【実施例】
【0110】
以下の限定を意図しない実施例は具体的な実施形態を示すために提供される。実施形態は、全体にわたって、1以上の以下の実施例から1以上の詳細で補完されてよく、および/または実施形態からの1以上の要素は以下の1以上の実施例から1以上の詳細を置き換えられてよい。
【0111】
本願明細書で論じられるように、基質および標的は、本願明細書に記載の方法によりハロゲン化または、フッ素化された炭素含有化合物である。
【0112】
実施例1−Mn(TPP)Cl触媒によるハロゲン化
触媒量のMn(TPP)Cl、相間移動触媒(PTC)として塩化テトラブチルアンモニウム、および亜塩素酸ナトリウムを伴う二相系は様々なシンプルなアルカンを高選択的に塩化アルキルに変換した(表1)。極微量の酸化された生成物および他の塩素化された生成物は最適条件で検出された。MnまたはPTCの不存在下での反応は無視できるほどのものであった。興味深いことに、強いC−H結合を有する基質(ネオペンタン(BDE=〜100kcal/mol)など)でさえ、触媒としてMn(TMP)Clを用いることにより有用な収率で塩素化され得る。トルエンを基質として用いたとき、ベンジル位は専ら塩素化された。興味深いことに、シクロヘキサンおよびトルエンは、競争反応において、C−HのBDEに11kcal/molの差異があるにも関わらず、同様の反応性を有することが見いだされた。さらに、ノルカランを診断用基質として用いたとき、主な生成物は再置換され、マンガンポルフィリン誘導ヒドロキシル化反応と同様の長寿命のラジカル中間体の改善を示した。塩素化反応は、NaOClをNaOBrで単に置換することにより臭素化に拡張されてよい。シクロヘキサンの臭素化は、かなりの量の塩化シクロヘキシルを主生成物としてシクロヘキシル臭化物を与え、ハイポハライトは溶媒またはアキシャルリガンドよりむしろハロゲン源であることを示した。
【0113】
代替の、限定を意図しない物質。
【0114】
次亜塩素酸ナトリウム(NaOCl、アルドリッチ)を分光学的に標準化した(Λmax292nm,8350M
−1cm
−1)。次亜臭素酸ナトリウムを、NaOClと10%過剰の臭化ナトリウム(NaBr,99.99%、アルドリッチ)とを混合して調製し、すぐ用いた。5,10,15,20−テトラフェニルポルフィリナトマンガン(III)塩化物[Mn
III(TPP)Cl]をアルドリッチから購入した。5,10,15,20−テトラメシチルポルフィリナトマンガン(III)塩化物[Mn
III(TMP)Cl]をテトラメシチルポルフィリンを金属化して調製した。ビシクロ[4.1.0]ヘプタン(ノルカラン)を文献(Smith,R.D.;Simmons,H.E.Org.Synth.1961,41,72)の方法により調製した。ジクロロメタン(HPLC等級)をCaH2を用いて蒸留した。水を蒸留し、ミリポアシステムで脱イオン化した。他の物質の最高純度のものをアルドリッチから購入し、さらに精製することなく用いた。
【0115】
(計測手段)
NMRスペクトルを500MHz Varian INOVA分光計を用いて得、内部標準として溶媒を用いてppm単位で報告する(CDCl
3(δ7.26))。GC/MS分析を、Agilent 5975質量選択的検出器(Agilent 5975mass selective detector)を備えるAgilent 7890Aガスクロマトグラフにおいて行った。内部標準を相対的応答係数を測定することにより提供化するために用いた。
【0116】
(シンプルな炭化水素の触媒的塩素化)
例となるシンプルな基質(すなわち、炭素含有化合物)を以下の表1に列挙している。そして本願明細書に例示されている方法を他の基質と共に用いてよい。窒素雰囲気下で、NaOCl(0.33M、pH=11)2mLを、4mLの密封バイアル中、ジクロロメタン1mLにマンガンポルフィリン(0.013mmol)、塩化テトラブチルアンモニウム(TBACl、0.027mmol)、および基質(2mmol)の溶液を加えた。二相混合物を窒素雰囲気で滑らかに撹拌した。常温で反応させ、当該反応の完了を高電子化のポルフィリンの茶赤色の消失およびマンガン(III)種の緑色の形成により知った。触媒を、ショートシリカゲルカラムを用いてCH
2Cl
2で溶出して除去し、その溶液をGC/MSで分析した。塩素化生成物の収率を添加された酸化剤に基づいて計算した。生成物の帰属をGCの保持時間および基準試料を用いた断片化に基づき行った。
【0117】
【表1】
【0118】
実施例2trans−デカリンの塩素化
Mn(TPP)ClまたはMn(TMP)Clによって触媒されるtrans−デカリンの塩素化はとても明らかであった。N−クロロスクシンイミド(NCS)または次亜塩素酸などの一般的に用いられる塩素化剤を用いて、位置選択性に乏しく、および第三級/第二級選択性が〜1.4/〜3である生成物の混合物をそれぞれ与える。主に、Mn(TPP)Clを触媒を用いたtrans−デカリンの塩素化はメチレン−塩素化生成物の95%の選択性を与えた(スキーム1)。さらに、よりヒンダード触媒Mn(TMP)Clを用いたとき、2−クロロデカリン(3a)は、76%選択性で得られた。そのような不活性なメチレンC−H結合の塩素化においてそのような高選択性を以前観測されていない。
【0119】
trans−デカリンの塩素化の生成物を、基準試料を用いて、GCの保持時間を比較して帰属し、塩化チオニルで対応するアルコールを処理することにより調製した。エクアトリアル異性体とアキシャル異性体の割合は、C1およびC2の両方の塩素化とも〜1であった。
【0120】
【化1】
【0121】
実施例3 複雑な基質のハロゲン化法
図1Aおよび
図1Bに、複雑な基質のハロゲン化法の例を示す。、例となる複雑な基質は5α−コレスタンであってよいが、本願明細書において当該方法は他の基質に用いられてよい。5α−コレスタンの塩素化、48個の不飽和C−H結合を含有する飽和ステロイドを試験した。
【0122】
珍しいことに、6個の第三級C−H結合および13個の塩素化の可能性のあるメチレン部位に関わらず、塩素化は、環Aの立体障害の最も小さいメチレン位であるC2位およびC3位で観測されただけであり、正味55%収率であった。
図1Aを参照すると、C2の塩素化は、エクアトリアル塩化物を15:1の選択性で与え、C3位のエピマー混合物が得られた(
図1Aの4b)。この例は、シンプルな分子間状況で第二級C−H結合の塩素化の高い選択性を製造し、立体因子の性質を目立たせる。
【0123】
α−コレスタンの塩素化:窒素雰囲気下で、NaOCl(0.33M、pH=11)2mLを4mLの密封バイアル中、ジクロロメタン1mLにMn(TMP)Cl(0.033mmol)、塩化テトラブチルアンモニウム(TBACl、0.027mmol)、およびコレスタン(0.22mmol)の溶液を加えた。二相混合物を窒素化で円滑に撹拌した。水層を12時間後に除去し、別の等量の新鮮な次亜塩素酸塩をN
2下で添加した。当該反応を別の12時間行い、粗製混合物を
1H NMRによって分析した。
【0124】
Mn(TPP)Cl触媒によるコレスタンの塩素化により、より複雑な生成物の混合物を得た。有意に、C2位塩化物のエクアトリアルとアキシャルとの割合は、Mn(TMP)Clの15:1に対して、およそ1:1であり、ポルフィリン種はハロゲンの転移段階に関係する。
【0125】
スクラレオリドは、抗真菌性および細胞毒性活性を有する植物由来のテルペノイドである。
図1Bに関して、Mn(TMP)Cl触媒によるスクラレオリドの塩素化は、C2エクアトリアル塩化物を単離収率42%で与えた(
図1Bの5a)。その構造を、5aの
1H−NMRにおいて、δ4.22(J=12.1,4.2Hz)で、トリプルトリプレットのシグナチャーを観測することにより確認した。C2位/C3位の選択性は7:1であった。当該方法を任意の複雑な構造に拡張してよい。
【0126】
スクラレオリドの塩素化:手順は、上記のコレスタンの塩素化と、生成物をフラッシュクロマトグラフィ(5%のEtOAc/ヘキサン)で精製し、かつ出発物質を2回再利用したことを除いて、同様である。主生成物の帰属は、アキシャルのC2位のプロトンH
a(δ4.22)の特有の
1HNMRカップリングパターン(1つは大きく(アンチ)、1つは小さい(ゴーシュ)のJ値(トリプルトリプレット))に基づく。
1H NMR(500MHz,CDCL
3)δ4.22(tt,J=12.1,4.2Hz,1H),2,43(dd,J=15.5,14.8Hz,1H),2.27(dd,J=16.1,6.5Hz,1H),2.10(dt,J=12.0,3.4Hz,1H),2.05−1.96(m,3H),1.90(dq,J=14.3,3.7Hz,1H),1.70(td,J=12.6,4.2Hz,1H)1.55−1.33(m,6H),1.12(dd,J=9.9,2.8Hz,1H),0.96(s,3H),0.96(s,3H),0.89(s,3H).
【0127】
不活性なメチレンC−H結合の位置選択的な塩素化は、あまりなく、分子間直接群の使用を含むわずかに公知の例を有する。本願明細書において、位置選択性は、触媒の構造的に強制的な位置決めより、分子間相互作用から得られるかもしれない。
【0128】
この新たな転移の提案されるメカニズムをスキーム2に概説される。詳細は、今のところ解明されてなく、O=Mn
IV−OHポルフィリンのみまたは極めて同様の種が触媒反応中に観測された。さらに、C−H選択性は、ポルフィリンのメソ置換基の性質に応じていた。基礎的な次亜塩素酸ナトリウムは、出発時のMn
IIIポルフィリンをジオキソ−またはオキソヒドロキソMn
v錯体に酸化することが予測されている。続く基質からの水素原子の抽出は、アルキルラジカルおよびヒドロキソMn
IV錯体を与えるだろう。生成物形成段階のため、塩素原子はL−Mn
IV−OCl錯体から初期の炭素ラジカル中心に移動し、反応性オキソMn
v種を再生することも示唆される。この連鎖反応が作用するため、初期に形成されたアルキルラジカルは、ノルカランの塩素化を伴う転移からも明らかなように、[L−Mn
IV−OH・R]ケージから脱出しなければならない。第二の結紮している水酸化物または次亜塩素酸アニオンは、これらの塩基性条件(pH12の水相)下、L−Mn
IV−OH中間体の酸化還元電位を低下させ、したがって、アルキルラジカルの再結合速度を緩やかにし、酸化生成物の形成を予防することが予測されている。ピリジンのような他のアルキルリガンドはハロゲン化の選択性の低下をもたらした。さらに、C−H酸素化反応中のMn
IVポルフィリン種の形成は、高pHであることが最近分かってきている。
【0129】
【化2】
【0130】
もっとも妨害されないメチレン位を優先することは、C−H結合を解離してMn
v=0(dπ−pπ)*フロンティア起動にアプローチしやすくする分子間の結合によらない触媒−基質の相互作用を主な要因とした。σ−対称性である共線上の[Mn
v=0・・・H・・・ C]遷移状態構造は、メチレン部位のこの明らかな優先腱を説明するものではないだろう。ところが、H原子抽出の、πアプローチは、Mn−ポルフィリン触媒のmeso−アリール基と基質のC−H結合に隣接する立体的かさ高さとの有意な相互作用をもたらすだろう。
【0131】
当該結果は、極めて位置選択的な脂肪族のハロゲン化は、Mn(TPP)ClおよびMn(TMP)Clと同様のシンプルな触媒と次亜塩素酸塩または次亜臭素酸塩と同様の普遍的なハロゲン化試薬を用いて予想通りに達成されうる。オキソMn
v種は、ハロゲンイオンを酸素化もし得、同様のハロゲン化は他の酸化剤を用いて達成されてよい。
【0132】
実施例4−ハロゲン化用の追加基質
様々な有用な基質を本願明細書に提示されるハロゲン化法を用いてハロゲン化しうる。限定を意図しない基質の例として、矢印で示される水素はハロゲンで置換されてよい。矢印に隣接する位置の水素もハロゲンで置換されてよい。、ハロゲンはフッ素、塩素または臭素であってよい。
【0133】
【化3】
【0134】
例となるシンプルな基質は上に列挙され、本願明細書に例示されている方法を他の基質と共に用いてよい。窒素雰囲気下で、NaOCl(0.1〜3M、pH=9〜13)は、密封バイアル中、マンガンポルフィリン(0.001〜1mmol)、塩化テトラブチルアンモニウム(TBACl、0.005〜0.5mmol)および基質(0.1〜20mmol)のジクロロメタン溶液に添加され得る。二相混合物を窒素化で滑らかに撹拌した。常温で反応させ、当該反応の完了を高電子価のポルフィリンの茶赤色の消失およびマンガン(III)種の緑色の形成により知った。触媒を、ショートシリカゲルカラムを用いてCH
2Cl
2で溶出して除去し、その溶液をGC/MSで分析した。塩素化生成物の収率を添加された酸化剤に基づいて計算した。生成物の帰属はGCの保持時間および基準試料を用いた断片化に基づき得る。
【0135】
実施例5−臭素化
次亜塩素酸塩を次亜臭素酸塩で置換して、基質を臭素化してよい。同じく、臭化物イオンを等量の次亜塩素酸塩によりインシチュで酸化して、基質を臭素化してよい。
【0136】
実施例6−フッ素化
本願明細書に記載の任意の方法で得られる塩化アルキルおよび臭化アルキルは、文献の方法を用いた求核置換を介してフッ化アルキルに変換され得る。例えば、Landini,D.,Montanar,R.,およびRolla,F.Reaction of Alkyl−Halides and Methanesulfonates with Aqueous Potassium Fluoride in Presence of Phase−Transfer Catalysts − Facile Synthesis of Primary and Secondary Alkyl Fluorides(相関移動触媒の存在するフッ化カリウム水溶液を用いたアルキルハロゲン化物およびメタンスルホン酸の反応−第一級および第二級アルキルフッ化物の容易な合成)(1974)Synthesis− Stuttgart, Issue::6,pages:428〜430参照(それらの全てを説明するように、参照により本願明細書に援用したものとする。)。そのような反応は、本願明細書に記載される任意の方法と組み合わせて提供されてよい。
【0137】
実施例7−マンガンポルフィリン触媒による直接的C−H酸化的フッ素化
酸化剤としてのmCPBA、フッ素源としてのフッ化銀およびフッ化テトラブチルアンモニウム、触媒としてのMn(TMP)Clの存在下で、異なる基質は選択的にフッ素化され得る。異なる環状アルカンは、中程度の収率で選択的にフッ素化され得る。低収率で最適化されていないが、ベンジル位も選択的にフッ素化され得る。実施例を、表2および表3に示している。
図25に関して、マンガンポルフィリン触媒による反応スキームが示される。
【0138】
【表2】
【0139】
【表3】
【0140】
マンガンポルフィリンによってもたらされるこの珍しいフッ素化に興味をそそられるので、モデル基質として上記trans−デカリンの位置選択的な塩素化を、同じ化合物の直接的酸化的フッ素化と比べた。興味深いことに、この基質のフッ素化は、塩素化反応と同様の位置選択性を与え、同様のC−H抽出能を示した。同じ条件下でのtrans−デカリンの反応は、C2:C1の選択性のメチレンフッ素化生成物を3.5:1で与えた(
図2A)。反応性の高いオキソ−または、ジオキソ−マンガン(V)中間体は、反応中の水素の抽出の一因であるかもしれない。立体障害のあまり大きくないマンガンポルフィリン触媒は、選択性に乏しい。
【0141】
フッ素化反応は、水分を排出するためにとられる注意なく、窒素化で進行した。溶媒を、Grubbsの方法(A.B.Pangborn,M.A.Giardello,R.H.Grubbs,R.K.Rosen,F.J.Timmers.Organometallics 15,1518(1996)(それらの全てを説明するように、参照により本願明細書に援用したものとする))に従って精製した。5,10,15,20−テトラメシチルポルフィリナトマンガン(III)塩化物[Mn
III(TMP)Cl]をテトラメシチルポルフィリンを金属化して調製した。ヨードシルベンゼンを水酸化ナトリウム溶液を用いてヨードベンゼンジアセタートの加水分解により調製した。ビシクロ[4.1.0]ヘプタン(ノルカラン)を文献(Smith,R.D.;Simmons,H.E.Org.Synth.1961,41,72(それらの全てを説明するように、参照により本願明細書に援用したものとする))の方法に従って調製した。アルドリッチから入手できる他の購入した物質は最高純度であり、さらに精製することなく用いた。GC/MS分析を、Agilent 5975質量選択検出器を備えるAgilent 7890A ガスクロマトグラフにおいて行った。
1H NMRスペクトルをVarian INOVA 400(400Hz)またはBruker Avance 500(500MHz)分光計において得、内部標準として溶媒を用いてppm単位で報告する(CDCl
3(δ7.26))。データを化学シフト(δまたはppm)、多重性(s=一重線,d=二重線,t=三重線,q=四重線,m=多重線)、結合定数(Hz);積算強度で報告した。
13C NMRスペクトル(プロトンデカップリング)をBruker Avance 500(125MHz)分光計において測定し、内部標準として溶媒を用いてppm単位で報告する(CDCl
3(δ7.26))。
19F NMRスペクトルをVarian INOVA 400(375Hz)分光計において得、外部基準PhF(
19F,CFCl
3に対してδ−113.15)を添加してppmで報告する。
【0142】
Mn(TMP)Cl触媒によるC−H結合フッ素化の一般的な手順。
【0143】
マグネチック撹拌子を備えるオーブンで乾燥した25mLのシュレンク管に、以下を充填した:プレ触媒,Mn(TMP)Cl(13.2mg、0.015mmol,1mol%),TBAF−3H
20(0.3mmol),AgF(4.5mmol,3等量),基質(1.5mmol)およびナフタレン(内部標準、0.5mmol)。これらの条件下、(TMP)Mn
III−Clで観測される紫外可視λ
max(475nm)は、(TMP)Mn
III−F(453nm)および[(TMP)Mn
III(F)
2]−(440nm)の1:2混合物の紫外可視λ
maxをすぐ変化させる。フラスコに蓋をして、窒素を5分間パージした。その後、CH3CN(1.5mL)およびCH
2Cl
2(0.5mL)をシリンジで滴下して、フラスコをオイルバス中50℃に加熱した。ヨードシルベンゼン(6−15mmol,4−10等量)を6−15時間かけて固体形態で反応混合物にゆっくり滴下した。ヨードシルベンゼンの滴下が早いとき、収率はかなり低下した。はるかに短い反応時間(1〜2時間)を、より高い温度で達成し得た。mCPBAを酸化剤として、最大40%収率が1時間以内に得られた。1等量の酸化剤の各添加を少量の溶媒に溶解させて添加されるMn(TMP)Cl(13.2mg、1mmol%)に続けた。反応が完了したとき、当該溶液を室温まで冷却し、シリカゲルのショートパッドを通した(ジクロロメタンで洗浄している)。濾液をGC/MSで分析し、次いで真空下で濃縮した。生成物をカラムクロマトグラフィにより反応残渣から分離した。
【0144】
実施例8−5α−アンドロスタン−17−オンフッ素化(
図26C)
フルメタゾンおよびフルアステロン(fluasterone)中などにフッ素−置換 ステロイドは、代謝経路をブロックする利益を有することがわかっており(J.P.Begue,D.Bonnet−Delpon,J フッ素Chem 127,992(2006),それらの全てを説明するように、参照により本願明細書に援用したものとする)、
18F−フルオロジヒドロテストステロンは、ヒトの前立腺癌を撮像する新しい 放射性トレーサーとして有望であることを示している(P.B.Zanzonico ら J.Nucl.Med.45,1966(2004)(それらの全てを説明するように、参照により本願明細書に援用したものとする))。直接的な、後期段階のステロイドフッ素化手順は、これらの重要な技術の用途を大きく拡大しうるので、シンプルなステロイドに対するマンガン触媒によるフッ素化反応の利用が探索されている。30個の不活性なsp3のC−H結合を含有する5α−アンドロスタン−17−オンのフッ素化が試験された。この分子の分析は、カルボニル基が、環Dを電子的に不活性化するのだろうということを示唆した。環Bおよび環Cは立体障害が大きく、酸化のための部位である可能性が最も高い環Aのメチレン基を残す。この分析と一致して、かつ分子の複雑性に関わらず、環AのC2位およびC3位のみ、48%の素晴らしい全収率でフッ素化された(59%の転換に基づき正味81%の収率)。当該反応の生成物は、診断的な
19F−NMRスペクトルおよび特徴的なプロトンのJカップリングから簡単に割り当てられうる。特に、5:1のジアステレオ選択性は、C2位およびC3位の両方で観測され、おそらくC10位のメチル基のアキシャルの立体効果を反映している。
【0145】
5a−アンドロスタン−17−オンを基質として用いる反応を、上記の一般的な手順に従って行った。上記の反応の後、混合物を一般的な手順で概略化されている後処理手順を行い、カラムクロマトグラフィ(ヘキサン、次いで30%DCM/ヘキサン)で精製した。生成物の構造の帰属を、診断的なF−NMRスペクトルに基づいて行った。2α(−172.4ppm,dm),2β(−172.8ppm,qt),3α(−181.5ppm,qt),3β(−168.3ppm,dm).
【0146】
実施例9−スクラレオリドのフッ素化
スクラレオリドを基質として用いる反応を、上記実施例7の一般的な手順に従って行った。スクラレオリドのフッ素化は、正味56%収率でC2位およびC3位のフッ素化された生成物を与えた(
図2D)。C2位のフッ素化は、ほぼ3:1で優先され、おそらくC4位のgem−ジメチル基の立体障害に起因する。同様の選択性は、BaranおよびEshenmoserにより、ロジウム触媒によるスクラレオリドのアミノ化でこの基質に対して観測されており(P.S.Baran,T.Newhouse,Angew Chem Int Edit 50,3362(2011);およびK.Chen,A.Eschenmoser,P.S.Baran,Angew Chem Int Edit 48,9705(2009),それらの全てを説明するように、参照により本願明細書に援用したものとする)、そしてWhiteらにより、Fe(pdp)/H
20
2の酸化系が観測されている(M.C.White,M.S.Chen.Science 318,783(2007)(それらの全てを説明するように、参照により本願明細書に援用したものとする))。以上の反応後、混合物を一般的な手順で概略化されている後処理手順を行い、カラムクロマトグラフィ(ヘキサン、次いで10%EtOAc/ヘキサン))で精製した。生成物の構造の帰属を、診断的なF−NMRスペクトルに基づいて行った。2α(−180.3ppm,dm),2β(−172.6ppm,qt),3α(−187.8ppm,qt),3β(−185.6ppm,dm).主生成物の2a−フルオロ異性体を2回目のカラムクロマトグラフィにおいて白色固体として単離し得た。
1H NMR(400MHz,CDCl
3)δ4.83(dtt,J=48.0,11.3,4.6Hz,1H),2.45(dd,J=16.2,14.7Hz,1H),2.27(dd,J=15.8,6.5Hz,1H),2.12−1.85(m,6H),1.70(td,J=12.6,4.1Hz,1H),1.43−1.30(m,6H),0.99(s,3H),0.95(s,3H),0.89(s,3H).19F NMR−180.3ppm.MS(EI)m/z(計算値)C
16H
25FO
2[M]
+:268.2、(実測値)268.2.
【0147】
実施例10−酢酸ボルニルのフッ素化(
図26D)
酢酸ボルニルを基質として用いる反応を、上記の実施例7における一般的な手順に従って行った。反応を終えた後、混合物を一般的な手順で概略化されている後処理手順を行い、DCM:ヘキサン(1:4)を溶離液として用いてカラムクロマトグラフィで精製した。酢酸ボルニルの反応はexo−5−フルオロ−酢酸ボルニルを55%の単離収率を与えた(
図2B)。生成物の特性解析はC−H 相関NMR分光法および
19F−NMR分光法に基づいた(L.F.Lourieら,J フッ素Chem 127,377(2006)(それらの全てを説明するように、参照により本願明細書に援用したものとする))。
1H NMR(500MHz,CDCl
3)δ4.71(d,J=9.7Hz,1H),4.56(ddd,J=60,7.6,2.3Hz,1H),2.33(m,1H),1.98(s,1H),1.63(dd,J=35.3,15.4Hz,1H),0.97(s,3H),0.85(s,3H),0.83(s,3H),0.68(dd,J=14.5,3.4Hz,1H).
13C NMR(125MHz,CDCl
3)δ95.8(d,186Hz),77.6,50.5(d,17.6Hz),37.5(d,18.0Hz),32.2(d,11.1Hz),21.3,20.2,19.4,12.6.
19F NMR−158.2ppm.MS(EI)m/z(計算値)C
12H
19FO
2[M]
+:214.1、(実測値)214。カンファーのC5位も、P450cam(CYP101)の選択性の類似性に受け入れられるだろう(I.Schlichtingら Science 287,1615(2000)(それらの全てを説明するように、参照により本願明細書に援用したものとする))。しかしながら、標準的なフッ素化条件下でカンファ−を処置することにより、95%の出発物質が回収された。この場合の低い反応性は電子吸引性のカルボニル基に起因し、明らかに、フッ素化に対して、分子全体を不活性化する。
【0148】
図3Aに示す触媒サイクルは、このマンガンポルフィリン触媒によるフッ素化を示す。フッ化物イオンの存在下で残っているMn(TMP)Cl触媒の酸化は反応性オキソマンガン(V)種(0=Mn
v(TMP)F)を与え、基質から水素原子を抽出し、中間体に再結合されるHO−Mn
IV−Fを与えうる。それぞれ調製されたMn
IV(0)(TMP)に結合するフッ化物は、十分に特定されているMn
IV(0)に水酸化物の配置と類似している[Mn
IV(0)(F)(TMP)]
−の形態に帰属されるUVスペクトルシフト(423nm〜427nm)によって示された(J.T.Groves,M.K.Stern.J.Am.Chem.Soc.110,8628(1988)(それらの全てを説明するように、参照により本願明細書に援用したものとする))。フッ素化された生成物を形成する段階はHO−Mn
IV−Fまたはtrans−ジフルオロマンガン(IV)種のいずれかによる初期の基質のラジカルの補足であり、AgFを伴う反応により形成する。これらの反応において観測される珍しいメチレン選択性は基質および接近しているオキソMn
v触媒の間の立体電子的に生じる立体衝突の原因となる。低スピンのd
2オキソMn
v錯体のLUMOは、2つの直行するMn−0π*軌道であると予測され、解離しやすいC−H結合の湾曲したπ*−アプローチ軌道への直接的に接近するだろう(Jin,N.;firahim,M.;スピロ,T.G.;Groves,J.T.,trans−ジオキソ マンガン(V)ポルフィリン,J.Am.Chem.Soc.2007,129,12416〜12418;およびJin,N.;Lahaye,D.E.;Groves,J.T.,A “Push−Pull” Mechanism for Heterolytic 0−0Bond Cleavage in Hydroperoxo マンガンポルフィリンs,Inorg.Chem.2010,24,11516〜11524,それらの全てを説明するように、参照により本願明細書に援用したものとする)。
【0149】
いくつかの実験をこのメカニズムの仮説を検証するために行った。初期のC−Hヒドロキシル化を、フッ素化物は、出発物質としてアルコールを含むこれらの条件下で製造されないことを示すことを制御することにより除外した。初期のC−Hヒドロキシル化を、シクロヘキサノールはこれらの条件下でシクロヘキサノンに酸化されることを示すように制御することにより除外した。シクロヘキシルフッ化物を検出しなかった。1−メチルシクロヘキサノールのヒドロキシル基も反応条件(以下の表4のエントリー8参照)に安定である。ジュウテリウム反応速度同位体効果をシクロヘキサンおよびシクロヘキサン−d
12の1:1の混合物の反応により評価し、6.1.の分子間競争KIEを製造した。同様の値(5.7)をエチルベンゼンおよびエチルベンゼン−d
15の混合物において観測した。C−H結合開裂は反応において律速段階であることを示す大きなKIEは、典型的なマンガンポルフィリン触媒によるヒドロキシル化反応と一致する。さらに、診断のラジカルクロック基質であるノルカランの反応は、2−フルオロノルカランおよびかなりの量の転移したフッ素化生成物、3−フルオロメチルシクロヘキセンを与え、炭素ラジカル開環プロセスを示す(表4,エントリー6)。2−ノルカラニルラジカルの開館速度定数は2xl0
8M
−1S
−1であるので、これらの2:1の割合のシクロプロピルカカルビニルとホモアリルフッ化物は2.5nsの短いラジカルの寿命を示す(J.T.Groves,J Inorg Biochem 100,434(2006)(それらの全てを説明するように、参照により本願明細書に援用したものとする))。初期の有機ラジカルおよびフッ化銀間の直接反応はこの時点で排除排除され得るけど、フェネチルラジカルとの反応は、アゾビス−α−フェニルエタンとAgFとを加熱することにより、インシチュで生成され、わずかな量のフッ素化された生成物を与えた。
【0150】
【表4】
【0151】
ヒドロキシルマンガン(IV)中間体とフッ化源とのリガンド交換により生成されるtrans−Mn
IV(TMP)F
2(TMP:テトラメシチルポルフィリン)は、フッ素を炭素ラジカルに移動させ、フッ化アルキルを生成する鍵中間体であることを要求された。trans−ジフルオロMn
IV(TMP)の好ましいフッ素化剤としての確認は、その単離および構造の特性解析により可能とされる。Grossらにより特定されたtrans−Mn
IV(TMP)Cl
2(L.Kaustov,M.E.Tal,A.I.Shames,Z.Gross,Inorg Chem 36,3503(1997)(それらの全てを説明するように、参照により本願明細書に援用したものとする))は、trans−Mn
IV(TMP)F
2の合成前駆体として選択された。Mn
IV(TMP)Cl
2ベンゼン溶液を大量のアクセスするAgF(>50等量)で処理することは、30分以内に赤色をオレンジレッドの色に変化させるだろう(
図4)。Mn
IV(TMP)F
2の純粋な結晶を、Mn
IV(TMP)Cl
2を過剰のAgFで処置することにより得た(L.Kaustov,M.E.Tal,A.I.Shames,Z.Gross.Inorg.Chem.36,3503(1997)(それらの全てを説明するように、参照により本願明細書に援用したものとする))。この独特の化合物の分子構造は、1.7931(17)および1.7968のF−Mn
IV−F結合長を有する2つの軸方向に結合したフッ化物イオンを示した
図3C;表5−9)。これらの結合長は、ヘキサフルオロマンガン酸ジアンモニウム(IV)の結合長と極めて近く、他のフルオロマンガン(IV)種は構造的にこれまで特徴づけられている(S.Kaskel,J.Strahle,Z Anorg Allgem Chem 623,1259(1997)(それらの全てを説明するように、参照により本願明細書に援用したものとする))。Mn
IV(TMP)F
2は、フッ素化反応条件下でフッ化銀を置換し得、Mn
IV(TMP)F
2の存在下でアゾビス−α−フェニルエタンの熱分解は1−フルオロエチルベンゼンを41%収率で与えた。さらに、Mn
IV(0)(TMP)とフッ化物イオンとの処理は、十分に特定されているオキソMn
IVへの水酸化物の配置に類似するUVスペクトルシフト(423nmから427nm)の[Mn
IV(0)(F)(TMP)]−の形態に帰属されるものを製造した(J.T.Groves,M.K.Stern.J.Am.Chem.Soc.110,8628(1988)(それらの全てを説明するように、参照により本願明細書に援用したものとする))。これらの観測は、Mn
IV(TMP)F
2または関連するヒドロキシフッ化物はフッ素のデリバリー段階に関連し、AgFの役割はターンオーバー中のフッ化マンガン(IV)を補充しようとする。
【0152】
【表5】
【0153】
【表6】
【0154】
X線構造は高性能であった。
【0155】
図3A−3Dに提案される中間体および遷移状態のポテンシャルエネルギー構造および電子構造は、DFTおよび分極した連続体の溶媒和モデルを用いて探索された。エクアトリアル構造においてMn(THP)F2からシクロヘキシルラジカルに移動するフッ素原子は、驚くべきことに、たった3kcal/molの低活性化バリアにより生じることが予測された(オキソマンガンポルフィリンにより触媒されるヒドロキシル化反応の酸素の再結合のバリアと極めて似ている)。わずかに高い遷移状態は、アキシャル構造において、シクロヘキシルラジカルへのフッ素の送達のために置換された(4.2kcal/mol)。さらに、trans−ジフルオロMn
IV種(X=F)のフッ素転移の計算したバリアは、trans−ジフルオロMn
IV種(X=F)に類似するヒドロキシ−フッ化物(X=OH)より低い〜3kcal/molだった。したがって、マンガン(IV)ジフルオリドは、そのヒロドキソフルオロの同族より、シクロヘキシルラジカルとはるかに早く反応するはずである。このフッ素転移の小さいバリアと一致して、遷移状態は、反応軌跡において極めて早く、2.48Åの甚だしく長いC−F距離、および初期のマンガン(IV)ジフルオリドから極めてわずかにだけ延長されたMn−F距離を示す。
【0156】
紫外可視スペクトルは、およそ420nmの強い吸収の新しい種、続く520nmおよび680nmにおける2つのより弱い吸収が現れることを示した(
図5A、上:MnTMPCb、下:MnTMPCl
2+AgF、40分後)。新しい種のEPRスペクトルを
図5Bに示した(上:実験スペクトル、下:シミュレートスペクトル)。g≒4での強い信号およびg≒2での弱い信号は、アキシャル対称性の環境にある大きなゼロ磁場分裂定数(ZFS)を有する高スピンd
3イオンの特徴と一致している。6つのラインの超微細分裂は、g≒4およびg≒2の領域の両方でのI=5/2
55Mn核を原因とする。I=1/2
19F核はEPR分光法における明確な超高微細分裂を与えることが知られているので、さらに三重線分裂はg≒4領域で観測され、アキシャルリガンドとして2つのフッ化物の存在を示した(Thuesen,C.A.;Barra,A.L.;Glerup,J.Inorg.Chem.2009,48,3198(それらの全てを説明するように、参照により本願明細書に援用したものとする))。この新しい錯体の結晶構造は必要とされた(
図3C)。
図3Dに関して、trans−Mn
IV(TMP)F
2の選択された結合長および角度が示される。マンガンおよびアキシャルリガンドの間の結合長は、それぞれ1.797および1.794Aであり、K
2Mn
IVF
6のMn−Fの結合長と極めて同等である(1.79A).(Bukovec,P.;Hoppe,R.J.Fluorine Chem.1983,23,579(それらの全てを説明するように、参照により本願明細書に援用したものとする)。反応混合物の可視スペクトルは複雑であり、ターンオーバー間の触媒の様々な形態の存在に明らかに起因する。しかしながら、Mn(TMP)F
2の存在下でフェネチルラジカルの生成から1−フルオロエチルベンゼンの良好な収率は、マンガン(IV)フッ化物は優れたラジカルフッ素化剤であるというこれらのコンピューターによる推測のための実験的な支持を提供する。
【0157】
図28に、(X)
2MN
IVTMP錯体のEPRスペクトルを示す。当該スペクトルは、レート4+種の存在を示し、本発明において触媒として効果的である。
【0158】
本願明細書に記載される結果は、シンプルな炭化水素、テルペノイドおよびステロイド誘導体の選択的なフッ素化を示す。その収率は、十分に高く、その技術は反応は特別な装置および強酸化剤やフッ化物含有試薬が用いられるときはいつでもとられるべきである通常の注意以外の複雑な使用上の注意なしで行われ得ることを単純化する。この一段階、ワンポットのプロトコルにおけるフッ素源はフッ化物イオンであり、これらの技術は実に様々な生体分子および合成基本単位への
18Fの組み込みに簡単に用いられてよい。さらに、trans−ジフルオロマンガン(IV)ポルフィリン(Mn
IV(TMP)F
2)の単離および構造の特性解析はフッ素置換基のデリバリー用の遷移金属フッ化物などの豊富な化学の拡張を提案する。
【0159】
trans−Mn
IV(TMP)F
2のフッ素転移能を基質としてα−アゾビス−フェニルエタンを用いて試験した(
図10)。105℃の下、対応するフッ化アルキルは、trans−Mn
IV(TMP)F
2をMn
III(TMP)Fに変換することを伴って、2分以内に60%の収率で生成され得る。計算機実験は、Mn
IV(THP)F
2(THP:テトラヒドロポルフィリン)から第二級のアルキルラジカルへのフッ素のエネルギーバリアがたった3kcal/molであることを示したという結果を支持する。
図6に、trans−Mn
IV(TMP)F
2のアルキルラジカルへの転移を示す。
【0160】
より大きな天然の生成分子と同様、様々なシンプルなアルカンおよび置換アルカンは、触媒量の大きいマンガンポルフィリン(Mn(TMP)Cl)の存在下で効果的にフッ素化され得る。この酸化的脂肪族フッ素化反応は、フッ化源としてフッ化銀/フッ化テトラブチルアンモニウム三水和物を両方とも化学量論的に過剰に用いて、オキソ転移試薬としてのヨードシルベンゼンにより進められる。メタロポルフィリン酸化に典型的に用いられる過剰なヨードシルベンゼンは、この試薬の競争的な不均化のせいであり、非反応性のヨードキシベンゼンを生み出す。過剰なフッ化物イオンの必要性は、化学量論のフッ素化反応に由来し、水酸化物イオンも製造する。AgFは、Mn−OHをMn−F種およびAg
2Oに変換する。超乾燥条件を必要としない。シンプルな基質のパネルの初期の調査反応の結果を表4に示す。シクロアルカンは、モノフッ素化された生成物を50%の収率で与えた。典型的には、少量のアルコール(15〜20%)で〜70%変換し、ケトンも製造された。生成物はマンガンポルフィリンまたはヨードシルベンゼンを省略した対照実験において見いだされず、フッ化テトラブチルアンモニウムの不存在下で、酸素化された生成物:フッ素化された生成物の比が〜2:1である生成物が形成された。酸素化生成物のみ、フッ化銀なしで形成された。AgFおよびフッ化テトラブチルアンモニウムの両方の利点は、AgFのみで維持され得るより、反応媒体におけるAgFの有限の溶解度および高濃度のフッ化物イオンの必要性に明らかに由来する。(TMP)Mn
III−Clに観測される紫外可視λ
max(475nm)は、上記反応条件下で(TMP)Mn
III−F(453nm)および[(TMP)Mn
III(F)
2]−(440nm)の混合物の紫外可視λ
maxにすぐさま変更した。
【0161】
おそらく、フッ素原子により導入される生成物の電子不足に起因して、このレベルの変換で製造される無視できる量のジフッ化物があった。モノフッ素化の高選択性、カルボニル基の近くのC−H結合の低い反応性および溶媒とテトラブチルアンモニウムイオンの限られた反応性は、この反応においてC−H結合の開裂段階において極めて強い極性効果を反映するように見える。
【0162】
基質範囲の予備調査は表4(エントリー7〜12)に示される結果をもたらした。エステル、第三級アルコール、ケトンおよびアミド置換基を含有している置換された分子の範囲は、Mn(TMP)Clを伴うフッ素化の良好な基質であることが証明された。シクロヘキシルカルボキシル酸メチルのフッ素化(エントリー7)およびメチルシクロヘキサノール(エントリー8)のフッ素化は、主生成物として、trans−C3位のフッ化物を与えた。一置換の5員環および7員環のシクロアルカン(エントリー9、10、12)は、それぞれC3およびC4位でもっぱらフッ素化され、この反応の選択性にわずかな立体電子的効果を与えた。
【0163】
マンガン触媒によりヒドロキシル化をフッ素化に変更する可能性が示されているので、我々は次にこの反応をより大きな分子に用いることを目的とした。同じ条件下でtrans−デカリンの反応は、合計51%収率および75%変換において、C2:C1が3.5:1の選択性であるメチレンモノフッ素化生成物を与えた(
図26A)。極めて高いメチレン位置選択性がこの基質に見られ(>95%)、最近我々が報告したマンガン触媒による塩素化反応に見られたのと同様であり(Liu,W.;Groves,J.T.、Manganese Porphyrins Catalyze Selective C−H Bond Halogenations(マンガンポルフィリンの選択的なC−H結合ハロゲン化触媒),J.Am.Chem.Soc.2010,132,12847〜12849(それらの全てを説明するように、参照により本願明細書に援用したものとする)、同様の反応性のオキソ−または、ジオキソマンガン(V)中間体は両方の反応イオンにおいて水素吸収の原因となることを示している(Jin,N.;firahim,M.;スピロ,T.G.;Groves,J.T.,trans−ジオキソマンガン(V)ポルフィリン,J.Am.Chem.Soc.2007,129,12416〜12418(それらの全てを説明するように、参照により本願明細書に援用したものとする)。
【0164】
Mn
IV(TMP)F
2の化学量論量は、n(TMP)Clおよびヨードシルベンゼンを用いるシクロオクタンのシンプルなターンオーバーC−Hフッ素化においてフッ化銀を変換させうる。添加したMn
IV(TMP)F
2に基づいて、43%収率のフッ化シクロオクチルが得られた。Mn
IV(TMP)F
2の存在下でアゾビス−α−フェニルエタンの熱分解は、フェネチルラジカルを生成し、41%収率の1−フルオロエチルベンゼンをもたらした。これらに観測されたイオンは、初期の水素吸収後に、Mn
IV(TMP)F
2がフッ素送達系において基質ラジカルを補足しうることを示す。これらのラジカル補足実験の中圧のフッ素化の収率は、おそらくこれらの条件下でマンガン(IV)ジフルオリドの濃度の低下の原因である。触媒条件下でのこのような状況におけるフッ化銀の極めて重大な役割は、添加されたMn(TMP)Clを触媒マンガン(III)フッ化物に変換し、次いで、ターンオーバー中のマンガン(IV)フッ化物の一覧を補充する。基質ラジカルとAgFとの直接反応も考えられるので、アゾビス−α−フェニルエタンからインシチュで生成されるAgFとフェネチルラジカルとの反応は、極微量のフッ素化された生成物を与えた。
【0165】
実施例11−炭化水素のフッ素化(表4のエントリー1〜5、
図3A)
上記の一般的な手順に基づき、基質として、列挙される炭化水素を用いた反応が進行した。反応が完了したとき、当該溶液を室温まで冷却し、シリカゲルのショートパッドを通した(ジクロロメタンで洗浄している)。濾液をGC/MSで分析した。生成物の帰属を基準試料のGC保持時間と質量断片化の比較に基づき行った。trans−デカリンのフッ素化の生成物の帰属をDASTで対応するアルコールを処理することにより調製した基準試料のGC保持時間と比較して行った。
【0166】
実施例12−ノルカランのフッ素化(表4のエントリー6)
上記実施例7の一般的な手順に基づき、基質(2)として、ビシクロ[4.1.0]ヘプタン(ノルカラン)および、酸化剤として0.5等量のヨードシルベンゼンを用いた反応が進行した。反応が完了したとき、当該溶液を室温まで冷却し、シリカゲルのショートパッドを通した(ジクロロメタンで洗浄している)。濾液をGC/MSで分析した。転位生成物、3−フルオロメチルシクロヘキセンを質量スペクトルにおいて特徴的なm−CH
2Fのピークにより同定した。
【0167】
実施例13−フッ素化反応の反応速度同位体効果
上記実施例7の一般的な手順に基づき、基質として、シクロヘキサン/シクロヘキサン−d
12(1:1)または、エチルベンゼン/エチルベンゼン−d
10(1:1)および、酸化剤として0.5等量のヨードシルベンゼンを用いた反応が進行した。反応が完了したとき、当該溶液を室温まで冷却し、シリカゲルのショートパッドを通した(ジクロロメタンで洗浄している)。濾液をGC/MSで分析した。反応速度同位体効果を対応するピーク強度(シクロヘキセン/シクロヘキセン−
12の82/92[M−HF]
+およびエチルベンゼン/エチルベンゼン−
15の105/114[M−F]
+)の割合を計算して決定した。
【0168】
Mn
IV(TMP)F
2の調製。
Mn
IV(TMP)F
2を以前報告されているように調製したMn
IV(TMP)Cl
2と過剰のフッ化銀とを処置することにより調製した(P.B.Zanzonicoら,J Nucl Med 45,1966(2004)(それらの全てを説明するように、参照により本願明細書に援用したものとする))。典型的な実験において、フッ化銀(1.6mmol)を1.5mLのベンゼン中Mn
IV(TMP)Cl
2(30mg、0.033mmol)の溶液に固体形態で添加した。反応を室温で激しく撹拌して行った。2時間後、当該溶液をろ過して、不溶性の銀塩を除き、その濾液を真空下で濃縮した。このようにして得られた紫色の固体を0.5mLのベンゼンに再溶解させ、当該溶液を再度ろ過した。溶媒を真空下で除去して、Mn
IV(TMP)F
2を紫色の固体として得た(24mg、84%収率)。X線結晶構造解析に好適な光沢のある紫色の結晶を、2℃で0.5mLのベンゼン溶液中にペンタン層(3mL)を拡散させて成長させた(表5〜6)。
【0169】
実施例14−アゾビス−α−フェニルエタンとMn
IV(TMP)F
2との反応
アゾビス−α−フェニルエタンの熱分解を、新たに調製したMn
IV(TMP)F
2の存在下で105℃で行った。典型的な実験において、フッ化銀(1.6mmol)を1.5mLのベンゼン−d
6中のMn
IV(TMP)Cl
2(30mg、0.033mmol)の溶液に固体形態で添加した。当該反応混合物を室温で激しく撹拌した。2時間後、溶液を4mLのバイアルにろ過し、およびアゾビス−α−フェニルエタン(3mg、0.4等量)を、濾液に加えた。溶液を3つの凍結−圧送−融解のサイクルにより脱気氏、その後、4分間105℃で加熱した。当該バイアルを室温まで冷却し、(1−フルオロエチル)ベンゼンの収率を内部標準としてトリフルオロトルエンを用いて
19F NMR(δ−167.2ppm)により決定した。
【0170】
実施例15−Mn
IV(TMP)F
2を伴うシクロオクタンのシングルターンオーバーフッ素化
シングルターンオーバーフッ素化反応を、フッ化銀の代わりにMn(TMP)ClとMn
IV(TMP)F
2の存在下で実施した。典型的な実験において、マグネチック撹拌子を備えるオーブンで乾燥した25mLのシュレンク管に、以下を入れた:Mn(TMP)Cl(30mg、0.034mmol)、TBAF−3H
20(0.3mmol)およびMn
IV(TMP)F
2(30mg、0.034mmol)。フラスコに蓋をして、窒素を5分間パージした。その後、シクロオクタン(1.5mmol)を含有するCH
3CN(1.5mL)およびCH
2Cl
2(0.5mL)をシリンジで滴下して、フラスコをオイルバス中50℃に加熱した。ヨードシルベンゼン(11mg、0.05mmol)を混合物に一度に添加して、30分間撹拌した。当該溶液を室温まで冷却し、シリカゲルのショートパッドを通した(ジクロロメタンで洗浄している)。濾液をGC/MSにより分析し、フッ化シクロオクチルの収率(43%)を、内部標準としてエチルベンゼンを用い投入されたMn
IV(TMP)F
2に基づいて計算した。Mn
Iv(TMP)F
2を用いない条件下でのフッ素化は取るに足りなかった。
【0171】
実施例16−表4のエントリー7、化合物8
上記実施例7の一般的な手順に基づき、基質として、シクロヘキサンカルボン酸メチルを用いた反応が進行した。カラムクロマトグラフィ(ヘキサン、次いで5%EtOAc/ヘキサン)により精製した。位置化学的帰属を、非対称
13C NMRに基づき行った。立体化学的帰属を、明らかにビシナル位のtrans−ジアキシャルH−FのJカップリングおよび小さいビシナル位のH−Hカップリングに基づいて行った(δ4.85,dtt,J=47.7,5.7,2.3Hz)。
1HNMR(500MHz,CDCl
3)δ4.85(dt,J=47.7,2.3Hz,1H),3.61(s,3H),2.67(tt,J=11.6,3.8Hz,1H),2.11(m,1H),1.89(m,2H),1.72−1.38(m,5H).
13C APT NMR(125MHz,CDCl
3)176,88.6,51.8,37.8,33.1,30.2,28.1,19.6ppm.
19F NMR−183.0ppm.MS(EI)m/z(計算値)C
8Hi
3F0
2[M]
+:160.1、(実測値)160.1.
【0172】
実施例17−表4のエントリー8、化合物9
メチルシクロヘキサノールを基質として用いる反応を、上記実施例7の一般的な手順に基づき行った。カラムクロマトグラフィ(ヘキサン、次いで10%酢酸エチル/ヘキサン)により精製を行った。位置化学的帰属を非対称
13C NMRに基づき行った。立体化学的帰属を、フッ素およびヒドロキシルプロトンの明確なJカップリングに基づき行った(δ2.50(d,J=10.7Hz))。
1HNMR(500MHz,CDCL
3)δ4.86(dtt,J=48.1,5.3,2.9Hz,1H),2.50(d,J=10.7Hz,1H),1.97(m,1H),1.84(m,2H),1.64(m,2H),1.41(m,3H),1.14(s,3H).
13C NMR(125MHz,CDCl
3)91.6,42.8,38.4,30.4,29.7,16.7ppm.
19F NMR−179.2ppm.MS(EI)m/z(計算値)C
7H
13FO[M]
+:132.1(実測値)132.1.
【0173】
実施例18−表4のエントリー9、化合物10
上記実施例7の一般的な手順に基づき、基質として、メチルシクロヘプタノンを用いた反応が進行した。カラムクロマトグラフィ(ヘキサン、次いで4%酢酸エチル/ヘキサン)により精製した。位置化学的帰属を3つの結合F−C2カップリングに基づき行った(36.4ppm(d,J=8.7Hz))。
1H NMR(500MHz,CDCl
3)δ4.75(dtt,J=45.6,7.4,2.7Hz,1H),2.73,(m,1H),2.49,(m,1H),2.40(m,1H),2.30(ddd,J=15.4,9.2,2.5Hz,1H),2.08−1.76(m,5H).1.58(m,1H).
13C APT NMR(125MHz,CDCl
3)91.7,43.5,36.4,35.4,29.7,17.6ppm.
19F NMR−175.3ppm.MS(EI)m/z(計算値)C
7H
11FO[M]
+:130.1、(実測値)130.1.
【0174】
実施例19−表4のエントリー10、化合物11
上記実施例7の一般的な手順に基づき、基質として、N−メチル−トリフルオロアセチルシクロペンチルアミンを用いた反応が進行した。カラムクロマトグラフィ(ヘキサン、次いで4%酢酸エチル/ヘキサン)により精製した。位置化学的帰属を2つの結合F−C2カップリングに基づき行った(36.7ppm(d,J=22.0Hz))。立体化学的帰属を
19FNMRの化学シフトに基づき行った。cis−異性体(−171.0ppm)は、アミド基によるフッ素の磁場により、trans−異性体(168.8)より小さく高磁場へのシフトを示す。trans−11について、
1HNMR(500MHz,CDCl
3)δ5.13−4.39(m,2H),2.93(d,3H),2.23(dddd,J=35.8,15.9,10.6,5.0Hz,1H),2.07(m,1H),1.96−1.71(m,3H),1.67−1.49(m,1H).
13C APT NMR(125MHz,CDCL
3)157.2,116.5,94.5,56.4,54.0,36.7,35.5,32.9,29.0,27.5,25.8ppm.
19F NMR−68.7(s),−70.2(s),−168.8(m)ppm.MS(EI)m/z(計算値)C
7H
11FO[M]
+:213.1、(実測値)213.1.
【0175】
実施例20−表4のエントリー11、化合物12a(cis)
上記実施例7の一般的な手順に基づき、基質として酢酸シクロヘキシルを用いた反応が進行した。カラムクロマトグラフィ(1%の酢酸エチル/石油エーテル)により精製した。位置化学的帰属を非対称
13C NMRに基づき行った。立体化学的帰属を、明らかにビシナル位のtrans−ジアキシャルH−FのJカップリングおよび小さいビシナル位のH−Hカップリングに基づいて行った(δ4.63(dtt,J=52.1,5.8,2.9Hz))。
1H NMR(500MHz,CDCL
3)δ4.75−4.57(m,2H),1.99(s,3H),1.93(m,2H),1.74(m,2H),1.68−1.57(m,4H).
13C APT NMR(125MHz,CDCl
3)170.7,88.7,70.6,28.926.6,21.5ppm.
19F NMR−180.4ppm.MS(EI)m/z(計算値)C
8H
120
2[M−HF]
+:140.1、(実測値)140.1.
【0176】
実施例21−表4のエントリー11、化合物12b(cis)
位置化学的帰属を非対称
13C NMRに基づき行った。立体化学的帰属をH−FJカップリングおよび大きなビシナル位のH−Hカップリングに基づいて行った(δ4.48(dtt,J=48))。0,10.1,4.4Hz,1H).
1H NMR(500MHz,CDCl
3)δ4.65(m,1H),4.48(dtt,J=48.0,10.1,4.4Hz,1H),2.28(m,1H),2.04−1.93(m,2H),1.98(s,3H).1.81(m,2H),1.60−1.40(m,3H),
13C APT NMR(125MHz,CDCl
3)170.5,89.5,69.9,37.9,31.5,30.5,21.4,18.8ppm.
19F NMR−180.4ppm.MS(EI)m/z(計算値)C
8H
120
2[M−HF]
+:140.1、(実測値)140.1.
【0177】
化合物12a(trans)および化合物12b(trans)を分離できない混合物として単離した。
1H NMR(500MHz,CDCl
3)δ5.07−5.46(m,2H),1.97(s,3H),1.95−1.32(m,8H).
19F NMR−180.0,−181.1ppm.
【0178】
実施例22−表4のエントリー12、化合物13
上記の一般的な手順に基づき、基質として安息香酸シクロヘプチルを用いた反応が進行した。ラムクロマトグラフィ(ヘキサン、次いで1%の酢酸エチル/ヘキサン)により精製し、cisおよびtrans異性体の混合物として単離した。位置化学的帰属を3つの結合F−C2カップリングに基づき行った(26.6ppm(d,J=10.0Hz))。
1HNMR(500MHz),CDCl
3)δ7.96(m,2H),7.49(m,2H),7.38(m,1H),5.20−4.70(m,2H).2.50−1.50(m,10H).
19F NMR−164.6,−166.7ppm.MS(EI)m/z(計算値)C
14Hi
7F0
2[M]
+:236.1、(実測値)236.1.
【0179】
実施例23−
図26B、スクラレオリドのフッ素化
上記の一般的な手順に基づき、基質としてスクラレオリドを用いた反応が進行した。反応が終わった後で、混合物を一般的な手順で概略化されている後処理手順を行い、カラムクロマトグラフィ(ヘキサン、次いで10%EtOAc/ヘキサン)で精製した。生成物の構造の帰属を、F−NMRスペクトル解析に基づき行った。2α(−180.3ppm,dm),2β(−172.6ppm,qt),3α(−187.8ppm,qt),3β(−185.6ppm,dm).主生成物の2a−フルオロ異性体を2回のカラムクロマトグラフィで白色固体として単離し得た。
1H NMR(400MHz,CDCl
3)δ4.83(dtt,J=48.0,11.3,4.6Hz,1H),2.45(dd,J=16.2,14.7Hz,1H),2.27(dd,J=15.8,6.5Hz,1H),2.12−1.85(m,6H),1.70(td,J=12.6,4.1Hz,1H),1.43−1.30(m,6H),0.99(s,3H),0.95(s,3H),0.89(s,3H);
19F NMR−180.3ppm.MS(EI)m/z(計算値)C
16H
25FO
2[M]
+:268.2、(実測値)268.2.
【0180】
実施例24−
図3C、5α−アンドロスタン−17−オンのフッ素化
上記実施例7の一般的な手順に基づき、基質として、5α−アンドロスタン−17−オンを用いた反応が進行した。反応の終了後、混合物を一般的な手順で概略化されている後処理手順を行い、カラムクロマトグラフィ(ヘキサン、次いで30%DCM/ヘキサン)で精製した。生成物の構造の帰属を診断的なF−NMRスペクトル解析に基づき行った。2a(−172.4ppm,dm),2β(−172.8ppm,qt),3α(−181.5ppm,qt),3β(−168.3ppm,dm)。主生成物の3a−フルオロ−5α−アンドロスタン−17−オンを2回のカラムクロマトグラフィで単離した(4%酢酸エチル/ヘキサン)。
1HNMR(500MHz,CDCl
3)δ4.75(dm,J=48.7,2.5Hz,1H),2.37(dd,J=19.1,8.9Hz,1H),2.01(dt,J=19.4,9.1Hz,1H),1.85(m,2H),1.73(m,2H),1.60(m,3H),1.53−1.32(m,6H),1.28−1.09(m,6H)0.95(m,1H),0.79(s,3H),0.74(s,3H).
13C APT NMR(125MHz,CDCl
3)221.6,89.4,54.2,51.4,47.8,39.4,35.9,35.0,33.9,32.4,31.5,30.8,28.0,27.1,21.8,20.1,13.9,11.2ppm.
19F NMR−181.5ppm.MS(EI)m/z(計算値)C
19H
29FO[M]
+:292.2、(実測値)292.2.
【0181】
実施例25−
図26D、酢酸ボルニルのフッ素化のフッ素化
上記実施例7の一般的な手順に基づき、基質として、酢酸ボルニルを用いた反応を行った。反応の終了後、混合物を一般的な手順で概略化されている後処理手順を行い、溶離液としてDCM:ヘキサン(1:4)を用いてカラムクロマトグラフィで精製した。生成物を55%収率の無色の油状物で得た。
1H NMR(500MHz,CDCL
3)δ4.71(d,J=9.7Hz,1H),4.56(ddd,J=60,7.6,2.3Hz,1H),2.33(m,2H),2.05−1.95(m,1H)1.98(s,3H),1.63(dd,J=35.3,15.4Hz,1H),0.97(s,3H),0.85(s,3H),0.83(s,3H),0.68(dd,J=14.5,3.4Hz,1H).
13C APT NMR(125MHz,CDCl
3)95.8(d,186Hz),77.6,50.5(d,17.6Hz),37.5(d,18.0Hz),32.2(d,11.1Hz),21.3,20.2,19.4,12.6ppm.
19F NMR−158.2ppm.MS(EI)m/z(計算値)C
12H
19FO
2[M]
+:214.1、(実測値)214.1。
1H−NMRの4.55(ddd)のプロトンの分割パターンは、フッ素化はメチレン基に隣接した2つ目の炭素位で生じたことを示す。
13C NMRスペクトルは、2J
13C−Fカップリングと一致する16Hzの結合定数を有するC4炭素の二重線を示し、
1H NMRデータと一緒に、フッ素化した位置として明らかにC5を示す。exo−フッ素構造を
19F−NMRの−158ppmのシグナルにより確認した。endo生成物は、−190ppmのシグナルを有するだろう。
【0182】
実施例26−フッ素化の例
図9A〜9Bに関して、N−Phthアマンタジンのフッ素化が示される。
図10A−10Bに関して、N−Phthメマンチンのフッ素化が示される。
図11A−11Bに関して、2−アダマンタノンのフッ素化が示される。
図12A−12Bに関して、リマンタジン類似体のフッ素化が示される。
図13A−13Bに関して、アダパレン前駆体のフッ素化が示される。
図14A−14Bに関して、ペリンドプリル前駆体のフッ素化が示される。
図15A−15Bに関して、保護されたガバペンチンのフッ素化が示される。
図16A−16Bに関して、オクタン酸メチルのフッ素化が示される。
図17A−17Bに関して、ノナン酸メチルのフッ素化が示される。
図18A−18Cに関して、ヘキサン酸メチルのフッ素化が示される。
図19A−19Cに関して、酢酸シクロヘキシルのフッ素化が示される。
図20A−20Cに関して、シクロヘキサンカルボン酸メチルエステルのフッ素化が示される。
図21に関して、フッ素がシクロヘキシル環のC3位およびC4位に導入されるベンラファキシンを伴うリリカ(プレガバリン)が示される
図22に関して、イソブチル置換基の第二級および第三級の位置にフッ素が導入されることが示される。
【0183】
実施例27−フルオロブスピロンの合成
親薬物、ブスピロン(商標Buspar)は向精神薬およびピペラジンおよびアザピロン化学的分類の調剤薬物である。それは主に、特に一般化された不安障害用の不安安定剤として用いられる。ブリストルマイヤーズスクイブは、1986年に一般的な不安障害用のブスピロンのFDA承認を得、2001年にジェネリックとして購入可能となった。
図7Aに関して、フッ素化されたブスピロン誘導体が示される。
図7Bは、ブスピロン前駆体のフッ素化は、別の未知の生成物を伴うフッ素化された生成物を与えることを示す。
図7Cに関して、フッ素化されたブスピロンの質量スペクトルのピークが示される。
図7Dに関して、ブスピロン前駆体出発物質の質量スペクトルが示される。本願明細書に記載されるフッ素化された誘導体は明らかに新しい組成物である。新しい薬物の大きな比率は、フッ素化されることであり、特に、それらの標的と結合することに影響を及ぼすことと毒性の代謝の発生率を減少させることの両方である。この新しい方法は、ジェネリック薬物の新規なフッ素化された誘導体を製造する。現在、フッ素原子を選択的に複雑な化合物に組み込む方法がたとえあったとしても、ほとんどない。この場合、我々は、フッ素を、この薬物の分子骨格のさもなければアクセスできない部位に組み込む。これまでに記載された新しいフッ素化技術が用いられて、ブスピロンの直近の無水物前駆体にフッ素を組み込むか薬物自体に直接フッ素を組み込む。フッ素は5員環に位置する。
【0184】
実施例28−脱炭酸フッ素化反応
C−Hフッ素化は室温でも達成され得るので、室温での反応条件は調査された。クメン様2−メチル−2−フェニルプロパン酸を反応の最適化のために基質として選択した。初期の調査は、過剰のTBAF(C−Hフッ素化条件と同じ、触媒に対して約30等量)の存在下で、白色固体が沈殿し、全反応溶液が、スラリーとなったことを示した。さらに、極微量のフッ素化された生成物は、それらの条件下でGC−MSにより検出され得た。このことは、カルボン酸の脱プロトン化は、大量の塩基性TBAFによって促進されることにより、カルボン酸銀の形成を促進し、オキソマンガンポルフィリンによるカルボン酸の活性化を阻害する。そして、TBAFの量を、触媒に対して5等量に減少した。有意に、フッ素化生成物の収率は、8%の飽和度の低下した生成物および1%未満の酸化生成物を含む18%(酸化剤に基づく、以下同様)に増加した(
図29)。マンガンポルフィリンを省略する対照実験は、GC−MSにより検出可能なフッ素化生成物を示さず、マンガンポルフィリン触媒が極めて重要であることを示した。マンガンポルフィリンシステムに基づく脱炭酸フッ素化反応は、極めて有望な強力なフッ素化のツールであるだろう。単離され、構造的に特性化された、独特で、前例のないマンガン(IV)ジフルオリド(Mn(TMP)F
2)はフッ素化触媒であることが明らかである。これは、これまでに報告される初めての触媒的脱炭酸フッ素化システムである。反応条件は極めて温和であり、その収率は、さらに最適化される反応条件により大きく増加するかもしれない。
【0185】
実施例29−追加ハロゲン化触媒
追加のハロゲン化触媒は追加の金属リガンド錯体を包含してよい。
図23A−23Dに関して、C−Hフッ素化を補助するリガンドハットの例が示される。
図23Aに関して、ポルフィリンが示される。
図23Bに関して、フタロシアニンが示される。
図23Cに関して、ポルフィラジンが示される。
図23Dに関して、ピリドポルフィラジンが示される。
【0186】
酸化的C−Hフッ素化を補助するかもしれないリガンドのさらなる例を
図24A−24Gに示す。
図24Aに関して、N−ピリジルメチルトリアザシクロノナン(cycononane)が示される。
図24Bに関して、N,N−ジピリジルメチルシクロヘキサジアミンが示される。
図24Cに関して、テトラアザシクロテトラデカンが示される。
図24Dに関して、Ν,Ν−ジピリジルメチル2,2’−ジピロリジンが示される。
図24Eに関して、Ν,Ν−ジピリジルメチルエチレンジアミンが示される。
図24Fに関して、トリピリジルアミン(TPA)が示される。
図24Gに関して、サレンが示される。
図23A−24Gの任意の1以上のリガンドは、金属と共に、フッ素化触媒として提供されてよい。
【0187】
マンガンのため、サレン、サロフェン、フタロシアニンおよびポルフィラジンリガンドがフッ素化触媒として用いられてもよい。触媒としてマンガンサレン(
図29)種の存在下で、ベンジルプロトンを有する異なる基質は選択的にフッ素化され得る。今までのところ試験されている基質は
図30に示される。類似して作用するような基質は
図31に示される。マンガンサレン触媒を単に置換したマンガンポルフィリン触媒の反応が記載されている。一般化されたリガンド構造は
図32および
図33に示される。
図32に関して、マンガンサロフェン錯体が示される。アキシャルリガンドおよび対イオンは典型的にはハロゲン化物、酢酸塩(または他のカルボン酸)、過塩素酸塩、などでありうる。炭素b−hでの典型的な置換はアルキル、アリールまたは、ハロゲンでありうる。置換基は、カルボキシレート、スルホン酸塩またはトリアルキルアンモニウムで有り得、水などの極性溶媒により高い溶解性を示す。
図33に関して、マンガンサレン錯体(M=Mn)が示される。典型的な置換基の群はアルキル(t−ブチルなど)、またはアリール(フェニルなど)、またはハロゲン化物でありうる。基R’はアルキルまたはアリール(フェニルなど)であり得、cisまたはtrans立体化学的取り決めのいずれかでありうる。エタノ基と一緒の2つのR’基は、シクロアルキル置換基(シクロペンチルまたはシクロヘキシルなど)を形成しうる。そのような場合における環の融合はcisまたはtransでありうる。
【0188】
図34−37に関して、C−Hフッ素化のtrans−ジフルオロマンガン(IV)錯体が示される。
図34に関して、Rはアルキルまたはアリールであり得、b−fはアルキル、アリールまたはハロゲンであり得るtrans−ジフルオロマンガン(IV)サレン錯体が示される。
図35に関して、Rがアルキルまたはアリールであり、b−fはアルキル、アリールまたはハロゲンであり得るtrans−ジフルオロマンガン(IV)サレン錯体が示される。
図36に関して、b−fはアルキル、アリールまたはハロゲンであり得るtrans−ジフルオロマンガン(IV)シクロヘキシルサレン錯体が示される。
図37に関して、b−fはアルキル、アリールまたはハロゲンであり得るtrans−ジフルオロマンガン(IV)サロフェン錯体が示される。
【0189】
実施例30−追加基質
図38および
図39に関して、示される形態において本願明細書に含有される任意の方法で用いられてよい追加基質またはそれらの類似体が示される。
【0190】
本願明細書で使用する場合、炭素含有化合物は、標的または基質としても言及されるかもしれない。本願明細書で使用する場合、炭素含有化合物の類似体は、1つ以上の原子または、置換基が親構造中の原子または置換基で置換されているが分子の全体の形状を保持している同様の構造および/または、環の化合物を言及する。いくつかの態様において、類似体は同じ生物学的標的と結合し、同様の生物活性を発揮するかもしれない。
【0191】
実施例31−追加リガンド
本願明細書におけるテトラフェニルまたはテトラメシチルポルフィリンのフェニル置換基は、ナフチルであり得、これらのアリール基は、フェニルまたはアリール基に結合しているエチル、トリフルオロメチル、ハロゲンまたはニトロ置換基も有しうる。
【0192】
本願の全体にわたって引用される参考文献は、本願明細書およびそれらの参考文献において、それぞれの参考文献が完全に説明されたかのように、あらゆる目的を明らかとするために組み込まれる。説明のために、これらの参考文献の特定の1つは本願明細書において特定の位置に引用される。特定の位置での参考文献の引用は、参考文献の教示が組み込まれているような態様を示す。しかしながら、特定の位置での参考文献の引用は、引用された参考文献の教示の全てがあらゆる目的のために組み込まれる態様において限定するものではない。
【0193】
本願明細書の任意の単一の実施形態は、本願明細書の任意の1以上の他の実施形態の1以上の要素で補完されてよい。
【0194】
それゆえ、本発明は、開示される特定の実施形態に限定されるものではないが、添付の特許請求の範囲によって定められる本発明の趣旨および範囲(上記記載)および/または添付図面に示される範囲内の全ての変更を包含することが意図されていると理解される。