(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記再充電式電源へ流れる電流を測定し、当該再充電式電源の電圧を測定し、前記電流を前記電圧で乗算することによって、前記再充電式電源へ送達される前記パワーを計算する段階を更に備えている、請求項1に記載の方法。
引き続き前記充電モジュールを制御して前記再充電式電源を前記高パワーレベルで充電させる段階は、前記充電モジュールを制御して前記再充電式電源を大凡0.5Cより大きい充電レートで充電させる段階を備えている、請求項1に記載の方法。
引き続き前記充電モジュールを制御して前記再充電式電源を前記高パワーレベルで充電させる段階は、前記充電モジュールを制御して前記再充電式電源を大凡5.0Cより大きい充電レートで充電させる段階を備えている、請求項1に記載の方法。
引き続き前記充電モジュールを制御して前記再充電式電源を前記高パワーレベルで充電させる段階は、前記充電モジュールを制御して前記再充電式電源を当該再充電式電源の満充電電圧より大きい定電圧で充電する段階を備えている、請求項1に記載の方法。
前記プロセッサは、前記再充電式電源へ流れる測定電流を当該再充電式電源の測定電圧で乗算して前記再充電式電源へ送達される前記パワーを計算するように構成されている、請求項19に記載のシステム。
前記システムは、各々が異なった時間の継続期間を備える複数のブースト期間を記憶するように構成されているメモリを更に備えており、前記プロセッサは前記推定熱損失に対応している前記複数のブースト期間のうちの1つを選択するように構成されている、請求項16に記載のシステム。
前記プロセッサは、前記充電モジュールを制御して前記再充電式電源を大凡0.5Cより大きい充電レートで充電させるように構成されている、請求項16に記載のシステム。
前記プロセッサは、前記充電モジュールを制御して前記再充電式電源を大凡5.0Cより大きい充電レートで充電させるように構成されている、請求項16に記載のシステム。
前記システムは前記植え込み型医療装置の充電モジュールを更に備えており、前記充電モジュールは、前記再充電式電源を当該再充電式電源の満充電電圧より大きい定電圧で充電するように構成されている、請求項16に記載のシステム。
前記コンピュータ可読記憶媒体は、前記少なくとも1つのプロセッサに、前記再充電式電源へ流れる電流を測定し、前記再充電式電源の電圧を測定し、前記電流を前記電圧で乗算することによって、前記再充電式電源へ送達される前記パワーを計算するように仕向ける命令を更に備えており、前記少なくとも1つのプロセッサに前記推定熱損失を求めるように仕向ける命令は、前記少なくとも1つのプロセッサに、
外部充電装置の一次コイルへ送達されるパワーを計算するように、
前記一次コイルで失われるパワーを計算するように、及び、
前記一次コイルで失われる前記パワーと前記再充電式電源へ送達される前記パワーを前記一次コイルへ送達される前記パワーから減算するように、仕向ける命令を備えている、請求項31に記載のコンピュータ可読記憶媒体。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示は、概括的には、植え込み型再充電式電源を充電する場合の期間(例えば、高パワーレベルのブースト期間)を選択するための装置、システム、及び技法に向けられている。植え込み型医療装置(IMD)は、患者体内に植え込まれ、患者のパラメータを監視するため及び/又は患者へ療法を送達するために使用されることがある。IMDの作動寿命を延ばすために、IMDは再充電式電源(例えば、1つ又はそれ以上のコンデンサ又はバッテリ)を含んでいることがある。再充電式電源が再充電されているとき、IMDへ伝送されるパワーが熱を発生させIMDの温度を上昇させないとも限らない。充電レートを上げようと充電のパワーレベルを上げてゆくと、IMDの温度は更に上昇する。場合によっては、より高速な充電レートに因る上昇したIMD温度には、不快やIMDに隣接する組織及び/又はIMDの周辺の組織への損傷を引き起こす可能性がある。上昇したIMD温度がIMDに隣接する患者組織を損傷させる潜在性を低減するためには、充電セッションが継続期間を所定の継続期間へ制限されるようにしてもよいし、及び/又は再充電式電源を再充電するのに引き下げられたパワーレベルが使用されるようにしてもよい。但し、この手法では、再充電継続期間が増加してしまうかもしれないし、及び/又は再充電式電源を一杯まで充電できなくなるかもしれない。
【0013】
ここに開示されている様に、再充電中のIMDからの推定熱損失が求められて、再充電式電源を患者に潜在的に危険なIMD温度を甘受させることなく高いレートで充電するためのブースト期間が選択されるようになっている。ブースト期間は、高パワーレベルでの初期充電期間とすることができる。言い換えれば、ブースト期間は、再充電式電源を一杯まで再充電するのに必要とされる時間全体を縮める高速充電の期間としてもよい。ブースト期間の高パワーレベルは、IMDを充電するのに使用され得る低パワーレベル(例えば、非ゼロパワーレベル)よりも相対的に高いとしてもよい。低パワーレベルは、細流充電又は非ブースト充電状況で使用することのできる平均的なパワーレベルを提供するのに使用されるものである。高パワーレベルは、低パワーレベルの電流、電圧、周波数、又はパルス幅より高い電流、電圧、周波数、又はパルス幅のうちの1つ又はそれ以上によって定義することができる。
【0014】
加えて、高パワーレベルは、再充電式電源への目標電流に到達するために変えられてもよい。例えば、ブースト期間中のパワーレベルは、再充電式電源への電流が目標化された値に達していないときには充電装置の最大限界に設定されるようになっていてもよい。別の例では、充電装置のパワーレベルは、再充電式電源へ送達される電流が目標電流値に達しているなら充電装置の限界より下に設定される。ブースト期間は、更に、IMD温度を周辺組織を損傷させかねないレベルまで上昇させることなく長いブースト期間を提供するように、IMDからの推定熱損失に基づくものとされている。言い換えれば、IMDから失われる熱がより少ない(例えば、患者の組織へ伝達される熱が少ない)ときには、より長いブースト期間を選択できるようになる。ブースト期間の高パワーレベルは、幾つかの例では、充電装置のハードウェア制限及び/又は再充電式電源へ送達される電流の目標値によって制限されている。
【0015】
システムは、充電セッションの初期の期間又は始まり時にIMDの熱損失を推定することができる。言い換えれば、ブースト期間は、充電が開始された後に比較的速やかに行われる測定及び/又は計算を用いて推定される熱損失に基づいて選択されることになる。熱損失推定は、再充電式電源へのエネルギー移動が患者間でばらつき、また同じ患者でも充電セッション間でばらつくことがあるとの理由で遂行されている。次いで初期熱損失を使用して、当該特定の充電セッションにとって適切なブースト期間が選択される。この方式では、システムは、充電セッションの監視を続けなくても個別の充電セッションの条件に合わせて仕立てられたブースト期間を提供することができる。初期推定熱損失に基づいてブースト期間を選択するというこの手法は、幾つかの例では、完全閉ループシステムにはなっていない。
【0016】
システム(例えば、外部充電装置のプロセッサ及び/又はIMDのプロセッサ)は、1つ又はそれ以上の測定されたパラメータに基づいて推定熱損失を求めることができる。例えば、システムは、外部充電装置の一次コイルへ送達されるパワーを計算し、一次コイルで失われるパワーの量を計算し、次いで一次コイルで失われるパワーの量と再充電式電源へ送達されるパワーを一次コイルへ送達されるパワーから減算することによって、熱損失を推定するようになっていてもよい。これらの計算には、充電システムの各種構成要素間の電流及び電圧の測定値が含まれていよう。
【0017】
システムは、推定熱損失を使って、再充電式電源を高パワーレベルで充電するための時間の継続期間を有する適切なブースト期間を選択することができる。ブースト期間は、例えば、ルックアップ表に保有されている複数のブースト期間であって各々が異なった推定熱損失に対応しているブースト期間から選択されてもよい。システムは、而して、選択されたブースト期間が満了するまで、IMDの再充電式電源を高パワーレベルで充電することができる。ブースト期間が満了した後、充電は、1つ又はそれ以上のより低いパワーレベルで、電源が一杯に充電されるまで、又は患者へ送達される累積加熱量(cumulative thermal dose)が閾値を超えるまで、又は患者が充電を終結させるまで、続行される。以下に更に論じられている様に、累積加熱量は、IMD14に隣接する組織への総計的な温度曝露を定量化又は推定するのに使用される尺度とすることができる。幾つかの例では、外部充電装置は、患者に、現在のパワーレベル、いつブースト期間が起こっているかということ、又はIMDの再充電式電源を充電することに関係のある他のその様な情報、を通知するようになっている。
【0018】
他の例では、システムは、充電を起こすための利用可能な時間中の再充電式電源の充電レベルを高めるべくパワーレベルと適切なブースト期間を選択している。システムは、ブースト期間を始める前に、2つ又はそれ以上の試験充電を提供するようになっていてもよい。各試験充電中に、システムはパワーレベルを選択し、試験充電中の推定熱損失を求めることができる。システムは、次いで、推定熱損失に基づいて、各試験充電にとって適切なブースト期間を選択することができる。試験されたパワーレベルの各々及びそれぞれのブースト期間を使った再充電式電源の予測充電レベルの計算に基づき、システムは再充電式電源への最も高い充電レベルを提供するはずのパワーレベル及びブースト期間を選択することができる。この方式では、システムは、患者が再充電式電源を充電するのにより長い時間の期間を持ち合せている場合には、より高い充電レベルを実現するべく、より低いパワーレベル及びより長いブースト期間を選択することができる。
【0019】
図1は、例としての、植え込み型医療装置(IMD)14と再充電式電源18を充電する外部充電装置20を含んでいるシステム10を描いている概念図である。この開示の中で説明されている技法は、概して、患者モニターや電気刺激器又は薬物送達装置の様な医療装置を含む各種医療装置に適用できるが、例示を目的として、その様な技法の植え込み型神経刺激器への適用を説明してゆく。より具体的には、本開示は、脊髄刺激療法での使用のための植え込み型神経刺激システムに言及しているが、他の型式の医療装置に対しての制限はない。
【0020】
図1に示されている様に、システム10は、普通は人間の患者である患者12と関連付けて示されているIMD14及び外部充電装置20を含んでいる。
図1の例では、IMD14は、例えば、慢性疼痛又は他の症状の緩和のための神経刺激療法を患者12へ送達する植え込み型電気刺激器である。概して、IMD14は、患者12体内に数週間、数か月、又は数年間にも及んで植え込まれたままの長期型電気刺激器とすることができる。
図1の例では、IMD14及びリード16は、脊髄刺激療法を送達することに向けられている。他の例では、IMD14は、更に、慢性療法にとっての電気刺激の有効性を検査又は評価するのに使用される一時的又は試行的刺激器のこともある。IMD14は、皮下組織嚢の中、1層又はそれ以上の筋肉層内、又は他の内在場所に植え込むことができる。IMD14は再充電式電源18を含んでおり、IMD14はリード16へ連結されている。
【0021】
電気刺激エネルギーは、例えば定電流又は定電圧ベースのパルスとされるものであって、IMD14から患者12体内の1つ又はそれ以上の標的場所へリード16の1つ又はそれ以上の電極(図示せず)を介して送達される。IMD14による刺激エネルギーの送達を制御しているプログラムのパラメータは、どの電極が刺激プログラムに従った刺激の送達に選択されているかを識別する情報、選択された電極の極性、即ちプログラムのための電極構成、及び電極によって送達される刺激の電圧又は電流の振幅、パルス繰返し数、パルス形状、及びパルス幅、を含んでいてもよい。電気刺激は、例えば刺激パルス又は連続波形の形態で送達されていてもよい。
【0022】
図1の例では、リード16は患者12体内に配置されており、例えば患者12体内に植え込まれている。リード16は、患者12の組織を貫いて脊髄22沿いからIMD14が配置されている皮下組織嚢又は他の内存場所へ走っている。リード16は、単一のリードであってもよいが、リード16の植え込み又は位置付けに助力するリード延伸部又は他の区分を含んでいてもよい。加えて、リード16の近位端は、IMD14のヘッダーへ電気的に連結するコネクタ(図示せず)を含んでいてもよい。
図1には1つのリード16しか示されていないが、システム10は、各々がIMD14へ連結されていて同様又は異なった標的組織部位へ方向付けられている2つ又はそれ以上のリードを含んでいてもよい。例えば、複数のリードが脊髄22に沿って配置されていてもよいし、又はそれらリードは脊髄22及び/又は患者12体内の他の場所へ方向付けられていてもよい。
【0023】
リード16は、標的組織、例えば脊髄刺激(SCS)療法の場合には脊髄22、に隣接して置かれる1つ又はそれ以上の電極を担持していよう。1つ又はそれ以上の電極は、リード16の遠位先端に、及び/又は他の場所、例えばリード16に沿った中間点に、配置されていてもよい。リード16の電極は、IMD14内の電気刺激生成器によって生成される電気刺激を患者12の組織へ伝達する。電極は、パドルリード上の電極パッド、リードの本体を取り囲む円形(例えばリング)電極、形状整合性のある電極、カフ電極、分割電極、又は療法に適する単極、双極、又は多極電極構成を形成することのできる何れかの他の型式の電極、とすることができる。概して、例示を目的に、リード16の遠位端の異なった軸方向位置に配列されているリング電極を説明してゆく。
【0024】
代わりの例では、リード16は、例えば仙骨神経刺激(SNS)で患者12の1つ又はそれ以上の仙骨神経を刺激するために、IMD14によって生成される刺激エネルギーを送達するように構成されている。SNSは、疼痛、尿失禁、便失禁、性的機能障害、又は1つ又はそれ以上の仙骨神経を標的化することによって治療可能な他の疾患の様な、幾つもある骨盤底疾患に苦しむ患者を治療するのに使用される。リード16及びIMD14は、電気刺激又は薬物療法の他の型式を提供するように構成されていてもよい(例えば、リード16をカテーテルとして構成)。例えば、リード16は、深部脳刺激(DBS)、末梢神経刺激(PNS)、又は他の深部組織型又は表層型の電気刺激を提供するように構成されていてもよい。他の例では、リード16は、IMD14に患者12の1つ又はそれ以上のパラメータを監視させるように構成されている1つ又はそれ以上のセンサを提供している。1つ又はそれ以上のセンサは、リード16による療法送達に追加して提供されていてもよいし、又はリード16による療法送達に代えて提供されていてもよい。
【0025】
IMD14は、リード16によって担持されている電極の選択された組合せを介して、電気刺激療法を患者12へ送達する。電気刺激療法にとっての標的組織は、電気刺激パルス又は波形の形態をしている電気刺激エネルギーによって影響の及ぶ何れの組織であってもよい。幾つかの例では、標的組織は、神経、平滑筋、及び骨格筋を含んでいる。
図1に描かれている例では、リード16を介して送達される電気刺激にとっての標的組織は、脊髄22に近接する組織(例えば、背柱の1つ又はそれ以上の標的場所又は脊髄22から枝分かれしている1つ又はそれ以上の背根)である。リード16は、胸部領域、頸部領域、又は腰部領域の様な、何れかの適した領域を介して脊髄22の中へ導入されてもよい。背柱、背根、及び/又は末梢神経の刺激は、例えば、疼痛信号が患者の脊髄22を通って脳へ進んでゆくのを阻止することができよう。患者12は、疼痛信号の中断を疼痛の軽減として知覚し、従って有効性のある療法が得られる。他の疾患の治療では、リード16は患者12の何処か外部の場所に導入されることもある。この方式で他の例では何処か外部の皮膚面場所に皮膚開口部18が設けられることもある。
【0026】
リード16は、概して電気刺激信号を送達又は送信すると説明されているが、リード16は、追加的又は代替的に、監視のために電気信号を患者12からIMD14へ送信するようになっていてもよい。例えば、IMD14は、検出された神経インパルスを、患者12の病態を診断するため又は送達される刺激療法を調節するために利用することができる。リード16は而して患者12への電気信号及び患者12からの電気信号を送信している。
【0027】
臨床医学者又は患者12の様なユーザーは、外部プログラマのユーザーインターフェース(図示せず)と対話してIMD14をプログラムすることができる。IMD14のプログラミングとは、IMD14の動作を制御するためのコマンド、プログラム、又は他の情報の生成及び伝送を総称していう。例えば、外部プログラマは、プログラム、パラメータ調節、プログラム選択、グループ選択、又はIMD14の動作を制御する他の情報を、例えば無線遠隔測定部又は有線接続によって送信することができる。
【0028】
場合によっては、外部プログラマは、それが主として医師又は臨床医学者による使用を意図したものであれば、医師又は臨床医学者プログラマとして特徴付けられていてもよい。他の場合では、外部プログラマは、それが主として患者による使用を意図したものであれば、患者プログラマとして特徴付けられていてもよい。患者プログラマは、概して、患者12へアクセス可能であり、多くの場合、患者の日常行動の間中患者に帯同する携帯式装置とされている。一般に、医師又は臨床医学者プログラマは、刺激器14による使用についての臨床医学者によるプログラムの選択及び生成を支援することができるのに対して、患者プログラマは、普通の使用時に患者によるその様なプログラムの調節及び選択を支援するものである。他の例では、外部充電装置20は、外部プログラマに含まれているか又は外部プログラマの一部とされている。この様に、ユーザーは、1つの装置又は複数の装置を使用して、IMD14をプログラムすること及び充電することができる。
【0029】
IMD14は、IMD14の構成要素(例えば、
図2に示されている構成要素)を患者12体内に納めるのに十分な何れかのポリマー、金属、又は複合材料で構築することができる。この例では、IMD14は、チタン又はステンレス鋼又はシリコンやポリウレタンの様なポリマー材料、の様な生体適合性のハウジングを用いて構築されていて、患者体内12の、骨盤、腹部、胸筋、腋窩、頭蓋底、臀部、又は他の場所に近い部位に外科的に植え込まれるものである。IMD14のハウジングは、再充電式電源18の様な構成要素のための密閉シールを提供するように構成されていよう。加えて、IMD14のハウジングには、再充電式電源18を充電するエネルギーを受け取るのを容易にする材料を選択することができる。
【0030】
ここに説明されている様に、再充電式電源18はIMD14内に含まれているものとされる。但し、他の例では、再充電式電源18は、IMD14のハウジングの外部に設置されていて、患者12の体液から別途保護され、IMD14の電気的構成要素へ電気的に連結されていることもあり得る。IMD14及び再充電式電源18のこの構成型式は、植え込み型装置にとっての解剖学的空間が極小である場合の植え込み場所融通性を提供することができる。何れの事例でも、再充電式電源18は、IMD14の1つ又はそれ以上の構成要素に作動電力を提供することができる。
【0031】
再充電式電源18は、1つ又はそれ以上のコンデンサ、バッテリ、又は構成要素(例えば、化学的又は電気的エネルギー貯蔵装置)を含むことができる。例としてのバッテリには、リチウムベースのバッテリ、ニッケル金属水素バッテリ、又は他の材料が含まれる。再充電式電源18は、更に、再充電式又は補充式とすることができる。言い換えれば、再充電式電源18は、エネルギーが使い果たされた後、補充されるか、詰め替えられるか、又はそれ以外のやり方でエネルギー貯蔵量を増加させる能力のあるもの、とすることができる。再充電式電源18は、IMD14の再充電式電源18の寿命に亘って数え切れないほど多くの放電及び充電サイクル(例えば、何百回又は何千回にも及ぶサイクル)に曝されることになる。再充電式電源18は、完全に使い果たされてから再充電されてもよいし、又は途中まで使い果たされたときに再充電されてもよい。
【0032】
例えば、再充電式電源18は、比較的高い充電レートで充電されるように構成されている及び/又はバッテリへの永久的損傷を生じさせることなく非常に低い電圧(例えば、大凡ゼロボルト)まで放電されるように構成されているリチウムイオンバッテリであってもよい。1つの例では、その様な再充電式バッテリは、チタンベースの材料をバッテリの負電極(例えば、アノード)の負活物質の少なくとも一部として使用して構築されている。この方式では、再充電式電源18は、各々がチタン酸リチウムを含んでいる1つ又はそれ以上の負電極を含んでいる。チタンベースの材料には純チタン又はチタン合金が含まれる。例えば、チタン合金は、負電極の負活物質の一部として使用されるLi
4Ti
5O
12の様なチタン酸リチウム材料とすることができる。かくして、負電極はチタン酸リチウムを備えている。チタン酸リチウム材料を、銅又は黒鉛の様な炭素質材料を含有する負活物質の代わりに使用すれば、より高い充電レートを実現し易くなり、及び/又はバッテリへの低電圧損傷から保護することができる。他の例としての負活物質には、ニッケル、ニッケル合金、及びステンレス鋼が挙げられる。正電極の正活物質には、例えば、リチウム及びコバルト及び/又はニッケルを含めることができる。1つの例では、正活物質はリチウムコバルト酸化物を含んでいる。
【0033】
チタンベースの負活物質の一例としてのチタン酸リチウム材料は、再充電式電源18が望ましい充電特性を実現するのを可能にする。1つの例では、再充電式電源18は、10Cまでの又は10Cより大きい高充電レート(即ち、満充電を1/10時間又は6分で達成)を実現するように構成されている。再充電式電源18の充電レートは、IMD14が再充電セッション中に生み出すことのできる電流によって制限されよう。別の例では、再充電式電源18は、大凡ゼロボルトという非常に低い電圧まで完全に放電させることができる。再充電式電源18がこの完全放電電圧に達した後、チタン酸リチウム材料無しでは起こり得るバッテリへの何らの性能劣化も無しに、再充電式電源18は再び充電される。その上、再充電式電源18の高充電レートは、完全に放電させるか又は使い果たされた電源18を再充電するや即座に実現させることができる。加えて、再充電式電源18の負活物質として使用されるチタン酸リチウム材料は、再充電式電源18を定電圧モードで充電できるようにする。言い換えれば、充電回路機構及びバッテリケミストリが許容する限りの高速で充電電流が再充電式電源18に進入するようにIMD14は再充電式電源18を横断して電圧源を印加することができる。
【0034】
充電装置20は、再充電式電源18及びIMD14が患者12の体内に植え込まれている場合、それらを再充電するのに使用することができる。充電装置20は、手持ち式装置、携帯式装置、又は患者12にとって外部の固定式充電システムとすることができる。何れの場合も、充電装置20は、再充電式電源18を患者12の組織を通して充電するのに必要な構成要素を含んでいよう。幾つかの例では、充電装置20は再充電式電源18の充電を遂行するだけである。他の例では、充電装置20は外部プログラマであるか又は追加の機能を遂行するように構成されている他の装置である。例えば、充電装置20は、外部プログラマとして具現化されている場合、再充電式電源18を充電することに加えてプログラミングコマンドをIMD14へ送信するようになっていよう。別の例では、充電装置20はIMD14と通信して再充電式電源18の充電に関係のある情報を送信及び/又は受信するようになっていてもよい。例えば、IMD14は、IMD14及び/又は再充電式電源18の温度情報、充電中に受け取られたパワー、再充電式電源18の充電レベル、使用中の電荷減耗レート、又はIMD14及び再充電式電源18のパワー消費及び再充電に関係のある何れかの他の情報、を送信することができよう。
【0035】
充電装置20とIMD14は、IMD14が患者14体内に植え込まれている場合、IMD14の再充電式電源18を再充電することのできる何れかの無線パワー移動技法を利用することができる。1つの例では、システム10は、充電装置20のコイルと再充電式電源18へ連結されているIMD14のコイルの間の誘導結合を利用している。誘導結合では、充電装置20は、充電装置20の一次コイルがIMD14の二次コイルと整列するように、植え込まれているIMD14近くに置かれ、即ちIMD14の二次コイルの上方に置かれる。充電装置20は、すると、再充電式電源18を充電するための選択されているパワーレベルに基づいて、一次コイル内に電流を生成する。以下に更に説明されている様に、パワーレベルは、IMD14の温度及び/又は再充電式電源18の充電レートを制御又は制限するように選択されることになっている。一次コイルと二次コイルが整列しているとき、一次コイルの電流がIMD14内の二次コイルに電流を磁気誘導する。二次コイルは再充電式電源18と関連付けられていて再充電式電源18と電気的に連結されているので、誘導された電流は再充電式電源18の電圧又は充電レベルを増加させるのに使用されることになる。ここには概して誘導結合が説明されているが、再充電式電源18を充電するのに何れの型式の無線エネルギー移動が使用されてもよい。
【0036】
再充電式電源18を充電するエネルギー移動プロセス中に、エネルギーの幾らかは再充電式電源18及び/又はIMD14の他の構成要素で熱へ変換されることになろう。この熱は充電時IMD14内熱損失と呼称されている。言い換えれば、熱損失は、再充電式電源18を充電する電流へ転換されたのではなく、熱即ちコイルによってもたらされる抵抗性負荷中に熱の形態で散逸される電流へ転換されたエネルギーとすることができる。再充電式電源18をより高いレートで充電するように増加させたエネルギーレベル(例えば、より高いパワーレベル)が使用されると、IMD14の温度も上昇する。IMD14のハウジングの温度がIMD14のハウジングに隣接する組織を熱傷又は壊死させるに足る温度を実現することはないかもしれないが、高温は望ましくはなく時間経過につれ不快を来す。従って、充電装置20は、パワーレベル及び/又は或るパワーレベルが再充電式電源18を充電するのに使用される継続期間を制御して、再充電式電源18を充電することによって引き起こされないとも限らないIMD14の何らかの望ましからざる温度を低減又は最小限にすることができる。幾つかの例では、IMD14の温度及び/又はIMD14のハウジングに隣接する組織の温度を監視することが同様に充電プロセス中の患者の不快を最小限にする。
【0037】
本開示は、概括的には、充電プロセス中にIMD14に生じる熱を推定熱損失(例えば、充電装置20からの充電エネルギーであってIMD14での充電電流ではなくIMD14で熱に変換されたエネルギー)として説明されている。このIMD熱の一部又は全部が患者の隣接組織へ移動する可能性があることから、この推定熱損失を使用してブースト期間の継続期間が求められている。また一方で、充電中のこの推定熱損失は、代わりに、IMD14内推定発生熱又は推定誘導熱を有しているとも記述できる。言い換えれば、推定熱損失と推定発生熱は、充電中のIMD14での同じ加熱状態を表現していることになる。而して、ブースト期間の継続期間は、充電中の推定熱損失又は推定発生熱の何れかに基づいて選択される、と記述することができる。何れにせよ、充電装置20、IMD14、又はそれらの組合せは、充電プロセス中のIMD14での熱(例えば、推定熱損失又は推定発生熱)に基づいて再充電式電源18の充電を制御することができる。
【0038】
幾つかの例では、充電装置20及び/又はIMD14は、再充電式電源18の充電中の患者組織温度を上昇させ得る熱損失又は発熱を推定するときに、追加の熱源を要因に入れることができる。これらの追加の熱源には、充電装置20(例えば、一次コイル又は他の構成要素の温度上昇が患者12の皮膚に当接して置かれている充電装置20のハウジングの温度を上昇させる)、又はIMD14内の他の構成要素(例えば、処理回路機構、遠隔測定モジュール、療法モジュール、又は何れかの他の構成要素が、IMD14の温度を上昇させることもある)を含めることができる。これらの追加の熱源からの熱は、それぞれの熱源内の電流を検出又は計算することによって、及び/又は1つ又はそれ以上の温度センサを介して温度を感知することによって、推定することができる。この様に、充電装置20又はIMD14は、ブースト期間を、充電プロセスによって直接引き起こされる場合もあればそうでない場合もある幾つかの要因を踏まえたIMD14内又はシステム10全体(例えば、充電装置20及びIMD14)内の推定熱損失又は発生熱に基づいて選択するように構成されていてもよい。
【0039】
1つの例では、充電装置20、IMD14、又はそれらの組合せは、再充電式電源18からの熱損失を推定し、当該推定熱損失に従って、高パワーレベルで充電するためのブースト期間を選択している。この方式では、ブースト期間は、隣接組織を損傷させかねないIMD温度高温化の潜在性を制限しつつも再充電式電源18の高速充電のための時間量を増加させるように選択される。充電装置20のプロセッサは、初期には、充電モジュール(例えば、充電装置20の充電モジュール)を制御してIMD14の再充電式電源18を高パワーレベルで充電することを始めさせる。次いで、プロセッサ(例えば、充電装置20又はIMD14のプロセッサ)は、充電モジュールが充電を始めたときの最初に再充電式電源18へ送達されるパワーに基づいて推定熱損失を求める。次いで、プロセッサは、充電セッションの残りについて、推定熱損失に基づいてブースト期間を選択することができる。ここに説明されている様に、ブースト期間は、再充電式電源18が高パワーレベルで充電される時間の継続期間を定義している。
【0040】
高パワーレベルは、再充電式電源18を充電するのに使用され得る低パワーレベルよりも相対的に高いとされている。高パワーレベルと低パワーレベルはどちらも非ゼロパワーレベルとすることができる。高パワーレベルは、更に、1つ又はそれ以上のパラメータ、例えば電圧、電流、及び周波数、によって定義することができる。高パワーレベルは、低パワーレベルの電圧よりも高い電圧、低パワーレベルの電流よりも高い電流、及び低パワーレベルの周波数よりも高い周波数、のうちの1つ又はそれ以上を有するものとすることができる。低パワーレベルは、非ブースト条件又は細流充電条件で使用されるパワーレベルとしてもよい。概して、高パワーレベルはIMD14の温度を充電コイル同士が同様に整列しているときの低パワーレベル時よりも高いレートで上昇させるであろう。高パワーレベルは、概して、ブースト期間中は一定であってもよい。但し、システムが一定したパワーレベルに設定されている場合でさえ、高パワーレベルは作動上のばらつきのせいで僅かに変動することがある。
【0041】
システム10の1つ又はそれ以上の構成要素(例えば、充電装置20のプロセッサ)が再充電式電源18を充電中の幾つかの時点におけるIMD14からの熱損失を推定するようになっていてもよい。例えば、充電装置20は充電の始まり時又は充電の初期期間内の熱損失を推定するようになっていてもよい。熱損失は、而して、充電を始めた直後(例えば、充電装置20によって測定が行われ熱損失が計算され得る限り速やかに)又は所定の時間的期間内に推定されることになる。所定の時間的期間は、充電セッションの開始から大凡0.5秒乃至30秒の間とされていてもよい。何れの例でも、選択されたブースト期間が患者12への正確な熱損失を提供するためには、再充電式電源18の充電を開始した後、速やかに熱損失を推定するのが望ましいであろう。言い換えれば、ブースト期間開始前の充電が周辺組織を所望の限界を超えて加熱しないとも限らない。選択されるブースト期間は、ブースト期間開始前の充電に因る追加の熱損失を勘案していない。
【0042】
システム10は、充電セッションの1つ又はそれ以上のパラメータを測定することによって推定熱損失を求めるようになっていてもよい。例えば、システム10は、充電セッション開始時の再充電式電源18へ最初に送達されるパワーを計算することができる。再充電式電源18へ送達されるパワーを計算する段階は、再充電式電源18へ流れる電流を測定する段階と、再充電式電源18の電圧を測定する段階と、測定された電流を測定された電圧で乗算する段階と、を含んでいてもよい。1つ又はそれ以上のプロセッサは、これらの計算を遂行するように構成されていてもよい。充電モジュール又は他の回路が測定を遂行するように構成されていてもよい。測定は、IMD14の1つ又はそれ以上の回路によって起こるようになっていてもよい。他の例では、これらの測定に関係のある情報が、測定を完遂するのに必要な処理及び更なる計算のために充電装置20へ送信されている。測定された電流及び電圧は、充電装置20によって使用されるパワーレベル、充電装置20の一次コイルによって生成される磁界、一次コイルと再充電式電源18と関連付けられている二次コイルの間の整列、一次コイルと二次コイルの間の距離、二次コイルの配置向き、及び他のハードウェア特性の様な、幾つかの要因に依存していよう。この様に、充電セッションの測定されるパラメータ(例えば、再充電式電源18と関連付けられる電流及び電圧)は、システム10の構成要素間、異なった患者間、及び異なった充電セッション間で相違することもある。必然的に、システム10によって推定される熱損失は、計算される度に変わっているかもしれない。患者12は、而して、特定の充電セッションのブースト期間に対する特注仕様化から恩恵を享受できる。
【0043】
システム10は、推定熱損失を求めるのに、再充電式電源18へ送達されるパワーに加えて他の計算を行ってもよい。例えば、システム10のプロセッサが、外部充電装置20の一次コイルへ送達されるパワーを計算し、充電中に一次コイルで失われるパワーを計算するようになっていてもよい。次いで、システム10は、一次コイルで失われたパワーと再充電式電源18へ送達されるパワーを一次コイルへ送達されるパワーから減算することによって熱損失を推定することができる。幾つかの例では、システム10での他の熱損失が推定熱損失に含まれていてもよい。例えば、システム10は、IMD14の1つ又はそれ以上の回路で失われるパワーを求め、更にこの回路パワー損失を一次コイルへ送達されるパワーから減算してもよい。ブースト期間の選択には恐らく必須でないにせよ計算に含まれる熱損失の数は多いほど熱損失推定の精度は上がる。
【0044】
充電装置20の一次コイルへ送達されるパワーは、一次コイルへ送達される電流を、一次コイルへ送達される電圧及び電流波形と電圧波形の間の位相角度のコサインで乗算することによって計算することができる。充電装置20は、これらの電流及び電圧を測定する1つ又はそれ以上の回路(例えば、充電モジュール)を備えて構成されていてもよい。幾つかの例では、充電装置20の回路機構は、電流及び電圧が同位相になる(例えば、位相角度がゼロであり、位相角度のコサインが1に等しい)ように調整されている。一次コイルで失われるパワーは、一次コイルの既知の抵抗を一次コイルの電流の二乗で乗算することによって計算することができる。加えて、IMD14の回路機構で失われるパワーは、1つ又はそれ以上の電圧及び/又は電流の測定値に基づいて計算されるか又はIMD14の既知の設計態様に基づいて事前に求められメモリ内に記憶されているかのどちらであってもよい。これらの計算は一例にすぎず、システム10内の様々なパワー値を求めるのに、測定された電気パラメータ又は既知の電気パラメータを用いる他の計算が使用されてもよい。
【0045】
推定熱損失が求められたら、システム10は、再充電式電源18を高パワーレベルで充電するための適切なブースト期間を選択することができる。適切なブースト期間とは、高パワーレベルの充電レート(例えば、高速充電レート)を、IMD14に隣接する組織が好ましくない熱量(例えば、温度)に曝されることになる前にできる限り長く継続させることのできるブースト期間である。1つの例では、充電装置20又はIMD14のプロセッサは、ブースト期間を、推定熱損失に対応している複数のブースト期間の1つから選択している。複数のブースト期間は、ルックアップ表に記憶されていて、それぞれが異なった時間の継続期間を含んでいる。言い換えれば、ブースト期間の各々は或る特定の熱損失値又は熱損失値の或る範囲と関連付けられていて、それら値は対応するブースト期間を選択するためのルックアップ表への指標値の役目を果たしている。ブースト期間のルックアップ表は、充電装置20及び/又はIMD14のメモリに記憶させることができる。他の例では、ブースト期間は、推定熱損失を使用する1つ又はそれ以上の方程式を用いて計算することができる。
【0046】
各ブースト期間についての時間の継続期間は、IMD14からの組織加熱を勘案した1つ又はそれ以上の加熱モデルを使って求めることができる。言い換えれば、ルックアップ表中の様々なブースト期間は、実例的な熱損失及び患者12の組織についての加熱モデルから提供されている。代わりに、ブースト期間は、直接、推定熱損失を1つ又はそれ以上の組織加熱モデルへ入力することによって計算されてもよい。異なったブースト期間は、システム10の一次コイルと二次コイルの間の結合の品質に関連付けられている。より効率的な結合(例えば、より良好な整列)は、再充電式電源18へ送達される目標電流を実現するべく高パワーレベルを変化させたときに、より少ない熱損失及びより長いブースト期間をもたらすことができる。逆に、コイル間の結合があまり効率的でないと、再充電式電源18へ送達される目標電流を実現するべく高パワーレベルを上げたときに、より多くの熱損失及びより短いブースト期間がもたらされることになる。概して、ブースト期間は大凡5分から大凡35分の間の継続期間を有するものとすることができる。1つの例では、ブースト期間は、大凡10分から大凡25分の間の継続期間を有している。代わりに、ブースト期間は、5分より小さくなるように、又は35分より大きくなるように、選択されることもあろう。ブースト期間は、少なくとも一部には、充電セッション中の再充電式電源18を再充電するのに使用されるパワーレベルに依存している。より低いパワーレベルは而してより長いブースト期間を許容し、より高いパワーレベルは而してより短いブースト期間を許容する。
【0047】
ここに説明されている様に、充電装置20は、再充電式電源18を選択されたブースト期間の継続期間中は高パワーレベルで充電することができる。再充電式電源18の充電は、誘導結合又は他の経皮的充電方法を利用することができる。誘導結合では、充電装置20は、高パワーレベルに基づいて充電装置20の一次コイルに第1の電流を生成するように構成されていよう。幾つかの例では、高パワーレベルは、充電装置20が充電時間を最小化するために発生させることの可能な最も高いパワーレベルとすることができる。システム10は、更に、患者体内に植え込まれている再充電式電源18及びIMD14と関連付けられている二次コイルを含んでいる。二次コイルは、一次コイルによって作り出される磁界により二次コイルに誘導される第2の電流を発生させることができる。第2の電流は、次いで、再充電式電源18を充電するのに、そのまま使用されるか、又は適切な充電回路機構を使って調整された上で使用されることになる。
【0048】
充電セッション中、1つ又はそれ以上の回路(例えば、充電モジュール)が充電セッションに関係のある1つ又はそれ以上の電気パラメータを測定するようになっていてもよい。例えば、IMD14が再充電式電源18へ流れる電流と再充電式電源18の測定電圧を測定するようになっていてもよい。IMD14は、その場合、IMD14からの充電データを充電装置20の遠隔測定モジュールへ送信するように構成されている遠隔測定モジュール(
図1に示さず)を含んでいよう。充電データは、再充電式電源の測定電流及び測定電圧の様な、充電と関連付けられる何れかの電気パラメータを含んでいよう。
【0049】
システム10は、高パワー充電時間が選択されたブースト期間を超過したとき、再充電式電源18の高パワーレベルでの充電を終結させることになる。ブースト期間中、充電装置20及び/又はIMD14は、高パワー充電時間をブースト期間と比較することができ、ここに、高パワー充電時間は再充電式電源18が高パワーレベルで充電された経過時間である。充電装置20は、ブースト期間が満了したら、及び/又は再充電式電源18が一杯まで充電されたら、充電セッションを完全に停止することができる。
【0050】
代わりに、充電装置20は、より低いパワーレベル(例えば、より低速な充電レート)へ切り替え、再充電式電源18が一杯に充電されるまで又は充電セッションがそれ以外に終結又は中断されるまで再充電式電源18の充電を継続してもよい。より低いパワーレベルは、より少ないエネルギーをIMD14へ伝送することになるので、而して熱が患者12へ送達されてゆくのを低減することができる。幾つかの例では、より低いパワーレベルは、より低いパワーレベルに係る熱損失が患者組織を損傷させることなく無期限に継続できるように選択されている。この様に、システム10は、高パワー充電時間がブースト期間を超過したときに低パワーレベルを選択し、再充電式電源18を低パワーレベルで、再充電式電源18が一杯に充電されるまで充電し続けることができる。低パワーレベルは、高パワーレベルより低い何れかのパワーレベルとすることができる。
【0051】
他の例では、システム10は、ブースト期間が満了した後、再充電式電源18を閉ループ方式で充電し続けるようになっている。例えば、システム10は、ブースト期間後及び/又はブースト期間中に患者12へ送達される累積加熱量を監視して、確実に、IMD14に隣接する組織が損傷を引き起こし得る温度に曝されないようにしていてもよい。例えば、システム10の1つ又はそれ以上の構成要素(例えば、充電装置20及び/又はIMD14)は、再充電式電源18の充電中に少なくともブースト期間の継続期間に亘って患者12へ送達される推定累積加熱量を計算するようになっていてもよい。そうすると、システム10は、ブースト期間後の再充電式電源18を充電するための次のパワーレベルを、推定累積加熱量に基づいて選択することができる。別の例では、システム10は、ブースト期間が満了した後の患者12へ送達される累積加熱量しか監視していない。推定累積加熱量を計算する例としての方法がここに説明されている。
【0052】
ブースト期間後の再充電式電源18を再充電するために充電装置20によって使用されるパワーレベルは、IMD14によって患者12へ送達される累積加熱量に基づいて選択又は制御することができる。累積加熱量は、IMD14に隣接する組織への総計的な温度曝露を定量化又は推定するのに使用される尺度とすることができる。よって、累積加熱量は、推定累積加熱量としてもよい。1つの例では、累積加熱量は、組織温度を或る時間の期間に亘って積分することによって計算することができる。当該時間の期間は、ブースト期間及び/又はブースト期間後の充電時間を含んでいてもよい。得られた累積加熱量を使用して、送達される熱を或る特定の時間の期間についての或る特定の組織温度レベルに対し等式化することができる。例えば、臨床医学者は、熱への組織暴露を摂氏43度に30分に制限したがっているとしよう。しかしながら、IMD14の温度は充電期間に亘って何れかの1つの温度から変化しそうである。累積加熱量の計算は、而して、充電装置20又はIMD14が、実際の組織温度が時間経過につれて変化しても熱暴露に対する所望の限界に達する時点を求められるようにする。他の例では、累積加熱量は、所定の時間の期間の複数の区分についての平均温度を加算することによって計算されている。何れの例でも、累積加熱量を使用すれば、総熱量、又は選択された時間の期間に亘って失われる熱量、又はIMD14の周辺の組織及び/又は隣接している組織についての高温暴露の程度、を求めることができる。
【0053】
累積加熱量を計算するのに使用される組織温度は、幾つかの異なった技法を使って求めることができる。各技法は、患者12によって受け取られる実際の累積加熱量を推定している累積加熱量をもたらす。とはいえ、システム10によって計算される推定累積加熱量は患者12によって受け取られる実際の累積加熱量と実質的に同様である。1つの例では、組織温度はIMD14の1つ又はそれ以上の場所で測定されている。IMD14は、IMD14のハウジングの内面近くか、又はハウジング内に架設されているか、又はIMD14の外部に配置されている、1つ又はそれ以上の熱電対、サーミスタ、又は他の温度感知要素を含んでいてもよい。他の例では、IMD14は、IMD14の外面から延びている1つ又はそれ以上の温度感知要素を含んでいる。この直接的な組織温度測定が最も正確であろう。但し、組織温度測定値は、充電装置20のプロセッサが累積加熱量を計算することができるように充電装置20へ送信される必要がある。代わりに、IMD14のプロセッサが測定された組織温度を使用して累積加熱量を計算するようになっていてもよい。IMD14のプロセッサは、次いで、充電装置20がパワーレベルを選択できるように累積加熱量を送信するようになっていてもよいし、又はIMD14のプロセッサが累積加熱量に基づいてパワーレベルを直接選択し、充電に使用されるパワーレベルに関して充電装置20に命令するようになっていてもよい。
【0054】
別の例では、組織温度は、間接的に、組織モデル及び時間の期間に亘って再充電式電源18へ伝送されたパワーに基づいて計算又は推定されている。充電装置20は、一次コイルの生成電流と、その結果である充電装置20からIMD14に設置されている二次コイルへ伝送されるパワーと、を監視するようになっていてもよい。伝送パワーは、生成電流を使って計算されてもよいし、生成電流と熱及び整列不良に因る期待エネルギー損失とに基づいて推定されてもよいし、生成電流と整列不良に因るエネルギー損失とに基づいて推定されてもよいし、又はそれらの何らかに組合せによってもよい。この方式では、充電装置20は組織温度を一方的に求めることになる。代わりに、IMD14が再充電式電源18へ連結されている二次コイルに誘導される実際の電流を測定するようになっていてもよい。この測定電流に基づき、IMD14のプロセッサは、充電装置20からの伝送パワーを計算することができる。次いで、IMD14は、計算された充電装置20からの伝送パワーを折り返し充電装置20へ送信するようになっていてもよい。
【0055】
測定又は推定された充電装置20から再充電式電源18への伝送パワーは、次いで、組織モデルに適用されて、期待組織温度が計算される。組織モデルは、IMD14に隣接する組織の熱容量、周辺組織の密度、固有体温、IMD14のハウジングの表面積、IMD14の周辺の組織の推定表面積、IMD14の患者12の皮膚からの深さ、患者12体内の二次コイルの配置向き、又はIMD14のハウジングの周辺の温度及び/又は当該ハウジングに直接触れる温度に影響を及ぼすであろう何れかの他の変数、のうちの1つ又はそれ以上を組み入れた1つ又はそれ以上の方程式によって表すことができる。組織モデルは、組織の内部成長、瘢痕組織、被包、血管新生の変化、及びIMD14のハウジングと患者12の間の生物学的相互作用に因る他の組織変化を勘案するように、時間経過につれ修正されてもよい。伝送パワーが組織モデルに入力されると、充電装置20が再充電式電源18を再充電する際の組織温度の推定が計算される。
【0056】
伝送パワー技法を使えば、組織温度は、充電装置20のプロセッサ、IMD14のプロセッサ、又はそれらの何らかの組合せ、によって計算することができる。例えば、充電装置20は、組織モデルと測定されたIMD14への伝送パワーを使って、一方的に組織温度を計算するようになっていてもよい。別の例では、充電装置が組織温度を計算することができるように、1つ又はそれ以上の測定された変数がIMD14から充電装置20へ通信されるようになっていてもよい。IMD14は、検出された一次コイルと二次コイルの整列及び/又は二次コイルに誘導された電流を送信することができる。或る代わりの実施形態では、IMD14は伝送パワーを測定し、測定された充電装置20からの伝送パワーに基づいて組織温度を計算している。IMD14は、次いで、計算された組織温度を充電装置20へ送信するようになっていてもよいし、組織温度に基づいて累積加熱量を計算し充電装置20へ送信するようになっていてもよい、或いは更に、計算された累積加熱量に基づいて充電装置20のための選択されたパワーレベルを送信するようになっていてもよい。これらの例によれば、組織温度を(例えば、測定された温度又は組織モデル計算を使用して)求め、累積加熱量を計算するのに必要なプロセスは、充電装置20又はIMD14の一方によって独立に遂行されていてもよいし、充電装置20とIMD14の間の通信を通じて合同に遂行されていてもよい。
【0057】
ここに説明されている様に、情報は、充電装置20とIMD14の間で伝送されている。従って、IMD14と充電装置20は、当技術で知られている何れかの技法を使用する無線通信を介して通信している。通信技法の例には、例えば、低周波数又は無線周波数(RF)遠隔計測法が含まれるが、他の技法も考えられる。幾つかの例では、IMD14と充電装置20の間の通信の品質又は秘密保全性を改善するために、充電装置20は、IMD14植え込み部位に近い患者身体部に近接して置くことのできるプログラミングヘッドを含んでいる。充電装置20との間の通信は、パワー伝送中に起こるようになっていてもよいし、パワー伝送とは別に起こるようになっていてもよい。
【0058】
累積加熱量は、或る時間の期間に亘って組織へ送達される熱量を反映している尺度である。組織は熱を放散するので、組織へ送達された熱量が患者12の寿命に亘って継続的に度合いを増してゆくわけではない。そうではなく、総送達熱量は或る特定の時間の期間に限って有意となり得る。この時間の期間は、製造者又は臨床医学者によって或る特定の分数、時間数、更には日数に設定されていよう。概して、累積加熱量を計算するのに使用される期間は、大凡10分から10日の間とすることができる。より厳密には、累積加熱量を計算するのに使用される期間は、大凡1時間から48時間の間とすることができる。1つの例では、期間は大凡24時間に設定されている。この期間は、現在時から遡って延びているローリング期間である。言い換えれば、期間が24時間である場合、累積加熱量は、直近24時間の度−分の総量(the total amount of degree-minutes)である。他の例では、時間の期間は事象として表されている。例えば、時間の期間は、単一の再充電セッション(例えば、充電装置20からIMD14へ伝送される充電パワーの連続伝送であってブースト期間を含んでいる場合もあれば含んでいない場合もある、充電パワーの連続伝送)として確立されていてもよい。従って、期間は、時間又は事象によって定義されるものとすることができる。
【0059】
累積加熱量は、充電装置20からIMD14への伝送パワー、再充電式電源18の再充電のレート、及び再充電プロセス中にIMD14によって発生する熱、を制御するのにシステム10によって利用されることになる。従って、システム10、例えば充電装置20及び/又はIMD14の1つ又はそれ以上のプロセッサは、IMD14の再充電式電源18充電中に或る時間の期間に亘って患者12へ送達される累積加熱量を計算することができる。システム10の1つ又はそれ以上のプロセッサは、次いで、再充電式電源の次の充電のためのパワーレベルを、計算された累積加熱量に基づいて選択することができる。そうすると、充電装置20は再充電式電源18を選択されたパワーレベルで充電する。以下にいっそう詳細に論じられている様に、選択されたパワーレベルは、IMD14の周辺の組織へ伝達される熱及び累積加熱量を制御するべく充電セッション中に変えられてもよい。IMD14のプロセッサが充電パワーレベルを選択するようになっていてもよいが、ここでは例示を目的に充電装置20のプロセッサが充電パワーレベルを選択するものとして説明してゆく。
【0060】
1つの例では、充電装置20は、ブースト期間後に累積加熱量が加熱量閾値をまだ超過していなければ高パワーレベルを選択し、累積加熱量が加熱量閾値を超えてしまっていれば低パワーレベルを選択するようになっている。この方式では、高パワーレベルは、充電時間を縮めるべく高いレートで再充電式電源18を充電するが、その間、IMD14の温度を上昇させてしまう。高くなったIMD14温度からの累積加熱量が加熱量閾値を超過したら、充電装置20は、低パワーレベルを選択し、IMD14の温度を下げるべく、より低速なレートで再充電式電源18を充電する。低パワーレベルは、IMD14に温度の上昇があっても周辺組織への影響が最小限又は皆無になるように十分に小さいものとされる。
【0061】
高パワーレベル及び低パワーレベルは主観的なものであって、充電装置20が生成しIMD14へ伝送することのできる充電パワーに対し相対的である。幾つかの場合、高パワーレベルは、充電装置20が生成することの可能な最大パワーとされている。言い換えれば、高パワーレベルは、充電装置20及び/又はIMD14のハードウェア制限によってのみ制限され得る。この高パワーレベルは、高い充電レートを再充電式電源18に生じさせることから「ブースト」又は「加速」充電レベルと呼称することもできる。この高い充電レートは、患者12が再充電式電源18を再充電するのに必要な時間量を最小化することができる。累積加熱量を監視することによって、充電装置20は、IMD14の周辺の組織を損傷させることなく、より長い時間の期間の間、再充電式電源18を高パワーレベルで充電することができる。ブースト期間中に失われた熱が充電セッションを始めたときに推定されたものより少ない状況では、ブースト期間を越えて高パワーレベルが使用されてもよい。言い換えれば、充電装置20が高パワーレベルで充電することのできる時間量を実際の累積加熱量を計算せずに推定しただけでは、組織を望ましからざるレベルの熱に曝してしまうか又は高パワー充電を活用しきれず総充電時間を長引かせてしまうことになりかねない。従って、患者12へ送達される累積加熱量を使用することで、システム10は高速充電時間と安全加熱レベルの間でより効果的にバランスを取ることができる。
【0062】
1つの例では、高パワーレベルは大凡2.5ワット(W)とされ、低パワーレベルは大凡0.1Wとされている。一次コイルの電流にとっての例としての充電電流レベルは、高パワーレベルについては大凡100ミリアンペア(mA)又は120mAであり、低パワーレベルについては大凡50mAである。充電信号の周波数は、パワーレベルとは独立であるが、一定したHブリッジ電圧を想定するとパルス幅は概してパワーレベルが高いほど増加する。Hブリッジ回路は、充電装置20の一次コイルを交流電流で駆動するための1つの方法として使用することができる。Hブリッジ回路は、パルスを使用してゲートオン及びゲートオフされる交互式のスイッチ(例えば、トランジスタ)の対を有していよう。例えば、大凡10ボルト(V)のHブリッジ電圧では、その様なパルスの幅は、高パワーレベルについては大凡4000マイクロ秒(nS)であり、低パワーレベルについては大凡2000nSである。各スイッチ対は、パルスがここに指定されているパルス幅を有しているそれぞれのパルス列を用いて有効にされる。1つの例では、電圧源によって提供される電圧の振幅は大凡10Vである。高パワーについての例としての一次コイルの電圧及び電流はそれぞれ大凡450V及び大凡800mAであり、低パワーレベルについての例としての一次コイルの電圧及び電流は大凡250V及び大凡500mAである。これらの値は例にすぎず、他の例はここに説明されている技法に従ったより高い値又はより低い値を含んでいることもあろう。
【0063】
加熱量閾値は、患者12にとってまだ安全であると識別される最大累積加熱量とすることができる。言い換えれば、加熱量閾値は、組織が不快又は不都合を来し得る高いレベル及び継続期間に及んで加熱されることを防ぐように確立又は選択されるものである。加熱量閾値は製造者によって事前設定されていてもよいし、又は臨床医学者によって選択されていてもよい。加熱量閾値は時間経過につれ必要に応じ修正されてもよい。幾つかの例では、加熱量閾値は最大安全加熱量に設定されていないこともある。代わりに、加熱量閾値は、組織の潜在的過熱が最小限に抑えられるように加熱量閾値より下に安全マージンを確立するべくより低い値に設定されていてもよい。
【0064】
加熱量閾値は、所定の時間量についての或る特定の温度における組織の相当加熱(equivalent heating)に基づいていてもよい。言い換えれば、加熱量閾値は、高温での時間経過につれた総計的な度合いと表現することができる。1つの例では、加熱量閾値は、摂氏43度に30分の組織に対する相当量として選択されている。別の例では、加熱量閾値は、摂氏43度に50分の組織に対する相当量として選択されている。代わりの例では、加熱量閾値は、摂氏41.5度に4時間の組織に対する相当量として選択されている。これらの閾値は、累積加熱量との比較のために集計されてもよい。例えば、摂氏43度に30分の組織は、組織温度上昇(例えば、摂氏43度と摂氏37度の平常体温の間の差)を時間限界に対して集計又は積分した後の単一値で表すことができる。累積加熱量が同様の方式で計算されたら、累積加熱量は充電装置20が再充電式電源18を再充電する際の加熱量閾値と比較されることになる。
【0065】
累積加熱量は、次の方程式(1)、即ち、
【0067】
によって計算することができる。
「CEM43」は、定温度エポック(例えば、基準データ)についての摂氏43度での累積相当分(cumulative equivalent minutes)を指す。T
iは測定された摂氏温度であり、t
iは分での時間の継続期間である。Rは、特徴付けのパラメータ又は定数であって、摂氏43度未満の温度については0.25に設定されよう。Rの値は、既知の細胞及び/又は組織の特性に基づいて実験的に求めることができ、Rは他の例では異なった値のこともあろう。例えば、5分というCEM限界が累積加熱量閾値として使用されると、パワーレベルは再充電セッションの累積加熱量が設定されている累積加熱量閾値より低く保たれるように選定される。1つの例では、或る特定の充電パワーレベルを選択することによって再充電セッション全体について組織温度が摂氏42度に制限されたとして、加熱量閾値には20分で達するということになる(例えば、(0.25
∧(43−42)
*20=5分))。充電時に起こる時間経過につれた温度上昇及び温度下降を組み入れることを実効化することで(例えば、温度を時間に亘って積分することで)、何れかの特定のパワーレベルでの一定した温度を推定することによって実現し得るよりも長い再充電継続期間が可能になる。
【0068】
充電装置20は、2つ、3つ、更にはそれより多数の個別のパワーレベルの間で選択するようになっていてもよいし、利用可能なパワーレベルの連続的範囲からパワーレベルを選択するようになっていてもよい。例えば、充電装置20は、高パワーレベル、中パワーレベル、低パワーレベル、及びゼロ(例えば、パワー伝送無し)パワーレベルの間で、充電時間を最小化し且つ周辺組織の不快又は不都合を最小限に抑えるように選択することができる。別の例では、充電装置20はパワーレベルを小さい増分で連続的に調節するようになっており、その場合、増分は充電装置20の一次コイルで生成させることのできる電流の利用可能解像度によって確立されている。従って、これらの調節可能なパワーレベルがより多くなることで、高パワーレベルと低パワーレベルしか使用しなかったならパワーレベルにばらばらな段が現れることになるのとは対照的に、時間経過につれたパワーレベル曲線をもたらすことができる。何れの例でも、充電装置20からIMD14への伝送パワーは、計算された累積加熱量に基づいて変えることができる。
【0069】
別の例では、充電装置20は、累積加熱量が加熱量閾値を超過してしまった場合、ゼロパワーレベルを選択することができる。このゼロパワーレベルは再充電式電源18を停止させることになるものであり、というのは充電装置20がゼロパワーレベルの選択に応えて一次コイルへの電流を終結させてしまうことになるからである。低パワーレベルを使用して再充電式電源18を低速で充電(例えば、細流充電)することもできるが、充電をゼロパワーレベルで終結させることは、IMD14を最速で冷ましIMD14の周辺の組織の更なる加熱を最小限に抑えることができる。加えて、ゼロパワーレベルは再充電式電源18が一杯まで充電されてしまったときに選択される。
【0070】
更なる例では、充電装置20は、加熱量閾値を満たすか又は超過することを見越して、充電パワーレベルを下げるようになっている。充電装置20は、累積加熱量を加熱量閾値から減算することによって利用可能加熱量を計算することができる。言い換えれば、利用可能加熱量は、累積加熱量が加熱量閾値を超過する前の残存加熱量である。この利用可能加熱量は、加熱量閾値を超過するより前に充電のパワーレベルを下げるのに使用することができる。利用可能加熱量は、累積加熱量が加熱量閾値に近づいているのでパワーを下げなくてはならない、ということを指し示す高パワー加熱量要件と比較されてもよい。高パワー加熱量要件は、加熱量閾値の或る比率、例えば加熱量閾値の70パーセントから95パーセントの間、に設定されていてもよい。高パワー加熱量要件は、代わりに、加熱量閾値より下の或る特定の絶対値に設定されていてもよい。これらの指針を使用して、充電装置20は、利用可能加熱量が高パワー加熱量要件より大きいときには高パワーレベルを選択する。充電装置20は、而して、利用可能加熱量が高パワー加熱量要件より小さいときには低パワーレベルを選択する。充電装置20は、その後、再充電式電源18を低パワーレベルで充電し続けることになるか、また更にはひとたび累積加熱量が加熱量閾値を超過したら充電を終結させることになる。
【0071】
幾つかの例では、充電装置20でのパワーレベル変更に頼るのではなく、IMD14が直接に充電のためのパワーレベルを調節する(例えば、充電電流を制限する)ようになっている。例えば、IMD14は充電装置20及び/又はIMD14の充電特性を修正するべく全波整流から半波整流へ変更する経路を採用していてもよい。言い換えれば、IMD14は、IMD14によって受け取られるパワー全体を減らすのではなく、典型的な充電条件下で再充電式電源18へ送達される電流を減らす手段として半波整流を利用することができる。代わりに、IMD14は、再充電式電源18の充電レートを制限する電流リミッタ及び/又は電圧リミッタの様な他の機構を採用していてもよい。
【0072】
ここには概して植え込み型再充電式電源18が説明されているが、本開示の技法は、植え込まれていない再充電式電源18に適用することもできる。例えば、再充電式電源18は、患者12の皮膚の外部に在って皮膚と物理的に接触していてもよい。従って、充電装置20は、電源が患者12の外部にある場合でも、推定された熱損失及び/又は計算された累積加熱量に基づいて、再充電式電源18の充電のためのブースト期間を選択すること及び/又は再充電式電源18の充電を制御することができる。但し、ブースト期間、組織モデル、及び閾値は、外部充電使用に適するように充電装置20を構成するべく修正されることになろう。
【0073】
図2は、IMD14の例としての構成要素を描いているブロック線図である。
図2の例では、IMD14は、温度センサ39、コイル40、プロセッサ30、療法モジュール34、充電モジュール38、メモリ32、遠隔測定モジュール36、及び再充電式電源18を含んでおり、それらを収納していてもよい。他の例では、IMD14は、より多くの数の構成要素又はより少ない数の構成要素を含んでいる。例えば、組織温度が伝送パワーから計算されている例の様な幾つかの例では、IMD14は温度センサ39を含んでいないこともある。
【0074】
一般的に、IMD14は、IMD14及びプロセッサ30に帰するここに記載の各種技法を遂行するためにハードウェアの何れかの適した配列を単独で又はソフトウェア及び/又はファームウェアと組み合わせて備えていよう。様々な例では、IMD14は、1つ又はそれ以上のプロセッサ30である、例えば、1つ又はそれ以上のマイクロプロセッサ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(EPGA)、又は何れかの他の同等な集積型又は離散型の論理回路機構、並びにその様な構成要素の何れかの組合せ、など、を含むことができる。IMD14は、様々な例では、更に、1つ又はそれ以上のプロセッサにそれらに帰するアクションを遂行するように仕向けるための実行可能な命令を備えているメモリ32である、例えば、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み出し専用メモリ(ROM)、プログラム可能読み出し専用メモリ(PROM)、消去可能プログラム可能読み出し専用メモリ(EPROM)、電子的消去可能プログラム可能読み出し専用メモリ(EEPROM)、フラッシュメモリ、など、を含んでいよう。更に、プロセッサ30、療法モジュール34、充電モジュール38、遠隔測定モジュール36は、別々のモジュールとして説明されているが、幾つかの例では、プロセッサ30、療法モジュール34、充電モジュール38、及び遠隔測定モジュール36は、機能的に統合されている。幾つかの例では、プロセッサ30、療法モジュール34、充電モジュール38、及び遠隔測定モジュール36は、ASIC、DSP、EPGA、又は他のハードウェアユニットの様な、個々のハードウェアユニットに対応している。
【0075】
メモリ32は、療法モジュール34及びIMD14によって提供される療法のための療法パラメータ値を指定している療法プログラム又は他の命令を記憶していてもよい。幾つかの例では、メモリ32は、更に、温度センサ39からの温度データ、再充電式電源18を再充電するための命令、ブースト期間ルックアップ表及び/又は方程式、組織モデル、閾値、IMD14と充電装置20の間の通信のための命令、又はIMD14に帰するタスクを遂行するのに必要な何れかの他の命令、を記憶している。この様に、メモリ32は組織モデルを記憶するように構成されているので、プロセッサ30は、IMD14の周辺の組織の温度を、組織モデルと時間の期間に亘って二次コイル40及び再充電式電源18によって受け取られるパワーとに基づいて計算するように構成されている。加えて、メモリ32は、プロセッサ30が推定熱損失を求め、推定熱損失について必要な計算を遂行し、充電セッションのための対応するブースト期間を選択できるようにする、ブースト期間情報を記憶していてもよい。
【0076】
概して、療法モジュール34は、プロセッサ30の制御下に電気刺激を生成及び送達することができる。幾つかの例では、プロセッサ30は、メモリ32にアクセスして刺激プログラムのうちの少なくとも1つに選択的にアクセスし、それを療法モジュール34へロードすることによって、療法モジュール34を制御する。例えば、作動時、プロセッサ30はメモリ32にアクセスして刺激プログラムのうちの1つを療法モジュール34へロードすることができる。その様な例では、関連の刺激パラメータには、電圧振幅、電流振幅、パルス繰返し数、パルス幅、デューティサイクル、又は療法モジュール34が電気刺激信号を送達するのに使用する電極17A、17B、17C、及び17Dの組合せ、が含まれる。療法モジュール34は、電気刺激療法を生成し、それをリード16の電極17A、17B、17C、及び17Dのうちの1つ又はそれ以上を介して送達するように構成されていてもよいが、療法モジュール34は異なった療法を患者12へ提供するように構成されていてもよい。例えば、療法モジュール34は、カテーテルを介しての薬物送達療法を送達するように構成されていてもよい。これら及び他の療法はIMD14によって提供されることになる。
【0077】
IMDは、更に、再充電式電源18が少なくとも途中まで使い果たされてしまったときに、再充電式電源18を再充電するように充電装置20からパワーを受け取るための構成要素を含んでいる。
図2に示されている様に、IMD14は、再充電式電源18へ連結されている二次コイル40と充電モジュール38を含んでいる。充電モジュール38は、再充電式電源18をプロセッサ30又は充電装置20のどちらかによって求められた選択パワーレベルで充電するように構成されていてもよい。プロセッサ30は一部の例では幾つかのコマンドを充電モジュール38に提供するようになっているが、プロセッサ30は再充電の何れの態様も制御する必要はない。幾つかの例では、充電モジュール38は充電装置20と通信するように構成されており、よって充電モジュール38は遠隔測定モジュール36の機能性を提供できるように構成されていよう。
【0078】
二次コイル40は、患者12の外部に配置されている一次コイルと誘導結合することのできるワイヤ又は他の装置を含むことができる。一次コイル48は
図3には簡略ループとして描かれているが、一次コイル48は多重巻きのワイヤを含んでいてもよい。二次コイルは、電流を磁界から二次コイル40内に誘導させることができるように構成されているワイヤの巻線を含んでいよう。そうして、誘導された電流は再充電式電源18を再充電するのに使用される。この方式では、電流は再充電式電源18と関連付けられている二次コイル40に誘導されている。誘導は、充電装置20の一次コイルで選択されたパワーレベルに基づいて生成される電流によって引き起こされるものである。二次コイル40と充電装置20の一次コイルの間の結合は2つのコイルの整列に依存している。例えば、結合効率は、2つのコイルが共通軸を共有し互いに密に近接しているときに増加する。異なったコイル幾何学形状を有する他の例では、2つのコイルの他の相対位置がより大きい結合効率をもたらすこともある。充電装置20及び/又はIMD14は整列についての1つ又はそれ以上の可聴音又は視覚表示を提供するようになっていてもよい。
【0079】
概して誘導結合が再充電式電源18を再充電するための方法として説明されているが、他の無線エネルギー移動技法が代わりに使用されていてもよい。これらの技法は何れもIMD14に熱を発生させる可能性があるので、充電プロセスは計算された累積加熱量をフィードバックとして使用しながら制御されることになろう。
【0080】
充電モジュール38は、二次コイルに誘導される電気信号を濾過する及び/又は当該電気信号を再充電式電源18を再充電することのできる電気信号へ転換する1つ又はそれ以上の回路を含んでいてもよい。例えば、交流電流誘導では、充電モジュール38は、半波整流回路及び/又は全波整流回路、若しくは誘導による交流電流を再充電式電源18用の直流電流へ変換するように構成されている他の整流スキームを含むことができる。誘導されたエネルギーを再充電式電源18用に変換する際には全波整流回路がより効率が良いかもしれない。但し、エネルギーを再充電式電源18により低速なレートで貯蔵するには半波整流回路が使用されよう。幾つかの例では、充電モジュール38は全波整流回路と半波整流回路の両方を含んでおり、充電モジュール38が再充電式電源18の充電レート及びIMD14の温度を制御するために各回路間で切り換えることができるようにしている。
【0081】
幾つかの例では、充電モジュール38は、誘導結合中に誘導される電流及び/又は電圧を測定するように構成されている測定回路を含んでいる。この測定は、充電装置20からのIMD14へ伝送されるパワーを測定又は計算するのに使用することができる。幾つかの例では、伝送パワーは、IMD14の温度及び周辺組織の温度を概算するのに使用されている。この方法は、IMD14のハウジングと接触している組織の温度を間接的に測定するのに使用することができる。他の例では、IMD14は、測定された電源18向け(例えば充電モジュール38後)電圧及び/電流又は再充電式電源18の充電レートを使って伝送パワーを推定している。次いでこれらの電流及び/又は電圧の測定値は、電源18への伝送パワーを計算し充電中の熱損失を推定するのに使用されることになる。
【0082】
再充電式電源18は、1つ又はそれ以上のコンデンサ、バッテリ、又は他のエネルギー貯蔵装置を含むものとすることができる。そうして、再充電式電源18は作動パワーをIMD14の構成要素へ送達することができる。幾つかの例では、再充電式電源18は作動パワーを生み出すパワー生成回路を含んでいる。再充電式電源18は、何百回又は何千回という放電及び再充電サイクルを通じて作動するように構成されていよう。再充電式電源18は、更に、再充電プロセス中に作動パワーをIMD14へ提供するように構成されていよう。幾つかの例では、再充電式電源18は、充電中に生成される熱量を低減する材料で構築されている。他の例では、IMD14は、再充電式電源18、充電モジュール38、及び/又は二次コイル40で生成される熱をIMD14のハウジングのより広い表面積に亘って放散させるのを手助けする材料で構築されている。
【0083】
再充電式電源18は、比較的高い充電レートで充電されるように構築及び構成され、及び/又はバッテリへの永久的損傷を引き起こすことなく非常に低い電圧(例えば、大凡ゼロボルト)まで放電されるように構成されていよう。例えば、再充電式電源18は、正活物質を有する正電極(即ち、カソード)と、負活物質を有する負電極(例えば、アノード)を有するリチウムイオンバッテリであってもよい。正電極と負電極それぞれに加え、正活物質及び/又は負活物質は、高い充電レート及び非常に低い電圧能力を実現するように選択されている。
【0084】
例えば、負活電極材料はチタンベースの材料とすることができる。チタンベースの材料には、純チタン又はチタン合金が含まれる。1つの例では、チタン合金はチタン酸リチウム材料であって負電極の負活物質の一部として使用されている。チタン酸リチウム材料を、銅又は黒鉛の様な炭素質材料を含有する不活物質の代わりに使用すれば、より高い充電レートを実現し易くなり、及び/又はバッテリへの低電圧損傷から保護することができる。他の例としての負活物質には、ニッケル、ニッケル合金、及びステンレス鋼が挙げられる。
【0085】
チタンベースの負活物質の一例としてのチタン酸リチウム材料は、再充電式電源18が望ましい充電特性を実現するのを可能にする。1つの例では、再充電式電源18は、10Cまでの又は10Cを上回る高い充電レート(即ち、満充電を1/10時間又は6分で達成)を実現するように構成されている。充電レートは、バッテリへ送達される充電電流をバッテリ容量で除算することによって計算することができる。再充電式電源18の充電レートは、IMD14が再充電セッション中に生み出すことのできる電流によって制限されよう。別の例では、再充電式電源18は、大凡ゼロボルトという非常に低い電圧まで完全に放電させることができる。再充電式電源18がこの完全放電電圧に達した後、チタン酸リチウム材料無しでは起こり得るバッテリへの何らの性能劣化も無しに、再充電式電源18は再び充電される。その上、再充電式電源18の高い充電レートは、完全に放電したか又は使い果たされた電源を再充電するや即座に実現させることができる。チタン酸リチウム材料は、更に、いわゆる「ゼロ歪み」材料であるので、優れたサイクル寿命を提供することができる。ゼロ歪み材料は、リチウムドーピング/脱ドーピングに係る収縮又は縮小を被らない結晶格子を有しているので、歪み関連の劣化機序を免れている。
【0086】
チタン酸リチウム材料を使用することのもう1つの有利な特徴は、その様な材料がリチウムイオンバッテリの負電極に使用された場合、リチウム基準電極に対して約1.5ボルトの電位プラトーでリチウムを循環させると確信されることである。これは、従来リチウムイオンバッテリに用いられている黒鉛状炭素より実質的に高く、満充電状態では約0.1ボルトまで下げてリチウムを循環させる。結果として、チタン酸リチウムを使用しているバッテリは、充電されている間にリチウムのめっきを生じさせる可能性が低くなる(リチウム基準に対して0ボルトで起こる)。リチウムめっきは、リチウムイオンバッテリの性能の損失に繋がりかねない。リチウムめっきの危険性を免れていることで、チタン酸リチウム負電極を有するセルは、更に、炭素負電極を有するセルを上回るレートで充電することができる。例えば、リチウムイオンバッテリの充電レートの一般的上限は、約0.5Cである(バッテリは放電状態から大凡2時間で満充電され得ることを意味する)。対照的に、チタン酸リチウムを備えるバッテリは、0.5Cより大きいレートで充電することができる。幾つかの例では、チタン酸リチウムを備えるバッテリは、10Cにも達するレートで充電(即ち、満充電を1/10時間又は6分で達成)することができる。より高速な再充電レートは、その様なバッテリを採用している装置(例えば、IMD14)の機能性及び/又は能力を向上させることができよう。
【0087】
加えて、チタン酸リチウム材料を炭素に代えて負電極に使用することで、再充電式電源18を定電圧モードで充電できるようになる。定電圧モードでは、充電回路機構及びバッテリケミストリが許容する限りの高速で充電電流が再充電式電源18に進入するようにIMD14(例えば、充電モジュール38及び/又は他の充電回路機構)は再充電式電源18を横断して電圧源を印加するように構成されている。1つの例では、再充電式電源18の充電サイクル全体を通して高い充電レートを維持できるように、定電圧は再充電式電源18のトップオフ電圧に設定されている。トップオフ電圧は再充電式電源18及び/又はIMD14の充電回路機構のバッテリケミストリに従って選択されていてもよく、トップオフ電圧は一杯まで充電された再充電式電源18の最終電圧(例えば、満充電電圧)を超過する電圧として選択されていてもよい。例としてのトップオフ電圧又は定充電電圧は、大凡2.8ボルト又は大凡3.3ボルトとすることができる。負電極の炭素ベース負活物質を有するバッテリを比較的高い定電圧で充電すれば、バッテリの性能を激しく劣化させかねない。
【0088】
チタン酸リチウム材料の更なる利点は、チタン酸リチウム材料が、リチウムイオンバッテリに一般的に使用されている有機溶媒(炭酸プロピレン)の分解を防ぐことである。有機溶媒の分解が無ければ、ガスの形成、セル膨隆、可逆性バッテリ容量の減少、及び利用可能バッテリパワーを減少させかねない抵抗性膜の堆積、の様な問題が低減する。
【0089】
例としてのチタン酸リチウム材料には、Li
4Ti
5O
12を挙げることができる。負活物質としての使用に適する他のチタン酸リチウム材料は、次のチタン酸リチウムスピネル材料、即ち、H
xLi
y−xTiO
xO
4、H
xLi
y−xTiO
xO
4、Li
4M
xTi
5−xO
12、Li
xTi
yO
4、Li
xTi
yO
4、Li
4[Ti
1.67Li
0.33−yM
y]O
4、Li
2TiO
3、Li
4Ti
4.75V
0.25O
12、Li
4Ti
4.75Fe
0.25O
11.88、及びLi
4Ti
4.5Mn
0.5O
12、及びLiM’M’’XO
4(ここに、M’は、ニッケル、コバルト、鉄、マンガン、バナジウム、銅、クロム、モリブデン、ニオブ、又はそれらの組合せの様な金属であり、M’’は、随意の3原子価を持つ非遷移金属であり、Xはジルコニウム、チタン、又はこれら2つの組合せである)、のうちの1つ又はそれ以上を含んでいてもよい。その様なチタン酸リチウムスピネル材料は、リチウム化の何れかの状態(例えば、Li
4+xTi
5O
12、ここに0≦x≦3)で使用されていることに留意されたい。代わりの負活物質には、炭素、Li
xAl、Li
xSn、Li
xSi、Li
xSnO、金属ナノ粒子複合材(例えば、Li
xAl、Li
xSn、Li
xSi、又はLi
xSnOを含む)、又は、炭素被覆チタン酸リチウムがある。
【0090】
再充電式電源18のための正電極の正活物質は、リチウムを含んでいる化合物又は材料とすることができる。正活物質に含まれるリチウムは、バッテリの放電中及び充電中それぞれの間にドープ及び脱ドープされる。1つの例では、正活物質は、リチウムコバルト酸化物(LiCoO
2)である。別の例では、正活物質は、LiCo
xNi
(1−x)O
2型であり、ここに、xは大凡0.05と0.8の間である。別の例では、正活物質は、LiAl
xCo
yNi
(1−x―y)O
2型であり、ここに、xは大凡0.05と0.3の間であり、yは大凡0.1と0.3の間である。他の例では、正活物質は、LiMn
2O
4を含んでいる。
【0091】
他の例によれば、正電極の正活物質は、Li
1−xMO
2型の材料であって、ここに、Mは金属である材料(例えば、LiCoO
2、LiNiO
2、及びLiMnO
2)、Li
1−w(M’
xM’’
y)O
2型の材料であって、ここにM’とM’’は異なった金属である材料(例えば、Li(Ni
xMn
y)O
2、Li(Ni
1/2Mn
1/2)O
2、Li(Cr
xMn
1−x)O
2、Li(Al
xMn
1−x)O
2、Li(Co
xM
1−x)O
2であって、ここに、Mは金属であるもの、即ち、Li(Co
xNi
1−x)O
2及びLi(Co
xFe
1−x)O
2))、Li
1−w(Mn
xNi
yCo
z)O
2型の材料(例えば、LiCo
xMn
yNi
(1−x−y)O
2、Li(Mn
1/3Ni
1/3Co
1/3)O
2、Li(Mn
1/3Ni
1/3Co
1/3−xMg
x)O
2、Li(Mn
0.4Ni
0.4Co
0.2)O
2、及びLi(Mn
0.1Ni
0.1Co
0.8)O
2)、Li
1−w(Mn
xNi
xCo
1−2x)O
2型の材料、Li
1−w(Mn
xNi
yCo
zAl
w)O
2型の材料、Li
1−w(Ni
xCo
yAl
z)O
2型の材料(例えば、Li(Ni
0.8Co
0.15Al
0.05)O
2)、Li
1−w(Ni
xCo
yM
z)O
2型の材料であって、ここに、Mは金属である材料、Li
1−w(Ni
xMn
yM
z)O
2型の材料であって、ここに、Mは金属である材料、Li(Ni
x−yMn
yCr
2−x)O
4LiMn
2O
4型の材料、LiM’M’’
2O
4型の材料であって、ここに、M’とM’’は異なった金属である材料(例えば、LiMn
2−y−zNi
y、Li
2O
4、LiMn
1.5Ni
0.5O
4、LiNiCuO
4、LiMn
1−xAl
xO
4、LiNi
0.5Ti
0.5O
4、及びLi
1.05Al
0.1Mn
1.85O
4−zF
z)、Li
2MnO
3、Li
xV
yO
z型の材料(例えば、LiV
3O
8、LiV
2O
5、及びLiV
6O
13)、又はLiMPO
4型の材料であって、ここに、Mは金属である材料、又はLiM
x’M’’
1−xPO
4であって、ここに、M’とM’’が異なった金属である材料(例えば、LiFePO
4、LiFe
xM
1−xPO
4であって、ここに、Mは金属であるもの、即ち、LiVOPO4、及びLi
3V
2(PO
4)
3、LiMPO
4xであって、ここに、Mは鉄又はバナジウムの様な金属であり、Xはフッ素の様なハロゲンであるもの、及びそれらの組合せ、の様な材料を含んでいてもよい。
【0092】
幾つかの例では、再充電式電源18は、正電流収集器と第1の正活物質及び場合によっては第2の正活物質を含んでいる正電極を含むリチウムイオンバッテリを含んでいる。リチウムイオンバッテリは、更に、負電流収集器、負活物質、及び負電流収集器と電気接触にある多量のリチウム、を含む負電極を含んでいる。第1の正活物質、第2の正活物質、及び負活物質は、リチウムイオンのドーピング及び脱ドーピングを許容するように構成されている。他の例では、第2の正活物質は、負電流収集器の腐食電位より下で且つ第1の正活物質の分解電位より上の充電容量及び放電容量を呈するように構成又は選択されている。幾つかの例では、正及び/又は負の電流収集器は、アルミニウム又はアルミニウム合金で構築されている。
【0093】
再充電式電源18、充電モジュール38、及び二次コイル40は、IMD14のハウジング内に収容されているものとして示されているが、これらの構成要素のうちの少なくとも1つはハウジングの外に配置されていてもよい。例えば、二次コイル40は、二次コイル40と充電装置20の一次コイルの間のより良好な結合を促すようにIMD14のハウジングの外に配置されていてもよい。IMD14の構成要素のこれらの異なった構成により、IMD14を異なった解剖学的空間内に植え込めるようになり、又は一次コイルと二次コイルの間のより良好な誘導結合整列を実現し易くなる。
【0094】
IMD14は、更に、温度センサ39を含んでいてもよい。温度センサ39は、IMD14の温度を測定するように構成されている1つ又はそれ以上の温度センサ(例えば、熱電対又はサーミスタ)を含んでいてもよい。温度センサ39は、IMD14のハウジング内に内在的に配置されていてもよいし、ハウジングに接触していてもよいし、ハウジングの一部として形成されていてもよいし、又はハウジングの外部に配置されていてもよい。ここに説明されている様に、温度センサ39は、IMD14の温度及び/又はIMD14のハウジングの周囲の組織及び/又はハウジングに接触している組織の温度を直接測定するのに使用することができる。プロセッサ30又は充電装置20は、この温度測定を、再充電式電源18の充電中に組織へ提供される累積加熱量を求めるための組織温度フィードバックとして使用することができる。単一の温度センサで十分なこともあるが、複数の温度センサならIMD14の更に正確な温度プロファイル又は平均温度を生成できよう。IMD14の様々な温度は、更に、累積加熱量を求めるに当たりモデル化され提供されてもよい。プロセッサ30は温度センサ39を使用して継続的に温度を測定するようになっていてもよいが、プロセッサ30は再充電セッション中の温度を測定するだけに留めてエネルギーを節約するようにしてもよい。更に、温度は累積加熱量を計算するのに必要なレートでサンプリングされているが、サンプリングレートはパワーを節約するために適宜引き下げられてもよい。他の例では、充電のブースト期間を選択するのに温度センサ39は使用されていない。代わりに、他の間接的電気測定値を使用して充電中の熱損失を推定するようにしてもよい。
【0095】
プロセッサ30は、更に、充電装置20及び/又は外部プログラマとの遠隔測定モジュール36を使った情報交換を制御していてもよい。遠隔測定モジュール36は、無線周波数プロトコル又は誘導通信プロトコルを使用する無線通信に適するように構成されている。遠隔測定モジュール36は、例えば充電装置20と通信するように構成されている1つ又はそれ以上のアンテナを含んでいよう。プロセッサ30は、遠隔測定モジュール36を介して作動情報を送信し療法プログラム又は療法パラメータ調節を受信することになる。更に、幾つかの例では、IMD14は、遠隔測定モジュール36を介して、刺激器、制御装置、又はセンサの様な、他の植え込まれている装置と通信している。加えて、遠隔測定モジュール36は、例えば温度センサ39からの測定された組織温度を送信するように構成されていてもよい。幾つかの例では、組織温度は再充電式電源18に隣接して測定されている。この方式では、充電装置20は送信された組織温度を使って累積加熱量を計算することができる。他の例では、プロセッサ30が、累積加熱量を計算し、計算された累積加熱量を遠隔測定モジュール36を使って送信している。
【0096】
幾つかの例では、プロセッサ30は、充電データを充電装置20へ送信している。充電データには、測定された再充電式電源18への電流、再充電式電源18の電圧、コイル40内の電流、又は推定熱損失を求め適切なブースト期間を選択するべく測定され使用される何れかの他の電気パラメータ、についての測定データを含めることができる。プロセッサ30が遠隔測定モジュール36に指令してこの充電データを充電装置20又は他の外部装置へ送信させるようになっていてもよい。
【0097】
他の例では、プロセッサ30は、再充電式電源18の作動に関係のある追加の情報を充電装置20へ送信している。例えば、プロセッサ30が遠隔測定モジュール36を使用して、再充電式電源18は完全に充電されていること、再充電式電源18は一杯まで放電されていること、又は再充電式電源18の何れかの他の充電状態、の指標を送信するようになっていてもよい。プロセッサ30は、更に、再充電式電源18が作動パワーをIMD14の構成要素へ提供するのを妨げかねない再充電式電源18に係る何らかの問題又はエラーを指し示す情報を充電装置20へ送信すうようになっていてもよい。
【0098】
図2のIMD14は、電気刺激療法へ向けられているが、ここに説明されているブースト期間及び他の再充電技法は他の用途に利用することもできる。例えば、IMD14は薬物を患者12へ送達するように構成されている薬物ポンプであってもよい。他の例では、IMD14は1つ又はそれ以上の生理学的状態を感知するモニターとして構成されていてもよい。
【0099】
図3は、例としての外部充電装置20のブロック線図である。充電装置20は概して手持ち式装置として説明されているが、充電装置20はより大きな携帯式装置又はより固定式の装置であってもよい。加えて、他の例では、充電装置20は、外部プログラマの一部として含まれていてもよいし、又は外部プログラマの機能性を含んでいてもよい。加えて、充電装置20は外部プログラマと通信するように構成されていてもよい。
図3に描かれている様に、充電装置20は、プロセッサ50、メモリ52、ユーザーインターフェース54、遠隔測定モジュール56、充電モジュール58、コイル48、及び電源60を含んでいてもよく、それらを収納していてもよい。メモリ52は、プロセッサ50によって実行されたときにプロセッサ50及び外部充電装置20に本開示全体を通して外部充電装置20に帰するとされている機能性(例えば、IMD14の推定熱損失を求めブースト期間を選択する)を提供するように仕向ける命令を記憶している。
【0100】
一般的に、充電装置20は、充電装置20並びに充電装置20のプロセッサ50、ユーザーインターフェース54、遠隔測定モジュール56、及び充電装置に帰する技法を遂行するためにハードウェアの何れかの適した配列を単独で又はソフトウェア及び/又はファームウェアと組み合わせて備えていてもよい。様々な例では、充電装置20は、1つ又はそれ以上のプロセッサである、例えば、1つ又はそれ以上のマイクロプロセッサ、DSP、ASIC、EPGA、又は何れかの他の同等な集積型又は離散型の論理回路機構、並びにその様な構成要素の何れかの組合せ、など、を含むことができる。充電装置20は、様々な例では、更に、1つ又はそれ以上のプロセッサに、それらに帰するアクションを遂行するように仕向けるための実行可能な命令を備えているメモリ52である、例えば、RAM、ROM、PROM、EPROM、EEPROM、フラッシュメモリ、ハードディスク、CD−ROM、など、を含んでいてもよい。また、プロセッサ50及び遠隔測定モジュール56は別々のモジュールとして説明されているが、幾つかの例では、プロセッサ50と遠隔測定モジュール56は機能的に統合されている。幾つかの例では、プロセッサ50、遠隔測定モジュール56、及び充電モジュール58は、ASIC、DSP、EPGA、又は他のハードウェアユニットの様な、個々のハードウェアユニットに対応している。
【0101】
メモリ52は、プロセッサ50によって実行されたときにプロセッサ50及び充電装置20に本開示全体を通して充電装置20に帰属するものとされる機能性を提供させるように仕向ける命令を記憶している。例えば、メモリ52は、再充電式電源18の充電を異なった条件に適応させるための、熱損失値をそれぞれのブースト期間と相関付けるルックアップ表を記憶していてもよい。更に、メモリ52は、プロセッサ50に、累積加熱量を計算するように仕向ける命令、閾値を確立するように仕向ける命令、累積加熱量に基づいてパワーレベルを選択するように仕向ける命令、及びそれ以外に充電モジュール58を制御するように仕向ける命令、IMD14と通信するように仕向ける命令、又は何れかの他の機能性についての命令、を含んでいてもよい。加えて、メモリ52は、選択されたパワーレベル、計算された累積加熱量、又は再充電式電源18の充電に関係のある何れかの他のデータ、の記録を含むことができる。プロセッサ50は、要求されると、メモリ52中のこの記憶されているデータのうちの何れかを、レビュー又は更なる処理に向けて別の演算装置へ送信するようになっていてもよい。
【0102】
幾つかの例では、メモリ52は、組織温度を計算するためにプロセッサ50によって使用される組織モデルを表現しているデータを記憶するように構成されていてもよく、プロセッサ50は当該組織モデルと或る時間の期間に亘って再充電式電源18へ伝送されたパワーとに基づいて組織温度を計算する。組織モデルは、IMD14周辺の組織の温度が時間経過につれてどの様に変化するかを、一次コイル48から受け取られるパワーに基づいて、即ち一次コイルから受け取られるパワーの関数として、指し示すことができる。従って、プロセッサ50は、IMD14のハウジング周辺の組織の温度を直接測定することなく組織温度を推定することができる。
【0103】
ユーザーインターフェース54は、ボタン又はキーパッド、照明、音声コマンド用スピーカ、液晶(LCD)又は発光ダイオード(LED)又はブラウン管(CRT)の様なディスプレイ、を含んでいてもよい。幾つかの例では、ディスプレイはタッチスクリーンであってもよい。この開示で論じられている様に、プロセッサ50は、再充電式電源18の充電に関係のある情報を、ユーザーインターフェース54を介して提示及び受信していてもよい。例えば、ユーザーインターフェース54は、いつ充電が起こっているかということ、コイル40と48の間の整列の品質、選択されたパワーレベル、ブースト期間が起こっているかどうかということ、再充電式電源18の現在の充電レベル、現在の再充電セッションの継続期間、充電セッションの予測される残存時間、又は何れかの他の情報を、指し示すようになっていてもよい。プロセッサ50は、幾つかの例では、ユーザーインターフェース54上に表示される情報のうちの幾つかをIMD14から受信している。
【0104】
ユーザーインターフェース54は、更に、ユーザー入力をユーザーインターフェース54を介して受信している。入力は、例えば、キーパッド上のボタンを押す形態又はタッチスクリーンからアイコンを選択する形態であってもよい。入力は、再充電セッションの開始又は停止、所望の充電レベル、又は再充電式電源18の充電に関係のある1つ又はそれ以上の統計量(例えば、選択されたブースト期間又は累積加熱量)、を要求していることもある。この様に、ユーザーインターフェース54は、ユーザーが再充電式電源18の充電に関係のある情報を閲覧できるように及び/又は充電コマンドを受信できるようにしている。
【0105】
充電装置20は、更に、IMD14と関連付けられている再充電式電源18を再充電するパワーを伝送するための構成要素を含んでいる。
図3に示されている様に、充電装置20は、一次コイル48及び電源60へ連結されている充電モジュール58を含んでいる。充電モジュール58は、一次コイル48に、電源60に蓄えられている電圧から電流を生成するように構成されている。一次コイル48は
図3には簡略ループとして描かれているが、一次コイル48は多重巻きのワイヤ又は他の複雑な幾何学形状を含んでいてもよい。充電モジュール58は、プロセッサ50によって累積加熱量に基づき選択されたパワーレベルに従って電流を生成している。ここに説明されている様に、プロセッサ50は、再充電式電源18の再充電レート及びIMD14の温度を制御するべく、高パワーレベル、低パワーレベル、又は様々に異なったパワーレベルを選択することができる。幾つかの例では、プロセッサ50はIMD14のプロセッサ30によって選択されたパワーレベルに基づいて充電モジュール58を制御している。初期充電期間中は、パワーレベルはシステム10のハードウェア制限にあるか又はそれに近い高パワーレベルに設定されている。プロセッサ50は、而して、高パワーレベルでの充電の継続期間を推定熱損失に基づく選択されたブースト期間を用いて制御することができる。
【0106】
一次コイル48は、例えば複数の巻き数を有するワイヤのコイル又は患者12体内に配置されている二次コイル40と誘導結合する能力のある他の装置を含むことができる。一次コイル48は、一次コイル48内に生成された電流が二次コイル40内に電流を誘導する構成の磁界を発生させることができるように構成されているワイヤの巻線を含んでいてもよい。誘導された電流は、その後、再充電式電源18を再充電するのに使用することができる。この方式で、電流は再充電式電源18と関連付けられている二次コイル40に誘導される。一次コイル48と充電装置20の二次コイル40の間の結合効率は、2つのコイルの整列に依存している。概して、結合効率は、2つのコイルが共通軸を共有し互いに密に近接しているときに増加する。充電装置20のユーザーインターフェース54は、整列についての1つ又はそれ以上の可聴音又は視覚表示を提供するようになっていてもよい。
【0107】
充電モジュール58は、電気信号、即ち電流、を一次コイル48内に生成する1つ又はそれ以上の回路を含んでいてもよい。充電モジュール58は、幾つかの例では、指定された振幅及び周波数の交流電流を生成している。他の例では、充電モジュール58は直流電流を生成している。何れの事例でも、充電モジュール58は電気信号及びその結果としての磁界を生成して様々なレベルのパワーをIMD14へ伝送する能力を有している。この様に、充電モジュール58は、IMD14の再充電式電源18を選択されたパワーレベルで充電するように構成されている。
【0108】
充電セッションの当初における充電モジュール58が再充電式電源18を充電する時間の継続期間は、ブースト期間として、充電中の推定熱損失に基づいて選択されている。充電セッション中の初期充電期間は、再充電式電源18をできる限り少ない時間で充電するべく高パワーレベルで遂行されよう。但し、この初期充電期間、即ちブースト期間は、IMD14が隣接する組織を損傷を引き起こし得る温度へ加熱するのを防ぐために継続期間を制限される。充電モジュール58又はプロセッサ50は、而して、IMD14での推定熱損失に基づいて充電のためのブースト期間を選択することになる。IMD14における所定電流を充電中のより効率の良い結合に因って狙うなら、熱損失が低い場合にはブースト期間をより長くすることができる。
【0109】
ブースト期間中、及び充電セッションが最初に開始されたとき、充電装置20は再充電式電源18を充電するのに高パワーレベルを選択することになろう。ここに説明されている様に、この高パワーレベルは、充電装置20及び/又はIMD14の構成要素のハードウェア制限に設定されているパワーレベル及び/又は再充電式電源18へ送達される目標又は所望の電流を実現するべく選択されているパワーレベルとすることができる。1つの例では、充電モジュール58は、初期に一次コイル48を大凡2.8Wで駆動し、更にIMD14の再充電式電源18内の電流を監視している。IMD14の再充電式電源18へ流れる電流もまた大凡120mA(例えば、ハードウェア制限又は目標電流レベル)に制限される。この様に、2.8W及び120mAはシステム10にとっての2つの制限と考えることができるが、同様に他のハードウェア制限又はプログラムされた限界が充電のパワーレベルを制限していることもある。一次コイル48を駆動するのに実際に使用されるパワーレベルは、これらの限界のどれであれ最初に到達される1つに設定することができよう。言い換えれば、120mAの電流が再充電式電源18へ流れていることが充電装置20へ遠隔測定モジュール56を介して報告される。そうすると充電モジュール58は、パワーレベル(例えば、高パワーレベル)を引き下げ、2.8W未満のパワーがコイル48のために生成されるようにし、IMD14の120mA制限を超過させないようにする。逆に、充電モジュール58は一次コイル48を2.8Wの限界で駆動していてもよく、そうすると一次コイル48と二次コイル40の間の結合効率が理想を下回っていればIMD14の再充電式電源18へ送達される電流は120mAの限界より小さいということになる。従って、充電装置20又はIMD14のどちらか単一の制限が、再充電式電源18が充電されるのに用いられる高パワーレベルの実際の値を決める。
【0110】
(例えば、ブースト期間が終結した後の)パワーレベルの選択時、充電モジュール58が充電のために選択するパワーレベルは、コイル48のために生成される電気信号の1つ又はそれ以上のパラメータを変えるのに使用される。例えば、選択されるパワーレベルは、パラメータとして、ワット量、一次コイル48又は二次コイル40の電流、電流振幅、電圧振幅、パルス繰返し数、パルス幅、又はコイル48から伝送されるパワーを変調させるのに使用することのできる何れかの他のパラメータ、を指定していてもよい。この方式では、各パワーレベルは、各パワーレベルのための信号を指定している特定のパラメータセットを含んでいよう。1つのパワーレベルから別のパワーレベルへ変更する段階、例えば高パワーレベルから低パワーレベルへ変更する段階は、1つ又はそれ以上のパラメータを調節する段階を含んでいる。各パワーレベルのパラメータは、充電装置20及び/又はIMD14のハードウェア特性に基づいて選択されている。
【0111】
電源60は、作動パワーを充電装置20の構成要素へ送達することができる。電源60は、更に、充電プロセス中に一次コイル48を駆動するための作動パワーを送達している。電源60は作動パワーを生み出すためにバッテリ及びパワー生成回路を含んでいよう。幾つかの例では、バッテリは携帯式作動の延長化を可能にするように再充電式とされている。他の例では、電源60はパワーを消費者用又は商用の電源コンセントの様な配線された電圧源から引き出すようになっている。
【0112】
電源60、充電モジュール58は、充電装置20のハウジング内にあるものとして示され、一次コイル48は充電装置20の外部にあるものとして示されているが、異なった構成も使用することができる。例えば、一次コイル48も充電装置20のハウジング内に配置されていてもよい。別の例では、電源60、充電モジュール58、及び一次コイル48はどれもみな充電装置20のハウジングの外部に設置されていて充電装置20へ連結されている。
【0113】
遠隔測定モジュール56は、プロセッサ50の制御下にIMD14と充電装置20の間の無線通信を支援する。遠隔測定モジュール56は、更に、別の演算装置と無線通信技法又は有線接続を通じた直接通信を介して通信するように構成されていてもよい。幾つかの例では、遠隔測定モジュール56は、ここに説明されているIMD14の遠隔測定モジュール36と実質的に同様であり、RF又は近接誘導性の媒体を介した無線通信を提供している。幾つかの例では、遠隔測定モジュール56は、内部アンテナ又は外部アンテナの様な各種形態を取っていてもよいとされるアンテナを含んでいる。幾つかの例では、充電モジュール58はIMD14と通信するように構成されており、よって、充電モジュール58は遠隔測定モジュール56の機能性を提供するように構成されていよう。
【0114】
充電装置20とIMD14の間に通信を容易にするよう採用されるローカル無線通信技法の例には、802.11規格セット又はブルートゥース規格セット又は他の標準若しくは有標の遠隔測定プロトコルに従ったRF通信が挙げられる。この方式では、他の外部装置は、秘密保全された無線接続を確立する必要無しに充電装置20との通信が可能である。ここに説明されている様に、遠隔測定モジュール56は、IMD14からの測定された組織温度を受信するように構成されている。組織温度は、IMD14のハウジング近くか又はハウジングの外部の様に、再充電式電源18に隣接して測定されている。IMD14が組織温度を測定していてもよいが、1つ又はそれ以上の異なった植え込み型温度センサ(例えば、独立植え込み型温度感知装置)が、独立に、異なった位置の組織温度を測定しそれらの温度を充電装置20へ送信していてもよい。幾つかの例では、IMD14による複数温度示度は平均されるか又はそれ以外のやり方で用いられて単一の温度値を出し、当該温度値が充電装置20へ送信されるようになっている。温度は、異なったレート、例えば、マイクロ秒、ミリ秒、秒、分の桁、また更には時間の桁で、サンプリング及び/又は送信されていてもよい。次いでプロセッサ50が受信された組織温度を使用して累積加熱量を計算する。
【0115】
代わりの例では、ブースト期間はプロセッサ50又は充電モジュール58によって熱損失を推定するのに必要な計算全て無しに選択されている。例えば、プロセッサ50は、充電にとって適切なブースト期間を識別するのに必要な測定又は計算の数を減らすべく1つ又はそれ以上の概算を使用していてもよい。言い換えれば、充電装置20及び/又はIMD14は、幾つかの電気パラメータが既知であるか又はこれらのパラメータが測定される必要なく簡単に概算されるという方式に設計されていてもよい。1つの例では、各ブースト期間は、再充電式電源18へ送達される電流の様な1つの電気パラメータだけを測定することによって選択されている。この方式では、測定された電流はそれぞれのブースト期間と直接にマッピングされるか又は相関付けられる。電流は而して一次コイルと二次コイル間の結合効率の直接的な指標となり、推定熱損失を計算する必要はなくなる。他の例では、再充電式電源18を充電するためのブースト期間を選択するのに1つ又はそれ以上の異なった電気パラメータが測定され使用されている。何れの例でも、パワーレベル及び/又は結合効率のせいで変化する熱損失を反映している少なくとも1つの電気パラメータが使用されて、ブースト期間を特定の充電セッションに適応させるようになっている。
【0116】
ここに説明されている様に、充電装置20の構成要素の各々は、充電装置20の単一のハウジング内に在ってもよい。充電装置20の代わりの例では、1つ又はそれ以上の構成要素は、別々のハウジング内に収納されていて1つ又はそれ以上のケーブル又はワイヤを介して電気的に連結されている。例えば、充電モジュール58とコイル48は、充電装置20の構成要素の残りから分離されたハウジング内に配置されていてもよい。この方式では、プロセッサ50が充電モジュール58の作動の少なくとも一部を制御すること(例えば、再充電式電源18を充電するのに使用されるパワーレベルを制御すること)ができるように、充電モジュール58は充電装置20の構成要素の残りへ繋がれている。
【0117】
図4A及び4Bは、充電のための選択された例としてのパワーレベルのグラフと、選択されたパワーレベルに因る関連付けられる再充電式電源18のグラフである。
図4A及び
図4Bのグラフ72及び78は、充電セッションの継続期間に亘るパワーレベルの変化に対応している。言い換えれば、充電装置20は、初期ブースト期間中は高パワーレベルを使用して再充電式電源18の充電レベルを急速に増加させている。
【0118】
図4Aに示されている様に、グラフ72は、再充電式電源18を充電する場合の充電装置20の例としての選択されたパワーレベル74を描いている。ゼロ分マークのところで充電が起動又は開始されたとき、充電装置20は高パワーレベルを選択している。初期高パワーレベル74は、再充電式電源18を高速レートである例えば「ブースト」で充電するように選択されている。時間Tによって指し示されるブースト期間中のこの高速レートは、患者12が再充電式電源18を再充電するのに要する時間量を最小化することができる。充電装置20は、ブースト期間が充電レベル変更76の時点で満了するまで高パワーレベルを使用してエネルギーをIMD14へ伝送している。
図4Aの例では、ブースト期間は大凡15分に等しい時間Tの継続期間を含んでいる。
【0119】
充電レベル変更76は、ブースト期間の高パワーレベルから低パワーレベルへの変更を指し示している。選択されたブースト期間が満了してしまったので、即ち充電装置20は熱損失量を低減しなくてはならないことが示唆されていることから、充電装置20は充電レベル変更76の時点で低パワーレベルを選択することになる。但し、充電装置20は、再充電式電源18が一杯に充電されるまで再充電式電源18を低パワーレベルで充電し続けることができる。低パワーレベルは、再充電式電源18が一杯に充電されるまで実質的な時間量に亘って又は更には無期限に充電が継続し得るパワーレベル(例えば、細流充電)とすることができる。ひとたび再充電式電源18が一杯に充電されたら、充電装置20はゼロパワーレベルを選択することによって充電を終結させることができる。
【0120】
グラフ72は、高パワーレベル及び低パワーレベルを指し示している。グラフ72は高パワーレベル及び低パワーレベルしか選択されていないことを指し示しているが、充電装置20は充電セッション中に異なった複数のパワーレベルを選択するようになっていてもよい。概して、ブースト期間中には高パワーレベルが使用されているが、IMD14のより低い温度を求めるユーザー要求に基づいて、又は高パワーレベルがそれ以上使用されるべきでないことを示唆する他のトリガに基づいて、他のパワーレベルが使用されてもよい。ひとたびブースト期間が満了してしまえば、様々に異なったより低いパワーレベルが使用されてもよい。他の例では、充電装置20は、再充電式電源18を充電するときに高パワーレベルと低パワーレベルの間でしか選択されていない。
【0121】
図4Bに示されている様に、グラフ78は、充電装置20によって選択されたパワーレベル変化に因る時間経過につれた充電レート80を示している。高レート82は、充電装置20が初期ブースト期間中の充電に高パワーレベル(例えば、
図4Aのゼロ分マークから15分マークの間のパワーレベル)を使用しているときの再充電式電源18の充電レートを表している。ブースト期間が満了した時点で充電レート変更86は高パワーレベルが終結され充電レートが下がったことを指し示している。充電レート変更86は、
図4Aの充電レベル変更76に対応している。充電レート変更86後は低パワーレベルが再充電式電源18の充電を低レート84で生じさせる。再充電式電源18についての充電レベルが大凡100パーセントに達すると、再充電セッションが終結されるので充電レートはゼロへ落ちる。グラフ78は、低充電レート84が再充電式電源18の充電を完了するのに10分しかかかっていないことを示しているが、低充電レート84の継続期間は時間Tのブースト期間の継続期間に依存する。低充電レート84は、幾つかの例では、ブースト期間が短い場合にはより長い時間の期間に亘って必要になる。
【0122】
図5A及び
図5Bは、充電のための選択された例としてのパワーレベルのグラフと、選択されたパワーレベルに因る関連付けられる再充電式電源18のグラフである。
図5A及び
図5Bのグラフ90及び98は、
図4A及び
図4Bのグラフに対する代わりのパワーレベル変更を描いている。
図5Aは充電のための3つの異なったパワーレベルを描いており、
図5Bは各選択されたパワーレベルに因る充電レートを描いている。第1のパワーレベルは、ブースト期間中の高パワーレベルである。
図5A及び
図5Bの技法は、ブースト期間の満了後で且つ累積加熱量が加熱量閾値に達する前のパワーレベル変更を描いている。
【0123】
図5Aに示されている様に、グラフ90は、再充電式電源18を充電する場合の充電装置20の例としての選択されたパワーレベル92を描いている。ゼロ分マークのところで充電が起動又は開始されたとき、充電装置20は高パワーレベルを選択し、IMD14での推定熱損失に基づいて適切なブースト期間を選択している。ゼロ分マークから15分マークの間の初期高パワーレベルは、再充電式電源18を高速レートである例えば「ブースト」で充電するように選択されている。ブースト期間のこの高速レートは、患者12が再充電式電源18を再充電するのに要する時間量を最小化することができる。充電装置20は、時間Tのブースト期間が充電レベル変更94の時点で満了するまで高パワーレベルを使用してエネルギーをIMD14へ伝送している。ブースト期間中の結合効率への何らかの変化に依存して、計算される累積加熱量は加熱量閾値超過に迫ることもあればそうでないこともある。
【0124】
充電装置20は、ブースト期間の終局時点での利用可能加熱量を計算して、再充電セッションのためのより低いパワーレベルを選択する時期を求めることができる。利用可能加熱量は、累積加熱量を加熱量閾値から減算することによって計算することができる。而して、利用可能加熱量はIMD14が周辺組織へなお安全に提供することのできる総熱を指し示している。累積加熱量は、ブースト期間が終結した後のパワーレベルを調節するのに使用することができる。
【0125】
充電装置20がブーストモードの満了時に高パワーレベルを終結させたら、充電装置20は中パワーレベルを選択している。充電レベル変更94は、ブースト期間が15分マークで満了した時点でパワーレベルが高から中へ変更されたことを指し示している。そうして充電装置20は再充電式電源18を15分から20分の間は中パワーレベルで充電している。累積加熱量が加熱量閾値を超過したとき、充電レベル変更96は充電装置が再充電式電源18の追加の充電のために低パワーレベルを選択していることを指し示している。追加の充電は、再充電式電源18が未だ一杯まで充電されていない場合に限って遂行されることになる。選択されるパワーレベル92は、而して、累積加熱量がIMD14の周辺の組織によって受け取られる熱量を指し示すのに合わせて変わる。充電装置20は、再充電式電源18が一杯に充電されるまで、再充電式電源18を低パワーレベルで充電し続けることになる。再充電式電源18が一杯まで充電されたら、充電装置20はゼロパワーレベルを選択することによって充電を終結させる。
【0126】
図5Bに示されている様に、グラフ98は、充電装置20によって選択されたパワーレベル変化に因る時間経過につれた充電レート100を示している。高レート102は、充電装置20が充電(例えば、時間Tのブースト期間中)について高パワーレベルを選択したときの再充電式電源18の充電レートを表している。ブースト期間が満了した時点で充電レート変更108は充電レートが下がったことを指し示している。充電レート変更108後は中パワーレベルが再充電式電源18の充電を中レート104で生じさせる。また、累積加熱量が加熱量閾値を超過した時点で充電レート変更110は充電レートが下がったことを指し示している。充電レート変更110後は低パワーレベルが再充電式電源18の充電を低レート106で生じさせる。再充電式電源18についての充電レベルが大凡100パーセントに達すると、再充電セッションが終結されるので充電レートはゼロへ落ちる。
【0127】
図5Aのグラフ90は、高パワーレベル、中パワーレベル、及び低パワーレベルを指し示している。グラフ90は、充電装置が、ブースト期間(例えば、時間Tの間)の満了及び組織温度から計算される累積加熱量に基づいて3つの異なったパワーレベルの間で選択していることを指し示している。他の例では、充電装置は、より多数のパワーレベルを利用して、パワーレベルをより小さい増分で変更している。従って、充電装置20は、充電セッション中の再充電レート及びIMD14温度のより細かい制御を提供することができる。より細かいパワー制御は、充電装置20がIMD14の温度を漸進的に変化させられるようにし、例えば累積加熱量が充電停止後でさえ加熱量閾値を超過しないようにIMD14の温度を下げることを可能にする。このことは、とりわけ、IMD14の電流値が目標化されているとき(例えば、充電パワーレベルを制限するのにIMD14の電流が使用されている場合)に、ブースト期間開始後の結合効率増加に因りブースト期間が長くなってしまっている状況では有用であろう。
【0128】
図4A、
図4B、
図5A、及び
図5Bでは、充電装置20は、累積加熱量が加熱量閾値を超えた後でさえ低充電レベルを選択している。これらの事例では、低充電レベルは、IMD14の無視できるほどの加熱しか生じさせない。言い換えれば、対応する低充電レートの適用中にIMD14に発生する熱は、温度が平常体温に近いので、累積加熱量への有意増加を引き起こさない。但し、他の例では、低充電レベルはなおもIMD14に熱を発生させ、累積加熱量に寄与する可能性がある。この事例では、充電装置20は、再充電式電源18の充電を終結してもよい(例えば、ゼロパワーレベルを選択する)。
【0129】
図6A及び
図6Bは、初期充電中の推定熱損失に基づいて選択される異なったブースト期間についての時間経過につれた例としての充電パワーレベルのグラフである。
図6A及び
図6Bは実質的に
図4Aと同様である。但し、
図6A及び
図6Bは、ブースト期間がIMD14での異なった推定熱損失についてどの様に変化するかを示している。
図6Aのグラフ112は低い熱損失に係る選択されたブースト期間を指し示し、
図6Bのグラフ118は高い熱損失に係る選択されたブースト期間を指し示している。各ブースト期間の継続期間は例示にすぎず他の例では変わることもある。
【0130】
図6Aに示されている様に、グラフ112は、再充電式電源18を充電する場合の充電装置20の例としての選択されたパワーレベル114を描いている。ゼロ分マークのところで充電が起動又は開始されたとき、充電装置20は高パワーレベルを選択している。初期高パワーレベル114は、再充電式電源18を高速レートである例えば「ブースト」で充電するように選択されている。時間T
1によって指し示されている20分のブースト期間のこの高速レートは、患者12が再充電式電源18を再充電するのに要する時間量を最小化することができる。ブースト期間T
1の満了時点で、充電レベル変更116はブースト期間の高パワーレベルから低パワーレベルへの変更を指し示している。充電装置20は、再充電式電源18が一杯に充電されるまで、再充電式電源18を低パワーレベルで充電し続けることになる。
【0131】
図6Bに示されている様に、グラフ118は、再充電式電源18を充電する場合の充電装置20の例としての選択されたパワーレベル120を示している。ゼロ分マークのところで充電が起動又は開始されたとき、充電装置20は高パワーレベルを選択している。初期高パワーレベル120は、再充電式電源18を高速レートである例えば「ブースト」で充電するように選択されている。時間T
2によって指し示されている10分のブースト期間のこの高速レートは、患者12が再充電式電源18を再充電するのに要する時間量を最小化することができるが、ブースト期間T
2は
図6Aのブースト期間T
1より少ない。この差は、
図6BではIMD14の推定熱損失が
図6Aの充電セッションについて求められた熱損失より大きいことが理由で起こっている。ブースト期間T
2の満了時点で、充電レベル変更120はブースト期間の高パワーレベルから低パワーレベルへの変更を指し示している。充電装置20は、再充電式電源18が一杯に充電されるまで、再充電式電源18を低パワーレベルで充電し続けることになる。ブースト期間T
2はブースト期間T
1より短いので、充電装置20は、満充電を実現するには、再充電式電源18を低パワーレベルで
図6Aのより長いブースト期間後に必要となるより長い継続期間に亘って充電することが必要である。
【0132】
概して、ブースト期間が初期に求められた推定熱損失に基づいて選択されたら、充電装置20は、ブースト期間が満了する(例えば、経過する、終結する、又は停止する)まで再充電式電源18を充電し続けることになる。言い換えれば、ブースト期間は、原初に選択されたブースト期継続期間が満了するまで継続期間に変更は無い。幾つかの例では、充電装置20は、再充電式電源18を充電するのにブースト期間が使用されている最中も当該ブースト期間の継続期間を調節するように構成されている。ブースト期間の継続期間を調節することによって、充電装置20は結合効率の増減に因る熱損失の変化を補償することができる。
【0133】
ここに説明されている様に、充電装置20及び/又はIMD14は、充電セッションの当初に推定熱損失を求めることができる。また一方で、充電装置20は、ブースト期間中にも推定熱損失を1回又はそれ以上の回数、再計算又は再確定するようになっていてもよい。例えば、充電装置20は、ブースト期間開始後の所定時に熱損失を再計算するようになっていてもよい。所定期間は選択されたブースト期間にかかわりなく或る設定時間にされていてもよい。例えば、充電装置20は、ブースト期間開始後1分に結合効率の変化をチェックするべく熱損失を再計算するようになっていてもよい。他の例では、所定期間は選択されたブースト期間の或る割合に設定されている。例えば、充電装置20はブースト期間の20パーセントが満了した後に熱損失を再計算するようになっていてもよい。これらの所定期間は、他の例では、より短いこともあればより長いこともある。代わりに、充電装置20は、熱損失をブースト期間中に数回再計算していてもよいし、又は周期的若しくは継続的に再計算していてもよい。
【0134】
推定熱損失を再計算することで、充電装置20は一次コイルと二次コイルの間の結合効率への何らかの変化を識別できるようなる。推定熱損失が前の計算より大きければ、充電装置20はブースト期間の時間の継続期間を減少させることができる。推定熱損失が前の計算より小さければ、充電装置20はブースト期間の時間の継続期間を増加させることができる。幾つかの例では、充電装置20は方程式を使用して以降の推定熱損失に基づきブースト期間を増減させている。他の例では、充電装置20は、以降のブースト期間を異なったルックアップ表から選択している。このルックアップ表は、新たなブースト期間を、新たな推定熱損失に基づいて、前に選択されたブースト期間に基づいて、現在のブースト期間の経過時間に基づいて、又はそれらの何らかの組合せに基づいて、提供することができる。代わりの例では、累積加熱量がブースト期間について計算され、それを使用して充電の高パワーレベルについての残存ブースト期間が求められている。このブースト期間再評価は計算集約的であり、変化してゆく充電条件に基づくより正確なブースト期間を提供することができる。
【0135】
図7は、MD14再充電時における充電のブースト期間中及びブースト期間後の患者に発生する例としての温度のグラフである。
図7に示されている様に、グラフ124は再充電式電源18の再充電中の時間経過につれた温度126を含んでいる。グラフ124は、例としての
図4A及び
図4Bの充電セッション時のIMD14の周辺の組織温度を表している。この温度は、IMD14内で、IMD14のハウジング上で、又はIMD14の周辺の組織内で、測定されていてもよい。代わりに、温度は、IMD14へ伝送されるパワーと、伝送パワーに基づき時間経過につれて組織がどの様に応答し得るかの組織モデルと、に基づいて計算されていてもよい。従って、温度126は、再充電式電源18が所与の再充電パワーレベルで再充電されているときにIMD14のハウジングの周囲の組織及び/又は当該ハウジングに接触している組織の温度がどの様に変化しているかを表している。他の例では、温度126は、より低い温度に制限されていることもあるし、又はより高い温度(例えば、摂氏42度まで、又は摂氏43度まで)に達するのを許容されていることもある。
【0136】
グラフ124は、充電装置20が再充電式電源18を時間Tのブースト期間中には高パワーレベルで初期充電しブースト期間満了後に低パワーレベルで充電したときに温度126がどの様に変化するかを指し示している。再充電式電源18の充電がゼロ分マークで始まったら(パワーレベル変更128)、温度126は大凡摂氏37度から上昇し始める。充電装置20はブースト期間中はパワーを高パワーレベルで伝送するので、再充電式電源18は高速レートで充電され、IMD14及び周辺組織の温度は、低伝送パワーレベルでのより低速な充電レートに比べ相対的に高いレートで上昇してゆく。温度126は伝送パワー及び組織の熱放散能力に基づき或る特定の大きさ(例えば、大凡摂氏41.5度)に達する。
【0137】
時間Tは、IMD14の推定熱損失に基づく選択されたブースト期間の継続期間を指し示している。充電装置20又はIMD14が累積加熱量を計算する場合、累積加熱量はこの総熱量を指し示す多種多様な技法を使って計算することができる。例えば、温度126は、累積加熱量を度−分で計算するように時間に対して積分されてもよい。累積加熱量は、所望の時間的期間についての温度126曲線下面積であり、当該時間的期間に亘ってIMD14から組織へ送達される総熱量を表している。平常の生理的な組織温度は大凡摂氏37度であるので、温度126は、この約摂氏37度の下限温度についてのみ積分されている。また一方で、何れの温度であってもそれを下限温度として使用して加熱量閾値又は何れかの他の閾値が同様に確立される限りにおいては、当該温度を下限温度として使用して累積加熱量を計算することができる。例えば、累積加熱量を計算するための開始温度又は温度下限は、IMD14の場所や患者12の周囲の環境条件に因り、また更には患者12の健康状態に因って、37度より低いこともあれば高いこともある(例えば、患者12が熱を出し体温が上昇していることもある)。
【0138】
他の例では、累積加熱量は代わりの技法を使って計算されている。例えば、充電装置20は、時間の各区分(例えば、分毎)について温度126を平均し、分毎の平均温度を合算して累積加熱量を計算してもよい。代わりに、累積加熱量は、異なった温度の大きさにおける組織への効果を勘案したより複雑な方程式を使用して、例えば異なった温度では時間を差別的に重み付けして、計算されてもよい。
【0139】
温度126が上昇してゆくと、各増分的温度変化の効果が望ましからざる組織効果の不均衡増加を引き起こし患者の快適さを低下させる。言い換えれば、温度が変化する毎に組織を当該温度に安全に曝せる時間量は指数的に減少する。例えば、組織を摂氏41度に4時間曝すことは安全であっても、43度への僅かな温度上昇が安全な曝露時間をたったの30分へ引き下げることになる。この方式では、累積加熱量は、時間経過につれた温度と望ましからざる副作用の間の非線形関係を勘案して計算することができる。
【0140】
ブースト期間が満了すると、充電装置20はパワーレベル変更130で充電パワーを低パワーレベルへ下げる。
図7の例では、ブースト期間は、再充電式電源18を高パワーレベルで充電し始めてから大凡15分の継続期間の後に満了している。ブースト期間後の低パワーレベルは而して再充電式電源18が充電されるレートを落としており、温度64はこの伝送パワー減少に伴って下がり、時間経過につれて伝送パワーが僅かながらも再び温度64を上昇させるまで下がってゆく。他の例では、充電装置20は高パワーレベルと低パワーレベルの間の中パワーレベルを選択して、ブースト期間中の温度上昇無しに且つ低パワーレベルよりも高いレートで再充電式電源18を充電している。この事例では、充電装置20及び/又はIMD14は、累積加熱量を計算し、それを累積加熱量閾値と比較している。何れの事例でも、充電装置20は、温度126を使って計算される累積加熱量に基づいて、ブースト期間後に再充電式電源18を充電するためのパワーレベルを選択することができる。
【0141】
グラフ124の温度126は、IMD14の再充電式電源18を充電することに因る組織温度変化の単に一例である。他の例では、温度126はより高速レート又はより低速レートで変化している。加えて、温度126は、より低い温度で横ばい状態になっていることもあれば、より高い温度で横ばい状態なっていることもあるし、再充電セッション中に全く横ばい状態にならないこともある。この方式では、加熱量閾値、累積加熱量を計算する方法、及び患者12によって受け取られる累積加熱量を管理するための他の変数は、充電装置20、IMD14、及び患者14の個別の特性に基づいて調節されることになる。
【0142】
図8A及び
図8Bは、異なった推定熱損失値134及び対応するIMD14内充電電流135に対応しているブースト期間137を有する例としてのルックアップ表132A及び132Bである。加えて、ルックアップ表132A及び132Bは、対応する充電電流135での相対充電レートを指し示している充電レート値136を含んでいる。ここに説明されている様に、充電装置20及び/又はIMD14は、IMD14での推定熱損失に対応するブースト期間が選択されるようにルックアップ表を記憶している。
図8A及び
図8Bの例では、それぞれのルックアップ表132A及び132Bは異なったブースト期間137を含んでおり、ブースト期間137は各々が異なった熱損失値134の1つに対応している。幾つかの例では、ルックアップ表132A及び132Bは単一のルックアップ表として記憶されている。
【0143】
充電電流135と充電レート値136は、IMD回路機構及びバッテリ(例えば、再充電式電源18)の容量の1つの例に固有である。表132Aは1.0ワット(W)から2.0Wの間のより小さい熱損失値を含んでおり、132Bは2.8Wから13.0Wの間のより大きい熱損失値を含んでいる。熱損失値134、充電電流135、及び充電レート値136が増加すると、対応するブースト期間137は減少する。
【0144】
充電装置20及び/又はIMD14は、求められたIMD14からの推定熱損失に対応している適切なブースト期間を選択するために、例としてのルックアップ表132A及び132Bの様な、ルックアップ表を利用することができる。例えば、ルックアップ表132Aを使って、充電装置20は充電セッション当初の推定熱損失が大凡1.4ワット(W)であると求める。そうすると充電装置20は940秒(例えば、15分40秒)の対応するブースト期間を選択することができる。言い換えれば、推定熱損失が1.4Wであると求められた場合、高パワーレベルで充電するためのブースト期間は継続期間が940秒ということになる。
【0145】
充電電流135は、対応する熱損失値134の熱損失でIMD14内に起こり得る例としての充電電流である。充電電流135の各々は、再充電式電源18の充電が始まって起こる。充電電流が高いほど、引き起こされる熱損失は大きく、ブースト期間は短くなる。例えば、83.6ミリアンペア(mA)の充電電流は大凡1.0Wの熱損失及び大凡1820秒の利用可能ブースト期間に対応する。比較として、122.0mAの充電電流は大凡1.6Wの熱損失及び大凡720秒の利用可能ブースト期間に対応する。充電装置の一次コイルから生成されるパワーが大きいほど、当該パワーによってIMD14内に生じる充電電流はより高くなり、IMD14からの熱損失はより大きくなり、また利用可能ブースト期間はより短くなる、という結果に至る。
【0146】
図8A(及び
図8B)に提供されている充電電流135は、IMD14の充電回路機構及びバッテリの1つの構成について適用可能である。例えば、他の例では、異なった充電回路機構、バッテリ容量、IMD幾何学形状、材料、及び他の変数が、異なった充電電流135及び熱損失値134に寄与する場合もある。加えて、一次コイルによって生み出されるパワーが同じ場合については、一次コイルと二次コイルの間の結合効率が低いほど充電電流135は低くなる。また、幾つかの例では、IMD14は充電電流を制限している。IMD14は、バッテリ容量、材料選択、又は他の設計上の考慮事項に基づき、充電電流を制限するように構成されていてもよい。例えば、IMD14は、充電電流を、120mAに、140mAに、又はIMD14の固有の構成に適するように選択されている何れかの他の限界に、制限するように構成されていてもよい。
図8A及び
図8Bの例としての充電電流135は、(表132B中の10Cの充電レートの様な)高い充電レートを実現するように、及び/又は非常に低い放電電圧を可能にするように、チタン酸リチウム負活物質を備える負電極を有する再充電式電源18に対応している。
【0147】
充電レート値136は、或る特定のバッテリ容量及びバッテリに印加される充電電流135についての相対充電レートに対応している。充電レート値136は、充電電流をバッテリ容量で除算することによって計算することができる。従って、より大きい容量のバッテリでは同等の充電レートを維持するのに、より高い充電電流が必要である。
図8Aと
図8Bの例では、バッテリは85ミリアンペア−時(mAh)容量を有するものであり、IMDは、例としての充電電流135を生じさせる特定の回路機構、寸法、及び材料を有している。より高い充電レート値136は再充電式電源18のより高速な充電を提供するが、これらのより高い充電レートでのブースト期間の継続期間はIMDによるより高い熱損失のせいで制限されることになる。
【0148】
1つの例では、充電装置20は、充電モジュール58を制御して、大凡0.5Cより大きい充電レートで再充電式電源18を充電させている。他の例では、充電装置20は、充電モジュール58を制御して、大凡1.0Cより大きい充電レート、例えば大凡1.0Cから2.0Cの間の充電レートで、再充電式電源18を充電させている。これらの例としての充電レートは表132Aに示されている。幾つかの例では、充電装置20は、充電モジュール58を制御して、大凡5.0Cより大きい充電レート、例えば大凡5.0Cから10.0Cの間の充電レートで、再充電式電源18を充電させている。これらの例としての充電レートは表132Bに示されている。他の例では、10.0Cより大きい充電レートも利用されている。何れの例でも、充電レート及び対応するブースト期間は再充電式電源18の相対的に高速な充電を可能にする。以上に説明されている様に、高い充電レートは、再充電式電源18の満充電電圧より大きい定電圧で充電することによって実現し易くなる。幾つかの例では、充電モジュール58を制御する段階は、所望の充電レートを実現することに的を絞った充電信号を出力する段階を含んでいる。充電装置20が充電モジュール58を制御して或る特定の充電レートで再充電式電源18を充電させるようになっていてもよいが、代わりに充電モジュール58が少なくとも一部には充電装置20からの充電信号に基づいて充電レートを制御するようになっていてもよい。
【0149】
例えば、表132Bに示されている大凡10.0Cの充電レートでは、この高い充電レートのブースト期間は、発生した熱が患者へ奪われてゆくせいで大凡6秒に制限されている。他の例で、IMD14が異なった材料で構築されている及び/又は異なった寸法である場合に、ブースト期間は高い充電レートではより長くなることもある。
【0150】
ルックアップ表132Aは、約1.0Wから2.0Wの間の熱損失値134の範囲についてのブースト期間136を提供している。これらの熱損失値は、450秒から1820秒の間のブースト期間の範囲に対応している。熱損失が1.0Wより小さいか又は2.0Wより大きい(例えば、熱損失値134がより高値である)場合、充電装置20は、求められた熱損失がルックアップ表132Aの範囲から外れてしまうなら対応している最も長い又は最も短いブースト期間を選択することになる。例えば、推定熱損失が2.0Wより大きくても450秒のブースト期間がなお使用されることになる。これらの最大及び最小のブースト期間は而して最良の場合及び最悪の場合の熱損失シナリオについて選択されている。他の例では、充電装置20は、ルックアップ表132Aの範囲を外れる推定熱損失についてはブースト期継続期間を外挿している。充電装置20は、追加的に、推定熱損失が何れか2つの熱損失値134の間に納まる場合もブースト期間を外挿するようになっていてもよい。
【0151】
代わりに、
図8Bのルックアップ表132Bは、2.0Wより大きい推定熱損失について使用することができる。ルックアップ表132Bは、大凡2.4Cから10.0Cの間のそれぞれの充電レート136での大凡216秒から6秒の間のブースト期間137を提供している。ブースト期間を対応する熱損失について提供するべくIMD14によって記憶されている何れかのルックアップ表は、IMD14にとって利用可能とされる実現可能充電電流によって制限されよう。従って、ブースト期継続期間は、IMD14及び/又は再充電式電源18の充電制限によって制限されるものである。ブースト期間が患者12への許容可能放出熱によって制限されない限り、ルックアップ表132Bのより高い充電レート値136が再充電式電源18のより高速な再充電を可能にする。
【0152】
幾つかの例では、ブースト期間136の各々は、熱損失値の或る範囲に対応している。例えば、推定熱損失が1.3Wより大きく、但し1.4W以下である場合、1.4Wに対応している940秒のブースト期間が選択されることになる。この様に、充電装置20は、より短い方のブースト期間136へ丸められる。この様により短いブースト期間へ丸めることは、IMD14からの組織損傷温度レベルの潜在性を制限する。熱損失値134及びブースト期間136の値は例にすぎず、異なった患者、植え込み場所、IMD14の型式、患者快適性レベル、又は何れかの他の変数について異なっていよう。この方式では、ルックアップ表132の推定熱損失値134は、1.0Wより低いこともあれば2.0Wより大きいこともあろう。加えて、ルックアップ値の熱損失値は、異なった単位で表わされているか又は熱移動レートに代えて絶対熱値として提供されていてもよい。代わりに、IMD14は、ルックアップ表132A又は132Bによって提供されている熱損失値134の間の推定熱損失についてはブースト期間137の間で内挿していてもよい。
【0153】
ブースト期間は、IMDの熱損失及び特性に依存して、1秒乃至数秒から60分超の間の継続期間を有していることもあろう。1つの例では、ブースト期間は大凡5分から大凡35分の間の継続期間を有していよう。別の例では、ブースト期間は大凡10分から大凡25分の間の継続期間を有していよう。
図8Aの例では、ブースト期間は450秒(7分30秒)から1820秒(30分20秒)の間である。代わりに、ブースト期間は、(
図8Bの例としてのルックアップ表132Bに示されている様に)5分より小さくなるように選択されていてもよいし又は35分より大きくなるように選択されていてもよい。幾つかの例では、それぞれのルックアップ表によって提供されている熱損失値を外れる何れかの推定熱損失については、ルックアップ表132A又は132Bの最も長いブースト期間又は最も短いブースト期間が提供されている。言い換えれば、ブースト期継続期間は、最悪の場合の熱損失シナリオ(例えば、より高い熱損失)時には最も短いブースト期間までに上限規制され、最良の場合の熱損失シナリオ(例えば、より低い熱損失)時には最も長いブースト期間までに上限規制されるということである。
【0154】
幾つかの例では、ルックアップ表132A及び132Bのブースト期間137は、1つ又はそれ以上の患者選好に従って調節されている。例えば、患者12は、IMD14からの上昇した温度に敏感で充電中のIMD14のより低い温度を所望することもある。充電装置20は而して患者選好に従ってブースト期間137の各々を引き下げるようにしてもよい。逆に、患者12がより短い充電セッションを所望していて充電セッション中のIMD14のより高い温度に耐容できるなら、充電装置20はブースト期間137を引き上げるようにしてもよい。
【0155】
1つの例では、ブースト期間137は、3つの異なった継続期間に設定されている。患者12は、3つの異なったブースト期間選好の1つを指定する入力を提供することができる。例えば、患者12は、次の充電セッションについて「冷」(より短いブースト期間)、「平均」(平均的ブースト期間)、又は「温」(より長いブースト期間)の間で選択するようになっていてもよい。他の例では、患者12がブースト期間137の調節に対してより細かい制御をもたらす入力を提供するようになっている。幾つかの例では、ルックアップ表はデフォルトによって各熱損失値134についてなし得る最も長い実施可能なブースト期間137を提供する。次いで患者選好が各ブースト期間を患者の選好に従って引き下げることになる。患者12は、選好入力を、充電装置20を介して又は充電装置20及び/又はIMD14と通信する別のプログラミング装置を介して提供することができる。
【0156】
幾つかの例では、ブースト期間137の継続期間は、大凡摂氏37度の開始時IMD14隣接温度に基づき求められている。但し、ブースト期間137は、より低い又はより高い開始温度について補償するように確定又は調節されてもよい。例えば、充電セッションの開始に先立って温度センサ39がIMD14の初期開始温度を提供するようになっていてもよい。1つの例では、より高い開始温度(例えば、患者12が熱を出していることもある)を使用してブースト期間136の継続期間を引き下げ、ブースト期間中の患者12への熱損失が所望の閾値を超えないようにすることもできる。この方式では、ここに説明されているブースト期間は、少なくとも一部には充電セッション開始に先立つIMD14の測定温度に基づいて求められている。
【0157】
図8A及び
図8Bの推定熱損失値134、充電電流135、及びブースト期間137は、一次コイルと二次コイル間の同様の結合効率での異なった充電信号に対応している。従って、結合効率がより低ければ、同じ充電電流での熱損失はより高くなる(又は同じ熱損失についてはより低い充電電流となる)。逆に、結合効率がより高ければ、同じ充電電流での熱損失はより低くなる(又は同じ熱損失についてはより高い充電電流となる)。幾つかの例では、表132A及び132Bは、ブースト期間の継続期間を求める際の強化された安全係数を確立するべくより低い結合効率に基づいて生成されている。
【0158】
図9A及び
図9Bは、例としての充電ルーチンを時間経過につれた充電電圧及び充電電流に関して描いている。
図9Aは、1つの例としての理論上の充電ルーチン又はアルゴリズムを描いているグラフ138Aの例示である。
図9Aに示されている様に定電圧充電ルーチンが利用されており、IMD14は充電電圧を140Aレベル(例えば、定電圧)で制御している。電圧レベル140Aは、再充電式電源18(即ち、バッテリ)の期待最終充電電圧144(例えば、満充電電圧)より大きい。言い換えれば、最終充電電圧144又は満充電電圧は、バッテリ(例えば、再充電式電源18)が満容量まで一杯に充電されたときの電圧ということになる。電圧レベル140Aは、幾つかの例では、トップオフ電圧とも呼称されている。充電が定電圧で遂行されているとき、充電電流レベル142Aは、初期には高い定電圧に見合うべく高くなり、再充電式電源18の充電を速やかに始める。幾つかの事例では、充電レートは10C又はそれ以上になっている。充電電流レベル142Aは時間と共にバッテリの容量が増加するにつれ減少している。1つの例では、充電モジュール38は再充電式電源18の再充電を当該再充電式電源18の満充電電圧(例えば、最終充電電圧144)より大きい定電圧(例えば、電圧レベル140A)に制御している。別の例では、充電装置20が充電モジュール38を制御して再充電式電源18を当該再充電式電源18の満充電電圧より大きい定電圧で充電させている。
【0159】
バッテリの最終充電電圧144(即ち、一杯に充電されたバッテリの開回路電圧)が大凡3.0ボルトである例では、IMD14はバッテリを
図9Aに示されている様に大凡4.5ボルトまでの定電圧で充電している。所望最終充電電圧144と充電電圧レベル140Aの間の1.5ボルトの差は、負電極の近似電位を表している。この充電ルーチンは、充電運転の少なくとも一部については過電位(例えば、70ミリボルトより大きい過電位)を生じさせる。他の例では、最終充電電圧及び定充電電圧は異なってはいるが、充電電圧は概してバッテリの最終充電電圧より大きい。この様に、再充電式電源18の充電は、従来の負電極材料(例えば、炭素など)を使用するバッテリの充電に比べ、相対的に速いレートで達成させることができる。
【0160】
図9Aに示されている様なバッテリの充電を終結させるべき時点を求めるために、様々なカットオフ判定基準が利用されていてもよい。チタン酸リチウム活物質を負電極に使用しているバッテリは、充電の終わりにセル電圧の比較的急激な増加を経験することになる。このセル電圧の急激な増加は、負電極電位の比較的急激な減少に対応したものであって、概して炭素又は他の従来の負活物質を使用するバッテリには存在しない(この時点での負電極の電位は既にほぼゼロボルトであるため)。充電中のこの時点の識別は、充電がほぼ完了していること及び/又は充電を停止させるべきであることの指標として使用することができる。バッテリ(例えば、再充電式電源18)の充電を停止させるべき時期を求めるのに様々な他の技法を使用することもできる。例えば、充電モジュール38又はIMD14の他の回路機構が、充電期間の起動から所定の時間量が経過したとの判定に応えてバッテリの充電を停止するようになっていてもよい。別の例では、充電モジュール38又はIMD14の他の回路機構が、バッテリの電流が所定閾値より下に落ちている(即ち、充電電流レベル142Aが所定の閾値の値より下に落ちているかもしれない)との判定に応えてバッテリの充電を停止する(又は充電の終結を制御する)ようになっている。代わりの例では、充電モジュール38又はIMD14の他の回路機構は、時間につれたバッテリの電流勾配(即ち、di/dt)が所定の閾値より下に落ちているとの判定に応えてバッテリの充電を停止するようになっている。
【0161】
図9Bは、別の例による理論上の充電ルーチン又はアルゴリズムを描いているグラフ138Bを含んでいる。
図9Bの例に示されている様に、定電流充電ルーチンが利用されており、IMD14は充電電流レベル142Bを定レベルに制御している。充電電圧レベル140Bは、電圧が終極的にバッテリの最終充電電圧144(例えば、3.0ボルト)より大きいレベル(例えば、4.5ボルト)に到達するまでの時間経過につれた電圧変化を表している曲線である。ここでも同様に、チタン酸リチウム材料の負活物質としての使用が理由で、充電中の幾つかの時点で過電位が一例として大凡70ミリボルトを超過したとしても、負電極のリチウムめっきは回避される。この方式では、バッテリの充電は、従来の負電極材料(例えば、炭素など)を使用するバッテリの充電に比べ、相対的に速いレートで達成させることができる。1つの例では、充電モジュール38は再充電式電源18の再充電を充電電流レベル142Bの定電流に制御している。
【0162】
図9Bに示されているバッテリの充電を終結させるべき時点を決めるために、様々なカットオフ判定基準が利用されていてもよい。例えば、充電モジュール38又はIMD14の他の回路機構が、バッテリ電圧が所定の閾値を超過している(即ち、充電電圧レベル140Bが、4.5ボルトの様な所定の閾値より上に上がっている)とのIMD14の判定に応えてバッテリの充電を停止するようになっていてもよい。別の例では、充電モジュール38又はIMD14の他の回路機構は、時間に伴うバッテリ電圧の勾配(即ち、dV/dt)が所定の閾値を超過しているとの判定に応えてバッテリの充電を停止するようになっていてもよい。代わりの例では、充電モジュール38又はIMD14の他の回路機構は、バッテリの電圧の勾配対バッテリの容量(即ち、dV/dQ)が所定の閾値を超過しているとの判定に応えてバッテリの充電を停止するようになっている。
【0163】
図9A及び
図9Bの充電電圧又は充電電流は、例えば再充電式電源18の特性又はIMD14の他の特性に従って、IMD14又は充電装置20によって選択されてもよい。1つの例では、IMD14は、更に、定電圧又は定電流が再充電式電源18の最終電圧より大きい電圧を実現するために、より高いパワーレベルのブースト期間を選択している。IMD14は、充電を高パワーレベル(例えば、バッテリの最終電圧より大きい電圧)で始めたときに再充電式電源18へ最初に送達されるパワーに基づいて、推定熱損失を求めることができる。次いで、IMD14は、推定熱損失に基づいてブースト期間を選択し、引き続き充電モジュール38を制御して再充電式電源18を選択されたブースト期間の継続期間中は高パワーレベルで充電させる。選択されたブースト期間中は、10C又はそれより大きい充電レートが実現される。
【0164】
図10は、IMD14からの推定熱損失に基づいてブースト期間を選択するための例としての技法を示している流れ線図である。充電装置20のプロセッサ50が概して
図10の技法を遂行するものとして説明されているが、
図10の技法は代わりに他の例ではプロセッサ30とプロセッサ50の組合せによって又は他の装置によって遂行されていてもよい。
【0165】
再充電式電源18の充電セッションはプロセッサ50が充電要求をユーザーインターフェース54を介して受信したときに始まる(150)。応えて、プロセッサ50は充電モジュール58に指令して再充電式電源18の高パワーレベルでの充電を始めさせる(152)。充電セッションが始まると、充電モジュール38又はIMD14の別の回路がIMD14の再充電式電源18へ送達される電流を測定する(154)。充電モジュール38は再充電式電源18の電圧も測定しており、そうするとプロセッサ50は測定された電圧を再充電式電源18への測定された電流で乗算して再充電式電源18へ送達されるパワーを計算する(156)。測定された電流及び電圧は、充電データとして、遠隔測定モジュール34によって充電装置20へ送信される。他の例では、プロセッサ30が再充電式電源18へ送達されるパワーを計算し、計算されたパワーを充電データとして充電装置20へ送信している。
【0166】
計算された再充電式電源18への送達パワーを使って、プロセッサ50はIMD14からの推定熱損失を計算する(158)。ここに説明されている様に、推定熱損失を計算する段階は様々な技法を使って遂行することができる。例えば、プロセッサ50は充電装置20の一次コイル48へ送達されるパワーを計算し、一次コイル48で失われるパワーを計算する。プロセッサ50は、次いで、一次コイル48で失われるパワーと再充電式電源18へ送達されるパワーを一次コイル48へ送達されるパワーから減算する。これらの計算には、一次コイル48の又は一次コイル48と充電モジュール58の間の電流及び/又は電圧の様な、充電システムの様々な構成要素間の電流及び電圧の測定値が含まれていよう。
【0167】
プロセッサ50は、次に、推定熱損失に基づいて充電のためのブースト期間を選択する(160)。ここに説明されている様に、ブースト期間は、複数の推定熱損失値各々がそれぞれのブースト期間に対応しているルックアップ表から選択することができる。他の例では、プロセッサ50は、推定熱損失に基づいてブースト期間を計算している。プロセッサ50は、次いで、充電モジュール58を制御してブースト期間中は高パワーを使用して再充電式電源18を充電させる(162)。高パワーレベルは、更に、
図9A及び
図9Bにそれぞれ記載されている定電圧又は定電流を使って印加されていてもよい。ブースト期間が経過又は満了していなければ(ブロック164の「ノー」枝路)、充電モジュール58は充電セッションを高パワーレベルで続行する(162)。
【0168】
ブースト期間が経過していたら(ブロック164の「イエス」枝路)、プロセッサ50は充電モジュール58を制御して再充電式電源18が一杯に充電されるまで再充電式電源18を低パワーレベルで充電させる(166)。ここに説明されている様に、低パワーレベルは、IMD14の周辺の組織に当該組織を損傷させるに足る十分な熱をもたらさない充電レートを提供する。幾つかの例では、再充電式電源18は、ブースト期間の終わりに又はブースト期間が満了する前であっても、満充電されていることがある。ブースト期間が満了する以前に再充電式電源18が満充電になっているなら、プロセッサ50はブースト期間がまだ満了していなくても充電セッションを終結させることができる。他の例では、プロセッサ50は、ブースト期間が満了した後の患者12への累積加熱量を監視して適切なパワーレベルを選択し、充電セッションの残りを制御するようになっている。
【0169】
図11は、ブースト期間が満了した後の再充電式電源18を充電するためのパワーレベルを充電セッションについての残存する利用可能累積加熱量に基づいて選択するための例としての技法を示している流れ線図である。ブースト期間後の利用可能加熱量は、加熱量閾値を超過するより前に充電パワーレベルが引き下げられるようにする。充電装置20のプロセッサ50が
図11の技法を遂行するものとして説明されているが、
図11の技法は代わりに他の例ではIMD14のプロセッサ30又はプロセッサ30とプロセッサ50の組合せによって遂行されていてもよい。
【0170】
プロセッサ50がブースト期継続期間の終わりにブースト期間を終結させた(170)後、プロセッサ50は累積加熱量(CDT)を計算してIMD14の周辺の組織が直近までにどれほど多くの熱に曝されたかを確かめる(172)。累積加熱量は、ブースト期間中に送達された加熱量を含むものであって、幾つかの例では、現在の充電セッションに先立つ充電温度を含んでいる。累積加熱量が加熱量閾値より小さい場合(ブロック174の「ノー」枝路)、プロセッサ50は利用可能加熱量を計算する(180)。利用可能加熱量が高パワー加熱量要件より大きい場合(ブロック182の「イエス」枝路)、プロセッサ50は充電のために高パワーレベルを選択する(186)。ここに説明されている様に、高パワー加熱量要件は、更なる高パワーレベル充電にとって利用できる累積加熱量である。利用可能加熱量が高パワー加熱量要件より小さい場合(ブロック182の「ノー」枝路)、プロセッサ50は充電のために中パワーレベルを選択する(184)。中パワーレベルは、IMD14に自身の温度を下げさせ、且つ再充電式電源18をなおも充電しながらに累積加熱レートが増加してゆくレートを下げさせる。高パワーレベル又は中パワーレベルのどちらの事例でも、再充電式電源18は、
図9A及び
図9Bにそれぞれに記載されている定電圧又は定電流を使って充電することができる。
【0171】
累積加熱量が加熱量閾値に等しいか又はそれより大きい場合(ブロック174の「イエス」枝路)、プロセッサ50は、充電のために低パワーレベルを選択する(176)。プロセッサ50が異なったパワーレベルに切り替えた場合、ユーザーインターフェース54はその様な変更が起こったことを音声又は視覚による表示を介してユーザーに通知することができる。適切なパワーレベルの選択後、プロセッサ50は次いで充電モジュール58に命令して再充電式電源18を選択されたパワーレベルで充電させる(178)。再充電式電源18及びIMD14を充電する場合のパワーレベルを選択するためのこの技法は、プロセッサ50が加熱量閾値を超過してしまった後のIMD14によって放射される熱を制限できるようにしている。
【0172】
再充電式電源18が100パーセント又は満充電レベルにまだ達していないなら(ブロック188の「ノー」枝路)、そのときプロセッサ50は累積加熱量の計算を続行する(172)。再充電式電源18が100パーセント又は満充電レベルに達していたら(ブロック188の「イエス」枝路)、そのときプロセッサ50は充電モジュール58に命令して充電を終結させユーザーに終結を通知する(190)。この通知は、ユーザーインターフェース54によって提供される可聴警報又は視覚表示の形態とすることができる。プロセッサ50は更にユーザーからの要求があり次第充電を終結させるようになっていてもよい。
【0173】
図12は、複数のパワーレベルを試験し、IMD14からの推定熱損失に基づいて電源への最も高い充電加算を提供するパワーレベルを選択するための例としての技法を示している流れ線図である。充電装置20のプロセッサ50が概して
図12の技法を遂行するものとして説明されているが、
図12の技法は代わりに他の例ではプロセッサ30とプロセッサ50の組合せ又は他の装置によって遂行されていてもよい。
【0174】
プロセッサ50がユーザーインターフェース54を介して充電要求を受信したときに再充電式電源18の充電セッションが始まる(200)。充電セッションは2回又はそれ以上の試験充電(但しこの例では3回の試験充電が開示されている)で始まり、試験充電を使用して、所定の充電セッション中に再充電式電源18へ追加される最も高い充電をもたらすパワーレベルとブースト期間の組合せが評価される。言い換えれば、患者12が再充電式電源18を充電するのに1時間のセッションを有している場合、ブースト期間は最高可能パワーレベルを用いて可能な限り短縮される必要はない。代わりに、より低いパワーレベルを用いてブースト期間をより長くした方が、より高い充電が充電セッションに亘って再充電式電源18へ加えられることになり、なお且つ熱損失限界内に納まる。従って、プロセッサ50は、少なくとも2つの異なったパワーレベルを選択して試験し、患者12が再充電式電源18を充電するのに持ち合せている利用可能時間にとって最も高い追加充電を提供し得るパワーレベル及びそれぞれのブースト期間を選択することができる。
【0175】
1回目の試験充電で、プロセッサ50は充電モジュール50に指令して一次コイル48を第1のパワーレベルで駆動させ、その結果生じる熱損失を計算する(202)。プロセッサ50は、結果としての熱損失を、測定された再充電式電源18への電流及び結果としての再充電式電源18へのパワーの確定から計算する。充電モジュール39がIMD14の再充電式電源18へ送達される電流を測定していてもよい。充電モジュール39又は別の回路は更に再充電式電源18の電圧を測定し、プロセッサ50が測定された電圧を測定された再充電式電源18への電流で乗算して再充電式電源18へ送達されるパワーを計算できるようにしていてもよい。遠隔測定モジュール34が測定された電流及び電圧を充電データとして充電装置20へ送っていてもよい。他の例では、プロセッサ30が再充電式電源18へ送達されるパワーを計算し、計算されたパワーを充電データとして充電装置20へ送っている。加えて、プロセッサ50は第1のパワーレベルのIMD14からの推定熱損失を様々な技法を使用して計算することができる。例えば、プロセッサ50は、充電装置20の一次コイル48へ送達されるパワーを計算し、一次コイル48で失われるパワーを計算するようになっていてもよい。プロセッサ50は、次いで、一次コイル48で失われるパワーと再充電式電源18へ送達されるパワーを一次コイル48へ送達されるパワーから減算する。これらの計算には、一次コイル48の又は一次コイル48と充電モジュール58の間の電流及び/又は電圧の様な、充電システムの各種構成要素間の電流及び電圧の測定値が含まれていよう。電流を測定する、パワーを求める、及び熱損失を計算するためのこれらのプロセスは、以降の様々なパワーレベルの試験充電の各々について行われることになる。
【0176】
2回目の試験充電で、プロセッサ50は充電モジュール50に指令して一次コイル48を第2のパワーレベルで駆動させ、その結果生じる熱損失を計算する(204)。次に、3回目の試験充電で、プロセッサ50は充電モジュール50に指令して一次コイル48を第3のパワーレベルで駆動させ、その結果生じる熱損失を計算する(206)。第1、第2、及び第3のパワーレベルはどれも互いとは異なっている。例えば、パワーレベルは、2.0ワット(W)パワーレベル、1.5ワットWパワーレベル、及び1.0Wパワーレベルを含んでいてもよい。パワーレベルの大きさは、事前に決められていてもよいし、充電に利用可能な時間又は再充電式電源18の現在の充電レベルの様な判定基準に基づいて選択されてもよい。加えて、試験される異なったパワーレベルの数は、事前に決められていてもよいし、充電に利用可能な時間の様な1つ又はそれ以上の判定基準に基づいて選択されてもよい。
【0177】
試験充電の各々が完了した後、プロセッサ50は試験されたパワーレベルの各々についてブースト期間を求める(208)。ここに説明されている様に、各ブースト期間は、複数の推定熱損失値各々がそれぞれのブースト期間に対応しているルックアップ表から選択することができる。異なったパワーレベルについてのブースト期間は同じルックアップ表から選択されていてもよいが、他の例では各パワーレベルは固有のブースト期間を有する異なったルックアップ表を有している。幾つかの例では、プロセッサ50は各ブースト期間を推定熱損失に基づく1つ又はそれ以上の方程式を使って計算している。試験充電の各々が完了した後にブースト期間を求める代わりに、プロセッサ50は(例えば、次の試験充電を執り行う前に)各それぞれの熱損失の計算に応えて各パワーレベルについてのブースト期間を求めるようになっていてもよい。
【0178】
プロセッサ50は、次いで、各パワーレベル及びそれの選択されたブースト期間に因って起こるはずの再充電式電源18への推定充電加算を予測又は計算する(210)。この計算は、更に、選択されたブースト期間後の充電セッションの残部についての低パワー(例えば、細流)充電を含んでいてもよい。プロセッサ50は、再充電式電源18へ送達される各パワーレベルの電流をブースト期間及び充電セッションの残部で乗算することによって充電加算を計算することができる。例えば、プロセッサ50は、2Wのパワーレベル時の電流100mAを10分ブースト期間に当たる1/6時間で乗算し、細流電流時の電流50mAと充電セッションの残部50分に当たる5/6時間の積を加える。得られる充電加算は大凡58.3ミリアンペア時(mAh)となる。比較として、1.5Wのパワーレベルは電流75mAを半時間のブースト期間の間生じさせ、50mAの細流充電も同様に半時間に亘って起こる。このより低いパワーレベルの結果は大凡62.5mAhとなる。これらの例では、より低いパワーレベルなら再充電式電源18へのより高い充電加算をもたらすということになる。
【0179】
各充電加算が計算されたことに応えて、プロセッサ50は予想されている充電セッションに亘って再充電式電源18への最も高い充電加算を生み出すことになるパワーレベルを選択する(212)。選択されたパワーレベル及びそのそれぞれのブースト期間を使って、次にプロセッサ50は充電モジュール58を制御してブースト期間の間、再充電式電源18を充電させる(214)。選択されたパワーレベルは、
図9A及び
図9Bにそれぞれ記載されている定電圧又は定電流を使って再充電式電源18へ印加されてもよい。ブースト期間が経過若しくは満了していない場合(ブロック216の「ノー」枝路)、充電モジュール58は充電セッションを選択されたパワーレベルで続行する(214)。
【0180】
ブースト期間が経過している場合(ブロック216の「イエス」枝路)、プロセッサ50は充電モジュール58を制御して、再充電式電源18が一杯まで充電されるか又は充電セッションがそれ以外に終結されるまで再充電式電源18を低パワーレベル(例えば、細流充電)で充電させる(218)。ここに説明されている様に、低パワーレベルはIMD14の周辺の組織へ当該組織を実際に損傷させるに足る十分な熱をもたらす充電レートを提供することもある。幾つかの例では、再充電式電源18は、ブースト期間の終わりに又はブースト期間が満了するより前であっても、満充電されていることがある。ブースト期間が満了するより前に再充電式電源18が満充電になっているなら、プロセッサ50はブースト期間がまだ満了していなくても充電セッションを終結させることができる。他の例では、プロセッサ50は、ブースト期間が満了した後の患者12への累積加熱量を監視して適切なパワーレベルを選択し、充電セッションの残部を制御するようになっている。
【0181】
ここに記載されている技法及び装置によれば、IMDの再充電式電源を充電するためのブースト期間はIMDからの推定熱損失に基づいて選択されている。推定熱損失は、高パワーレベルでの充電セッションの当初に再充電式電源へ送達されるパワーに基づいて求めることができる。熱損失は結合効率とIMDに誘導される充電電流の関数である。より高い結合効率は、より大きい充電電流及び/又はより長いブースト期間に通じる。より低い結合効率は、より低い充電電流を生じさせ、二次コイルに発生する熱はより低くなるが、充電信号はまた同時にIMDの材料を加熱することであろう。この方式では、ブースト期間は、異なった患者及び状況に特有の充電条件に適応させることができる。ブースト期間後、充電装置は引き続きIMDを低パワーレベル(例えば、細流充電)で充電することができる。他の例では、充電装置はブースト期間後の累積加熱量を監視して、確実に、IMDに隣接する組織が高温から損傷を受けないようにしている。IMDをこの方式で充電することで、充電装置は組織損傷の潜在性を低減しながらも充電レートを最大化できるようになる。言い換えれば、適応ブースト期間は、高速充電レートと患者のための安全限界の間でバランスを取ることができる。
【0182】
本開示は、主として2つのコイル間でのエネルギーの無線移動(例えば、誘導結合)に向けられている。しかしながら、本開示の1つ又はそれ以上の態様は充電装置と再充電式電源の間の物理的接続が係わるエネルギー移動にも適用できる。例えば、本開示の態様は、外部充電装置へ連結されている針を皮膚を貫いてIMDのポートの中へ挿入することによってIMDの電源を充電することに適用できる。エネルギー移動のための物理的接続は、無線コイル間のエネルギー移動に起因する熱損失をもたらさないが、それでもなお熱はIMD内の構成要素(例えば、充電されているバッテリ及び電源の再充電に係わる回路)から発生し患者へ失われてゆく。
【0183】
以上、様々な例を説明してきた。これらの例及び他の例は付随の特許請求の範囲の内にある。