特許第6097295号(P6097295)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6097295
(24)【登録日】2017年2月24日
(45)【発行日】2017年3月15日
(54)【発明の名称】C−ハロゲン結合形成
(51)【国際特許分類】
   C07B 39/00 20060101AFI20170306BHJP
   C07B 59/00 20060101ALI20170306BHJP
   C07C 17/10 20060101ALI20170306BHJP
   C07C 22/02 20060101ALI20170306BHJP
   C07C 22/04 20060101ALI20170306BHJP
   C07C 22/08 20060101ALI20170306BHJP
   C07C 23/10 20060101ALI20170306BHJP
   C07C 23/14 20060101ALI20170306BHJP
   C07C 23/16 20060101ALI20170306BHJP
   C07C 23/28 20060101ALI20170306BHJP
   C07C 23/36 20060101ALI20170306BHJP
   C07C 23/38 20060101ALI20170306BHJP
   C07C 29/62 20060101ALI20170306BHJP
   C07C 35/48 20060101ALI20170306BHJP
   C07C 41/22 20060101ALI20170306BHJP
   C07C 43/225 20060101ALI20170306BHJP
   C07C 45/63 20060101ALI20170306BHJP
   C07C 49/457 20060101ALI20170306BHJP
   C07C 49/483 20060101ALI20170306BHJP
   C07C 67/287 20060101ALI20170306BHJP
   C07C 67/307 20060101ALI20170306BHJP
   C07C 69/63 20060101ALI20170306BHJP
   C07C 69/65 20060101ALI20170306BHJP
   C07C 69/75 20060101ALI20170306BHJP
   C07C 69/78 20060101ALI20170306BHJP
   C07C 209/74 20060101ALI20170306BHJP
   C07C 211/38 20060101ALI20170306BHJP
   C07C 213/08 20060101ALI20170306BHJP
   C07C 217/74 20060101ALI20170306BHJP
   C07C 227/16 20060101ALI20170306BHJP
   C07C 229/28 20060101ALI20170306BHJP
   C07C 231/12 20060101ALI20170306BHJP
   C07C 233/13 20060101ALI20170306BHJP
   C07C 233/14 20060101ALI20170306BHJP
   C07C 233/47 20060101ALI20170306BHJP
   C07C 233/48 20060101ALI20170306BHJP
   C07C 315/04 20060101ALI20170306BHJP
   C07C 317/14 20060101ALI20170306BHJP
   C07D 209/42 20060101ALI20170306BHJP
   C07D 307/92 20060101ALI20170306BHJP
   C07D 311/96 20060101ALI20170306BHJP
   C07J 1/00 20060101ALI20170306BHJP
   C07J 11/00 20060101ALI20170306BHJP
   B01J 31/22 20060101ALN20170306BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20170306BHJP
【FI】
   C07B39/00 B
   C07B59/00
   C07C17/10
   C07C22/02
   C07C22/04
   C07C22/08
   C07C23/10
   C07C23/14
   C07C23/16
   C07C23/28
   C07C23/36
   C07C23/38
   C07C29/62
   C07C35/48
   C07C41/22
   C07C43/225 A
   C07C45/63
   C07C49/457
   C07C49/483
   C07C67/287
   C07C67/307
   C07C69/63
   C07C69/65
   C07C69/75 Z
   C07C69/78
   C07C209/74
   C07C211/38
   C07C213/08
   C07C217/74
   C07C227/16
   C07C229/28
   C07C231/12
   C07C233/13
   C07C233/14
   C07C233/47
   C07C233/48
   C07C315/04
   C07C317/14
   C07D209/42
   C07D307/92
   C07D311/96
   C07J1/00
   C07J11/00
   !B01J31/22 Z
   !C07B61/00 300
【請求項の数】25
【全頁数】63
(21)【出願番号】特願2014-527229(P2014-527229)
(86)(22)【出願日】2012年8月20日
(65)【公表番号】特表2014-531414(P2014-531414A)
(43)【公表日】2014年11月27日
(86)【国際出願番号】US2012051628
(87)【国際公開番号】WO2013028639
(87)【国際公開日】20130228
【審査請求日】2015年6月9日
(31)【優先権主張番号】61/525,301
(32)【優先日】2011年8月19日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/639,523
(32)【優先日】2012年4月27日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/679,367
(32)【優先日】2012年8月3日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500184305
【氏名又は名称】ザ・トラスティーズ・オブ・プリンストン・ユニバーシティ
【氏名又は名称原語表記】THE TRUSTEES OF PRINCETON UNIVERSITY
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】グローブス ジョン ティー.
(72)【発明者】
【氏名】リュウ ウェイ
(72)【発明者】
【氏名】フアン シォンイー
【審査官】 山本 昌広
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭52−78801(JP,A)
【文献】 特開昭54−25290(JP,A)
【文献】 特公昭39−28634(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07B 39/00
C07B 59/00
C07C 1/00−409/44
C07D 201/00−521/00
C07J 1/00−75/00
B01J 31/00−31/40
C07B 61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素含有化合物、フッ素化剤、フッ素化触媒、および酸化剤を混合する工程を含む、sp3のC−H結合を有する炭素含有化合物の直接的酸化的C−Hフッ素化法であって、
前記フッ素化剤は、フッ化銀およびフッ化テトラアルキルアンモニウムからなる群から選択される少なくとも1種であり、
前記フッ素化触媒は、マンガンポルフィリンおよびマンガンサレンからなる群から選択される少なくとも1種であり、
前記酸化剤は、メタクロロペルオキシ安息香酸(mCPBA)およびヨードシルベンゼンからなる群から選択される少なくとも1種である、
C−Hフッ素化法。
【請求項2】
前記フッ素化触媒が、マンガンポルフィリンを含む、請求項1に記載のC−Hフッ素化法。
【請求項3】
前記フッ素化触媒が、マンガンサレンを含む、請求項1に記載のC−Hフッ素化法。
【請求項4】
前記炭素含有化合物が、ベンジルプロトンを有する、請求項3に記載のC−Hフッ素化法。
【請求項5】
ぞれぞれの添加において、前記炭素含有化合物が1mM〜5Mの濃度で添加され、前記フッ素化剤が1mM〜5Mの濃度で添加され、前記フッ素化触媒が1mol%〜20mol%の濃度で添加され、かつ前記酸化剤が1mM〜1Mの濃度で添加される、請求項1〜4のいずれか1項に記載のC−Hフッ素化法。
【請求項6】
混合された炭素含有化合物、フッ素化剤、フッ素化触媒、および酸化剤を30分間〜12時間反応させることをさらに含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載のC−Hフッ素化法。
【請求項7】
前記炭素含有化合物、前記フッ素化剤、前記フッ素化触媒、および前記酸化剤を−20℃〜+100℃の温度で維持する工程をさらに含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載のC−Hフッ素化法。
【請求項8】
混合する工程が、前記フッ素化剤、前記フッ素化触媒、および前記炭素含有化合物を溶媒中で混ぜて第一混合物を形成する工程、
前記第一混合物上に不活性ガスを供給する工程、および
前記酸化剤を前記第一混合物に添加して第二混合物を形成する工程、
をさらに含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載のC−Hフッ素化法。
【請求項9】
前記炭素含有化合物が、ネオペンタン;トルエン;シクロヘキサン;ノルカラン;trans−デカリン;5α−コレスタン;スクラレオリド;1,3,5(10)−エストラトリエン−17−オン;(1R,4aS,8aS)−オクタヒドロ−5,5,8a−トリメチル−1−(3−オキソブチル)ナフタレノン;(1R,4S,6S,10S)−4,12,12−トリメチルトリシクロ[8.2.0.04,6]ドデカン−9−オン;レボメトルファン;ルピン;20−メチル−5α(H)−プレグナン;イソロンギホラノン;酢酸カリオフィレン;N−アセチルガバペンチンメチルエステル;アセチルアマンチジン;フタルイミドアマンタジン;オクタン酸メチル;飽和脂肪酸エステル;N−アセチルリリカメチルエステル;アルテミシニン;アダパレン;フィナステリド;N−アセチルメチルフェニデート;メカミラミン;N−アセチルメカミラミン;N−アセチルメマンチン;フタルイミド(phthalimidi)−メマンチン;N−アセチルエナナプリル(Enanapril)前駆体のメチルエステル;プロゲステロン;アルテミシニン;アダパレン;ドーパミン誘導体;プレガバリン;コレスタン;フィナステリド;メチルフェニデート誘導体;メカミラミン;ガバペンチン;メマンチン誘導体;ガバペンチン;リマンタジン誘導体;イソロイシン誘導体;ロイシン誘導体;バリン誘導体;プレジェステロン;トラマドール;エナラプリル前駆体;(1R,4aS,8aS)−5,5,8a−トリメチル−1−(3−オキソブチル)オクタヒドロナフタレン−2(1H)−オン;フェニルアラニン;ドネペジル前駆体;アンフェタミン;ビタミンE(δ−トコフェロール型);チロシン;メラトニン;トリプトファン;酢酸エストロン;プロゲステロン;ドーパミン;ホモフェニルアラニン;DOPA;イブプロフェンメチルエステル;ブスピロン;エチシクリジン;メマンチン;アマンタジン;リリカ;ルビプロストン;ペリンドプリル;フォシノプリル;N−Phthアマンタジン;N−Phthメマンチン;2−アダマンタノン;リマンタジン類似体;アダパレン前駆体;ペリンドプリル前駆体;ガバペンチン保護体;オクタン酸メチル;ノナン酸メチル;ヘキサン酸メチル;酢酸シクロヘキシル;およびシクロヘキサンカルボン酸メチルエステル;または前記化合物のいずれか1つの類似体からなる群から選択される化合物を包含する、請求項1、2および5〜8のいずれか1項に記載のC−Hフッ素化法。
【請求項10】
前記マンガンポルフィリンが、Mn(TPP)Cl、Mn(TMP)Cl、MnIII(TPP)Cl、MnIII(TMP)Cl、MnIV(TMP)F、Mn(III)[テトラ−2,6−ジクロロフェニルポルフィリン、Mn(III)[テトラ−2−ニトロフェニルポルフィリン]、Mn(III)[テトラ−2−ナフチルポルフィリン、Mn(III)[ペンタクロロフェニルポルフィリン、Mn(III)[テトラフェニル−2,3,7,8,12,13,17,18−オクタクロロポルフィリン]、Mn(III)[テトラフェニル−2,3,7,8,12,13,17,18−オクタブロモポルフィリン]、およびMn(III)[テトラフェニル−2,3,7,8,12,13,17,18−オクタニトロポルフィリンからなる群から選択される、請求項1、2、および5〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記フッ素化剤が、18Fを含み、前記方法により生成された生成物が18Fを含む、請求項1〜10のいずれか1項に記載のC−Hフッ素化法。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載のC−Hフッ素化法による、sp3のC−H結合を有する炭素含有化合物のフッ素化工程を含む、ポジトロンエミッショントモグラフィ用造影剤の製造方法であって、フッ素化剤が、18Fを含み、前記方法により生成された生成物が18Fを含む、製造方法。
【請求項13】
請求項1、2および5〜11のいずれか1項に記載の直接的酸化的C−Hフッ素化法により、ブスピロンをフッ素化することを含む、フルオロブスピロンを製造するための方法。
【請求項14】
sp3のC−H結合を有する炭素含有化合物、フッ素化剤、フッ素化触媒および酸化剤を含む、sp3のC−H結合を有する炭素含有化合物の直接的酸化的C−Hフッ素化用組成物であって、
前記フッ素化剤は、フッ化銀およびフッ化テトラアルキルアンモニウムからなる群から選択される少なくとも1種であり、
前記フッ素化触媒は、マンガンポルフィリンおよびマンガンサレンからなる群から選択される少なくとも1種であり、
前記酸化剤は、メタクロロペルオキシ安息香酸(mCPBA)およびヨードシルベンゼンからなる群から選択される少なくとも1種である、
直接的酸化的C−Hフッ素化用組成物。
【請求項15】
前記フッ素化触媒が、マンガンポルフィリンを含む、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
前記フッ素化触媒が、マンガンサレンを含む、請求項14に記載の組成物。
【請求項17】
前記炭素含有化合物が、ベンジルプロトンを有する、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
trans−ジフルオロマンガン(IV)ポルフィリンMnIV(TMP)F)を含む、請求項14〜17のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項19】
前記炭素含有化合物が、ネオペンタン;トルエン;シクロヘキサン;ノルカラン;trans−デカリン;5α−コレスタン;スクラレオリド;1,3,5(10)−エストラトリエン−17−オン;(1R,4aS,8aS)−オクタヒドロ−5,5,8a−トリメチル−1−(3−オキソブチル)ナフタレノン;(1R,4S,6S,10S)−4,12,12−トリメチルトリシクロ[8.2.0.04,6]ドデカン−9−オン;レボメトルファン;ルピン;20−メチル−5α(H)−プレグナン;イソロンギホラノン;酢酸カリオフィレン;N−アセチルガバペンチンメチルエステル;アセチルアマンチジン;フタルイミドアマンタジン;オクタン酸メチル;飽和脂肪酸エステル;N−アセチルリリカメチルエステル;アルテミシニン;アダパレン;フィナステリド;N−アセチルメチルフェニデート;メカミラミン;N−アセチルメカミラミン;N−アセチルメマンチン;フタルイミド(phthalimidi)−メマンチン;N−アセチルエナナプリル(Enanapril)前駆体のメチルエステル;プロゲステロン;アルテミシニン;アダパレン;ドーパミン誘導体;プレガバリン;コレスタン;フィナステリド;メチルフェニデート誘導体;メカミラミン;ガバペンチン;メマンチン誘導体;ガバペンチン;リマンタジン誘導体;イソロイシン誘導体;ロイシン誘導体;バリン誘導体;プレジェステロン;トラマドール;エナラプリル前駆体;(1R,4aS,8aS)−5,5,8a−トリメチル−1−(3−オキソブチル)オクタヒドロナフタレン−2(1H)−オン;フェニルアラニン;ドネペジル前駆体;アンフェタミン;ビタミンE(δ−トコフェロール型);チロシン;メラトニン;トリプトファン;酢酸エストロン;プロゲステロン;ドーパミン;ホモフェニルアラニン;DOPA;イブプロフェンメチルエステル;ブスピロン;エチシクリジン;メマンチン;アマンタジン;リリカ;ルビプロストン;ペリンドプリル;フォシノプリル;N−Phthアマンタジン;N−Phthメマンチン;2−アダマンタノン;リマンタジン類似体;アダパレン前駆体;ペリンドプリル前駆体;ガバペンチン保護体;オクタン酸メチル;ノナン酸メチル;ヘキサン酸メチル;酢酸シクロヘキシル;およびシクロヘキサンカルボン酸メチルエステル;または前記化合物のいずれか1つの類似体からなる群から選択される化合物を包含する、請求項14、15および18のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項20】
前記マンガンポルフィリンが、Mn(TPP)Cl、Mn(TMP)Cl、MnIII(TPP)Cl、MnIII(TMP)Cl、MnIV(TMP)F、Mn(III)[テトラ−2,6−ジクロロフェニルポルフィリン、Mn(III)[テトラ−2−ニトロフェニルポルフィリン]、Mn(III)[テトラ−2−ナフチルポルフィリン、Mn(III)[ペンタクロロフェニルポルフィリン、Mn(III)[テトラフェニル−2,3,7,8,12,13,17,18−オクタクロロポルフィリン]、Mn(III)[テトラフェニル−2,3,7,8,12,13,17,18−オクタブロモポルフィリン]、およびMn(III)[テトラフェニル−2,3,7,8,12,13,17,18−オクタニトロポルフィリンからなる群から選択される、請求項14、15および19のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項21】
前記フッ素化剤が18Fを包含する、請求項16〜20のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項22】
2以上の容器を含む、請求項1〜11のいずれか一項に記載のsp3のC−H結合を有する炭素含有化合物の直接的酸化的C−Hフッ素化法用のキットであって、前記各容器が、炭素含有化合物、フッ素化剤、フッ素化触媒、および酸化剤からなる群から選択されるフッ素化反応用の少なくとも1つの反応物質を包含し、前記各容器は、フッ素化反応を進行させるのに必要な物質より少なくとも1つの少ない物質を包含する、キット。
【請求項23】
溶媒を有する容器をさらに含む、請求項22に記載のキット。
【請求項24】
前記1以上の容器が、組み合わせて、前記フッ素化反応を進行させるのに必要なすべての前記物質を包含する、請求項22または23に記載のキット。
【請求項25】
前記少なくとも1つの容器からの前記反応物質を混合するための装置をさらに含む、請求項22〜24のいずれか1項に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、米国仮出願第61/525,301(2011年8月19日出願)、米国仮出願第61/639,523号(2012年4月27日出願)の利益を主張し、それらの全てを説明するように、参照により本願明細書に援用したものとする。
【0002】
本発明は、全米科学財団により授けられた特許第CHE−0616633号および特許第CHE−1148597号について、政府援助を伴っておよびアワード第DE−SC0001298号について、触媒的炭化水素官能基化センター(Center for Catalytic Hydrocarbon Functionalization)、エネルギー先端研究センター(米国エネルギー省、科学部、基礎エネルギー科学部により設立)からの援助を伴ってなされた。
【0003】
本開示は、炭素含有化合物のハロゲン化およびハロゲン化による生成物に関する。
【背景技術】
【0004】
ハロゲン化有機化合物は、有機化学において中心的な役割を果たし、薬理学的に活性薬剤および様々な生物活性のある分子の重要な成分を与える。塩化アルキルは、クロスカップリング反応など、有機合成における中間体として幅広い使用でも見られる。
【0005】
マンガンポルフィリンおよびシッフ塩基錯体は、不飽和炭化水素および飽和炭化水素の両方の有効な酸素化触媒であることが長く知られている。当該分野におけるほとんど全ての利益は、酸化反応、特にオレフィンエポキシ化およびアルカンヒドロキシル化の解決を図った。少量のハロゲン化は、原報に記載された。しかしながら、これらの反応のほとんどは、置換基の競争的な酸素化が主な反応のままであるので、結果的に、酸素を含まない官能化の選択性は乏しい。塩素化の高選択性は、Ricciらにより、ニッケル(サレン)/次亜塩素酸塩系において報告されているが、基質範囲は限定されており、その反応はクロロオキシラジカルにより増殖されるみたいであった(Querci,C;Strologo,S.;Ricci,M.Tetrahedron Lett.1990,31,6577〜6580(それらの全てを説明するように、参照により本願明細書に援用したものとする))。現在、ハロゲン原子を選択的に錯体化合物に組み込む方法はほとんど存在しない。
【0006】
自然では、酵素中に、反応性の高い金属−オキソ中間体を用いて、脂肪族C−H結合をアルコール、ハロゲン化物およびオレフィンに変換する高選択的な方法が見いだされている。明らかな例外は、脂肪族フッ素化であり、生化学的前例は知られていない。非反応性のsp3のC−H結合を化学的触媒反応によりC−F結合に変換する直接的な方法もない。
【0007】
過去5年超かけて発展してきた芳香族のC−Hフッ素化の戦略は、複雑なアリールフッ化物を新規かつ前例のない利用を提供するが(Furuya,T.;Kamlet,A.S.;Ritter,T.,Catalysis for Fluorination and Trifluoromethylation(触媒的フッ素化および触媒的トリフルオロメチル化),Nature,2011,473,470〜477;P.P.Tang,T.Furuya,T.Ritter,J Am Chem Soc 132,12150(2010);およびD.A.Watsonら.Science 325,1661(2009)(それらの全てを説明するように、参照により本願明細書に援用したものとする))、脂肪族C−H結合の触媒的フッ素化の最近の進歩は著しく欠如している(P.Herrmann,J.Kvicala,V.Pouzar,H.Chodounska,Collect Czech Chem C73,1825(2008);およびRozen,S.;Gal,C,Activating Unreactive Sites of Organic−Molecules Using Elemental Fluorine(フッ素元素を用いた有機分子の不活性部位の活性化),J.Org.Chem.1987,52,2769〜2779(それらの全てを説明するように、参照により本願明細書に援用したものとする))。フッ素を飽和骨格に導入する伝統的な方法は厳しい条件および非常に毒性の高いフッ素源(特殊装置を必要とするフッ素元素など)を必要とし、多くの特定の置換基および官能基に対応していない(R.D.Chambers,A.M.Kenwright,M.Parsons,G.Sandford,J.S.Moilliet,J Chem Soc Perk T 1,2190(2002);S.Rozen.Eur.J.Org.Chem.,2433(2005);およびS.Rozen.Acc.Chem.Res.38,803(2005)(それらの全てを説明するように、参照により本願明細書に援用したものとする))。金属触媒を用いた直接的なベンジルC−Hフッ素化は、近年パラジウム触媒および「F」源を用いて達成されている(K.L.Hull,W.Q.Anani,M.S.Sanford.J.Am.Chem.Soc.128,7134(2006);X.S.Wang,T.S.Mei,J.Q.Yu.J.Am.Chem.Soc.131,7520(2009);T.D.Beeson,D.W.C.MacMillan.J.Am.Chem.Soc.127,8826(2005)(それらの全てを説明するように、参照により本願明細書に援用したものとする))。エナンチオ選択的な有機触媒的フッ素化の分野の利点も、カルボニル基に隣接したフッ素原子を導入することができること(T.D.Beeson,D.W.C.MacMillan.J.Am.Chem.Soc.127,8826(2005)(それらの全てを説明するように、参照により本願明細書に援用したものとする))およびフッ化物求核剤を用いたエポキシドの開環を介してフッ素原子を導入することができること(J.A.Kalow,A.G.Doyle.J.Am.Chem.Soc.132,3268(2010)(それらの全てを説明するように、参照により本願明細書に援用したものとする))が報告されている。初期のP450誘導ヒドロキシル化を介した酵素化学的フッ素化戦略(R.Fasan,A.Rentmeister,F.H.Arnold.Nat.Chem.Biol.5,26(2009)(それらの全てを説明するように、参照により本願明細書に援用したものとする))および初期の脱炭酸を含む化学量論の化学的ルート(M.Rueda−Becerrilら、J.Am.Chem.Soc.134,ASAP(2012)(それらの全てを説明するように、参照により本願明細書に援用したものとする))も報告されている。この印象的な進歩にもかかわらず、ターゲット分子の不活性なC−H部位へのフッ素の選択的かつ効率的に組み込む方法は、化学合成のレパートリーに顕著に存在しない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
sp3のC−H結合を有する炭素含有化合物のハロゲン化法が提供される。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一態様において、本発明は、炭素含有化合物、フッ素化剤、フッ素化触媒、および酸化剤を混合する工程を含む、sp3のC−H結合を有する炭素含有化合物の直接的酸化的C−Hフッ素化法に関する。
【0010】
一態様において、本発明は、本願明細書の任意の方法の生成物を含む組成物に関する。
【0011】
一態様において、本発明は、本願明細書の任意の方法によるsp3のC−H結合有する炭素含有化合物のフッ素化を含む可視化方法に関し、フッ素化剤は、18Fを包含し、当該方法により製造された生成物は18Fを包含して、造影剤を作製し、当該造影剤を患者に投与し、患者におけるポジトロンエミッショントモグラフィ(陽電子放出断層撮影法)を行う。
【0012】
一態様において、本発明は、炭素含有化合物、フッ素化剤、フッ素化触媒および酸化剤の少なくとも2つを含む組成物に関する。
【0013】
一態様において、本発明は、trans−ジフルオロマンガン(IV)ポルフィリンMnIV(TMP)Fを含む組成物に関する。
【0014】
一態様において、本発明は、マンガンに結合した少なくとも1つのフッ化物リガンドおよび式LMn(IV)−F(式中、Lは、酸素、窒素、およびハロゲン化物を包含する群から選択され、およびマンガンは全6個のリガンドに配意した八面体であり、全体的に中性電荷である)を有するマンガン錯体を含む組成物に関する。
【0015】
一態様において、本発明は、マンガンに結合した少なくとも1つのフッ化物リガンドおよび式LMn(V)−F(式中、Lは、酸素、窒素、およびハロゲン化物からなる群から選択され、およびマンガンは全6個のリガンドを有し、全体的に中性電荷の八面体配位である)を有するマンガン錯体を含む組成物に関する。
【0016】
一態様において、本発明は、マンガンに結合した1つまたは2つのフッ化物リガンドおよび式LMn(IV)−FまたはLMn(IV)−F(式中、Lは、酸素、窒素、およびハロゲン化物からなる群から選択され、およびマンガンは全6個のリガンドを有し、全体的に中性電荷の八面体配位である)を有するマンガン錯体を含む組成物に関する。
【0017】
一態様において、本発明は、フルオロブスピロンを含む組成物に関する。
【0018】
一態様において、本発明は、sp3のC−H結合を有する炭素含有化合物、フッ素化剤、フッ素化触媒、または酸化剤の少なくとも2つを含む組成物に関する。
【0019】
一態様において、本発明は、1以上の容器を含むキットに関し、各容器は、炭素含有化合物、フッ素化剤、フッ素化触媒、および酸化剤からなる群から選択されるフッ素化反応用の少なくとも1つの反応物質を包含し、組成物は、フッ素化反応を進行させるのに必要な基質より少なくとも1つの少ない基質を包含する、キットに関する。
【0020】
一態様において、本発明は、炭素含有化合物、フッ素化剤、フッ素化触媒、および酸化剤を混合する工程を含む、sp3のC−H結合を有する炭素含有化合物の直接的酸化的C−Hフッ素化法の生成物を含む組成物に関する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
以下の本発明の好ましい実施形態の詳細な説明は、添付の図面と併用して読むとき、よりよく理解できるだろう。本発明を説明することを目的として、現在好ましい実施形態が図面に示されている。しかしながら、本発明は示される詳細な取り決めおよび手段に限定されないことを理解されたい。
図1A】複雑な基質のハロゲン化を示す図であり、C2位およびC3位に5α−コレスタンの選択的な塩素化をもたらすかもしれない立体効果を示す図である。NMR収率を示す。
図1B】複雑な基質のハロゲン化を示す図であり、スクラレオリドのC2位の位選択的塩素化を示す図である。単離収率を示す。
図2A】複雑な分子のマンガンポルフィリン触媒による選択的なC−Hフッ素化を示す図である。trans−デカリンのフッ素化は主にメチレンをフッ素化した(41%)。
図2B】複雑な分子のマンガンポルフィリン触媒による選択的なC−Hフッ素化を示す図である。立体および電気的効果は、酢酸ボルニルの選択的な5−exo−フッ素化をもたらした(55%)。
図2C】複雑な分子のマンガンポルフィリン触媒による選択的なC−Hフッ素化を示す図である。5α−アンドロスタン−17−オンの立体効果は環Aの選択的なフッ素化をもたらした(48%)。
図2D】複雑な分子のマンガンポルフィリン触媒による選択的なC−Hフッ素化を示す図である。スクラレオリドの選択的なフッ素化を示す。
図3A】マンガンポルフィリン触媒によるC−Hフッ素化反応の提案されている触媒サイクルを示す。
図3B】水素抽出の推定される立体電子を示す図である。
図3C】50%の可能性の電子密度を図示するtrans−MnIV(TMP)Fの分子構造を示す図である。
図3D】trans−MnIV(TMP)Fの選択された結合長および角度を示す図である。
図4】trans−MnIV(TMP)Fの合成を示す図である。
図5A】trans−MnIV(TMP)Fの紫外可視スペクトル図である。
図5B】trans−MnIV(TMP)Fの実験のEPRスペクトル(上)およびシミュレートのEPRスペクトル(下)を示す図である(詳細なパラメータ:トルエン/CHCl(50/50v/v)ガラス中、10KでのX軸EPR(9.453GHz)。変調周波100kHz、振幅変調12.5G、時定数163.84m秒、走査時間335秒、マイクロ波電力15.9mW、および分光計の増幅率10000)。
図6】trans−MnIV(TMP)Fからアルキルラジカルへのフッ素の転移を示す図である。
図7A】ブスピロン前駆体のフッ素化の生成物を示す図である。
図7B】ブスピロン前駆体のフッ素化が別の未知の生成物を伴うフッ素化生成物を与えることを示す図である。
図7C】フッ素化されたブスピロンの質量スペクトルのピークを示す図である。
図7D】ブスピロン前駆体の出発物質の質量スペクトルを示す図である。
図8】Mn(TMP)Fの構造を示す図である。
図9A】N−Phthアマンタジンのフッ素化を示す図である。
図9B】N−Phthアマンタジンのフッ素化を示す図である。
図10A】N−Phthメマンチンのフッ素化を示す図である。
図10B】N−Phthメマンチンのフッ素化を示す図である。
図11A】2−アダマンタノンのフッ素化を示す図である。
図11B】2−アダマンタノンのフッ素化を示す図である。
図12A】リマンタジン類似体のフッ素化を示す図である。
図12B】リマンタジン類似体のフッ素化を示す図である。
図13A】アダパレン前駆体のフッ素化を示す図である。
図13B】アダパレン前駆体のフッ素化を示す図である。
図14A】ペリンドプリル前駆体のフッ素化を示す図である。
図14B】ペリンドプリル前駆体のフッ素化を示す図である。
図15A】保護されたガバペンチンのフッ素化を示す図である。
図15B】保護されたガバペンチンのフッ素化を示す図である。
図16A】オクタン酸メチルのフッ素化を示す図である。
図16B】オクタン酸メチルのフッ素化を示す図である。
図17A】ノナン酸メチルのフッ素化を示す図である。
図17B】ノナン酸メチルのフッ素化を示す図である。
図18A】ヘキサン酸メチルのフッ素化を示す図である。
図18B】ヘキサン酸メチルのフッ素化を示す図である。
図18C】ヘキサン酸メチルのフッ素化を示す図である。
図19A】酢酸シクロヘキシルのフッ素化を示す図である。
図19B】酢酸シクロヘキシルのフッ素化を示す図である。
図19C】酢酸シクロヘキシルのフッ素化を示す図である。
図20A】シクロヘキサンカルボン酸メチルエステルのフッ素化を示す図である。
図20B】シクロヘキサンカルボン酸メチルエステルのフッ素化を示す図である。
図20C】シクロヘキサンカルボン酸メチルエステルのフッ素化を示す図である。
図21】シクロヘキシル環のC3位およびC4位に導入されたベンラファキシンフッ素を伴うリリカ(プレガバリンを示す図である。
図22】イソブチル置換基の第二級位および第三級位に導入されたフッ素を示す図である。
図23A】C−Hフッ素化を補助するリガンドの例(ポルフィリン)を示す図である。
図23B】C−Hフッ素化を補助するリガンドの例(フタロシアニン)を示す図である。
図23C】C−Hフッ素化を補助するリガンドの例(ポルフィラジン)を示す図である。
図23D】C−Hフッ素化を補助するリガンドの例(テトラN−メチルテトラ−2−ピリドポルフィラジン)を示す図である。
図24A】酸化的C−Hフッ素化を補助するだろうリガンドの例(N−ピリジルメチルトリアザシクロノナン(cycononane))を示す図である。
図24B】酸化的C−Hフッ素化を補助するだろうリガンドの例(Ν,Ν−ジピリジルメチルシクロヘキサジアミン)を示す図である。
図24C】酸化的C−Hフッ素化を補助するだろうリガンドの例(テトラアザシクロテトラデカン)を示す図である。
図24D】酸化的C−Hフッ素化を補助するだろうリガンドの例(Ν,Ν−ジピリジルメチル2,2’−ジピロリジン)を示す図である。
図24E】酸化的C−Hフッ素化を補助するだろうリガンドの例(Ν,Ν−ジピリジルメチルエチレンジアミン)を示す図である。
図24F】酸化的C−Hフッ素化を補助するだろうリガンドの例(トリピリジルアミン(TPA))を示す図である。
図24G】酸化的C−Hフッ素化を補助するだろうリガンドの例(サレン)を示す図である。
図25】マンガンポルフィリン触媒によるフッ素化反応スキームを示す図である。
図26A】マンガンポルフィリン触媒による選択的なC−Hフッ素化を示す図であり、trans−デカリンのメチレン選択的なフッ素化を示す図である。
図26B】マンガンポルフィリン触媒による選択的なC−Hフッ素化を示す図であり、スクラレオリドの選択的なフッ素化を示す図である。
図26C】マンガンポルフィリン触媒による選択的なC−Hフッ素化を示す図であり、5α−アンドロスタン−17−オンの選択的なA環のフッ素化を示す図である。
図26D】マンガンポルフィリン触媒による選択的なC−Hフッ素化を示す図であり、酢酸ボルニルの選択的な5−exo−フッ素化を示す図である。
図27】MnIV(TMP)Fの構造を示す図である。
図28】(X)MnIVTMP錯体のEPRスペクトルを示す図である。
図29】マンガンサレン触媒を示す図である。
図30】マンガンサレン触媒によるベンジル位のC−Hフッ素化を示す図である。
図31】有望なマンガンサレン触媒によるベンジル位のC−Hフッ素化基質を示す図である。
図32】マンガンサロフェン錯体を示す図である。
図33】マンガンサレン錯体を示す図である。
図34】trans−ジフルオロマンガン(IV)サレン錯体を示す図である。
図35】trans−ジフルオロマンガン(IV)サレン錯体を示す図である。
図36】trans−ジフルオロマンガン(IV)シクロヘキシルサレン錯体を示す図である。
図37】trans−ジフルオロマンガン(IV)サロフェン錯体を示す図である。
図38】本願明細書に含有される任意の方法で用いられてよい、例となる基質を示す図である。
図39】本願明細書に含有される任意の方法で用いられてよい、例となる基質を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
特定の専門用語は便宜のためのみに以下の記載において用いられており、限定するものではない。請求項および明細書の対応する部分において用いられている用語「1つの、ある(「a」および「one」)」は、具体的に他に述べられない場合、言及される項目の1以上を包含しているとして定義される。2以上の項目(「A、BまたはC」など)の項目に続く句「少なくとも1つ」は、A、BまたはCのいずれか個々の1つを意図し、これらのいずれかの組み合わせと同様である。
【0023】
ポルフィリン触媒およびそれに関して使用する方法は、米国特許出願公開第2011/0306584号;米国特許出願公開第20100093688号;米国特許第6,969,707号;米国特許第6,448,239号;米国特許第6,002,026号;およびPCT/US2011/48396号(それらの全てを説明するように、参照により本願明細書に援用したものとする)に考察されている。本願明細書に記載される実施形態は、ポルフィリン触媒およびそれらに使用する方法の知識を拡大する。米国特許第2011/0306584号;米国特許第20100093688号;米国特許第6,969,707号;米国特許第6,448,239号;米国特許第6,002,026号;およびPCT/US2011/48396号における1つ以上のポルフィリン触媒は、ハロゲン化触媒またはフッ素化触媒として本願明細書の実施形態において用いられてよい。
【0024】
炭素含有化合物をハロゲン化する方法は、本願明細書に提示される。実施形態は、ハロゲン化触媒および相間移動触媒の存在下で、炭素含有化合物をハロゲン化試薬と反応させる工程を含む炭素含有化合物をハロゲン化する方法を提供する。限定を意図しない例は、以下のとおりである:窒素雰囲気下で、2mLの次亜塩素酸ナトリウム(0.33M)を、4mLの密封バイアル中で1mLのジクロロメタン中のMn(TMP)Cl(0.033mmol)、塩化テトラブチルアンモニウム(TBACl、0.027mmol)、および基質(0.22mmol)の溶液を加えた。二相混合物を窒素下でゆっくり撹拌した。当該反応をGC/MSまたはTLCにより観察し、基質の変換率が低い場合、追加の次亜塩素酸ナトリウム溶液が窒素下で加えられる。当該生成物をフラッシュカラムクロマトグラフィによって精製した。次亜塩素酸塩の量は基質またはこの範囲内にある任意の特定の量に基づき1〜10等量でありうる。ハロゲン化触媒は1〜20mol%、5〜15mol%、またはこれらの範囲内にある任意の特定の量であり得る。
【0025】
炭素含有化合物は、sp3のC−H結合を包含してよく、本願明細書において、基質または標的(ターゲット)とも呼ばれる。炭素含有化合物の例は、これらに限定されないが、シンプルなアルカン;ネオペンタン;トルエン;シクロヘキサン;ノルカラン(norcarne);シンプルな炭化水素;trans−デカリン;5α−コレスタン;スクラレオリド(sclarolide);1,3,5(10)−エストラトリエン−17−オン;(1R,4aS,8aS)−オクタヒドロ−5,5,8a−トリメチル−1−(3−オキソブチル)ナフタレノン;(1R,4S,6S,10S)−4,12,12−トリメチルトリシクロ[8.2.0.04,6]ドデカン−9−オン;レボメトルファン;ルピン;20−メチル−5α(H)−プレグナン;イソロンギホラノン;酢酸カリオフィレン;N−アセチルガバペンチンメチルエステル;アセチルアマンチジン;フタルイミドアマンタジン;オクタン酸メチル,および他の飽和脂肪酸エステル;N−アセチルリリカメチルエステル;アルテミシニン;アダパレン;フィナステリド;N−アセチルメチルフェニデート;メカミラミンおよびN−アセチルメカミラミン;N−アセチルメマンチン;フタルイミド(phthalimidi)−メマンチン;N−アセチルエナナプリル(Enanapril)前駆体のメチルエステル;プロゲステロン;アルテミシニン;アダパレン;ドーパミン誘導体;プレガバリン;コレスタン;フィナステリド;メチルフェニデート誘導体;メカミラミン;ガバペンチン;メマンチン誘導体;ガバペンチン;イソロイシン誘導体;ロイシン誘導体;バリン誘導体;プレジェステロン;トラマドール;および(1R,4aS,8aS)−5,5,8a−トリメチル−1−(3−オキソブチル)オクタヒドロナフタレン−2(1H)−オンを包含する。炭素含有化合物は、図31図38または図39においていずれか1つの化合物であってもよい。図38および図39における矢印は、ハロゲン化されるかもしれない位置を指し示す。炭素含有化合物は、本願明細書における任意の炭素含有化合物の類似体を包含してよい。炭素含有化合物の類自体は、化合物の一部を別の部位への置換したものを包含してよい。炭素含有化合物は、限定を意図しない例が図31図38、および図39に見いだされる薬物または薬物候補前駆体である。
【0026】
ハロゲン化試薬の例は、これらに限定されないが、ハイポハライト、N−クロロスクシンイミド(NCS)、N−ブロモスクシンイミド、次亜塩素酸、次亜臭素酸、次亜塩素酸塩、次亜塩素酸ナトリウム、次亜臭素酸ナトリウム、次亜塩素酸カルシウム、および塩化シアヌルを包含する。ハロゲン化試薬は、系内(インシチュ)でハイポハライトを製造するために、条件を設定することにより与えられてよい。
【0027】
ハロゲン化触媒の例は、これらに限定されないが、金属ポルフィリンを包含する。金属ポルフィリンは、マンガン、銅、バナジウム、クロム、鉄、コバルトまたはニッケルを包含してよい。マンガンポルフィリンハロゲン化触媒は、テトラフェニルポルフィリナトマンガン塩化物(以下において「Mn(TPP)Cl」)、テトラメシチルポルフィリナトマンガン(以下において「Mn(TMP)Cl」)および他の同様のマンガンポルフィリンを包含してよい。マンガンポルフィリンハロゲン化触媒は、テトラフェニルポルフィリナトマンガン(III)塩化物([MnIII(TPP)Cl])、5,10,15,20−テトラメシチルポルフィリナトマンガン(III)塩化物([MnIII(TMP)Cl])、Mn(III)[テトラ−2,6−ジクロロフェニルポルフィリン、Mn(III)[テトラ−2−ニトロフェニルポルフィリン]、Mn(III)[テトラ−2−ナフチルポルフィリン、Mn(III)[ペンタクロロフェニルポルフィリン、Mn(III)[テトラフェニル−2,3,7,8,12,13,17,18−オクタクロロポルフィリン]、Mn(III)[テトラフェニル−2,3,7,8,12,13,17,18−オクタブロモポルフィリン]、およびMn(III)[テトラフェニル−2,3,7,8,12,13,17,18−オクタニトロポルフィリンを包含してよい。
【0028】
ハロゲン化触媒の例は、これらに限定されないが、リガンドで錯体化された金属を有する触媒を包含する。リガンドは、これらに限定されないが、ポルフィリン、フタロシアニン、コロール、N−ピリジルメチルトリアザシクロノナン(cycononane)、Ν,Ν−ジピリジルメチルシクロヘキサジアミン、テトラアザシクロテトラデカン、Ν,Ν−ジピリジルメチル−2,2’−ジピロリジン、Ν,Ν−ジピリジルメチルエチレンジアミン、トリピリジルアミン(TPA)、およびサレンを包含してよい。ハロゲン化触媒は、trans−ジフルオロマンガン(IV)ポルフィリン、MnIV(TMP)Fであってよい。ハロゲン化触媒は、マンガンが4+または5+酸化状態にあり、少なくとも1つのフッ化物リガンドがマンガンLMn(IV)−FまたはLMn(V)−F(式中、Lは酸素、窒素またはハロゲン化物で有り得、マンガンは全6つのリガンドおよび全体的に中性の電荷を有する八面体配位を有する)に結合したマンガン錯体を包含する。ハロゲン化触媒はマンガンが4+酸化状態であり、マンガンに1つまたは2つのフッ化物リガンドが結合した、LMn(IV)−FまたはLMn(IV)−F(式中、Lは酸素、窒素またはハロゲン化物で有り得、マンガンは全6つのリガンドおよび全体的に中性の電荷を有する八面体配位を有する)であるマンガン錯体を包含してよい。
【0029】
相間移動触媒の例は、これらに限定されないが、塩化テトラブチルアンモニウム、テトラアルキルアンモニウム、混合アルキルアンモニウム、アリールアンモニウム、ベンジルトリメチル塩化アンモニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化トリブチルベンジルアンモニウム、塩化トリエチルベンジルアンモニウム、塩化テトラブチルホスホニウム、塩化テトラメチルホスホニウム、および塩化ジメチルジフェニルホスホニウムを包含する。
【0030】
実施形態は、sp3のC−H結合を有する炭素含有化合物、ハロゲン化剤、ハロゲン化触媒または相間移動触媒のうちの少なくとも1つを包含している組成物を包含する。実施形態は、反応物質の部分的な混合物を包含している組成物を包含する。部分的な混合物は、残留する必須の反応成分と混合する準備の整っているsp3のC−H結合を有する炭素含有化合物、ハロゲン化剤、ハロゲン化触媒、または相間移動触媒のうちの少なくとも1つを包含する。部分的な混合物は、sp3のC−H結合を有する炭素含有化合物をハロゲン化する方法に提供され、反応の残留成分は部分的な混合物の少なくとも一部と混合される。実施形態はキットを包含する。キットは、1以上の容器またはウェルを包含してよい。容器は、sp3のC−H結合を有する炭素含有化合物、ハロゲン化剤、ハロゲン化触媒、または相間移動触媒のうちの少なくとも1つを包含してよいが、ハロゲン化反応が全ての反応物質が混合されるまで進行しないように反応物質のサブセットを包含するだけだろう。容器またはウェルは、溶媒を包含してよい。キットは1以上の容器から必須の反応物質の全てを混合するための命令を包含していてよく、必要な場合、ハロゲン化反応を進行させるため任意の他の原料を包含していてよい。必須な反応物質の全ては、炭素含有化合物、ハロゲン化剤、ハロゲン化触媒および相間移動触媒を包含してよい。
【0031】
実施形態は、マンガンポルフィリン触媒によるハロゲン化法を提供する。当該方法は、ハロゲン源としてハイポハライを包含してよい。当該方法は、触媒量のMn(TPP)Clおよび相間移動触媒として塩化テトラブチルアンモニウムの存在下で炭素含有化合物をハロゲン化する工程を包含してよい。触媒量のMn(TPP)Clは、1〜20mol%、5〜15mol%、またはこれらの範囲内の任意の特定の量であってよい。例えば、Mn(TPP)Clを伴う二相系内での次亜塩素酸ナトリウムとシクロヘキサンとの反応は、室温で、主生成物として塩化シクロヘキシルを生成する。シクロヘキサノール、シクロヘキサノンおよび他のごく微量の塩素化生成物は、最適条件下で検出された。当該方法は、任意のハロゲン、好ましくはCl、Br、IまたはAtを添加して用いられてよい。他のハロゲン化触媒はMn(TPP)Clを置き換えてよい。一実施形態において、本願明細書に含有される任意のハロゲン化触媒は、マンガンポルフィリンの代わりに用いられてよい。
【0032】
実施形態は、塩素源として次亜塩素酸ナトリウムを用いて、マンガンポルフィリン媒介脂肪族C−H結合の塩素化を提供する。触媒量の相間移動触媒およびマンガンポルフィリンMn(TPP)Clの存在下で、次亜塩素酸ナトリウムと異なる不活性なアルカンとの反応は、主生成物としての塩化アルキルと極微量の酸素化生成物を与えた。相間移動触媒の触媒量は、1〜20mol%、5〜15mol%、またはこれらの範囲内の任意の特定の量であってよい。Mn(TPP)Clの触媒量は、1〜20mol%、5〜15mol%、またはこれらの範囲内の任意の特定の量であってよい。強いC−H結合を有する基質、例えば(これらに限定されないが)、ネオペンタン(BDE=〜100kcal/mol)は、中程度の収率で塩素化もしうる。診断用基質、例えば(これらに限定されないが)、ノルカランの塩素化は、長寿命の炭素ラジカル中間体を示唆する転位生成物を与える。さらに、位置選択的な塩素化は、ヒンダード触媒、Mn(TMP)Clを用いて得られる。一実施形態において、Mn(TMP)Clを用いたtrans−デカリンの塩素化が提供される。95%の選択的なC2位優先のメチレン−塩素化生成物を、Mn(TMP)Clを用いたtrans−デカリンの塩素化において、得られてよい。実施形態は、複雑な基質に用いられる新規なハロゲン化システムの実施も包含する。基質として5α−コレスタンを用いて、C2位およびC3位のみ塩素化される塩素化方法が提供される。この方法を用いて、5α−コレスタンのC2位およびC3位での塩素化は、55%収率で得られるかもしれない。当該C2位およびC3位は、環Aでの立体障害の小さいメチレン位に対応する。スクラレオリドの塩素化は、エクアトリアルなC2塩化物を提供する。5α−コレスタンとの反応は、説明に役立ち、他の炭素含有化合物は、同時にハロゲン化されるかもしれない。一実施形態において、本願明細書に含有される任意のハロゲン化触媒は、マンガンポルフィリンの代わりに用いられてよい。
【0033】
一実施形態において、クロスカップリング試薬を調製するための方法が提供される。その方法は、本願明細書に記載されるような炭素含有化合物をClまたはBrでハロゲン化する工程を包含する。本願明細書のハロゲン化の方法により化合物をまずClまたはBrで修飾し、次いでそのClまたはBrをFで置換する工程により化合物をフッ素化する方法が提供される。ClまたはBrは、求核置換によりFで置換されるてよい。求核条件は、好適な溶媒にフッ化物イオン源を包含してよい。フッ化物イオン源は、限定されないが、フッ化銀、カリウムクラウンのフッ化物(potassium−crown fluoride)、フッ化テトラアルキルアンモニウムまたはトリアルキルアミン三フッ酸塩を包含してよい。好適な溶媒は、限定されないが、アセトニトリルであってよい。
【0034】
実施形態は、薬物である炭素含有化合物の選択的な金属触媒によるハロゲン化を介する薬物の多様化を提供する。薬物の多様化は、炭素を含有する薬物のフッ素化を包含してよい。薬物の多様化は、ハロゲン化触媒および相間移動触媒の存在下で、ハロゲン化試薬を用いた薬物のハロゲン化を包含してよい。ClまたはBrを用いたハロゲン化は、続いて、Fを用いた求核置換が続く。当該方法は、後期段階の薬物候補の多様化に利用されてよい。ハロゲン化触媒は、マンガンポルフィリンであってよい。
【0035】
不活性炭化水素の金属ポルフィリン触媒を用いたハロゲン化の発展は、後期段階の薬物候補の多様化に著しく新たな手段を提供しうる。薬物の多様化は、薬物の直接的な酸化的C−Hフッ素化を包含してよい。さらに、そのようなプロセスの実現化は、クロロペルオキシダーゼ、ヘム含有塩素化酵素、およびSyr3、非ヘムFe(II)R−ケトグルタレート依存ハロゲナーゼなどのハロゲン化酵素のメカニズムに洞察を与えうる。
【0036】
フッ化物イオンを用いるマンガン触媒による直接的な酸化的C−Hフッ素化法は、本願発明の実施形態である。sp3のC−H結合を有する炭素含有化合物の直接的酸化的フッ素化法は、フッ素化触媒および酸化剤の存在下で、炭素含有化合物をフッ素化剤と反応する工程を包含する。
【0037】
炭素含有化合物はsp3のC−H結合を有していてよく、本願明細書において、基質または標的(ターゲット)とも呼ばれる。直接的な酸化的C−Hフッ素化のターゲットでありうる炭素含有化合物の例は、ハロゲン化に関して上に列挙されたものに限定されないが、環状アルカン、ステロイド、ステロイド誘導体、5α−アンドロスタン−17−オン、酢酸ボルニル、アゾビス−α−フェニルエタン、テルペノイド(trepanoid)、シンプルな炭化水素、置換アルカン、エステル、第三級アルコール、ケトンおよびアミン置換基、モノ−置換5員環および7員環シクロアルカン、シクロヘキサン、エチルベンゼン、メチルシクロペンタノン、シクロヘキサンカルボン酸メチル、メチルシクロヘキサノール、酢酸シクロヘキシル(cycloheylacetate)、N−アセチルガバペンチンメチルエステル;アセチルアマンチジン;フタルイミドアマンタジン;オクタン酸メチル、および他の飽和脂肪酸エステル;N−アセチルリリカメチルエステル;アルテミシニン;アダパレン;フィナステリド;N−アセチルメチルフェニデート;メカミラミンおよびN−アセチルメカミラミン;N−アセチルメマンチン;フタルイミド(phthalimidi)−メマンチン;N−アセチルエナナプリル(Enanapril)前駆体のメチルエステル;プロゲステロン;アルテミシニン;アダパレン;ドーパミン誘導体;プレガバリン;コレスタン;フィナステリド;メチルフェニデート誘導体;メカミラミン;ガバペンチン;メマンチン誘導体;ガバペンチン;イソロイシン誘導体;ロイシン誘導体;バリン誘導体;プレジェステロン;トラマドール;および(1R,4aS,8aS)−5,5,8a−トリメチル−1−(3−オキソブチル)オクタヒドロナフタレン−2(1H)−オンを包含する。直接的なフッ素化に用いられる炭素含有化合物は、さらに図31図38および図39に図示されている任意の化合物を包含していてよい。図38および図39における矢印は、フッ素化された位置を示す。同様のフッ素化は図31におけるターゲットに生じる。炭素含有化合物は、本願明細書の任意の炭素含有化合物の類似体も包含してよい。炭素含有化合物の類自体は、化合物の別の部位に置換基を包含してよい。炭素含有化合物は、薬物または薬物候補前駆体であり、限定を意図しない例は、図31図38、および図39に示されている。
【0038】
フッ素化剤の例は、これらに限定されないが、フッ化銀(I)、フッ化銀(II)、フッ化テトラブチルアンモニウム(「TBAF」)、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、テトラ アルキルアンモニウムフッ化物、RN(HF)またはそのアンモニウム塩[RNH][H]として表されるトリアルキルアミン三フッ化水素酸塩およびカリウムクラウンエーテルフッ化物を包含する。
【0039】
フッ素化触媒の例は、これらに限定されないが、リガンド含有金属錯体を有する触媒を包含する。リガンドは、限定されないが、ポルフィリン、フタロシアニン、コロール、N−ピリジルメチルトリアザシクロノナン(cycononane)、Ν,Ν−ジピリジルメチルシクロヘキサジアミン、テトラアザシクロテトラデカン、N,N−ジピリジルメチル2,2’−ジピロリジン、Ν,Ν−ジピリジルメチルエチレンジアミン、トリピリジルアミン(TPA)、およびサレンを包含してよい。金属は、V、Mn、Fe、CoおよびNiであってよい。フッ素化触媒は、Mn(TPP)Cl、Mn(TMP)Cl、MnIII(TPP)C、MnIII(TMP)Clまたは、他の同様のマンガンポルフィリンを包含しているマンガンポルフィリンを包含してよい。フッ素化触媒は、trans−ジフルオロマンガン(IV)ポルフィリン、MnIV(TMP)Fであってよい。フッ素化触媒は、マンガンが4+または5+酸化状態にあり、マンガンに結合する少なくとも1つのフッ化物リガンドを有するもの、LMn(IV)−FまたはLMn(V)−F、である(式中Lは酸素、窒素またはハロゲン化物で有り得、そのためマンガンは全6つのリガンドを有する八面体配位であり、全体的に中性電荷である)。フッ素化触媒は、マンガンが4+酸化状態であるマンガン錯体を包含し、1つまたは2つのフッ化物リガンドがマンガンに結合しており(LMn(IV)−FまたはLMn(IV)−F)(式中、Lは酸素、窒素またはハロゲン化物で有り得、そのためマンガンは全6つのリガンドを有する八面体配位であり、全体的に中性電荷である)。
【0040】
酸化剤は、メタクロロペルオキシ安息香酸(mCPBA)、ヨードシルベンゼン(idosylbenzene)、過酸、アルキル過酸化物、ペルオキシ硫酸塩(オキソン)、ペルオキシカーボネート、ペルオキシホウ酸塩、ヨードシルメシチレン、ペンタフルオロヨードイシルベンゼン、ベンゼンジフルオロヨージナン[フェニル−IF2]、ジアセトキシヨードベンゼン、2−ヨードシル安息香酸、ペルオキシ酢酸、ペルオキシタル酸、およびペルオキシタングステン酸であってよい。
【0041】
実施形態は、sp3のC−H結合を有する炭素含有化合物、フッ素化剤、フッ素化触媒、または酸化剤のうちの少なくとも1つを包含している組成物を包含している。実施形態は、反応物質の部分的な混合物を包含している組成物を包含している。部分的な混合物は、残留する必須の反応成分と混合する準備の整っているsp3のC−H結合を有する炭素含有化合物、フッ素化剤、フッ素化触媒、または酸化剤のうちの少なくとも1つを包含する。部分的な混合物は、炭素含有化合物のフッ素化法において提供されてよく、反応の残留成分は部分的な混合物の少なくとも一部と混合される。実施形態は、キットを包含する。キットは、1以上の容器を包含してよい。各容器は、炭素含有化合物、フッ素化剤、フッ素化触媒、または酸化剤のうちの少なくとも1つを包含するだろうが、フッ素化反応は全反応物質が添加されるまで進行しないような反応物質のサブセットを包含するだけだろう。キットは、反応を進行させるために、1以上の容器から、必要なら、任意の他の原料から必須な反応物質の全てを混合するための装置を包含してよい。必須な反応物質の全ては、炭素含有化合物、フッ素化剤、フッ素化触媒および酸化剤を包含してよい。
【0042】
実施形態は、マンガンは、4+または5+の酸化状態にあり、かつマンガンに結合する少なくとも1つのフッ化物リガンドを有するマンガン錯体、LMn(IV)−FまたはLMn(V)−F(式中、Lは酸素、窒素またはハロゲン化物で有り得、そのためマンガンは全6つのリガンドを有する八面体配位であり、全体的に中性電荷である)を含む組成物を包含する。実施形態は、マンガンは4+の酸化状態でありおよび1つまたは2つのフッ化物リガンドがマンガンに結合しているマンガン錯体(LMn(IV)−FまたはLMn(IV)−F)(式中、Lは酸素、窒素またはハロゲン化物で有り得、そのためマンガンは全6つのリガンドを有する八面体配位であり、全体的に中性電荷である)を含む組成物を包含する。
【0043】
本願明細書において、直接的なマンガンポルフィリン−フッ化物イオンの酸化的フッ素化は、温和な条件下でのこの転移を達成する。シンプルなアルカン、テルペノイドおよびステロイドでさえ、別の方法では他の到達しにくい部位で、50〜80%収率で選択的にフッ素化され得る。一例として、デカリンは、C2メチレン位およびC3メチレン位で圧倒的にフッ素化された。exo−5−フルオロ−酢酸ボルニルおよび5α−アンドロスタン−17−オンから得られる酢酸ボルニルも、環Aで選択的にフッ素化された。メカニズム解析は、オキソマンガン(V)触媒中間体によりC−H結合開裂の位置選択性により方向づけられることを示し、フッ素の伝達は、単離され、かつ構造的に特徴づけられている珍しマンガン(IV)フッ化物を介して生じることが示されている。フッ化物イオンを用いるこの一段階C−Hフッ素化は、十分に迅速であり、陽電子放出を利用する18F放射性フッ素化に利用される。
【0044】
本願明細書における実施形態は、生体分子および薬剤候補における到達できない部分などにフッ素を配置する。薬物のフッ素化は、シトクロムP450によるフェーズIの代謝の部位を保護し、標的の結合親和性を改善しうる。さらに、生体分子への18Fの導入は、ポジトロンエミッショントモグラフィの優れた感度を用いて代謝活性および薬剤標的の直接的な撮像を可能とし得る。実施形態は、本願明細書における方法によりハロゲン化または、フッ素化された炭素含有化合物を包含する。生成物は、変性薬物および造影剤を包含する。
【0045】
実施形態は、薬物分子、天然物および前駆体のフッ素化された類似体が、sp3のC−H結合がフッ素源としてフッ化物イオンを用いるフッ素で置換されて作製される方法を包含する。
【0046】
実施形態は、既知の薬物分子、天然物および前駆体のsp3のC−H結合をフッ素で置換するフッ化物イオンの18Fを組み込む方法を包含する。
【0047】
本願明細書において直接的酸化的フッ素化は、実施例1〜6に開示されるハロゲン化反応と同様であるが、フッ素化をもたらす反応条件および反応試薬に種々の変更を伴う。当該方法は、ハロゲン化物がフッ化物であるマンガンポルフィリン触媒によるハロゲン化を包含してよい。上記方法は、ハロゲン源としてフッ化銀(I)または、フッ化銀(II)のうちの少なくとも1つを包含してよい。上記方法は、触媒量のMn(TPP)Clおよびフッ化テトラブチルアンモニウム(追加のフッ素源であり、相間移動触媒(PTC)として作用するかもしれない)の存在下で、炭素含有化合物をハロゲン化する工程を包含してよい。上記方法は、フッ化銀(I)およびフッ化テトラブチルアンモニウムおよびフッ素源の両方を用いてよい。上記方法は、フッ素源として、銀(I)(18−F)フッ化物、銀(II)(18−F)フッ化物およびテトラブチルアンモニウム(18−F)フッ化物を用いてもよく、18−F標識化された生成物は、ポジトロンエミッショントモグラフィ(PET)の利用に用いられてよい。酸化剤は用いられてよい。酸化剤は、過酸、アルキル過酸化物、ペルオキソ硫酸塩(オキソン)、ペルオキシカーボネートまたはペルオキシホウ酸塩などの1つであってよい。例えば、アセトニトリルもしくは塩化メチレンのいずれかを溶媒として用いる、または両方を直接的酸化的フッ素化によって用いる単相システムにおけるメタクロロペルオキシ安息香酸とシクロオクタンとの反応は、50%超変換したシクロオクチルフッ化物が得られる。0℃〜80℃の温度および0℃〜80℃を包含している温度は用いられてよい。温度は、0℃〜80℃から選択される2つの正数値の温度の範囲内にあってよい。温度は、0℃〜80℃から選択される2つの正数値の温度の範囲内にあってよい。温度は、0℃〜10℃、10℃〜20℃、20℃〜30℃、30℃〜40℃、40℃〜50℃、50℃〜60℃、60℃〜70℃、または70℃〜80℃の間およびその温度のを包含している範囲内にあってよい。温度は、0℃〜80℃を包含しているおよびそれらの間の温度から選択される整数の値の温度のいずれか1つであってよい。室温〜70℃の温度は用いられてよい。温度は、室温〜70℃を包含しているおよびその間の温度のいずれか1つであってよい。温度は、25℃〜70℃を包含しているおよびその間の温度のいずれか1つであってよい。極微量のシクロオクタノール、シクロオクタンまたは、他のフッ素化された生成物または、塩素化生成物は実施例7の一般的工程で議論されているような最適条件下で検出された。この段落における温度範囲は、本願明細書のハロゲン化法に提供されてもよい。
【0048】
実施形態は、trans−ジフルオロマンガン(IV)ポルフィリン(MnIV(TMP)F)を含む組成物を包含する。MnIV(TMP)Fの構造は図2図8図27に示されている。
【0049】
実施形態は、18−F(または18F)を有する化合物およびこれにより製造される化合物のフッ素化法を包含する。炭素含有化合物を18−Fを用いてフッ素化する方法は、求核置換によるハロゲン化法により成し遂げられてもよい。炭素含有化合物を18−Fを用いてフッ素化する工程は、本願明細書の直接的な酸化的C−Hフッ素化法により成し遂げられてもよい。当該方法は、合成後短時間で患者に送達するために、部分に18−Fで化合物をフッ素化する工程を包含してよい。分子像による細胞プロセスの可視化は、病状を観察し、診察を改善する有望で非侵襲性の方法である(Signore,A.,Mather,S.J.,Piaggio,G.,Malviya,G.,およびDierckx,R.A.Molecular imaging of inflammation/infection:nuclear medicine and optical imaging agents and methods(炎症/感染の分子像:核医学および光学造影剤および方法)、Chem.Rev.2010,110,3112〜3145;およびPysz,M.A.,Gambhir,S.S.,およびWillmann,J.K.Molecular imaging: current status and emerging strategies(分子像:最新の状況よよび最新の戦略)、Clin.Radiol.2010,65,500〜516,(それらの全てを説明するように、参照により本願明細書に援用したものとする))。ポジトロンエミッショントモグラフィ(PET)は、優れた感度を有し、良好な画像を生じるので、特に、最適な治療法として出現した(Wong,F.C,およびKim,E.E.,A review of molecular imaging studies reaching the clinical stageA(臨床病期を調査する分子像の研究のレビュー),Eur.J.Radiol.2009,70,205〜211;Ametamey,S.M.,Honer,M.,およびSchubiger,P.A.Molecular imaging with PET(PETを用いた分子像),Chem.Rev.2008,108,1501〜1516;およびChen,,およびConti,P.S.Target− specific delivery of peptide−based probes for PET imaging(PET画像法のためのペプチドベースプローブの標的の具体的な装置),Adv. Drug Delivery Rev.,2010,62,1005〜1022(それらの全てを説明するように、参照により本願明細書に援用したものとする))。7つの陽電子放出性の同位体の中で、18Fは、635keVで2時間半およびβ+放出の利点を有する(Miller,P.W.,Long,N.J.,Vilar,R.,およびGee,A.D. Synthesis of C, 18F, 150, and 13N radiolabels for positron emission tomography(ポジトロンエミッショントモグラフィ用の11C、18F、150、および13N放射性標識),Angew.Chem.,Int.Ed.2008,47,8998〜9033;およびCai,L.,Lu,S.,およびPike,V.W.,Chemistry with [18F] fluoride ion([18F]フッ化物イオンの化学),Eur.J.Org.Chem.2008,2853〜2873参照(それらの全てを説明するように、参照により本願明細書に援用したものとする))。18F−フルオロデオキシグルコース(18F−FDG)などの造影剤は、高グルコース代謝を伴う組織や細胞を画像化するのに有効であることがわかった(Wadsak,W.,およびMitterhauser,M.Basic principles of radiopharmaceuticals for PET/CT(PET/CT用の放射性医薬品).Eur.J.Radiol.2010,73,461〜469参照(それらの全てを説明するように、参照により本願明細書に援用したものとする))。最近の18F標識化の方法の欠点は、フッ素を有する酸素官能基の通常の置換が検出分子の極性を変更することである。本願明細書における直接的酸化的フッ素化法は炭素に結合した水素の1段階での置換を可能とし、フッ化物イオン源からの18Fを用いることおよび出発化合物の水素結合パターンを変更することなく検出分子を作製することの利点を有する。
【0050】
実施形態は、1)造影剤を作製する本願明細書の炭素含有化合物の直接的酸化的C−Hフッ素化、2)患者への造影剤の投与、および3)患者のポジトロンエミッショントモグラフィを包含している段階による可視化を包含する。実施形態は、1)本願明細書の方法によるsp3C−Hを有する炭素含有化合物のClハロゲン化またはBrハロゲン化し、続いてFを求核置換して造影剤を作製する、2)患者への造影剤の投与、および3)患者のポジトロンエミッショントモグラフィを包含している段階による可視化を包含する。
【0051】
実施形態は、造影剤を形成するのに必要な反応物質の部分的な混合物を包含している組成物を包含する。部分的な混合物は、残留する必須の反応成分と混合する準備の整った炭素含有化合物、フッ素化剤、フッ素化触媒、または酸化剤のうちの少なくとも1つを包含する。フッ素化剤は、18F源を包含してよい。部分的な混合物は、18Fを有する炭素含有化合物のフッ素化法において提供され、反応の残留成分は部分的な混合物の少なくとも一部と混合されてよい。実施形態は、造影剤の形成用のキットを包含する。当該キットは1以上の容器を包含してよい。各容器は、炭素含有化合物、フッ素化剤、フッ素化触媒、または酸化剤のうちの少なくとも1つを包含するであろうが、フッ素化反応は全反応物質が添加されるまで進行しないような反応物質のサブセットを包含するのみであるだろう。キットは、反応を進行させるために、1以上の容器や、必要なら、任意の他の原料から必須な反応物質の全てを混合するための装置を包含してよい。必須な反応物質の全ては、炭素含有化合物、フッ素化剤、フッ素化触媒および酸化剤を包含してよい。フッ素化剤は18F源を包含してよい。
【0052】
実施形態は、フッ素源として、フッ化テトラブチルアンモニウム/フッ化銀(I)を用いる、マンガンポルフィリン触媒による脂肪族C−H結合のフッ素化を提供する。マンガンポルフィリンMn(TPP)Cl、または同様のマンガンポルフィリンもしくはフタロシアニンもしくはポルフィラジンの触媒量の存在下で、mCPBAまたはオキソンと異なる不活性なアルカンとの反応は、極微量の酸素化生成物または塩素化生成物を伴い、主生成物としてアルキルフッ化物を与えた。強いC−H結合を有する基質、例えば(これらに限定されないが)、ネオペンタン(BDE=〜100kcal/mol)も、中程度の収率でフッ素化され得る。さらに、位置選択的なフッ素は、ヒンダード触媒を用いて提供される。ヒンダード触媒はMn(TMP)Clであってよい。実施例において、Mn(TMP)Clを用いたtrans−デカリンのフッ素化は、メチレンのフッ素化された生成物を85%の選択性で与える。C2位の選択は、Mn(TMP)Clを用いたtrans−デカリンのフッ素化で得られるかもしれない。実施形態は、複雑な基質に用いられる直接的酸化的フッ素化システムの新規な方法の実施も包含する。複雑な基質は、限定されないが、5α−コレスタンでってよく、直接的酸化的フッ素化法は、5α−コレスタンの環Aの位置をフッ素化する。実施形態は、これらの条件下で、エクアトリアルなC2位でのスクラレオリドの直接的酸化的フッ素化およびC3位での酢酸ボルニルのフッ素化も包含する。
【0053】
フッ化テトラブチルアンモニウム、フッ化銀および上記の種々の酸化剤の組み合わせは、原料のマンガン(III)塩化物触媒を活性なフッ素化触媒に変換したことが見られた。これらの触媒の活性型は、アキシャルな金属リガンドとして、モノフッ化マンガン(III)、trans−ジフルオロマンガン(III)、trans−オキソフルオロマンガン(IV)およびtrans−ジフルオロマンガン(IV)ならびにtrans−オキソフルオロマンガン(V)を包含する。マンガンは、これらに限定されないが、銅、バナジウム。クロム、鉄、コバルトおよびニッケルを包含している他の第一遷移金属で置換されてよい。実施形態は、上記の任意の触媒を包含する組成物を包含する。実施形態は、上記の触媒のうちの少なくとも1つ、フッ素化剤、酸化剤または炭素含有化合物を包含する組成物を包含する。
【0054】
上記いくつかの実施形態において、ハイポハライである具体的なハロゲン化試薬が用いられる。上記マンガンポルフィリン、ハロゲン化物および過酸化物を用いるハイポハライトのインシチュでの製造は、本願明細書の実施形態にも示されてよい。(参照:Lahaye,D.およびGroves,J.T.J.Inorg.Biochem.2007,101,1786〜1797;ならびにN.Jin,J.L.Bourassa,S.C.Tizio,およびJ.T.Groves,Rapid, Reversible Oxygen Atom Transfer between an Oxomanganese(V) Porphyrin and Bromide. A Haloperoxidase Mimic with Enzymatic Rates.(オキソマンガン(V)ポルフィリンおよび臭化物の間の、迅速な、可逆的酸素原子の移動。酵素的速度を有するハロペルオキシダーゼ),Angew.Chem.2000,39,3849〜3851,(それらの全てを説明するように、参照により本願明細書に援用したものとする。))一実施形態において、適所にインシチュでハイポハライトを製造する、または加えて、直接ハイポハライトを用いる条件が提供されてよい。例えば、ハロゲン化法は、炭素含有化合物と共に過酸化物、ハロゲン化物および、マンガンポルフィリンを提供する工程を包含してよい。ハロゲン化法は、炭素含有化合物と共に過酸化物、ハロゲン化物およびニッケルポルフィリンを提供することを包含してよい。
【0055】
実施形態は、フルオロブスピロンを含む化合物およびそれらの合成方法を包含する。図7Aには、フルオロブスピロン化合物が示されている。以下の実施例26は、フルオロブスピロンの合成を要約する。
【0056】
一実施形態において、18Fを用いるためのより短い反応時間はある。例えば、はるかに短い反応時間(約1時間)は、ヨードシルベンゼン酸化剤を添加し、その反応混合物を60℃〜80℃で維持することで達成され得る。酸化剤としてmCPBAを用いることによっても、1時間、室温から最大60℃で、最大40%収率が得られうる。それぞれ1等量の酸化剤を添加し、次に最少量の溶媒に溶解されたMn(TMP)Cl触媒(13.2mg、1mmol%)を添加してよい。
【0057】
実施形態は、少なくとも1つの本願明細書に記載されるハロゲン化化合物またはそれらの類似体を含む組成物を包含する。実施形態は、少なくとも1つの本願明細書に記載されるフッ素化された化合物またはそれらの類似体を含む組成物を包含する。実施形態は、脂肪族水素の代わりにハロゲンを伴う有機化合物を含む組成物を包含する。脂肪族水素と置換するハロゲンは、限定されないが、Cl、Br、またはFであってよい。実施形態は脂肪族水素の代わりにFを伴う有機化合物を含む組成物を包含する。
【0058】
実施形態は、本願明細書のsp3のC−H結合を有する炭素含有化合物のハロゲン化法の生成物を含む組成物を包含する。生成物は、本願明細書の任意の標的または類似体として行われている方法から得られてよい。
【0059】
実施形態は、本願明細書のspC−H結合を有する炭素含有化合物をClまたはBrでハロゲン化し、ハロゲン化生成物を得、次いで、そのハロゲン化生成物をFで求核置換する方法の生成物を含む組成物を包含する。当該生成物は、本願明細書の任意の標的または類似体として行われている方法から得られてよい。
【0060】
実施形態は、本願明細書のsp3のC−H結合を有する炭素含有化合物のフッ素化法の生成物を含む組成物を包含する。当該方法から得られる生成物は、本願明細書の任意の標的または類似体として行われている方法から得られてよい。
【0061】
本願明細書の方法によって形成されるフッ素化された薬物分子は、親薬物の立体サイズとほぼ同じであるだろう。しかし、それらは1つのみまたは可能であれば2つまたは3つのフッ素原子を含有するだろう。19FはNMR活性であり、100%の存在量であるので、フッ素NMR分光法は、そのような分子を研究するのにとても有効な研究ツールである。さらに、フッ素は、プロトンとほぼ同レベルの検出能を有し、重要なことに、化学シフトの範囲がはるかに大きい。さらに、フッ素化された分子が別の分子(タンパク質受容体など)に結合するとき、プロトンの化学シフトは10分のいくつかのみ変化し(±0.3)、一方で、フッ素の化学シフトは8ppmも変化する。分子の共有結合の構造は、結合において変化しないが、分子の電場は水素結合などのようなものにより影響を受け、水素結合はフッ素に影響を生じる。したがって、薬物分子のフッ素化された誘導体は、多数のプロトンを有する分子にみられるプロトンによって複雑化されないフッ素NMRによって検出可能である有用性を有する。さらに、フッ素NMRの化学シフトの変化は、フッ素化された分子の受容体の結合部位への結合の度合いを示すだろう。
【0062】
(実施形態)
以下のリストは、本発明の特定の実施形態を包含する。しかしながら、当該リストは限定するものでなく、代替の実施形態を排除しないことは、当業者に理解されるだろう。
【0063】
1.炭素含有化合物、フッ素化剤、フッ素化触媒、および酸化剤を混合する工程を含む、sp3のC−H結合を有する炭素含有化合物の直接的酸化的C−Hフッ素化法。
【0064】
2.ぞれぞれの添加において、炭素含有化合物を1mM〜5Mの濃度で添加し、フッ素化剤を1mM〜5Mの濃度で添加し、フッ素化触媒を1mol%〜20mol%の濃度で添加し、かつ酸化剤を1mM〜1Mで添加する、実施形態1に記載のC−Hフッ素化法。
【0065】
3.混合された炭素含有化合物、フッ素化剤、フッ素化触媒、および酸化剤を30分間〜12時間反応させることをさらに含む、上記実施形態のいずれか1以上に記載のC−Hフッ素化法。。
【0066】
4.炭素含有化合物、フッ素化剤、フッ素化触媒、および酸化剤を−20℃〜+100℃の温度で維持する工程をさらに含む、実施形態1に記載のC−Hフッ素化法。
【0067】
5.混合する工程が、フッ素化剤、フッ素化触媒、および炭素含有化合物を溶媒中で混ぜて第一混合物を形成する工程、第一混合物上に不活性ガスを供給する工程、および酸化剤を第一混合物に添加して第二混合物を形成する工程、をさらに含む、上記実施形態のいずれか1以上に記載のC−Hフッ素化法。。
【0068】
6.炭素含有化合物は、ネオペンタン;トルエン;シクロヘキサン;ノルカラン;trans−デカリン;5α−コレスタン;スクラレオリド;1,3,5(10)−エストラトリエン−17−オン;(1R,4aS,8aS)−オクタヒドロ−5,5,8a−トリメチル−1−(3−オキソブチル)ナフタレノン;(1R,4S,6S,10S)−4,12,12−トリメチルトリシクロ[8.2.0.04,6]ドデカン−9−オン;レボメトルファン;ルピン;20−メチル−5α(H)−プレグナン;イソロンギホラノン;酢酸カリオフィレン;N−アセチルガバペンチンメチルエステル;アセチルアマンチジン;フタルイミドアマンタジン;オクタン酸メチル;飽和脂肪酸エステル;N−アセチルリリカメチルエステル;アルテミシニン;アダパレン;フィナステリド;N−アセチルメチルフェニデート;メカミラミン;N−アセチルメカミラミン;N−アセチルメマンチン;フタルイミド(phthalimidi)−メマンチン;N−アセチルエナナプリル(Enanapril)前駆体のメチルエステル;プロゲステロン;アルテミシニン;アダパレン;ドーパミン誘導体;プレガバリン;コレスタン;フィナステリド;メチルフェニデート誘導体;メカミラミン;ガバペンチン;メマンチン誘導体;ガバペンチン;リマンタジン誘導体;イソロイシン誘導体;ロイシン誘導体;バリン誘導体;プレジェステロン;トラマドール;エナラプリル前駆体;(1R,4aS,8aS)−5,5,8a−トリメチル−1−(3−オキソブチル)オクタヒドロナフタレン−2(1H)−オン;フェニルアラニン;ドネペジル前駆体;アンフェタミン;ビタミンE(δ−トコフェロール型);チロシン;メラトニン;トリプトファン;酢酸エストロン;プロゲステロン;ドーパミン;ホモフェニルアラニン;DOPA;イブプロフェンメチルエステル;ブスピロン;エチシクリジン;メマンチン;アマンタジン;リリカ;ルビプロストン;ペリンドプリル;フォシノプリル;N−Phthアマンタジン;N−Phthメマンチン;2−アダマンタノン;リマンタジン類似体;アダパレン前駆体;ペリンドプリル前駆体;ガバペンチン保護体;オクタン酸メチル;ノナン酸メチル;ヘキサン酸メチル;酢酸シクロヘキシル;およびシクロヘキサンカルボン酸メチルエステル;または上記のいずれかの類似体からなる群から選択される化合物を包含する、上記実施形態のいずれか1以上に記載のC−Hフッ素化法。。
【0069】
7.炭素含有化合物が薬物または薬物候補前駆体である、上記実施形態のいずれか1以上に記載のC−Hフッ素化法。。
【0070】
8.フッ素化剤が、フッ化銀(I)、フッ化銀(II)、フッ化テトラブチルアンモニウム、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化銀およびフッ化テトラアルキルアンモニウム、トリアルキルアミン三フッ化水素酸塩RN(HF)、そのアンモニウム塩[RNH][H]、およびカリウムクラウンエーテルフッ化物からなる群から選択される、上記実施形態のいずれか1以上に記載のC−Hフッ素化法。。
【0071】
9.フッ素化触媒が、ポルフィリン、フタロシアニン、コロール、N−ピリジルメチルトリアザシクロノナン(cycononane)、N,N−ジピリジルメチルシクロヘキサジアミン、テトラアザシクロテトラデカン、N,N−ジピリジルメチル2,2’−ジピロリジン、Ν,Ν−ジピリジルメチルエチレンジアミン、トリピリジルアミン(TPA)、サレン、サロフェン、フタロシアニンおよびポルフィラジンからなる群から選択されるリガンド含有金属錯体を包含する、上記実施形態のいずれか1以上に記載のC−Hフッ素化法。。
【0072】
10.金属が、マンガン、銅、バナジウム、クロム、鉄、コバルトおよびニッケルからなる群から選択される、実施形態5のC−Hフッ素化法。
【0073】
11.フッ素化触媒はマンガンポルフィリンである、上記実施形態のいずれか1以上に記載のC−Hフッ素化法。。
【0074】
12.マンガンポルフィリンは、Mn(TPP)Cl、Mn(TMP)Cl、MnIII(TPP)C、MnIII(TMP)Cl、MnIV(TMP)F、Mn(III)[テトラ−2,6−ジクロロフェニルポルフィリン、Mn(III)[テトラ−2−ニトロフェニルポルフィリン]、Mn(III)[テトラ−2−ナフチルポルフィリン、Mn(III)[ペンタクロロフェニルポルフィリン、Mn(III)[テトラフェニル−2,3,7,8,12,13,17,18−オクタクロロポルフィリン]、Mn(III)[テトラフェニル−2,3,7,8,12,13,17,18−オクタブロモポルフィリン]、およびMn(III)[テトラフェニル−2,3,7,8,12,13,17,18−オクタニトロポルフィリンからなる群から選択される、実施形態11に記載の方法。
【0075】
13.フッ素化触媒は、マンガンに結合した少なくとも1つのフッ化物リガンドおよび式LMn(IV)−F(式中、Lは、酸素、窒素、およびハロゲン化物を包含する群から選択され、およびマンガンは全6個のリガンドを有し、全体的に中性電荷の八面体配位である)を有するマンガン錯体である、上記実施形態のいずれか1以上に記載のC−Hフッ素化法。。
【0076】
14.フッ素化触媒は、マンガンに結合した少なくとも1つのフッ化物リガンドおよび式LMn(V)−F(式中、Lは、酸素、窒素、およびハロゲン化物からなる群から選択され、ならびにマンガンは全6個のリガンドを有し、全体的に中性電荷の八面体配位である)を有するマンガン錯体である、上記実施形態のいずれか1以上に記載のC−Hフッ素化法。。
【0077】
15.フッ素化触媒は、マンガンに結合した1つまたは2つのフッ化物リガンドおよび式LMn(IV)−FまたはLMn(IV)−F(式中、Lは、酸素、窒素、およびハロゲン化物からなる群から選択され、ならびにマンガンは全6個のリガンドを有し、全体的に中性電荷の八面体配位である)を有するマンガン錯体である、上記実施形態のいずれか1以上に記載のC−Hフッ素化法。。
【0078】
16.酸化剤は、メタクロロペルオキシ安息香酸(mCPBA)、ヨードシルベンゼン(idosylbenzene)、過酸、アルキル過酸化物、ペルオキシ硫酸塩(オキソン)、ペルオキシカーボネート、ペルオキシホウ酸塩、ヨードシルメシチレン、ペンタフルオロヨードイシルベンゼン、ベンゼンジフルオロヨージナン[フェニル−IF2]、ジアセトキシヨードベンゼン、2−ヨードシル安息香酸、ペルオキシ酢酸、ペルオキシタル酸、およびペルオキシタングステン酸からなる群から選択される、上記実施形態のいずれか1以上に記載のC−Hフッ素化法。。
【0079】
17.フッ素化剤は、18Fおよび18Fを包含するC−Hフッ素化法によって製造される生成物を包含する、上記実施形態のいずれか1以上に記載のC−Hフッ素化法。。
【0080】
18.実施形態1〜17のいずれか1つに記載の方法の生成物を含む組成物。
【0081】
19.実施形態17に記載の生成物を含む組成物。
【0082】
20.実施形態1〜17のいずれか1項に記載のC―Hフッ素化法による、sp3のC−H結合を有する炭素含有化合物のフッ素化を含む可視化方法であって、フッ素化剤は、18Fおよび18Fを包含するC―Hフッ素化法によって製造される生成物を包含し、造影剤を作製する工程、患者に造影剤を投与する工程および患者でポジトロンエミッショントモグラフィを行う工程、を含む可視化方法。
【0083】
21.炭素含有化合物、フッ素化剤、フッ素化触媒および酸化剤の少なくとも2つを含む組成物。
【0084】
22.trans−ジフルオロマンガン(IV)(ポルフィリンMnIV(TMP)F)を含む組成物。
【0085】
23.マンガンに結合した少なくとも1つのフッ化物リガンドおよび式LMn(IV)−F(式中、Lは、酸素、窒素、およびハロゲン化物を包含する群から選択され、およびマンガンは全6個のリガンドに配意した八面体であり、全体的に中性電荷である)を有するマンガン錯体を含む組成物。
【0086】
24.マンガンに結合した少なくとも1つのフッ化物リガンドおよび式LMn(V)−F(式中、Lは、酸素、窒素、およびハロゲン化物からなる群から選択され、およびマンガンは全6個のリガンドを有し、全体的に中性電荷の八面体配位である)を有するマンガン錯体を含む組成物
【0087】
25.マンガンに結合した1つまたは2つのフッ化物リガンドおよび式LMn(IV)−FまたはLMn(IV)−F(式中、Lは、酸素、窒素、およびハロゲン化物からなる群から選択され、およびマンガンは全6個のリガンドを有し、全体的に中性電荷の八面体配位である)を有するマンガン錯体を含む組成物。
【0088】
26.フルオロブスピロンを含む組成物。
【0089】
27.sp3のC−H結合を有する炭素含有化合物、フッ素化剤、フッ素化触媒、または酸化剤の少なくとも2つを含む組成物。
【0090】
28.炭素含有化合物は、ネオペンタン;トルエン;シクロヘキサン;ノルカラン;trans−デカリン;5α−コレスタン;スクラレオリド;1,3,5(10)−エストラトリエン−17−オン;(1R,4aS,8aS)−オクタヒドロ−5,5,8a−トリメチル−1−(3−オキソブチル)ナフタレノン;(1R,4S,6S,10S)−4,12,12−トリメチルトリシクロ[8.2.0.04,6]ドデカン−9−オン;レボメトルファン;ルピン;20−メチル−5α(H)−プレグナン;イソロンギホラノン;酢酸カリオフィレン;N−アセチルガバペンチンメチルエステル;アセチルアマンチジン;フタルイミドアマンタジン;オクタン酸メチル;飽和脂肪酸エステル;N−アセチルリリカメチルエステル;アルテミシニン;アダパレン;フィナステリド;N−アセチルメチルフェニデート;メカミラミン;N−アセチルメカミラミン;N−アセチルメマンチン;フタルイミド(phthalimidi)−メマンチン;N−アセチルエナナプリル(Enanapril)前駆体のメチルエステル;プロゲステロン;アルテミシニン;アダパレン;ドーパミン誘導体;プレガバリン;コレスタン;フィナステリド;メチルフェニデート誘導体;メカミラミン;ガバペンチン;メマンチン誘導体;ガバペンチン;リマンタジン誘導体;イソロイシン誘導体;ロイシン誘導体;バリン誘導体;プレジェステロン;トラマドール;エナラプリル前駆体;(1R,4aS,8aS)−5,5,8a−トリメチル−1−(3−オキソブチル)オクタヒドロナフタレン−2(1H)−オン;フェニルアラニン;ドネペジル前駆体;アンフェタミン;ビタミンE(δ−トコフェロール型);チロシン;メラトニン;トリプトファン;酢酸エストロン;プロゲステロン;ドーパミン;ホモフェニルアラニン;DOPA;イブプロフェンメチルエステル;ブスピロン;エチシクリジン;メマンチン;アマンタジン;リリカ;ルビプロストン;ペリンドプリル;フォシノプリル;N−Phthアマンタジン;N−Phthメマンチン;2−アダマンタノン;リマンタジン類似体;アダパレン前駆体;ペリンドプリル前駆体;ガバペンチン保護体;オクタン酸メチル;ノナン酸メチル;ヘキサン酸メチル;酢酸シクロヘキシル;およびシクロヘキサンカルボン酸メチルエステル;または上記の化合物のいずれか1つの類似体からなる群から選択される化合物を包含する、実施形態27に記載の組成物。
【0091】
29.フッ素化剤は、フッ化銀(I)、フッ化銀(II)、フッ化テトラブチルアンモニウム、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化銀およびフッ化テトラアルキルアンモニウム、トリアルキルアミン三フッ化水素酸塩RN(HF)、アンモニウム塩[RNH][H]およびカリウムクラウンエーテルフッ化物からなる群から選択される、上記実施形態のいずれか1以上に記載の組成物。
【0092】
30.フッ素化触媒は、ポルフィリン、フタロシアニン、コロール、N−ピリジルメチルトリアザシクロノナン(cycononane)、Ν,Ν−ジピリジルメチルシクロヘキサジアミン、テトラアザシクロテトラデカン、Ν,Ν−ジピリジルメチル2,2’−ジピロリジン、N,N−ジピリジルメチルエチレンジアミン、トリピリジルアミン(TPA)、サレン、サロフェン、フタロシアニン、およびポルフィラジンからなる群から選択されるリガンド含有金属錯体を包含する、上記実施形態のいずれか1以上に記載の組成物。
【0093】
31.金属は、マンガン、銅、バナジウム、クロム、鉄、コバルトおよびニッケルからなる群から選択される、実施形態30の組成物
【0094】
32.フッ素化触媒はマンガンポルフィリンである、上記実施形態のいずれか1以上に記載の組成物。
【0095】
33.マンガンポルフィリンは、Mn(TPP)Cl、Mn(TMP)Cl、MnIII(TPP)C、MnIII(TMP)Cl、MnIV(TMP)F、Mn(III)[テトラ−2,6−ジクロロフェニルポルフィリン、Mn(III)[テトラ−2−ニトロフェニルポルフィリン]、Mn(III)[テトラ−2−ナフチルポルフィリン、Mn(III)[ペンタクロロフェニルポルフィリン、Mn(III)[テトラフェニル−2,3,7,8,12,13,17,18−オクタクロロポルフィリン]、Mn(III)[テトラフェニル−2,3,7,8,12,13,17,18−オクタブロモポルフィリン]、およびMn(III)[テトラフェニル−2,3,7,8,12,13,17,18−オクタニトロポルフィリンからなる群から選択される、実施形態32の組成物。
【0096】
34.フッ素化触媒は、マンガンに結合した少なくとも1つのフッ化物リガンドおよび式LMn(IV)−F(式中、Lは、酸素、窒素、およびハロゲン化物からなる群から選択され、ならびにマンガンは全6個のリガンドに配意した八面体であり、全体的に中性電荷である)を有するマンガン錯体である、上記実施形態のいずれか1以上に記載の組成物。
【0097】
35.フッ素化触媒は、マンガンに結合した少なくとも1つのフッ化物リガンドおよび式LMn(V)−F(式中、Lは、酸素、窒素、およびハロゲン化物からなる群から選択され、ならびにマンガンは全6個のリガンドを有し、全体的に中性電荷の八面体配位である)を有するマンガン錯体である、上記実施形態のいずれか1以上に記載の組成物。
【0098】
36.フッ素化触媒が、前記マンガンに結合した1つまたは2つのフッ化物リガンドおよび式LMn(IV)−FまたはLMn(IV)−F(式中、Lは、酸素、窒素、およびハロゲン化物からなる群から選択され、ならびにマンガンは全6個のリガンドを有し、全体的に中性電荷の八面体配位である)を有するマンガン錯体である、上記実施形態のいずれか1以上に記載の組成物。
【0099】
37.酸化剤は、メタクロロペルオキシ安息香酸(mCPBA)、ヨードシルベンゼン(idosylbenzene)、過酸、アルキル過酸化物、ペルオキシ硫酸塩(オキソン)、ペルオキシカーボネート、ペルオキシホウ酸塩、ヨードシルメシチレン、ペンタフルオロヨードイシルベンゼン、ベンゼンジフルオロヨージナン[フェニル−IF2]、ジアセトキシヨードベンゼン、2−ヨードシル安息香酸、ペルオキシ酢酸、ペルオキシタル酸、およびペルオキシタングステン酸からなる群から選択される、上記実施形態のいずれか1以上に記載の組成物。
【0100】
38.フッ素化剤は18Fを包含する、上記実施形態のいずれか1以上に記載の組成物。
【0101】
39.各容器は、炭素含有化合物、フッ素化剤、フッ素化触媒、および酸化剤からなる群から選択されるフッ素化反応用の少なくとも1つの反応物質を包含し、組成物は、フッ素化反応を進行させるのに必要な物質より少なくとも1つの少ない物質を包含する、1以上の容器を含むキット。
【0102】
40.溶媒を有する容器をさらに含む、実施形態39のキット。
【0103】
41.1以上の容器は、組み合わせて、フッ素化反応を進行させるのに必要なすべての物質を包含する、上記実施形態のいずれか1以上に記載のキット。
【0104】
42.少なくとも1つの容器からの反応物質を混合するための装置をさらに含む、上記実施形態のいずれか1以上に記載のキット。
【0105】
43.炭素含有化合物、フッ素化剤、フッ素化触媒、および酸化剤を混合する工程を含む、sp3のC−H結合を有する炭素含有化合物の直接的酸化的C−Hフッ素化法の生成物を含む組成物。
【0106】
44.炭素含有化合物は、ネオペンタン;トルエン;シクロヘキサン;ノルカラン;trans−デカリン;5α−コレスタン;スクラレオリド;1,3,5(10)−エストラトリエン−17−オン;(1R,4aS,8aS)−オクタヒドロ−5,5,8a−トリメチル−1−(3−オキソブチル)ナフタレノン;(1R,4S,6S,10S)−4,12,12−トリメチルトリシクロ[8.2.0.04,6]ドデカン−9−オン;レボメトルファン;ルピン;20−メチル−5α(H)−プレグナン;イソロンギホラノン;酢酸カリオフィレン;N−アセチルガバペンチンメチルエステル;アセチルアマンチジン;フタルイミドアマンタジン;オクタン酸メチル;飽和脂肪酸エステル;N−アセチルリリカメチルエステル;アルテミシニン;アダパレン;フィナステリド;N−アセチルメチルフェニデート;メカミラミン;N−アセチルメカミラミン;N−アセチルメマンチン;フタルイミド(phthalimidi)−メマンチン;N−アセチルエナナプリル(Enanapril)前駆体のメチルエステル;プロゲステロン;アルテミシニン;アダパレン;ドーパミン誘導体;プレガバリン;コレスタン;フィナステリド;メチルフェニデート誘導体;メカミラミン;ガバペンチン;メマンチン誘導体;ガバペンチン;リマンタジン誘導体;イソロイシン誘導体;ロイシン誘導体;バリン誘導体;プレジェステロン;トラマドール;エナラプリル前駆体;(1R,4aS,8aS)−5,5,8a−トリメチル−1−(3−オキソブチル)オクタヒドロナフタレン−2(1H)−オン;フェニルアラニン;ドネペジル前駆体;アンフェタミン;ビタミンE(δ−トコフェロール型);チロシン;メラトニン;トリプトファン;酢酸エストロン;プロゲステロン;ドーパミン;ホモフェニルアラニン;DOPA;イブプロフェンメチルエステル;ブスピロン;エチシクリジン;メマンチン;アマンタジン;リリカ;ルビプロストン;ペリンドプリル(penridopril);フォシノプリル;N−Phthアマンタジン;N−Phthメマンチン;2−アダマンタノン;リマンタジン類似体;アダパレン前駆体;ペリンドプリル前駆体;ガバペンチン保護体;オクタン酸メチル;ノナン酸メチル;ヘキサン酸メチル;酢酸シクロヘキシル;およびシクロヘキサンカルボン酸メチルエステル;または上記化合物のいずれか1つの類似体である、実施形態43の組成物。
【0107】
45.本願明細書の任意のフッ素化触媒を含む組成物。
【0108】
46.本願明細書の任意の反応の生成物を含む組成物。
【0109】
本願明細書におけるさらなる実施形態は、本願明細書の任意の1以上の他の実施形態から1以上の要素で実施形態を補足することにより、および/または本願明細書の1以上の実施形態から1以上の要素を伴う1つの実施形態から1以上の要素を代替することにより形成されてよい。
【実施例】
【0110】
以下の限定を意図しない実施例は具体的な実施形態を示すために提供される。実施形態は、全体にわたって、1以上の以下の実施例から1以上の詳細で補完されてよく、および/または実施形態からの1以上の要素は以下の1以上の実施例から1以上の詳細を置き換えられてよい。
【0111】
本願明細書で論じられるように、基質および標的は、本願明細書に記載の方法によりハロゲン化または、フッ素化された炭素含有化合物である。
【0112】
実施例1−Mn(TPP)Cl触媒によるハロゲン化
触媒量のMn(TPP)Cl、相間移動触媒(PTC)として塩化テトラブチルアンモニウム、および亜塩素酸ナトリウムを伴う二相系は様々なシンプルなアルカンを高選択的に塩化アルキルに変換した(表1)。極微量の酸化された生成物および他の塩素化された生成物は最適条件で検出された。MnまたはPTCの不存在下での反応は無視できるほどのものであった。興味深いことに、強いC−H結合を有する基質(ネオペンタン(BDE=〜100kcal/mol)など)でさえ、触媒としてMn(TMP)Clを用いることにより有用な収率で塩素化され得る。トルエンを基質として用いたとき、ベンジル位は専ら塩素化された。興味深いことに、シクロヘキサンおよびトルエンは、競争反応において、C−HのBDEに11kcal/molの差異があるにも関わらず、同様の反応性を有することが見いだされた。さらに、ノルカランを診断用基質として用いたとき、主な生成物は再置換され、マンガンポルフィリン誘導ヒドロキシル化反応と同様の長寿命のラジカル中間体の改善を示した。塩素化反応は、NaOClをNaOBrで単に置換することにより臭素化に拡張されてよい。シクロヘキサンの臭素化は、かなりの量の塩化シクロヘキシルを主生成物としてシクロヘキシル臭化物を与え、ハイポハライトは溶媒またはアキシャルリガンドよりむしろハロゲン源であることを示した。
【0113】
代替の、限定を意図しない物質。
【0114】
次亜塩素酸ナトリウム(NaOCl、アルドリッチ)を分光学的に標準化した(Λmax292nm,8350M−1cm−1)。次亜臭素酸ナトリウムを、NaOClと10%過剰の臭化ナトリウム(NaBr,99.99%、アルドリッチ)とを混合して調製し、すぐ用いた。5,10,15,20−テトラフェニルポルフィリナトマンガン(III)塩化物[MnIII(TPP)Cl]をアルドリッチから購入した。5,10,15,20−テトラメシチルポルフィリナトマンガン(III)塩化物[MnIII(TMP)Cl]をテトラメシチルポルフィリンを金属化して調製した。ビシクロ[4.1.0]ヘプタン(ノルカラン)を文献(Smith,R.D.;Simmons,H.E.Org.Synth.1961,41,72)の方法により調製した。ジクロロメタン(HPLC等級)をCaH2を用いて蒸留した。水を蒸留し、ミリポアシステムで脱イオン化した。他の物質の最高純度のものをアルドリッチから購入し、さらに精製することなく用いた。
【0115】
(計測手段)
NMRスペクトルを500MHz Varian INOVA分光計を用いて得、内部標準として溶媒を用いてppm単位で報告する(CDCl(δ7.26))。GC/MS分析を、Agilent 5975質量選択的検出器(Agilent 5975mass selective detector)を備えるAgilent 7890Aガスクロマトグラフにおいて行った。内部標準を相対的応答係数を測定することにより提供化するために用いた。
【0116】
(シンプルな炭化水素の触媒的塩素化)
例となるシンプルな基質(すなわち、炭素含有化合物)を以下の表1に列挙している。そして本願明細書に例示されている方法を他の基質と共に用いてよい。窒素雰囲気下で、NaOCl(0.33M、pH=11)2mLを、4mLの密封バイアル中、ジクロロメタン1mLにマンガンポルフィリン(0.013mmol)、塩化テトラブチルアンモニウム(TBACl、0.027mmol)、および基質(2mmol)の溶液を加えた。二相混合物を窒素雰囲気で滑らかに撹拌した。常温で反応させ、当該反応の完了を高電子化のポルフィリンの茶赤色の消失およびマンガン(III)種の緑色の形成により知った。触媒を、ショートシリカゲルカラムを用いてCHClで溶出して除去し、その溶液をGC/MSで分析した。塩素化生成物の収率を添加された酸化剤に基づいて計算した。生成物の帰属をGCの保持時間および基準試料を用いた断片化に基づき行った。
【0117】
【表1】
【0118】
実施例2trans−デカリンの塩素化
Mn(TPP)ClまたはMn(TMP)Clによって触媒されるtrans−デカリンの塩素化はとても明らかであった。N−クロロスクシンイミド(NCS)または次亜塩素酸などの一般的に用いられる塩素化剤を用いて、位置選択性に乏しく、および第三級/第二級選択性が〜1.4/〜3である生成物の混合物をそれぞれ与える。主に、Mn(TPP)Clを触媒を用いたtrans−デカリンの塩素化はメチレン−塩素化生成物の95%の選択性を与えた(スキーム1)。さらに、よりヒンダード触媒Mn(TMP)Clを用いたとき、2−クロロデカリン(3a)は、76%選択性で得られた。そのような不活性なメチレンC−H結合の塩素化においてそのような高選択性を以前観測されていない。
【0119】
trans−デカリンの塩素化の生成物を、基準試料を用いて、GCの保持時間を比較して帰属し、塩化チオニルで対応するアルコールを処理することにより調製した。エクアトリアル異性体とアキシャル異性体の割合は、C1およびC2の両方の塩素化とも〜1であった。
【0120】
【化1】
【0121】
実施例3 複雑な基質のハロゲン化法
図1Aおよび図1Bに、複雑な基質のハロゲン化法の例を示す。、例となる複雑な基質は5α−コレスタンであってよいが、本願明細書において当該方法は他の基質に用いられてよい。5α−コレスタンの塩素化、48個の不飽和C−H結合を含有する飽和ステロイドを試験した。
【0122】
珍しいことに、6個の第三級C−H結合および13個の塩素化の可能性のあるメチレン部位に関わらず、塩素化は、環Aの立体障害の最も小さいメチレン位であるC2位およびC3位で観測されただけであり、正味55%収率であった。図1Aを参照すると、C2の塩素化は、エクアトリアル塩化物を15:1の選択性で与え、C3位のエピマー混合物が得られた(図1Aの4b)。この例は、シンプルな分子間状況で第二級C−H結合の塩素化の高い選択性を製造し、立体因子の性質を目立たせる。
【0123】
α−コレスタンの塩素化:窒素雰囲気下で、NaOCl(0.33M、pH=11)2mLを4mLの密封バイアル中、ジクロロメタン1mLにMn(TMP)Cl(0.033mmol)、塩化テトラブチルアンモニウム(TBACl、0.027mmol)、およびコレスタン(0.22mmol)の溶液を加えた。二相混合物を窒素化で円滑に撹拌した。水層を12時間後に除去し、別の等量の新鮮な次亜塩素酸塩をN下で添加した。当該反応を別の12時間行い、粗製混合物をH NMRによって分析した。
【0124】
Mn(TPP)Cl触媒によるコレスタンの塩素化により、より複雑な生成物の混合物を得た。有意に、C2位塩化物のエクアトリアルとアキシャルとの割合は、Mn(TMP)Clの15:1に対して、およそ1:1であり、ポルフィリン種はハロゲンの転移段階に関係する。
【0125】
スクラレオリドは、抗真菌性および細胞毒性活性を有する植物由来のテルペノイドである。図1Bに関して、Mn(TMP)Cl触媒によるスクラレオリドの塩素化は、C2エクアトリアル塩化物を単離収率42%で与えた(図1Bの5a)。その構造を、5aのH−NMRにおいて、δ4.22(J=12.1,4.2Hz)で、トリプルトリプレットのシグナチャーを観測することにより確認した。C2位/C3位の選択性は7:1であった。当該方法を任意の複雑な構造に拡張してよい。
【0126】
スクラレオリドの塩素化:手順は、上記のコレスタンの塩素化と、生成物をフラッシュクロマトグラフィ(5%のEtOAc/ヘキサン)で精製し、かつ出発物質を2回再利用したことを除いて、同様である。主生成物の帰属は、アキシャルのC2位のプロトンH(δ4.22)の特有のHNMRカップリングパターン(1つは大きく(アンチ)、1つは小さい(ゴーシュ)のJ値(トリプルトリプレット))に基づく。H NMR(500MHz,CDCL)δ4.22(tt,J=12.1,4.2Hz,1H),2,43(dd,J=15.5,14.8Hz,1H),2.27(dd,J=16.1,6.5Hz,1H),2.10(dt,J=12.0,3.4Hz,1H),2.05−1.96(m,3H),1.90(dq,J=14.3,3.7Hz,1H),1.70(td,J=12.6,4.2Hz,1H)1.55−1.33(m,6H),1.12(dd,J=9.9,2.8Hz,1H),0.96(s,3H),0.96(s,3H),0.89(s,3H).
【0127】
不活性なメチレンC−H結合の位置選択的な塩素化は、あまりなく、分子間直接群の使用を含むわずかに公知の例を有する。本願明細書において、位置選択性は、触媒の構造的に強制的な位置決めより、分子間相互作用から得られるかもしれない。
【0128】
この新たな転移の提案されるメカニズムをスキーム2に概説される。詳細は、今のところ解明されてなく、O=MnIV−OHポルフィリンのみまたは極めて同様の種が触媒反応中に観測された。さらに、C−H選択性は、ポルフィリンのメソ置換基の性質に応じていた。基礎的な次亜塩素酸ナトリウムは、出発時のMnIIIポルフィリンをジオキソ−またはオキソヒドロキソMn錯体に酸化することが予測されている。続く基質からの水素原子の抽出は、アルキルラジカルおよびヒドロキソMnIV錯体を与えるだろう。生成物形成段階のため、塩素原子はL−MnIV−OCl錯体から初期の炭素ラジカル中心に移動し、反応性オキソMn種を再生することも示唆される。この連鎖反応が作用するため、初期に形成されたアルキルラジカルは、ノルカランの塩素化を伴う転移からも明らかなように、[L−MnIV−OH・R]ケージから脱出しなければならない。第二の結紮している水酸化物または次亜塩素酸アニオンは、これらの塩基性条件(pH12の水相)下、L−MnIV−OH中間体の酸化還元電位を低下させ、したがって、アルキルラジカルの再結合速度を緩やかにし、酸化生成物の形成を予防することが予測されている。ピリジンのような他のアルキルリガンドはハロゲン化の選択性の低下をもたらした。さらに、C−H酸素化反応中のMnIVポルフィリン種の形成は、高pHであることが最近分かってきている。
【0129】
【化2】
【0130】
もっとも妨害されないメチレン位を優先することは、C−H結合を解離してMn=0(dπ−pπ)*フロンティア起動にアプローチしやすくする分子間の結合によらない触媒−基質の相互作用を主な要因とした。σ−対称性である共線上の[Mn=0・・・H・・・ C]遷移状態構造は、メチレン部位のこの明らかな優先腱を説明するものではないだろう。ところが、H原子抽出の、πアプローチは、Mn−ポルフィリン触媒のmeso−アリール基と基質のC−H結合に隣接する立体的かさ高さとの有意な相互作用をもたらすだろう。
【0131】
当該結果は、極めて位置選択的な脂肪族のハロゲン化は、Mn(TPP)ClおよびMn(TMP)Clと同様のシンプルな触媒と次亜塩素酸塩または次亜臭素酸塩と同様の普遍的なハロゲン化試薬を用いて予想通りに達成されうる。オキソMn種は、ハロゲンイオンを酸素化もし得、同様のハロゲン化は他の酸化剤を用いて達成されてよい。
【0132】
実施例4−ハロゲン化用の追加基質
様々な有用な基質を本願明細書に提示されるハロゲン化法を用いてハロゲン化しうる。限定を意図しない基質の例として、矢印で示される水素はハロゲンで置換されてよい。矢印に隣接する位置の水素もハロゲンで置換されてよい。、ハロゲンはフッ素、塩素または臭素であってよい。
【0133】
【化3】
【0134】
例となるシンプルな基質は上に列挙され、本願明細書に例示されている方法を他の基質と共に用いてよい。窒素雰囲気下で、NaOCl(0.1〜3M、pH=9〜13)は、密封バイアル中、マンガンポルフィリン(0.001〜1mmol)、塩化テトラブチルアンモニウム(TBACl、0.005〜0.5mmol)および基質(0.1〜20mmol)のジクロロメタン溶液に添加され得る。二相混合物を窒素化で滑らかに撹拌した。常温で反応させ、当該反応の完了を高電子価のポルフィリンの茶赤色の消失およびマンガン(III)種の緑色の形成により知った。触媒を、ショートシリカゲルカラムを用いてCHClで溶出して除去し、その溶液をGC/MSで分析した。塩素化生成物の収率を添加された酸化剤に基づいて計算した。生成物の帰属はGCの保持時間および基準試料を用いた断片化に基づき得る。
【0135】
実施例5−臭素化
次亜塩素酸塩を次亜臭素酸塩で置換して、基質を臭素化してよい。同じく、臭化物イオンを等量の次亜塩素酸塩によりインシチュで酸化して、基質を臭素化してよい。
【0136】
実施例6−フッ素化
本願明細書に記載の任意の方法で得られる塩化アルキルおよび臭化アルキルは、文献の方法を用いた求核置換を介してフッ化アルキルに変換され得る。例えば、Landini,D.,Montanar,R.,およびRolla,F.Reaction of Alkyl−Halides and Methanesulfonates with Aqueous Potassium Fluoride in Presence of Phase−Transfer Catalysts − Facile Synthesis of Primary and Secondary Alkyl Fluorides(相関移動触媒の存在するフッ化カリウム水溶液を用いたアルキルハロゲン化物およびメタンスルホン酸の反応−第一級および第二級アルキルフッ化物の容易な合成)(1974)Synthesis− Stuttgart, Issue::6,pages:428〜430参照(それらの全てを説明するように、参照により本願明細書に援用したものとする。)。そのような反応は、本願明細書に記載される任意の方法と組み合わせて提供されてよい。
【0137】
実施例7−マンガンポルフィリン触媒による直接的C−H酸化的フッ素化
酸化剤としてのmCPBA、フッ素源としてのフッ化銀およびフッ化テトラブチルアンモニウム、触媒としてのMn(TMP)Clの存在下で、異なる基質は選択的にフッ素化され得る。異なる環状アルカンは、中程度の収率で選択的にフッ素化され得る。低収率で最適化されていないが、ベンジル位も選択的にフッ素化され得る。実施例を、表2および表3に示している。図25に関して、マンガンポルフィリン触媒による反応スキームが示される。
【0138】
【表2】
【0139】
【表3】
【0140】
マンガンポルフィリンによってもたらされるこの珍しいフッ素化に興味をそそられるので、モデル基質として上記trans−デカリンの位置選択的な塩素化を、同じ化合物の直接的酸化的フッ素化と比べた。興味深いことに、この基質のフッ素化は、塩素化反応と同様の位置選択性を与え、同様のC−H抽出能を示した。同じ条件下でのtrans−デカリンの反応は、C2:C1の選択性のメチレンフッ素化生成物を3.5:1で与えた(図2A)。反応性の高いオキソ−または、ジオキソ−マンガン(V)中間体は、反応中の水素の抽出の一因であるかもしれない。立体障害のあまり大きくないマンガンポルフィリン触媒は、選択性に乏しい。
【0141】
フッ素化反応は、水分を排出するためにとられる注意なく、窒素化で進行した。溶媒を、Grubbsの方法(A.B.Pangborn,M.A.Giardello,R.H.Grubbs,R.K.Rosen,F.J.Timmers.Organometallics 15,1518(1996)(それらの全てを説明するように、参照により本願明細書に援用したものとする))に従って精製した。5,10,15,20−テトラメシチルポルフィリナトマンガン(III)塩化物[MnIII(TMP)Cl]をテトラメシチルポルフィリンを金属化して調製した。ヨードシルベンゼンを水酸化ナトリウム溶液を用いてヨードベンゼンジアセタートの加水分解により調製した。ビシクロ[4.1.0]ヘプタン(ノルカラン)を文献(Smith,R.D.;Simmons,H.E.Org.Synth.1961,41,72(それらの全てを説明するように、参照により本願明細書に援用したものとする))の方法に従って調製した。アルドリッチから入手できる他の購入した物質は最高純度であり、さらに精製することなく用いた。GC/MS分析を、Agilent 5975質量選択検出器を備えるAgilent 7890A ガスクロマトグラフにおいて行った。H NMRスペクトルをVarian INOVA 400(400Hz)またはBruker Avance 500(500MHz)分光計において得、内部標準として溶媒を用いてppm単位で報告する(CDCl(δ7.26))。データを化学シフト(δまたはppm)、多重性(s=一重線,d=二重線,t=三重線,q=四重線,m=多重線)、結合定数(Hz);積算強度で報告した。13C NMRスペクトル(プロトンデカップリング)をBruker Avance 500(125MHz)分光計において測定し、内部標準として溶媒を用いてppm単位で報告する(CDCl(δ7.26))。19F NMRスペクトルをVarian INOVA 400(375Hz)分光計において得、外部基準PhF(19F,CFClに対してδ−113.15)を添加してppmで報告する。
【0142】
Mn(TMP)Cl触媒によるC−H結合フッ素化の一般的な手順。
【0143】
マグネチック撹拌子を備えるオーブンで乾燥した25mLのシュレンク管に、以下を充填した:プレ触媒,Mn(TMP)Cl(13.2mg、0.015mmol,1mol%),TBAF−3H0(0.3mmol),AgF(4.5mmol,3等量),基質(1.5mmol)およびナフタレン(内部標準、0.5mmol)。これらの条件下、(TMP)MnIII−Clで観測される紫外可視λmax(475nm)は、(TMP)MnIII−F(453nm)および[(TMP)MnIII(F)]−(440nm)の1:2混合物の紫外可視λmaxをすぐ変化させる。フラスコに蓋をして、窒素を5分間パージした。その後、CH3CN(1.5mL)およびCHCl(0.5mL)をシリンジで滴下して、フラスコをオイルバス中50℃に加熱した。ヨードシルベンゼン(6−15mmol,4−10等量)を6−15時間かけて固体形態で反応混合物にゆっくり滴下した。ヨードシルベンゼンの滴下が早いとき、収率はかなり低下した。はるかに短い反応時間(1〜2時間)を、より高い温度で達成し得た。mCPBAを酸化剤として、最大40%収率が1時間以内に得られた。1等量の酸化剤の各添加を少量の溶媒に溶解させて添加されるMn(TMP)Cl(13.2mg、1mmol%)に続けた。反応が完了したとき、当該溶液を室温まで冷却し、シリカゲルのショートパッドを通した(ジクロロメタンで洗浄している)。濾液をGC/MSで分析し、次いで真空下で濃縮した。生成物をカラムクロマトグラフィにより反応残渣から分離した。
【0144】
実施例8−5α−アンドロスタン−17−オンフッ素化(図26C
フルメタゾンおよびフルアステロン(fluasterone)中などにフッ素−置換 ステロイドは、代謝経路をブロックする利益を有することがわかっており(J.P.Begue,D.Bonnet−Delpon,J フッ素Chem 127,992(2006),それらの全てを説明するように、参照により本願明細書に援用したものとする)、18F−フルオロジヒドロテストステロンは、ヒトの前立腺癌を撮像する新しい 放射性トレーサーとして有望であることを示している(P.B.Zanzonico ら J.Nucl.Med.45,1966(2004)(それらの全てを説明するように、参照により本願明細書に援用したものとする))。直接的な、後期段階のステロイドフッ素化手順は、これらの重要な技術の用途を大きく拡大しうるので、シンプルなステロイドに対するマンガン触媒によるフッ素化反応の利用が探索されている。30個の不活性なsp3のC−H結合を含有する5α−アンドロスタン−17−オンのフッ素化が試験された。この分子の分析は、カルボニル基が、環Dを電子的に不活性化するのだろうということを示唆した。環Bおよび環Cは立体障害が大きく、酸化のための部位である可能性が最も高い環Aのメチレン基を残す。この分析と一致して、かつ分子の複雑性に関わらず、環AのC2位およびC3位のみ、48%の素晴らしい全収率でフッ素化された(59%の転換に基づき正味81%の収率)。当該反応の生成物は、診断的な19F−NMRスペクトルおよび特徴的なプロトンのJカップリングから簡単に割り当てられうる。特に、5:1のジアステレオ選択性は、C2位およびC3位の両方で観測され、おそらくC10位のメチル基のアキシャルの立体効果を反映している。
【0145】
5a−アンドロスタン−17−オンを基質として用いる反応を、上記の一般的な手順に従って行った。上記の反応の後、混合物を一般的な手順で概略化されている後処理手順を行い、カラムクロマトグラフィ(ヘキサン、次いで30%DCM/ヘキサン)で精製した。生成物の構造の帰属を、診断的なF−NMRスペクトルに基づいて行った。2α(−172.4ppm,dm),2β(−172.8ppm,qt),3α(−181.5ppm,qt),3β(−168.3ppm,dm).
【0146】
実施例9−スクラレオリドのフッ素化
スクラレオリドを基質として用いる反応を、上記実施例7の一般的な手順に従って行った。スクラレオリドのフッ素化は、正味56%収率でC2位およびC3位のフッ素化された生成物を与えた(図2D)。C2位のフッ素化は、ほぼ3:1で優先され、おそらくC4位のgem−ジメチル基の立体障害に起因する。同様の選択性は、BaranおよびEshenmoserにより、ロジウム触媒によるスクラレオリドのアミノ化でこの基質に対して観測されており(P.S.Baran,T.Newhouse,Angew Chem Int Edit 50,3362(2011);およびK.Chen,A.Eschenmoser,P.S.Baran,Angew Chem Int Edit 48,9705(2009),それらの全てを説明するように、参照により本願明細書に援用したものとする)、そしてWhiteらにより、Fe(pdp)/Hの酸化系が観測されている(M.C.White,M.S.Chen.Science 318,783(2007)(それらの全てを説明するように、参照により本願明細書に援用したものとする))。以上の反応後、混合物を一般的な手順で概略化されている後処理手順を行い、カラムクロマトグラフィ(ヘキサン、次いで10%EtOAc/ヘキサン))で精製した。生成物の構造の帰属を、診断的なF−NMRスペクトルに基づいて行った。2α(−180.3ppm,dm),2β(−172.6ppm,qt),3α(−187.8ppm,qt),3β(−185.6ppm,dm).主生成物の2a−フルオロ異性体を2回目のカラムクロマトグラフィにおいて白色固体として単離し得た。H NMR(400MHz,CDCl)δ4.83(dtt,J=48.0,11.3,4.6Hz,1H),2.45(dd,J=16.2,14.7Hz,1H),2.27(dd,J=15.8,6.5Hz,1H),2.12−1.85(m,6H),1.70(td,J=12.6,4.1Hz,1H),1.43−1.30(m,6H),0.99(s,3H),0.95(s,3H),0.89(s,3H).19F NMR−180.3ppm.MS(EI)m/z(計算値)C1625FO[M]:268.2、(実測値)268.2.
【0147】
実施例10−酢酸ボルニルのフッ素化(図26D
酢酸ボルニルを基質として用いる反応を、上記の実施例7における一般的な手順に従って行った。反応を終えた後、混合物を一般的な手順で概略化されている後処理手順を行い、DCM:ヘキサン(1:4)を溶離液として用いてカラムクロマトグラフィで精製した。酢酸ボルニルの反応はexo−5−フルオロ−酢酸ボルニルを55%の単離収率を与えた(図2B)。生成物の特性解析はC−H 相関NMR分光法および19F−NMR分光法に基づいた(L.F.Lourieら,J フッ素Chem 127,377(2006)(それらの全てを説明するように、参照により本願明細書に援用したものとする))。H NMR(500MHz,CDCl)δ4.71(d,J=9.7Hz,1H),4.56(ddd,J=60,7.6,2.3Hz,1H),2.33(m,1H),1.98(s,1H),1.63(dd,J=35.3,15.4Hz,1H),0.97(s,3H),0.85(s,3H),0.83(s,3H),0.68(dd,J=14.5,3.4Hz,1H).13C NMR(125MHz,CDCl)δ95.8(d,186Hz),77.6,50.5(d,17.6Hz),37.5(d,18.0Hz),32.2(d,11.1Hz),21.3,20.2,19.4,12.6.19F NMR−158.2ppm.MS(EI)m/z(計算値)C1219FO[M]:214.1、(実測値)214。カンファーのC5位も、P450cam(CYP101)の選択性の類似性に受け入れられるだろう(I.Schlichtingら Science 287,1615(2000)(それらの全てを説明するように、参照により本願明細書に援用したものとする))。しかしながら、標準的なフッ素化条件下でカンファ−を処置することにより、95%の出発物質が回収された。この場合の低い反応性は電子吸引性のカルボニル基に起因し、明らかに、フッ素化に対して、分子全体を不活性化する。
【0148】
図3Aに示す触媒サイクルは、このマンガンポルフィリン触媒によるフッ素化を示す。フッ化物イオンの存在下で残っているMn(TMP)Cl触媒の酸化は反応性オキソマンガン(V)種(0=Mn(TMP)F)を与え、基質から水素原子を抽出し、中間体に再結合されるHO−MnIV−Fを与えうる。それぞれ調製されたMnIV(0)(TMP)に結合するフッ化物は、十分に特定されているMnIV(0)に水酸化物の配置と類似している[MnIV(0)(F)(TMP)]の形態に帰属されるUVスペクトルシフト(423nm〜427nm)によって示された(J.T.Groves,M.K.Stern.J.Am.Chem.Soc.110,8628(1988)(それらの全てを説明するように、参照により本願明細書に援用したものとする))。フッ素化された生成物を形成する段階はHO−MnIV−Fまたはtrans−ジフルオロマンガン(IV)種のいずれかによる初期の基質のラジカルの補足であり、AgFを伴う反応により形成する。これらの反応において観測される珍しいメチレン選択性は基質および接近しているオキソMn触媒の間の立体電子的に生じる立体衝突の原因となる。低スピンのdオキソMn錯体のLUMOは、2つの直行するMn−0π*軌道であると予測され、解離しやすいC−H結合の湾曲したπ*−アプローチ軌道への直接的に接近するだろう(Jin,N.;firahim,M.;スピロ,T.G.;Groves,J.T.,trans−ジオキソ マンガン(V)ポルフィリン,J.Am.Chem.Soc.2007,129,12416〜12418;およびJin,N.;Lahaye,D.E.;Groves,J.T.,A “Push−Pull” Mechanism for Heterolytic 0−0Bond Cleavage in Hydroperoxo マンガンポルフィリンs,Inorg.Chem.2010,24,11516〜11524,それらの全てを説明するように、参照により本願明細書に援用したものとする)。
【0149】
いくつかの実験をこのメカニズムの仮説を検証するために行った。初期のC−Hヒドロキシル化を、フッ素化物は、出発物質としてアルコールを含むこれらの条件下で製造されないことを示すことを制御することにより除外した。初期のC−Hヒドロキシル化を、シクロヘキサノールはこれらの条件下でシクロヘキサノンに酸化されることを示すように制御することにより除外した。シクロヘキシルフッ化物を検出しなかった。1−メチルシクロヘキサノールのヒドロキシル基も反応条件(以下の表4のエントリー8参照)に安定である。ジュウテリウム反応速度同位体効果をシクロヘキサンおよびシクロヘキサン−d12の1:1の混合物の反応により評価し、6.1.の分子間競争KIEを製造した。同様の値(5.7)をエチルベンゼンおよびエチルベンゼン−d15の混合物において観測した。C−H結合開裂は反応において律速段階であることを示す大きなKIEは、典型的なマンガンポルフィリン触媒によるヒドロキシル化反応と一致する。さらに、診断のラジカルクロック基質であるノルカランの反応は、2−フルオロノルカランおよびかなりの量の転移したフッ素化生成物、3−フルオロメチルシクロヘキセンを与え、炭素ラジカル開環プロセスを示す(表4,エントリー6)。2−ノルカラニルラジカルの開館速度定数は2xl0−1−1であるので、これらの2:1の割合のシクロプロピルカカルビニルとホモアリルフッ化物は2.5nsの短いラジカルの寿命を示す(J.T.Groves,J Inorg Biochem 100,434(2006)(それらの全てを説明するように、参照により本願明細書に援用したものとする))。初期の有機ラジカルおよびフッ化銀間の直接反応はこの時点で排除排除され得るけど、フェネチルラジカルとの反応は、アゾビス−α−フェニルエタンとAgFとを加熱することにより、インシチュで生成され、わずかな量のフッ素化された生成物を与えた。
【0150】
【表4】
【0151】
ヒドロキシルマンガン(IV)中間体とフッ化源とのリガンド交換により生成されるtrans−MnIV(TMP)F(TMP:テトラメシチルポルフィリン)は、フッ素を炭素ラジカルに移動させ、フッ化アルキルを生成する鍵中間体であることを要求された。trans−ジフルオロMnIV(TMP)の好ましいフッ素化剤としての確認は、その単離および構造の特性解析により可能とされる。Grossらにより特定されたtrans−MnIV(TMP)Cl(L.Kaustov,M.E.Tal,A.I.Shames,Z.Gross,Inorg Chem 36,3503(1997)(それらの全てを説明するように、参照により本願明細書に援用したものとする))は、trans−MnIV(TMP)Fの合成前駆体として選択された。MnIV(TMP)Clベンゼン溶液を大量のアクセスするAgF(>50等量)で処理することは、30分以内に赤色をオレンジレッドの色に変化させるだろう(図4)。MnIV(TMP)Fの純粋な結晶を、MnIV(TMP)Clを過剰のAgFで処置することにより得た(L.Kaustov,M.E.Tal,A.I.Shames,Z.Gross.Inorg.Chem.36,3503(1997)(それらの全てを説明するように、参照により本願明細書に援用したものとする))。この独特の化合物の分子構造は、1.7931(17)および1.7968のF−MnIV−F結合長を有する2つの軸方向に結合したフッ化物イオンを示した図3C;表5−9)。これらの結合長は、ヘキサフルオロマンガン酸ジアンモニウム(IV)の結合長と極めて近く、他のフルオロマンガン(IV)種は構造的にこれまで特徴づけられている(S.Kaskel,J.Strahle,Z Anorg Allgem Chem 623,1259(1997)(それらの全てを説明するように、参照により本願明細書に援用したものとする))。MnIV(TMP)Fは、フッ素化反応条件下でフッ化銀を置換し得、MnIV(TMP)Fの存在下でアゾビス−α−フェニルエタンの熱分解は1−フルオロエチルベンゼンを41%収率で与えた。さらに、MnIV(0)(TMP)とフッ化物イオンとの処理は、十分に特定されているオキソMnIVへの水酸化物の配置に類似するUVスペクトルシフト(423nmから427nm)の[MnIV(0)(F)(TMP)]−の形態に帰属されるものを製造した(J.T.Groves,M.K.Stern.J.Am.Chem.Soc.110,8628(1988)(それらの全てを説明するように、参照により本願明細書に援用したものとする))。これらの観測は、MnIV(TMP)Fまたは関連するヒドロキシフッ化物はフッ素のデリバリー段階に関連し、AgFの役割はターンオーバー中のフッ化マンガン(IV)を補充しようとする。
【0152】
【表5】
【0153】
【表6】
【0154】
X線構造は高性能であった。
【0155】
図3A−3Dに提案される中間体および遷移状態のポテンシャルエネルギー構造および電子構造は、DFTおよび分極した連続体の溶媒和モデルを用いて探索された。エクアトリアル構造においてMn(THP)F2からシクロヘキシルラジカルに移動するフッ素原子は、驚くべきことに、たった3kcal/molの低活性化バリアにより生じることが予測された(オキソマンガンポルフィリンにより触媒されるヒドロキシル化反応の酸素の再結合のバリアと極めて似ている)。わずかに高い遷移状態は、アキシャル構造において、シクロヘキシルラジカルへのフッ素の送達のために置換された(4.2kcal/mol)。さらに、trans−ジフルオロMnIV種(X=F)のフッ素転移の計算したバリアは、trans−ジフルオロMnIV種(X=F)に類似するヒドロキシ−フッ化物(X=OH)より低い〜3kcal/molだった。したがって、マンガン(IV)ジフルオリドは、そのヒロドキソフルオロの同族より、シクロヘキシルラジカルとはるかに早く反応するはずである。このフッ素転移の小さいバリアと一致して、遷移状態は、反応軌跡において極めて早く、2.48Åの甚だしく長いC−F距離、および初期のマンガン(IV)ジフルオリドから極めてわずかにだけ延長されたMn−F距離を示す。
【0156】
紫外可視スペクトルは、およそ420nmの強い吸収の新しい種、続く520nmおよび680nmにおける2つのより弱い吸収が現れることを示した(図5A、上:MnTMPCb、下:MnTMPCl+AgF、40分後)。新しい種のEPRスペクトルを図5Bに示した(上:実験スペクトル、下:シミュレートスペクトル)。g≒4での強い信号およびg≒2での弱い信号は、アキシャル対称性の環境にある大きなゼロ磁場分裂定数(ZFS)を有する高スピンdイオンの特徴と一致している。6つのラインの超微細分裂は、g≒4およびg≒2の領域の両方でのI=5/255Mn核を原因とする。I=1/219F核はEPR分光法における明確な超高微細分裂を与えることが知られているので、さらに三重線分裂はg≒4領域で観測され、アキシャルリガンドとして2つのフッ化物の存在を示した(Thuesen,C.A.;Barra,A.L.;Glerup,J.Inorg.Chem.2009,48,3198(それらの全てを説明するように、参照により本願明細書に援用したものとする))。この新しい錯体の結晶構造は必要とされた(図3C)。図3Dに関して、trans−MnIV(TMP)Fの選択された結合長および角度が示される。マンガンおよびアキシャルリガンドの間の結合長は、それぞれ1.797および1.794Aであり、KMnIVのMn−Fの結合長と極めて同等である(1.79A).(Bukovec,P.;Hoppe,R.J.Fluorine Chem.1983,23,579(それらの全てを説明するように、参照により本願明細書に援用したものとする)。反応混合物の可視スペクトルは複雑であり、ターンオーバー間の触媒の様々な形態の存在に明らかに起因する。しかしながら、Mn(TMP)Fの存在下でフェネチルラジカルの生成から1−フルオロエチルベンゼンの良好な収率は、マンガン(IV)フッ化物は優れたラジカルフッ素化剤であるというこれらのコンピューターによる推測のための実験的な支持を提供する。
【0157】
図28に、(X)MNIVTMP錯体のEPRスペクトルを示す。当該スペクトルは、レート4+種の存在を示し、本発明において触媒として効果的である。
【0158】
本願明細書に記載される結果は、シンプルな炭化水素、テルペノイドおよびステロイド誘導体の選択的なフッ素化を示す。その収率は、十分に高く、その技術は反応は特別な装置および強酸化剤やフッ化物含有試薬が用いられるときはいつでもとられるべきである通常の注意以外の複雑な使用上の注意なしで行われ得ることを単純化する。この一段階、ワンポットのプロトコルにおけるフッ素源はフッ化物イオンであり、これらの技術は実に様々な生体分子および合成基本単位への18Fの組み込みに簡単に用いられてよい。さらに、trans−ジフルオロマンガン(IV)ポルフィリン(MnIV(TMP)F)の単離および構造の特性解析はフッ素置換基のデリバリー用の遷移金属フッ化物などの豊富な化学の拡張を提案する。
【0159】
trans−MnIV(TMP)Fのフッ素転移能を基質としてα−アゾビス−フェニルエタンを用いて試験した(図10)。105℃の下、対応するフッ化アルキルは、trans−MnIV(TMP)FをMnIII(TMP)Fに変換することを伴って、2分以内に60%の収率で生成され得る。計算機実験は、MnIV(THP)F(THP:テトラヒドロポルフィリン)から第二級のアルキルラジカルへのフッ素のエネルギーバリアがたった3kcal/molであることを示したという結果を支持する。図6に、trans−MnIV(TMP)Fのアルキルラジカルへの転移を示す。
【0160】
より大きな天然の生成分子と同様、様々なシンプルなアルカンおよび置換アルカンは、触媒量の大きいマンガンポルフィリン(Mn(TMP)Cl)の存在下で効果的にフッ素化され得る。この酸化的脂肪族フッ素化反応は、フッ化源としてフッ化銀/フッ化テトラブチルアンモニウム三水和物を両方とも化学量論的に過剰に用いて、オキソ転移試薬としてのヨードシルベンゼンにより進められる。メタロポルフィリン酸化に典型的に用いられる過剰なヨードシルベンゼンは、この試薬の競争的な不均化のせいであり、非反応性のヨードキシベンゼンを生み出す。過剰なフッ化物イオンの必要性は、化学量論のフッ素化反応に由来し、水酸化物イオンも製造する。AgFは、Mn−OHをMn−F種およびAgOに変換する。超乾燥条件を必要としない。シンプルな基質のパネルの初期の調査反応の結果を表4に示す。シクロアルカンは、モノフッ素化された生成物を50%の収率で与えた。典型的には、少量のアルコール(15〜20%)で〜70%変換し、ケトンも製造された。生成物はマンガンポルフィリンまたはヨードシルベンゼンを省略した対照実験において見いだされず、フッ化テトラブチルアンモニウムの不存在下で、酸素化された生成物:フッ素化された生成物の比が〜2:1である生成物が形成された。酸素化生成物のみ、フッ化銀なしで形成された。AgFおよびフッ化テトラブチルアンモニウムの両方の利点は、AgFのみで維持され得るより、反応媒体におけるAgFの有限の溶解度および高濃度のフッ化物イオンの必要性に明らかに由来する。(TMP)MnIII−Clに観測される紫外可視λmax(475nm)は、上記反応条件下で(TMP)MnIII−F(453nm)および[(TMP)MnIII(F)]−(440nm)の混合物の紫外可視λmaxにすぐさま変更した。
【0161】
おそらく、フッ素原子により導入される生成物の電子不足に起因して、このレベルの変換で製造される無視できる量のジフッ化物があった。モノフッ素化の高選択性、カルボニル基の近くのC−H結合の低い反応性および溶媒とテトラブチルアンモニウムイオンの限られた反応性は、この反応においてC−H結合の開裂段階において極めて強い極性効果を反映するように見える。
【0162】
基質範囲の予備調査は表4(エントリー7〜12)に示される結果をもたらした。エステル、第三級アルコール、ケトンおよびアミド置換基を含有している置換された分子の範囲は、Mn(TMP)Clを伴うフッ素化の良好な基質であることが証明された。シクロヘキシルカルボキシル酸メチルのフッ素化(エントリー7)およびメチルシクロヘキサノール(エントリー8)のフッ素化は、主生成物として、trans−C3位のフッ化物を与えた。一置換の5員環および7員環のシクロアルカン(エントリー9、10、12)は、それぞれC3およびC4位でもっぱらフッ素化され、この反応の選択性にわずかな立体電子的効果を与えた。
【0163】
マンガン触媒によりヒドロキシル化をフッ素化に変更する可能性が示されているので、我々は次にこの反応をより大きな分子に用いることを目的とした。同じ条件下でtrans−デカリンの反応は、合計51%収率および75%変換において、C2:C1が3.5:1の選択性であるメチレンモノフッ素化生成物を与えた(図26A)。極めて高いメチレン位置選択性がこの基質に見られ(>95%)、最近我々が報告したマンガン触媒による塩素化反応に見られたのと同様であり(Liu,W.;Groves,J.T.、Manganese Porphyrins Catalyze Selective C−H Bond Halogenations(マンガンポルフィリンの選択的なC−H結合ハロゲン化触媒),J.Am.Chem.Soc.2010,132,12847〜12849(それらの全てを説明するように、参照により本願明細書に援用したものとする)、同様の反応性のオキソ−または、ジオキソマンガン(V)中間体は両方の反応イオンにおいて水素吸収の原因となることを示している(Jin,N.;firahim,M.;スピロ,T.G.;Groves,J.T.,trans−ジオキソマンガン(V)ポルフィリン,J.Am.Chem.Soc.2007,129,12416〜12418(それらの全てを説明するように、参照により本願明細書に援用したものとする)。
【0164】
MnIV(TMP)Fの化学量論量は、n(TMP)Clおよびヨードシルベンゼンを用いるシクロオクタンのシンプルなターンオーバーC−Hフッ素化においてフッ化銀を変換させうる。添加したMnIV(TMP)Fに基づいて、43%収率のフッ化シクロオクチルが得られた。MnIV(TMP)Fの存在下でアゾビス−α−フェニルエタンの熱分解は、フェネチルラジカルを生成し、41%収率の1−フルオロエチルベンゼンをもたらした。これらに観測されたイオンは、初期の水素吸収後に、MnIV(TMP)Fがフッ素送達系において基質ラジカルを補足しうることを示す。これらのラジカル補足実験の中圧のフッ素化の収率は、おそらくこれらの条件下でマンガン(IV)ジフルオリドの濃度の低下の原因である。触媒条件下でのこのような状況におけるフッ化銀の極めて重大な役割は、添加されたMn(TMP)Clを触媒マンガン(III)フッ化物に変換し、次いで、ターンオーバー中のマンガン(IV)フッ化物の一覧を補充する。基質ラジカルとAgFとの直接反応も考えられるので、アゾビス−α−フェニルエタンからインシチュで生成されるAgFとフェネチルラジカルとの反応は、極微量のフッ素化された生成物を与えた。
【0165】
実施例11−炭化水素のフッ素化(表4のエントリー1〜5、図3A
上記の一般的な手順に基づき、基質として、列挙される炭化水素を用いた反応が進行した。反応が完了したとき、当該溶液を室温まで冷却し、シリカゲルのショートパッドを通した(ジクロロメタンで洗浄している)。濾液をGC/MSで分析した。生成物の帰属を基準試料のGC保持時間と質量断片化の比較に基づき行った。trans−デカリンのフッ素化の生成物の帰属をDASTで対応するアルコールを処理することにより調製した基準試料のGC保持時間と比較して行った。
【0166】
実施例12−ノルカランのフッ素化(表4のエントリー6)
上記実施例7の一般的な手順に基づき、基質(2)として、ビシクロ[4.1.0]ヘプタン(ノルカラン)および、酸化剤として0.5等量のヨードシルベンゼンを用いた反応が進行した。反応が完了したとき、当該溶液を室温まで冷却し、シリカゲルのショートパッドを通した(ジクロロメタンで洗浄している)。濾液をGC/MSで分析した。転位生成物、3−フルオロメチルシクロヘキセンを質量スペクトルにおいて特徴的なm−CHFのピークにより同定した。
【0167】
実施例13−フッ素化反応の反応速度同位体効果
上記実施例7の一般的な手順に基づき、基質として、シクロヘキサン/シクロヘキサン−d12(1:1)または、エチルベンゼン/エチルベンゼン−d10(1:1)および、酸化剤として0.5等量のヨードシルベンゼンを用いた反応が進行した。反応が完了したとき、当該溶液を室温まで冷却し、シリカゲルのショートパッドを通した(ジクロロメタンで洗浄している)。濾液をGC/MSで分析した。反応速度同位体効果を対応するピーク強度(シクロヘキセン/シクロヘキセン−12の82/92[M−HF]およびエチルベンゼン/エチルベンゼン−15の105/114[M−F])の割合を計算して決定した。
【0168】
MnIV(TMP)Fの調製。
MnIV(TMP)Fを以前報告されているように調製したMnIV(TMP)Clと過剰のフッ化銀とを処置することにより調製した(P.B.Zanzonicoら,J Nucl Med 45,1966(2004)(それらの全てを説明するように、参照により本願明細書に援用したものとする))。典型的な実験において、フッ化銀(1.6mmol)を1.5mLのベンゼン中MnIV(TMP)Cl(30mg、0.033mmol)の溶液に固体形態で添加した。反応を室温で激しく撹拌して行った。2時間後、当該溶液をろ過して、不溶性の銀塩を除き、その濾液を真空下で濃縮した。このようにして得られた紫色の固体を0.5mLのベンゼンに再溶解させ、当該溶液を再度ろ過した。溶媒を真空下で除去して、MnIV(TMP)Fを紫色の固体として得た(24mg、84%収率)。X線結晶構造解析に好適な光沢のある紫色の結晶を、2℃で0.5mLのベンゼン溶液中にペンタン層(3mL)を拡散させて成長させた(表5〜6)。
【0169】
実施例14−アゾビス−α−フェニルエタンとMnIV(TMP)Fとの反応
アゾビス−α−フェニルエタンの熱分解を、新たに調製したMnIV(TMP)Fの存在下で105℃で行った。典型的な実験において、フッ化銀(1.6mmol)を1.5mLのベンゼン−d中のMnIV(TMP)Cl(30mg、0.033mmol)の溶液に固体形態で添加した。当該反応混合物を室温で激しく撹拌した。2時間後、溶液を4mLのバイアルにろ過し、およびアゾビス−α−フェニルエタン(3mg、0.4等量)を、濾液に加えた。溶液を3つの凍結−圧送−融解のサイクルにより脱気氏、その後、4分間105℃で加熱した。当該バイアルを室温まで冷却し、(1−フルオロエチル)ベンゼンの収率を内部標準としてトリフルオロトルエンを用いて19F NMR(δ−167.2ppm)により決定した。
【0170】
実施例15−MnIV(TMP)Fを伴うシクロオクタンのシングルターンオーバーフッ素化
シングルターンオーバーフッ素化反応を、フッ化銀の代わりにMn(TMP)ClとMnIV(TMP)Fの存在下で実施した。典型的な実験において、マグネチック撹拌子を備えるオーブンで乾燥した25mLのシュレンク管に、以下を入れた:Mn(TMP)Cl(30mg、0.034mmol)、TBAF−3H0(0.3mmol)およびMnIV(TMP)F(30mg、0.034mmol)。フラスコに蓋をして、窒素を5分間パージした。その後、シクロオクタン(1.5mmol)を含有するCHCN(1.5mL)およびCHCl(0.5mL)をシリンジで滴下して、フラスコをオイルバス中50℃に加熱した。ヨードシルベンゼン(11mg、0.05mmol)を混合物に一度に添加して、30分間撹拌した。当該溶液を室温まで冷却し、シリカゲルのショートパッドを通した(ジクロロメタンで洗浄している)。濾液をGC/MSにより分析し、フッ化シクロオクチルの収率(43%)を、内部標準としてエチルベンゼンを用い投入されたMnIV(TMP)Fに基づいて計算した。Mnv(TMP)Fを用いない条件下でのフッ素化は取るに足りなかった。
【0171】
実施例16−表4のエントリー7、化合物8
上記実施例7の一般的な手順に基づき、基質として、シクロヘキサンカルボン酸メチルを用いた反応が進行した。カラムクロマトグラフィ(ヘキサン、次いで5%EtOAc/ヘキサン)により精製した。位置化学的帰属を、非対称13C NMRに基づき行った。立体化学的帰属を、明らかにビシナル位のtrans−ジアキシャルH−FのJカップリングおよび小さいビシナル位のH−Hカップリングに基づいて行った(δ4.85,dtt,J=47.7,5.7,2.3Hz)。HNMR(500MHz,CDCl)δ4.85(dt,J=47.7,2.3Hz,1H),3.61(s,3H),2.67(tt,J=11.6,3.8Hz,1H),2.11(m,1H),1.89(m,2H),1.72−1.38(m,5H).13C APT NMR(125MHz,CDCl)176,88.6,51.8,37.8,33.1,30.2,28.1,19.6ppm.19F NMR−183.0ppm.MS(EI)m/z(計算値)CHiF0[M]:160.1、(実測値)160.1.
【0172】
実施例17−表4のエントリー8、化合物9
メチルシクロヘキサノールを基質として用いる反応を、上記実施例7の一般的な手順に基づき行った。カラムクロマトグラフィ(ヘキサン、次いで10%酢酸エチル/ヘキサン)により精製を行った。位置化学的帰属を非対称13C NMRに基づき行った。立体化学的帰属を、フッ素およびヒドロキシルプロトンの明確なJカップリングに基づき行った(δ2.50(d,J=10.7Hz))。HNMR(500MHz,CDCL)δ4.86(dtt,J=48.1,5.3,2.9Hz,1H),2.50(d,J=10.7Hz,1H),1.97(m,1H),1.84(m,2H),1.64(m,2H),1.41(m,3H),1.14(s,3H).13C NMR(125MHz,CDCl)91.6,42.8,38.4,30.4,29.7,16.7ppm.19F NMR−179.2ppm.MS(EI)m/z(計算値)C13FO[M]:132.1(実測値)132.1.
【0173】
実施例18−表4のエントリー9、化合物10
上記実施例7の一般的な手順に基づき、基質として、メチルシクロヘプタノンを用いた反応が進行した。カラムクロマトグラフィ(ヘキサン、次いで4%酢酸エチル/ヘキサン)により精製した。位置化学的帰属を3つの結合F−C2カップリングに基づき行った(36.4ppm(d,J=8.7Hz))。H NMR(500MHz,CDCl)δ4.75(dtt,J=45.6,7.4,2.7Hz,1H),2.73,(m,1H),2.49,(m,1H),2.40(m,1H),2.30(ddd,J=15.4,9.2,2.5Hz,1H),2.08−1.76(m,5H).1.58(m,1H).13C APT NMR(125MHz,CDCl)91.7,43.5,36.4,35.4,29.7,17.6ppm.19F NMR−175.3ppm.MS(EI)m/z(計算値)C11FO[M]:130.1、(実測値)130.1.
【0174】
実施例19−表4のエントリー10、化合物11
上記実施例7の一般的な手順に基づき、基質として、N−メチル−トリフルオロアセチルシクロペンチルアミンを用いた反応が進行した。カラムクロマトグラフィ(ヘキサン、次いで4%酢酸エチル/ヘキサン)により精製した。位置化学的帰属を2つの結合F−C2カップリングに基づき行った(36.7ppm(d,J=22.0Hz))。立体化学的帰属を19FNMRの化学シフトに基づき行った。cis−異性体(−171.0ppm)は、アミド基によるフッ素の磁場により、trans−異性体(168.8)より小さく高磁場へのシフトを示す。trans−11について、HNMR(500MHz,CDCl)δ5.13−4.39(m,2H),2.93(d,3H),2.23(dddd,J=35.8,15.9,10.6,5.0Hz,1H),2.07(m,1H),1.96−1.71(m,3H),1.67−1.49(m,1H).13C APT NMR(125MHz,CDCL)157.2,116.5,94.5,56.4,54.0,36.7,35.5,32.9,29.0,27.5,25.8ppm.19F NMR−68.7(s),−70.2(s),−168.8(m)ppm.MS(EI)m/z(計算値)C11FO[M]:213.1、(実測値)213.1.
【0175】
実施例20−表4のエントリー11、化合物12a(cis)
上記実施例7の一般的な手順に基づき、基質として酢酸シクロヘキシルを用いた反応が進行した。カラムクロマトグラフィ(1%の酢酸エチル/石油エーテル)により精製した。位置化学的帰属を非対称13C NMRに基づき行った。立体化学的帰属を、明らかにビシナル位のtrans−ジアキシャルH−FのJカップリングおよび小さいビシナル位のH−Hカップリングに基づいて行った(δ4.63(dtt,J=52.1,5.8,2.9Hz))。H NMR(500MHz,CDCL)δ4.75−4.57(m,2H),1.99(s,3H),1.93(m,2H),1.74(m,2H),1.68−1.57(m,4H).13C APT NMR(125MHz,CDCl)170.7,88.7,70.6,28.926.6,21.5ppm.19F NMR−180.4ppm.MS(EI)m/z(計算値)C12[M−HF]:140.1、(実測値)140.1.
【0176】
実施例21−表4のエントリー11、化合物12b(cis)
位置化学的帰属を非対称13C NMRに基づき行った。立体化学的帰属をH−FJカップリングおよび大きなビシナル位のH−Hカップリングに基づいて行った(δ4.48(dtt,J=48))。0,10.1,4.4Hz,1H).H NMR(500MHz,CDCl)δ4.65(m,1H),4.48(dtt,J=48.0,10.1,4.4Hz,1H),2.28(m,1H),2.04−1.93(m,2H),1.98(s,3H).1.81(m,2H),1.60−1.40(m,3H),13C APT NMR(125MHz,CDCl)170.5,89.5,69.9,37.9,31.5,30.5,21.4,18.8ppm.19F NMR−180.4ppm.MS(EI)m/z(計算値)C12[M−HF]:140.1、(実測値)140.1.
【0177】
化合物12a(trans)および化合物12b(trans)を分離できない混合物として単離した。H NMR(500MHz,CDCl)δ5.07−5.46(m,2H),1.97(s,3H),1.95−1.32(m,8H).19F NMR−180.0,−181.1ppm.
【0178】
実施例22−表4のエントリー12、化合物13
上記の一般的な手順に基づき、基質として安息香酸シクロヘプチルを用いた反応が進行した。ラムクロマトグラフィ(ヘキサン、次いで1%の酢酸エチル/ヘキサン)により精製し、cisおよびtrans異性体の混合物として単離した。位置化学的帰属を3つの結合F−C2カップリングに基づき行った(26.6ppm(d,J=10.0Hz))。HNMR(500MHz),CDCl)δ7.96(m,2H),7.49(m,2H),7.38(m,1H),5.20−4.70(m,2H).2.50−1.50(m,10H).19F NMR−164.6,−166.7ppm.MS(EI)m/z(計算値)C14HiF0[M]:236.1、(実測値)236.1.
【0179】
実施例23−図26B、スクラレオリドのフッ素化
上記の一般的な手順に基づき、基質としてスクラレオリドを用いた反応が進行した。反応が終わった後で、混合物を一般的な手順で概略化されている後処理手順を行い、カラムクロマトグラフィ(ヘキサン、次いで10%EtOAc/ヘキサン)で精製した。生成物の構造の帰属を、F−NMRスペクトル解析に基づき行った。2α(−180.3ppm,dm),2β(−172.6ppm,qt),3α(−187.8ppm,qt),3β(−185.6ppm,dm).主生成物の2a−フルオロ異性体を2回のカラムクロマトグラフィで白色固体として単離し得た。H NMR(400MHz,CDCl)δ4.83(dtt,J=48.0,11.3,4.6Hz,1H),2.45(dd,J=16.2,14.7Hz,1H),2.27(dd,J=15.8,6.5Hz,1H),2.12−1.85(m,6H),1.70(td,J=12.6,4.1Hz,1H),1.43−1.30(m,6H),0.99(s,3H),0.95(s,3H),0.89(s,3H);19F NMR−180.3ppm.MS(EI)m/z(計算値)C1625FO[M]:268.2、(実測値)268.2.
【0180】
実施例24−図3C、5α−アンドロスタン−17−オンのフッ素化
上記実施例7の一般的な手順に基づき、基質として、5α−アンドロスタン−17−オンを用いた反応が進行した。反応の終了後、混合物を一般的な手順で概略化されている後処理手順を行い、カラムクロマトグラフィ(ヘキサン、次いで30%DCM/ヘキサン)で精製した。生成物の構造の帰属を診断的なF−NMRスペクトル解析に基づき行った。2a(−172.4ppm,dm),2β(−172.8ppm,qt),3α(−181.5ppm,qt),3β(−168.3ppm,dm)。主生成物の3a−フルオロ−5α−アンドロスタン−17−オンを2回のカラムクロマトグラフィで単離した(4%酢酸エチル/ヘキサン)。HNMR(500MHz,CDCl)δ4.75(dm,J=48.7,2.5Hz,1H),2.37(dd,J=19.1,8.9Hz,1H),2.01(dt,J=19.4,9.1Hz,1H),1.85(m,2H),1.73(m,2H),1.60(m,3H),1.53−1.32(m,6H),1.28−1.09(m,6H)0.95(m,1H),0.79(s,3H),0.74(s,3H).13C APT NMR(125MHz,CDCl)221.6,89.4,54.2,51.4,47.8,39.4,35.9,35.0,33.9,32.4,31.5,30.8,28.0,27.1,21.8,20.1,13.9,11.2ppm.19F NMR−181.5ppm.MS(EI)m/z(計算値)C1929FO[M]:292.2、(実測値)292.2.
【0181】
実施例25−図26D、酢酸ボルニルのフッ素化のフッ素化
上記実施例7の一般的な手順に基づき、基質として、酢酸ボルニルを用いた反応を行った。反応の終了後、混合物を一般的な手順で概略化されている後処理手順を行い、溶離液としてDCM:ヘキサン(1:4)を用いてカラムクロマトグラフィで精製した。生成物を55%収率の無色の油状物で得た。H NMR(500MHz,CDCL)δ4.71(d,J=9.7Hz,1H),4.56(ddd,J=60,7.6,2.3Hz,1H),2.33(m,2H),2.05−1.95(m,1H)1.98(s,3H),1.63(dd,J=35.3,15.4Hz,1H),0.97(s,3H),0.85(s,3H),0.83(s,3H),0.68(dd,J=14.5,3.4Hz,1H).13C APT NMR(125MHz,CDCl)95.8(d,186Hz),77.6,50.5(d,17.6Hz),37.5(d,18.0Hz),32.2(d,11.1Hz),21.3,20.2,19.4,12.6ppm.19F NMR−158.2ppm.MS(EI)m/z(計算値)C1219FO[M]:214.1、(実測値)214.1。H−NMRの4.55(ddd)のプロトンの分割パターンは、フッ素化はメチレン基に隣接した2つ目の炭素位で生じたことを示す。13C NMRスペクトルは、2J 13C−Fカップリングと一致する16Hzの結合定数を有するC4炭素の二重線を示し、H NMRデータと一緒に、フッ素化した位置として明らかにC5を示す。exo−フッ素構造を19F−NMRの−158ppmのシグナルにより確認した。endo生成物は、−190ppmのシグナルを有するだろう。
【0182】
実施例26−フッ素化の例
図9A〜9Bに関して、N−Phthアマンタジンのフッ素化が示される。図10A−10Bに関して、N−Phthメマンチンのフッ素化が示される。図11A−11Bに関して、2−アダマンタノンのフッ素化が示される。図12A−12Bに関して、リマンタジン類似体のフッ素化が示される。図13A−13Bに関して、アダパレン前駆体のフッ素化が示される。図14A−14Bに関して、ペリンドプリル前駆体のフッ素化が示される。図15A−15Bに関して、保護されたガバペンチンのフッ素化が示される。図16A−16Bに関して、オクタン酸メチルのフッ素化が示される。図17A−17Bに関して、ノナン酸メチルのフッ素化が示される。図18A−18Cに関して、ヘキサン酸メチルのフッ素化が示される。図19A−19Cに関して、酢酸シクロヘキシルのフッ素化が示される。図20A−20Cに関して、シクロヘキサンカルボン酸メチルエステルのフッ素化が示される。図21に関して、フッ素がシクロヘキシル環のC3位およびC4位に導入されるベンラファキシンを伴うリリカ(プレガバリン)が示される図22に関して、イソブチル置換基の第二級および第三級の位置にフッ素が導入されることが示される。
【0183】
実施例27−フルオロブスピロンの合成
親薬物、ブスピロン(商標Buspar)は向精神薬およびピペラジンおよびアザピロン化学的分類の調剤薬物である。それは主に、特に一般化された不安障害用の不安安定剤として用いられる。ブリストルマイヤーズスクイブは、1986年に一般的な不安障害用のブスピロンのFDA承認を得、2001年にジェネリックとして購入可能となった。図7Aに関して、フッ素化されたブスピロン誘導体が示される。図7Bは、ブスピロン前駆体のフッ素化は、別の未知の生成物を伴うフッ素化された生成物を与えることを示す。図7Cに関して、フッ素化されたブスピロンの質量スペクトルのピークが示される。図7Dに関して、ブスピロン前駆体出発物質の質量スペクトルが示される。本願明細書に記載されるフッ素化された誘導体は明らかに新しい組成物である。新しい薬物の大きな比率は、フッ素化されることであり、特に、それらの標的と結合することに影響を及ぼすことと毒性の代謝の発生率を減少させることの両方である。この新しい方法は、ジェネリック薬物の新規なフッ素化された誘導体を製造する。現在、フッ素原子を選択的に複雑な化合物に組み込む方法がたとえあったとしても、ほとんどない。この場合、我々は、フッ素を、この薬物の分子骨格のさもなければアクセスできない部位に組み込む。これまでに記載された新しいフッ素化技術が用いられて、ブスピロンの直近の無水物前駆体にフッ素を組み込むか薬物自体に直接フッ素を組み込む。フッ素は5員環に位置する。
【0184】
実施例28−脱炭酸フッ素化反応
C−Hフッ素化は室温でも達成され得るので、室温での反応条件は調査された。クメン様2−メチル−2−フェニルプロパン酸を反応の最適化のために基質として選択した。初期の調査は、過剰のTBAF(C−Hフッ素化条件と同じ、触媒に対して約30等量)の存在下で、白色固体が沈殿し、全反応溶液が、スラリーとなったことを示した。さらに、極微量のフッ素化された生成物は、それらの条件下でGC−MSにより検出され得た。このことは、カルボン酸の脱プロトン化は、大量の塩基性TBAFによって促進されることにより、カルボン酸銀の形成を促進し、オキソマンガンポルフィリンによるカルボン酸の活性化を阻害する。そして、TBAFの量を、触媒に対して5等量に減少した。有意に、フッ素化生成物の収率は、8%の飽和度の低下した生成物および1%未満の酸化生成物を含む18%(酸化剤に基づく、以下同様)に増加した(図29)。マンガンポルフィリンを省略する対照実験は、GC−MSにより検出可能なフッ素化生成物を示さず、マンガンポルフィリン触媒が極めて重要であることを示した。マンガンポルフィリンシステムに基づく脱炭酸フッ素化反応は、極めて有望な強力なフッ素化のツールであるだろう。単離され、構造的に特性化された、独特で、前例のないマンガン(IV)ジフルオリド(Mn(TMP)F)はフッ素化触媒であることが明らかである。これは、これまでに報告される初めての触媒的脱炭酸フッ素化システムである。反応条件は極めて温和であり、その収率は、さらに最適化される反応条件により大きく増加するかもしれない。
【0185】
実施例29−追加ハロゲン化触媒
追加のハロゲン化触媒は追加の金属リガンド錯体を包含してよい。図23A−23Dに関して、C−Hフッ素化を補助するリガンドハットの例が示される。図23Aに関して、ポルフィリンが示される。図23Bに関して、フタロシアニンが示される。図23Cに関して、ポルフィラジンが示される。図23Dに関して、ピリドポルフィラジンが示される。
【0186】
酸化的C−Hフッ素化を補助するかもしれないリガンドのさらなる例を図24A−24Gに示す。図24Aに関して、N−ピリジルメチルトリアザシクロノナン(cycononane)が示される。図24Bに関して、N,N−ジピリジルメチルシクロヘキサジアミンが示される。図24Cに関して、テトラアザシクロテトラデカンが示される。図24Dに関して、Ν,Ν−ジピリジルメチル2,2’−ジピロリジンが示される。図24Eに関して、Ν,Ν−ジピリジルメチルエチレンジアミンが示される。図24Fに関して、トリピリジルアミン(TPA)が示される。図24Gに関して、サレンが示される。図23A−24Gの任意の1以上のリガンドは、金属と共に、フッ素化触媒として提供されてよい。
【0187】
マンガンのため、サレン、サロフェン、フタロシアニンおよびポルフィラジンリガンドがフッ素化触媒として用いられてもよい。触媒としてマンガンサレン(図29)種の存在下で、ベンジルプロトンを有する異なる基質は選択的にフッ素化され得る。今までのところ試験されている基質は図30に示される。類似して作用するような基質は図31に示される。マンガンサレン触媒を単に置換したマンガンポルフィリン触媒の反応が記載されている。一般化されたリガンド構造は図32および図33に示される。図32に関して、マンガンサロフェン錯体が示される。アキシャルリガンドおよび対イオンは典型的にはハロゲン化物、酢酸塩(または他のカルボン酸)、過塩素酸塩、などでありうる。炭素b−hでの典型的な置換はアルキル、アリールまたは、ハロゲンでありうる。置換基は、カルボキシレート、スルホン酸塩またはトリアルキルアンモニウムで有り得、水などの極性溶媒により高い溶解性を示す。図33に関して、マンガンサレン錯体(M=Mn)が示される。典型的な置換基の群はアルキル(t−ブチルなど)、またはアリール(フェニルなど)、またはハロゲン化物でありうる。基R’はアルキルまたはアリール(フェニルなど)であり得、cisまたはtrans立体化学的取り決めのいずれかでありうる。エタノ基と一緒の2つのR’基は、シクロアルキル置換基(シクロペンチルまたはシクロヘキシルなど)を形成しうる。そのような場合における環の融合はcisまたはtransでありうる。
【0188】
図34−37に関して、C−Hフッ素化のtrans−ジフルオロマンガン(IV)錯体が示される。図34に関して、Rはアルキルまたはアリールであり得、b−fはアルキル、アリールまたはハロゲンであり得るtrans−ジフルオロマンガン(IV)サレン錯体が示される。図35に関して、Rがアルキルまたはアリールであり、b−fはアルキル、アリールまたはハロゲンであり得るtrans−ジフルオロマンガン(IV)サレン錯体が示される。図36に関して、b−fはアルキル、アリールまたはハロゲンであり得るtrans−ジフルオロマンガン(IV)シクロヘキシルサレン錯体が示される。図37に関して、b−fはアルキル、アリールまたはハロゲンであり得るtrans−ジフルオロマンガン(IV)サロフェン錯体が示される。
【0189】
実施例30−追加基質
図38および図39に関して、示される形態において本願明細書に含有される任意の方法で用いられてよい追加基質またはそれらの類似体が示される。
【0190】
本願明細書で使用する場合、炭素含有化合物は、標的または基質としても言及されるかもしれない。本願明細書で使用する場合、炭素含有化合物の類似体は、1つ以上の原子または、置換基が親構造中の原子または置換基で置換されているが分子の全体の形状を保持している同様の構造および/または、環の化合物を言及する。いくつかの態様において、類似体は同じ生物学的標的と結合し、同様の生物活性を発揮するかもしれない。
【0191】
実施例31−追加リガンド
本願明細書におけるテトラフェニルまたはテトラメシチルポルフィリンのフェニル置換基は、ナフチルであり得、これらのアリール基は、フェニルまたはアリール基に結合しているエチル、トリフルオロメチル、ハロゲンまたはニトロ置換基も有しうる。
【0192】
本願の全体にわたって引用される参考文献は、本願明細書およびそれらの参考文献において、それぞれの参考文献が完全に説明されたかのように、あらゆる目的を明らかとするために組み込まれる。説明のために、これらの参考文献の特定の1つは本願明細書において特定の位置に引用される。特定の位置での参考文献の引用は、参考文献の教示が組み込まれているような態様を示す。しかしながら、特定の位置での参考文献の引用は、引用された参考文献の教示の全てがあらゆる目的のために組み込まれる態様において限定するものではない。
【0193】
本願明細書の任意の単一の実施形態は、本願明細書の任意の1以上の他の実施形態の1以上の要素で補完されてよい。
【0194】
それゆえ、本発明は、開示される特定の実施形態に限定されるものではないが、添付の特許請求の範囲によって定められる本発明の趣旨および範囲(上記記載)および/または添付図面に示される範囲内の全ての変更を包含することが意図されていると理解される。

図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A
図3B
図3C
図3D
図4
図5A
図5B
図6
図7A
図7B
図7C
図7D
図8
図9A
図9B
図10A
図10B
図11A
図11B
図12A
図12B
図13A
図13B
図14A
図14B
図15A
図15B
図16A
図16B
図17A
図17B
図18A
図18B
図18C
図19A
図19B
図19C
図20A
図20B
図20C
図21
図22
図23A
図23B
図23C
図23D
図24A
図24B
図24C
図24D
図24E
図24F
図24G
図25
図26A
図26B
図26C
図26D
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35
図36
図37
図38
図39