(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、
図6(b)に示すように下レール510は車両の床面520から突出しているため、下レール510に車椅子及び車内販売用ワゴンの車輪600が引っ掛かることで、これらの通行に支障をきたす。また、乗客及び乗務員が下レール510に足を引っ掛けることがある。
【0005】
そこで、
図7(a)に示すように、凸状の下レール710,720を貫通扉500の幅方向両端部(戸先部及び戸尻部)だけに配置する方法が採用されている。この方法では、幅方向中央付近に凸状の下レール710,720が配置されないため、車輪や人の足が下レール710,720に引っ掛からない。しかし、貫通扉500を完全に閉じた状態では、幅方向中央付近において床面730と貫通扉500との間に隙間が生じる(
図7(b)参照)。この隙間から車両内へ外気が流入すると、車両内の空調効果が低下する。特に、特急列車では車両端部に座席が設けられているため、車両端部から流入した隙間風により車両端部の乗客がドラフト感を感じやすい。
【0006】
そこで、本発明の目的は、貫通扉を備えた車両において、車椅子、車内販売用ワゴン及び人の通行に支障をきたさないようにしつつ、車両内の空調低下を抑止することができる鉄道車両を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の鉄道車両は、車両の長手方向に直交する壁と、前記壁に形成された開口に配置され、前記車両の幅方向に移動可能な扉と、前記扉に取り付けられ、前記扉の下端よりも下方に突出するとともに前記扉の幅方向全体に亘って延在した板状部材とを備えており、前記壁に、前記開口の下端部を画定する縁部が前記車両の床面の一部として形成され、前記縁部には、前記車両の幅方向に延在した穴が形成されており、
前記穴は、上下方向に貫通した孔であり、前記穴の下方に凹状部材が配置されており、前記車両の幅方向に直交する方向について、前記凹状部材の開口幅が前記孔の幅より大きく、前記板状部材が前記穴に配置される。
【0008】
上記構成では、扉の案内穴を床に形成し、床面からの突出物をなくすことにより、車椅子及び車内販売用ワゴンの車輪や人が引っ掛からない構成とすることができる。また、扉を完全に閉じた状態では、扉と床面との間に扉の幅方向全体に亘って板状部材が配置されるため、扉の下方から車内へ空気が流入することを抑止できる。これにより、車内の空調効果の低下を抑止できる。
このように、上記構成では、貫通扉を備えた車両において、車椅子、車内販売用ワゴン及び人の通行に支障をきたさないようにしつつ、車両内の空調効果の低下を抑止することができる。
【0009】
また
、前記凹状部材は、前記開口の幅方向全体に亘って延在していることが好ましい。
【0010】
上記構成によると、扉の案内穴に入った塵、埃、ゴミ及び小石等をその下方の凹状部材に溜めることができる。これにより、案内穴に塵等が溜まらないようにすることができるため、扉をスムーズに移動させることができる。また、案内穴に入った塵等が車両内に入らないようにすることができる。
【0011】
さらに、前記凹状部材は、長手方向端部において、前記車両の長手方向に互いに対向する側部のうち一方の側部を有さないことが好ましい。これにより、凹状部材に溜まった塵等を凹状部材の側部が形成されていない部分から自然に排出できる。
【0012】
また、上記構成において、前記車両の妻構体に前記開口が形成されており、前記一方の側部は、前記互いに対向する側部のうち前記妻構体が配置された前記車両の長手方向端部に近い側部であることが好ましい。妻構体の下方には機器が殆ど配置されていないため、凹状部材の側部の一部を開放することにより、その部分から塵等を車外に排出できる。
【0013】
また、上記構成において、前記凹状部材の底面は、前記凹状部材の長手方向端部において、前記凹状部材の他方の側部から離れるにしたがって前記車両の床面から離れるように傾斜していることが好ましい。これにより、凹状部材の底面が他方の側部から離れるにしたがって下方に傾斜した構成となるため、凹状部材に溜まった塵等を傾斜した底面に沿ってスムーズに排出できる。
【0014】
さらに、穴の下方に凹状部材が配置された構成において、前記板状部材は前記凹状部材の側面に摺動可能に接触することが好ましい。床に形成された穴だけでなく凹状部材も扉の案内溝として機能するため、扉の開閉動作を安定して行うことができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によると、貫通扉を備えた車両において、車椅子、車内販売用ワゴン及び人の通行に支障をきたさないようにしつつ、車両内の空調効果の低下を抑止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0018】
ここでは、本発明の第1実施形態である鉄道車両について、
図1〜
図4を参照しつつ以下に説明する。
【0019】
〔第1実施形態〕
(鉄道車両の全体構成)
列車100は、
図1に示すように、進行方向に連結された複数の鉄道車両1,2,3と、隣り合う鉄道車両1,2間に配置されたホロ4と、隣り合う鉄道車両2,3間に配置されたホロ5とを備えている。鉄道車両1,2,3は同様な構成であり、以下では鉄道車両2について詳細に説明する。また、以下において「幅方向」とは鉄道車両2の幅方向を示す。
【0020】
(鉄道車両)
鉄道車両2は、
図1(a)に示すように、車両本体10と、車両本体10の下端部に取り付けられた台車20とを備えている。
【0021】
車両本体10は、
図1に示すように、進行方向に長尺な直方体状に形成され、底部となる台枠11と、台枠11の幅方向両端部において車両の長手方向に延在した側構体12,13と、台枠11の長手方向端部において車両幅方向に延在した妻構体(壁)14,15とを有している。妻構体14,15は鉄道車両2の長手方向(進行方向)に直交している。妻構体14,15の下方には機器が殆ど配置されていない(
図1(a)参照)。また、台枠11上には床面16が形成されている。
【0022】
妻構体14,15のうち妻構体14は車両本体10の前端部に設けられ、鉄道車両1に対向している。妻構体14には、鉄道車両1,2の間を往来できるように貫通扉24が取り付けられている。一方、妻構体15は車両本体10の後端部に設けられ、鉄道車両3に対向している。妻構体15には、鉄道車両2,3との間を往来できるように貫通扉25が取り付けられている(
図2参照)。
【0023】
車両本体10内は、
図1(b)に示すように、壁33によってスペース31と客室32とに仕切られている。スペース31は妻構体14に隣接し、客室32は妻構体15に隣接している。壁33は鉄道車両2の長手方向について前端に近い位置に配置され、スペース31と客室32との間を往来できるように貫通扉43が取り付けられている。壁33は鉄道車両2の長手方向に直交している。
【0024】
スペース31には十字路の通路34が形成されている。客室32には、壁33から妻構体15まで複数の座席35・・・が長手方向に並んで配置されている。
【0025】
次に、妻構体15及び貫通扉25について
図2〜4を参照しつつ詳細に説明する。
図2では貫通扉25を完全に閉じた状態を示している。貫通扉25は、引戸式であり、鉄道車両2の幅方向に移動可能に構成されている。なお、
図2〜4では、妻構体15及び貫通扉25を主に図示し、その他を省略している。
【0026】
妻構体15の幅方向中央付近には、
図2に示すように、貫通扉25が配置された矩形状の開口51と、開口51を画定する長方形状の枠体52とが形成されている。
図3,4に示すように、枠体52の底部(縁部)には靴摺り53が設けられている。靴摺り53は床面16の一部を構成している。靴摺り53は、
図4に示すように、台枠11上の台54及び板状部材55の上に配置されている。
【0027】
靴摺り53(枠体52の底部)には、上下方向に貫通した孔53aが形成されている。孔53aは、
図3に示すように、鉄道車両2の幅方向に延在している。
【0028】
孔53aの下方には、
図4に示すように、凹状部材56が配置されている。凹状部材56は、
図2,3に示すように、孔53aの長手方向に延在している。
【0029】
図4(a)に示すように、孔53aの幅と凹状部材56の開口幅(鉄道車両2の長手方向方向についての幅)は同様な大きさに形成されている。これにより、孔53aと凹状部材56とによって幅が連続した一つの凹部が形成される。凹部には貫通扉25の下端部から突出した案内金(板状部材)57が嵌まっている。
【0030】
案内金57は、貫通扉25の下端部に形成された逆凹部25aに嵌合することにより、貫通扉25と一体になっている。案内金57は貫通扉25の下端より下方に突出し、貫通扉25の案内レールとして機能する。案内金57は、
図2の拡大図に示すように、貫通扉25の幅方向全体に亘って延在している。
【0031】
図4(a)に示すように、貫通扉25の開閉動作時において、案内金57は孔53aを画定する靴摺り53の内側面及び凹状部材56の内側面に摺動可能に接触する。貫通扉25を完全に閉じた状態では、貫通扉25と床面16との間が幅方向全体に亘って案内金57で塞がれるため、貫通扉25の下方から車両内へ外気が流入することを抑止できる(
図2の拡大図参照)。
【0032】
凹状部材56は、車両の幅方向中央付近では、
図3及び
図4(a)に示すように、互いに対向する2つの側部61,62と、側部61と側部62との間に配置された水平な底面63とが形成されている。一方、幅方向両端部では、
図3及び
図4(b)に示すように、凹状部材56には鉄道車両2の前端に近い側部71だけが形成され、鉄道車両2の後端に近い側部が形成されていない。また、幅方向両端部の底面72は、側部71から離れる方向に延在した水平面72aと、水平面72aから鉄道車両2の後端に向かって下方に傾斜した傾斜面72bとを有している。傾斜面72bは、鉄道車両2の後端に繋がっており、
図3に示すように台枠11にネジ81,82,83,84で固定されている。
【0033】
このような構成から靴摺り53に形成された孔53aに塵、埃、ゴミ及び小石等が入っても、塵等はその下方の凹状部材56に溜まるか(
図4(a)参照)、貫通扉25の移動に伴って凹状部材56の幅方向両端部に集められる(
図4(b)参照)。幅方向両端部に集められた塵等は底面72の傾斜面72bに沿って車両外部に排出される。これにより、車両内に塵等が流入することを抑止できる。
【0034】
上記では、妻構体15及び貫通扉25について説明したが、
図1に示す妻構体14及び貫通扉24と壁33及び貫通扉43も同様な構成となっている。
【0035】
妻構体14及び貫通扉24は、
図4(b)に示す構成と前後逆の構成であり、凹状部材の幅方向両端部に、凹状部材56と逆の形状、つまり、鉄道車両2の後端に近い側部だけが形成され、鉄道車両2の前端に近い側部が形成されていない。また、凹状部材の底面に、鉄道車両2の前端に近付くにつれて下方に傾斜した傾斜面が形成されている。
【0036】
このような構成から、妻構体14においても、妻構体15と同様に、靴摺りの孔に塵等が入っても、塵等は凹状部材に溜まるか、凹状部材の幅方向両端部に集められた後、車両外部に排出される。
【0037】
一方、壁33及び貫通扉43では、凹状部材が幅方向全体に亘って対向する2つの側部と水平な底面とを有している(
図4(
a)参照)。したがって、孔に入った塵等は凹状部材に溜まり、スペース31及び客室32に流れないようにすることができる。
【0038】
以上に述べたように、本実施形態の鉄道車両1,2,3によると以下の効果を奏する。貫通扉24,25,43の案内穴(孔53a)を床面16に形成し、床面16からの突出物をなくすことにより、車椅子及び車内販売用ワゴンの車輪や人が引っ掛からない構成にすることができる。また、貫通扉24,25,43を完全に閉じた状態では、貫通扉24,25,43と床面16との間に幅方向全体に亘って案内金57が配置されるため、貫通扉24,25,43の下方から車内へ空気が流入することを抑止できる。これにより、車内の空調効果の低下を抑止できる。特に、本実施形態では、鉄道車両2の後端(貫通扉25に近接した位置)に座席35が配置されているが、案内金57により貫通扉25の下方から隙間風が流入することを抑止できるため、座席35の乗客にドラフト感を与えないようにすることができる。
このように、鉄道車両1,2,3では、車椅子及び車内販売用ワゴンや人の通行に支障をきたさないようにしつつ、車両内の空調効果の低下を抑止することができる。
【0039】
また、案内穴(孔53a)の下方に幅方向全体に亘って凹状部材56を配置することにより(
図4(a)参照)、案内穴(孔53a)に入った塵等をその下方の凹状部材56に溜めることができる。これにより、案内穴(孔53a)に塵等が溜まらないようにすることができるため、貫通扉24,25,43をスムーズに移動させることができる。また、案内穴(孔53a)に入った塵等が車両内に入らないようにすることができる。
【0040】
さらに、凹状部材56の幅方向両端部に、車両前端に近い側部71を形成し、車両後端に近い側部を形成していない。また、凹状部材56の底面に車両後端に近付くにつれて下方に傾斜した傾斜面を形成している。このような構成から、凹状部材56に溜まった塵等を長手方向端部に集めた後、傾斜した底面に沿って車両外に自然に排出できる。
【0041】
また、靴摺り53の孔53aの幅と、その下方の凹状部材56の開口幅とが同様な大きさであり(
図4(a)参照)、孔53aと凹状部材56とによって幅が連続した一つの凹部が形成されている。ここに、貫通扉25の下方から突出した案内金57が嵌まり、貫通扉25の移動に伴って案内金57が孔53aを画定する内側面及び凹状部材56の内側面に摺動可能に接触する。このように、孔53aだけでなく凹状部材56も案内金57の案内溝として機能するため、貫通扉25の開閉動作を安定して行うことができる。
【0042】
以上、本発明の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものでないと考えられるべきである。そして、本発明の範囲は上記した説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0043】
例えば、上述の実施形態では、貫通扉25の案内穴として、靴摺り53に上下方向に貫通した孔53aを形成したが、案内穴を凹状の穴としてもよい。
【0044】
また、上述の実施形態では、案内穴(孔53a)の下方において凹状部材56を鉄道車両2の幅方向に延在させたが、案内穴(孔53a)の下方の一部だけに凹状部材を配置してもよい。また、案内穴を凹状の穴とした場合は、穴の下方に凹状部材を配置しなくてよい。
【0045】
さらに、凹状部材56には、幅方向両端部において一方の側部を形成しなかったが(
図4(b)参照)、幅方向両端部又は幅方向一端部において互いに対向する2つの側部を形成してもよい。
【0046】
また、凹状部材56では、幅方向両端部において底面72の一部を車両後端に近付くにつれて下方に傾斜させたが(
図4(b))、底面が全て水平面であってもよい。また、底面が全て傾斜していてもよい。
【0047】
さらに、上述の実施形態では、案内穴(孔53a)の幅と凹状部材56の開口幅とを同様な大きさとしたが(
図4(a))、これらの幅は異なってもよい。例えば、
図5に示すように、凹状部材256の開口幅Wが孔53aの幅wより大きくてもよい。
【0048】
凹状部材256は、
図5に示すように、孔53aの下方に配置されている。凹状部材256は、車両の長手方向に互いに対向する2つの側部261,262と、側部261と側部262との間に配置された水平な底面263と、側部261,262の上端から互いに離れるように水平方向に延在した上縁部264,265とを有している。上縁部264,265は靴摺り53の底面に接している。
【0049】
このような構成から凹状部材256によっても、本発明と同様な効果が得られる。また、凹状部材256は
図4に示す凹状部材56よりも大きいため、塵等を多く溜めることができる。さらに、上縁部264,265が靴摺り53の底面に接することにより、凹状部材256と靴摺り53との接触面積が増えるため、凹状部材256に溜まった塵等が凹状部材256と靴摺り53との間から外部に漏れることを抑止できる。
【0050】
また、鉄道車両は、
図1に示す構成に限られず、変更可能である。例えば、本実施形態では、壁33が鉄道車両2の長手方向について前端に近い位置に配置されているが、壁33は鉄道車両2の長手方向の中央付近に配置されていてもよい。また、壁33が鉄道車両2の後端に近い位置に配置されていてもよい。さらに、壁33を有さない車両としてもよい。
【0051】
また、上述の実施形態では、妻構体14,15に貫通扉24,25が配置されているが、妻構体14,15に貫通扉24,25が配置されず、壁33にだけ貫通扉43が配置されていてもよい。