ける第1軸と、
前記第1軸と平行に配置される第2軸と、
前記第1軸上に配置されており、選択的に出力要素または固定要素として作動する第1サンギヤと、選択的に出力要素として作動する第1遊星キャリアと、前記第1軸と直接連結されて常に入力要素として作動する第1リングギヤを保有する第1遊星ギヤセットと、
前記第2軸上に配置されており、前記第1遊星キャリアと連結される第2サンギヤと、第2遊星キャリアと、前記第1遊星キャリアおよび第1リングギヤと選択的に連結される第2リングギヤを保有する第2遊星ギヤセットと、
前記第2軸上に配置されて前記第2リングギヤと連結される第3サンギヤと、前記第2遊星キャリアと選択的に連結されると同時に出力ギヤと直接連結されて出力要素として作動する第3遊星キャリアと、前記第1サンギヤと選択的に連結される第3リングギヤを保有する第3遊星ギヤセットと、
前記第1リングギヤを第2リングギヤと連結する第1トランスファギヤと、
前記第1遊星キャリアを第2サンギヤと直接連結し、第2リングギヤと選択的に連結する第2トランスファギヤと、
前記第1サンギヤと第3リングギヤを選択的に連結する第3トランスファギヤと、
前記第1サンギヤと変速機ハウジングの間に配置される第1ブレーキと、
前記第1サンギヤと第3トランスファギヤの間に配置される第1クラッチと、
前記第2トランスファギヤと第2リングギヤの間に配置される第2クラッチと、
前記第2遊星キャリアと第3遊星キャリアの間に配置される第3クラッチと、
前記第1トランスファギヤと第2リングギヤの間に配置される第4クラッチと、を含むことを特徴とする車両用自動変速機の遊星ギヤトレイン。
【請求項7】
前記第1遊星ギヤセットはダブルピニオン遊星ギヤセットからなり、前記第2、第3遊星ギヤセットはシングルピニオン遊星ギヤセットからなることを特徴とする請求項6に記載の車両用自動変速機の遊星ギヤトレイン。
【請求項8】
前進1速変速段は前記第1ブレーキと第1、第4クラッチが同時に作動して実現され、
前進2速変速段は前記第1ブレーキと第1、第2クラッチが同時に作動して実現され、
前進3速変速段は前記第1、第2、第4クラッチが同時に作動して実現され、
前進4速変速段は前記第1、第2、第3クラッチが同時に作動して実現され、
前進5速変速段は前記第1、第3、第4クラッチが同時に作動して実現され、
前進6速変速段は前記第2、第3、第4クラッチが同時に作動して実現され、
前進7速変速段は前記第1ブレーキと第3、第4クラッチが同時に作動して実現され、
前進8速変速段は前記第1ブレーキと第2、第3クラッチが同時に作動して実現され、
後進変速段は前記第1ブレーキと第1、第3クラッチが同時に作動して実現されることを特徴とする請求項6に記載の車両用自動変速機の遊星ギヤトレイン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両用自動変速機に係り、より詳しくは、全長を縮小して搭載性を向上させ、動力伝達性能向上で燃費を低減させることができるようにした車両用自動変速機の遊星ギヤトレインに関する。
【背景技術】
【0002】
最近、世界的な高油価と排気ガス排出規制が強化されることにより、自動車メーカーは燃費を向上させることができる技術の開発に総力を傾けている。自動変速機における燃費改善は実現可能な変速段が多い多段変速メカニズムを通じて達成することができ、通常の自動変速機の多段変速メカニズムは複数の遊星ギヤセットと摩擦要素の組み合わせで実現される。
【0003】
このような多段変速メカニズムは実現可能な変速段が多いほどより適切な変速比の設計が可能なだけでなく、動力性能および燃費面で優れた車両を実現することができるために、より多くの変速段を実現することができる自動変速機用遊星ギヤトレインの絶え間ない研究が行われている。
【0004】
上記のような多段変速メカニズムを構成する遊星ギヤトレインは同一変速段を実現しても回転要素(サンギヤ、遊星キャリア、リングギヤ)の連結構成によって耐久性、動力伝達効率、大きさなどが変わるため、より堅固で、動力損失がなく、コンパクトに製作するための研究開発が持続されている。
【0005】
しかし、変速段が増えるほど自動変速機内の部品数も増加して、搭載性、原価、重量および動力伝達効率が悪化することがある。特に、部品数が多い遊星ギヤトレインは前輪駆動用車両に搭載するのが難しいこともあるので、部品数を最少化することが自動変速機競争力の必須要件の一つである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−78021号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、相互一定の間隔をおいて平行に配置される第1軸と第2軸に分けて配置される3つの遊星ギヤセット、3つの外接ギヤ、そして5つの摩擦要素を組み合わせて摩擦要素の作動条件および段間比が優れた前進8速および後進1速の変速段を実現することによって、全長を縮小して搭載性を向上させ、動力伝達性能の向上で燃費を低減させることができる車両用自動変速機の遊星ギヤトレインを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明による車両用自動変速機の遊星ギヤトレインは、エンジンの動力の伝達を受ける第1軸と;前記第1軸と平行に配置される第2軸と;前記第1軸上に配置されており、選択的に出力要素または固定要素として作動する第1サンギヤと、選択的に出力要素として作動する第1遊星キャリアと、前記第1軸と直接連結されて常に入力要素として作動する第1リングギヤを回転要素として保有する第1遊星ギヤセットと;前記第2軸上に配置されており、前記第1遊星キャリアと外接ギヤを通じて連結される第2サンギヤと、第2遊星キャリアと、前記第1遊星キャリアおよび第1リングギヤと外接ギヤを通じて選択的に連結される第2リングギヤを回転要素として保有する第2遊星ギヤセットと;前記第2軸上に配置されており、前記第2リングギヤと連結される第3サンギヤと、前記第2遊星キャリアと選択的に連結されると同時に出力ギヤと直接連結されて出力要素として作動する第3遊星キャリアと、前記第1サンギヤと外接ギヤを通じて選択的に連結される第3リングギヤを回転要素として保有する第3遊星ギヤセットと;前記外接ギヤを形成する3つのトランスファギヤと;前記第1、第2、第3遊星ギヤセットの回転要素を相互選択的に連結するか、前記回転要素を変速機ハウジングに選択的に連結する摩擦要素と;を含むことを特徴とする。
【0009】
上述の車両用自動変速機の遊星ギヤトレインにおいて、前記第1遊星ギヤセットはダブルピニオン遊星ギヤセットからなり、前記第2、第3遊星ギヤセットはシングルピニオン遊星ギヤセットからなり得る。前記3つのトランスファギヤは、前記第1リングギヤを第2リングギヤと連結する第1トランスファギヤと;前記第1遊星キャリアを第2サンギヤと直接連結し、第2リングギヤと選択的に連結する第2トランスファギヤと;前記第1サンギヤと第3リングギヤを選択的に連結する第3トランスファギヤと;を含むことができる。前記摩擦要素は、前記第1サンギヤと変速機ハウジングの間に配置される第1ブレーキと;前記第1サンギヤと第3トランスファギヤの間に配置される第1クラッチと;前記第2トランスファギヤと第2リングギヤの間に配置される第2クラッチと;前記第2遊星キャリアと第3遊星キャリアの間に配置される第3クラッチと;前記第1トランスファギヤと第2リングギヤの間に配置される第4クラッチと;を含むことができる。前進1速変速段は前記第1ブレーキと第1、第4クラッチが同時に作動して実現され、前進2速変速段は前記第1ブレーキと第1、第2クラッチが同時に作動して実現され、前進3速変速段は前記第1、第2、第4クラッチが同時に作動して実現され、前進4速変速段は前記第1、第2、第3クラッチが同時に作動して実現され、前進5速変速段は前記第1、第3、第4クラッチが同時に作動して実現され、前進6速変速段は前記第2、第3、第4クラッチが同時に作動して実現され、前進7速変速段は前記第1ブレーキと第3、第4クラッチが同時に作動して実現され、前進8速変速段は前記第1ブレーキと第2、第3クラッチが同時に作動して実現され、後進変速段は前記第1ブレーキと第1、第3クラッチが同時に作動して実現され得る。
【0010】
また、本発明による他の車両用自動変速機の遊星ギヤトレインは、エンジンの動力の伝達を受ける第1軸と;前記第1軸と平行に配置される第2軸と;前記第1軸上に配置されており、選択的に出力要素または固定要素として作動する第1サンギヤと、選択的に出力要素として作動する第1遊星キャリアと、前記第1軸と直接連結されて常に入力要素として作動する第1リングギヤを保有する第1遊星ギヤセットと;前記第2軸上に配置されており、前記第1遊星キャリアと連結される第2サンギヤと、第2遊星キャリアと、前記第1遊星キャリアおよび第1リングギヤと選択的に連結される第2リングギヤを保有する第2遊星ギヤセットと;前記第2軸上に配置されて前記第2リングギヤと連結される第3サンギヤと、前記第2遊星キャリアと選択的に連結されると同時に出力ギヤと直接連結されて出力要素として作動する第3遊星キャリアと、前記第1サンギヤと選択的に連結される第3リングギヤを保有する第3遊星ギヤセットと;前記第1リングギヤを第2リングギヤと連結する第1トランスファギヤと;前記第1遊星キャリアを第2サンギヤと直接連結し、第2リングギヤと選択的に連結する第2トランスファギヤと;前記第1サンギヤと第3リングギヤを選択的に連結する第3トランスファギヤと;前記第1サンギヤと変速機ハウジングの間に配置される第1ブレーキと;前記第1サンギヤと第3トランスファギヤの間に配置される第1クラッチと;前記第2トランスファギヤと第2リングギヤの間に配置される第2クラッチと;前記第2遊星キャリアと第3遊星キャリアの間に配置される第3クラッチと;前記第1トランスファギヤと第2リングギヤの間に配置される第4クラッチと;を含むことを特徴とする。
【0011】
上記車両用自動変速機の遊星ギヤトレインにおいて、前記第1遊星ギヤセットはダブルピニオン遊星ギヤセットからなり、前記第2、第3遊星ギヤセットはシングルピニオン遊星ギヤセットからなり得る。前進1速変速段は前記第1ブレーキと第1、第4クラッチが同時に作動して実現され、前進2速変速段は前記第1ブレーキと第1、第2クラッチが同時に作動して実現され、前進3速変速段は前記第1、第2、第4クラッチが同時に作動して実現され、前進4速変速段は前記第1、第2、第3クラッチが同時に作動して実現され、前進5速変速段は前記第1、第3、第4クラッチが同時に作動して実現され、前進6速変速段は前記第2、第3、第4クラッチが同時に作動して実現され、前進7速変速段は前記第1ブレーキと第3、第4クラッチが同時に作動して実現され、前進8速変速段は前記第1ブレーキと第2、第3クラッチが同時に作動して実現され、後進変速段は前記第1ブレーキと第1、第3クラッチが同時に作動して実現され得る。
【発明の効果】
【0012】
本発明の実施形態による遊星ギヤトレインは、3つの遊星ギヤセットを相互一定の間隔をおいて平行に配置される第1軸と第2軸に分けて配置することによって、全長が縮小されて搭載性を向上させることができる。そして、遊星ギヤセット以外に3つの外接ギヤを適用することによって、自由なギヤ歯数の変更で車両別最適のギヤ比を設定することができ、要求性能条件に合うようにギヤ歯数の変更が可能で発進性能を向上させることができる。したがって、トルクコンバーターを削除し発進クラッチの適用が可能である。また、各変速段で3つの摩擦要素を作動させることによって、非作動摩擦要素を最少化してドラッグトルクを低減させ、動力伝達効率を増大させて燃費を低減させることができる。そして、各摩擦要素の担当トルクを減らすことができるためにコンパクトな設計が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明による遊星ギヤトレインの構成図である。
【
図2】本発明による遊星ギヤトレインに適用される摩擦要素の各変速段別作動表である。
【
図3】本発明による遊星ギヤトレインの前進1速変速段の変速線図である。
【
図4】本発明による遊星ギヤトレインの前進2速変速段の変速線図である。
【
図5】本発明による遊星ギヤトレインの前進3速変速段の変速線図である。
【
図6】本発明による遊星ギヤトレインの前進4速変速段の変速線図である。
【
図7】本発明による遊星ギヤトレインの前進5速変速段の変速線図である。
【
図8】本発明による遊星ギヤトレインの前進6速変速段の変速線図である。
【
図9】本発明による遊星ギヤトレインの前進7速変速段の変速線図である。
【
図10】本発明による遊星ギヤトレインの前進8速変速段の変速線図である。
【
図11】本発明による遊星ギヤトレインの後進変速段の変速線図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好ましい実施形態を添付した図面を参照して詳細に説明する。但し、本実施形態を明確に説明するために説明上不必要な部分は省略し、明細書全体にわたって同一または類似の構成要素については同一の符号を適用して説明する。下記の説明で構成の名称を第1、第2などに区分したことはその構成の名称が同一でこれを区分するためであり、必ずしもその順序に限定されない。
【0015】
図1は本実施形態による遊星ギヤトレインの構成図である。
図1を参照すれば、本実施形態による遊星ギヤトレインは第1、第2、第3遊星ギヤセットPG1、PG2、PG3と、5つの摩擦要素B1、C1、C2、C3、C4と、3つのトランスファギヤTF1、TF2、TF3を含んで構成される。第1遊星ギヤセットPG1は第1軸IS1上に配置され、第2、第3遊星ギヤセットPG2、PG3は第1軸IS1と一定の間隔をおいて平行に配置される第2軸IS2上に配置される。これにより、第1軸IS1から入力される回転動力は第1遊星ギヤセットPG1を通じて第2、第3遊星ギヤセットPG2、PG3に伝達され、第1、第2、第3遊星ギヤセットPG1、PG2、PG3の相互補完作動によって前進8速および後進1速に変速されて出力ギヤOGを通じて出力される。
【0016】
第1遊星ギヤセットPG1はダブルピニオン遊星ギヤセットであって、第1サンギヤS1と、第1リングギヤR1と、第1サンギヤS1と第1リングギヤR1にそれぞれ噛み合う第1ピニオンP1を回転可能に支持する第1遊星キャリアPC1を回転要素として含む。
【0017】
第2遊星ギヤセットPG2はシングルピニオン遊星ギヤセットであって、第2サンギヤS2と、第2リングギヤR2と、第2サンギヤS2と第2リングギヤR2にそれぞれ噛み合う第2ピニオンP2を回転可能に支持する第2遊星キャリアPC2を回転要素として含む。
【0018】
第3遊星ギヤセットPG3はシングルピニオン遊星ギヤセットであって、第3サンギヤS3と、第3リングギヤR3と、第3サンギヤS3と第3リングギヤR3にそれぞれ噛み合う第3ピニオンP3を回転可能に支持する第3遊星キャリアPC3を回転要素として含む。
【0019】
第1リングギヤR1は第1軸IS1と直接連結されて常に入力要素として作動する。そして、第2リングギヤR2と第3サンギヤS3が第2軸IS2を通じて連結され、第2遊星キャリアPC2が第3遊星キャリアPC3と選択的に連結され、第3遊星キャリアPC3が出力ギヤOGと直接連結されて常に出力要素として作動する。
【0020】
第2リングギヤR2と第3サンギヤS3が第2軸IS2を利用して連結されると説明しているが、これに限定されるのではない。即ち、第2リングギヤR2と第3サンギヤS3は第2軸IS2の外周部に相互回転干渉なしに配置される別途の回転部材を通じて連結され得る。
【0021】
また、第1軸IS1を含む第1リングギヤR1は選択的に第2リングギヤR2と外接ギヤを通じて連結され、第1サンギヤS1は選択的に第3リングギヤR3と外接ギヤを通じて連結されると同時に変速機ハウジングHと選択的に連結され、第1遊星キャリアPC1は外接ギヤを通じて第2サンギヤS2と連結されると同時に選択的に第2リングギヤR2と連結される。
【0022】
そして、上記外接ギヤである第1、第2、第3トランスファギヤTF1、TF2、TF3はヘリカルギヤからなり、それぞれ互いに外接する第1、第2、第3トランスファドライブギヤTF1a、TF2a、TF3aと第1、第2、第3トランスファドリブンギヤTF1b、TF2b、TF3bを含んで構成される。
【0023】
第1トランスファギヤTF1は、第1リングギヤR1に直接連結される第1トランスファドライブギヤTF1aと、第2リングギヤR2に選択的に連結される第1トランスファドリブンギヤTF1bを含む。これにより、第1トランスファギヤTF1は第1リングギヤR1と第2リングギヤR2を選択的に連結する。
【0024】
第2トランスファギヤTF2は、第1遊星キャリアPC1に直接連結される第2トランスファドライブギヤTF2aと、第2サンギヤS2に直接連結されると同時に第2リングギヤR2に選択的に連結される第2トランスファドリブンギヤTF2bを含む。これにより、第2トランスファギヤTF2は第1遊星キャリアPC1を第2サンギヤS2に直接連結すると同時に第2リングギヤR2に選択的に連結する。
【0025】
第3トランスファギヤTF3は、第1サンギヤS1に選択的に連結される第3トランスファドライブギヤTF3aと、第3リングギヤR3に直接連結される第3トランスファドリブンギヤTF3bを含む。これにより、第3トランスファギヤTF3は第1サンギヤS1と第3リングギヤR3を選択的に連結する。
【0026】
第1、第2、第3トランスファギヤTF1、TF2、TF3によって連結される回転要素は相互反対方向に回転するようになる。第1、第2、第3トランスファギヤTF1、TF2、TF3のギヤ比は各変速段で要求する変速比によって設定される。そして、摩擦要素B1、C1、C2、C3、C4の連結関係を説明すると次のとおりである。
【0027】
第1ブレーキB1は第1サンギヤS1と変速機ハウジングHの間に配置される。第1クラッチC1は第1サンギヤS1と第3トランスファギヤTF3の間に配置される。第2クラッチC2は第2トランスファギヤTF2と第2リングギヤR2の間に配置される。第3クラッチC3は第2遊星キャリアPC2と第3遊星キャリアPC3の間に配置される。第4クラッチC4は第1トランスファギヤTF1と第2リングギヤR2の間に配置される。
【0028】
第1、第2、第3、第4クラッチC1、C2、C3、C4と第1ブレーキB1からなる摩擦要素それぞれは油圧によって摩擦結合される多板式油圧摩擦結合ユニットからなり得る。
【0029】
図2は本実施形態による遊星ギヤトレインに適用される摩擦要素の各変速段別作動表である。
図2のように、この実施形態による遊星ギヤトレインは各変速段で3つの摩擦要素が作動しながら変速が行われる。前進1速変速段1
STは第1ブレーキB1と第1、第4クラッチC1、C4の同時作動によって達成される。前進2速変速段2
NDは第1ブレーキB1と第1、第2クラッチC1、C2の同時作動によって達成される。前進3速変速段3
RDは第1、第2、第4クラッチC1、C2、C4の同時作動によって達成される。前進4速変速段4
THは第1、第2、第3クラッチC1、C2、C3の同時作動によって達成される。前進5速変速段5
THは第1、第3、第4クラッチC1、C3、C4の同時作動によって達成される。前進6速変速段6
THは第2、第3、第4クラッチC2、C3、C4の同時作動によって達成される。前進7速変速段7
THは第1ブレーキB1と第3、第4クラッチC3、C4の同時作動によって達成される。前進8速変速段8
THは第1ブレーキB1と第2、第3クラッチC2、C3の同時作動によって達成される。後進変速段Revは第1ブレーキB1と第1、第3クラッチC1、C3の同時作動によって達成される。
【0030】
図3乃至
図11は本実施形態による遊星ギヤトレインの各変速段別変速線図であり、遊星ギヤトレインの変速過程をレバー解釈法で示している。
図3乃至
図11を参照すれば、第1遊星ギヤセットPG1の3つの縦線は左側から第1サンギヤS1からなる第1回転要素N1、第1リングギヤR1からなる第2回転要素N2、第1遊星キャリアPC1からなる第3回転要素N3に設定される。
【0031】
そして、第2、第3遊星ギヤセットPG2、PG3は第3クラッチC3の作動如何によって選択的な複合遊星ギヤセットとして作動し、第2、第3遊星ギヤセットPG2、PG3の4つの縦線は左側から第2サンギヤS2からなる第4回転要素N4、第3リングギヤR3からなる第5回転要素N5、第3遊星キャリアPC3からなるか、第2遊星キャリアPC2および第3遊星キャリアPC3からなる第6回転要素N6、第2リングギヤR2と第3サンギヤS3からなる第7回転要素N7に設定される。
【0032】
前進1速変速段から前進3速変速段までは第3クラッチC3が作動しないので、第6回転要素N6は第3遊星キャリアPC3のみに設定される。また、前進4速変速段から前進8速変速段までおよび後進変速段では第3クラッチC3が作動するので、第6回転要素N6は第2、第3遊星キャリアPC2、PC3に設定される。
【0033】
また、中央の横線は回転速度“0”を示し、上側の横線は回転速度“1.0”を示し、下側の横線は回転速度“−1.0”を示す。“−”はエンジンの回転方向と反対の方向に回転することを意味する。回転要素がアイドリングギヤ(Idling Gear)なしに第1、第2、第3トランスファギヤTF1、TF2、TF3を通じて外接で連結されるためである。そして、回転速度“1.0”は、入力軸である第1軸IS1の回転速度と同一な回転速度を示す。第1、第2、第3遊星ギヤセットPG1、PG2、PG3の縦線の間隔は各ギヤ比(サンギヤの歯数/リングギヤの歯数)によって設定される。
【0034】
以下、
図2と
図3乃至
図11を参照して本実施形態による遊星ギヤトレインの各変速段別変速過程を説明する。
【0035】
[前進1速]
図2を参照すれば、前進1速変速段1
STでは第1ブレーキB1と第1、第4クラッチC1、C4が作動する。
図3のように、第1軸IS1の回転速度が第2回転要素N2に入力されると同時に第1ブレーキB1と第1クラッチC1の作動で第1回転要素N1と第5回転要素N5が固定要素として作動する。これにより、第3回転要素N3の回転速度は第2トランスファギヤTF2のギヤ比によって減速されて第4回転要素N4に逆回転速度で入力され、第1軸IS1の回転速度が第4クラッチC4の作動で第1トランスファギヤTF1のギヤ比によって変換されて第7回転要素N7に逆回転速度で入力される。したがって、第3遊星ギヤセットPG3の回転要素は第1変速線SP1を形成しながら、出力要素である第6回転要素N6を通じてD1が出力される。このとき、第2遊星ギヤセットPG2の回転要素は太い点線Tを形成するが、変速には何の影響も与えない。
【0036】
[前進2速]
前進2速変速段2
NDでは前進1速変速段1
STの状態で作動した第4クラッチC4の作動が解除され、第2クラッチC2が作動する。
図4のように、第1軸IS1の回転速度が第2回転要素N2に入力されると同時に第1ブレーキB1と第1クラッチC1の作動で第1回転要素N1と第5回転要素N5が固定要素として作動する。これにより、第3回転要素N3の回転速度は第2トランスファギヤTF2のギヤ比によって減速されて第4回転要素N4に逆回転速度で入力され、第2クラッチC2の作動で第2遊星ギヤセットPG2は直結の状態となる。したがって、第3遊星ギヤセットPG3の回転要素は第2変速線SP2を形成しながら、出力要素である第6回転要素N6を通じてD2が出力される。このとき、第2遊星ギヤセットPG2の回転要素は太い点線Tを形成するが、変速には何の影響も与えない。
【0037】
[前進3速]
前進3速変速段3
RDでは前進2速変速段2
NDの状態で作動した第1ブレーキB1の作動が解除され、第4クラッチC4が作動する。
図5のように、第1軸IS1の回転速度が第2回転要素N2に入力されている状態で第3回転要素N3が第2トランスファギヤTF2を通じて第4回転要素N4と連結され、第1回転要素N1が第1クラッチC1の作動で第3トランスファギヤTF3を通じて第5回転要素N5と連結され、第2回転要素N2が第4クラッチC4の作動で第1トランスファギヤTF1を通じて第7回転要素N7と連結される。したがって、第3遊星ギヤセットPG3の回転要素は第3変速線SP3を形成しながら、出力要素である第6回転要素N6を通じてD3が出力される。このとき、第2遊星ギヤセットPG2の回転要素は太い点線Tを形成するが、変速には何の影響も与えない。
【0038】
[前進4速]
前進4速変速段4
THでは前進3速変速段3
RDの状態で作動した第4クラッチC4の作動が解除され、第3クラッチC3が作動する。
図6のように、第1軸IS1の回転速度が第2回転要素N2に入力されている状態で第3回転要素N3が第2トランスファギヤTF2を通じて第4回転要素N4と連結され、第1回転要素N1が第1クラッチC1の作動で第3トランスファギヤTF3を通じて第5回転要素N5と連結され、第3回転要素N3が第2クラッチC2の作動で第2トランスファギヤTF2を通じて第7回転要素N7と連結される。したがって、第2、第3遊星ギヤセットPC2、PC3は直結の状態になり、第2、第3遊星ギヤセットPC2、PC3の回転要素は第4変速線SP4を形成しながら、出力要素である第6回転要素N6を通じてD4が出力される。
【0039】
[前進5速]
前進5速変速段5
THでは前進4速変速段4
THの状態で作動した第2クラッチC2の作動が解除され、第4クラッチC4が作動する。
図7のように、第1軸IS1の回転速度が第2回転要素N2に入力されると同時に第4クラッチC4の作動で第1トランスファギヤTF1を通じて第7回転要素N7に入力される。そして第3回転要素N3が第2トランスファギヤTF2を通じて第4回転要素N4と連結され、第1回転要素N1が第1クラッチC1の作動で第3トランスファギヤTF3を通じて第5回転要素N5と連結される。したがって、第2、第3遊星ギヤセットPG2、PG3の回転要素は第5変速線SP5を形成しながら、出力要素である第6回転要素N6を通じてD5が出力される。
【0040】
[前進6速]
前進6速変速段6
THでは前進5速変速段5
THの状態で作動した第1クラッチC1の作動が解除され、第2クラッチC2が作動する。
図8のように、第1軸IS1の回転速度が第2回転要素N2に入力されると同時に第4クラッチC4の作動で第1トランスファギヤTF1を通じて第7回転要素N7に入力される。そして第3回転要素N3が第2トランスファギヤTF2を通じて第4回転要素N4と連結されると同時に第2クラッチC2の作動で第7回転要素N7と連結される。これにより、第2、第3遊星ギヤセットPC2、PC3は直結の状態になり、第2、第3遊星ギヤセットPC2、PC3の回転要素は第6変速線SP6を形成しながら、出力要素である第6回転要素N6を通じてD6が出力される。
【0041】
[前進7速]
前進7速変速段7
THでは前進6速変速段6
THの状態で作動した第2クラッチC2の作動が解除され、第1ブレーキB1が作動する。
図9のように、第1軸IS1の回転速度が第2回転要素N2に入力されると同時に第4クラッチC4の作動で第1トランスファギヤTF1を通じて第7回転要素N7に入力され、第1ブレーキB1の作動で第1回転要素N1が固定要素として作動する。そして第3回転要素N3が第2トランスファギヤTF2を通じて第4回転要素N4と連結される。したがって、第2、第3遊星ギヤセットPG2、PG3の回転要素は第7変速線SP7を形成しながら、出力要素である第6回転要素N6を通じてD7が出力される。
【0042】
[前進8速]
前進8速変速段8
THでは前進7速変速段7
THの状態で作動した第4クラッチC4の作動が解除され、第2クラッチC2が作動する。
図10のように、第1軸IS1の回転速度が第2回転要素N2に入力され、第1ブレーキB1の作動で第1回転要素N1が固定要素として作動する。そして第3回転要素N3が第2トランスファギヤTF2を通じて第4回転要素N4と連結されると同時に第2クラッチC2の作動で第2トランスファギヤTF2を通じて第7回転要素N7と連結される。したがって、第2、第3遊星ギヤセットPC2、PC3は直結の状態になり、第2、第3遊星ギヤセットPC2、PC3の回転要素は第8変速線SP8を形成しながら、出力要素である第6回転要素N6を通じてD8が出力される。
【0043】
[後進]
後進変速段Revでは
図2のように、第1ブレーキB1と第1、第3クラッチC1、C3が作動する。
図11のように、第1軸IS1の回転速度が第2回転要素N2に入力されると同時に第1ブレーキB1と第1クラッチC1の作動で第1回転要素N1と第5回転要素N5が固定要素として作動する。そして第3回転要素N3が第2トランスファギヤTF2を通じて第4回転要素N4と連結される。したがって、第2、第3遊星ギヤセットPG2、PG3の回転要素は後進変速線RSを形成しながら、出力要素である第6回転要素N6を通じてREVが出力される。以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者によって容易に変更されて均等であると認められる範囲のすべての変更を含む。
【符号の説明】
【0044】
B1 第1ブレーキ
C1、C2、C3、C4 第1、第2、第3、第4クラッチ
IS1、IS2 第1、第2軸
OG 出力ギヤ
PC1、PC2、PC3 第1、第2、第3遊星キャリア
PG1、PG2、PG3 第1、第2、第3遊星ギヤセット
R1、R2、R3 第1、第2、第3リングギヤ
S1、S2、S3 第1、第2、第3サンギヤ
TF1、TF2、TF3 第1、第2、第3トランスファギヤ