(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記外側部のタイヤ軸方向に対する角度が5度以下であり、前記内側部のタイヤ軸方向に対する角度は10〜30度である請求項1乃至3のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
前記第2外側ミドル横溝のタイヤ軸方向の長さは、前記外側ショルダー主溝と前記外側センター主溝との間に設けられた外側ミドル陸部のタイヤ軸方向の幅の40〜60%である請求項5に記載の空気入りタイヤ。
前記第1外側ミドル横溝のタイヤ軸方向の長さと、前記第2外側ミドル横溝のタイヤ軸方向の長さとの和は、前記外側ショルダー主溝と前記外側センター主溝との間に設けられた外側ミドル陸部のタイヤ軸方向の幅の95〜105%である請求項5又は6に記載の空気入りタイヤ。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1は、本発明の一実施形態の空気入りタイヤ1のトレッド部2の展開図を示し、
図2は、空気入りタイヤの断面図で、
図1のA−A線の位置に相当している。
【0018】
図1及び
図2に示される本実施形態の空気入りタイヤ1は、車両への装着の向きが指定された乗用車用のラジアルタイヤとして示されている。車両への装着の向きは、例えば、空気入りタイヤ1のサイドウォール部(図示省略)などに文字又は記号等を用いて表示される。
【0019】
トレッド部2は、車両装着時に車両内側に位置する内側トレッド端Teiと、車両装着時に車両外側に位置する外側トレッド端Teoとで区画されている。内側トレッド端Teiと外側トレッド端Teoとの間には、複数の陸部が区分されるようにタイヤ周方向に連続してのびる複数本の主溝が設けられている。
【0020】
本実施形態の主溝は、最も内側トレッド端Tei側に配された内側ショルダー主溝3と、最も外側トレッド端Teo側に配された外側ショルダー主溝4と、内側ショルダー主溝3とタイヤ赤道Cとの間に配された内側センター主溝5と、外側ショルダー主溝4とタイヤ赤道Cとの間に配された外側センター主溝6とを含んでいる。
【0021】
各主溝3乃至6は、例えば、タイヤ周方向に沿って直線状にのびている。これにより、各主溝3乃至6は、タイヤの走行時、路面の水を進行方向後方へと効率的に排出することができる。ただし、主溝は、ジグザグ状に形成されても良い。
【0022】
主溝3乃至6は、良好な排水性能を発揮するために、ある程度の溝幅と溝深さとを有する。好ましい排水性能を得るために、主溝3乃至6は、例えば、トレッド接地幅TWの2.5%以上、より好ましくは3%以上、さらに好ましくは4%以上の溝幅を有する。一方、トレッド部3の陸部の比率を維持して良好な操縦安定性を得るために、主溝3乃至6の溝幅は、例えば、トレッド接地幅TWの11.5%以下、より好ましくは10%以下、さらに好ましくは9%以下が望ましい。同様に、主溝3乃至6は、例えば、6mm以上、より好ましくは7mm以上の溝深さを有する。
【0023】
ここで、トレッド接地幅TWは、正規状態のタイヤの内側トレッド端Tei及び外側トレッド端Teoの間のタイヤ軸方向の距離である。「正規状態」は、タイヤ1が正規リムに装着されかつ正規内圧が充填された無負荷の状態である。特に明記されていない場合、タイヤの各種の寸法は、この正規状態での値が示されている。
【0024】
「正規リム」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えばJATMAであれば標準リム、TRAであれば "Design Rim" 、或いはETRTOであれば "Measuring Rim"である。
【0025】
「正規内圧」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば最高空気圧、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE" である。ただし、タイヤが乗用車用である場合、正規内圧は、一律に180kPaとされる。
【0026】
「トレッド端」は、正規状態のタイヤに正規荷重を負荷し、キャンバー角0°でトレッド部2を平面に押し当てたときのトレッド接地面のタイヤ軸方向の最も外側の位置として定義される。
【0027】
「正規荷重」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、JATMAであれば最大負荷能力、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "LOAD CAPACITY"である。ただし、タイヤが乗用車用である場合、正規荷重は、前記荷重の88%に相当する荷重である。
【0028】
特に好ましい態様では、主溝の中で、外側ショルダー主溝4が最も小さい溝幅GW2を有している。これは、トレッド部2の車両外側の陸部比率を高め、ひいては、操縦安定性を高めるのに役立つ。外側ショルダー主溝4の溝幅GW2が最も小さく形成されたタイヤは、走行時のタイヤノイズが車両外部へ漏れ難いため、走行時の静粛性に優れている。
【0029】
一方、主溝の中で、タイヤ赤道Cの近傍にある内側センター主溝5の溝幅GW3又は外側センター主溝5の溝幅GW4が最も大きいのが望ましい。特に好ましくは、最も大きく形成された溝幅GW3又はGW4は、トレッド接地幅TWの7%以上とされる。本実施形態では、溝幅GW3又はGW4は、外側ショルダー主溝4の溝幅GW2の2〜3倍の範囲にある。これにより、トレッド部2のタイヤ赤道C付近の排水性能が格段に向上する。本実施形態のトレッド部2は、主溝の溝幅が、以下のように構成された態様が示されている。
GW2 < GW1 = GW4 = GW3
【0030】
上述の主溝3乃至6が設けられることにより、トレッド部2は、5つの陸部に区分されている。
【0031】
陸部は、内側センター主溝5と外側センター主溝6との間のセンター陸部7と、内側センター主溝5と内側ショルダー主溝3との間の内側ミドル陸部8と、外側センター主溝6と外側ショルダー主溝4との間の外側ミドル陸部9と、内側ショルダー主溝3のタイヤ軸方向外側の内側ショルダー陸部10と、外側ショルダー主溝4のタイヤ軸方向外側の外側ショルダー陸部11とを含んでいる。
【0032】
本実施形態では、センター陸部7、内側ミドル陸部8及び外側ミドル陸部9がほぼ等しいタイヤ軸方向の幅を有するように、各主溝3乃至6の配置が決定されている。好ましい態様では、各陸部7乃至9の幅の差は、5mm以内であるのが望ましい。一方、内側ショルダー陸部10及び外側ショルダー陸部11は、各陸部7乃至9よりも大きく形成されている。これにより、内側ショルダー陸部10及び外側ショルダー陸部11の横剛性を高めることができる。
【0033】
なお、
図2に示されるように、本実施形態の各主溝3乃至6において、踏面と溝壁との間が斜めに面取りされているのが望ましい。このような面取りは、各陸部7乃至11の横剛性を高め、エッジ摩耗などを抑制するのに役立つ。
【0034】
トレッド部2には、さらに、主溝3乃至6と交わる向きにのびる複数本の横溝が設けられている。
【0035】
本実施形態において、横溝は、外側トレッド端Teoからタイヤ軸方向内側にのびる複数本の外側ショルダー横溝12を含んでいる。外側ショルダー横溝12は、トレッド部2と路面との間の水を外側トレッド端Teoから排出することができる。
【0036】
外側ショルダー横溝12は、第1外側ショルダー横溝12aと、第2外側ショルダー横溝12bとを含んでいる。
【0037】
第1外側ショルダー横溝12aは、外側トレッド端Teoから効果的に排水するために、タイヤ軸方向の内端13が、外側ショルダー主溝4に連通している。一方、第2外側ショルダー横溝12bは、外側ショルダー陸部11が大きなパターン剛性を持つように、タイヤ軸方向の内端14が、外側ショルダー主溝4に連通することなく終端している。本実施形態では、外側ショルダー陸部11に良好な排水部分と高い横剛性部分とが交互に表れるように、第1外側ショルダー横溝12aと第2外側ショルダー横溝12bとは、タイヤ周方向に交互に配置されている。これにより、外側ショルダー陸部11は、第1ショルダー横溝12a、12a間で区分されたタイヤ周方向に比較的長い複数個の外側ショルダーブロック15に区分されている。
【0038】
本実施形態のトレッド部2は、排水性能を維持しながら、外側トレッド端Teo側に大きなパターン剛性を提供する。従って、本実施形態の空気入りタイヤ1は、旋回走行時、接地面の中心が外側トレッド端Teo側に移行しても、トレッド部2の変形が抑えられる。これにより、大きなコーナリングフォースが発生し、良好な操縦安定性を発揮することができる。さらに好ましい態様では、外側ショルダーブロック15は、細溝やサイプなどが設けられていないプレーンなブロックで構成されるのが良い。
【0039】
図3には、外側ショルダー陸部11付近の部分拡大図が示されている。
図3に示されるように、外側トレッド端Teoを利用した十分な排水性能を確保しながら、外側トレッド端Teo側に大きなパターン横剛性を提供するために、第2外側ショルダー横溝12bのタイヤ軸方向の長さL1は、外側ショルダー陸部11のタイヤ軸方向の幅Wsoの50%以上、より好ましくは60%以上とされるが、好ましくは90%以下、より好ましくは80%以下とされるのが良い。
【0040】
外側ショルダー横溝12は、例えば、外側トレッド端Teoからタイヤ軸方向に沿ってのびる外側部18と、タイヤ軸方向に対して傾斜した内側部19とを含む折れ曲がり溝として構成される。外側部18と内側部19とは、例えば、直線状にのびている。このような折れ曲がり溝は、外側ショルダー陸部11の外側領域のパターン横剛性を高めながら、外側ショルダー陸部11の内側領域での排水抵抗を減らす。従って、この実施形態のタイヤ1は、さらに優れた排水性能及び操縦安定性を提供することができる。好ましくは、外側部18のタイヤ軸方向に対する角度が5度以下であり、内側部19のタイヤ軸方向に対する角度は10〜30度である。
【0041】
図2及び
図3に示されるように、第1外側ショルダー横溝12aの内端13側には、溝底が隆起している浅底部20が設けられても良い。浅底部は、ある長さでタイヤ軸方向にのびており、その外側には、第1外側ショルダー横溝12aの最大の溝深さを有する深底部21が連続している。浅底部20は、排水性能を維持しながら、第1外側ショルダー横溝12aと外側ショルダー主溝4との溝交差部の剛性低下を抑制し、さらに良好な操縦安定性を提供する。
【0042】
上述の作用を効果的に発現させるために、浅底部20の溝深さは、深底部21の最大の溝深さの50%以下、さらに好ましくは40%以下であり、好ましくは10%以上、より好ましくは15%以上とされる。同様に、浅底部20のタイヤ軸方向の長さL2は、好ましくは、外側ショルダー陸部11の幅Wsoの10%以上、より好ましくは20%以上であり、好ましくは40%以下、より好ましくは30%以下とされる。最も好ましくは、浅底部20の長さL2と、第2外側ショルダー横溝12bの長さL1との和L1+L2が、外側ショルダー陸部11の幅Wsoと実質的に等しいことが望ましい。これにより、さらに排水性能と操縦安定性とが高められる。なお、「実質的に等しい」とは、完全に一致するか、又は5%の差異がある態様を少なくとも包含する。
【0043】
一方、第2外側ショルダー横溝12bには、上述のような浅底部20が設けられていない。本質的に、第2外側ショルダー横溝12bの全部は、第1外側ショルダー横溝12aの最深部21と同じ深さで形成されている。これにより、第2外側ショルダー横溝12bは、十分な溝容積を提供し、排水性能を高めることができる。
【0044】
図1及び
図3に示されるように、横溝は、外側センター主溝6から、タイヤ軸方向外側にのびる第1外側ミドル横溝22を含んでいる。第1外側ミドル横溝22のタイヤ軸方向の外端23は、例えば、外側ショルダー主溝4に連通することなく外側ミドル陸部9内に位置している。第1外側ミドル横溝22は、トレッド中央部と路面との間の水を効果的に外側ショルダー端Teo側に導くことができる。
【0045】
横溝は、さらに、外側ショルダー主溝4から、タイヤ軸方向内側にのびる第2外側ミドル横溝16を含むことができる。第2外側ミドル横溝16は、第1外側ミドル横溝22で外側ショルダー端Teo側に導かれた水をさらに外側ショルダー主溝4へと導くことができる。
【0046】
第2外側ミドル横溝16のタイヤ軸方向の内端17は、例えば、外側センター主溝6に連通することなく外側ミドル陸部9内に位置している。第2外側ミドル横溝16は、例えば、タイヤ周方向で隣り合う第1外側ミドル横溝22の間に各一つ設けられている。これにより、外側ミドル陸部9は、タイヤ周方向に連続してのびるリブとして構成される。
【0047】
さらに好ましい態様では、第2外側ミドル横溝16は、外側ショルダー主溝4を介して第1外側ショルダー横溝12aと滑らかに連続するように設けられる。第1外側ミドル横溝22と第2外側ミドル横溝16とが、タイヤ周方向に交互に配列されるため、外側ミドル陸部9は、タイヤ軸方向の内外において、バランスの良いパターン剛性を有する。
【0048】
また、上述のような溝配置は、第2外側ミドル横溝16の内端17から外側トレッド端Teoまで連続する長いタイヤ軸方向成分を持った排水経路を形成するので、さらに排水性能が高められる。本実施形態では、双方の横溝12a、16の溝中心線が互いに滑らかに連続している最も好ましい態様が示されている。しかも、外側ショルダー陸部11の高いパターン剛性は、旋回時でも第1外側ショルダー横溝12a及び第2外側ショルダー横溝12bの変形(溝の潰れ)を抑え、これらの溝を利用した優れた排水性能を提供する。
【0049】
好ましい態様では、第1外側ミドル横溝22と第2外側ミドル横溝16とは、外側ショルダー横溝12の内側部19と同じ向きに傾斜している。さらに好ましい態様では、各外側ミドル横溝22、16のタイヤ軸方向に対する角度は、外側ショルダー横溝12の内側部19の角度と同じ範囲に設定される。
【0050】
外側ミドル陸部9に十分な排水性能及び大きなパターン剛性を提供するために、第2外側ミドル横溝16及び第1外側ミドル横溝22のそれぞれのタイヤ軸方向の長さL3及びL4は、外側ミドル陸部9のタイヤ軸方向の幅Wmoの40%〜60%の範囲で定められるのが望ましい。本実施形態では、第2外側ミドル横溝16の長さL3と、第1外側ミドル横溝22の長さL4との和L3+L4は、外側ミドル陸部9の幅Wmoに実質的に等しい。即ち、前記和L3+L4は、外側ミドル陸部9のタイヤ軸方向の幅Wmoの95〜105%であるように定められている。
【0051】
図4には、内側ショルダー陸部10付近の拡大図が示されている。
図1及び
図4に示されるように、本実施形態では、横溝は、内側トレッド端Teiからタイヤ軸方向内側にのびる複数本の内側ショルダー横溝24をさらに含んでも良い。
【0052】
内側ショルダー横溝24は、そのタイヤ軸方向の内端25が、内側ショルダー主溝3に連通している。従って、内側ショルダー陸部10は、内側ショルダー横溝24、24間に区分された内側ショルダーブロック25が並ぶブロック列に形成されている。
【0053】
内側ショルダー横溝24は、例えば、内側トレッド端Teiからタイヤ軸方向に沿ってのびる外側部26と、タイヤ軸方向に対して傾斜した内側部27とを含む折れ曲がり溝として構成される。このような折れ曲がり溝は、内側ショルダー陸部10の外側領域のパターン横剛性を高めながら、内側ショルダー陸部10の内側領域での排水抵抗を減らす。従って、この実施形態のタイヤ1は、さらに優れた排水性能及び操縦安定性を提供することができる。好ましくは、外側部26のタイヤ軸方向に対する角度が5度以下であり、内側部27のタイヤ軸方向に対する角度は10〜30度である。
【0054】
好ましい態様として、内側ショルダー横溝24は、溝幅が局部的に狭められたくびれ部29が設けられても良い。内側ショルダーブロック26に大きなタイヤ周方向のせん断力が作用した場合、くびれ部29は、タイヤ周方向に隣り合う内側ショルダーブロック26、26同士を接触させ、それらの変形を一定範囲に制限することが可能である。これは、内側ショルダーブロック26でのヒールアンドトウ摩耗等の偏摩耗を抑制するのに役立つ。このような作用を効果的に発揮させながら、排水性能を維持するために、くびれ部29の溝幅は、好ましくは2〜4mmの範囲で定められるのが望ましい。
【0055】
くびれ部29は、例えば、内側ショルダー陸部10の中でも、相対的に大きな接地圧が作用する部分に設けられるのが望ましい。本実施形態のくびれ部29は、内側ショルダー主溝3からタイヤ軸方向外側に、タイヤ軸方向の長さL5で設けられている。排水性能を維持しながら内側ショルダーブロック26の偏摩耗を抑制するために、くびれ部29の長さL5は、例えば、内側ショルダー陸部10のタイヤ軸方向の幅Wsiの5〜30%の範囲が望ましい。
【0056】
さらに好ましい態様では、
図2及び
図4に示されるように、内側ショルダー横溝24のくびれ部29は、溝底が隆起している浅底部30として形成されるのが望ましい。浅底部30は、好ましくは、内側ショルダー横溝24の最大の溝深さの50%以下、さらに好ましくは40%以下であり、好ましくは10%以上、より好ましくは15%以上とされる。このような浅底部30を持つくびれ部29は、上述の作用をより効果的に発現させることができる。
【0057】
各内側ショルダーブロック26には、内側ショルダーサイプ31が設けられているのが望ましい。内側ショルダーサイプ31は、内側ショルダーブロック26のタイヤ周方向のほぼ中間位置に設けられている。好ましくは、内側ショルダーサイプ31の両端は、内側ショルダーブロック26のタイヤ軸方向の両端で開口している。
【0058】
本明細書において、「サイプ」は、幅が1.5mm以下の切り込み状のものであり、それよりも大きい溝幅を有する主溝及び横溝とは明確に区別される。このような内側ショルダーサイプ31は、内側ショルダーブロック26の接地時の小変形を許容し、その耐偏摩耗性能を向上させる。
【0059】
さらに好ましい態様として、内側ミドル陸部8には、内側ショルダー主溝3から、タイヤ軸方向内側にのびる複数本の第1内側ミドル横溝33と、内側センター主溝5から、タイヤ軸方向外側にのびる複数本の第2内側ミドル横溝34とを含むことができる。
【0060】
第1内側ミドル横溝33及び第2内側ミドル横溝34は、いずれも、内側ミドル陸部8を完全に横切ることなくのびている。これにより、内側ミドル陸部8は、タイヤ周方向に連続するリブとして構成されている。また、第1内側ミドル横溝33及び第2内側ミドル横溝34は、タイヤ周方向に交互に配されている。これにより、内側ミドル陸部8は、タイヤ軸方向の内外において、バランスの良いパターン剛性を有する。
【0061】
第1内側ミドル横溝33は、例えば、タイヤ軸方向に対して傾斜している(
図4では右上がり)。好ましい態様では、第1内側ミドル横溝33は、内側ショルダー横溝24の内側部27と同じ向きに傾斜している。一般に、内側ミドル陸部8は、操縦安定性への寄与が他の陸部に比べて比較的小さい。従って、内側ミドル陸部8では、操縦安定性よりも、排水性能をより高める改善がなされているのが望ましい。例えば、第1内側ミドル横溝33は、全ての横溝の中で最も大きいタイヤ軸方向に対する角度の部分を有しているのが望ましい。これにより、水の流れをタイヤの回転方向により近づけ、排水抵抗を小さくすることができる。
【0062】
好ましくは、第1内側ミドル横溝33のタイヤ軸方向に対する角度は、好ましくは25度以上、より好ましくは35度以上であり、好ましくは70度以下、より好ましくは60度以下である。特に好ましくは、操縦安定性の低下を最小限にしながら、排水性能を効果的に高めるために、第1内側ミドル横溝33のタイヤ軸方向の長さL6は、内側ミドル陸部8のタイヤ軸方向の幅Wmiの60%〜85%の範囲で定められるのが望ましい。
【0063】
第2内側ミドル横溝34は、例えば、第1内側ミドル横溝33と同じ向きに傾斜している。内側ミドル陸部8は、操縦安定性への寄与が他の陸部に比べて比較的小さいが、そのタイヤ軸方向内側の領域には、旋回走行時に大きな接地圧が作用する場合がある。従って、第2内側ミドル横溝34のタイヤ軸方向に対する角度は、前記領域のパターン横剛性を高めるために、第1内側ミドル横溝33の角度以下として定められるのが望ましい。
【0064】
同様の観点より、第2内側ミドル横溝34のタイヤ軸方向の長さL7は、第1内側ミドル横溝33の長さL6よりも小さいのが好ましい。特に好ましくは、第2内側ミドル横溝34の長さL7は、横溝の中で最も小さく設定されるのが望ましい。本実施形態では、第1内側ミドル横溝33の長さL6と第2内側ミドル横溝34の長さL7との和(L6+L7)は、内側ミドル陸部8の幅Wmiに実質的に等しく定められている。
【0065】
図1に示されるように、センター陸部7は、例えば、サイプ及び横溝が設けられていないプレーンリブとして形成されている。これにより、トレッド中央部は高い周方向剛性を有するので、良好な直進時の走行安定性が得られる。
【0066】
本実施形態において、各横溝の溝縁は、いずれも二重線で表されているように、全て、面取りがなされている。
図5には、横溝の代表例として、
図2の外側ショルダー横溝12のB−B断面図が示されている。
図5に示されるように、本実施形態の外側ショルダー横溝12において、溝壁33と踏面34との間には、斜めの面取り部35が設けられている。このような横溝の面取り部35は、横溝の溝縁周辺での変形を抑え、操縦安定性に寄与するとともに、エッジ摩耗などを抑制するのに役立つ。
【0067】
操縦安定性をさらに高めるために、外側ショルダー横溝12の溝壁22のタイヤ半径方向線に対する角度αは、好ましくは5度以下、より好ましくは4度以下が望ましい。
【0068】
以上本発明の実施形態が、詳細に説明されたが、本発明は、図示された実施形態に限定されるものではなく、種々の態様に変更して実施され得る。
【実施例】
【0069】
本発明の効果を確認するために、表1の仕様に基づいたサイズ245/45R18の乗用車用ラジアルタイヤ(ランフラットタイヤ)が試作され、その性能がテストされた。
【0070】
実施例のタイヤは、
図1のトレッドパターンを有している。比較例1のタイヤは、
図6に示されるように、外側ショルダー横溝が、第1外側ショルダー横溝のみからなるトレッドパターンを有している点で相違している。比較例2は、
図7に示されるように、第1外側ミドル横溝が設けられていない点で相違している。
テストの方法は、次の通りである。
【0071】
<操縦安定性テスト>
プロのテストドライバーが、テストタイヤが装着されたテスト車両を、テストコースで運転し、各タイヤのハンドル応答性、剛性感、グリップ等を含む操縦安定性を官能により評価した。結果は、比較例1を100とする評点であり、数値が大きいほど良好である。詳細な条件は次の通りである。
テスト車両:排気量3500ccの乗用車
内圧:230kPa
路面:ドライアスファルト路
【0072】
<ウエット性能テスト>
半径100mのアスファルト路面に、水深5mm、長さ20mの水たまりを設けたコース上を、速度を段階的に増加させながら前記車両を進入させ、横加速度(横G)が計測された。結果は、速度50〜80km/hの前輪の平均横Gであり、比較例1を100とする指数で表示されている。数値が大きい程良好である。
テストの結果等は表1に示される。
【0073】
【表1】
【0074】
テストの結果より、実施例のタイヤは、比較例に比べて有意に操縦安定性能とウエット性能とを向上していることが確認できた。