特許第6097148号(P6097148)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 田淵電機株式会社の特許一覧

特許6097148パワーコンディショナおよびこのパワーコンディショナを含む分散システム
<>
  • 特許6097148-パワーコンディショナおよびこのパワーコンディショナを含む分散システム 図000002
  • 特許6097148-パワーコンディショナおよびこのパワーコンディショナを含む分散システム 図000003
  • 特許6097148-パワーコンディショナおよびこのパワーコンディショナを含む分散システム 図000004
  • 特許6097148-パワーコンディショナおよびこのパワーコンディショナを含む分散システム 図000005
  • 特許6097148-パワーコンディショナおよびこのパワーコンディショナを含む分散システム 図000006
  • 特許6097148-パワーコンディショナおよびこのパワーコンディショナを含む分散システム 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6097148
(24)【登録日】2017年2月24日
(45)【発行日】2017年3月15日
(54)【発明の名称】パワーコンディショナおよびこのパワーコンディショナを含む分散システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/38 20060101AFI20170306BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20170306BHJP
【FI】
   H02J3/38 110
   H02J3/38 130
   H02J3/38 180
   H02M7/48 M
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-107875(P2013-107875)
(22)【出願日】2013年5月22日
(65)【公開番号】特開2014-230386(P2014-230386A)
(43)【公開日】2014年12月8日
【審査請求日】2016年2月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000217491
【氏名又は名称】田淵電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100086793
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅士
(74)【代理人】
【識別番号】100112829
【弁理士】
【氏名又は名称】堤 健郎
(74)【代理人】
【識別番号】100144082
【弁理士】
【氏名又は名称】林田 久美子
(74)【代理人】
【識別番号】100167977
【弁理士】
【氏名又は名称】大友 昭男
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 達彦
【審査官】 木村 貴俊
(56)【参考文献】
【文献】 特許第3028205(JP,B2)
【文献】 特開2005−347796(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/38− 3/40
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電力を電力系統に連系可能な交流電力に変換して出力するパワーコンディショナであって、
第1の伝送線を介して前記交流電力の周波数に対応した周波数からなる周期的な同期信号を他の一のパワーコンディショナから受信する第1の通信インタフェースと、
第2の伝送線を介して前記交流電力の周波数に対応した周波数からなる周期的な同期信号をさらに他の一のパワーコンディショナに送信する第2の通信インタフェースと、
前記第1の通信インタフェースが受信した同期信号を監視する同期信号監視部と、
前記同期信号監視部が監視している同期信号がなくなると、前記交流電力の出力を停止させる停止部とを備え、
前記第1の通信インタフェースが同期信号を受信すると、前記同期信号監視部および前記停止部が実行する処理とは無関係に、前記第2の通信インタフェースが、所定のレベルで同期信号を送信する、パワーコンディショナ。
【請求項2】
請求項1に記載のパワーコンディショナ、前記他の一のパワーコンディショナ、および前記さらに他の一のパワーコンディショナを少なくとも含む、分散システム。
【請求項3】
請求項2に記載の分散システムにおいて、
当該分散システムに含まれるパワーコンディショナのうちの1つが親機として機能し、この親機として機能するパワーコンディショナは、
前記同期信号を生成する同期信号生成部であって、重大な異常の発生が検出されると、この同期信号の生成を停止する同期信号生成部を有する、分散システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力系統に連系可能なパワーコンディショナおよびこのパワーコンディショナを含む分散システムに関する。
【背景技術】
【0002】
電力系統に連系可能なパワーコンディショナは、単独運転が検出された時には速やかに運転を停止することが求められる。このために、同期ラインを用いる分散システムがある(例えば、特許文献1)。この分散システムでは、図6に示すように、それぞれ太陽光モジュール103に接続された複数のパワーコンディショナ102は、電力線111に加えて、伝送線116によって接続される。このシステムでは、複数のパワーコンディショナ102のうちの1台が親機となり、同期信号を親機以外のパワーコンディショナ102(子機)に送信する。親機のパワーコンディショナ102が単独運転を検出すると同期信号の送信を停止するため、全てのパワーコンディショナ102が電力系統114への電力出力を停止できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許3028205号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記特許文献1のシステムにおいて、各パワーコンディショナ102は1本の伝送線116に接続されている。そのため、この伝送線116に接続できるパワーコンディショナ102の数には限りがある。
【0005】
そこで、本発明は、膨大な数のパワーコンディショナに対する同期信号の伝達を可能とする分散システム、およびそのパワーコンディショナを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の一構成にかかるパワーコンディショナは、直流電力を電力系統に連系可能な交流電力に変換して出力するパワーコンディショナであって、第1の伝送線を介して、前記交流電力の周波数に対応した周波数からなる同期信号を他の一のパワーコンディショナと送受信する第1の通信インタフェースと、第2の伝送線を介して、前記交流電力の周波数に対応した周波数からなる同期信号をさらに他の一のパワーコンディショナと送受信する第2の通信インタフェースと、前記第1および第2の通信インタフェースの一方が受信した同期信号を監視する同期信号監視部と、前記同期信号監視部が監視している同期信号がなくなると、前記交流電力の出力を停止させる停止部とを備え、前記第1および第2の通信インタフェースの一方が同期信号を受信すると、前記同期信号監視部および前記停止部が実行する処理とは無関係に、前記第1および第2の通信インタフェースの他方が、所定のレベルで同期信号を送信する。
【0007】
この構成によれば、各パワーコンディショナを接続する伝送線がそれぞれ別個であるため、伝送線に接続されるパワーコンディショナの数が制限されても、これによって何ら影響を受けずに直列接続されるパワーコンディショナの数を増やすことができる。また、一方の通信インタフェースが信号を受信すると、同期信号監視部や停止部が実行する処理とは無関係に、他方の通信インタフェースが信号を送信するため、このパワーコンディショナにおいて信号の遅延はほとんど発生しない。さらに、他方の通信インタフェースは所定のレベルで同期信号を送信するため、伝送線によって減衰した同期信号が、所定のレベルにまで回復されて送信されることになる。そのため、直列接続されるパワーコンディショナの数が多くても全体として同期信号の減衰は生じない。
【0008】
また、同期信号監視部が監視している同期信号がなくなると交流電力の出力を停止させるため、電力系統への電力出力を停止させなければならない事態に対して、同期信号の送受信の停止のみで速やかに対処できる。
【0009】
ここで、「前記交流電力の周波数に対応した周波数からなる同期信号」は、一定の周波数を有する周期的な信号であり、好ましくは交流電力の周波数と同一の周波数を有する。
【0010】
本発明の一構成にかかる分散システムは、前記パワーコンディショナ、前記他の一のパワーコンディショナ、および前記さらに他の一のパワーコンディショナを少なくとも含む。この構成によれば、パワーコンディショナの直列接続が構成され、別個の伝送線によって同期信号が順次伝達される。
【0011】
好ましい実施形態においては、当該分散システムに含まれるパワーコンディショナのうちの1つが親機として機能し、この親機として機能するパワーコンディショナは、前記同期信号を生成する同期信号生成部であって、重大な異常の発生が検出されると、この同期信号の生成を停止する同期信号生成部を有する。これによれば、重大な異常の発生が検出されると親機のパワーコンディショナが同期信号の生成を停止し、当該分散システムにおいて直列に接続された各パワーコンディショナは同期信号を順次受信しなくなり、この伝達に並行して各パワーコンディショナにおける停止処理が実行されるため、直列に接続された全てのパワーコンディショナは速やかに電力系統への電力出力を停止できる。
【0012】
ここで、「重大な異常の発生」には、単独運転および地絡過電圧が含まれる。これらの他にも、電力系統への電力出力を停止させなければならない事態は、「重大な異常の発生」に該当する。
【発明の効果】
【0013】
本発明にかかる分散システムによれば、パワーコンディショナを接続する伝送線がそれぞれ別個であるため直列接続されるパワーコンディショナの数に制限がなく、各パワーコンディショナにおいて信号の遅延がほとんどなく、かつ、パワーコンディショナの直列接続の全体として同期信号の減衰が生じないため、膨大な数のパワーコンディショナに対する同期信号の伝達が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第1の実施形態にかかる分散システムの概略ブロック図である。
図2図1の分散システムにおいて親機として機能するパワーコンディショナの概略ブロック図である。
図3図1の分散システムにおいて子機として機能するパワーコンディショナの概略ブロック図である。
図4】(a)は系統電圧信号を示す波形図であり、(b)は同期信号を示す波形図であり、(c)は信号がない場合を示す図である。
図5】本発明の第2の実施形態にかかる分散システムの概略ブロック図である。
図6】従来の分散システムの概略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の第1の実施形態にかかる分散システムを図面に基づいて説明する。
図1に示す本実施形態にかかる分散システム1は、複数のパワーコンディショナ2を備える。各パワーコンディショナ2は、1つまたは複数の太陽電池モジュール3に接続されている。なお、簡略化のために、各パワーコンディショナ2には1つの太陽電池モジュール3のみが接続された構成を図示する。
【0016】
分散システム1は複数のパワーコンディショナ群20からなり、各パワーコンディショナ群20は複数のパワーコンディショナ2を含む。パワーコンディショナ群20に含まれるパワーコンディショナ2は電力線11によって直列に接続されて、複数のパワーコンディショナ2の電力についての直列接続を構成する。これらパワーコンディショナ群20は、並列に集電箱12に接続される。そのため、集電箱12は、全てのパワーコンディショナ群20を構成する全てのパワーコンディショナ2が出力する交流電力を集電する。集電箱12は、遮断器13を介して電力系統14に接続される。
【0017】
分散システム1の全てのパワーコンディショナ2は、渡り配線の形態で通信接続されている。すなわち、ある一のパワーコンディショナ2は、他の一のパワーコンディショナ2に伝送線(通信ケーブル)16iによって接続されるとともに、さらに他の一のパワーコンディショナ2に別個の伝送線16i+1によって接続されている。なお、終端のパワーコンディショナ21,2nは、1つのパワーコンディショナ2のみに伝送線161,16n-1によって接続されている。
【0018】
これら全てのパワーコンディショナ2のうち、1つのパワーコンディショナ2が親機として機能し、その他のパワーコンディショナ2が子機として機能する。いずれのパワーコンディショナ2が親機として機能するかは、いかなる基準によって定められてもよい。例えば、両終端のパワーコンディショナ21,2nのうちの一方が親機として機能してもよい。本実施形態においては、一方の終端のパワーコンディショナ21であって、一のパワーコンディショナ群20のパワーコンディショナ2のうち、最も集電箱12に近いパワーコンディショナ21が親機として機能する。なお、いずれのパワーコンディショナ2が親機になるかは絶対的なものではなく分散システム1の稼働中に変更されてもよい。
【0019】
これら伝送線16によって、各パワーコンディショナ2が正常に動作している間、系統電圧の正弦波と同一の周期を有する方形波からなる同期信号が、親機として機能するパワーコンディショナ21で生成されて伝達される。そのため、例えばパワーコンディショナ2iとパワーコンディショナ2i+1との間の伝送線16iが断線すると、その伝送線16iよりも親機のパワーコンディショナ21に対して遠位のパワーコンディショナ2i+1〜2nは同期信号を受信しなくなる。同期信号を受信しなくなったパワーコンディショナ2i+1〜2nは、後述するように電力出力を停止する。
【0020】
このように伝送線16は同期信号を伝送するためのものであるため、各パワーコンディショナ2のログなどを取得してそれぞれの状態を監視する管理ユニット(図示せず)と各パワーコンディショナ2との間のデータ通信には、伝送線16とは別個の通信ケーブルが用いられる。
【0021】
図2に、親機として機能するパワーコンディショナ21を示す。
パワーコンディショナ21は、太陽電池モジュール3が出力する直流電力を昇圧するDC/DCコンバータ(図示せず)、およびこの昇圧された直流電力を交流電力に変換するインバータ21を備える。これにより、パワーコンディショナ2は、交流電力を出力する。ただし、DC/DCコンバータ(図示せず)は省略されてもよい。パワーコンディショナ2には、また、インバータ21の出力を電力線11に供給する部分に、電磁接触器のような開閉手段22が設けられている。
【0022】
親機として機能するパワーコンディショナ21は、マイコンからなる親機制御手段23Aを有する。親機制御手段23Aは、異常判定部23a、同期信号生成部23bおよび停止部23cを含む。
【0023】
異常判定部23aは、重大な異常の発生を判定する。重大な異常としては、単独運転検出および地絡過電圧がある。単独運転は、例えば、制御手段23A内の単独運転検出手段(図示せず)によって検出される。単独運転の検出には既知のいかなる方法が用いられてもよい。地絡過電圧は、例えば、各パワーコンディショナ2とは別個に設けられた地絡過電圧検出装置(図示せず)によって検出される。地絡過電圧の検出には既知のいかなる方法が用いられてもよい。そして、単独運転や地絡過電圧が検出されると、異常判定部23aに単独運転や地絡過電圧が検出された旨が通知される。異常判定部23aがこの通知を受けて重大な異常が発生したと判定すると、同期信号生成部23bと停止部23cにその旨を通知する。
【0024】
親機として機能するパワーコンディショナ21は、また、通信インタフェース24、およびこれらに接続された絶縁回路25を備える。通信インタフェース24は、本実施形態においてはRS485プロトコルを実装したトランシーバからなる。トランシーバ24は、1つの伝送線161に接続され、トランスミッタ24aおよびレシーバ24bを含む。伝送線16は例えばツイストペアケーブルまたは同軸ケーブルからなる。トランスミッタ24aは、伝送線16に所定の大きさの電圧波形を送出する。レシーバ24bは、伝送線16から電圧波形を受信する。絶縁回路25は、例えばフォトカプラからなり、接続されたトランシーバ24をパワーコンディショナ21内の他の構成要から電気的に絶縁する。なお、絶縁回路25はトランシーバ24に内蔵されてもよい。
【0025】
同期信号生成部23bは、異常判定部23aから重大な異常が発生したとの通知を受けない限りは、図4(a)に示す系統電圧の正弦波と同一の周期を有する図4(b)の方形波を生成して、通信インタフェース24に送出する。通信インタフェース24のトランスミッタ24aは、受信した方形波の周期に対応した電圧波形を伝送線161に印加することで、伝送線161を介して隣接するパワーコンディショナ22に同期信号を送信する。同期信号生成部23bが、異常判定部23aから重大な異常が発生したとの通知を受けると、同期信号オフの指令を通信インタフェース24に通知する。通信インタフェース24のトランスミッタ24aは、この通知に応えて、図4(c)に示すように、伝送線161に電圧波形を印加しない。すなわち、伝送線161を介して隣接するパワーコンディショナ22に送信する同期信号を停止する。
【0026】
停止部23cは、異常判定部23aから重大な異常が発生したとの通知を受けると、インバータ21を停止させるとともに、開閉手段22を開成して、パワーコンディショナ2から電力線11への電力出力を停止させる。
【0027】
なお、本実施形態においてこの親機として機能する図1のパワーコンディショナ21は、隣接するパワーコンディショナ22が1つであり、このパワーコンディショナ22に同期信号を送信するが、他のパワーコンディショナ2から同期信号を受信するものではない。そのため、通信インタフェース24と絶縁回路25からなる組は1組のみでもよいが、複数組が設けられてもよい。
【0028】
図3に、子機として機能するパワーコンディショナ2iの1つを示す。なお、図2に示した親機として機能するパワーコンディショナ21と同一の構成要素については、図3において同一の符号を付してその説明を省略する。
【0029】
子機として機能するパワーコンディショナ2iは、第1および第2の通信インタフェース24A,24B、ならびにこれらにそれぞれ接続された2つの絶縁回路25,25を備える。これら第1および第2の通信インタフェース24A,24Bは、いずれも図2に示した通信インタフェース24と同一の構成を有する。したがって、この子機として機能するパワーコンディショナ2iには、親機として機能するパワーコンディショナ21に設けられた通信インタフェース24と絶縁回路25からなる組が2組設けられていることになる。
【0030】
子機として機能するパワーコンディショナ2iは、マイコンからなる子機制御手段23Bを有する。子機制御手段23Bは、停止部23cおよび同期信号監視部23dを含む。同期信号監視部23dは、第1の通信インタフェース24Aのレシーバ24bが受ける伝送線16i-1の電圧波形を、絶縁回路25を介して受信して監視する。そして、周期的な方形波からなる同期信号を受信している場合は、外部で何ら異常が発生していないと判定するのに対して、第1の通信インタフェース24Aのレシーバ24bが何も信号を受信しなくなると、当該パワーコンディショナ2iの外部において何らかの異常が発生したと判定する。
【0031】
子機制御手段23Bは、その内部に単独運転検出手段(図示せず)やその他内部における重大な異常を検出するための手段を設けてもよい。この場合、子機制御手段23Bはメモリ(図示せず)上に正常フラグを構成し、この正常フラグの既定値はオンとし、パワーコンディショナ2i自体で重大な異常を検出した場合にオフに切り替える。
【0032】
停止部23cは、同期信号監視部23dが、監視中の同期信号がなくなったことによって当該パワーコンディショナ2iの外部において何らかの異常が発生していると判定した場合、またはパワーコンディショナ2i自体で重大な異常を検出した場合に、インバータ21を停止させるとともに、開閉手段22を開成して、パワーコンディショナ2から電力線11への電力出力を停止させる。
【0033】
子機として機能するパワーコンディショナ2iは、また、第1および第2の通信インタフェース24A,24B、ならびにこれらにそれぞれ接続された2つの絶縁回路25,25に加えて、AND論理ゲート26を有する。
【0034】
第1の通信インタフェース24Aのレシーバ24bが伝送線16i-1から受ける電圧波形は、子機制御手段23Bに入力されるとともに、AND論理ゲート26に入力される。AND論理ゲート26には、また、子機制御手段23Bから正常フラグの値が入力される。したがって、正常フラグがオン、つまり異常がこのパワーコンディショナ2iの内部または外部で検出されていない場合には、AND論理ゲート26の出力に、第1の通信インタフェース24Aのレシーバ24bが伝送線16i-1から受けた電圧波形が表われる。
【0035】
第2の通信インタフェース24Bのトランスミッタ24aには、絶縁回路25を介してこのAND論理ゲート26の出力が入力される。そして、トランスミッタ24aは、その入力に対応した電圧波形を伝送線16iに印加する。この電圧波形の電圧値は、予め定められた大きさであり、全てのパワーコンディショナ2で同一の大きさである。このため、第1の通信インタフェース24Aのレシーバ24bが系統電圧の正弦波と同一の周期を有する図4(b)の方形波を受信し、かつ、当該パワーコンディショナ2自体で重大な異常を検出していなければ、第2の通信インタフェース24Bのトランスミッタ24aは、系統電圧の正弦波と同一の周期を有して所定の電圧値からなる方形波を伝送線16iに印加する。これに対して、第1の通信インタフェース24Aのレシーバ24bが伝送線16i-1から信号を受信しない場合には、第2の通信インタフェース24Bのトランスミッタ24aは、伝送線16iに対して信号を送信しない(図4(c)に図示)。また、第1の通信インタフェース24Aのレシーバ24bが系統電圧の正弦波と同一の周期を有する図4(b)の方形波を受信しても、正常フラグがオフであれば、第2の通信インタフェース24Bのトランスミッタ24aは、伝送線16iに対して信号を送信しない(図4(c)に図示)。
【0036】
このように、子機として機能するパワーコンディショナ2iにおいて、第1の通信インタフェース24Aが伝送線16i-1から信号を受信してから第2の通信インタフェース24Bが伝送線16iを介して信号を送信するまでには、絶縁回路25、AND論理ゲート26および絶縁回路25を経由するだけであるため、伝送線16i-1から受信した信号を制御手段23Bで処理して伝送線16iに送出する場合に比べて、このパワーコンディショナ2iにおける処理時間は極めて小さい。
【0037】
なお、図2の親機として機能するパワーコンディショナ21図3の子機として機能するパワーコンディショナ2iは異なる構成として示したが、各パワーコンディショナ2は、両方の構成要素を含み、親機としても子機としても機能できるのが好ましい。
【0038】
本分散システム1の動作について図1を参照して説明する。
異常が発生していない正常時には、親機として機能するパワーコンディショナ21は、同期信号生成部23b(図2)が同期信号を生成し、伝送線161を介して同期信号を隣接するパワーコンディショナ22に送出する。この同期信号を受信したパワーコンディショナ22では、そのパワーコンディショナ2自体で重大な異常の発生を検出していなければ、同期信号を、親機として機能するパワーコンディショナ21とは反対側の隣接するパワーコンディショナ23に伝送線162を介して送信する。同様に、同期信号がパワーコンディショナ2の間で順次伝達されて、終端のパワーコンディショナ2nが同期信号を受信する。
【0039】
なお、この終端のパワーコンディショナ2nでは、図3の第1の通信インタフェース24Aが同期信号を受信し、同期信号監視部23dが外部で何らかの異常が発生していると判定する点は、他の子機として機能するパワーコンディショナ22〜2n-1図1)と同一である。しかし、他の子機として機能するパワーコンディショナ22〜2n-1図1)とは、第2の通信インタフェース24Bから伝送線16に同期信号を送出しない点で異なる。
【0040】
パワーコンディショナ2間で伝達される同期信号は、伝送線16上で減衰する。しかし、各パワーコンディショナ2の第2の通信インタフェース24Bのトランスミッタ24aは、所定の電圧値を伝送線16に印加するため、伝送線16上で減衰した同期信号は、各パワーコンディショナ2で所定値に回復する。このように、渡り配線によって互いに接続されるパワーコンディショナ2の数は、同期信号の減衰の観点からは制限を受けない。
【0041】
また、各パワーコンディショナ2では、伝送線16から同期信号を受信してから伝送線16に同期信号を送出するまでに所定の時間を要する。しかし、パワーコンディショナ2の第1の通信インタフェース24Aが伝送線16から信号を受信してから第2の通信インタフェース24Bから信号を送信するまでには、絶縁回路25、AND論理ゲート26および絶縁回路25を経由するだけであるため、伝送線16から受信した信号を制御手段23Bで処理して伝送線16に送出する場合に比べて、このパワーコンディショナ2iにおける処理時間は極めて小さい。このため、複数のパワーコンディショナ2が順次同期信号を処理することによって、分散システム1におけるパワーコンディショナ2の数だけ同期信号の伝達に時間を要するが、それでも分散システム1全体としても許容範囲内の伝搬時間である。例えば、分散システム1にパワーコンディショナ2がたとえ1000台設置されていたとしても、各パワーコンディショナ2における処理時間が例えば3μ秒程度であれば、分散システム1の全体の伝搬時間は3秒である。
【0042】
図1に戻って、親機として機能するパワーコンディショナ21が単独運転または地絡過電圧のような重大な異常を検出すると、このパワーコンディショナ21は、伝送線16を介して隣接するパワーコンディショナ22への同期信号の送信を停止する。同期信号を受信しなくなったパワーコンディショナ22では、隣接するパワーコンディショナ23への同期信号の送信を停止する。同様に、同期信号の停止がパワーコンディショナ2の間で順次伝達されて、終端のパワーコンディショナ2nが同期信号を受信しなくなる。なお、この終端のパワーコンディショナ2nでは、同期信号を受信しなくなることで、図3の子機制御手段23Bの同期信号監視部23dが外部で何らかの異常が発生していると判定し、判定部23cがその出力を停止するが、第2の通信インタフェース24Bに伝送線が接続されていないため、このパワーコンディショナ2nには停止すべき送信中の同期信号がない。
【0043】
このように、図1の分散システム1において単独運転や地絡過電圧などの重大な異常が発生すると、系統連系された全てのパワーコンディショナ2からの電力出力が停止される。
【0044】
上述のとおり各パワーコンディショナ2における処理時間が極めて小さいため、分散システム1全体としてもその同期信号の伝搬に要する時間は通常許容範囲である。例えば、各パワーコンディショナ2における処理時間が3μ秒程度であれば、分散システム1にパワーコンディショナ2が1000台の場合に分散システム1の全体の伝搬時間は3秒であるため、パワーコンディショナ2の停止処理に0.1秒程度要するとすると、親機として機能するパワーコンディショナ21が単独運転や地絡過電圧などを検出してから全てのパワーコンディショナ2が停止処理を完了するまでに4秒も要しない。
【0045】
異常が解消されると、親機として機能するパワーコンディショナ21図2の同期信号生成手段23bが再度同期信号を生成し、伝送線161を介して全てのパワーコンディショナ2に伝達する。同期信号を生成した親機のパワーコンディショナ21および同期信号を受信した全てのパワーコンディショナ2は、開閉手段22を閉成するとともにインバータ21を起動させて、電力線11に再度電力を出力させる。
【0046】
次に、本発明の第2の実施形態にかかる分散システムについて図5を参照して説明する。ただし、この第2の実施形態が第1の実施形態と異なる点について説明し、同一の構成要素に関しては同一の符号を付して説明を省略する。
【0047】
本実施形態の分散システム1Aにおいても、第1の実施形態と同様に、複数のパワーコンディショナ群20が並列に集電箱12に接続される。渡り配線の形態の通信接続については、第1の実施形態のように全てのパワーコンディショナ2が直列に接続されるのではなく、パワーコンディショナ群20ごとに渡り配線による直列接続が構成される。具体的には、本分散システム1Aは、親機として機能するパワーコンディショナ211を含む複数のパワーコンディショナ211〜21lからなる第1のパワーコンディショナ群20a、複数のパワーコンディショナ221〜22mからなる第2のパワーコンディショナ群20b、および複数のパワーコンディショナ231〜23nからなる第3のパワーコンディショナ群20cを備える。なお、本実施形態におけるパワーコンディショナ群20の数は3であるが、いくつであってもよい。
【0048】
本実施形態において、第2のパワーコンディショナ群20bのうちの1つのパワーコンディショナ221は、第1のパワーコンディショナ群20aと第3のパワーコンディショナ群20cとの橋渡しの役割を果たす。すなわち、このパワーコンディショナ221は、同一群に属する第2のパワーコンディショナ群20bの隣接するパワーコンディショナ222に伝送線16によって接続されるとともに、第1のパワーコンディショナ群20aの親機であるパワーコンディショナ211および第3のパワーコンディショナ群20cのあるパワーコンディショナ231にもそれぞれ伝送線16によって接続される。この橋渡しとなるパワーコンディショナ221には、通信インタフェース24(図3)が3つ設けられ、第1の通信インタフェース24A(図3)によって親機であるパワーコンディショナ211から受信した同期信号を、2つの第2の通信インタフェース24B(図3)から、接続されたパワーコンディショナ222,231に送信する。
【0049】
親機であるパワーコンディショナ211は少なくとも1つの第2の通信インタフェース24B(図3)を備え、2つの隣接したパワーコンディショナ212,221に同期信号を送信する。
【0050】
このように、本実施形態によれば、電力線による接続に対応させて通信接続を構成しているため、直列に通信接続されるパワーコンディショナ2の数を少なくできる。したがって、子機として機能するパワーコンディショナ2がその内部で異常を検出した場合には、親機として機能するパワーコンディショナ211に対して遠位側に直列に通信接続されたパワーコンディショナ2が同期信号を受信しなくなるが、そのパワーコンディショナ2の数は、全てのパワーコンディショナ2が直列に通信接続された場合に比べて少ない。そのため、停止の必要がないパワーコンディショナ2までもが停止することを防止できる。
【0051】
以上、本発明にかかる分散システムによれば、パワーコンディショナを接続する伝送線がそれぞれ別個であるため直列接続されるパワーコンディショナの数に制限がなく、各パワーコンディショナにおいて信号の遅延がほとんどなく、かつ、パワーコンディショナの直列接続の全体として同期信号の減衰が生じないため、膨大な数のパワーコンディショナに対する同期信号の伝達が可能である。
【0052】
なお、上記各実施形態において、伝送線は電気線として説明したが、電気線には限定されず、同期信号を伝送できるものであればいかなるものであってもよい。例えば、伝送線は光ファイバであってもよい。
【0053】
また、通信インタフェースはRS485プロトコルを実装するものとして説明したが、これには限定されず、いかなるプロトコルからなるものであってもよい。ただし、好ましくは、シリアル通信のプロトコルからなる。
【0054】
さらに、重大な異常として単独運転と地絡過電圧を挙げたが、これらに限定されるわけではない。
また、上記実施形態では、図2の同期信号生成部23bが生成する信号は、図4(a)および(b)のように交流電力と同一の周波数を有するものとしたが、異なる周波数を有するものであってもよい。
【符号の説明】
【0055】
2 パワーコンディショナ
16 伝送線
23c 停止部
23d 同期信号監視部
24 通信インタフェース
図1
図2
図3
図4
図5
図6