【実施例】
【0015】
以下本発明の一実施例による枚葉積層型リチウムイオン電池の製造装置および製造方法に適した枚葉積層型リチウムイオン電池について説明する。
図1は本実施例による枚葉積層型リチウムイオン電池における正極ユニットと負極用電極シートとを示す構成図である。
枚葉積層型リチウムイオン電池は、正極用電極シート1と負極用電極シート2とをセパレータ3を介して積層して構成される。
正極用電極シート1は、活物質を塗工した正極用電極部1aと、活物質を塗工していない正極用集電体1bとから構成され、正極用電極部1aの一辺に正極用集電体1bを形成している。正極用電極シート1にはアルミ箔を用い、活物質にはリチウムイオン金属酸化物などを用いる。
負極用電極シート2は、活物質を塗工した負極用電極部2aと、活物質を塗工していない負極用集電体2bとから構成され、負極用電極部2aの一辺に負極用集電体2bを形成している。負極用電極シート2には銅箔、活物質には炭素材料などを用いる。
【0016】
正極ユニット4は、正極用電極シート1と、正極用電極シート1の表裏面に配置されるセパレータ3とで構成される。正極用電極シート1の表面に配置した一方のセパレータ3の外周と、正極用電極シート1の裏面に配置した他方のセパレータ3の外周とは接合される。2枚のセパレータ3の外周での接合は、ヒートシール、UV硬化樹脂、又はホットメルトにより行われる。
正極用電極部1aの外形寸法(幅W1、奥行D1)は、負極用電極部2aの外形寸法(幅W2、奥行D2)より小さく、セパレータ3の外形寸法(幅W3、奥行D3)は、正極用電極部1aの外形寸法(幅W1、奥行D1)より大きい。セパレータ3の外形寸法(幅W3、奥行D3)は、負極用電極部2aの外形寸法(幅W2、奥行D2)以下とする。セパレータ3の外形寸法(幅W3、奥行D3)は、負極用電極部2aの外形寸法(幅W2、奥行D2)と同じとすることが好ましい。なお、本実施例での外形寸法は、幅と奥行であり、高さは含まない。
正極用電極部1aの表裏面はすべてセパレータ3で覆われ、正極用集電体1bの表裏面の一部はセパレータ3で覆われ、正極用集電体1bの表裏面の一部はセパレータ3からはみ出して形成される。
正極ユニット4と負極用電極シート2とは、正極用集電体1bと負極用集電体2bとが重ならないように積層される。本実施例では、一方に正極用集電体1bが、他方に負極用集電体2bが位置するように正極ユニット4と負極用電極シート2とを積層している。
【0017】
本実施例によれば、正極用電極部1aの外形寸法(幅W1、奥行D1)を、負極用電極部2aの外形寸法(幅W2、奥行D2)より小さくし、正極用電極部1aより大きい外形寸法(幅W3、奥行D3)のセパレータ3を、負極用電極部2aの外形寸法(幅W2、奥行D2)以下としたことで、正極用電極シート1と負極用電極シート2とがずれて積層されても、正極用電極部1aに対向する面には必ず負極用電極部2aが存在するためデンドライトが発生することがなく、デンドライトによる発熱発火の発生を抑え、電池性能の向上を期待できる。
また本実施例によれば、セパレータ3と負極用電極部2aとを同じ外形寸法(W3=W2、D3=D2)とし、正極用集電体1bが突出していないセパレータ3の一辺と、負極用集電体2bが形成されていない負極用電極シート2の一辺とを用いて正極ユニット4と負極用電極シート2との位置決めを行えるため、正極ユニット4と負極用電極シート2との位置合わせを正確に行える。
【0018】
図2は本実施例による枚葉積層型リチウムイオン電池における正極ユニットと負極用電極シートとの積層状態を示す概念斜視図である。
図2に示すように、正極ユニット4と負極用電極シート2との積層時には、位置決め治具5を用いる。正極用集電体1bが突出していないセパレータ3の一辺と、負極用集電体2bが形成されていない負極用電極シート2の一辺とを位置決め治具5に当接させて、正極ユニット4と負極用電極シート2とを積層する。
【0019】
図3は本実施例による枚葉積層型リチウムイオン電池の製造装置を示す構成図である。
図3(a)は同製造ラインを示す構成図、
図3(b)は正極用電極ロールシートが切断されて形成される正極用電極シートの表裏面にセパレータロールシートが配置された状態を示す平面図、
図3(c)は正極用電極シートの間に接合部が形成された状態を示す平面図、
図3(d)は接合部が切断されて正極ユニットが形成された状態を示す平面図である。
【0020】
本実施例による枚葉積層型リチウムイオン電池の製造装置は、正極用電極ロールシート6を巻き出し、巻き出された正極用電極ロールシート6を電極用ロータリーカッター11で切断し、切断されて形成される複数の正極用電極シート1を、所定のシート間隔Cを空けて連続して搬送し、連続して搬送される正極用電極シート1の表裏面に、セパレータロールシート7、8を配置し、それぞれの正極用電極シート1の間に位置するセパレータロールシート7、8を接合して接合部10とし、正極用電極シート1の間の接合部10をセパレータ用ロータリーカッター12で切断して正極ユニット4を形成する。
電極用ロータリーカッター11の上流には、正極用電極ロールシート6を供給する第1フィーダー21を配置している。第1フィーダー21と電極用ロータリーカッター11との間には、正極用電極ロールシート6を供給する第2フィーダー22を配置している。
電極用ロータリーカッター11の下流には、セパレータロールシート7、8を供給するコンベアロール31、32を配置している。コンベアロール31、32によってセパレータロールシート7、8を正極用電極シート1の表裏面に配置する。
【0021】
コンベアロール31、32の下流には、正極用電極シート1の間に位置するセパレータロールシート7、8を接合する接合手段41を配置している。接合は、ヒートシール、UV硬化樹脂、又はホットメルトにより行われる。
接合手段41の下流には、正極用電極シート1をセパレータ用ロータリーカッター12に供給する第3フィーダー23を配置している。
セパレータ用ロータリーカッター12は、第3フィーダー23の下流に配置し、正極用電極シート1と正極用電極シート1との間の接合部10を切断する。
第1フィーダー21の上流にはローラ51を配置し、ローラ51の上流にはダンサーローラ52を配置している。
正極用電極ロールシート6を巻き出す電極巻き出し部53からダンサーローラ52までの間には、送り出しガイドローラ54を配置している。ダンサーローラ52では、搬送される正極用電極ロールシート6の張力が制御され、送り出しガイドローラ54では、搬送される正極用電極ロールシート6の蛇行が制御される。
【0022】
同製造装置は、第1フィーダー移動手段61と制御手段62を備えている。第1フィーダー移動手段61は、第1フィーダー21を正極用電極ロールシート6の搬送方向に往復移動させる。本実施例では、第1フィーダー移動手段61は、第1フィーダー21とローラ51とを移動させる。制御手段62は、第1フィーダー21および第2フィーダー22による供給機能を制御するとともに第1フィーダー移動手段61を制御する。
第1フィーダー21は、正極用電極ロールシート6の表面に当接する第1上ローラ21aと、正極用電極ロールシート6の裏面に当接する第1下ローラ21bと、第1上ローラ21aを上下に移動させる第1駆動部21cと、第1下ローラ21bを回転させるモータ63から構成されている。
第2フィーダー22は、正極用電極ロールシート6の表面に当接する第2上ローラ22aと、正極用電極ロールシート6の裏面に当接する第2下ローラ22bと、第2上ローラ22aを上下に移動させる第2駆動部22cと、第2下ローラ22bを回転させるモータ63から構成されている。
第3フィーダー23は、正極用電極ロールシート6の表面に当接する第3上ローラ23aと、正極用電極ロールシート6の裏面に当接する第3下ローラ23bと、第3上ローラ23aを上下に移動させる第3駆動部23cと、第3下ローラ23bを回転させるモータ64から構成されている。
【0023】
第1フィーダー21、第2フィーダー22、および第3フィーダー23は、常時等速で回転している。
コンベアロール31とコンベアロール32とは対向して配置され、モータ65によって回転される。
接合手段41は、一対の上下ロータ41a、41bとで構成され、モータ66によって回転される。
電極用ロータリーカッター11は、ローラ面に軸に平行なカッターを有している。電極用ロータリーカッター11に対向して受けローラ11bを備え、カッターと受けローラ11bとの間で正極用電極ロールシート6を切断する。電極用ロータリーカッター11または受けローラ11bは、モータ66によって回転される。
セパレータ用ロータリーカッター12は、ローラ面に軸に平行なカッターを有している。セパレータ用ロータリーカッター12に対向して受けローラ12bを備え、カッターと受けローラ12bとの間で正極用電極シート1の間の接合部10を切断する。電極用ロータリーカッター11または受けローラ11bは、モータ67によって回転される。セパレータ用ロータリーカッター12または受けローラ12bは、モータ68によって回転される。
【0024】
同製造装置は、電極用ロータリーカッター11とコンベアロール31との間のカッター・ロール間寸法Aを、正極用電極シート1の幅(搬送方向の長さ)Bよりも小さく設定している。
本実施例によれば、カッター・ロール間寸法Aを、正極用電極シート1の幅Bよりも小さく設定することで、電極用ロータリーカッター11での切断時に、切断されて形成される正極用電極シート1をコンベアロール31で押さえているため、正極用電極シート1の位置ずれがなく、正極ユニット4における正極用電極シート1の位置を常に同じ位置とすることができる。
また、本実施例によれば、セパレータロールシート7、8を配置するためのコンベアロール31、32を利用して正極用電極シート1を押さえることができ、切断直後にセパレータロールシート7、8を正極用電極シート1の表裏面に配置することで、セパレータロールシート7、8によってシート間隔Cを維持できる。
【0025】
図4から
図8は同製造装置の動作を示す要部構成図である。
図4に示すように、制御手段62では、第1フィーダー21で正極用電極ロールシート6を電極用ロータリーカッター11に導く。このとき、第1フィーダー21は、第1駆動部21cによって第1上ローラ21aが下方に移動しており、第1上ローラ21aと第1下ローラ21bとで正極用電極ロールシート6を電極用ロータリーカッター11に供給する。第2フィーダー22は、第2駆動部22cによって第2上ローラ22aが上方に移動しており、正極用電極ロールシート6の供給を行わない。第1フィーダー21およびローラ51は、電極用ロータリーカッター11に近い第1設定位置にある。
正極用電極ロールシート6は、コンベアロール31、32に挟まれた状態で、電極用ロータリーカッター11により切断される。
切断された正極用電極シート1は、そのままの速度でコンベアロール31、32で搬送される。
【0026】
電極用ロータリーカッター11で正極用電極ロールシート6を切断後に、制御手段62では、第1ステップの動作を行わせる。
図5に示すように、第1ステップでは、制御手段62は、第1フィーダー21で正極用電極ロールシート6を供給しながら、第1フィーダー移動手段61によって第1フィーダー21を上流に移動させ、電極用ロータリーカッター11から遠ざかった第2設定位置まで移動させる。
第1フィーダー移動手段61による第1フィーダー21の移動時には、第1フィーダー21による正極用電極ロールシート6の供給を継続しているため、第1設定位置から第2設定位置までの移動距離が、正極用電極シート1と正極用電極シート1との間の所定のシート間隔Cとなる。
【0027】
制御手段62では、第1ステップの動作の後に第2ステップの動作を行わせる。
図6に示すように、第2ステップでは、制御手段62は、第1フィーダー21を第2設定位置に移動させた後に、正極用電極ロールシート6を第2フィーダー22による供給に切り替える。
すなわち、第1フィーダー21は、第1駆動部21cによって第1上ローラ21aを上方に移動させ、正極用電極ロールシート6の供給を行わない。第2フィーダー22は、第2駆動部22cによって第2上ローラ22aを下方に移動し、第2上ローラ22aと第2下ローラ22bとで正極用電極ロールシート6を電極用ロータリーカッター11に供給する。
なお、第2ステップにおける正極用電極ロールシート6の供給の切り替えは、第2上ローラ22aを下方に移動させて第2フィーダー22による供給機能を働かせた後に、第1上ローラ21aを上方に移動させて第1フィーダー21による供給機能を解除する。第1フィーダー21による供給機能の解除、すなわち第1上ローラ21aの上方への移動は、第3ステップの動作前までに行えばよい。
【0028】
制御手段62では、第2ステップの動作の後に第3ステップの動作を行わせる。
図7に示すように、第3ステップでは、制御手段62は、第1フィーダー移動手段61によって第1フィーダー21を下流、すなわち電極用ロータリーカッター11に近い第1設定位置に移動させる。
【0029】
制御手段62では、第3ステップの動作の後に第4ステップの動作を行わせる。
図8に示すように、第4ステップでは、制御手段62は、正極用電極ロールシート6を第1フィーダー21による供給に切り替える。
すなわち、第2フィーダー22は、第2駆動部22cによって第2上ローラ22aを上方に移動させ、正極用電極ロールシート6の供給を行わない。第1フィーダー21は、第1駆動部21cによって第1上ローラ21aを下方に移動し、第1上ローラ21aと第1下ローラ21bとで正極用電極ロールシート6を電極用ロータリーカッター11に供給する。
なお、第4ステップにおける正極用電極ロールシート6の供給の切り替えは、第1上ローラ21aを下方に移動させて第1フィーダー21による供給機能を働かせた後に、第2上ローラ22aを上方に移動させて第2フィーダー22による供給機能を解除する。第2フィーダー22による供給機能の解除、すなわち第2上ローラ22aの上方への移動は、第1ステップの動作前までに行えばよい。
【0030】
制御手段62では、第1ステップから第4ステップを繰り返すことで、正極用電極シート1を、シート間隔Cを空けて連続して搬送することができる。
本実施例によれば、正極ユニット4を連続したラインで製作することができる。
また本実施例によれば、第1フィーダー21を下流に移動させることで、下流への移動量をシート間隔Cとすることができ、電極用ロータリーカッター11の前後での搬送速度を異ならせてシート間隔Cを形成する場合と比較して、正確に安定したシート間隔Cを形成することができる。
【0031】
図2に示すように積層された正極ユニット4と負極用電極シート2は、その後、タブ溶接工程、パウチパッケージング工程、および注液工程を経て枚葉積層型リチウムイオン電池が製造される。
【0032】
図9は同枚葉積層型リチウムイオン電池におけるタブ溶接工程を示す構成図である。
タブ溶接工程では、電極積層工程で積層された負極用電極シート2と正極ユニット4とを包装材111でラッピングして粘着テープで留め、負極用電極シート2の負極用集電体2bに負極用タブ112bを、正極用集電体1bに正極用タブ112aを、それぞれ溶接して電池素子120を製作する。
【0033】
図10は同枚葉積層型リチウムイオン電池におけるパウチパッケージング工程を示す構成図である。
パウチパッケージング工程では、タブ溶接工程で製作した電池素子120を基材131の収容部132に配置し、基材131を蓋材133で覆い、基材131と蓋材133とをヒートシールにより封止することで、パウチパッケージ140を製作する。
パウチパッケージ140は、基材131と蓋材133との間を、収容部132を有する第1の空間141と第2の空間142とに区画している。第1の空間141と第2の空間142との間には連通部143を有し、第2の空間142には外部とつながる溶液注入部144を有している。
なお、正極用タブ112aと負極用タブ112bとは、基材131及び蓋材133から露出させている。
【0034】
図11は同枚葉積層型リチウムイオン電池における注液工程を示す構成図である。
注液工程では、パウチパッケージング工程で製作したパウチパッケージ140内に、溶液注入部144から電解液を注入し、電池素子120に電解液を含浸させる。
図11(a)は、電解液の注入工程を示している。注入装置156の注入部157を溶液注入部144からパウチパッケージ140内に挿入する。注入部157の先端は、第1の空間141に位置している。パウチパッケージ140の周囲環境を真空にした状態で電解液を注入する。
図11(a)での電解液注入後に、
図11(b)に示すように溶液注入部144をヒートシール145により封止する。
図11(c)に示すように、溶液注入部144をヒートシール145により封止した後に、予備充電を行う。この予備充電は、正極用タブ112aと負極用タブ112bとをチャージャー158に接続して行う。
図11(d)では、予備充電で発生したガスの除去工程を示している。第2の空間142にデガス用の孔146を空け、パウチパッケージ140の周囲環境を真空にし、パウチパッケージ140内のガスを排出させる。
図11(d)でのガスの除去工程後に、
図11(e)に示すように連通部143をヒートシール147により封止する。
そして、
図11(f)に示すように、第2の空間142を切り離して完了する。
なお、
図11(a)での電解液を注入した後、
図11(b)に示す溶液注入部144をヒートシール145により封止する前には、真空、常圧開放、必要に応じて加圧、加温を繰り返し、内部の電池素子120に電解液を含浸させる。
なお、本実施例の製造装置では、電極シートを正極用電極シート1とした場合で説明したが、負極用電極シート2の両面にセパレータ3を配置した負極ユニットにも適用できる。