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特許6097242光学フィルム作製装置及び光学フィルムの作製方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6097242
(24)【登録日】2017年2月24日
(45)【発行日】2017年3月15日
(54)【発明の名称】光学フィルム作製装置及び光学フィルムの作製方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20170306BHJP
【FI】
   G02B5/30
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-61887(P2014-61887)
(22)【出願日】2014年3月25日
(65)【公開番号】特開2015-184539(P2015-184539A)
(43)【公開日】2015年10月22日
【審査請求日】2016年4月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004444
【氏名又は名称】JXエネルギー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 裕之
(74)【代理人】
【識別番号】100159639
【弁理士】
【氏名又は名称】山西 敏道
(72)【発明者】
【氏名】清原 稔和
(72)【発明者】
【氏名】宮原 孝文
(72)【発明者】
【氏名】山田 和義
【審査官】 森内 正明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−264865(JP,A)
【文献】 特開2006−264863(JP,A)
【文献】 特開2006−89192(JP,A)
【文献】 特開2015−49497(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のフィルムが積層された積層フィルムから、少なくとも1層のフィルムを剥離して光学フィルムを作製する光学フィルム作製装置であって、
前記積層フィルムに対向した、剥離領域の上面方向に設けられており、前記積層フィルムから剥離される前記少なくとも1層のフィルムの剥離位置を検知する検知部と、
剥離された前記少なくとも1層のフィルムを搬送する剥離搬送ロールを駆動する駆動部と、
検知された前記剥離位置に基づき、前記駆動部の駆動速度を制御する制御部と、を有し、
前記積層フィルムから剥離された前記少なくとも1層のフィルムの曲率半径が40R以下である、光学フィルム作製装置。
【請求項2】
前記検知部が複数のセンサを備え、
前記複数のセンサが所定の剥離領域の両端部にそれぞれ設けられた、請求項1に記載の光学フィルム作製装置。
【請求項3】
前記積層フィルムは、第1の基板フィルム上に高分子層を形成し、前記高分子層上に第2の基板フィルムを積層させた積層フィルムであり、剥離される前記少なくとも1層のフィルムが前記第1の基板フィルムである、請求項1又は2に記載の光学フィルム作製装置。
【請求項4】
複数のフィルムが積層された積層フィルムから、少なくとも1層のフィルムを剥離して光学フィルムを作製する光学フィルムの作製方法であって、
前記積層フィルムに対向した、剥離領域の上面方向に設けられた検知部により、前記積層フィルムから剥離される前記少なくとも1層のフィルムの剥離位置を検知する工程と、
検知された前記剥離位置に基づき、剥離された前記少なくとも1層のフィルムを搬送する剥離搬送ロールを駆動する駆動部の駆動速度を制御する工程と、を有し、
前記積層フィルムから剥離された前記少なくとも1層のフィルムの曲率半径が40R以下である、光学フィルムの作製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学フィルム作製装置及び光学フィルムの作製方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば液晶固有の配向構造を固定化した液晶性高分子などの光学素子は、各種ディスプレイの光学用途に、例えば液晶表示用色補償板や液晶表示用視野角改良板として画期的な性能を示し、ディスプレイの高性能化、軽量化および薄型化に寄与している。
【0003】
この光学素子の製造法の一つとして、配向基板上に形成された液晶性高分子からなる高分子層を透光性基板上に転写する方法が知られている。
【0004】
例えば、特許文献1には、配向基板フィルム上に形成された薄膜の液晶性高分子層上に接着剤層を設けて透光性基板フィルムと貼合わせて積層フィルムとし、接着剤を硬化させて得られた、配向基板フィルム/液晶性高分子層/硬化接着剤層/透光性基板フィルムからなる複数の層構成を有する積層フィルムをニップロールとバックロールの間を、配向基板フィルムがニップロールに、透光性基板フィルムがバックロールにそれぞれ接触するように通過させながら、配向基板フィルムのみをニップロールに沿わせて搬送することによって剥離して、透光性基板フィルムに液晶性高分子層を連続転写する方法及びその製造装置が記載されている。
【0005】
また、特許文献2には、長尺配向基板フィルム上に液晶性高分子層を形成し、接着剤により液晶性高分子層と透光性基板フィルムとを接着して得られた配向基板フィルム/液晶性高分子層/接着剤層/透光性基板フィルムからなる長尺積層フィルムから、配向基板フィルム側に設けた剥離バーに沿わせて配向基板フィルムを剥離する、透光性基板フィルム上に転写された液晶性高分子層を有する光学素子の製造方法及びその製造装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−113911号公報
【特許文献2】特開2004−170545号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、光学フィルムに要求される品質上の要求が厳しくなり、わずかな欠陥も品質不良とされるようになっている。そのため、特許文献1の方法及びその製造装置において、バックロール上にごみや異物があると、ニップロールにおけるニップ時の圧力で接着剤層や液晶性高分子層が損傷を受け、剥離時に液晶性高分子層が一部配向基板フィルム側に残ってしまうという問題があった。
また、特許文献2の製造方法及びその製造装置においても、長尺積層フィルムから配向基板フィルムを剥離する際に剥離バーを使用することから、剥離バーへのごみや異物の付着を完全に除去することは困難であり、ごみや異物が付着した剥離バーの剥離時に圧力で接着剤層や液晶性高分子層が損傷を受け、剥離時に液晶性高分子層が一部配向基板フィルム側に残ってしまうという問題があった。
【0008】
そこで本発明は、積層フィルムから少なくとも1層のフィルムの剥離時にごみや異物による品質不良が発生しない光学フィルム作製装置及び光学フィルムの作製方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために本発明は、複数のフィルムが積層された積層フィルムから、少なくとも1層のフィルムを剥離して光学フィルムを作製する光学フィルム作製装置であって、前記積層フィルムから剥離される少なくとも1層のフィルムの剥離位置を検知する検知部と、剥離された少なくとも1層のフィルムを搬送する剥離搬送ロールを駆動する駆動部と、検知された剥離位置に基づき、駆動部の駆動速度を制御する制御部と、を有する光学フィルム作製装置を提供する。
【0010】
本発明の光学フィルム作製装置によれば、積層フィルムから剥離されるフィルムの剥離位置(剥離点)を検知し、検知された剥離位置に基づき、剥離搬送ロールを駆動する駆動部の駆動速度を制御することによって、剥離搬送ロールの回転速度が調節され、剥離されたフィルムが一定の範囲の曲率半径に維持され、剥離が所定の領域(所定の剥離領域)で行われる。このように、本発明ではニップロールや剥離バーを剥離に用いないことから、ごみや異物の付着による影響を除去することができ、ジッピングや破断なども生じにくく、品質に優れた光学フィルムを作製することが可能となる。
【0011】
本発明においては、積層フィルムから剥離された少なくとも1層のフィルムの曲率半径が40R以下であることが好ましい。
【0012】
本発明において、検知部が複数のセンサを備え、複数のセンサが所定の剥離領域の両端部にそれぞれ設けられた光学フィルム作製装置が好ましい。
【0013】
本発明において、積層フィルムは、第1の基板フィルム上に高分子層を形成し、高分子層上に第2の基板フィルムを積層させた積層フィルムであり、剥離される少なくとも1層のフィルムが第1の基板フィルムであることも好ましい。
【0014】
本発明は、複数のフィルムが積層された積層フィルムから、少なくとも1層のフィルムを剥離し光学フィルムを作製する光学フィルムの作製方法であって、積層フィルムから剥離される少なくとも1層のフィルムの剥離位置を検知する工程と、検知された剥離位置に基づき、剥離された少なくとも1層のフィルムを搬送する剥離搬送ロールを駆動する駆動部の駆動速度を制御する工程と、を有する、光学フィルムの作製方法を提供する。本作製方法においても上記装置と同様に、ニップロールや剥離バーを剥離に用いないことからごみや異物の付着による影響を除去することができ、ジッピングや破断なども生じにくく、品質に優れた光学フィルムを作製することが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、積層フィルムから少なくとも1層のフィルムの剥離時にごみや異物による品質不良が発生しない光学フィルム作製装置及び光学フィルムの作製方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本第1実施形態の光学フィルム作製装置における剥離制御に係る構成を示すブロック図である。
図2】本第1実施形態の光学フィルム作製装置における剥離制御を説明する概要説明図である。
図3】(a)〜(c)は、第1の検知方式、第2の検知方式および第3の検知方式を示す図である。
図4】本第1実施形態の光学フィルム作製装置における第1の検知方式による剥離制御を示すフローチャートである。
図5】本第1実施形態の光学フィルム作製装置における第2の検知方式および第3の検知方式による剥離制御を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態(以下、本実施形態という。)について、詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0018】
本実施形態の光学フィルム作製装置は、複数のフィルムが形成された積層フィルムから、少なくとも1層のフィルムを剥離して光学フィルムを作製する光学フィルム作製装置である。
ここで、複数のフィルムには、例えば第1の基板フィルムや第2の基板フィルムだけでなく、薄膜状(フィルム状)に形成された高分子層、接着剤層及び粘着剤層などもフィルムに含まれる。
なお、本実施形態において、積層フィルムから少なくとも1層のフィルムの剥離に関する制御を「剥離制御」という場合がある。
以下、好適な本第1実施形態〜第3実施形態の光学フィルム作製装置について説明する。
【0019】
(第1実施形態)
本第1実施形態の光学フィルム作製装置は、第1の基板フィルム上に高分子層を形成し、高分子層と第2の基板フィルムとを積層させた積層フィルムから、第1の基板フィルムを剥離し光学フィルムを作製する光学フィルム作製装置であって、積層フィルムから剥離されるフィルムの剥離位置を検知する検知部と、剥離されたフィルムを搬送する剥離搬送ロールを駆動する駆動部と、検知された剥離位置に基づき、駆動部の駆動速度を制御する制御部と、を有する、光学フィルム作製装置である。
【0020】
図1は、本第1実施形態の光学フィルム作製装置における剥離制御に係る構成を示すブロック図である。図1に示すように、光学フィルム作製装置1は、検知部2、ECU(Electronic Control Unit)3、制御部4、駆動部5を少なくとも備える。
【0021】
検知部2は、積層フィルムから第1の基板フィルムが剥離される剥離位置(剥離点)を検知することができる機能を有する。検知部2としては、剥離点を検知できるものであれば特に制限されないが、例えばレーザー光を剥離される第1の基板フィルムに照射し、その反射光又は透過光によって剥離位置を検出するセンサを用いてもよい。また、レーザーに代えて超音波を用いた検知センサでもよく、接触式のてこ式電気ダイヤルゲージを検知センサとして用いてもよい。
【0022】
ECU3は、光学フィルム作製装置1の剥離制御を行う電子制御ユニットであり、例えばCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read OnlyMemory)、RAM(Random Access Memory)を含むコンピュータを主体とし、入力信号回路、出力信号回路及び電源回路を含んで構成される。ECU3は、制御部4を少なくとも有している。
【0023】
制御部4は、検知部2からの検知された剥離位置に関する出力信号に基づき、駆動部の駆動速度を制御できる機能を備え、剥離された第1の基板フィルムを搬送する剥離搬送ロールを駆動する駆動部5に対して駆動力制御信号を出力する。
【0024】
ECU3は、図1に示していないが、駆動情報取得部を有してもよい。駆動情報取得部は、駆動部5の駆動情報を取得することができる。
【0025】
また、ECU3は、図1に示していないが、検知情報判定部を有してもよい。ECU3が検知情報判定部を有する場合、検知部2からの検知された剥離位置(剥離点)に関する出力信号(検知情報)から、剥離点が所定の剥離領域にあるか否かを判定し、判定結果を制御部4に送信することができる。
【0026】
駆動部5は、剥離された第1の基板フィルムを搬送する剥離搬送ロール17を回転させる駆動力を発生させる機能を有し、制御部4から出力される駆動力制御信号に基づき、駆動力を調整する。駆動部5としては特に制限されないが、例えば駆動モータを使用することができる。
【0027】
図2は、本第1実施形態の光学フィルム作製装置における剥離制御を説明する概要説明図である。
本第1実施形態の光学フィルム作製装置10においては、搬送ロール11により積層フィルム21がバックロール13の方向へ搬送される。搬送ロール11は、単独のロールでもよく、図2に示すようにロール12を備えたニップロールであってもよい。
搬送ロール11により搬送される積層フィルム21はバックロール13上を通過する。バックロール13を通過した積層フィルム21は、表面上に形成されている第1の基板フィルム23が剥離領域(図1においては、バックロール13とロール14との間の所定の領域)において剥離される。図2において剥離領域付近に検知センサ20が設置される。
【0028】
図3(a)〜(c)は、それぞれ第1の検知方式、第2の検知方式および第3の検知方式を示す図である。図3(a)に示す第1の検知方式では、検知センサ20は複数のセンサから構成される。複数のセンサは、フィルム搬送方向の上流側に設けられたセンサA(20a1)と下流側に設けられたセンサB(20a2)を有し、フィルム搬送方向における剥離領域の両端部に設けられる。該センサAおよびセンサBは、発光素子と受光素子から構成される反射型センサ又は透過型センサを用いることができ、受光光量の変化により剥離点を検知できる。なお、複数のセンサが3つ以上の場合は、剥離領域の両端部のセンサの数は一致していなくてもよい。
また、図3(b)に示す第2の検知方式では、積層フィルム21に対向した、剥離領域の上面方向に、幅広く照射できるレーザーを有する検知センサ20bを設け反射光によって剥離点を検出する。また、レーザー光に替えて超音波を用いて検出してもよい。
また、図3(c)に示す第3の検知方式では、剥離される第1の基板フィルム23の前方(積層フィルム21の搬送方向に対して逆方向)に検知センサ20cを設け、剥離点の前方側からレーザー光を照射し反射光によって検出する。また、レーザー光に替えて超音波を用いて検出してもよい。
【0029】
図2に示す第1実施形態の光学フィルム作製装置10においては、剥離された第1の基板フィルム23は、剥離領域で折り返され、ロール16で方向転換し、剥離搬送ロール17及びロール18から構成されるニップロール(第2のニップロール)を通過し、巻き取りロール19に巻き取られる。
剥離搬送ロール17には、駆動部5が設けられ、剥離搬送ロール17によってフィルムの搬送速度を調整する。なお、駆動部5を、巻取りロール19に設け、巻取りロール19によってフィルムの搬送速度を調整してもよい。
【0030】
本第1実施形態において、積層フィルム21から剥離された第1の基板フィルム23の曲率半径は40R以下であることが好ましく、20R以下であることがより好ましい。曲率半径が40Rを超えると、剥離時の安定性が悪化しジッピングや剥離不良部が発生する場合がある。また、剥離後の第1の基板フィルム23の搬送方向と積層フィルム21の搬送方向とがなす角度は150度以上であってもよく、180度未満であってもよく、剥離後の第1の基板フィルム23の搬送方向と積層フィルム21の搬送方向とが略平行であってもよい。
【0031】
図2に示すように、積層フィルム21から第1の基板フィルム23が剥離された光学フィルム22は、ロール14で方向転換し、巻き取りロール15に巻き取られる。
【0032】
本第1実施形態において、第1の基板フィルムは、高分子層を積層することができる基板フィルムであれば特に制限されない。ここで、高分子層が液晶性高分子層である場合には、液晶性高分子層を配向する配向基板フィルムであることが好ましい。
配向基板フィルムに用いられる樹脂としては、ポリイミド、エポキシ樹脂、フェノール樹脂などの熱硬化性樹脂;ナイロンなどのポリアミド;ポリエーテルイミド;ポリエーテルケトン;ポリエーテルエーテルケトン;ポリケトン;ポリエーテルスルホン;ポリフェニレンサルファイド;ポリフェニレンオキサイド;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル;ポリアセタール;ポリカーボネート;ポリアクリレート、ポリメタクリレート;トリアセテートセルロースなどのセルロース系樹脂;ポリビニルアルコールなどの熱可塑性樹脂などが例示される。
【0033】
高分子層は、本第1実施形態において特に制限されるものではないが、液晶性高分子を有する層であることが好ましい。
液晶性高分子としては、カルボン酸基、アルコール基、フェノール基、アミノ基、チオール基などを有する化合物を縮合させて成る縮合系液晶性高分子、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、アリル基など二重結合を有する液晶性化合物などを原料として得られる液晶性ビニルポリマー、アルコキシシラン基を有する液晶化合物などから合成される液晶性ポリシロキサン、エポキシ基を有する液晶性化合物などから合成される液晶性エポキシ樹脂および上記液晶性高分子の混合物などが例示できる。これらの各種液晶性高分子の中でも、得られるフィルムの光学特性などの点から縮合系液晶性高分子が好ましい。
液晶性高分子としては、液晶状態ではネマチック配向またはねじれネマチック配向し、液晶転移温度以下の温度領域ではガラス状態となるサーモトロピック液晶ポリマーが好ましい。
【0034】
第2の基板フィルムは、高分子層を積層することができる基板フィルムであれば特に制限されない。ここで、高分子層が液晶性高分子層である場合には、透光性基板フィルムであることが好ましい。
透光性基板フィルムとしては、透明性を有し、液晶性高分子層を支持できるものであれば特に限定されないが、長尺のもの(長尺フィルム)を必要とするところから、プラスチックフィルム、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、ポリエチレンサルファイド、アモルファスポリエチレン、トリアセチルセルロースなどを挙げることができる。また、基板用フィルムの厚さは0.5〜200μm、好ましくは1〜100μmの範囲である。
【0035】
本第1実施形態において長尺フィルムとは、一定の長さを有する連続したフィルムを意味し、工業的にはロール巻きされた形態で供給され得るような連続フィルムをいう。なお、ロール巻の形態が必須ではなく、適宜に折り畳まれた連続フィルムでもよい。長尺フィルムの長さは、場合により10,000mの長さに達するものであってもよい。
【0036】
図4は、本第1実施形態の図3(a)の第1の検知方式を適用した光学フィルム作製装置における剥離制御を示すフローチャートである。このフローチャートに示される一連の制御処理は、例えばECU3によって予め定められた周期(例えば100ms)で繰り返し実行される。
【0037】
光学フィルム作製装置のECU3(例えば駆動情報取得部)は、駆動部が駆動を開始する駆動情報を取得すると制御のフローをスタートする。
【0038】
次に、センサA(図3(a)の20a1)およびセンサB(図3(a)の20a2)からの信号により、積層フィルム21から第1の基板フィルム23が剥離される剥離位置(剥離点)を検知したかどうかを判断する(S1)。センサA又はセンサBによる剥離点の検知かどうかは、HレベルからLレベル、又はLレベルからHレベルへの変化により判断できる。センサA又はセンサBにより剥離点を検知したと判断された場合(S1のYes)、ステップ2(S2)に進む。センサA又はセンサBにより剥離点が検知されていないと判断された場合、繰り返し検知される(S1のNo)。ステップ2においては、センサAでの検知かどうかが判断される。センサAにより剥離点を検知したと判断された場合、駆動モータを減速するように制御する(S3)。剥離点が剥離領域の上流側(図2におけるバックロール13の設置側)の端部に到達しているため、駆動モータを減速することにより、下流側(図2におけるロール14の設置側)に剥離点を移動させることができ、剥離点を所定の剥離領域内に位置させることができる。他方、ステップ2(S2)においてセンサAにより剥離点を検知していないと判断された場合、センサBにより剥離点を検知した場合であるため、駆動モータを増速するように制御する(S4)。剥離点が剥離領域の下流側の端部に到達しているため、駆動モータを増速することにより、上流側に剥離点を移動させることができ、剥離点を所定の剥離領域内に位置させることができる。駆動モータの制御のステップ(S3、S4)の後は、リターンして、このフローが繰り返される。
【0039】
図5は、本第1実施形態の図3(b)の第2の検知方式および図3(c)の第3の検知方式を適用した光学フィルム作製装置における剥離制御を示すフローチャートである。このフローチャートに示される一連の制御処理は、例えばECU3によって予め定められた周期(例えば100ms)で繰り返し実行される。
【0040】
光学フィルム作製装置のECU3(例えば駆動情報取得部)は、駆動部が駆動を開始する駆動情報を取得すると制御のフローをスタートする。
まず、検知センサにより剥離点を検知する(S1)。次に、ECU3(例えば検知情報判定部)が、検知した剥離点が所定範囲の剥離領域内であるか否かを判定する(S2)。所定範囲の剥離領域内であると判定した場合(S2のYes)、駆動モータの駆動躯度を変更せずに維持する(S3)。他方、所定範囲の剥離領域内でないと判定した場合(S2のNo)、検知した剥離点が所定の剥離領域より上流側にあるか否かを判定する(S4)。検知した剥離点が所定の剥離領域より上流側にある場合(S4のYes)、駆動モータの駆動速度を減速し(S5)、剥離点が下流側の所定の剥離領域内に収まるようにする。他方、検知した剥離点が所定の剥離領域より上流側にない場合(S4のNo)、即ち、剥離点が所定の剥離領域より下流側にある場合となり、駆動モータの駆動速度を増速し(S6)、剥離点が上流側の所定の剥離領域内に収まるようにする。
【0041】
以上の説明のとおり、本第1実施形態の光学フィルム作製装置によれば、積層フィルムから第1の基板フィルムが剥離される剥離位置を検知し、検知された剥離位置(剥離点)に基づき、駆動部の駆動速度を制御することによって、剥離された第1の基板フィルムを搬送する剥離搬送ロールの回転速度が調節され、剥離された第1の基板フィルムが一定の範囲の曲率半径に維持され、剥離が所定の領域(剥離領域)で行われる。これにより、ニップロールや剥離バーを剥離に用いないことからごみや異物の付着による影響を除去することができ、ジッピングや破断なども生じにくく、品質に優れた光学フィルムを作製することが可能となる。
【0042】
また、本第1実施形態においては、第1の基板フィルム上に高分子層を形成し、高分子層と第2の基板フィルムとを積層させた積層フィルムから、第1の基板フィルムを剥離し光学フィルムを作製する光学フィルムの作製方法であって、積層フィルムから第1の基板フィルムが剥離される位置を検知する工程と、検知された剥離される位置に基づき、駆動部の駆動速度を制御する工程と、を有する、光学フィルムの作製方法を提供する。
本第1実施形態の作製方法においても、上記装置と同様に、ニップロールや剥離バーを剥離に用いないことからごみや異物の付着による影響を除去することができ、ジッピングや破断なども生じにくく、品質に優れた光学フィルムを作製することが可能となる。
【0043】
なお、本第1実施形態の光学フィルム作製装置又は光学フィルムの作製方法における積層フィルムにおいては、高分子層と第2の基板フィルムとの間に接着剤層又は粘着剤層を積層させてもよい。接着剤は特に限定されないが、連続転写に必須の極めて短時間に硬化が可能であること、液晶性高分子のTg 温度以下で硬化が可能であることを考慮して、光硬化型または電子線硬化型が好ましい。とりわけアクリル系オリゴマーを主成分とする接着剤は、液晶性高分子層の転写ミスを皆無にし、巻取りなどの操作の際にトラブルが生ずることがなく、製品となった光学素子の信頼性も高いという点から好適である。さらにこのアクリル系オリゴマーに対して、N−ビニルピロリドンのような極性ビニルモノマーを配合することも可能である。粘着剤としては、アクリル系、ビニルアルコール系、シリコーン系、天然ゴム、合成ゴムエラストマー、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルキルエーテル、変性ポリオレフィン樹脂系や、それらにイソシアネート等の硬化剤を添加したものを適宜に選択して用いることができる。これらの粘着剤は、光硬化型等の反応性であってもよい。なかでも、アクリル系の粘着剤は、ハンドリング性や透明性などの点から好ましい。
【0044】
また、長尺の配向基板フィルム上に形成された液晶性高分子層、または長尺の透光性基板フィルムの少なくとも一方への接着剤の塗布方法としては、一般に行われている連続フィルムへの塗布手段であるロールコート法、カーテンコート法、スロットコート法などのダイコート法、スプレーコート法などを用いることができ、特に限定されない。塗布する接着剤の厚みは0.5〜200μm、好ましくは1〜100μmであり、200μm以上に厚いと接着剤の硬化速度が減少するため硬化が不十分となることもあるので好ましくない。接着剤を塗布した後の両基板フィルムの貼合わせは、一般に行われているラミネート手段により行うことができるが、貼合わせ時に気泡の混入を徹底的に排除するようにして行う。塗布および貼合わせ後の接着剤層の硬化は、用いる接着剤に応じて適宜の条件により、光または電子線を長尺の貼合わせフィルムの幅方向に均一に照射することにより行うことができる。
【0045】
(第2実施形態)
本第2実施形態においては、上記第1実施形態の積層フィルムについて、第1の基板フィルム上に接着剤層又は粘着剤層を形成し、接着剤層又は粘着剤層上に第2の基板フィルムを積層させ、更に高分子層を積層した積層フィルムを適用し、第1の基板フィルムおよび接着剤層若しくは粘着剤層の2層のフィルムを剥離する光学フィルムの作製装置とする以外は第1実施形態と同様に構成することにより、同様の効果を奏することができる。
【0046】
(第3実施形態)
本第3実施形態においては、上記第1実施形態の積層フィルムについて、粘着性を有する第1の基板フィルム上に第2の基板フィルムを積層させ、更に高分子層を積層した積層フィルムを適用し、第1の基板フィルムを剥離する光学フィルムの作製装置とする以外は第1実施形態と同様に構成することにより、同様の効果を奏することができる。
【0047】
なお、上述した第1実施形態、第2実施形態及び第3実施形態は本発明に係る光学フィルム作製装置又は光学フィルムの作製方法の実施形態を説明したものであり、本発明に係る光学フィルム作製装置又は光学フィルムの作製方法は本実施形態に記載されたものに限定されるものではない。本発明に係る光学フィルム作製装置又は光学フィルムの作製方法は、各請求項に記載した要旨を変更しないように実施形態に係る光学フィルム作製装置又は光学フィルムの作製方法を変形し、又は他のものに適用したものであってもよい。
【符号の説明】
【0048】
1,10…光学フィルム作製装置、2,20,20a1,20a2,20b,20c…検知部(検知センサ、センサ)、3…ECU、4…制御部、5…駆動部、11…搬送ロール、13…バックロール、17…剥離搬送ロール、19…巻き取りロール、21…積層フィルム、22…光学フィルム、23…第1の基板フィルム。
図1
図2
図3
図4
図5