(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ガイド部材により第一位置と第二位置間を進退変位自在に支持されるプランジャ部,及びこのプランジャ部を電磁気力により少なくとも前記第一位置又は前記第二位置の一方へ変位させるステータ部を有する電磁駆動部と、前記プランジャ部の先端に固定し、かつ流体が流通する流体通路に臨むゴム素材により形成した弁体部,及びこの弁体部に対向した位置に設け、かつ前記流体通路の一方側に連通する弁座部を有する開閉機構部とを備える電磁開閉弁であって、前記プランジャ部の先端面に、縁部から中心方向に突出するリング形の係止爪を一体に有する収容凹部を形成し、この収容凹部に、前記係止爪に係止する段差面を周縁に形成した弁体面を有する弁体部を収容するとともに、前記弁座部に当接する前記弁体部における弁体面を、中心側を変形吸収凹部とした弁体リング形平坦面に形成し、かつ当該弁体リング形平坦面に当接する前記弁座部における弁座面を、当該弁体リング形平坦面に面接触する弁座リング形平坦面に形成し、前記弁体部の形成素材として、ゴム硬度をショアA80〜90°に設定したゴム素材となる水素化アクリロニトリル・ブタジエンゴムを用いるとともに、前記弁体リング形平坦面の外径を、前記弁座リング形平坦面の外径よりも小さく設定し、かつ前記弁体リング形平坦面の内径を、前記弁座リング形平坦面の内径よりも大きく設定してなることを特徴とする電磁開閉弁。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述した従来の電磁弁は、次のような問題点があった。
【0007】
通常の使用、即ち、特に高速動作や頻繁な繰り返し動作が要求されない通常の使用態様においては、動作の支障となる不具合はほとんど発生しないが、高い応答性が要求される高速動作や短い周期による繰り返し動作が要求される用途では、その要求に十分に応えられないのみならず、使用を継続した際には弁体面112dに形状変形を生じやすい。即ち、
図10に示すように、弁座部113に対する弁体面112dの衝突が繰り返された場合、弁体部112の形成素材及び形状等の影響により、弁体面112d上に、外径が弁座部113の内径に沿い、かつ下方に膨出した突出長Lpの盛上がり形状112pのような形状変形が少なからず発生する。
【0008】
この盛上がり形状112pが発生した場合、盛上がり形状112pが弁体面112dと弁座部113間に存在することから、弁体部112が上方の第二位置(開位置)X2へ変位した際に、流体通路111の実質的な通路面積を狭めることになり、流体の流通に対する阻害要因になるとともに、開閉作用の不安定化要因にもなる。結局、流体の正確な流量や吐出圧力の確保、更には速やかな応答性が要求される用途では、弁体部112の頻繁な取替が必要になり、メンテナンスの煩雑化及びメンテナンスコストの上昇要因になるとともに、取替が困難な場合には、十分な動作特性が発揮されない使用態様を強いられたり用途が制限されてしまうなどの難点があった。
【0009】
本発明は、このような背景技術に存在する課題を解決した電磁開閉弁の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上述した課題を解決するため、ガイド部材5により第一位置X1と第二位置X2間を進退変位自在に支持されるプランジャ部3,及びこのプランジャ部3を電磁気力により少なくとも第一位置X1又は第二位置X2の一方へ変位させるステータ部4を有する電磁駆動部2と、プランジャ部3の先端に固定し、かつ流体Aが流通する流体通路7に臨むゴム素材により形成した弁体部8,及びこの弁体部8に対向した位置に設け、かつ流体通路7の一方側に連通する弁座部9を有する開閉機構部6とを備える電磁開閉弁1を構成するに際して、プランジャ部3の先端面に、縁部から中心方向に突出するリング形の係止爪30cを一体に有する収容凹部30を形成し、この収容凹部30に、係止爪30cに係止する段差面8dcを周縁に形成した弁体面8dを有する弁体部8を収容するとともに、弁座部9に当接する弁体部8における弁体面8dを、中心側を変形吸収凹部8dsとした弁体リング形平坦面Sdに形成し、かつ弁体リング形平坦面Sdに当接する弁座部9における弁座面9uを、弁体リング形平坦面Sdに面接触する弁座リング形平坦面Suに形成し、弁体部8の形成素材として、ゴム硬度をショアA80〜90°に設定したゴム素材Rrとなる水素化アクリロニトリル・ブタジエンゴムを用いるとともに、弁体リング形平坦面Sdの外径Ddoを、弁座リング形平坦面Suの外径Duoよりも小さく設定し、弁体リング形平坦面Sdの内径Ddiを、弁座リング形平坦面Suの内径Duiよりも大きく設定してなることを特徴とする。
【0011】
この場合、発明の好適な態様により、変形吸収凹部8dsは、湾曲した円球面に形成することができる。なお、流体Aには、少なくとも空気Aaを含む気体を適用することが望ましい。一方、電磁駆動部2には、プランジャ部3を第一位置X1又は第二位置X2へ変位させるバネ部材11を設けることができる。
【発明の効果】
【0012】
このような構成を有する本発明に係る電磁開閉弁1によれば、次のような顕著な効果を奏する。
【0013】
(1) 弁座部9に当接する弁体部8における弁体面8dを、中心側を変形吸収凹部8dsとした弁体リング形平坦面Sdに形成し、かつ当該弁体リング形平坦面Sdに当接する弁座部9における弁座面9uを、当該弁体リング形平坦面Sdに面接触する弁座リング形平坦面Suに形成するとともに、弁体部8の形成素材として、ゴム硬度をショアA80〜90°に設定したゴム素材Rrを用いてなるため、弁体面8dが下方に膨出する形状変形を排除できる。この結果、電磁開閉弁1の開時に、流体通路7の実質的な通路面積を狭めてしまう不具合を回避できるとともに、頻繁なメンテナンスによる弁体部8の取替が不要となり、メンテナンスの容易化及びメンテナンスコストの低減を図ることができる。しかも、流体Aの円滑な流通の確保と開閉作用の安定化を図れるため、流体Aの正確な流量や吐出圧力が要求される用途にも十分に応えることができ、汎用性をより高めることができる。
【0014】
(2) 弁体部8のゴム素材Rrとして、水素化アクリロニトリル・ブタジエンゴム(H−NBR)を用いたため、H−NBRの素材特性に基づく、機械的強度,耐圧縮歪,耐摩耗性を確保できるとともに、弁座部9に対する面接触時に、当該弁座部9を確実に閉塞可能なゴム硬度を確保する観点から最適なゴム素材Rrとして用いることができる。
【0015】
(3) 弁体リング形平坦面Sdの外径Ddoを弁座リング形平坦面Suの外径Duoよりも小さく設定し、弁体リング形平坦面Sdの内径Ddiを弁座リング形平坦面Suの内径Duiよりも大きく設定したため、弁体部8における弁体面8dの全面を、弁座部9における硬質の弁体リング形平坦面Sdに対して確実に面接触させることができる。この結果、弁体面8dの形状を常に弁体リング形平坦面Sdになるように維持でき、一部が膨出するなど、流体通路7に影響を与える無用な形状変形を確実に回避できる。
【0016】
(4) 好適な態様により、変形吸収凹部8dsを、湾曲した円球面に形成すれば、弁体部8の断面形状を、弁体面8dから離れるに従って広幅となる山形形状にできるため、弁体部8の安定した開閉作用及び弁体部8に対する安定した変形吸収作用を行うことができる。
【0017】
(5) 好適な態様により、流体Aとして、少なくとも空気Aa(一般的には気体)を適用すれば、本発明に係る電磁開閉弁1が有するメリットを最も効果的かつ有効に発揮させることができるため、空気Aaの供給又は停止を制御する用途に最適となる。
【0018】
(6) 好適な態様により、電磁駆動部2に、プランジャ部3を第一位置X1又は第二位置X2へ変位させるバネ部材11を設ければ、特に、電磁開閉弁1の閉時に、バネ部材11により発生しやすい弁体部8のバウンド現象であっても有効に防止できる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、本発明に係る好適実施形態を挙げ、図面に基づき詳細に説明する。
【0021】
まず、本実施形態に係る電磁開閉弁1の構成について、
図1〜
図6を参照して具体的に説明する。
【0022】
図2は、電磁開閉弁1の全体構成を示す。この電磁開閉弁1は、大別して、電磁駆動部2及び開閉機構部6を備える。電磁駆動部2は、基本構成として、ガイド部材5により閉位置(第一位置)X1と開位置(第二位置)X2間を進退変位自在に支持されるプランジャ部3と、このプランジャ部3を電磁気力により開位置X2へ変位させるステータ部4とを備え、開閉機構部6の弁体部8を閉位置X1又は開位置X2へ選択的に変位させる機能を有する。また、開閉機構部6は、基本構成として、プランジャ部3の先端に固定し、かつ流体が流通する流体通路7に臨む所定のゴム素材Rrにより形成した弁体部8と、この弁体部8に対向した位置に設け、かつ流体通路7の一方側に連通する弁座部9とを備えており、この弁体部8と弁座部9により流体通路7を開閉する機能を有する。
【0023】
次に、電磁開閉弁1における各部の具体的構成について説明する。電磁開閉弁1の下部位置には、開閉機構部6を配設するためのベースブロック21を備え、このベースブロック21の内部には流体通路7を設ける。この場合、流体通路7の一方側は、流体の流出口7eとなり、ベースブロック21の底面中央付近に設けるとともに、流体通路7の他方側は、流体の流入口7iとなり、ベースブロック21の底面における流出口7eの隣に設ける。したがって、流入口7iと流出口7eは流体通路7を介して連通し、流入口7iと流出口7e間における流体通路7は開閉機構部6の配設空間Hsとなる。この配設空間Hsには、底面側から上方に突出する筒形の弁座部9を一体形成し、この弁座部9の内部が流出口7eに連通するとともに、弁座部9の上端に弁座面9uを形成する。
【0024】
また、弁座部9の上方に位置するベースブロック21には、上面まで貫通する円形状の開口部21sを形成し、この開口部21sの内面に形成した段差形状部とベースブロック21の上面を利用して電磁駆動部2を組付ける。これにより、開口部21sに対して、上面側から樹脂素材によりリング形に形成したストッパ22を組入れることができるとともに、このストッパ22の上面に、磁性素材により円筒形に形成したガイド部材5の下端部を組入れることができる。
【0025】
さらに、ガイド部材5の内部には、磁性素材により円柱形に形成したプランジャ部3を進退変位自在(上下変位自在)に挿入し、このプランジャ部3の先端(下端)に、ゴム素材Rrにより所定の厚さを有する円盤状に形成した弁体部8を組込む。この場合、プランジャ部3の先端面に収容凹部30を形成し、また、収容凹部30の縁部に、中心方向に突出することにより、収容した弁体部8を保持する周方向に沿ったリング形の係止爪30cを一体形成する。これにより、この収容凹部30に、ゴム素材により形成した弁体部8を押し込むことができる。
【0026】
以上の構造により、弁体部8と弁座部9は対向し、流体通路7を開閉する開閉機構部6が構成される。この弁体部8と弁座部9は、本実施形態に係る電磁開閉弁1の要部を構成するものであり、以下のような特徴的形状(構造)を備えている。
図3及び
図4に弁体部8の全体形状を示す。
【0027】
まず、弁体部8における弁座部9に当接する弁体面8dは、中心側を変形吸収凹部8dsとした弁体リング形平坦面Sdに形成する。この場合、変形吸収凹部8dsは、湾曲した円球面に形成する。これにより、弁体部8の断面形状を、弁体面8dから離れるに従って広幅となる山形形状にできるため、弁体部8の安定した開閉作用及び弁体部8に対する安定した変形吸収作用を行うことができる。一方、この弁体リング形平坦面Sdに当接する弁座部9における弁座面9uも、当該弁体リング形平坦面Sdに面接触する弁座リング形平坦面Suに形成する。
【0028】
この場合、
図1に示すように、弁体リング形平坦面Sdの外径Ddoは、弁座リング形平坦面Suの外径Duoよりも小さく設定するとともに、弁体リング形平坦面Sdの内径Ddiは、弁座リング形平坦面Suの内径Duiよりも大きく設定する。これにより、弁体部8における弁体面8dの全面を、弁座部9における硬質の弁座リング形平坦面Suに対して確実に面接触させることができるため、弁体面8dの形状を常に弁体リング形平坦面Sdになるように維持でき、一部が膨出するなど、流体通路7に影響を与える無用な変形を確実に回避できる。
【0029】
また、弁体部8の形成素材となるゴム素材には、ゴム硬度がショアA80〜90°(新JIS規格)のゴム素材Rrを用いる。具体的には、水素化アクリロニトリル・ブタジエンゴム(H−NBR)、より望ましくは、ゴム硬度ショアA80〜90°、水素化率80%以上、アクリロニトリル量30%以上に選定したH−NBRを用いる。このように、ゴム素材Rrとして、H−NBRを用いれば、H−NBRの素材特性に基づく、機械的強度,耐圧縮歪,耐摩耗性を確保できるとともに、弁座部9に対する面接触時に、当該弁座部9を確実に閉塞可能なゴム硬度を確保する観点から最適なゴム素材Rrとして用いることができる。
【0030】
前述したように、従来のゴム素材は、ゴム硬度をショアA90°以上、即ち、硬めのゴム素材を使用することにより、無用なバウンドの防止と耐久性の確保の観点から両者のバランスを考慮していた。本実施形態では、ゴム素材Rrとして、H−NBRを使用するため、ゴム素材としては柔らかめとなり、無用なバウンドは生じない。なお、耐久性の確保が問題となるが、上述した弁体部8と弁座部9の形状設定により十分な耐久性を確保している。
【0031】
図5に、弁体部8に使用するH−NBRと他の素材の特性面の評価表を示すとともに、
図6に、弁体部8に使用するゴム素材の硬度に対する特性面の評価表を示す。
図5から明らかなように、総合的にH−NBRが最も良好な結果を得ている。また、
図6から明らかなように、ゴム硬度はショアA80°,85°が最も良好な結果を得ている。なお、
図5中、TPUは熱可塑性ポリウレタン、FKMはフッ素ゴムである。
【0032】
一方、弁体部8における弁体面8dには周縁に沿った段差面8dcを形成する。この段差面8dcには前述した係止爪30cを係止させることができる。また、
図1及び
図4に示すように、弁体面8dの反対側に位置する上面8uの中心位置には、共有通気路31を形成するとともに、弁体部8の周面8f及び上面8uには、三つの分岐通気路32a,32b,32cを形成する。各分岐通気路32a,32b,32cは弁体部8の周方向に等間隔おきに配するとともに、上面8uにおける各分岐通気路32a,32b,32cの一端側はそれぞれ共有通気路31に連通させるとともに、周面8fにおける各分岐通気路32a,32b,32cの他端側は、それぞれ弁体面8dの段差面8dcに臨ませる。これにより、弁体部8を開閉方向に変位させる際に空気が流通する通気通路が構成される。
【0033】
このように、本実施形態に係る電磁開閉弁1によれば、基本構成として、弁座部9に当接する弁体部8における弁体面8dを、中心側を変形吸収凹部8dsとした弁体リング形平坦面Sdに形成し、かつ当該弁体リング形平坦面Sdに当接する弁座部9における弁座面9uを、当該弁体リング形平坦面Sdに面接触する弁座リング形平坦面Suに形成するとともに、弁体部8の形成素材として、ゴム硬度をショアA80〜90°に設定したゴム素材Rrを用いてなるため、弁体面8dが下方に膨出する形状変形を排除できる。この結果、電磁開閉弁1の開時に、流体通路7の実質的な通路面積を狭めてしまう不具合を回避できるとともに、頻繁なメンテナンスによる弁体部8の取替が不要となり、メンテナンスの容易化及びメンテナンスコストの低減を図ることができる。しかも、流体Aの円滑な流通の確保と開閉作用の安定化を図れるため、流体Aの正確な流量や吐出圧力が要求される用途にも十分に応えることができ、汎用性をより高めることができる。
【0034】
他方、プランジャ部3の外周面の先端には外方に突出するリング形の規制部35を一体形成する。この規制部35は、プランジャ部3が上方へ変位した際に前述したストッパ22に係止し、プランジャ部3の変位が規制されるため、弁体部8は開位置(第二位置)X2に停止する。したがって、ストッパ22は、プランジャ部3の位置を規制するストッパ機能を備えるとともに、配設空間Hs(流体通路7)を密閉するためのシーリング機能及びプランジャ部3が衝突した際の衝撃を緩和するダンパ機能を兼ねている。
【0035】
また、プランジャ部3の外周面の二カ所には、周方向に沿ったリング形のスリットを形成し、このスリットにウェアリング36a,36bを装着する。これにより、プランジャ部3をガイド部材5の内部へ挿入した際には、プランジャ部3の外周面とガイド部材5の内周面間にはウェアリング36a,36bが介在し、良好な摺動性が確保される。さらに、プランジャ部3の上端面の中央位置から軸方向にはコイルスプリング(バネ部材)11を収容する収容凹部37を形成するとともに、この収容凹部37の底面中央位置と前述した収容凹部30の底面中央位置間には通気孔部38を形成し、収容凹部37と収容凹部30間を連通させる。
【0036】
一方、電磁駆動部2において、41は、磁性素材によりコの字形に折曲形成したヨークであり、このヨーク41における水平のヨーク下部41dには円孔部41hを形成する。この円孔部41hはガイド部材5の外周面に嵌合する。また、42は、樹脂素材により円筒形に形成したコイルボビン42bにコイルワイヤ42wを巻回して構成したコイルユニットである。この場合、コイルボビン42bの内周面における下端縁には段差部を形成し、この段差部を利用してシール用のOリング43を装着する。さらに、45は、磁性素材により円柱形に形成した固定鉄心である。この固定鉄心45は、前述したガイド部材5の外径と同一径に選定するとともに、外周面には周方向に沿ったリング形のスリットを形成し、このスリットにはシール用のOリング46を装着する。固定鉄心45は、コイルボビン42bの内部における上部位置に収容するとともに、収容した際には、コイルボビン42bの内周面に形成した規制突起部42bcにより位置が規制される。
【0037】
したがって、このような部品類により構成する電磁開閉弁1は、次のように組立てることができる。
【0038】
まず、
図2に示すように、Oリング43を装着したコイルユニット42におけるコイルボビン42bの内部に、上から、Oリング46を装着した固定鉄心45を挿入する。これにより、固定鉄心45は、コイルボビン42bの内周面に形成した規制突起部42bcに係止し、コイルボビン42bに対して、固定鉄心45の位置が規制される。次いで、この状態のコイルユニット42を、コの字形のヨーク41の内側に装着するとともに、ガイド部材5を、ヨーク41のヨーク下部41dに形成した円孔部41hに対して下から挿入する。これにより、ガイド部材5は、コイルボビン42bの内部に下から挿入される。そして、この状態において、ヨーク41の最下面よりも上方に位置する構造部分を樹脂モールド51により覆う。なお、図示を省略したが、コイルユニット42からは二本の引出ケーブルが外部に導出される。
【0039】
また、プランジャ部3を用意する。このプランジャ部3には、予め、弁体部8を組込むとともに、ウェアリング36a,36bを装着する。さらに、このプランジャ部3には、外周面に対して上からストッパ22を装填するとともに、収容凹部37に、コイルスプリング11を装填する。プランジャ部3は、この状態を維持しつつガイド部材5の内部へ下から挿入するとともに、この状態のアセンブリをベースブロック21の上面に組付ける。この場合、ベースブロック21の開口部21sに形成した段差部に、上から、ストッパ22及びガイド部材5を嵌入れるとともに、樹脂モールド51には取付孔を設け、この取付孔と固定ボルト等の固定具52を利用して、樹脂モールド51をベースブロック21の上面に固定する。これにより、
図2に示す本実施形態に係る電磁開閉弁1を得ることができる。なお、53は電磁開閉弁1を取付ける際におけるシール用のOリングを示す。
【0040】
次に、本実施形態に係る電磁開閉弁1の機能(動作)及び使用方法について、
図7〜
図10を参照して説明する。
【0041】
図7及び
図8は、電磁開閉弁1に、直流電源61と電源スイッチ62の直列回路を接続した状態を示し、
図7は電源スイッチ62がOFF、
図8は電源スイッチ62がONの状態をそれぞれ示す。
【0042】
電源スイッチ62をOFFにした
図7に示す状態では、コイルユニット42に対して給電されないため、ステータ部2に磁極は発生しない。したがって、プランジャ部3は、コイルスプリング11により下方向に押圧される。この結果、弁体部8は、弁体面8dが弁座部9の弁座面9uに圧接する閉位置(第一位置)X1となり、流体通路7は閉状態となる。
【0043】
一方、電源スイッチ62をONにした
図8に示す状態では、コイルユニット42に対して給電が行われる。この結果、ステータ部2が励磁され、固定鉄心45の上下にS極とN極がそれぞれ発生する。
図8中、81はコイルユニット42により生じる磁力線の方向を示している。この場合、ヨーク41,ガイド部材5,プランジャ部3,固定鉄心45,ヨーク41の経路で磁力線が通過する。これにより、プランジャ部3は、固定鉄心45の磁極により吸引され、コイルスプリング11の弾力に抗して上方向へ変位するとともに、ストッパ22に係止した位置、即ち、開位置(第二位置)X2で停止し、流体通路7は開状態になる。点線矢印Ffがこの状態における流体A(空気Aa)の流通方向を示し、流入口7i→流体通路7→弁体部8と弁座部9間→流出口7eの経路で流通する。
【0044】
他方、この状態で電源スイッチ62をOFFにすれば、固定鉄心45側の吸引力が解除されるため、プランジャ3は、コイルスプリング11により下方向に変位する。即ち、
図7の状態となる。
【0045】
図10に、本実施形態に係る電磁開閉弁1と
図11に背景技術として挙げた電磁開閉弁100に対して、電源スイッチ62をOFFにした際における電磁開閉弁1の流出口7eにおける空気Aa(流体A)の吐出圧力Piと電磁開閉弁100の流出口における空気Aaの吐出圧力Prの変化を測定したデータの一例を示す。また、
図9には、
図10における吐出圧力Pi,Prの測定回路70を示す。
図9に示す測定回路70は、電磁開閉弁1(100)の流入口7iに接続したエア供給部71、電磁開閉弁1の流出口7eに接続した噴射ノズル72、電磁開閉弁1に接続したコントローラ73、流出口7eから吐出する気体Aの吐出圧力を検出する圧力センサ74を備える。したがって、コントローラ73には、上述した
図7及び
図8に示した直流電源61及び電源スイッチ62を含むとともに、所定のシーケンス制御プログラムに従って電源スイッチ62をON/OFF制御する制御部及び圧力センサ74の測定結果を記録する記録部が含まれる。
【0046】
図10は、電磁開閉弁1,100に対して印加した直流電圧Vdを、to時点でOFFにした状態を示している。
図10から明らかなように、OFF(閉側)に切換える場合、電磁開閉弁100の吐出圧力Prは不安定な挙動になる。即ち、一点鎖線円E1で示すように、弁体部にバウンドが生じ、吐出圧力Prが大きく変動する。これに対して、電磁開閉弁1の吐出圧力Piは安定に推移し、バウンドは発生していない。この結果、最終的に、閉位置P1に収束するまでの時間は、一点鎖線円E2で示すように、電磁開閉弁100は長くなる。これに対して、電磁開閉弁1は短くなる。即ち、電磁開閉弁1の方が閉じる速度が早くなるため、応答性が良好になるとともに、高速開閉も可能となる。
【0047】
このように、本実施形態に係る電磁開閉弁1は、弁座部9に当接する弁体部8における弁体面8dを、中心側を変形吸収凹部8dsとした弁体リング形平坦面Sdに形成し、かつ当該弁体リング形平坦面Sdに当接する弁座部9における弁座面9uを、当該弁体リング形平坦面Sdに面接触する弁座リング形平坦面Suに形成するとともに、弁体部8の形成素材として、ゴム硬度をショアA80〜90°に設定したゴム素材Rrを用いてなるため、弁体面8dに凹凸等の形状変形が生じることはない。また、弁体部8はコイルスプリング11の押圧作用により弁座部9に衝突するため、本来、弁体部8はバウンドしやすい環境にあるものの、弁体部8のバウンドが有効に防止され、安定した挙動が確保され、結果的に、高応答性及び高速開閉が実現される。
【0048】
特に、流体Aとして、空気Aa(一般的には気体)を適用すれば、本発明に係る電磁開閉弁1が有するメリットを最も効果的かつ有効に発揮させることができるため、空気Aaの供給又は停止を制御する用途に最適となる。また、例示の場合、電磁駆動部2に、プランジャ部3を閉位置X1へ変位させるコイルスプリング11を用いているため、電磁開閉弁1の閉時に、コイルスプリング11により発生しやすい弁体部8のバウンド現象であっても有効に防止することができる。
【0049】
なお、
図9に示した測定回路70は、吐出圧力の測定に利用したが、この測定回路70は、電磁開閉弁1を使用する使用回路の一例として挙げることができる。即ち、コントローラ73におけるシーケンス制御プログラムにより、電源スイッチ62をON/OFF制御することができる。
【0050】
ところで、流体通路7に流体Aとして空気Aaが流通する場合、この空気Aaは、エアポンプを用いたエア供給部71から供給されることも少なくない。したがって、電磁開閉弁1には、通常、十分な気密性の確保が必要になる。例示の電磁開閉弁1では、ストッパ22がシーリング機能を兼ねるため、ガイド部材5の外側に対しては、このストッパ22により気密性が確保される。一方、ガイド部材5の内側、即ち、ガイド部材5とプランジャ部3間の隙間は、プランジャ部3と固定鉄心42間の空間(内部空間)に繋がっているも、この内部空間の気密性は、固定鉄心42の外周面に設けたOリング46とコイルボビン42bの内周面に設けたOリング43により確保される。
【0051】
反面、このような気密性の確保により、電磁開閉弁1の開閉動作、特に、開閉動作時における高応答性や高速開閉動作が要求される場合、プランジャ部3の変位による内圧変動が無視できない。本実施形態に係る電磁開閉弁1は、弁体部8に設けた共有通気路31及び三つの分岐通気路32a…と、プランジャ部3に設けた通気孔部38を備えるため、
図8に点線矢印Frで示すように、開閉動作時には、通気孔部38,共有通気路31,分岐通気路32a…の経路で空気Aaを流通させることができる。即ち、空気Aaを正逆方向に逃がすことができ、内圧変動は排除される。これにより、更なる高応答性が実現されるとともに、高速開閉動作にも対応可能となる。
【0052】
以上、好適実施形態について詳細に説明したが、本発明は、このような実施形態に限定されるものではなく、細部の構成,形状,素材,数量,数値等において、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、任意に変更,追加,削除することができる。
【0053】
例えば、変形吸収凹部8dsは、湾曲した円球面に形成することが望ましいが、凹部を形成する、楕円球面,円錐面,直方体形状等の他の形状による変形吸収凹部8dsを排除するものではない。なお、流体Aには、空気Aaを適用することが望ましいが、ガス,水蒸気等の気体,或いは水,溶液等の液体などであっても同様に適用することができる。また、電磁駆動部2を構成するに際し、プランジャ部3を第一位置X1へ変位させる手段として、バネ部材(コイルスプリング)11を設けた場合を示したが、プランジャ部3を第二位置X2へ変位させる手段として、バネ部材11を設け、第一位置X1へ変位させる手段としてコイルユニット42を用いる態様,或いはバネ部材11を設ける代わりにコイルユニット42に対する直流電圧の極性を反転させるなど、バネ部材11以外の手段により第一位置X1(又は第二位置X2)へ変位させる態様を排除するものではない。したがって、電磁駆動部2の構成は、例示に限定されるものではなく、同様の機能を発揮する各種原理に基づく電磁駆動部2を適用できる。