(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
いくつかの安定化されたハロカーボン組成物は、ハロカーボンと酸捕捉安定剤と抗酸化安定剤とを含んでよい。
【0012】
ハロカーボンには、任意のブロモフルオロカーボンまたはブロモフルオロアルケンが含まれ、その例として、臭素、フッ素、炭素を含み、かつ任意に水素を含む任意の化合物が挙げられ、この化合物の例には、C
2-6ブロモフルオロアルケン等のブロモフルオロアルケンが含まれ、C
2-6ブロモフルオロアルケンの例には、ブロモフルオロプロペンとブロモフルオロブテンが含まれる。具体例として、3−ブロモ−3,3−ジフルオロ−1−プロペン(CH
2=CHCF
2Br、CAS番号420−90−6)、2−ブロモ−3,3,3−トリフルオロ−1−プロペン(CH
2=CBr−CF
3、CAS番号1514−82−5)、1−ブロモ−3,3,3−トリフルオロ−1−プロペン(BrCH=CH−CF
3)、3−ブロモ−1,1,3,3−テトラフルオロ−1−プロペン(CF
2=CH−CF
2Br、CAS番号460−61−7)、2,3−ジブロモ−3,3−ジフルオロ−1−プロペン(CH
2=CBr−CBrF
2)、1,2−ジブロモ−3,3,3−トリフルオロ−1−プロペン(BrCH=CBr−CF
3)、4−ブロモ−3,3,4,4−テトラフルオロ−1−ブテン(CH
2=CH−CF
2CF
2Br、CAS番号18599−22−9)、4−ブロモ−3,4,4−トリフルオロ−3−(トリフルオロメチル)−1−ブテン(CH
2=CH−CF(CF
3)−CBrF
2、CAS番号2546−54−5)等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0013】
いくつかの実施形態では、ハロカーボンは、2−ブロモ−3,3,3−トリフルオロプロペンを含む。この化合物にはいくつか別名があり、例えば、1−プロペン,2−ブロモ−3,3,3−トリフルオロ−;プロペン,2−ブロモ−3,3,3−トリフルオロ−(6ci,8ci);2−ブロモ−3,3,3−トリフルオロ−1−プロペン;3,3,3−トリフルオロ−2−ブロモプロペンとも呼ばれる。他の公知の名称もあり得る。2−ブロモ−3,3,3−トリフルオロプロペンは、核磁気共鳴(NMR)スペクトロスコピー分析において安定であることがすでに示されている。しかし、金属容器に保管された劣化物質が発見され、その後、この物質は、保管容器に存在する湿気および空気と徐々に反応するものと判断され、長期的安定性が問題となった。特に、通常は耐用年数が12年間とされる消火システムでは、この長期的安定性は問題である。空気との反応は、金属腐食を生じさせるのに十分有意となり得る酸性度を発生させる傾向がある。金属イオンが生成されるので、この金属イオンが、物質の重合の触媒として作用すると考えられている。物質または保管容器に存在する湿気は、重合体形成を助長する。したがって、特に長期的保管の場合、安定化添加物がなければ、この物質を有用とみなすことはできない。
【0014】
酸捕捉安定剤は、酸(ハロカーボン中に存在し得るハロゲン化酸を含む)と反応する上で有用な、任意の化合物を含んでよい。いくつかの酸捕捉安定剤はエポキシ化合物を含ん
でよく、このエポキシ化合物の例として、エテンオキシド、プロピレンオキシド(CAS登録番号75−56−9)、ブテンオキシド、シクロプロペンオキシド、シクロブテンオキシド、ペンテンオキシド、シクロペンテンオキシド(CAS登録番号285−67−6)、ヘキセンオキシド、シクロヘキセンオキシド、ヘプチレンオキシド、シクロヘプテンオキシド等が挙げられる。
【0015】
いくつかの実施形態では、酸捕捉安定剤はシクロヘキセンオキシドを含んでよく、このシクロヘキセンオキシドは、CAS登録番号286−20−4を有し、以下の構造式で表される。
【化1】
【0016】
この化合物の別名は、7−オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタン(CAインデックス名);1,2−シクロヘキセンオキシド;1,2−エポキシシクロヘキサン;2,3−テトラメチレンオキシラン;cis−1,2−エポキシシクロヘキサン;cis−7−オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタン;cis−シクロヘキセンオキシド;シクロヘキサン,1,2−エポキシ−,シクロヘキセンエポキシド;シクロヘキセン,オキシド;シクロヘキシレンオキシド;NSC128074;NSC5218;およびテトラメチレンオキシランである。他の公知の名称もあり得る。
【0017】
酸捕捉剤の濃度は、消火器整備のための業界標準の物質取扱い慣行を用いたときに、空気および水の汚染レベル下で形成される酸を除去するのに効果的な、任意の濃度であってよい。例えば、酸捕捉剤(上記で列挙されている任意の酸捕捉剤を含む)の濃度は、消火組成物の重量に基づき、約500ppm、約750ppm、約1000ppm、約1500ppm、約2000ppm、約2500ppm、約5000ppm、約7500ppm、約10,000ppm、または、上記の値を境界とする範囲もしくは上記の値の間にある範囲にある任意の濃度であってよい。いくつかの実施形態では、シクロヘキセンオキシドおよび/またはシクロペンテンオキシドは、約2000重量ppmの濃度で存在する。
抗酸化安定剤は任意の抗酸化化合物を含んでよく、この抗酸化化合物の例として、ヒンダードフェノール(2,5−ジ−tert−ブチル−4−メトキシフェノールを含む)、3,5,−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシケイ皮酸のアルキルエステル(C
7-9分枝アルキルエステルを含む)等;スルホキシド(例えばジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド、ジプロピルスルホキシド、ジ−n−ブチルスルホキシド等);ポリエポキシ化合物(例えば1,2,5,6−ジエポキシシクロオクタン);等が挙げられる。
【0018】
いくつかの実施形態では、抗酸化安定剤は、CAS登録番号1991−52−2を有し以下の構造式で表される、2,5−ジ−tert−ブチル−4−メトキシフェノールを含んでよい。
【化2】
【0019】
この化合物の別名は、フェノール,2,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−メトキシ−(CAインデックス名);フェノール,2,5−ジ−tert−ブチル−4−メトキシ−(6CI,7CI,8CI);2,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシアニソール;2,5−ジ−tert−ブチル−4−メトキシフェノールである。他の公知の名称もあり得る。
【0020】
いくつかの実施形態では、抗酸化安定剤は、CAS登録番号125643−61−0の3,5,−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシケイ皮酸,C
7-9分枝アルキルエステルを含んでよい。この物質の別名は、ベンゼンプロパン酸,3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシ−,C
7-9分枝アルキルエステル(CAインデックス名)である。他の公知の名称もあり得る。
【0021】
いくつかの実施形態では、抗酸化安定剤は、CAS登録番号2168−93−6を有し以下の構造式で表される、ジ−n−ブチルスルホキシドを含んでよい。
【化3】
【0022】
この化合物の別名は、ブタン,1−(ブチルスルフィニル)−(CAインデックス名);ブタン,1,1’−スルフィニルビス−(9CI);ブチルスルホキシド(6CI,8CI);1,1’−スルフィニルビス[ブタン];ジブチルスルホキシド;n−ブチルスルホキシドである。他の公知の名称もあり得る。
【0023】
抗酸化安定剤の濃度は、酸化に対して組成物(例えば、ハロカーボンおよび/または酸捕捉剤を含む組成物)を安定させるのに効果的な、任意の濃度でよい。例えば、抗酸化安定剤(上記で列挙されている任意の抗酸化安定剤を含む。)の濃度は、組成物の重量に基づき、約100ppm、約200ppm、約500ppm、約750ppm、約1000ppm、約1500ppm、約2000ppm、約3000ppm、約5000ppm、または、上記の値を境界とする範囲もしくは上記の値の間にある範囲にある任意の濃度であってよい。いくつかの実施形態では、2,5−ジ−tert−ブチル−4−メトキシフェノールは、約1000重量ppmの濃度で存在する。いくつかの実施形態では、すべての3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシケイ皮酸,C7−9分枝アルキルエステルは、約1000重量ppmの濃度で組成物中に存在する。いくつかの実施形態では、ジ−n−ブチルスルホキシドは、約100重量ppmの濃度で存在する。
【0024】
本発明の組成物は、不活性ガスをさらに含んでよい。不活性ガスの特性は多様であってよく、不活性ガスには、例えば、消火器の保管条件下では気体状態であり、火に曝露したときに火災を助長するようには反応しない任意の組成物、化合物、または元素が含まれてよい。不活性ガスは、消火組成物の噴射剤として機能でき、ゆえに、消火ユニットが開かれたときに消火ユニットから消火組成物を放出するのを促進する。不活性ガスの組成物中の溶解度は、不活性ガスが噴射剤として機能するために許容可能な圧力を実現する程度に、十分に低くてよい。例えば、組成物の圧力、または組成物中の不活性ガスの分圧は、約
138kPa(20psig
)、約
200kPa(29psig
)、約
207kPa(30psig
)、約
483kPa(70psig
)、約
496kPa(72psig
)、約
600kPa(87psig
)、約
689kPa(100psig
)、約
696kPa(101psig
)、約
862kPa(125psig
)、約
1034kPa(150psig
)、約
1344kPa(195psig
)、約
1379kPa(200psig
)、約
1496kPa(217psig
)、約
1517kPa(220psig
)、約
2482kPa(360psig
)、約
3103kPa(450psig
)、約
4137kPa(600psig
)、約
4999kPa(725psig
)、約
5516kPa(800psig
)、または、これらの値のいずれかを境界とする範囲、もしくはこれらの値の間にある範囲にある任意の圧力であってよい。不活性ガスのいくつかの例として、N
2、H
e、Ar、Kr、Xe、およびこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0025】
これらの組成物は、金属(例えば、鋼、ステンレス鋼、炭素鋼、黄銅、銅、およびアルミニウムのうちの少なくとも1つを含む金属)の存在下で安定であり得る。例えば、組成物は、炭素鋼もしくは黄銅を含む金属の存在下で安定であり得るので、組成物と金属の間が約60℃で約2週間接触した後、1)金属に視認可能な変化が実質的にまったく発生しないか、または2)組成物に視認可能な変化が実質的にまったく発生しない。いくつかの組成物は、低レベルの水および/または酸素を含有してもよく、それでも安定性を維持することができる。例えば、いくつかの安定な組成物は、約0.1重量ppm、約1重量ppm、約10重量ppm、約50重量ppm、約100重量ppm、約500重量ppm、約1000重量ppm、または、これらのいずれかの値を境界とする任意の濃度、もしくはこれらの値の間にある任意の濃度のレベルの水を有してよい。
【0026】
これらの組成物は、空気の存在下で安定であり得る。したがって、いくつかの組成物は、限定量の大気中酸素と接触するように、保管容器内で空気と接触させて保管してよい。
【0027】
金属、水、および/または空気の存在下で安定な組成物を有することは、例えば、組成物が低レベルの水その他の不純物を含有し、および/または、組成物がある程度の空気に曝露される場合に、有用であり得る。したがって、いくつかの実施形態では、金属面を含む容器であって、金属面の少なくとも一部分が組成物の少なくとも一部分と接触する容器の中で、組成物を保管する。いくつかの実施形態では、この金属は、炭素鋼、黄銅、または炭素鋼と黄銅の組み合わせであってよい。例えば、組成物もしくは金属に変色その他の視認可能な変化がないか、または酸性度測定値等の別の指標により、安定性を観察することができる。例えば、透明な組成物は透明のまま存続し、無色の組成物は無色のまま存続し、および/または、金属の外観に視認可能な変化がない状態であり得る。また、安定性とは、消火器に格納された物質が使用可能な状態で存続でき(may will)、かつ長期的な金属腐食の問題を生じさせない程度の、ごくわずかに発生した変化であると表すこともできる。例えば、物質は薄い黄色味を帯びてもよく、または金属の重量もしくは外観に重要でない変化を生じさせてもよい。
【0028】
本明細書に記載の組成物は、消火組成物、冷蔵を含む多くの用途で使用できる。消火システムまたは消火ユニットに、本明細書に記載の組成物を含めてよい。例えば、消火システムは、本明細書に記載の組成物を格納した容器と、バルブとホース(任意)とノズルとをさらに含むことができる。いくつかの実施形態では、この容器は、鋼、黄銅等の金属を含む表面を有してよい。
【0029】
消火ユニットは、本明細書で開示される組成物が作動圧力で充填された容器を含んでよい。具体的な作動圧力は、消火ユニットまたは消火システムのニーズによって異なり得る。例えば、組成物を噴霧するのでなく火炎に滴下する場合、圧力は低くてよい。組成物を噴霧する場合は、より高い圧力が必要とされ得る。いくつかの加圧消火ユニットまたは加圧消火システムの場合、圧力は、約
138kPa(20psig
)、約
200kPa(29psig
)、約
207kPa(30psig
)、約
483kPa(70psig
)、約
496kPa(72psig
)、約
600kPa(87psig
)、約
689kPa(100psig
)、約
696kPa(101psig
)、約
862kPa(125psig
)、約
1034kPa(150psig
)、約
1344kPa(195psig
)、約
1379kPa(200psig
)、約
1496kPa(217psig
)、約
1517k
Pa(220psig
)、約
2482kPa(360psig
)、約
3103kPa(450psig
)、約
4137kPa(600psig
)、約
4999kPa(725psig
)、約
5516kPa(800psig
)、または、これらの値のいずれかを境界とする範囲、もしくはこれらの値の間にある範囲にある任意の圧力であってよい。
【0030】
消火ユニットに圧力送達システムを含めてよい。圧力送達システムを有する消火ユニットの一例を、
図1に示す。
図1は、容器1、バルブ2、ホース3(任意)、およびノズル4を含むハンドヘルド型消火器の概略図である。いくつかの実施形態では、消火ユニットは異なる種類のノズルを備えることができ、充填の度合いを変更できる。すなわち、より小重量または大重量の消火剤を容器に充填することができる。いくつかの実施形態では、消火ユニットは、円錐ノズル、すなわち、消火剤の放出方向に分岐するノズル部材を有するノズルを含んでよい。
【0031】
図2に、ノズル4の一実施形態を概略的に図示する。この特定のノズル4は、接続部12とノズル部材14とを含む。ノズルまたは接続部は、入口直径d
1を有し、ノズル部材は、入口直径d
2を有する。ノズル部材は、長さLと出口角αを有する。いくつかの実施形態では、d
1、d
2、L、およびαは以下の値を有する。
d
2<d
1<1.4d
2
1.5d
2<L<15d
2
10<α<40°
【0032】
いくつかの実施形態は、上記の気体−液体混合物を加えることにより、火または残り火の広がりを制御する方法に関する。
【0033】
いくつかの実施形態では、特定の用途がノズル設計に影響してよい。例えば、企図される用途に適応した液滴粒子サイズおよび消火組成物の分散率が提供されるように、ノズル部材を設計してよい。例えば、ホースまたは何らかの他の機能を用いて噴霧することにより消火組成物が炎心に添加されるように、持ち運び可能な消火器を適応させることができる。
図2に示すノズル設計を通じて気体混合物を加えた場合は、効果の改善を達成し得る。定置式システム、すなわちトータルフラッディングシステムの場合、消火組成物の流れはさほど重要でない場合がある。しかし、気体混合物が可能な限り迅速に分散し蒸発することは、重要であり得る。
【0034】
様々な応用分野において、消火組成物と不活性ガスまたは噴射剤との間の関係が重要であり得る。持ち運び可能な消火器を使用する場合のように、消火組成物を直接加えるときの消火効果は、流量(例えば、単位時間あたりに加える消火組成物の量)および噴霧パターンによって異なり得る。例えば、過度に集中した噴霧パターンの場合、何ら特定の消火効果もなく火炎を貫通し得る。過度に細かく分割したパターンの場合、高温の火炎ガスにより消火組成物または主成分が火から離され、その結果、効力がないことが判明し得る。
【実施例】
【0035】
実施例1
約1kgの2−ブロモ−3,3,3−トリフルオロプロペンを、無水炭酸ナトリウム上で数日間保管した。窒素下で2−ブロモ−3,3,3−トリフルオロプロペンを、〜50gの塩基性アルミナの入った蒸留フラスコに移し、この2−ブロモ−3,3,3−トリフルオロプロペンを、大気圧の窒素下で蒸留した。2週間保管した後、この2−ブロモ−3,3,3−トリフルオロプロペンを安定性試験に用いた。分注量3mLを5mLのHPL
Cグレード水と共に振とうした。水相のpHは5.26であった。
【0036】
シクロペンテンオキシド[285−67−6](CPO)をランカスターから購入し、そのまま使用した。シクロヘキセンオキシド98%[286−20−4](CHO)をアルドリッチから購入し、そのまま使用した。プロピレンオキシド99+%[75−56−9](PO)をアルドリッチから購入し、そのまま使用した。
【0037】
金属切取り片(1/2”×1/2”)は、黄銅(CDA280)または炭素鋼(1010)であった。
【0038】
試験反応器は、裏にテフロン(登録商標)が施されたキャップの付いた20mLのシンチレーションバイアル、または81ウェルを有する配列反応器であり、これらの反応器を加熱し揺動させた。
【0039】
メスフラスコに842mgのエポキシドを入れて、窒素下で2−ブロモ−3,3,3−トリフルオロプロペンを加えて10mLに希釈することにより、各エポキシドのストック溶液を調製した。風袋を除いた20mLのバイアル(ガラス重量のみ)に、窒素下で、10mL(16.5g)の2−ブロモ−3,3,3−トリフルオロプロペンを入れた。予め重量測定した金属切取り片を加え、続いて、選択したエポキシドのストック溶液0.200mLを窒素下で加えた。[注:最終溶液は、約1000ppmのエポキシドを含有していた。]適宜、マイクロシリンジを介して水を加えた。60℃に加熱した反応器ブロックにバイアルを設置し、窒素下で1週間保管した。
【0040】
変色と視認可能な金属腐食を確認した。分注量(3mL)の組成物を取り出し、5mLのHPLCグレード水で希釈して混合し、上側の水相のpHを測定した。この場合、開始時のpHと終了時のpHの差が、形成された酸性度の量を表す。金属切取り片を取り出し、アセトンですすぎ、乾燥させて、重量を測定した。次に、開栓したバイアルを加熱済み配列ブロックに戻し、33℃で一晩静置して2−ブロモ−3,3,3−トリフルオロプロペンを蒸発させた。ブロックの温度を105℃に上げて、さらに1時間静置した。バイアルを冷ましてから、重量を測定した。元の風袋重量を差し引いて、残渣の重量を得た。
【0041】
いくつかのサンプルに100ppmの水と1000ppmの水を加えて、小〜有意レベルの水汚染の影響を判定し、水分汚染に対する安定剤添加物の保護の度合いを判定した。
【0042】
結果を下の表1に示す。この試験では、物質を窒素下で保管したとき、エポキシドは酸形成を防止する上でかなり有用であることを示した。その後の実験では、空気汚染が存在するとき、エポキシドだけではさほど保護性がないことが示唆された。
【0043】
【表1】
【0044】
実施例2
方法1
約1kgの2−ブロモ−3,3,3−トリフルオロプロペンを、無水炭酸ナトリウム上で少なくとも一晩保管した。2−ブロモ−3,3,3−トリフルオロプロペンを、〜60gの前処理(1時間かけて400℃に加熱し、デシケーター内で冷却)済み塩基性アルミナの入った蒸留フラスコに移し、この2−ブロモ−3,3,3−トリフルオロプロペンを、大気圧の窒素下で蒸留する。分注量3mLを5mLの脱イオン水と共に振とうし、水相のpHを測定する。
【0045】
方法2
方法1に従って前処理した2−ブロモ−3,3,3−トリフルオロプロペンは、保管後に酸性になっている可能性がある。pHが7.0未満の場合は、この物質を前処理済みアルミナ上で洗浄する。2−ブロモ−3,3,3−トリフルオロプロペン1kgに対して、約60gのアルミナを使用する。2−ブロモ−3,3,3−トリフルオロプロペンを、アルミナ上で少なくとも30分間撹拌してから、フリット漏斗に通して濾過する。分注量3mLを5mLの脱イオン水と共に振とうし、水相のpHを測定する。安定剤は以下の物質で構成した。
【0046】
シクロヘキセンオキシド98%[286−20−4](CHO) 2,5−ジ−tert−ブチル−4−メトキシフェノール97%[1991−52−2](DTBMP)、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシヒドロケイ皮酸,C7−9分枝アルキルエステル(エタノックス(Ethanox)4716)
【0047】
金属切取り片(1/2”×1/2”)は、黄銅または低炭素鋼で構成した。反応器は、ねじ式PTFEプラグの付いた15mLのエース高耐圧チューブであった。配列反応器を固定の実験室オーブン内で加熱した。
【0048】
ストック溶液を次のように調製した。
A.)843mgのDTBMPを2−ブロモ−3,3,3−トリフルオロプロペンで10mlに希釈した
B.)847mgのAN−1216を2−ブロモ−3,3,3−トリフルオロプロペンで10mlに希釈した
C.)1.736mlのCHOを2−ブロモ−3,3,3−トリフルオロプロペンで10mlに希釈した
【0049】
空気雰囲気中において、10mL(16.7g)の規定の(spec.)2−ブロモ−3,3,3−トリフルオロプロペン(方法1および/または2に従って前処理したもの)を、事前に重量(ガラス重量のみ)測定した15mlの高耐圧チューブに入れた。事前に重量測定した黄銅または鋼の切取り片を加えた後、正しい組成の薬剤を得るために必要な量のストック溶液(いずれかの適切なストック溶液)を加えた。各チューブに、マイクロシリンジを介して1.7μlの脱イオン水を加えた。60℃、93℃のいずれかに加熱したオーブン内に、バイアルを1週間、2週間、または4週間静置した。
【0050】
上記時間の経過後、変色と視認可能な金属腐食を確認し、分注量3mLの組成物を5mLの脱イオン水で希釈し、混合した。上側の水相のpHを測定した。金属切取り片を取り出し、アセトンですすぎ、乾燥させて、重量を測定した。開栓した高耐圧チューブを40℃の通気式オーブンに入れ、一晩静置して2−ブロモ−3,3,3−トリフルオロプロペンを蒸発させた。その後、オーブン温度を100℃に上昇させて、強力な真空下でさらに1時間、残留している2−ブロモ−3,3,3−トリフルオロプロペンを完全に除去した。
【0051】
冷却後、バイアルの重量を測定し、最初の風袋重量を差し引いて残渣の重量を得た。残渣対照群を調製し、直ちに蒸発させた。
【0052】
実施例3
サンプルを空気下で保管する点を除き、上記と同じ実験を繰り返した。所与の条件および得られた結果を表2に示す。これらの汚染物に対する安定剤添加物の保護の程度を測定する目的で、空気の存在および追加の100ppmの水を用いて、資材取扱い時および消火器整備時に発生すると予想される典型的な汚染レベルをシミュレートした。分注量(3mL)の組成物を5mLのHPLCグレード水で希釈し、上側の水相のpHを測定したときの初期pHは、8.01であった。
【0053】
【表2】
【0054】
実施例4
大気下で保管された全サンプルを用いて上記実験を繰り返し、表3に示す結果を得た。分注量(3mL)の組成物を5mLのHPLCグレード水で希釈し、上側の水相のpHを測定したときの初期pHは、8.01であった。
【0055】
【表3-1】
【0056】
【表3-2】
【0057】
【表3-3】
【0058】
実施例5
大気下で保管された全サンプルを用いて上記実験を繰り返した。所与の条件および得られた結果を表4に示す。分注量(3mL)の組成物を5mLのHPLCグレード水で希釈し、上側の水相のpHを測定したときの初期pHは、7.61であった。
【0059】
【表4-1】
【0060】
【表4-2】
【0061】
【表4-3】
【0062】
残渣対照
表4に、残渣対照から得た結果を示す。分注量(3mL)の組成物を5mLのHPLCグレード水で希釈し、上側の水相のpHを測定したときの初期pHは、7.80であった。
【0063】
【表4-4】
【0064】
実施例6
以下の例外を除き、上記実施例2に記載の通りに組成物の安定性を試験した。亜リン酸
トリエチル98%[122−52−1](TEP)。
【0065】
ストック溶液を次のように調製した。
A.)1.736mlのCHOを2−ブロモ−3,3,3−トリフルオロプロペンで10mlに希釈した
B.)441mgのDTBMPを2−ブロモ−3,3,3−トリフルオロプロペンで10mlに希釈した
C.)441mgのエタンクス(Ethanx)4716を2−ブロモ−3,3,3−トリフルオロプロペンで10mlに希釈した
D.)462μlのTEPを2−ブロモ−3,3,3−トリフルオロプロペンで10mlに希釈した
【0066】
60℃に加熱したオーブンに、反応バイアルを1週間静置した。分注量(3mL)の組成物を5mLのHPLCグレード水で希釈し、上側の水相のpHを測定したときの初期pHは、8.50であった。結果を表5に示す。
【0067】
【表5-1】
【0068】
【表5-2】
【0069】
実施例7
以下の例外を除き、上記実施例2に記載の通りに組成物の安定性を試験した。ジ−n−ブチルスルホキシド96%[2168−93−6](DBS)
【0070】
1,2,5,6−ジエポキシシクロオクタン96%[27035−39−8](DECO)
【0071】
ストック溶液を次のように調製した。
A.)1.736mlのCHOを2−ブロモ−3,3,3−トリフルオロプロペンで10mlに希釈した
B.)441mgのDTBMPを2−ブロモ−3,3,3−トリフルオロプロペンで10mlに希釈した
C.)441mgのエタノックス(Ethanox)4716を2−ブロモ−3,3,3−トリフルオロプロペンで10mlに希釈した
D.)DBSを2−ブロモ−3,3,3−トリフルオロプロペンで10mlに希釈した
【0072】
どのサンプルも黄銅、炭素鋼の両方の切取り片を含有し、組成物中に浸漬している間、切取り片は接触していた。分注量(3mL)の組成物を5mLのHPLCグレード水で希釈し、上側の水相のpHを測定したときの初期pHは、8.70であった。結果を表6に示す。
【0073】
【表6-1】
【0074】
【表6-2】
【0075】
【表6-3】
【0076】
ある特定の好適な実施形態および実施例の文脈で請求項が記載されているが、当業者は、本発明の請求項が、具体的に開示されている実施形態を超えて、他の代替の実施形態および/または用途ならびにその自明の修正物および均等物にまで及ぶことを理解するであろう。このように、開示される請求項の範囲は、上記で開示した特定の実施形態に制限されるべきでないことが意図されている。