特許第6097303号(P6097303)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6097303大動脈の枝分かれした血管の修復のためのデバイスおよび方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6097303
(24)【登録日】2017年2月24日
(45)【発行日】2017年3月15日
(54)【発明の名称】大動脈の枝分かれした血管の修復のためのデバイスおよび方法
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/07 20130101AFI20170306BHJP
   A61F 2/966 20130101ALI20170306BHJP
【FI】
   A61F2/07
   A61F2/966
【請求項の数】49
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2014-542508(P2014-542508)
(86)(22)【出願日】2012年11月16日
(65)【公表番号】特表2014-533559(P2014-533559A)
(43)【公表日】2014年12月15日
(86)【国際出願番号】US2012065622
(87)【国際公開番号】WO2013074990
(87)【国際公開日】20130523
【審査請求日】2015年11月11日
(31)【優先権主張番号】61/560,517
(32)【優先日】2011年11月16日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506074417
【氏名又は名称】ボルトン メディカル インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100095832
【弁理士】
【氏名又は名称】細田 芳徳
(72)【発明者】
【氏名】アーブフュール,サミュエル
(72)【発明者】
【氏名】クリスチャン,フレッチャー
(72)【発明者】
【氏名】マングーノ,ジョセフ,エイ.,ジュニア
(72)【発明者】
【氏名】カニング,ジョン,シー.
【審査官】 石田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】 特表2005−521471(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0109066(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0281399(US,A1)
【文献】 特表2010−535580(JP,A)
【文献】 米国特許第05474563(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0087318(US,A1)
【文献】 特表2002−505149(JP,A)
【文献】 特表2012−520153(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/07
A61F 2/966
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a) トンネル管腔を画定しかつ管状大動脈構成要素の壁(18)により連結される近位端(14)および遠位端(16)を含む管状大動脈構成要素(12)、ここで、該壁は、近位端と遠位端の間にある壁孔(20)を画定し、該壁孔は、近位端(22)および遠位端(26)を有し、該壁孔の近位端は、管状大動脈構成要素の主長手軸に対して直交して見た場合に、管状大動脈構成要素の主長手軸(24)に対して垂直に伸長する;
b) 管状大動脈構成要素の壁に連結され、かつ壁孔から管状大動脈構成要素のトンネル管腔内を管状大動脈構成要素の近位端に向かって伸長するトンネルグラフト(28)、ここで、該トンネルグラフトは、近位端(30)および遠位端(32)を有し、該トンネルグラフト(28)の遠位端は、管状大動脈構成要素の壁孔にあり、該トンネルグラフト(28)は、
i) 壁孔(20)にある開口部(84);および
ii) 壁孔(20)の近位端(22)から近位に伸長するトンネルグラフト(28)の2つの管状部(100、102)、ここで、該管状部(100、102)の各々は、近位端(106)、壁孔(20)の近位端(22)にある遠位端(104)、および管腔を画定し、2つの管状部(100、102)の遠位端における2つの管状部(100、102)の管腔の合わせた直径は、壁孔(20)の近位端(22)の長さよりも小さい、
をさらに含む
c) 管状大動脈構成要素(12)の近位端(14)を支持する近位ステント(34);ならびに
d) 管状大動脈構成要素(12)の遠位端(16)を支持する遠位ステント(36)
を含む、大動脈グラフトアセンブリ(10)
【請求項2】
管状大動脈構成要素の近位端にクラスプステント(56)をさらに含む、大動脈グラフトアセンブリであって、該クラスプステントが、管状大動脈構成要素の近位端の近位にある少なくとも2つの露出した近位頂部(58)を含む、請求項1記載の大動脈グラフトアセンブリ。
【請求項3】
クラスプステントが、管状大動脈構成要素の内壁に取り付けられる、請求項2記載の大動脈グラフトアセンブリ。
【請求項4】
クラスプステントと、管状大動脈構成要素の近位端との間にクラウンステント(60)をさらに含む、請求項2記載の大動脈グラフトアセンブリ。
【請求項5】
管状大動脈構成要素の近位端で、管状大動脈構成要素の内部に少なくとも2つの支持ワイヤ縫合糸(62)をさらに含む、請求項1記載の大動脈グラフトアセンブリ。
【請求項6】
支持ワイヤ縫合糸の少なくとも1つが、管状大動脈構成要素中の下部にある、請求項5記載の大動脈グラフトアセンブリ。
【請求項7】
支持ワイヤ縫合糸が、クラスプステントの近位頂部の遠位にある、請求項6記載の大動脈グラフトアセンブリ。
【請求項8】
支持ワイヤ縫合糸が、近位クラスプステントの少なくとも1つの遠位頂部により隔てられる、請求項7記載の大動脈グラフトアセンブリ。
【請求項9】
管状大動脈構成要素の主長手軸を横切る壁孔の近位端の長さが、管状大動脈構成要素の円周の1/2以下である、請求項1記載の大動脈グラフトアセンブリ。
【請求項10】
壁孔の近位端の長さが、約6mm、約8mm、約10mm、約12mmまたは約14mmである、請求項9記載の大動脈グラフトアセンブリ。
【請求項11】
壁孔の長手方向の長さが、約90mm以下である、請求項9記載の大動脈グラフトアセンブリ。
【請求項12】
壁孔の長手方向の長さが、約14mm以上である、請求項9記載の大動脈グラフトアセンブリ。
【請求項13】
遠位ステントが、管状大動脈構成要素の内壁に取り付けられる、請求項1記載の大動脈グラフトアセンブリ。
【請求項14】
壁孔の遠位端に隣接する少なくとも1つの近位頂部を含む隣接遠位ステントをさらに含む、請求項1記載の大動脈グラフトアセンブリ。
【請求項15】
壁孔の遠位にある保持構成要素(78)をさらに含む、請求項1記載の大動脈グラフトアセンブリ。
【請求項16】
保持構成要素(78)が、壁孔の遠位端に隣接する遠位ステントの近位頂部にある、請求項15記載の大動脈グラフトアセンブリ。
【請求項17】
保持構成要素(78)が、縫合糸ループ(62)、または磁石もしくはステント頂部の少なくとも1つであるか、あるいは保持構成要素(78)が放射線不透過性である、請求項15記載の大動脈グラフトアセンブリ。
【請求項18】
壁孔を囲むステントをさらに含む、請求項1記載の大動脈グラフトアセンブリ。
【請求項19】
管状大動脈構成要素の近位端の直径が、管状大動脈構成要素の遠位端の直径よりも大きい、請求項1記載の大動脈グラフトアセンブリ。
【請求項20】
壁孔における管状大動脈構成要素とトンネルグラフトの間の境界面が、管状大動脈構成要素の主長手軸に対して直交して見た場合に、多角形である、請求項1記載の大動脈グラフトアセンブリ。
【請求項21】
該多角形が4つの辺を有する、請求項20記載の大動脈グラフトアセンブリ。
【請求項22】
該多角形が、正方形、長方形、平行四辺形、またはひし形である、請求項20記載の大動脈グラフトアセンブリ。
【請求項23】
下部が、壁孔の反対にある管状大動脈構成要素の1つの側上にあり、管状大動脈構成要素の主長手軸に対して平行であり、上部が、管状大動脈構成要素の反対の側上にあり、該下部が縦溝をつけられ(fluted)、それにより管状大動脈構成要素の直径が、管状大動脈構成要素の遠位端から近位端に向かって増加する、請求項1記載の大動脈グラフトアセンブリ。
【請求項24】
該管状部が管状大動脈構成要素に固定される、請求項記載の大動脈グラフトアセンブリ。
【請求項25】
該管状部が、管状部の近位端および遠位端のそれぞれにステントをさらに含む、請求項24記載の大動脈グラフトアセンブリ。
【請求項26】
管状部の近位端および遠位端にあるステントが、支柱により連結された近位頂部および遠位頂部を含む、請求項25記載の大動脈グラフトアセンブリ。
【請求項27】
ステントの少なくとも1つが、少なくとも1つのバーブ(96)を含む、請求項26記載の大動脈グラフトアセンブリ。
【請求項28】
管状部の遠位端が、管状部の近位端の直径よりも大きな直径を有する、請求項記載の大動脈グラフトアセンブリ。
【請求項29】
管状部の遠位端が概して円錐形である、請求項28記載の大動脈グラフトアセンブリ。
【請求項30】
トンネルグラフトの近位端が、約5mm〜約10mm、約5mm〜約15mmまたは約8mm〜約15mmの範囲の直径を有する、請求項1記載の大動脈グラフトアセンブリ。
【請求項31】
壁孔の近位端と管状大動脈構成要素の近位端の間の間隔が、約20mm、約40mm、約60mm、約80mmまたは約90mmの範囲である、請求項1記載の大動脈グラフトアセンブリ。
【請求項32】
トンネルグラフトが、約20mm〜約60mmまたは約20mm〜約100mmの少なくとも1つの範囲の長さを有する、請求項1記載の大動脈グラフトアセンブリ。
【請求項33】
トンネルグラフトの近位端が、管状大動脈構成要素の近位端の少なくとも約5mm、約10mm、約15mmまたは約20mm以内にある、請求項32記載の大動脈グラフトアセンブリ。
【請求項34】
管状大動脈構成要素が取り付けられる送達構成要素(202)をさらに含む、大動脈グラフトアセンブリであって、該送達構成要素が、
a) 管状大動脈構成要素が周囲に延在する制御カテーテル(204);および
b) 該制御カテーテルの遠位端に固定されたノーズコーン(206)
を含む、請求項1記載の大動脈グラフトアセンブリ。
【請求項35】
送達構成要素が制御カテーテルの周囲に伸長する内側シース(210)をさらに含み、制御カテーテルが内側シースの遠位端に遠位開口を画定し、ノーズコーンが内側シース内に引っ込められ得る、請求項34記載の大動脈グラフトアセンブリ。
【請求項36】
内側シースの周囲および管状大動脈構成要素の周囲に先導シース(216)をさらに含む、大動脈グラフトアセンブリであって、先導シースが内側シースに対して引っ込められ得、それにより内側シースの遠位端が解放され、その後ノーズコーンが内側シース内に引っ込められ得る、請求項35記載の大動脈グラフトアセンブリ。
【請求項37】
近位端(224)で固定され、制御カテーテルの主軸に対して実質的に平行であり、かつ遠位端(228)で固定されていない少なくとも1つの支持ワイヤ(230)をさらに含む、大動脈グラフトアセンブリであって、支持ワイヤの少なくとも1つの自由端がアーチ形であり、管状大動脈構成要素の近位端の縫合糸が、管状大動脈構成要素の近位端を、支持ワイヤの少なくとも1つに解放可能に固定する、請求項36記載の大動脈グラフトアセンブリ。
【請求項38】
制御カテーテルに沿って摺動可能な外部制御チューブ(232)をさらに含む、大動脈グラフトアセンブリであって、少なくとも1つの支持ワイヤが、近位端で外部制御チューブに固定される、請求項37記載の大動脈グラフトアセンブリ。
【請求項39】
支持ワイヤが、近位端で、ノーズコーンの近位にある外部制御チューブに固定され、自由端が、近位端の遠位にあり、かつノーズコーンの近位にある、請求項38記載の大動脈グラフトアセンブリ。
【請求項40】
外部制御チューブの遠位端にあり、かつ外部制御チューブの動きに従って、制御カテーテルに沿って摺動可能である、遠位頂部クラスプ(238)をさらに含む、請求項39記載の大動脈グラフトアセンブリ。
【請求項41】
遠位頂部クラスプが、管状大動脈構成要素のクラスプステントの露出した頂部を固定することにより、管状大動脈構成要素の近位端を固定する、請求項40記載の大動脈グラフトアセンブリ。
【請求項42】
送達構成要素が、外部制御チューブの近位端に近位頂部クラスプ(240)をさらに含み、外部制御チューブが制御カテーテルに固定された遠位部、および近位部を含み、該近位部が、管状大動脈構成要素のクラスプステントの露出した頂部を通って遠位に伸長する近位伸長歯(proximally extending teeth)(252)を含む、請求項41記載の大動脈グラフトアセンブリ。
【請求項43】
管状大動脈構成要素のクラスプステントの露出した頂部を固定する閉じた位置にある場合に、遠位頂部クラスプの遠位部が、遠位頂部クラスプの歯の遠位端と重なるクラスプシースを含む、請求項42記載の大動脈グラフトアセンブリ。
【請求項44】
近位頂部クラスプの近位伸長歯が、保持構成要素で、管状大動脈構成要素を固定する、請求項43記載の大動脈グラフトアセンブリ。
【請求項45】
近位端(256)および遠位端(258)を含む少なくとも1つの管状枝分かれ構成要素(254)をさらに含む、大動脈グラフトアセンブリであって、管状枝分かれ構成要素の近位端が、トンネルグラフトの近位端と噛み合うように構成される、請求項1記載の大動脈グラフトアセンブリ。
【請求項46】
壁孔が、少なくとも1つの管状枝分かれ構成要素の合わせた直径の最も広い直径の少なくとも2倍の直径を有する、請求項45記載の大動脈グラフトアセンブリ。
【請求項47】
a) トンネル管腔を画定しかつ管状大動脈構成要素の壁(18)により連結された近位端(14)および遠位端(16)を含む管状大動脈構成要素(12)、ここで、該壁は、近位端と遠位端の間にある壁孔(20)を画定し、該壁孔は、近位端(22)および遠位端(26)を有し、該壁孔の近位端は、管状大動脈構成要素の主長手軸に対して直交して見た場合、管状大動脈構成要素の主長手軸(24)に対して垂直に伸長する;
b) 管状大動脈構成要素の壁に連結され、かつ壁孔から管状大動脈構成要素のトンネル管腔内を管状大動脈構成要素の近位端に向かって伸長するトンネルグラフト(28)、ここで、該トンネルグラフトは、近位端(30)および遠位端(32)を有し、該トンネルグラフト(28)の遠位端は、管状大動脈構成要素の壁孔にあり、該トンネルグラフト(28)は、
i) 壁孔(20)にある開口部(84);および
ii) 壁孔(20)の近位端(22)から近位に伸長するトンネルグラフト(28)の2つの管状部(100、102)、ここで、該管状部(100、102)の各々は、近位端(106)、壁孔(20)の近位端(22)にある遠位端(104)、および管腔を画定し、2つの管状部(100、102)の遠位端における2つの管状部(100、102)の管腔の合わせた直径は、壁孔(20)の近位端(22)の長さよりも小さい、
をさらに含む
c) 管状大動脈構成要素の近位端を支持する近位ステント;
d) 管状大動脈構成要素の遠位端を支持する遠位ステント;
e) 管状大動脈構成要素の近位端にあるクラスプステント(56)、ここで、該クラスプステントは、管状大動脈構成要素の近位端の近位にある少なくとも2つの露出した近位頂部を含み、かつ管状大動脈構成要素の内壁に取り付けられる;ならびに
f) クラスプステントと管状大動脈構成要素の近位端の間にあるクラウンステント(60)、ここで、該クラウンステントは、管状大動脈構成要素の内表面に取り付けられる、
を含む、大動脈グラフトアセンブリ。
【請求項48】
a) トンネル管腔を画定しかつ管状大動脈構成要素の壁(18)により連結された近位端(14)および遠位端(16)を含む管状大動脈構成要素(12)、ここで、該壁は、近位端と遠位端の間にある壁孔(20)を画定し、該壁孔は、近位端(22)および遠位端(26)を有し、該壁孔の近位端は、管状大動脈構成要素の主長手軸に対して直交して見た場合、管状大動脈構成要素の主長手軸(24)に対して垂直に伸長する;
b) 管状大動脈構成要素の壁に連結され、かつ壁孔から管状大動脈構成要素のトンネル管腔内を管状大動脈構成要素の近位端に向かって伸長するトンネルグラフト(28)、ここで、該トンネルグラフトは、近位端(30)および遠位端(32)を有し、該トンネルグラフト(28)の遠位端は、管状大動脈構成要素の壁孔にあり、該トンネルグラフト(28)は、
i) 壁孔(20)にある開口部(84);および
ii) 壁孔(20)の近位端(22)から近位に伸長するトンネルグラフト(28)の2つの管状部(100、102)、ここで、該管状部(100、102)の各々は、近位端(106)、壁孔(20)の近位端(22)にある遠位端(104)、および管腔を画定し、2つの管状部(100、102)の遠位端における2つの管状部(100、102)の管腔の合わせた直径は、壁孔(20)の近位端(22)の長さよりも小さい、
をさらに含む
c) 壁孔の近位端に隣接する近位ステント;
d) 管状大動脈構成要素の遠位端を支持する遠位ステント;
e) 壁孔の遠位端に隣接する、少なくとも1つの近位頂部を含む隣接遠位ステント;
f) 管状大動脈構成要素の近位端にあるクラスプステント(56)、ここで、該クラスプステントは、管状大動脈構成要素の近位端の近位にある少なくとも2つの露出した近位頂部を含み、かつ管状大動脈構成要素の内壁に取り付けられる;ならびに
g) クラスプステントと管状大動脈構成要素の近位端の間にあるクラウンステント(60)、ここで、該クラウンステントは、管状大動脈構成要素の内表面に取り付けられる、
を含む、大動脈グラフトアセンブリ。
【請求項49】
トンネルグラフト(28)は、管状大動脈構成要素(12)の内壁に固定される、請求項1〜48いずれか記載の大動脈グラフトアセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、2011年11月16日に出願された米国仮特許出願第61/560,517号の利益を主張する。上記出願の全教示は、参照により本明細書中に援用される。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
大動脈瘤は生命を脅かす状態である。大動脈瘤を治療するために使用される外科的介入としては、病変の長手方向の(lomgitudinal)範囲にわたる1つ以上の内部移植片(endograft)の経管腔(transluminal)配置による血管内(endovascular)修復が挙げられる。内部移植片は、動脈瘤嚢に橋を架けて、大動脈血流の高圧から動脈瘤嚢を締め出し(exclude)、それにより動脈瘤部位内および動脈瘤部位の周囲での大動脈壁の再構築が可能になり得ることを意図して大動脈内に配置される。大動脈から枝分かれする血管への血流を維持して、器官への欠陥の生じた(compromised)血流を最小限にするために、大動脈の特定の部位に内部移植片を正確に配置することが重要である。例えば、現在では、左頸動脈のための孔からはずれて置く(offset)様式で、大動脈弓内に大動脈デバイスが配置される場合、動脈がふさがれ得、脳に虚血を引き起こし得る。大動脈弓で、または大動脈弓の付近で動脈瘤を治療するほとんどの外科的方法は、一般的に胸骨解離または開胸を含み、心肺バイパスを必要とすることがあり、しばしば高い合併症発現率を生じる。そのため血管内方法により大動脈瘤を治療する新規で有用なデバイスおよび方法を開発する必要がある。
【発明の概要】
【0003】
発明の概要
本発明は、大動脈血管損傷、特に動脈瘤、穿通性粥状硬化性潰瘍(penetrating atherosclerotic ulcer)および解離(dissection)などの大動脈疾患に関連する血管損傷を治療するための、血管修復システム、送達システムならびに該送達システムおよびその構成要素を使用する方法に関する。
【0004】
ある態様において、本発明は、管状大動脈構成要素の壁により連結された近位端および遠位端を有する管状大動脈構成要素を含む大動脈グラフトアセンブリであり、該壁は、近位端と遠位端の間にある壁孔を画定する。該孔は、管状大動脈構成要素の主長手軸に対して直交して見た場合、管状大動脈構成要素の主長手軸に対して垂直に伸長する近位端を有する。管状大動脈構成要素の壁にはトンネルグラフトが連結され、該トンネルグラフトは、壁孔から管状大動脈構成要素の近位端に向かって伸長する。トンネルグラフトは近位端および遠位端を有し、該遠位端は、管状大動脈構成要素の壁孔にある。該孔の近位端には近位ステントが隣接し、該孔の遠位端には遠位ステントが隣接する。
【0005】
さらに別の態様において、本発明は、管状大動脈構成要素の壁により連結された近位端および遠位端を含む管状大動脈構成要素、ここで、該壁は、近位端と遠位端の間にある壁孔を画定し、該壁孔は、近位端および遠位端を有し、該壁孔の近位端は、管状大動脈構成要素の主長手軸に対して直交して見た場合、管状大動脈構成要素の主長手軸に対して垂直に伸長する;管状大動脈構成要素の壁に連結され、かつ壁孔から管状大動脈構成要素の近位端に向かって伸長するトンネルグラフト、ここで、該トンネルグラフトは近位端および遠位端を有し、該遠位端は、管状大動脈構成要素の壁孔にある;管状大動脈構成要素の近位端を支持する近位ステント;管状大動脈構成要素の遠位端を支持する遠位ステント;管状大動脈構成要素の近位端にあるクラスプステント、ここで、該クラスプステントは、管状構成要素の近位端の近位にある少なくとも2つの露出した近位頂部を含み、かつ管状大動脈構成要素の内壁に取り付けられる;ならびにクラスプステントと管状大動脈構成要素の近位端との間にあるクラウンステント、ここで、該クラウンステントは、管状大動脈構成要素の内表面に取り付けられる、を含む、大動脈グラフトアセンブリである。
【0006】
さらなる態様において、本発明は、管状大動脈構成要素の壁により連結された近位端および遠位端を含む管状大動脈構成要素、ここで、該壁は、近位端と遠位端の間にある壁孔を画定し、該壁孔は近位端および遠位端を有し、該壁孔の近位端は、管状大動脈構成要素の主長手軸に対して直交して見た場合、管状大動脈構成要素の主長手軸に対して垂直に伸長する;管状大動脈構成要素の壁に連結され、かつ該壁孔から管状大動脈構成要素の近位端に向かって伸長するトンネルグラフト、ここで、該トンネルグラフトは近位端および遠位端を有し、該遠位端は、管状大動脈構成要素の壁孔にある;管状大動脈構成要素の近位端に隣接する近位ステント;管状大動脈構成要素の遠位端を支持する遠位ステント;壁孔の遠位端に隣接する少なくとも1つの近位頂部を含む隣接(abutting)遠位ステント;管状大動脈構成要素の近位端にあるクラスプステント、ここで、該クラスプステントは、管状構成要素の近位端の近位にある少なくとも2つの露出した近位頂部を含み、かつ管状大動脈構成要素の内壁に取り付けられる;ならびにクラスプステントと管状大動脈構成要素の近位端との間にあるクラウンステント、ここで、該クラウンステントは管状大動脈構成要素の内表面に取り付けられる、を含む、大動脈グラフトアセンブリである。
【0007】
別の態様において、本発明は、患者の大動脈を通して、壁孔を画定する管状大動脈構成要素を患者の動脈瘤部位に送達する工程を含む、プロテーゼ(prothesis)を植え込むための方法であって、該管状大動脈構成要素は、送達デバイスの外部制御チューブの遠位端で、遠位クラスプにより半径方向および解放可能に拘束され、かつ保持構成要素により、近位クラスプの近位にある外部制御チューブにおいて、近位クラスプに解放可能に取り付けられ、該管状大動脈構成要素はさらに、外部制御チューブ内で伸長する送達デバイスの制御カテーテルにより支持される。患者の動脈瘤部位で少なくとも1つの血管口の上に該壁孔が整列される。外部チューブが引っ込められると、それにより遠位クラスプおよび近位クラスプから管状大動脈構成要素が解放されて、動脈瘤部位で管状大動脈構成要素が展開される。
【0008】
さらなる態様において、本発明は、大動脈を通して、患者の動脈瘤部位に、壁孔を画定する管状大動脈構成要素を送達する工程、ここで、該管状大動脈構成要素は、送達デバイスの外部制御チューブの遠位端で、遠位クラスプにより半径方向および解放可能に拘束され、かつ保持構成要素により、近位クラスプの近位にある外部制御チューブにおいて近位クラスプに解放可能に取り付けられ、該管状大動脈構成要素はさらに、外部制御チューブ内で伸長する送達デバイスの制御カテーテルにより支持される;
患者の動脈瘤部位で、少なくとも1つの血管口の上に壁孔を整列する工程;
外部制御チューブを引っ込め、それにより遠位クラスプおよび近位クラスプから管状大動脈構成要素を解放して、患者の動脈瘤部位で管状大動脈構成要素を展開する工程
を含む、プロテーゼを植え込むための方法であって、
ここで該制御チューブから少なくとも1つの支持ワイヤが伸長し、前記支持ワイヤは、管状大動脈構成要素の近位端の内側の縫合糸(suture)ループを通って伸長し、それにより展開時の管状構成要素の近位端の潰れ(collapse)が防止される。該方法はさらに、管状大動脈構成要素の周囲から内側シースを部分的に引っ込め、それにより支持ワイヤが、管状大動脈構成要素の近位端が大動脈内に固定されるまで、管状大動脈構成要素の近位端の長手方向の動きを少なくとも部分的に制限して、大動脈の下部での管状大動脈構成要素の近位端の潰れを防止する工程を含み得、ここで該内側シースは、ノーズコーンの近位端により画定された空洞内の遠位端に解放可能に固定され、該方法の工程は、
内側シースを管状大動脈構成要素の周囲から部分的に引っ込めて、ノーズコーンから内側シースの遠位端を解放させ、それにより管状大動脈構成要素の部分的な展開を引き起こすこと;
制御カテーテルを部分的に引っ込め、それにより遠位頂部クラスプからクラスプステントを、および近位クラスプから保持構成要素を解放させること;
制御カテーテルをさらに引っ込めて、縫合糸ループを支持ワイヤ上に維持しながら、ノーズコーンを、管状大動脈構成要素の内側へと少なくとも部分的に引っ込めること;
管状大動脈構成要素を、動脈瘤にまたがる(span)患者の大動脈内の最終的な位置に進めること;
管状大動脈構成要素から内側シースを完全に引っ込めること;ならびに
ノーズコーンおよび支持ワイヤを完全に引っ込め、支持ワイヤから縫合糸ループを解放させ、それにより患者の大動脈内に管状大動脈構成要素を完全に展開すること
を含む。
【0009】
ある態様において、外科医が標的血管の口に孔を整列することができない場合に、管状グラフト構成要素の外側および周囲に血液が流れることを可能にするための大動脈グラフトシステムの管状大動脈構成要素の本体の狭くなった形状または犬の骨形状に頼る他のシステムとは異なり、孔を画定するステントは、標的血管の口に血液が流れることを可能にする。
【0010】
本発明の大動脈グラフトアセンブリは、大動脈内の正確な半径方向または長手方向の整列を必要とせず、おおよその整列を可能にし、これは大動脈弓の操作およびその結果患者において起こる脳卒中を低減することにおいて有益である。特許請求されるシステムは、標的の口が意図せずに詰まることを防ぐための「犬の骨」形態の現在の大動脈構成要素とは異なり、第1のトンネルグラフトまたは第2のトンネルグラフトの展開により、外科医が血管内での処置を完了する前に、完全に展開され得る。該グラフトアセンブリと共に使用される送達デバイスは、例えば湾曲したガイドワイヤカテーテル、近位クラスプおよび遠位クラスプの使用により、大動脈における該アセンブリの適切な整列を補助する。
【0011】
本発明の大動脈アセンブリシステムおよび方法は、大動脈弓もしくは腹部大動脈からの分枝(例えば、腹腔動脈、上腸間膜動脈および腎動脈)、その近位またはその周囲での大動脈瘤などの大動脈瘤を治療するために使用され得る。本発明の大動脈アセンブリシステムは、トンネルグラフト内に先細りしていく比較的大きな孔を有し、これは、該システムの配置において、外科医に比較的大きな誤りの余地を提供し、カニューレ挿入(canulation)を容易にし、少なくとも1つの血管について1つの孔の整列を可能にする。2つの開口を有して近位に伸長する1つの孔を有するトンネルグラフトを含む本発明の大動脈アセンブリシステムは、大動脈中、特に末梢の血管および主要な血管へと枝分かれする大動脈の領域中での容易な整列を可能にする。孔のサイズは、処置の間に標的の血管に血液が流れることを可能にするものである。トンネルグラフトおよび該トンネルグラフトを支持する1つまたは複数のステントの比較的大きな直径に一部起因して、本発明の大動脈グラフトアセンブリは一般的に、急性的または慢性的に血流を制限しない。
【0012】
枝分かれしたグラフトアセンブリのトンネルグラフト内部のバーブ(barb)は、管状構成要素のトンネルグラフトへの連結を確実にするという利点を有する。本発明のグラフトアセンブリシステムの短縮能力(telescoping ability)、例えばトンネルグラフトの長さおよび異なる形態は、管状構成要素が自然位に位置することを可能にし、標的血管内部の「着地ゾーン(landing zone)」が最大限に使用されることを確実にする。比較的長いトンネル長さは、管状構成要素がトンネルグラフト内に十分に重なることを確実にして、十分な密封を確実にし得る。
【0013】
本発明の送達デバイスはまた、ステントグラフトの近位端が、「着地ゾーン」の中心線軸に対して垂直に整列されることを可能にするという利点を有する。着地ゾーンが上行大動脈のゾーン0である場合(図15、16、17)、これは重要な関心ごとである。この領域内に着地する場合、冠状動脈、典型的には左冠状動脈が偶然に覆われる(coverage)ことを避けるために、十分に注意をしなければならない。
【0014】
したがって、本発明の大動脈グラフトアセンブリ、送達システムおよび方法を使用して、大動脈瘤、穿通性粥状硬化性潰瘍、解離などの様々な大動脈病状を治療することができ、そのため、生命を脅かす血管状態の結果として起こる合併症および死を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1A図1Aは、本発明の大動脈アセンブリシステムの態様を表す。
図1B図1Bは、本発明の大動脈アセンブリシステムの態様を表す。
図1C図1Cは、本発明の大動脈アセンブリシステムの態様を表す。
図2図2Aは、図1Aに示される本発明の大動脈アセンブリシステムの、ライン2Aに沿って採られた断面図を表す。図2Bは、本発明の大動脈アセンブリシステムの図2Aの長手方向(longitudinal)の図を表す。
図3図3Aは、図1Aに示される本発明の大動脈アセンブリシステムの、ライン2Aに沿って採られた断面図を表す。図3Bは、本発明の大動脈アセンブリシステムの図3Aの長手方向の図を表す。
図4A図4Aは、図2A内の視野4Aから採られた本発明の大動脈アセンブリシステムの態様を表す。
図4B図4Bは、図2B内の視野4Bから採られた本発明の大動脈アセンブリシステムの態様を表す。
図5図5は、本発明の一態様の近位端内の透視図である。
図6図6は、本発明の大動脈アセンブリシステムの別の態様を表す。
図7図7Aは、本発明の大動脈アセンブリシステムのさらなる態様を表す。図7Bは、図7Aのライン7Bに沿って採られた本発明の大動脈アセンブリシステムのさらなる態様を表す。
図8図8Aは、本発明の大動脈アセンブリシステムのさらなる態様を表す。図8Bは、図8Aのライン8Bに沿って採られた本発明の大動脈アセンブリシステムのさらなる態様を表す。
図9図9Aは、本発明の大動脈アセンブリシステムのさらなる態様を表す。図9Bは、図10Aのライン9Bに沿って採られた本発明の大動脈アセンブリシステムのさらなる態様を表す。
図10図10Aは、本発明の大動脈アセンブリシステムのさらなる態様を表す。図10Bは、図10Bのライン10Bに沿って採られた本発明の大動脈アセンブリシステムのさらなる態様を表す。
図11図11は、本発明の送達システムの一態様に取り付けられた本発明の大動脈アセンブリシステムの一態様の透視図である。
図12図12は、被験体の上行大動脈、大動脈弓、および下行大動脈の一部における本発明の大動脈グラフトアセンブリの態様の配置を表す。
図13図13は、大動脈のゾーン(0、1、2、3および4)および大動脈から枝分かれした主な血管を表す(先行技術)。
図14図14は、大動脈のゾーン(0、1、2、3および4)、大動脈瘤、右頸動脈から左頸動脈へのバイパス、左頸動脈から左鎖骨下動脈へのバイパスならびに左頸動脈および左鎖骨下動脈の結紮を表す(先行技術)。
図15図15は、大動脈のゾーン(0、1、2、3および4)、大動脈瘤、左頸動脈から左鎖骨下動脈へのバイパスおよび左鎖骨下動脈の結紮を表す(先行技術)。
図16-1】図16A〜16Cは、本発明の送達システムの一態様の本発明の大動脈アセンブリシステムの一態様の図である。
図16-2】図16D〜16Fは、本発明の送達システムの一態様の本発明の大動脈アセンブリシステムの一態様の図である。
図17A図17Aは、本発明の一態様の側面図である。
図17B図17Bは、本発明の一態様の断面図である。
図17C図17Cは、本発明の一態様の透視図である。
図18図18は、本発明の一態様のノーズコーンおよびノーズコーンの近位の空洞に詰め込められた内側シースの透視図である。
図19図19Aおよび19Bは、本発明の送達システムの態様の内側シースの代替的な態様を表す。
図20図20は、本発明の送達システムの態様の内側シースの代替的な態様を表す。
図21図21Aおよび21Bは、本発明の送達システムの態様の内側シースのさらなる代替的な態様を表す。
図22図22は、本発明に使用される送達システムの一部の態様を表す。
図23A図23Aは、本発明の大動脈アセンブリシステムおよび枝分かれグラフトのさらなる図を表す。
図23B図23Bは、本発明の大動脈アセンブリシステムおよび枝分かれグラフトのさらなる図を表す。
図23C図23Cは、本発明の大動脈アセンブリシステムおよび枝分かれグラフトのさらなる図を表す。
図23D図23Dは、本発明の大動脈アセンブリシステムおよび枝分かれグラフトのさらなる図を表す。
図24-1】図24A〜24Bは、本発明の方法の一態様の方法工程を表す。
図24-2】図24C〜24Dは、本発明の方法の一態様の方法工程を表す。
図24-3】図24Eは、本発明の方法の一態様の方法工程を表す。
図25図25Aおよび25Bは、本発明の一態様の内側シース構成要素の代替的な態様を表す。
図26A図26Aは、本発明の代替的な方法の一態様の方法工程を表す。
図26B図26Bは、本発明の代替的な方法の一態様の方法工程を表す。
図26C図26Cは、本発明の代替的な方法の一態様の方法工程を表す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
発明の詳細な説明
本発明の特徴および他の詳細は、本発明の工程または本発明の一部の組み合わせのいずれかとして、特許請求の範囲においてより具体的に記載され、指摘される。本発明の特定の態様は、本発明の限定としてではなく例示のために示されることが理解される。本発明の原理特徴は、本発明の範囲から逸脱することなく、種々の態様において使用され得る。
【0017】
「近位」は、送達システムまたは頂部クラスプおよびノーズコーンなどの送達システムの構成要素について参照がなされる場合、デバイスを使用する臨床医に最も近いことを意味する。同様に、「遠位」は、送達システムまたは頂部クラスプおよびノーズコーンなどの送達システムの構成要素について参照がなされる場合、デバイスを使用する臨床医から離れていることを意味する。
【0018】
大動脈グラフトアセンブリ、管状大動脈構成要素、トンネルグラフト、枝分かれグラフトおよびステントなどの送達されるプロテーゼに対して参照がなされる場合、用語「近位」は、プロテーゼの一部またはプロテーゼの構成要素が患者の心臓の方にあることを意味し、「遠位」は、プロテーゼの一部またはプロテーゼの構成要素が患者の心臓から離れていることを意味する。明確化のために、用語「近位にある(proximate)」は、「近位」または「遠位」と全く異なって、近いことを意味する。
【0019】
本発明の大動脈グラフトアセンブリは、例えば経大腿(transfemoral)アクセスにより植え込まれ得る。管状枝分かれ構成要素は、例えば上位大動脈(supraaortic)血管アクセス (例えば上腕動脈)により、または経大腿もしくは経先端(transapical)アクセスにより植え込まれ得る。
【0020】
本発明は一般的に、大動脈グラフトアセンブリおよび該大動脈グラフトアセンブリを展開するための方法に関する。本発明はまた、少なくとも1つの管状枝分かれグラフトを、患者および大動脈グラフトアセンブリに植え込む方法に関する。図1A図1Cに表される本発明の大動脈グラフトアセンブリの一態様において、大動脈グラフトアセンブリ10は、壁18により連結された近位端14および遠位端16を有する管状大動脈構成要素12を含む。壁18は、近位端14と遠位端16の間にある壁孔20を画定する。壁孔20は、主長手軸24に対して直交して見た場合、管状大動脈構成要素12の主長手軸24に対して垂直に伸長する近位端22を有する。壁孔20はまた、壁孔20の遠位端26を画定する。
【0021】
例えば図2A、2B、3A、3B、4Aおよび4Bに示されるトンネルグラフト28は、管状大動脈構成要素12の壁18に連結され、かつ壁孔20から管状大動脈構成要素12の近位端14に向かって伸長する。トンネルグラフト28は、近位端30および遠位端32を含む。トンネルグラフト28の遠位端32は、管状大動脈構成要素12の壁孔20にある。
【0022】
図1A〜1Cに戻って参照すると、近位ステント34は、管状大動脈構成要素12の近位端14を支持する。遠位ステント36は、管状大動脈構成要素12の遠位端16を支持する。同様に、遠位ステント36は、管状大動脈構成要素12の内壁に取り付けられ得る。
【0023】
任意に、管状大動脈構成要素12の主長手軸24と平行なラインに沿って、放射線不透過性マーカー38が配置される。一態様において、放射線不透過性マーカー38は、壁孔20と隣接する壁孔遠位ステント50の近位頂部にある。別の放射線不透過性マーカーは、近位ステント34の遠位頂部48にある。さらに、放射線不透過性マーカー38は、管状大動脈構成要素12の近位端14および遠位端16の少なくとも1つにある。また任意に、管状大動脈構成要素12において、壁孔20の円周の周囲に、放射線不透過性マーカー40が広がる。放射線不透過性マーカー38、40は、例えば白金、イリジウム、金などの任意の適切な材料で作製され得る。放射線不透過性マーカーの例は、米国特許第8,062,345号および米国特許出願第US 2010/0030255号に記載され、その全教示は、参照により本明細書に援用される。
【0024】
一態様において、図1A、1Bおよび1Cに示される近位ステント34は、近位頂部46および遠位頂部48を含む。一態様において、遠位頂部48の少なくとも一部は、壁孔20の近位端22に隣接する。壁孔遠位ステント50は、近位頂部52および遠位頂部54を含み、壁孔遠位ステント50の近位頂部52の一部は、壁孔20の遠位端26に隣接する。管状大動脈構成要素12の近位端14にあるクラスプステント56は、管状大動脈構成要素12の近位(proximate)端14の近位にある、少なくとも2つの露出した近位頂部58を含む。一態様において、クラスプステント56は、管状大動脈構成要素12の内壁に取り付けられる。
【0025】
管状大動脈構成要素12のクラスプステント56と近位端14の間にクラウンステント60が配置される。図5において見られ得るように、少なくとも2つの支持ワイヤ縫合糸62が、管状大動脈構成要素12の近位端14で、クラスプステント56の近位頂部58の遠位に、管状大動脈構成要素12内に配置される。支持ワイヤ縫合糸62は、クラスプステント56の少なくとも1つの遠位頂部61により隔てられる。一態様において、クラウンステント60の近位頂部59は、図1Aに示されるように鋭くない(blunted)。クラウンステント60およびクラスプステント56は、図1Aに示されるように入れ子状に重なり(nest)得る。クラウンステント60およびクラスプステント56は、管状大動脈構成要素12の内壁76に取り付けられる。
【0026】
近位ステント34と遠位ステント36の間の管状大動脈構成要素12に、少なくとも1つのステント64が配置される。ステント64の少なくとも一部は、支柱(strut)70で連結された近位頂部66および遠位頂部68を含む。図1Bおよび1Cに示されるように、壁孔20の近位端22および遠位端26のそれぞれに隣接するステント34と50の間の管状大動脈構成要素12に、少なくとも1つの部分ステント72が配置される。
【0027】
本発明で使用されるステントは、適切な材料で構成される。一態様において、本発明に使用されるステントは、ニチノールなどの適切な形状記憶合金を含む。本発明における使用のためのステントの構築のための適切な材料のさらなる記載は、米国特許第7,763,063号および第8,062,345号に見ることができ、その教示は、その全体において参照により本明細書中に援用される。
【0028】
一態様において、壁孔20の近位端22の弧の長さは、管状大動脈構成要素12の円周の2分の1以下である。壁孔20の近位端22の適切な弧の長さの例としては、約6mm、約8mm、約10mm、約12mmまたは約14mmからなる群より選択される1つと等しい弧の長さが挙げられる。一態様において、壁孔20の長手方向の長さは、約90mm以下である。別の態様において、壁孔20の長手方向の長さは、約14mm以上である。
【0029】
図2A、2B、3Aおよび3Bを参照すると、壁孔20の近位端22と管状大動脈構成要素12の近位端14の間の距離は、約10mm〜約80mmの範囲であり得る。典型的な態様において、壁孔20の近位端22と管状大動脈構成要素12の近位端14の間の距離は、約20mm、約40mm、約60mm、約80mmまたは約90mmからなる群より選択されるものの1つである。一態様において、壁孔20の近位端22と管状大動脈構成要素12の近位端12の間の距離は、図2Aおよび2Bに示されるように約40mmである。別の態様において、壁孔20の近位端22と管状大動脈構成要素12の近位端14の間の距離は、図3Aおよび3Bに示されるように約60mmである。
【0030】
図1Aに示される一態様において、壁孔20の遠位の管状大動脈構成要素12で、かつ管状大動脈構成要素12内に、保持構成要素78が配置される(保持構成要素78の外部のみが図1Aに示される)。一態様において、保持構成要素は縫合糸ループである。別の態様において、保持構成要素78は、磁石またはステント頂部の少なくとも1つである。さらに別の態様において、保持構成要素78は、放射線不透過性である。一態様において、保持構成要素78は、壁孔20の遠位端26に隣接するステント50の近位頂部52にある。
【0031】
図6に示される別の態様において、周囲ステント80が、管状大動脈構成要素12に配置され、壁孔20を囲む。一態様において、壁孔20を囲む周囲ステント80は、少なくとも部分的に、壁孔20を画定する。一態様において、図1Bに示されるように、管状大動脈構成要素12の近位端14の直径は、管状大動脈構成要素12の遠位端16の直径よりも大きい。
【0032】
図7A、8A、9Aおよび10Aに示される一態様において、管状大動脈構成要素12と壁孔20の間の境界面は、管状大動脈構成要素12の主長手軸24に対して直交して見た場合、参照された図に示されるような4つの辺を有する多角形などの多角形である。種々の態様において、該多角形は、正方形、長方形、平行四辺形またはひし形であり得る(示さず)。
【0033】
特定の態様において、図1Bに示されるように、下部83は、壁孔20の反対にある管状大動脈構成要素12の1つの側にあり、管状大動脈構成要素12の主長手軸24に対して本質的に平行である。クラスプステント56の露出した頂部58は、潰れた(collapse)場合には、図11に見られ得るように、クラスプステント56で、管状大動脈構成要素12の近位端14の少なくとも部分的な潰れを生じる。支持ワイヤ縫合糸62の少なくとも1つは、管状大動脈構成要素12内の下部83にある。特定の態様において、支持ワイヤ縫合糸62は、クラスプステント56の頂部にある。好ましくは、支持ワイヤ縫合糸62は、クラスプステントの少なくとも1つの近位頂部により隔てられる。
【0034】
一態様において、図2Aおよび3Aに見られ得るように、トンネルグラフト28の遠位端32は、トンネルグラフト28の近位端30の直径よりも大きい直径を有する。別の態様において、図2A、2B、3A、3B、4Aおよび4Bに示されるように、トンネルグラフト28の近位端30は、管状大動脈構成要素12の近位端14の最も近位の端と壁孔20の近位端22の間にある。図4Aおよび4Bに示されるように、トンネルグラフト28は、縫合29によるなど、適切な手段により管状大動脈構成要素12の内壁に固定される。
【0035】
図1B、1C、2A、2B、3Aおよび3Bに示され得るように、トンネルグラフト28は、壁孔20に開口部84を含む。図2A、2B、3Aおよび3Bに示されるように、管状部86は、開口部84から近位方向に伸長する。一態様において、図2Bおよび3Bに示されるように、管状部は、管状部86の近位端92および遠位端94のそれぞれでステント88、90を含む。好ましくは、管状部86の近位端92および遠位端94で、ステント88、90は、支柱により連結された近位頂部および遠位頂部を含む。好ましくは、管状部86の近位端92で、ステント88は、少なくとも1つのバーブ96を含む(図2B)。図3Bに示される別の態様において、バーブ96は、管状部86のステント98の遠位頂部に向かって伸長する。任意に、管状部86はさらに、管状部86の近位端92および遠位端94のそれぞれで、ステント88、90の間に、少なくとも1つのステント98を含む。好ましくは、近位端92および遠位端94にあるステント88、90の間のステント98の少なくとも1つは、少なくとも1つのバーブを含む。最も好ましくは、管状部86のステントはニチノールを含む。
【0036】
図2Aおよび2Bおよび3Aおよび3B、4Aおよび4Bにも見られ得るように、管状部86の遠位端94は、概して円錐形であるので、管状部86は、示さないが、連続体として、または任意に継ぎ目で、トンネルグラフト28の近位端92から壁孔20の近位端22にある遠位端94まで伸長する。一態様において、トンネルグラフト28の近位端92の最大直径は、管状部86の遠位端94の直径以下である。トンネルグラフト28の近位端30の適切な最大直径の例としては、例えば、約6mm、約8mm、約10mm、約12mmまたは約14mmからなる群より選択される直径以上の直径が挙げられる。
【0037】
好ましくは、管状部86は、管状大動脈構成要素12の主長手軸24に平行な主長手軸を有する。管状部86の近位端92は、管状大動脈構成要素12の近位端14の最も近位にある端に対して遠位にある。一態様において、示さないが、管状部86の近位端92は、管状大動脈構成要素12の近位端14の最も近位にある端と共通境界(coterminous)であるか、または代替的に、図2Aおよび2Bならびに3Aおよび3B、4Aおよび4Bに示されるように、管状大動脈構成要素12の近位端14の遠位にある。別の態様において、図9Aに示されるように、管状部86は、管状大動脈構成要素12の主長手軸24に対して角度A 81で、主軸を有する。一態様において、角度は、約0°〜約90°の少なくとも1つの範囲、例えば10°、20°、30°、45°、60°、および90°Cにある。
【0038】
さらに、図9Aおよび9Bに示されるように、管状部86の近位端92は、管状大動脈構成要素12の幾何学中心152とは別の幾何学中心150を有し、図9Aのライン9Bに沿って採られた、管状部86の近位端92で画定された面中の管状部86の近位端92の幾何学中心150と管状大動脈構成要素12の幾何学中心152で画定されたライン154は、管状大動脈構成要素12の幾何学中心152と、壁孔20を二分しかつ管状大動脈構成要素12の主長手軸24(図1A)に平行な中心ライン160に沿った点158によって画定されたライン156から正の角度Bであり、点158は、管状部86の近位端92および管状大動脈構成要素12の幾何学中心150、152と、それぞれ同一平面にある。適切な正の角度Bの例は、±10°、±20°、±30°、±45°、±60°、±90°、±120°、±135°、±160°、±170°および180°からなる群について選択される少なくとも1つであり得る。
【0039】
一態様において、図2B、3Bおよび4Bに示されるように、トンネルグラフト28の近位端92の少なくとも1つおよびトンネルグラフト28の管状部86の遠位端94に、少なくとも1つの放射線不透過性マーカー99が配置される。別の態様は管状部100を含み、さらに、図7A、7B、8Aおよび8Bに示されるように、トンネルグラフト28の開口部84の近位に伸長するトンネルグラフト28の第2の管状部102を含み、第2の管状部102は、遠位端104および近位端106を有する。一態様において、示されないが、第2の管状部102は、第1の管状部100の長さとは等しくない長さである。図7Aおよび7Bに示される別の態様において、第2の管状部102は、第1の管状部100と平行である。第1の管状部100と第2の管状部102はそれぞれ別個であり、一体になって、管状部を完成する。図8Aおよび8Bに示される別の態様において、管状部は、第2のグラフト材料110の導管を仕切る共通の壁の第1のグラフト材料108を共有する。この態様において、第1のグラフト材料108および第2のグラフト材料110は、少なくとも部分的に、第1の管状部100および第2の管状部102を画定する。図10Aおよび10Bに示されるように、管状部112および114は、互いから離れて、かつ開口部84から近位に向かって伸長する。
【0040】
図2A、2B、3A、3B、4Aおよび4Bに示されるさらに別の態様において、トンネルグラフト28の近位端92は、約5mm〜約10mm、または約5mm〜約15mm、または約8mm〜約15mmの範囲の直径を有する。一般的に、管状部86は、約20mm〜約60mm、または約20mm〜約100mmの範囲の長さを有する。最も一般的に、管状部86は、約30〜50mmの範囲の長さを有する。好ましくは、トンネルグラフト28の近位端92は、管状大動脈構成要素12の近位端14の少なくとも約5mm、約10mm、および約15mmまたは約20mm以内にある。
【0041】
図12は、患者の大動脈117中で完全に展開された本発明の大動脈グラフトアセンブリ10の一態様を示す。図13〜15は、大動脈バイパス手術の種々の段階を示す(先行技術)。
【0042】
図16A〜16Fに示すように、大動脈グラフトアセンブリ200(図16A)は、管状大動脈構成要素12(図16A)が取り付けられる(図16Aおよび16C)送達構成要素202(図16B)を含む。送達構成要素202は、管状大動脈構成要素12(図16C)が周囲に延在する制御カテーテル204(図16B)を含み、ノーズコーン206(図16Bおよび16C)は、制御カテーテル204の遠位端に固定される(図17Aおよび17B)。
【0043】
図17A、17Bおよび17Cに示される一態様において、送達構成要素202はさらに、制御カテーテル204の周囲に延在する内側シース210を含む。内側シース210の遠位端214で、遠位開口部は、ノーズコーン206に詰め込まれ得る(図17A、17Bおよび18)。図19Aおよび19Bに示されるさらに別の態様において、内側シース210は、下部82を含み、前記下部82は、図20に見られ得るように、縦溝部(fluted portion)85を有する。任意に、図21Aおよび21Bに見られ得るように、内側シース210は、遠位端211に向かって狭くなるように先細りし得るか、または本質的に一定の直径であり得る。一態様において、図25Aおよび25Bに示されるように、内側シース210は、内側シース210の近位端282に少なくとも1つのスルーホール280を画定する。
【0044】
図17Aおよび17Bに見られ得るように、先導シース216が、内側シース210の周囲および管状大動脈構成要素12の周囲に延在し、先導シース216は、内側シース210に対して引っ込められ得るので、内側シース210の遠位端214が解放される。その後、ノーズコーン206が、内側シース210内に引っ込められ得る。
【0045】
図17A、17B、17Cおよび22に示される送達構成要素202はさらに、基部235を支持するために近位端224で固定され、外部制御チューブ232の主長手軸に実質的に平行であり、遠位端228で固定されていない少なくとも1つの支持ワイヤ230を含み、少なくとも1つの支持ワイヤ230の自由端228および内部縫合糸62(図17B)は、管状大動脈構成要素12の近位端14で、管状大動脈構成要素12の近位端14を、支持ワイヤ230の少なくとも1つに解放可能に固定する。外部制御チューブ232は、制御カテーテル204に沿って摺動可能である。支持ワイヤ230は、近位端224で固定され、近位頂部クラスプ240の遠位にある外部制御チューブ232で基部235を支持する。支持ワイヤ230の自由端228は、近位端14およびノーズコーン206の近位にある。遠位頂部クラスプ238の近位部252および外部制御チューブ232は、外部制御チューブ232の動きに従って、制御カテーテル204に沿って摺動可能である(図16Bおよび22)。遠位頂部クラスプ238は、管状大動脈構成要素12の近位端14で、クラスプステント56の露出した頂部58(図16C)を固定することにより、管状大動脈構成要素12の近位端14を固定する。16Bに示されるように、遠位頂部クラスプ238の遠位部248は、管状大動脈構成要素12のクラスプステント56の露出した頂部58を固定する閉鎖位置において、遠位頂部クラスプ238の近位部250の歯252と噛み合う。
【0046】
近位頂部クラスプ240は、外部制御チューブ232にある(図17B)。近位頂部クラスプ240は、近位クラスプ240の近位部244から離れて伸長する歯246(図16B)を含む。図17Bに示されるように、歯246は、管状大動脈構成要素12の保持構成要素78を通って遠位に伸長する。
【0047】
図23A〜23Dに示されるように、管状枝分かれ構成要素254は、近位端256および遠位端258を含み、管状枝分かれ構成要素254の近位端256は、トンネルグラフト28の近位端30と噛み合うように構成される。ある態様において、該噛み合わせは、管状枝分かれ構成要素254とトンネルグラフト28の間の干渉関係による。大動脈グラフトアセンブリ10を患者の大動脈に植え込む場合、管状大動脈構成要素12、管状枝分かれ構成要素254および第2の管状枝分かれ構成要素260の少なくとも1つの近位端、ならびに管状大動脈構成要素12、管状枝分かれ構成要素254および第2の管状構成要素260の少なくとも1つの遠位端からなる群の少なくとも1つで、封が形成される。「封(seal)」は、本明細書で定義される場合、第1の導管の壁と、第1の導管が内に配置される第2の導管の壁との間で、本質的に液体がしみこまない(seep)ことを意味する。かかる封は、典型的には、入れ子状に重なった第1の導管と第2の導管の間の接合部の最も近位の部分にある。
【0048】
一態様において、支持ワイヤ230は、少なくとも1つのストッパ(stop)274を有し(図11)、ストッパ274は、支持ワイヤ230に沿った縫合糸ループ62の動きを制限する。
【0049】
別の態様において、管状大動脈構成要素12は、放射線不透過性縫合糸18を含み、内側シース210は、放射線不透過性マーカー276を含み、それらの全ては、管状大動脈構成要素12を展開する際の、内側シース210(図16A〜16Fおよび17A〜17C)および管状大動脈構成要素12の相対的な動きの経路に沿って、長手方向に整列され、かつ互いから離れて間隔をおかれるので、内側シース210の部分的な引っ込みは、放射線不透過性マーカー276と放射線不透過性マーカー38の重なりを生じる。一態様において、放射線不透過性マーカー38はまた、あるいは代替的に、内側シース210および管状大動脈構成要素12の上部にある。好ましくは、放射線不透過性マーカー38、276は不均質(asymmetric)であり、放射線不透過性マーカー38、276の形状は、放射線不透過性マーカー38、276が外科的部位に整列される際に変化する。好ましくは、管状大動脈構成要素12の放射線不透過性マーカー38、276は、伸長され、かつ内側シース210の主長手軸24と実質的に整列される。
【0050】
好ましい態様において、図16A〜16Fおよび17A〜17Cに戻って参照すると、管状大動脈構成要素12は、少なくとも1つの末端において、遠位頂部クラスプ238または近位頂部クラスプ240などのクラスプにより、さらに拘束され、該方法は、管状大動脈構成要素12の縫合糸ループ62から支持ワイヤ230を引っ込めることによりクラスプを解放する工程を含む。好ましくは、この態様において、管状大動脈構成要素12はさらに、少なくとも1つの放射線不透過性マーカー38を含み、好ましくは、放射線不透過性マーカー38は、制御カテーテル204により画定された湾曲部286(図18)の空洞284(図18)から離れたほうこうを向く(facing away from)管状大動脈構成要素12上に配置される。好ましくは、内側シース210はさらに、少なくとも1つの放射線不透過性マーカー276を含み、内側シース210の放射線不透過性マーカー276は、管状大動脈構成要素12が部分的に展開された場合に、管状大動脈構成要素12の少なくとも1つの放射線不透過性マーカー276と重なる。さらに別の態様において、管状大動脈構成要素12はさらに、近位クラスプ240および支持ワイヤ230の近位固定末端234により拘束される。
【0051】
図24A〜24Eに示すように、本発明のプロテーゼを植え込むための方法は、先導シース216内の管状大動脈構成要素12を、ガイドワイヤ320に沿って、大動脈262を通って、患者の動脈瘤270へと送達する工程を含む。管状大動脈構成要素12は、半径方向に拘束され、制御カテーテル204によって少なくとも部分的に支持され(図16B、16C、16D)、これはガイドワイヤ320に沿って摺動可能である(図24A〜24E)。図16A〜16Fおよび17A〜17Cに示すように、管状大動脈構成要素12はさらに、制御カテーテル204の周囲に延在し、かつ制御カテーテル204に沿って摺動可能な外部制御チューブ232において、支持基部235から伸長する少なくとも1つの支持ワイヤ230によって、長手方向に拘束される。支持ワイヤ230の少なくとも1つの自由端228はアーチ形(arcuate)であり、管状大動脈構成要素12の近位端14内で縫合糸ループ62を通って伸長する(図17B)。
【0052】
図24A〜24Eに戻って参照すると、管状大動脈構成要素12は、ガイドワイヤ320に沿って動脈瘤270に誘導される。内側シース210(図17B)は、管状大動脈構成要素12から部分的に引っ込められ、それにより、管状大動脈構成要素12の近位端14が患者の大動脈262(図24A〜24E)に固定されるまで、支持ワイヤ230は、管状大動脈構成要素12の近位端14の長手方向の動きを少なくとも部分的に制限し、それにより大動脈262の下部264で、管状大動脈構成要素12の近位端14が潰れが防がれる。
【0053】
一態様において、内側シース210は、ノーズコーン206の近位端により画定された空洞内の遠位端214で解放可能に固定される(図18)。この態様において、図24A〜24Eに示されるように、任意の内側シース210は、部分的に引っ込められ、ノーズコーン206から内側シース210の遠位端が解放され、それにより管状大動脈構成要素12の部分的な拡張(expansion)が生じる。患者の動脈瘤部位263で、少なくとも1つの血管口290、292、294上に壁孔20が整列される。任意に、内側シース210を使用する本発明の態様において、その後内側シース210は、部分的に引っ込められ、クラウンステント56およびクラスプステント60を含む管状大動脈構成要素12の近位端14(図1A)を露出させる。次いで制御チューブ232が、部分的に伸長して、遠位クラスプ238からクラスプステント56の露出した(bare)頂部58(図1A)を解放させ、支持ワイヤ230の末端228上に縫合糸ループ62を保持しながら(図16A〜16Fおよび17A〜17C)、近位クラスプ240から保持構成要素78を解放させる(図16Bおよび17B)。次いで、管状大動脈構成要素12の近位端にノーズコーン206が部分的に引っ込められ、その後、送達アセンブリおよび管状大動脈構成要素12が、患者の動脈瘤263にまたがる大動脈262内の最終的な位置に進められる。次いで、制御チューブ232がさらに引っ込められ、支持ワイヤ230の末端228から縫合糸ループ62が解放される。その後、(内側シース210を使用する本発明の態様において)内側シース210は完全に引っ込められ、次いで、ノーズコーン206および支持ワイヤ230が完全に引っ込められ、管状大動脈構成要素12の展開が完了する。
【0054】
ある態様において、本発明の方法は、先行技術に関して図13〜15および図24A〜24Eに示されるように、患者の無名動脈(「腕頭動脈」ともいう)290、左鎖骨下動脈292、左総頸動脈294、または右総頸動脈296の少なくとも1つにおける(in)少なくとも1つの管状枝分かれ構成要素254を、管状大動脈構成要素12内の壁孔20およびトンネルグラフト28内に植え込む工程を含む。好ましい態様において、本発明の方法は、管状枝分かれ構成要素254を無名動脈290に、別の管状枝分かれ構成要素を左総頸動脈294に植え込む工程を含む(図24E)。
【0055】
本発明の大動脈グラフトアセンブリの植え込みは、上行大動脈、大動脈弓、下行大動脈および腹大動脈の一部の少なくとも1つにおける植え込みを含み得る(図12、24A〜24Eおよび26A〜26C参照)。大動脈の弓の近位、周囲またはその位置での植え込みは、バイパスのポイントの下方の左総頸動脈の結紮を伴う右総頸動脈から左総頸動脈へのバイパス、およびバイパスの下方の結紮を伴う左総頸動脈から左鎖骨下動脈へのバイパスを含み得る。別の態様において、例えば、2つの管状枝分かれ構成要素(例えば、1つは右総頸動脈に、もう1つは左総頸動脈に)を含む本発明の大動脈グラフトアセンブリは、バイパスの下方の左鎖骨下動脈の結紮を伴う、左総頸動脈から左鎖骨下動脈へのバイパスを含み得る(図16および17参照)。代替的に、図26A〜26Cに示されるように、大動脈アセンブリシステムを腹大動脈300に植え込み得る。開口部84が、腹腔動脈302、上部腸間膜動脈304、または腎動脈306の近位の腹大動脈に配置され得、それにより動脈瘤308中にまたがる。次いで、腹腔動脈302、上部腸間膜動脈304または少なくとも1つの腎動脈306の少なくとも1つに、管状枝分かれ構成要素254が植え込まれ得る。
【0056】
図25Aおよび25Bに示される別の態様において、管状大動脈構成要素12の周囲の内側シース210は、スルーホール282を画定する近位穿孔部(perforated portion)280を含む。スルーホール282は、図25Aに示されるように、穿孔部280のメッシュまたは生地(fabric)により画定され得るか、または図25Bに示されるように、長手方向のスルーホール開口部284などの別箇の開口部として画定され得る。さらに米国特許公開公報第2010/0234932号(その教示はその全体において参照により本明細書に援用される)に記載されるように、スルーホールにより、プロテーゼの植え込みの間に比較的連続した血流が可能になる。
【0057】
2006年6月8日に出願された米国特許出願第11/449,337号、2007年1月30日に出願された第11/699,700号、2007年1月31日に出願された第11/700,609号、2007年2月1日に出願された第11/701,867号、2007年7月26日に出願された第11/828,653号、2008年6月12日に出願された第12/137,592号、2007年2月1日に出願された第11/701,876号、2009年3月30日に出願された第61/164,545号、2009年6月30日に出願された第12/459,387号、ならびに米国特許第7,763,063号、第8,007,605号、第8,062,345号、第8,062,349号、第8,070,790号、第8,292,943号および第8,308,790号(それらの全ての教示はその全体において参照により本明細書に援用される)に記載された適切なシステム、送達デバイスおよびシステムの構成要素、ステントグラフトは、本発明の大動脈グラフトアセンブリを本発明の方法により送達するために使用され得る。
【0058】
本明細書に引用される全ての特許、公開された出願および参考文献の教示は、その全体において参照により援用される。
【実施例】
【0059】
実施例1
左総頸動脈(left common carotid)の高さにある胸の弓(thoracic arch)の内側に位置する大動脈の穿通性粥状硬化性潰瘍(PAU)を有する74歳の男性を治療した。患者の解剖学的構造のモデルは、コンピューター連続断層撮影(CT)スキャンに基づいて作製した。左頸動脈を結紮することなく、最初に右頸動脈から左頸動脈へのバイパスを行った。大動脈グラフトアセンブリの管状大動脈構成要素(46mm〜42mm x 80mm)を、洞管接合部(sinotubular junction)で展開した。この患者の上行大動脈は、約44mmのグラフト直径を有した。より小さい健康な頸を提供するために、46/42mm x 80mmの直径を有する管状大動脈構成要素を使用した。大動脈グラフトアセンブリの管状大動脈構成要素の近位端を解放して、上行大動脈の壁との並列を最適化した。
【0060】
大動脈グラフトアセンブリ中でトンネルグラフト(46mm〜34mm x 220mm)を使用した。トンネルグラフトは、直径15mmであった。管状大動脈構成要素の孔は、30mm x 30mmであった。15mm〜17mm x 100mmまたは15mm〜17mm x 110mm)のサイズのグラフトを使用して、グラフトトンネルと腕頭幹(brachial cephalic trunk)に橋を架け、植え込みの前に、予防措置としてワイヤカテーテルを配置した。左総頸動脈への豊富さ(profusion)を確認するために、血管造影を行った。トンネルグラフトを、少なくとも1つの管状枝分かれ構成要素の遠位端とともに、管状大動脈構成要素の孔の近位部に進めた。グラフトを整列させ、管状大動脈構成要素の動きに基づいて、無名動脈または左総頸動脈を通してトンネルグラフトをカニューレ挿入した。右総頸動脈を介してトンネルグラフトをカニューレ挿入した。トンネルグラフトがより遠位に展開されたので、比較的短い管状枝分かれ構成要素をこの患者において選択した。腕頭幹分岐部、および絡まることなく展開された管状枝分かれグラフトと、枝分かれグラフトの遠位端を整列させた。血管造影図は、頸動脈-頸動脈バイパスを介した、無名動脈および左総頸動脈への流れによる動脈瘤の締め出し(exclusion)を示した。
【0061】
実施例2
大動脈の弓に動脈瘤を有する81歳の男性を治療した。CTスキャンを使用して、患者の解剖学的構造をモデル化した。胸部動脈瘤は、大動脈弓の領域および下行大動脈の少なくとも一部にあった。トンネルグラフトは約15mmの直径を有した。
【0062】
本発明は、その例示態様に関して、特に示され、記載されてきたが、形態および詳細における種々の変更が、添付の特許請求の範囲に包含される発明の範囲から逸脱することなく、本発明においてなされ得ることが、当業者には理解されよう。
図1A
図1B
図1C
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16-1】
図16-2】
図17A
図17B
図17C
図18
図19
図20
図21
図22
図23A
図23B
図23C
図23D
図24-1】
図24-2】
図24-3】
図25
図26A
図26B
図26C