(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6097306
(24)【登録日】2017年2月24日
(45)【発行日】2017年3月15日
(54)【発明の名称】マンガン含有金属リン酸塩及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C01B 25/45 20060101AFI20170306BHJP
C01B 25/37 20060101ALI20170306BHJP
H01M 4/58 20100101ALI20170306BHJP
【FI】
C01B25/45 Z
C01B25/37 Z
C01B25/45 T
H01M4/58
【請求項の数】38
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2014-548071(P2014-548071)
(86)(22)【出願日】2012年12月21日
(65)【公表番号】特表2015-502911(P2015-502911A)
(43)【公表日】2015年1月29日
(86)【国際出願番号】EP2012076669
(87)【国際公開番号】WO2013093014
(87)【国際公開日】20130627
【審査請求日】2015年12月7日
(31)【優先権主張番号】102011056816.6
(32)【優先日】2011年12月21日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】596009652
【氏名又は名称】ケミスケ ファブリック ブデンヘイム ケージー
(74)【代理人】
【識別番号】100098729
【弁理士】
【氏名又は名称】重信 和男
(74)【代理人】
【識別番号】100116757
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 英雄
(74)【代理人】
【識別番号】100123216
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 祐一
(74)【代理人】
【識別番号】100163212
【弁理士】
【氏名又は名称】溝渕 良一
(74)【代理人】
【識別番号】100148161
【弁理士】
【氏名又は名称】秋庭 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100156535
【弁理士】
【氏名又は名称】堅田 多恵子
(72)【発明者】
【氏名】ビューレル,グナー
(72)【発明者】
【氏名】グラフ,クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】ヤーツダニアン,アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】シュワルツ,キリアン
(72)【発明者】
【氏名】ラッファーン,ミヒャエル
【審査官】
磯部 香
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−100592(JP,A)
【文献】
特開2004−063270(JP,A)
【文献】
国際公開第2010/097341(WO,A1)
【文献】
L.N.DEGTYARENKO et al.,Synthesis of manganese cobalt phosphate trihydrates,RUSSIAN JOURNAL OF INORGANIC CHEMISTRY,ロシア,1997年,Vol.42, No.1,p.29-31
【文献】
BOYLE F W JR et al.,Diffraction patterns and solubility products of several divalent manganese phosphate compounds.,Soil Science Society of America Journal,米国,American Society of Agronomy,1985年 5月,Vol.49, No.3,p.761-766
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 25/45
C01B 25/37
H01M 4/58
JSTPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マンガン(Mn)を含有するMn3(PO4)2・3H2O型の単一金属リン酸塩又は(Mnx、Mety)3(PO4)2・3H2O型の複合金属リン酸塩であって、x+y=1であり、Metは、Fe、Co、Ni、Sc、Ti、V、Cr、Cu、Zn、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Al、Zr、Hf、Re、Ru、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、及びLuから選択された1つ又は複数の金属を表わし、且つ、Mn:(Mn+Met)=x:(x+y)は0.15以上であり、該リン酸塩は、CuKα線のX線粉末回折図において、2θの角度として10.96±0.05、12.78±0.17、14.96±0.13、17.34±0.15、18.98±0.18、21.75±0.21、22.07±0.11、22.97±0.10、25.93±0.25、26.95±0.30、27.56±0.10、29.19±0.12、29.84±0.21、30.27±0.12、34.86±0.21、35.00±0.20、35.33±0.30、35.58±0.10、35.73±0.12、42.79±0.45、43.37±0.45、44.70±0.15、及び44.93±0.20にピークを有し、そして該リン酸塩は13.2±0.2、8.6±0.2、及び8.1±0.2Åの格子定数を持つ斜方晶系の基本セルを有することを特徴とするマンガン(Mn)含有リン酸塩。
【請求項2】
炭素複合体の形態で存在し、リン酸塩と炭素の合計重量を基準に、1〜10重量%の炭素を含むことを特徴とする請求項1に記載のマンガン(Mn)含有リン酸塩。
【請求項3】
炭素複合体の形態で存在し、リン酸塩と炭素の合計重量を基準に、1.5〜5重量%の炭素を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載のマンガン(Mn)含有リン酸塩。
【請求項4】
炭素複合体の形態で存在し、リン酸塩と炭素の合計重量を基準に、1.8〜4重量%の炭素を含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のマンガン(Mn)含有リン酸塩。
【請求項5】
該マンガン(Mn)含有リン酸塩は小平板状の形態を有し、小平板の厚さ(=最小の空間的広がり)は、10〜100nmの範囲であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のマンガン(Mn)含有リン酸塩。
【請求項6】
該マンガン(Mn)含有リン酸塩は小平板状の形態を有し、小平板の厚さ(=最小の空間的広がり)は、20〜70nmの範囲であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のマンガン(Mn)含有リン酸塩。
【請求項7】
該マンガン(Mn)含有リン酸塩は小平板状の形態を有し、小平板の厚さ(=最小の空間的広がり)は、30〜50nmの範囲であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載のマンガン(Mn)含有リン酸塩。
【請求項8】
該マンガン(Mn)含有リン酸塩は、(Mnx、Mety)3(PO4)2・3H2O型の複合金属リン酸塩であり、Mn:(Mn+Met)=x:(x+y)は0.4以上であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載のマンガン(Mn)含有リン酸塩。
【請求項9】
該マンガン(Mn)含有リン酸塩は、(Mnx、Mety)3(PO4)2・3H2O型の複合金属リン酸塩であり、Mn:(Mn+Met)=x:(x+y)は0.5以上であることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載のマンガン(Mn)含有リン酸塩。
【請求項10】
マンガン(Mn)を含有するMn3(PO4)2・aH2O型の単一金属リン酸塩又は(Mnx、Mety)3(PO4)2・aH2O型の複合金属リン酸塩の製造方法であって、x+y=1、a=0〜9であり、Metは、Fe、Co、Ni、Sc、Ti、V、Cr、Cu、Zn、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Al、Zr、Hf、Re、Ru、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、及びLuから選択された1つ又は複数の金属を表わし、且つ、Mn:(Mn+Met)=x:(x+y)は0.15以上であり、該リン酸塩は、CuKα線のX線粉末回折図において、2θの角度として10.96±0.05、12.78±0.17、14.96±0.13、17.34±0.15、18.98±0.18、21.75±0.21、22.07±0.11、22.97±0.10、25.93±0.25、26.95±0.30、27.56±0.10、29.19±0.12、29.84±0.21、30.27±0.12、34.86±0.21、35.00±0.20、35.33±0.30、35.58±0.10、35.73±0.12、42.79±0.45、43.37±0.45、44.70±0.15、及び44.93±0.20にピークを有し、そして該リン酸塩は13.2±0.2、8.6±0.2、及び8.1±0.2Åの格子定数を持つ斜方晶系の基本セルを有するもので、
a)Mn、Fe、Co、及び/又はNiの少なくとも1つの金属の酸化物の金属(II)、金属(III)、及び/又は金属(IV)化合物もしくはこれらの混合物、又は水酸化物、酸化物、酸化物−水酸化物、酸化物−水和物、炭酸塩、及び水酸化物炭酸塩から選択された複合酸化物の状態の化合物を、Mn、Fe、Co、及び/又はNiの少なくとも1つの元素形態もしくは合金の金属とともに、リン酸含有水系媒体の中に導入し、酸化物の金属化合物を元素形態もしくは合金の金属と反応させ(レドックス反応)、二価のイオンを得ることにより、少なくとも二価のマンガンカチオン(Mn2+)を含むか、あるいは、少なくとも二価のマンガンカチオン(Mn2+)並びにFe、Co、及び/又はNiの金属の1つ又は複数を二価のイオンとして含む水溶液(I)を調製し、ここで、該酸化物の金属化合物の少なくとも1つ及び/又は元素形態もしくは合金の金属の少なくとも1つはマンガンを含み、
b)場合により含まれる固体物質をリン酸水溶液(I)から分離し、
c)該リン酸塩が、複合金属リン酸塩であり、かつ段階a)で溶液に導入された金属に加えてMetから選択された金属をさらに含む場合、少なくとも1つの金属Metの少なくとも1つの化合物を、水溶液の形態又は塩の形態の固体物質の形態で水溶液(I)に添加し、
d)水酸化アルカリ水溶液で中和したリン酸水溶液から調製した又は1つもしくは複数のアルカリリン酸塩の水溶液から調製した、5〜8のpH値を有するレシーバー溶液(II)を提供し、
e)水溶液(I)をレシーバー溶液(II)に計量添加し、同時に、得られる反応混合物のpH値が5〜8の範囲に維持されるように、塩基性水酸化アルカリ水溶液を計量添加し、Mn3(PO4)2・aH2O型又は(Mnx、Mety)3(PO4)2・aH2O型のリン酸塩を析出させ、そして
f)析出したリン酸塩を反応溶液から分離する、
ことを特徴とするマンガン(Mn)含有リン酸塩の製造方法。
【請求項11】
段階c)における該水溶液(I)に添加する該少なくとも1つの化合物は、金属の水酸化物、酸化物、酸化物−水酸化物、酸化物−水和物、炭酸塩、水酸化物炭酸塩、カルボン酸塩、硫酸塩、塩化物、又は硝酸塩から選択されるものであることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
段階e)における該得られる反応混合物のpH値が6〜7の範囲に維持されるように、塩基性水酸化アルカリ水溶液を計量添加することを特徴とする請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
該反応溶液から分離した析出リン酸塩を、Mn3(PO4)2・aH2O又は(Mnx、Mety)3(PO4)2・aH2Oの水和物の段階まで乾燥し、ここで、0≦a≦9であることを特徴とする請求項10乃至12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
該反応溶液から分離した析出リン酸塩を、Mn3(PO4)2・aH2O又は(Mnx、Mety)3(PO4)2・aH2Oの水和物の段階まで乾燥し、ここで、a=0、3または7であることを特徴とする請求項10乃至13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
該マンガン(Mn)含有リン酸塩は複合金属リン酸塩であって、マンガン(Mn)に加えて少なくとも1つの金属(Met)をさらに含むことを特徴とする請求項10乃至14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
該マンガン(Mn)含有リン酸塩は、7つ以下の異なる金属を含むことを特徴とする請求項10乃至15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
該マンガン(Mn)含有リン酸塩は、全ての含まれる金属との関係で、少なくとも40原子%のMnを含有することを特徴とする請求項10乃至16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
該マンガン(Mn)含有リン酸塩は、全ての含まれる金属との関係で、少なくとも60原子%のMnを含有することを特徴とする請求項10乃至17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
該マンガン(Mn)含有リン酸塩は、全ての含まれる金属との関係で、少なくとも80原子%のMnを含有することを特徴とする請求項10乃至18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
該マンガン(Mn)含有リン酸塩は、全ての含まれる金属との関係で、少なくとも90原子%のMnを含有することを特徴とする請求項10乃至19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
該マンガン(Mn)含有リン酸塩は、全ての含まれる金属との関係で、プロセス由来の不純物を除き、金属としてマンガン(Mn)のみを含有することを特徴とする請求項10乃至20のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
段階e)におけるマンガン含有リン酸塩の析出が、5〜105℃の範囲の温度で行われることを特徴とする請求項10乃至21のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
段階e)におけるマンガン含有リン酸塩の析出が、10〜40℃の範囲の温度で行われることを特徴とする請求項10乃至22のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
段階d)におけるレシーバー溶液(II)への計量添加の前に炭素源を水溶液(I)に分散させ、該炭素源は、元素の炭素を含んでなる又はもっぱら元素の炭素からなる、あるいは、上記炭素源は、元素の炭素のほかに有機化合物を含むことを特徴とする請求項10乃至23のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
該炭素源は、元素の炭素を含んでなる又はもっぱら元素の炭素からなり、黒鉛、膨張黒鉛、煤、カーボンブラック、松煙墨、カーボンナノチューブ(CNT)、フラーレン、グラフェン、ガラスカーボン(ガラス状炭素)、炭素繊維、活性炭、又はこれらの混合物から選択される、あるいは、上記炭素源は、元素の炭素のほかに有機化合物を含み、該有機化合物は、炭化水素、アルコール、アルデヒド、カルボン酸、界面活性剤、オリゴマー、ポリマー、炭水化物、又はこれらの混合物から選択されることを特徴とする請求項24に記載の方法。
【請求項26】
該炭素源が、炭素及び析出リン酸塩の重量を基準に、1〜10重量%の炭素の量で溶液(I)に添加されることを特徴とする請求項24または25に記載の方法。
【請求項27】
該炭素源が、炭素及び析出リン酸塩の重量を基準に、1.5〜5重量%の炭素の量で溶液(I)に添加されることを特徴とする請求項24乃至26のいずれかに記載の方法。
【請求項28】
該炭素源が、炭素及び析出リン酸塩の重量を基準に、1.8〜4重量%の炭素の量で溶液(I)に添加されることを特徴とする請求項24乃至27のいずれかに記載の方法。
【請求項29】
水溶液(I)の調製用のリン酸を含む水系媒体が、酸化物の金属化合物の溶液に導入される金属カチオン及び元素形態又は合金として導入される金属のモル量の合計に対し、過剰のモル量のリン酸を含むことを特徴とする請求項10乃至28のいずれかに記載の方法。
【請求項30】
該レシーバー溶液(II)が、P2O5として計算して0.35〜1.85モル/Lの範囲の濃度でリン酸イオンを含むことを特徴とする請求項10乃至29のいずれかに記載の方法。
【請求項31】
段階a)における酸化物の金属化合物と元素形態もしくは合金の金属との反応が、5℃〜105℃の範囲の温度で行われ、及び/又は1〜240分間にわたって強力な徹底した混合が行われることを特徴とする請求項10乃至30のいずれかに記載の方法。
【請求項32】
段階a)における酸化物の金属化合物と元素形態もしくは合金の金属との反応が、10℃〜75℃の範囲の温度で行われ、及び/又は5〜120分間にわたって強力な徹底した混合が行われることを特徴とする請求項10乃至31のいずれかに記載の方法。
【請求項33】
段階a)における水溶液(I)中のリン酸の濃度が、水溶液(I)の重量を基準に、5%〜85%であることを特徴とする請求項10乃至32のいずれかに記載の方法。
【請求項34】
段階a)における水溶液(I)中のリン酸の濃度が、水溶液(I)の重量を基準に、10%〜40%であることを特徴とする請求項10乃至33のいずれかに記載の方法。
【請求項35】
段階a)における水溶液(I)中のリン酸の濃度が、水溶液(I)の重量を基準に、15%〜30%であることを特徴とする請求項10乃至34のいずれかに記載の方法。
【請求項36】
段階a)における水溶液(I)中のリン酸の濃度が、水溶液(I)の重量を基準に、20%〜25%であることを特徴とする請求項10乃至35のいずれかに記載の方法。
【請求項37】
Liイオンアキュムレータ用のリチウム化(Li含有)カソード材料を製造するための請求項1乃至9のいずれかに記載のマンガン含有リン酸塩の使用。
【請求項38】
請求項1乃至9のいずれか1項に記載のマンガン含有リン酸塩を用いて製造されるLiイオンアキュムレータ用のリチウム化(Li含有)カソード材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なマンガン(Mn)を含有するMn
3(PO
4)
2・3H
2O型の単一金属リン酸塩又は(Mn
x、Met
y)
3(PO
4)
2・3H
2O型の複合金属リン酸塩に関し、ここで、x+y=1であり、Metは、Fe、Co、Ni、Sc、Ti、V、Cr、Cu、Zn、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Al、Zr、Hf、Re、Ru、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、及びLuから選択された1つ又は複数の金属を表わす。また、本発明は、該リン酸塩の製造方法及びその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
再充電可能なLiイオンアキュムレータは、とりわけ携帯電子機器の分野において普及しているエネルギー貯蔵手段である。LiCoO
2、LiNiO
2、LiNi
1−xCo
xO
2、及びLiMn
2O
4等のリチウム金属酸化物が、カソード材料として確立されている。酸化物のほかに、カソード材料として適切なLiFePO
4(LFP)等のオリビン構造を有するリチウム含有リン酸塩もまた開発されている。これらの材料は、優れた出力、高い比キャパシタンス、及び非常に高度な安定性において際立っている。
【0003】
LFPのほかに、LiMnPO
4、LiCoPO
4、又はLiNiPO
4等の商業的に有用なカソード材料として検討されているリチウム含有リン酸塩もまた存在する。さらに、LiNi
xCo
x−1PO
4又はLiFe
xMn
1−xPO
4の形態のLiNiPO
4及びLiCoPO
4の合金等のLiA
xB
yC
zPO
4型((x+y+z)=1)の複合金属化合物もまた検討されている。
【0004】
とりわけ、LiFe
xMn
yPO
4及びLiFe
xMn
yM
zPO
4(LFMP)(M:Mg等の金属カチオン)が、カソード材料の純LiFePO
4(LFP)を置換する適切な化合物として検討されている。イオン含有オリビン類に関連してマンガン、ニッケル、又はコバルト含有化合物の高い使用電圧のため、高レベルのエネルギー貯蔵密度を達成することができる。
【0005】
特許文献1は、フォスフォシデライト又はメタストレンジャイトIIの結晶構造を有する結晶質の鉄(III)オルトリン酸塩二水和物(FOP)の製造方法を記載しており、製造方法と材料特性ゆえに、その文献に記載の方法にしたがってLFPを製造するための前駆体化合物として非常に適する。
【0006】
特許文献2、特許文献3、及び特許文献4は、リチウム複合金属リン酸塩の製造を記載しており、概して、先ず種々の金属塩又は金属有機化合物の物理的混合物を製造し、これを次の工程で、高温と場合により雰囲気制御下の従来の固体合成方法にて焼成する。これらに関して殆どの場合、出発物質は、目的化合物の構成に必要なイオンのみが反応系に残存するように分解される。
【0007】
結晶マトリックス中で種々カチオンの理想的な均一分布を得るためには、一般に、焼成のような熱処理において、十分に高レベルのエネルギーが反応系に導入され、効率的なイオン拡散を確保しなければならない。一般に、使用される全原料の強力な混合が予備工程として実施され、関係するエネルギー量と時間を低減させる。とりわけ、例えば、ボールミルのような乾式又は湿式の機械的処理が、原料の混合に適する。しかしながら、この結果は、種々の金属塩の粒子又は結晶の機械的混合物となる。したがって、以降の焼成操作において、所望の結晶相を構成するのに必要なイオンが一次結晶粒界を越えて拡散することを確保する必要がある。この目的には、通常、700〜800℃を超える温度と15時間を上回る焼成時間が必要である。また、物理的混合物を、先ず比較的低い温度(300〜400℃)の加熱工程に供して初期分解させるのが一般的である。次いで、これらの中間生成物は再度粉砕され、相純度、結晶化度、及び均一性に関して全体的に優れた結果を得るように、強力かつ十分に混合される。したがって、公知の熱処理は、エネルギーと時間が膨大にかかる。
【0008】
また、分解しない成分と不純物はいずれも反応系にそれゆえ生成物に残存するため、リチウムイオン電池のカソード材料の製造に使用される出発物質には、特に高純度の要求が課せられる。出発物質として使用される金属化合物のカチオンとアニオン(例えば、NH
4+、C
2O
42−、(CH
3)(CH
2)
nCOO
−、CO
32−、等)が分解するとガスもまた生成し、有害な性質の恐れがあるため(例えば、CO、NH
3、NO
x等)、高コストの複雑な操作により排気ガスの流れの中で処理しなければならない。
【0009】
特許文献5は、出発物質として硫酸鉄、硫酸マンガン、及び硫酸リチウム、並びに付加的に水酸化リチウムを用いるLiXYPO
4(X,Y=金属、例えば、Fe、Mn等)を記載しており、先ず固体物質の混合物(十分な詳しい評価は無い)を製造し、次いで300〜1000℃の焼成工程で所望の生成物に変化させる。
【0010】
リン酸塩に対して等モル量の硫酸塩の形態で所与の金属を導入するには、通常、硫酸塩含有率を許容量まで低下させるために生成物を強力な洗浄処理に供する必要がある。硫酸塩は、腐食作用の理由で、リチウムイオン電池中では不都合な不純物であることが知られている。しかしながら、強力な洗浄処理のために、オルトリン酸トリリチウムのみがオルトリン酸リチウムの中で非常に低レベルの溶解性を有することから、リチウムがかなりの量で生成物から除去されることがある。特許文献5の生成物が洗浄処理に供されると、リチウムが洗い出されると思われる。しかしながら、特許文献5は洗浄処理に言及しておらず、このことは生成物に硫酸塩の高レベルの汚染をもたらすと考えられる。
【0011】
原理的に、導入されるカチオンとアニオンの溶解性及び複合化定数又は結晶成長因子のレベルが、所望の種のみが分離可能な形態で生成するように選択マトリックス中の反応操作によって制御・調節可能ならば、ハイドロサーマル法又はソルボサーマル法によって極めて均一なカチオン分布レベルを達成することができる。多くの場合、当業者に知られるいわゆるテンプレートとしての、所与の結晶相の形成又は好ましい方向への成長を促進する表面活性物質又は添加剤が、ここでの結晶成長を制御するために使用される。これらの方法において、反応マトリックスの沸点より高い温度での操作が、閉鎖系において実施されることが多く、それにより非常な高圧を伴う。このことは、反応器の技術に高度な要求を課すことになる。多くの場合、必要な結晶化度を確保するために、得られる生成物はそれにもかかわらず又は付加的に続いて焼成されなければならない。表面活性物質は、以降の用途において不都合な影響を及ぼさないように、量的に除去されなければならない。このこともまた加熱によって行われ、これらの物質は、燃焼され又は炭化物や煤になる。
【0012】
低圧の状態で操作する方法も記載されているが、所望生成物の結晶化の回数は、常に数日間から数週間と明記されている。こうした仕方は、商業的使用における経済性に疑問を与える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】独国特許出願公開第10 2009 001 204号明細書
【特許文献2】国際公開第97/040541号
【特許文献3】米国特許第5,910,382号明細書
【特許文献4】国際公開第00/060680号
【特許文献5】加国特許第02443725号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、新規な単一金属又は複合金属リン酸塩を提供することであり、本リン酸塩は、例えば、リチウムイオン電池のカソード材料の製造に適し、とりわけ高いエネルギー貯蔵密度を有するカソード材料をそれを用いて製造することができ、またその製造方法を提供することであり、本方法は、比較的エネルギー効率が良くて簡易であり、それによって純度レベルの高いリン酸塩を製造することができ、そのリン酸塩は、当該技術の現状に比較し、例えば、リチウムイオン電池のリチウム化カソード材料の製造のための前駆体化合物(プレカーサー)としてより優れて適切である。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の目的は、マンガン(Mn)を含有するMn
3(PO
4)
2・3H
2O型の単一金属リン酸塩又は(Mn
x、Met
y)
3(PO
4)
2・3H
2O型の複合金属リン酸塩によって達成され、ここで、x+y=1であり、Metは、Fe、Co、Ni、Sc、Ti、V、Cr、Cu、Zn、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Al、Zr、Hf、Re、Ru、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、及びLuから選択された1つ又は複数の金属を表わし、本リン酸塩は、CuKα線のX線粉末回折図において、2θの角度として10.96±0.05、12.78±0.17、14.96±0.13、17.34±0.15、18.98±0.18、21.75±0.21、22.07±0.11、22.97±0.10、25.93±0.25、26.95±0.30、27.56±0.10、29.19±0.12、29.84±0.21、30.27±0.12、34.86±0.21、35.00±0.20、35.33±0.30、35.58±0.10、35.73±0.12、42.79±0.45、43.37±0.45、44.70±0.15、及び44.93±0.20にピークを有することを特徴とする。
【0016】
本発明によるマンガン(Mn)含有リン酸塩は、X線粉末回折図におけるそのピーク位置によって特徴付けられる新規な構造型を有する。この新規な構造型は、本明細書において「Mn
3(PO
4)
2・3H
2O構造型」とも称する。この構造型は文献においては知られていない。これは、X線粉末回折図における上記の特有のピーク位置を有するMn
3(PO
4)
2・3H
2O型の単一金属リン酸塩及び(Mn
x、Met
y)
3(PO
4)
2・3H
2O型の複合金属リン酸塩の両方の形態で得ることができる。この点に関し、個々のピークは、金属成分の組成に応じて、角度2θの「±」で特定される角度範囲内の若干の変位を生じることがある。
【0017】
新しい構造型の本発明によるマンガン(Mn)含有リン酸塩は、好ましくは、13.2±0.2、8.6±0.2、及び8.1±0.2Åの格子定数を持つ斜方晶系の基本セルを有する。
【0018】
本発明の好ましい態様において、マンガン(Mn)含有リン酸塩は、炭素複合体の形態で存在し、リン酸塩と炭素の合計重量を基準に、1〜10重量%の炭素、好ましくは1.5〜5重量%の炭素、特に好ましくは1.8〜4重量%の炭素を含む。
【0019】
こうしたリン酸塩と炭素の複合体は、本発明によるリン酸塩の製造の際に炭素源を添加することによって得られ、これは以降の本発明による方法の説明の中で詳細に述べる。本発明による生成物に炭素を含有させることは、材料そのもの、及び/又はその材料から得られる生成物、例えば、リチウムイオンアキュムレータのカソード材料の導電性の実現を可能にする。製造過程で添加される炭素源の量と性質は、得られる炭素含有率を自由に調整すること、それゆえ一定の範囲内に導電率を自由に調節することを可能にする。過度に高い炭素含有率は、リチウムイオン電池における後の使用で、活性カソード材料のあり得る最大限の量が低下するといった不利益を有する。1重量%未満の炭素含有率では、もはや導電率の適切な増加が達成されない。
【0020】
本発明のさらに好ましい態様において、マンガン(Mn)含有リン酸塩は小平板状の形態を有し、小平板の厚さ(=最小の空間的広がり)は、好ましくは10〜100nmの範囲、より好ましくは20〜70nmの範囲、特に好ましくは30〜50nmの範囲である。
【0021】
本発明における好ましい小平板状の形態は、例えば、Liイオンアキュムレータのリチウム化(Li含有)カソード材料の製造に本発明によるリン酸塩を使用するにおいて、格別の利点を有する。一次結晶子のナノスケールの小平板の厚さを有する小平板形状は、簡易で安価な焼成プロセスによるリチウム化操作において、最小限のあり得る拡散経路と拡散時間を確保する。また、本発明による材料の中に存在する金属イオンの理想的な等方的分布は、粒界を越える金属イオンの拡散が必要ないため、必要な焼成温度と回数を低下させる。画定された結晶構造は、焼成操作とカソード材料の製造における明確に画定された再現性のある反応経路を保証する。
【0022】
本発明のさらに好ましい態様において、マンガン(Mn)含有リン酸塩は、(Mn
x、Met
y)
3(PO
4)
2・3H
2O型の複合金属リン酸塩であり、ここで、Mn:(Mn+Met)=x:(x+y)は0.15以上であり、好ましくは0.4以上であり、特に好ましくは0.5以上である。Mn:(Mn+Met)の比は、マンガンを含む全含有金属の合計に対するマンガン原子の比を示す。式の表示(Mn
x、Met
y)
3(PO
4)
2・3H
2Oとx+y=1において、Mn:(Mn+Met)の比はx:(x+y)と表わすこともできる。本発明による単一金属リン酸塩においては、y=0の場合であるため、x:(x+y)=1である。複合金属リン酸塩の中のマンガンの割合が非常に低いと、新規な「Mn
3(PO
4)
2・3H
2O構造型」を得ることができない。
【0023】
また、本発明は、マンガン(Mn)を含有するMn
3(PO
4)
2・3H
2O型の単一金属リン酸塩又は(Mn
x、Met
y)
3(PO
4)
2・aH
2O型の複合金属リン酸塩の製造方法に関し、x+1=1、a=0〜9であり、Metは、Fe、Co、Ni、Sc、Ti、V、Cr、Cu、Zn、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Al、Zr、Hf、Re、Ru、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、及びLuから選択された1つ又は複数の金属を表わし、本方法は、以下の特徴を有する:
a)Mn、Fe、Co、及び/又はNiの少なくとも1つの金属の酸化物の金属(II)、金属(III)、及び/又は金属(IV)化合物もしくはこれらの混合物、又は水酸化物、酸化物、酸化物−水酸化物、酸化物−水和物、炭酸塩、及び水酸化物炭酸塩から選択された複合酸化物の状態の化合物を、Mn、Fe、Co、及び/又はNiの少なくとも1つの元素形態もしくは合金の金属とともに、リン酸含有水系媒体の中に導入し、酸化物の金属化合物を元素形態もしくは合金の金属と反応させ(レドックス反応)、二価のイオンを得ることにより、少なくとも二価のマンガンカチオン(Mn
2+)を含み、かつ所望によりFe、Co、及び/又はNiの金属の1つ又は複数を二価のイオンとして含む水溶液(I)を調製し、ここで、該酸化物の金属化合物の少なくとも1つ及び/又は元素形態もしくは合金の金属の少なくとも1つはマンガンを含み、
b)場合により含まれる固体物質をリン酸水溶液(I)から分離し、
c)該リン酸塩が、複合金属リン酸塩であり、かつ段階a)で溶液に導入された金属に加えてMetから選択された金属をさらに含む場合、少なくとも1つの金属Metの少なくとも1つの化合物を、水溶液の形態又は塩の形態の固体物質の形態で水溶液(I)に添加し、ここで、該少なくとも1つの化合物は、好ましくは、金属の水酸化物、酸化物、酸化物−水酸化物、酸化物−水和物、炭酸塩、水酸化物炭酸塩、カルボン酸塩、硫酸塩、塩化物、又は硝酸塩から選択され、
d)水酸化アルカリ水溶液で中和したリン酸水溶液から調製した又は1つもしくは複数のアルカリリン酸塩の水溶液から調製した、5〜8のpH値を有するレシーバー溶液(II)を提供し、
e)水溶液(I)をレシーバー溶液(II)に計量添加し、同時に、得られる反応混合物のpH値が5〜8、好ましくは6〜7の範囲に維持されるように、塩基性水酸化アルカリ水溶液を計量添加し、Mn
3(PO
4)
2・aH
2O型又は(Mn
x、Met
y)
3(PO
4)
2・aH
2O型のリン酸塩を析出させ、そして
f)析出したリン酸塩を反応溶液から分離する。
【発明を実施するための形態】
【0024】
段階a)において溶液(I)に導入される金属は、本明細書において「一次金属」とも称する。一次金属は、少なくともマンガン(Mn)を含み、所望によりFe、Co、及び/又はNiを含む。段階c)において所望により溶液に導入され、Fe、Co、Ni、Sc、Ti、V、Cr、Cu、Zn、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Al、Zr、Hf、Re、Ru、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、及びLuから選択される金属は、本明細書において「ドーピング金属」とも称する。マンガン(Mn)は、段階c)においてさらに導入することもできる。ドーピング金属は、二価金属イオンの形態で溶液に生じることができるが、三価又は四価の金属イオンの形態で溶液に存在することもできる。ドーピング金属のいくつかは、好ましくは、三価の形態で存在する。本発明によるリン酸塩が、例えば、カソード材料を得るためにさらに処理されて、二価でないそれらの金属イオンが構造上の擬転位を示すならば、このことはカソード材料の性能に有利な影響を及ぼすことができる。
【0025】
単一金属又は複合金属リン酸塩を製造するための本発明による方法は、当該技術の現状に比較し、簡易で安価である。本発明による方法のもう1つの長所は、リン酸水溶液(I)のみが所望の金属カチオンを含み、専ら又は主としてリン酸アニオン又はリン酸を含むことである。このため、本発明の生成物を製造するさらなる過程で、硫酸塩、硝酸塩、塩化物その他の異種アニオンなどを除去するための高コストな操作の必要がない。仮に、本発明による方法の段階c)において、例えば、硫酸塩、硝酸塩、又は塩化物の形態でドーピング金属が導入されたとしても、少量で効果があり、製造される物には依然今日範囲であり、生成物の特性に悪影響を及ぼさないかある程度影響するに過ぎない。このため、本発明によるリン酸塩は高純度を享受するので、例えば、リチウム化カソード材料の製造に特に適切である。リチウム化は、簡単な熱反応工程(焼成)によって行うことができ、この場合、リン酸塩の材料の各性質に応じて、適切なリチウム塩を添加しなければならない。
【0026】
本発明による方法は、極めて適応性のある反応原理を利用可能にし、これにより本明細書に記載の種類の多数のリン酸塩系、例えば、(擬)二成分系、(擬)三成分系、及び(擬)四成分系を呈することができる。
【0027】
本発明による方法は、結晶相とカチオン分布、形態、結晶子、及び二次粒子径などの特定の材料パラメータと同時に、pH値、濃度レベル、温度などの析出条件の適切な選択により得られる生成物の化学的純度をコントロールする選択肢を提供する。この場合、好ましい生成物は、小平板状形態を有する上記の生成物であり、単一の結晶相とカチオンの等方的分布を有する。
【0028】
本発明による方法の第1反応段階において、酸化物の金属(II)、金属(III)、及び/又は金属(IV)化合物は、リン酸の水系媒体中でレドックス反応により元素金属又は合金と反応し、二価の金属イオンを生成する。元素金属と酸化物成分の間のこのレドックス反応の進行は、電子移動が界面で生じることから、それぞれの比表面積に依存する。元素金属形態から酸化物金属形態への電子移動に関係する並行二次反応による水素ガスの発生は、考慮に入れるべきである。このことは、ラジカル結合により水素ガスを発生するラジカルを生じる元素金属形態からプロトンへの電子移動を伴う。このため、使用される元素と酸化物の金属形態の各粒子サイズは、二次反応を抑制し、安価な酸化物の金属形態の溶解から得られる最大限の利点を獲得するように、相互に適合すべきである。一般論として、酸化物の形態が十分に高い活性表面を提供しなければ、元素の金属形態がより細かいほど、相応して二次反応がより促進される。
【0029】
反応の各組成に応じて、溶液中に固体残渣として未反応成分が残存することがある。得られる反応溶液に固体物質が依然として含まれる場合、好ましくは、リン酸水溶液から分離される。固体物質の分離は、液体と固体を分離するのに適切なあらゆる公知の方法を用いて行うことができ、例えば、濾過、遠心分離、沈降などが挙げられる。
【0030】
本発明により製造されるリン酸塩が、複合金属リン酸塩であって、段階a)で溶液中に導入される金属に加えてMetから選択される別な金属を含む場合、段階e)におけるレシーバー溶液(II)への計量添加の前に、水溶液の形態又は塩の形態の固体として、Metから選択された少なくとも1つの金属の少なくとも1つの化合物を場合によりさらにマンガンを水溶液(I)に添加し、ここで、この少なくとも1つの化合物は、好ましくは、金属の水酸化物、酸化物、酸化物−水酸化物、酸化物−水和物、炭酸塩、水酸化物炭酸塩、カルボン酸塩、硫酸塩、塩化物、又は硝酸塩から選択される。これらのドーピング金属の添加は、好ましくは、含まれる可能性のある固体物質がリン酸水溶液(I)から分離された後、本方法の段階c)で行われ、あるいは、このドーピング金属の添加は、含まれる可能性のある固体物質の分離の前であって、段階a)における溶液(I)の調製の直後に行うこともできる。次いで、場合により含められた固体物質の分離は、ドーピング金属の添加の後に行われる。
【0031】
定められた形態の適切な金属塩(ドーピング金属)の添加は、得られるリン酸塩における所望の金属含有率又は金属相互の比を非常に正確に調節することを可能にする。このことは、比較的少量で使用される金属について特にあてはまる。望ましくは、非常に高い生成物純度を確保するように、以降の操作過程で問題のあるアニオンを混合物に導入しない金属化合物を用いるべきである。これらは、とりわけ一般的な酸性条件下で反応又は分解して水を生成する水酸化物、酸化物、酸化物−水和物、炭酸塩、及び水酸化物炭酸塩である。必要により、不都合な尚早又は制御されない沈降を防止するため、当業者によく知られた緩衝剤を使用することもできる。また、カルボン酸塩も適切であり、これは有機酸の混合物中に残存するものが、一般に、生成物の以降の焼成時に分解するためである。生成物中の硫酸塩、塩化物、又は硝酸塩の含有率が、各用途において許容されると考えられる特定の限界値を超えないならば、硫酸塩、塩化物、又は硝酸塩の形態での金属の添加もまたドーピング金属に適切であることができる。
【0032】
本発明によるリン酸塩の以降の析出のためのレシーバー溶液(II)は、5〜8の範囲に緩衝されたpH値を有するリン酸塩溶液でもある。このレシーバー溶液は、水酸化アルカリ水溶液を用いた中和によるリン酸塩水溶液から、又は1つ又は複数のアルカリリン酸塩の水溶液から直接に調製される。水溶液(I)は、本発明によるリン酸塩の析出のために、レシーバー溶液(II)に計量添加される。この点に関し、リン酸塩溶液(I)の低いpH値ゆえに、塩基性の水酸化アルカリ水溶液は計量添加され、同時に得られる反応混合物のpH値が5〜8の範囲に維持される。レシーバー溶液(II)又は得られる反応混合物の5未満のpH値のような過度に低いpH値は、本発明の望ましい結晶相のほかに、例えば、金属水素又は金属二水素リン酸塩の結晶相をさらに生成することがあるといった不利益を有する。8を超えるpH値のようなレシーバー溶液(II)の過度に高いpH値は、微量の金属酸化物が生成して本発明による生成物の不都合な不純物になるといった不利益を有する。好ましくは、塩基性の水酸化アルカリ水溶液は、反応混合物に溶液(I)を計量添加すると6〜7の範囲のpH値になるように計量添加される。このことは、本発明における結晶相が独占的に生成するといった長所を有する。
【0033】
本発明によるリン酸塩が析出した後、反応溶液から分離される。これは上記と同じように、濾過、遠心分離、沈殿などのそれ自体公知の方法を用いて行われる。次いで、反応溶液から分離されたリン酸塩は望ましくは乾燥され、すなわち水が除去される。乾燥は、周囲雰囲気、保護ガス雰囲気、減圧下、及び/又は高温(25℃の室温を上回る)を選択して行うことができる。この目的に適する方法は当業者によく知られており、より詳しい説明の必要はない。補足的な考慮としては、以降の実施例を注意されたい。乾燥操作においては、反応溶液より分離された残留物から遊離水が除去される。ここで、所望の生成物に応じて、この乾燥操作によって、生成物の所望の水和物段階まで結晶体の結合水もまた除去される。
【0034】
本発明の好ましい態様において、反応溶液から分離された析出リン酸塩は、Mn
3(PO
4)
2・aH
2O又は(Mn
x、Met
y)
3(PO
4)
2・aH
2Oの水和物の段階まで乾燥され、ここで、0≦a≦9であり、特に好ましくは、aは0、3、又は7であり、極めて特に好ましくは、a=3である。a=3の水和物の段階は、本発明による新規な構造型を有する。これは、広い温度範囲にわたって安定である。a=0とa=7の水和物の段階もまた十分に安定である。
【0035】
好ましい態様において、本発明による方法によって製造されるマンガン(Mn)含有リン酸塩は、マンガン(Mn)に加えて少なくとも1つの金属(Met)をさらに含む複合金属リン酸塩であり、ここで、このリン酸塩は、好ましくは、7つ以下の異なる金属を含む。殆どの場合、本発明による種類の複合金属リン酸塩は、望ましくは、2つ、3つ、又は4つの異なる金属を有して製造される。多くの場合、マンガン(Mn)に加えて、いわゆる一次金属としてFe、Co、及びNiから選択された1つ又は2つの異なる金属を高い比率で、及び/又はいわゆるドーピング金属として1つ又は複数の金属をそれぞれ少ない比率で有する複合金属リン酸塩を製造することが望ましい。例えば、一次金属としてマンガンを含む本発明によるリン酸塩は、下記の実施例で実証されるように、Mg、Al、Cu、及び/又はランタノイド金属のような金属をさらに少量で有益に有することができる。
【0036】
特に好ましくは、マンガン(Mn)含有複合金属リン酸塩は、全ての含まれる金属との関係で、少なくとも40原子%のMn、好ましくは少なくとも60原子%のMn、特に好ましくは少なくとも80原子%のMn、極めて特に好ましくは少なくとも90原子%のMnを含有する。
【0037】
別な好ましい態様において、本発明の方法によって製造されるマンガン(Mn)含有リン酸塩は、関連する方法による不純物を除き、金属としてマンガン(Mn)のみを含有する単一金属リン酸塩である。
【0038】
本発明の方法は、とりわけ複合金属リン酸塩の製造において、効率、製造コスト、エネルギー消費量、及び達成可能な生成物純度の点で、当該技術の現状を越える大きな長所を有する。また、複合金属リン酸塩中の種々の金属の比率を、非常に容易かつ正確に調節することができる。さらに本発明の方法は、pH値、濃度レベル、及び温度などの析出条件を適切に選択することによって、得られる生成物の結晶相とカチオン分布、形態、結晶子、二次粒子サイズ、及び化学的純度などの特定の材料パラメータを制御することを可能にする。これらのことは、金属リン酸塩と他の金属塩が混合された後、焼成によって熱反応に供され、実質的に高レベルのエネルギー導入を一般に必要とする公知の方法においては、不可能であるか又は限定的に可能であるに過ぎない。
【0039】
特に好ましくは、本発明に従って製造されるマンガン(Mn)含有リン酸塩は、本明細書に記載の新規な「Mn
3(PO
4)
2・3H
2O構造型」を有し、CuKα線のX線粉末回折図において、2θの角度として10.96±0.05、12.78±0.17、14.96±0.13、17.34±0.15、18.98±0.18、21.75±0.21、22.07±0.11、22.97±0.10、25.93±0.25、26.95±0.30、27.56±0.10、29.19±0.12、29.84±0.21、30.27±0.12、34.86±0.21、35.00±0.20、35.33±0.30、35.58±0.10、35.73±0.12、42.79±0.45、43.37±0.45、44.70±0.15、及び44.93±0.20にピークを有する。
【0040】
新規な構造型の本発明によるマンガン(Mn)含有リン酸塩は、好ましくは、13.2±0.2、8.6±0.2、及び8.1±0.2Åの格子定数を持つ斜方晶系の基本セルを有する。
【0041】
本発明による方法の好ましい態様において、段階e)におけるマンガン含有リン酸塩の析出は、5〜105℃の範囲、好ましくは10〜40℃の範囲の温度で行われる。その場合、所望の温度の±5℃の範囲に制御する適切な装置によって温度を一定に維持することができる。より高い温度は、一般に、生成物のより顕著な結晶化度をもたらす。5℃未満の温度も確かに可能ではあるが、不要な冷却を必要とする。室温又は反応に由来する温度で析出を行うことが最も有益である。105℃を上回る温度は、反応混合物が沸騰することから不都合であり、弊害もあり得る。特に好ましくは、段階e)におけるリン酸塩の析出は、費用が最小限であることにより、10〜40℃の範囲の温度で行われる。
【0042】
本発明による方法のさらに好ましい態様において、段階d)におけるレシーバー溶液(II)への計量添加の前に炭素源を水溶液(I)に分散させ、ここで、この炭素源は、元素の炭素を含んでなる又はもっぱら元素の炭素からなり、好ましくは、黒鉛、膨張黒鉛、カーボンブラックや松煙墨などの煤、カーボンナノチューブ(CNT)、フラーレン、グラフェン、ガラスカーボン(ガラス状炭素)、炭素繊維、活性炭、又はこれらの混合物から選択され、あるいは、上記炭素源は、元素の炭素のほかに有機化合物を含み、この有機化合物は、好ましくは、炭化水素、アルコール、アルデヒド、カルボン酸、界面活性剤、オリゴマー、ポリマー、炭水化物、又はこれらの混合物から選択される。
【0043】
本発明の方法において水溶液(I)に炭素源を添加することは、リン酸塩と炭素の複合体の製造を可能にし、それにより、材料そのもの又はこの材料から製造できる生成物の導電性の実現を可能にし、例えば、リチウムイオンアキュムレータのカソード材料の製造用が挙げられる。溶液(I)に直接添加される炭素源の量と性質は、得られる炭素含有率とそれゆえ導電率を特定の範囲に自由に調節することを可能にする。望ましくは、この炭素源は、炭素及び析出リン酸塩の重量を基準に、1〜10重量%の炭素、好ましくは1.5〜5重量%の炭素、特に好ましくは1.8〜4重量%の炭素の量で溶液(I)に添加される。過度に高い炭素含有率は、リチウムイオン電池における後の使用で、活性カソード材料のあり得る最大限の量が低下するといった不利益を有する。1重量%未満の炭素含有率では、もはや導電率の適切な増加が達成されない。
【0044】
溶液中の炭素成分の分散安定性を高めるには、それぞれの炭素源の性質に応じ、機械的な力の作用によって溶液中の炭素源を微細に分散させるのが有益なことがある。高い剪断力を導入する公知の方法のほかに、本目的には撹拌式ボールミルの使用がとりわけ適切である。炭素源の微細な分散に加え、撹拌式ボールミルの使用は、炭素源の平均粒子サイズ又は凝集サイズもまた改良され得ることを意味する。即ち、例えば、黒鉛の平均粒子サイズは300nm未満に低下させることができる。得られる分散系は高度に安定であり、黒鉛は一般に最初は疎水性の材料特性を有するものの、数日後であっても固形物である黒鉛の沈殿の傾向は殆ど見られない。上記の処理と混合物中の過剰な遊離リン酸塩又はリン酸は、黒鉛表面を改質し、分散系中の固形物が安定化させる。炭素又は黒鉛の新水性化方法もまた公知であり、表面の部分酸化などを有益に用いることもできる。また、溶液(I)における炭素源の分散安定性は、表面活性物質の添加によって有利に改良することもできる。
【0045】
また、別な炭素源あるいはポリマー又はバイオポリマーを、炭素源として溶液に添加することもできる。ここで、溶液(I)に支配的な酸性条件下で可溶な炭素源を提供することが有益なことがある。この成分が不溶であるならば、溶液中での分散は剪断力の作用によって改良することもできる。
【0046】
本発明による方法のさらに好ましい態様において、水溶液(I)の調製用のリン酸を含む水系媒体は、酸化物の金属化合物の溶液に導入される金属カチオン及び元素形態又は合金として導入される金属のモル量の合計に対し、過剰のモル量のリン酸を含む。過剰のリン酸が存在しなければ、レドックスプロセスが起きないか、又は本方法がもはや商業的用途に魅力がないような低い速度で起きる。
【0047】
望ましくは、段階a)における水溶液(I)中のリン酸の濃度は、水溶液(I)の重量を基準に、5%〜85%、好ましくは10%〜40%、特に好ましくは15%〜30%、極めて特に好ましくは20%〜25%である。
【0048】
本発明による方法のさらに好ましい態様において、レシーバー溶液(II)は、P
2O
5として計算して0.35〜1.85モル/Lの範囲の濃度でリン酸イオンを含む。P
2O
5として0.35モル/L未満のリン酸イオン濃度は、反応混合物が不必要に希釈され、商業的用途の場合に不必要に大量の濾液を処理しなければならないといった不利益を有する。P
2O
5として1.85モル/Lを上回るリン酸イオン濃度は、高い固形分の割合ゆえに高粘度となり、反応混合物を適切に混合することができないといった不利益を有する。その結果、局所的に濃度勾配を引き起こし、ひいては所望の結晶相の形成に悪影響を及ぼすことがある。
【0049】
本発明による方法のさらに好ましい態様において、段階a)における酸化物の金属化合物と元素形態もしくは合金の金属との反応は、5℃〜105℃の範囲、好ましくは10℃〜75℃の範囲、特に好ましくは20℃〜50℃の範囲の温度で行われる。本発明による範囲内での温度では、種々の金属成分の反応を、空気中の酸素との酸化現象を伴うことなく、円滑かつ十分な速度で進めることができる。
【0050】
また、段階a)における酸化物の金属化合物と元素形態もしくは合金の金属との反応は、均一な反応であって反応溶液内の局所的高濃度を避けるように、強力な徹底した混合を行うことが有利である。このことは、以降の析出段階においても同様である。
【0051】
望ましくは、段階a)における酸化物の金属化合物と元素形態もしくは合金の金属との反応は、1〜240分間、好ましくは5〜120分間、特に好ましくは30〜90分間にわたって行われる。十分に完結した反応のために必要な反応時間は、反応物質と反応条件によって決まり、当業者によるいくつかの実験によって容易に定めることができる。過度に短い反応時間では、反応が概して十分に完結せず、過度に多い未反応の出発物質を含むことになる。しかしながら、反応時間はやはり過度に長くすべきではなく、これは本方法の経済性が低下するためである。この目的は、画定された金属組成物を得るために完全な反応を実現することである。上述のように、溶液中の個々の金属の濃度は、場合により適切な金属塩の添加によって調節することもできる。しかしながら、このことは、付加的な煩雑さと費用を意味し、作業コストとともに許容できないアニオン汚染の危険性を高める。
【0052】
また、本発明は、マンガン(Mn)を含有するMn
3(PO
4)
2・3H
2O型の単一金属リン酸塩又は(Mn
x、Met
y)
3(PO
4)
2・3H
2O型の複合金属リン酸塩を含み、ここで、x+y=1であり、Metは、Fe、Co、Ni、Sc、Ti、V、Cr、Cu、Zn、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Al、Zr、Hf、Re、Ru、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、及びLuから選択された1つ又は複数の金属を表わし、本リン酸塩は、CuKα線のX線粉末回折図において、2θの角度として10.96±0.05、12.78±0.17、14.96±0.13、17.34±0.15、18.98±0.18、21.75±0.21、22.07±0.11、22.97±0.10、25.93±0.25、26.95±0.30、27.56±0.10、29.19±0.12、29.84±0.21、30.27±0.12、34.86±0.21、35.00±0.20、35.33±0.30、35.58±0.10、35.73±0.12、42.79±0.45、43.37±0.45、44.70±0.15、及び44.93±0.20にピークを有し、これらは、本明細書に記載の本発明による方法に従って製造され又は製造可能である。
【0053】
また、本発明は、例えば、文献に記載の方法にしたがって、Liイオンアキュムレータ用のリチウム化(Li含有)カソード材料の製造に本発明によるリン酸塩を使用することを含む。本発明によるリン酸塩を、リチウム化カソード材料の製造用前駆体として使用することは、公知の方法における同じ目的の使用に比較して以下の利点を有し、即ち、本発明によるリン酸塩においては、種々の所望の金属カチオンが、既に高純度前駆体の中に理想的に等方的に分配されて存在しており、このことは、結晶相、組成、及び形態に関して簡易な公知の方法を用いる十分に確立された仕方で評価可能である。本発明において好ましい一次結晶子のナノスケールの小平板形状は、その点において、簡易で安価な焼成プロセスによるリチオ化操作における最短の可能な拡散経路と拡散時間を確保する。既に存在する金属イオンの理想的な等方的分布は、それにより、粒界を越える金属イオンの拡散が必要ないため、必要な焼成温度と焼成回数を低下させる。画定された結晶構造は、焼成操作とカソード材料の製造において、明確に画定された再現性のある反応経路を保証する。前駆体混合物の精密製造に伴う煩雑さと費用は、画定された化合物の中に基本的成分が既に存在するため、公知の方法に比較して顕著に低減される。本発明によるリン酸塩の高純度、とりわけ硫酸塩、硝酸塩、塩化物などの不純物が実質的に存在しない又は含有率が非常に少ないことは、以降の電池用途において、顕著に高いサイクル耐久性と耐用年数による効果を発揮し、リチウムイオン電池の経済性を高め、電気自動車などの用途を可能にする。
【0054】
本発明は、さらに、本発明によるマンガン含有リン酸塩を用いて製造されるLiイオンアキュムレータ用のリチウム化(Li含有)カソード材料に関する。
本発明は、さらに、本発明によるリチウム化(Li含有)カソード材料を含むLiイオンアキュムレータに関する。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【
図1】例4の生成物のCuKα線を用いたX線粉末回折図を示す。
【
図2】例4の生成物における個々の小平板状結晶の透過型電子顕微鏡(TEM)の記録を示す。
【
図3】例4の生成物における個々の小平板状結晶のTEM測定から得られる電子回折像を示す。
【
図7】例17の生成物のCuKα線を用いたX線粉末回折図を示し、PDF75−1186(Fe
3(PO
4)
2x8H
2O)と41−0375(Co
3(PO
4)
2x8H
2O)に従って完全に指数化することができる。
【
図8】例16の生成物のCuKα線を用いたX線粉末回折図を示し、PDF75−1186(Fe
3(PO
4)
2x8H
2O)と46−1388(Ni
3(PO
4)
2x8H
2O)に従って完全に指数化することができる。
【
図9】例3の生成物のCuKα線を用いたX線粉末回折図を示す。
【実施例】
【0056】
例1
80gの75%H
3PO
4と160gの脱イオン水からリン酸塩溶液(I)を調製した。14.3gのMn
3O
4と3.5gのFeを溶液(I)に添加した。溶液(I)を室温で90分間にわたって撹拌した後濾過し、残存する可能性のある残留物をこの溶液から除去した。
さらに、40gのNaOHと1000gの脱イオン水から塩基性溶液を調製した。25gのH
3PO
4を100gの水とともに反応容器に入れ、この塩基性溶液を用いて7のpH値に中和し、レシーバー溶液(II)を得た。リン酸Me
2+溶液(I)と塩基性溶液を、中和したレシーバー溶液(II)に計量添加すると同時に撹拌し、レシーバー溶液(II)のpH値を常に6.5〜7に維持した。計量添加の終了後、この溶液をさらに5分間にわたって撹拌した。次いで、析出した固形物をヌッチェフィルタを使って吸い取り、脱イオン水で洗浄した。濾過ケーキを空気循環乾燥器中で120℃にて乾燥した。
【0057】
例2
230gの75%H
3PO
4と460gの脱イオン水からリン酸塩溶液(I)を調製した。8.9gのMnO
2とともに30.1gのMn
3O
4、及び13.1gのFeを溶液(I)に添加した。溶液(I)を室温で60分間にわたって撹拌した後濾過し、残存する可能性のある残留物をこの溶液から除去した。
さらに、120gのNaOHと3000gの脱イオン水から塩基性溶液を調製した。25gのH
3PO
4を100gの水とともに反応容器に入れ、この塩基性溶液を用いて7のpH値に中和し、レシーバー溶液(II)を得た。リン酸Me
2+溶液(I)と塩基性溶液を、中和したレシーバー溶液(II)に計量添加する同時に撹拌し、レシーバー溶液(II)のpH値を常に6.5〜7に維持した。計量添加の終了後、この溶液をさらに5分間にわたって撹拌した。次いで、析出した固形物をヌッチェフィルタを使って吸い取り、脱イオン水で洗浄した。濾過ケーキを空気循環乾燥器中で90℃にて乾燥した。
【0058】
例3
80gの75%H
3PO
4と160gの脱イオン水からリン酸塩溶液(I)を調製した。14.3gのMn
3O
4と3.8gのCoを溶液(I)に添加した。溶液(I)を60℃で60分間にわたって撹拌した後濾過し、残存する可能性のある残留物をこの溶液から除去した。
さらに、40.4gのNaOHと229gの水から塩基性溶液を調製した。25gのH
3PO
4を100gの水とともに反応容器に入れ、この塩基性溶液を用いて7のpH値に中和し、レシーバー溶液(II)を得た。リン酸Me
2+溶液(I)と塩基性溶液を計量添加すると同時に撹拌し、レシーバー溶液(II)のpH値を常に6.5〜7に維持した。計量添加の終了後、この溶液をさらに5分間にわたって撹拌した。次いで、析出した固形物をヌッチェフィルタを使って吸い取り、脱イオン水で洗浄した。濾過ケーキを空気循環乾燥器中で70℃にて乾燥した。
【0059】
例4
80gの75%H
3PO
4と160gの脱イオン水からリン酸塩溶液(I)を調製した。14.1gのMn
3O
4と4.5gのMnを溶液(I)に添加した。溶液(I)を20℃で90分間にわたって撹拌した後濾過し、残存する可能性のある残留物をこの溶液から除去した。
さらに、17.6gのNaOHと158.7gの水から塩基性溶液を調製した。10gのH
3PO
4を100gの水とともに反応容器に入れ、この塩基性溶液を用いて7のpH値に中和し、レシーバー溶液(II)を得た。リン酸Me
2+溶液(I)と塩基性溶液を、中和したレシーバー溶液(II)に計量添加すると同時に撹拌し、レシーバー溶液(II)のpH値を常に6.5〜7に維持した。計量添加の終了後、この溶液をさらに5分間にわたって撹拌した。次いで、析出した固形物をヌッチェフィルタを使って吸い取り、脱イオン水で洗浄した。濾過ケーキを空気循環乾燥器中で80℃にて乾燥した。
【0060】
例5
80gの75%H
3PO
4と160gの脱イオン水からリン酸塩溶液(I)を調製した。14.3gのMn
3O
4と3.5gのFeを溶液(I)に添加した。溶液(I)を室温で90分間にわたって撹拌した後、20gの水に溶かした17.7gのCoSO
4・6H
2Oを添加した。次いで、得られた溶液を濾過し、残存する可能性のある残留物をこの溶液から除去した。
さらに、40gのNaOHと1000gの水から塩基性溶液を調製した。25gのH
3PO
4を100gの水とともに反応容器に入れ、この塩基性溶液を用いて7のpH値に中和し、レシーバー溶液(II)を得た。リン酸Me
2+溶液(I)と塩基性溶液を、中和したレシーバー溶液(II)に計量添加すると同時に撹拌し、レシーバー溶液(II)のpH値を常に6.5〜7に維持した。計量添加の終了後、この溶液をさらに5分間にわたって撹拌した。次いで、析出した固形物をヌッチェフィルタを使って吸い取り、脱イオン水で洗浄した。濾過ケーキを空気循環乾燥器中で80℃にて乾燥した。
【0061】
例6
80gの75%H
3PO
4と160gの脱イオン水からリン酸塩溶液(I)を調製した。14.3gのMn
3O
4と3.5gのFeを溶液(I)に添加した。溶液(I)を60℃で90分間にわたって撹拌した後、20gの水に溶かした2.6gのMg(CH
3COO)
2・6H
2Oを添加した。次いで、得られた溶液を濾過し、残存する可能性のある残留物をこの溶液から除去した。
さらに、50gのNaOHと450gの水から塩基性溶液を調製した。10gのH
3PO
4を100gの水とともに反応容器に入れ、この塩基性溶液を用いて7のpH値に中和し、レシーバー溶液(II)を得た。リン酸Me
2+溶液(I)と塩基性溶液を、中和したレシーバー溶液(II)に計量添加すると同時に撹拌し、レシーバー溶液(II)のpH値を常に6.5〜7に維持した。計量添加の終了後、この溶液をさらに5分間にわたって撹拌した。次いで、析出した固形物をヌッチェフィルタを使って吸い取り、脱イオン水で洗浄した。濾過ケーキを空気循環乾燥器中で80℃にて乾燥した。
【0062】
例7
80gの75%H
3PO
4と160gの脱イオン水からリン酸塩溶液(I)を調製した。14.3gのMn
3O
4及び2.2gのFeとともに1.5gのCoを溶液(I)に添加した。溶液(I)を室温で90分間にわたって撹拌した後濾過し、残存する可能性のある残留物をこの溶液から除去した。
さらに、40gのNaOHと1000gの脱イオン水から塩基性溶液を調製した。25gのH
3PO
4を100gの水とともに反応容器に入れ、この塩基性溶液を用いて7のpH値に中和し、レシーバー溶液(II)を得た。リン酸Me
2+溶液(I)と塩基性溶液を、中和したレシーバー溶液(II)に計量添加すると同時に撹拌し、レシーバー溶液(II)のpH値を常に6.5〜7に維持した。計量添加の終了後、この溶液をさらに5分間にわたって撹拌した。次いで、析出した固形物をヌッチェフィルタを使って吸い取り、脱イオン水で洗浄した。濾過ケーキを分割し、空気循環乾燥器中でそれぞれ60℃と120℃にて乾燥した。
【0063】
例8
80gの75%H
3PO
4と160gの脱イオン水からリン酸塩溶液(I)を調製した。14.3gのMn
3O
4及び2.2gのFeとともに1.5gのCoを溶液(I)に添加した。溶液(I)を室温で90分間にわたって撹拌した後濾過し、残存する可能性のある残留物をこの溶液から除去した。次いで、20gの水に溶かした2.6gのMg(CH
3COO)
2・6H
2Oをこの溶液に混合した。
さらに、40gのNaOHと1000gの脱イオン水から塩基性溶液を調製した。25gのH
3PO
4を100gの水とともに反応容器に入れ、この塩基性溶液を用いて7のpH値に中和し、レシーバー溶液(II)を得た。リン酸Me
2+溶液(I)と塩基性溶液を、中和したレシーバー溶液(II)に計量添加すると同時に撹拌し、レシーバー溶液(II)のpH値を常に6.5〜7に維持した。計量添加の終了後、この溶液をさらに5分間にわたって撹拌した。次いで、析出した固形物をヌッチェフィルタを使って吸い取り、脱イオン水で洗浄した。濾過ケーキを分割し、各部分を空気循環乾燥器中でそれぞれ60℃と120℃にて乾燥した。
【0064】
例9
1090gの75%H
3PO
4と2380gの脱イオン水からリン酸塩溶液(I)を調製した。209gのMn
3O
4と51gのFeを溶液(I)に添加した。溶液(I)を室温で90分間にわたって撹拌した後、この溶液の100gに、20mLの水に溶かした1.94gのAl
2(SO
4)
3・18H
2Oの溶液を添加し、次いで濾過して、残存する可能性のある残留物をこの溶液から除去した。
さらに、50gのNaOHと450gの水から塩基性溶液を調製した。10gのH
3PO
4を100gの水とともに反応容器に入れ、この塩基性溶液を用いて7のpH値に中和し、レシーバー溶液(II)を得た。リン酸Me
2+溶液(I)と塩基性溶液を、中和したレシーバー溶液(II)に計量添加すると同時に撹拌し、レシーバー溶液(II)のpH値を常に6.5〜7に維持した。計量添加の終了後、この溶液をさらに5分間にわたって撹拌した。次いで、析出した固形物をヌッチェフィルタを使って吸い取り、脱イオン水で洗浄した。濾過ケーキを空気循環乾燥器中で80℃にて乾燥した。
【0065】
例10
1090gの75%H
3PO
4と2380gの脱イオン水からリン酸塩溶液(I)を調製した。209gのMn
3O
4と51gのFeを溶液(I)に添加した。溶液(I)を室温で90分間にわたって撹拌した後、この溶液の100gに、20mLの希塩酸に溶かした0.65gのCuCO
3・Cu(OH)
2・0.5H
2Oの溶液を添加し、次いで濾過して、残存する可能性のある残留物をこの溶液から除去した。
さらに、50gのNaOHと450gの水から塩基性溶液を調製した。10gのH
3PO
4を100gの水とともに反応容器に入れ、この塩基性溶液を用いて7のpH値に中和し、レシーバー溶液(II)を得た。リン酸Me
2+溶液(I)と塩基性溶液を、中和したレシーバー溶液(II)に計量添加すると同時に撹拌し、レシーバー溶液(II)のpH値を常に6.5〜7に維持した。計量添加の終了後、この溶液をさらに5分間にわたって撹拌した。次いで、析出した固形物をヌッチェフィルタを使って吸い取り、脱イオン水で洗浄した。濾過ケーキを空気循環乾燥器中で80℃にて乾燥した。
【0066】
例11
1090gの75%H
3PO
4と2380gの脱イオン水からリン酸塩溶液(I)を調製した。209gのMn
3O
4と51gのFeを溶液(I)に添加した。溶液(I)を室温で90分間にわたって撹拌した後、この溶液の100gに、20mLの水に溶かした1.09gのLaCl
3・7H
2Oの溶液を添加し、次いで濾過して、残存する可能性のある残留物をこの溶液から除去した。
さらに、50gのNaOHと450gの水から塩基性溶液を調製した。10gのH
3PO
4を100gの水とともに反応容器に入れ、この塩基性溶液を用いて7のpH値に中和し、レシーバー溶液(II)を得た。リン酸Me
2+溶液(I)と塩基性溶液を、中和したレシーバー溶液(II)に計量添加すると同時に撹拌し、レシーバー溶液(II)のpH値を常に6.5〜7に維持した。計量添加の終了後、この溶液をさらに5分間にわたって撹拌した。次いで、析出した固形物をヌッチェフィルタを使って吸い取り、脱イオン水で洗浄した。濾過ケーキを空気循環乾燥器中で80℃にて乾燥した。
【0067】
例12
1090gの75%H
3PO
4と2380gの脱イオン水からリン酸塩溶液(I)を調製した。209gのMn
3O
4と51gのFeを溶液(I)に添加した。溶液(I)を室温で90分間にわたって撹拌した後、この溶液の100gに、20mLの水に溶かした1.12gのEuCl
3・7H
2Oの溶液を添加し、次いで濾過して、残存する可能性のある残留物をこの溶液から除去した。
さらに、50gのNaOHと450gの水から塩基性溶液を調製した。10gのH
3PO
4を100gの水とともに反応容器に入れ、この塩基性溶液を用いて7のpH値に中和し、レシーバー溶液(II)を得た。リン酸Me
2+溶液(I)と塩基性溶液を計量添加すると同時に撹拌し、レシーバー溶液(II)のpH値を常に6.5〜7に維持した。計量添加の終了後、この溶液をさらに5分間にわたって撹拌した。次いで、析出した固形物をヌッチェフィルタを使って吸い取り、脱イオン水で洗浄した。濾過ケーキを空気循環乾燥器中で80℃にて乾燥した。
【0068】
例13
1090gの75%H
3PO
4と2380gの脱イオン水からリン酸塩溶液(I)を調製した。209gのMn
3O
4と51gのFeを溶液(I)に添加した。溶液(I)を室温で90分間にわたって撹拌した後、この溶液の100gに、20mLの希塩酸に溶かした0.66gのSnCl
2・2H
2Oの溶液を添加し、次いで濾過して、残存する可能性のある残留物をこの溶液から除去した。
さらに、50gのNaOHと450gの水から塩基性溶液を調製した。10gのH
3PO
4を100gの水とともに反応容器に入れ、この塩基性溶液を用いて7のpH値に中和し、レシーバー溶液(II)を得た。リン酸Me
2+溶液(I)と塩基性溶液を、中和したレシーバー溶液(II)に計量添加すると同時に撹拌し、レシーバー溶液(II)のpH値を常に6.5〜7に維持した。計量添加の終了後、この溶液をさらに5分間にわたって撹拌した。次いで、析出した固形物をヌッチェフィルタを使って吸い取り、脱イオン水で洗浄した。濾過ケーキを空気循環乾燥器中で80℃にて乾燥した。
【0069】
例14
1090gの75%H
3PO
4と2380gの脱イオン水からリン酸塩溶液(I)を調製した。209gのMn
3O
4と51gのFeを溶液(I)に添加した。溶液(I)を室温で90分間にわたって撹拌した後、この溶液の100gに、20mLの希塩酸に溶かした0.95gのZrOCl
2の溶液を添加し、次いで濾過して、残存する可能性のある残留物をこの溶液から除去した。
さらに、50gのNaOHと450gの水から塩基性溶液を調製した。10gのH
3PO
4を100gの水とともに反応容器に入れ、この塩基性溶液を用いて7のpH値に中和し、レシーバー溶液(II)を得た。リン酸Me
2+溶液(I)と塩基性溶液を、中和したレシーバー溶液(II)に計量添加すると同時に撹拌し、レシーバー溶液(II)のpH値を常に6.5〜7に維持した。計量添加の終了後、この溶液をさらに5分間にわたって撹拌した。次いで、析出した固形物をヌッチェフィルタを使って吸い取り、脱イオン水で洗浄した。濾過ケーキを空気循環乾燥器中で80℃にて乾燥した。
【0070】
例15
1090gの75%H
3PO
4と2380gの脱イオン水からリン酸塩溶液(I)を調製した。209gのMn
3O
4と51gのFeを溶液(I)に添加した。溶液(I)を室温で90分間にわたって撹拌した後、この溶液の100gに、20mLの希塩酸に溶かした0.33gのCaCl
2の溶液を添加し、次いで濾過して、残存する可能性のある残留物をこの溶液から除去した。
さらに、50gのNaOHと450gの水から塩基性溶液を調製した。10gのH
3PO
4を100gの水とともに反応容器に入れ、この塩基性溶液を用いて7のpH値に中和し、レシーバー溶液(II)を得た。リン酸Me
2+溶液(I)と塩基性溶液を、中和したレシーバー溶液(II)に計量添加すると同時に撹拌し、レシーバー溶液(II)のpH値を常に6.5〜7に維持した。計量添加の終了後、この溶液をさらに5分間にわたって撹拌した。次いで、析出した固形物をヌッチェフィルタを使って吸い取り、脱イオン水で洗浄した。濾過ケーキを空気循環乾燥器中で80℃にて乾燥した。
【0071】
例16(比較)
80gの75%H
3PO
4と160gの脱イオン水からリン酸塩溶液(I)を調製した。14.1gのFe
3O
4と3.5gのFeを溶液(I)に添加した。溶液(I)を60℃で60分間にわたって撹拌した後、100gの水に溶かした33.1gのNiSO
4・6H
2Oを添加した。得られた溶液を濾過し、残存する可能性のある残留物をこの溶液から除去した。
さらに、50gのNaOHと500gの水から塩基性溶液を調製した。10gのH
3PO
4を100gの水とともに反応容器に入れ、この塩基性溶液を用いて7のpH値に中和し、レシーバー溶液(II)を得た。リン酸Me
2+溶液(I)と塩基性溶液を、中和したレシーバー溶液(II)に計量添加すると同時に撹拌し、レシーバー溶液(II)のpH値を常に6.5〜7に維持した。計量添加の終了後、この溶液をさらに5分間にわたって撹拌した。次いで、析出した固形物をヌッチェフィルタを使って吸い取り、脱イオン水で洗浄した。濾過ケーキを空気循環乾燥器中で100℃にて乾燥した。
【0072】
例17(比較)
80gの75%H
3PO
4と160gの脱イオン水からリン酸塩溶液(I)を調製した。14.1gのFe
3O
4と3.8gのCoを溶液(I)に添加した。溶液(I)を60℃で60分間にわたって撹拌した後濾過し、残存する可能性のある残留物をこの溶液から除去した。
さらに、50gのNaOHと500gの水から塩基性溶液を調製した。10gのH
3PO
4を100gの水とともに反応容器に入れ、この塩基性溶液を用いて7のpH値に中和し、レシーバー溶液(II)を得た。リン酸Me
2+溶液(I)と塩基性溶液を、中和したレシーバー溶液(II)に計量添加すると同時に撹拌し、レシーバー溶液(II)のpH値を常に6.5〜7に維持した。計量添加の終了後、この溶液をさらに5分間にわたって撹拌した。次いで、析出した固形物をヌッチェフィルタを使って吸い取り、脱イオン水で洗浄した。濾過ケーキを空気循環乾燥器中で70℃にて乾燥した。
【0073】
例18(比較)
80gの75%H
3PO
4と160gの脱イオン水からリン酸塩溶液(I)を調製した。14.4gのCo
3O
4と3.8gのCoを溶液(I)に添加した。溶液(I)を室温で60分間にわたって撹拌した後濾過し、残存する可能性のある残留物をこの溶液から除去した。
さらに、41.9gのNaOHと376.8gの水から塩基性溶液を調製した。10gのH
3PO
4を100gの水とともに反応容器に入れ、この塩基性溶液を用いて7のpH値に中和し、レシーバー溶液(II)を得た。リン酸Me
2+溶液(I)と塩基性溶液を、中和したレシーバー溶液(II)に計量添加すると同時に撹拌し、レシーバー溶液(II)のpH値を常に6.5〜7に維持した。計量添加の終了後、この溶液をさらに5分間にわたって撹拌した。次いで、析出した固形物をヌッチェフィルタを使って吸い取り、脱イオン水で洗浄した。濾過ケーキを空気循環乾燥器中で80℃にて乾燥した。
【0074】
例19(比較)
80gの75%H
3PO
4と160gの脱イオン水からリン酸塩溶液(I)を調製した。14.1gのFe
3O
4と3.5gのFeを溶液(I)に添加した。溶液(I)を室温で60分間にわたって撹拌した後濾過し、残存する可能性のある残留物をこの溶液から除去した。
さらに、17.6gのNaOHと158.7gの水から塩基性溶液を調製した。10gのH
3PO
4を100gの水とともに反応容器に入れ、この塩基性溶液を用いて7のpH値に中和し、レシーバー溶液(II)を得た。リン酸Me
2+溶液(I)と塩基性溶液を、中和したレシーバー溶液(II)に計量添加すると同時に撹拌し、レシーバー溶液(II)のpH値を常に6.5〜7に維持した。計量添加の終了後、この溶液をさらに5分間にわたって撹拌した。次いで、析出した固形物をヌッチェフィルタを使って吸い取り、脱イオン水で洗浄した。濾過ケーキを空気循環乾燥器中で80℃にて乾燥した。
【0075】
例20(比較)
80gの75%H
3PO
4と160gの脱イオン水からリン酸塩溶液(I)を調製した。14.4gのCo
3O
4と3.5gのFeを溶液(I)に添加した。溶液(I)を室温で60分間にわたって撹拌した後濾過し、残存する可能性のある残留物をこの溶液から除去した。
さらに、41.9gのNaOHと376.8gの水から塩基性溶液を調製した。10gのH
3PO
4を100gの水とともに反応容器に入れ、この塩基性溶液を用いて7のpH値に中和し、レシーバー溶液(II)を得た。リン酸Me
2+溶液(I)と塩基性溶液を、中和したレシーバー溶液(II)に計量添加すると同時に撹拌し、レシーバー溶液(II)のpH値を常に6.5〜7に維持した。計量添加の終了後、この溶液をさらに5分間にわたって撹拌した。次いで、析出した固形物をヌッチェフィルタを使って吸い取り、脱イオン水で洗浄した。濾過ケーキを空気循環乾燥器中で80℃にて乾燥した。
【0076】
表1は、例1〜20とそれぞれの生成物の分析評価の結果を集約する。
例1〜15は、本発明の方法によればマンガン(Mn)を含有する「Mn
3(PO
4)
2・3H
2O構造型」の単一金属又は複合金属リン酸塩が得られることを示す。得られる生成物中の金属/リン酸塩(PO
4)の比は約3/2である。このため、金属マンガン(Mn)と場合により含まれる金属Fe、Mn、Ni、及びCoは、生成物中に二価の形態で存在する。これらの金属の非常に少量が、別な酸化状態で存在することも想像され、例えば、Feは、高温の乾燥操作において粒子表面が僅かに酸化することがある。こうした二価の状態からの若干の変動は、本発明においては不可避的な不純物として見るべきであり、本発明の保護の範囲からの逸脱を構成しない。ドーピング金属は、それらの安定な又は公知の酸化状態の形態で存在することができる。
【0077】
例16〜20(比較例)は、元素のマンガン(Mn)又はマンガン含有酸化物の化合物を添加しない比較すべき方法であれば、「Mn
3(PO
4)
2・3H
2O構造型」を有しない単一金属又は複合金属リン酸塩が得られることを示す。例16〜20の生成物はいずれも、X線解析において、ビビアナイト結晶構造型Fe
3(PO
4)
2・8H
2O又はその脱水状態に関連付けることができた。
乾燥温度は、結晶体の結合水の含有率に影響を及ぼす。乾燥温度が高くなり乾燥時間が長くなると、それに対応して、結晶体の水の含有率が少なくなる。水の分圧の低下は乾燥を促進する。
【0078】
本発明にしたがう例1〜15の生成物はいずれも、CuKα線のX線粉末回折図において、2θの角度として10.96±0.05、12.78±0.17、14.96±0.13、17.34±0.15、18.98±0.18、21.75±0.21、22.07±0.11、22.97±0.10、25.93±0.25、26.95±0.30、27.56±0.10、29.19±0.12、29.84±0.21、30.27±0.12、34.86±0.21、35.00±0.20、35.33±0.30、35.58±0.10、35.73±0.12、42.79±0.45、43.37±0.45、44.70±0.15、及び44.93±0.20にピークを有するといった、同じ分析X線回折像を有する。複合金属リン酸塩中の種々金属の性質と濃度に依存して、ピーク位置のみが若干の変位を示し、これは、基本セルの結晶格子におけるカチオンサイトの異なるイオン径と各種占有率によって生じる。
【0079】
粉末X線グラフ解析と透過型電子顕微鏡における電子回折解析は、例1〜15の生成物が13.2±0.2、8.6±0.2、及び8.1±0.2Åの軸の長さを持つ斜方晶系の基本セルを有することを示す。
【0080】
上記のピークを有する本発明の生成物について得られるX線粉末回折図、及び特定のパラメータを有する本発明の生成物について求められる基本セルは、特定の範囲内で金属成分の各組成に応じて若干変化するが、これらは従来、関連のデータバンクにおいては、Mn
3(PO
4)
2・3H
2Oの組成の化合物、及び(擬)二成分系、(擬)三成分系、及び(擬)四成分系の変形については知られていない。本発明による生成物については、新規な「Mn
3(PO
4)
2・3H
2O構造型」が確認された。この構造は、本発明による生成物が金属としてMnのみを含む場合(例3参照)だけでなく、さらに別な金属を含む場合にも観察される。
【0081】
ICDD(回折データの国際センター)のデータバンクは、Mn
3(PO
4)
2・3H
2O型の化合物について、003−0426の番号でPDF(粉末回折ファイル)のエントリーを有するが、その蓄積データと「Mn
3(PO
4)
2・3H
2O構造型」の本発明による生成物について実験的に求めた値とは、記載の反射の位置、数、及び強度について一致しない。また、ICDDデータバンクに記載の化合物については、結晶構造をより十分に記述する結晶学的データが蓄積されていない。したがって、本明細書で特定する「Mn
3(PO
4)
2・3H
2O構造型」の本発明による生成物は、これまでには記載がなされていなかった。
【0082】
本発明による生成物は、主として、一次結晶子の小平板状の形態を含んでなり、その小平板状の厚さは、走査型電子顕微鏡において、約10〜50nmの大きさの範囲に測定することができる。
【0083】
得られる生成物の小平板状の形態は、原理的に、結晶子の緻密な充填を可能にし、即ち、小平板は丸い球形粒子の場合よりも小さい空隙体積で積み重ねることができる。本材料の集合体又は凝集体は、層状に構成され、剪断力の作用下の一般的な方法により一次粒子の分散系に容易に変えることができる。
【0084】
本発明による生成物の結晶性小平板の小さい厚さは、活性カソード材料を得るためのリン酸塩のリチウム化において、高い反応速度を保証するが、この理由は、リチウムイオンが反応において短い拡散経路を担う必要があるに過ぎないためである。このことは、最終的なカソード材料の改良された導電性にも結び付き、この理由は、Liイオンの拡散の距離と時間を従来の材料に比較して顕著に低下させ得るためである。
【0085】
【表1】