特許第6097387号(P6097387)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6097387
(24)【登録日】2017年2月24日
(45)【発行日】2017年3月15日
(54)【発明の名称】往復動圧縮機および圧力パッキン
(51)【国際特許分類】
   F04B 39/00 20060101AFI20170306BHJP
   F16J 15/40 20060101ALI20170306BHJP
   F16J 15/18 20060101ALN20170306BHJP
【FI】
   F04B39/00 104C
   F16J15/40 Z
   !F16J15/18 A
【請求項の数】17
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-518361(P2015-518361)
(86)(22)【出願日】2012年6月22日
(65)【公表番号】特表2015-522746(P2015-522746A)
(43)【公表日】2015年8月6日
(86)【国際出願番号】PL2012000047
(87)【国際公開番号】WO2013191571
(87)【国際公開日】20131227
【審査請求日】2015年6月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】513243790
【氏名又は名称】ヌオーヴォ ピニォーネ ソチエタ レスポンサビリタ リミタータ
【氏名又は名称原語表記】NUOVO PIGNONE S.R.L.
(74)【代理人】
【識別番号】100137545
【弁理士】
【氏名又は名称】荒川 聡志
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 博
(74)【代理人】
【識別番号】100129779
【弁理士】
【氏名又は名称】黒川 俊久
(74)【代理人】
【識別番号】100113974
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 拓人
(72)【発明者】
【氏名】テレヴィノ,カルロス・アルフレド
(72)【発明者】
【氏名】ドゥ,ヴィン・ケイ
(72)【発明者】
【氏名】トマゼウスキ,トマス
(72)【発明者】
【氏名】レイナル,ジェフリー・アレン
【審査官】 加藤 一彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開平7−151404(JP,A)
【文献】 特開2010−43730(JP,A)
【文献】 特開平9−292163(JP,A)
【文献】 特開2009−62871(JP,A)
【文献】 特開2003−74708(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 39/00
F16J 15/40
F16J 15/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
往復動圧縮機(10)のピストンロッド(24)のための圧力パッキン(38)が、
ピストンロッド貫通ボア(48)を有するケース(46)と、
前記ケース(46)内で前記貫通ボア(48)と一致する区画(52)と、
を備え、
前記区画(52)は前記ピストンロッド(24)のストロークと少なくとも同じ長さの軸長(55)を有し、
前記圧力パッキン(38)が、
第1のパッキン体(64a)と、前記第1のパッキン体(64a)に対して前記区画(52)と反対側に位置する第2のパッキン体(64b)との間のパッキンリング(74)と、
前記ケース(46)から前記第1のパッキン体(64a)を通って前記パッキンリング(74)へ延びているガス通路(76)と、
をさら備え、
前記ガス通路(76)が、前記パッキンリング(74)内の少なくとも1つの放射状開口部(78)によって画定される出口を有する、
圧力パッキン(38)。
【請求項2】
前記ケース(46)が、前記区画(52)の端部にピストンロッドワイパ(54)を備える、請求項1に記載の圧力パッキン(38)。
【請求項3】
前記圧力パッキン(38)が、複数のパッキン体(64)をさらに含み、前記各パッキン体(64)が前記貫通ボア(48)の周りに少なくとも1つのピストンロッドシールリング(66)を有する、請求項1または2に記載の圧力パッキン(38)。
【請求項4】
前記パッキン体(64)の1つが、複数のボルト穴(86)を有するフランジ(84)を含み、前記ケース(46)が、前記フランジ(84)の前記ボルト穴(86)と同軸である複数のボルト穴(82)を含む、請求項に記載の圧力パッキン(38)。
【請求項5】
第1区画(102)を有するディスタンスピース(26)と、
前記ディスタンスピース(26)内の圧力パッキン(38)であって、前記圧力パッキン(38)が往復動圧縮機(10)のピストンロッド(24)のストロークと少なくとも同じ長さの軸長(55)を有する第2区画(52)を含む圧力パッキン(38)と、
前記ディスタンスピース(26)の外側から前記圧力パッキン(38)を通って前記第1区画(102)に延びているガス通路(76)と、
を備え、
前記往復動圧縮機(10)が、
第1のパッキン体(64a)と、前記第1のパッキン体(64a)に対して前記第2区画(52)と反対側に位置する第2のパッキン体(64b)との間のパッキンリング(74)と、
前記ディスタンスピース(26)から前記圧力パッキン(38)内に、前記第1のパッキン体(64)を通って前記パッキンリング(74)へ延びているパージガス通路(76)と、
をさらに備え、
前記パージガス通路(76)が、前記パッキンリング(74)内の少なくとも1つの開口部(78)によって画定される出口を有する、
往復動圧縮機(10)のための2区画アセンブリ。
【請求項6】
ピストンロッド(24)と、
前記ピストンロッド(24)の周りの圧力パッキン(38)と、
前記圧力パッキン(38)がディスタンスピース(26)の内部に少なくとも部分的に配置されるディスタンスピース(26)と、
前記圧力パッキン(38)からプロセスガスを受け入れるように構成された第1区画(102)と、
前記ピストンロッド(24)上の潤滑剤が前記第1区画(102)に入ることを抑制するように構成された前記圧力パッキン(38)内の第2区画(52)と、
を備える、往復動圧縮機(10)であって、
前記往復動圧縮機(10)が、
第1のパッキン体(64a)と、前記第1のパッキン体(64a)に対して前記第2区画(52)と反対側に位置する第2のパッキン体(64b)との間のパッキンリング(74)と、
前記ディスタンスピース(26)から前記圧力パッキン(38)内に、前記第1のパッキン体(64)を通って前記パッキンリング(74)へ延びているパージガス通路(76)と、
をさらに備え、
前記パージガス通路(76)が、前記パッキンリング(74)内の少なくとも1つの開口部(78)によって画定される出口を有する、
往復動圧縮機(10)。
【請求項7】
前記ピストンロッド(24)が、前記第2区画(52)内に油切り(98)を含む、請求項に記載の往復動圧縮機(10)。
【請求項8】
前記圧力パッキン(38)が、前記第2区画(52)の端部にピストンロッドワイパ(54)を含む、請求項6または7に記載の往復動圧縮機(10)。
【請求項9】
前記圧力パッキン(38)が、複数のパッキン体(64)をさらに備え、各パッキン体(64)が前記ピストンロッド(24)の周りに少なくとも1つのピストンロッドシールリング(66)を含む、請求項6から8のいずれかに記載の往復動圧縮機(10)。
【請求項10】
前記第1の前記パッキン体(64a)が、前記第1区画(102)から前記第2区画(52)を密閉する、請求項6から9のいずれかに記載の往復動圧縮機(10)。
【請求項11】
前記往復動圧縮機(10)が、通気ガス通路とドレン通路をさらに備え、前記各ドレン通路が前記第1区画(102)への開口を有する、請求項6から10のいずれかに記載の往復動圧縮機(10)。
【請求項12】
前記第1区画(102)が、前記圧力パッキン(38)の外面と前記ディスタンスピース(26)の内面(108)によって画定されている、請求項6から11のいずれかに記載の往復動圧縮機(10)。
【請求項13】
前記ディスタンスピース(26)が、単一区画のディスタンスピースである、請求項6から12のいずれかに記載の往復動圧縮機(10)。
【請求項14】
前記ディスタンスピース(26)が複数のねじ穴(92)を含み、少なくとも1つの前記パッキン体(64)が複数のボルト穴(86)を有するフランジ(84)を含み、前記管部材が前記フランジ(84)の前記ボルト穴(86)および前記ディスタンスピース(26)の前記ねじ穴(92)と同軸である複数のボルト穴(82)を含む、請求項6から13のいずれかに記載の往復動圧縮機(10)。
【請求項15】
前記往復動圧縮機(10)が複数のねじ付きボルト(88)をさらに備え、前記各ボルト(88)が、前記複数の管部材のボルト穴(82)のそれぞれの1つを通り、前記複数のフランジ(84)の穴(86)のそれぞれの1つを通り、前記ディスタンスピース(26)の前記ねじ付きボルト(88)の穴(92)のそれぞれの1つの中へ延びる、請求項14に記載の往復動圧縮機(10)。
【請求項16】
前記ボルト(88)が前記第1区画(102)を通って延びる、請求項15に記載の往復動圧縮機(10)。
【請求項17】
前記ワイパ本体(58)がドレン(56)を含み、前記ディスタンスピース(26)が前記ワイパ本体(58)のドレン(56)への開口を有するドレン通路を含む、請求項11に記載の往復動圧縮機(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示される主題の実施形態は、概して往復動圧縮機に関し、より詳細には往復動圧縮機のための圧力パッキンに関する。
【背景技術】
【0002】
往復動圧縮機のフレームが、一般に、クランクケース、クロスヘッドガイド、ディスタンスピース、およびシリンダを含む。潤滑油およびクランクケース内のクランク軸に取り付けられた軸受けが、内燃機関等の原動機に連結された入力軸によって回転される。コンロッドが、クランク軸とクロスヘッドガイドに摺動可能に取り付けられたクロスヘッドとの間に延びる。クロスヘッドガイドが、クロスヘッドおよびコンロッドを誘導して、クランクシャフトの回転運動をクロスヘッドでの往復直線運動に変換する。以下でさらに説明されるディスタンスピースが、クロスヘッドガイドとシリンダとの間に配置され、クロスヘッドに接続されたピストンロッドが、ディスタンスピースを通ってシリンダ内のピストンに延びる。シリンダ本体の第1逆止め弁は、プロセスガスが吸気行程中にシリンダに引き込まれることを可能にし、所定の圧力に達すると、シリンダ本体の別の逆止め弁は、プロセスガスがシリンダを出ることを可能にする。このように、例えば天然ガスであるプロセスガスは、さらなる処理および/または輸送に利用するために圧縮され得る。
【0003】
一般的なディスタンスピースは、圧縮機のシリンダとピストンとロッドアセンブリを密閉するために、ピストンロッドの周りに延びる圧力パッキンを備える。また、クランクケース側からピストンロッド上に堆積する潤滑剤を除去するために、ピストンロッドワイパがディスタンスピースに含まれ得る。
【0004】
ディスタンスピースは、圧縮機の潤滑剤とプロセスガスとの間の交差汚染を防ぐために、クランク端側とシリンダとの間に分離距離を設けるように構成され得る。具体的には、往復するピストンロッドの一部がピストンロッドワイパと圧力パッキンの両方に入るのを防ぐのに十分な長さで、ディスタンスピース内の区画が構成され得る。また、潤滑剤が圧力パッキンの方向へ移動するのを抑制するために、油切りを区画内のピストンロッドに備えることができる。
【0005】
さらなる密封制御および交差汚染の防止のために、ディスタンスピースは、上記のような内側の区画、および仕切りシールを有する隔壁によって内側の区画から分離された外側の区画と共に設置され得る。また、他の種類の制御を実装することが可能であり、例えば、内側および/または外側のディスタンスピースが、密閉容器に通気された不活性ガスでパージされるように構成されてもよい。別の例では、冷却剤および/または潤滑剤を別々に、外側の区画の圧力パッキンに提供してもよい。
【0006】
例えば単一区画または内側/外側の区画の、使用されるディスタンスピースの種類と、例えばパージングや通気などによってディスタンスピースおよび/または圧力パッキンが管理される方法は、往復動圧縮機で圧縮され得るプロセスガスの種類によって決定され得、例えば、米国石油協会出版の、「Reciprocating Compressors for Petroleum,Chemical,and Gas Industry Services」、「API Standard 618」、および/または「Specification for Packaged Reciprocating Compressors for Oil and Gas Production Services」と、「ISO 13631」が本明細書に参照として援用されている。例えば、一般に硫化水素が含まれない天然ガスであるスウィートガスが、単一区画の往復動圧縮機で圧縮され得る。しかし、かなりの量の硫化水素を含む天然ガスであるサワーガスや、危険な、腐食性がある、あるいは有毒と考えられる、他のガスは、多くの場合、2つの区画を伴うディスタンスピースを有する往復動式圧縮機によって圧縮される必要がある。このような圧縮機は、ディスタンスピースとシリンダアセンブリとの間で、圧力パッキンのパージングと通気をさらに必要とする可能性がある。
【0007】
往復動圧縮機が、プロセスガスがスウィートガスからサワーガスに変化する位置で使用される場合、さらなる制御がプロセスガスに適用され得るように、圧縮機が2つの区画を伴うディスタンスピースを有するように再構成する必要があり得る。この変更では、変更に対応するために、多くの場合、他の圧縮機の構成要素を修正または交換する必要があり、例えば、2つの区画を伴うディスタンスピースの第2区画に対応するために、より長いピストンロッドが必要とされ得る。多くの場合、往復動圧縮機の設置面積全体もまた影響を受けるため、圧縮機の周辺に配置される構成要素を変更するために、さらなる時間と費用が投資されなければならない。これらの変更は、時間がかかり、費用が高く、多くの場合に実行が困難であるだけでなく、圧縮機に追加の構成要素が導入されることによって、機械的な複雑さのレベルが上がり、圧縮機での漏洩等の不具合が発生しやすくなる。
【0008】
このため、往復動圧縮機、より具体的には、圧力パッキンが必要とされ、この圧力パッキンによって、異なる種類のガスを圧縮するためにより簡単に変換され、より容易に修理され、そして、より信頼性が高く、より漏洩が少ない往復動圧縮機を可能にする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第7,963,211号明細書
【発明の概要】
【0010】
例示的な実施形態に従って、往復動圧縮機のピストンロッドのための圧力パッキンがピストンロッドの貫通ボアを有するケースを含む。このケース内の区画が貫通ボアと一致し、この区画はピストンロッドのストロークと少なくとも同じ長さの軸長を有する。
【0011】
別の例示的な実施形態に従って、往復動圧縮機は、ピストンロッドと、このピストンロッドの周りの圧力パッキンと、ディスタンスピースとを含む。圧力パッキンは、少なくとも部分的に、ディスタンスピースの内部に配置されている。第1区画が、圧力パッキンからピストンロッドの表面に沿って漏洩するプロセスガスを受け入れるように構成され、圧力パッキン内の第2区画が、ピストンロッド上の潤滑剤が第1区画に入ることを抑制するように構成されている。
【0012】
別の実施形態に従って、スウィートガスの往復動圧縮機をサワーガスの往復動圧縮機に変換する方法であって、このスウィートガスの往復動圧縮機が単一区画を伴うディスタンスピースを有し、この方法が、圧縮機のピストンロッドのストロークと少なくとも同じ長さの軸長を有する区画を有する圧力パッキンをディスタンスピースに挿入するステップであって、これにより、ディスタンスピース内の区画がプロセスガスを受け入れるための第1区画として機能し、圧力パッキン内の区画が交差汚染を抑制するための第2区画として機能するステップと、ディスタンスピースからのガスラインを圧力パッキンの通路に接続するステップであって、圧力パッキンが挿入される際、通路が第1区画に開いた出口を有するステップとを含む。
【0013】
本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を構成する添付の図面は、1つ以上の実施形態を例示し、記述と共に、その実施形態を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】例示的な実施形態の斜視図である。
図2図1に示される例示的な実施形態の一部をクローズアップした切り欠き図である。
図3図1に示される実施形態の圧力パッキンの断面図である。
図4図3に示される圧力パッキンの分解図である。
図5図1に示される例示的な実施形態のディスタンスピースと圧力パッキンの断面図である。
図6図1に示される例示的な実施形態のディスタンスピースと圧力パッキンの切り欠き斜視図である。
図7図1に示される例示的な実施形態の、圧力パッキンが設置されたディスタンスピースの切り欠き端面図である。
図8図7のディスタンスピースの断面図である。
図9図7のディスタンスピースの端面図である。
図10図7のディスタンスピースの別の端面図である。
図11】スウィートガスの往復動圧縮機をサワーガスの往復動圧縮機に変換する方法の実施態様のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
例示的な実施形態の以下の説明は、添付の図面を参照する。異なる図面における同じ参照符号は、同じまたは同様の要素を特定する。以下の詳細な説明は、本発明を限定するものではない。その代わりに、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によって画定される。以下の実施形態は、往復動圧縮機の用語および構造に関して、簡単にするために説明される。ただし、次に説明される実施形態は、これらの例示的なシステムに限定されるものではなく、他のシステムにも適用することができる。
【0016】
本明細書における「一実施形態」または「実施形態」への言及は、実施形態に関連して説明される、特定の特徴、構造、または特性が、開示されている主題の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体のさまざまな箇所における「一実施形態において」または「実施形態において」という語句の出現は、必ずしも同じ実施形態に言及されていない。さらに、特定の特徴、構造または特性を、1つまたは複数の実施形態において任意の適切な方法で組み合わせることができる。
【0017】
図1は、本発明による往復動圧縮機10の例示的な実施形態を示している。圧縮機10のフレームが、このフレームに回転可能に取り付けられたクランク軸14を有するクランクケース12を含む。圧縮機10は、クランクケース12から反対方向に延びる、圧縮機セクションを有する二連構成で提供されている。当業者は、他の例示的な実施形態は、1、4、8等を含む任意の何連構成でもよいことを理解し得る。各圧縮機セクションは、その圧縮機セクションに摺動可能に配置されたクロスヘッド22を有するクロスヘッドガイド16を含む。コンロッド18は、クランク軸14とクロスヘッド22との間に延びている。ピストンロッド24は、クロスヘッド22からピストン32および34に、ディスタンスピース26を通ってシリンダ28内に延びている。シリンダ28は、圧縮サイクルの吸入および圧縮段階の間に、プロセスガスがシリンダの作業域の中と外に流れることが可能であるように構成されたバルブ36を含む。
【0018】
図2の一部をクローズアップした切り欠き図に示されるように、圧縮機10は、シリンダ28内にディスタンスピース26の空洞42から延びている圧力パッキン38を含む。圧力パッキン38の詳細図が、図3および図4に示されている。圧力パッキン38は、ピストンロッド貫通ボア48と、ケース46内で貫通ボア48と一致する区画52を有するケース46を含む。ケース46の一方の端部に、圧力パッキン38は、ドレン56(図3)と複数のワイパリング62(図4)を伴うワイパ本体58(図4)を有するピストンロッドワイパ54を含む。ケース46の他方の端部に、圧力パッキン38は複数のパッキン体64a〜64fを含み、各パッキン体が貫通ボア48の周りに複数のシールリング66を有する。図4に示されるように、パッキン体64を通って延びているタイロッド68が、パッキン体64a〜64fおよびシールリング66をケース46に固定している。さらに図4に示されるように、ワイパ本体58は、同様に締結具72でケース46に接続されている。
【0019】
図3および図4に示されるように、パッキンリング74は、第1のパッキン体64aと第2のパッキン体64bとの間に設けられている。さらに後述するように、ガス通路76は、パッキンケース46から第1のパッキン体64aを通ってパッキンリング74内へ延びている。ガス通路76は、リング74の開口部78で終端になる。
【0020】
図5および図6が、圧縮機10に設置された圧力パッキン38を伴う圧縮機10の詳細を示している。圧力パッキン38は、ピストンロッド24の周りに延び、ケース46の穴82と第1のパッキン体64aのフランジ84の穴86を貫通して延びるねじ付きボルト88によって、ディスタンスピース26に接続されている。
【0021】
図5に理解され得るように、圧縮機10は、ディスタンスピース26内の区画102を含む。図示されている実施形態において、区画102は、圧力パッキン38の外面とディスタンスピース26の内面108によって形成されている。ディスタンスピース26の区画102とパッキンケース46の区画52は、前述のように2つの区画を伴うディスタンスピースの利点を提供することができる。ただし、ディスタンスピースによって形成された2つの区画を有する従来の圧縮機とは異なり、圧縮機10は、区画の一方が圧力パッキン38の内部に設けられている、2区画から成る機能を提供することができる。以下により詳細に説明されるこの特徴および他の特徴は、単に圧力パッキンを変更することにより、圧縮機10が、異なる種類のガスを圧縮するために容易に変換されることを可能にする。
【0022】
図5に示されるように、区画52は第2区画として、パッキン体64b〜64cとディスタンスピース26により画定される第1区画102に対して機能することができる。したがって、第1区画102を、シールリング66から漏洩したプロセスガスを受け取るように構成することが可能であり、第2区画52を、圧縮機の潤滑剤とプロセスガスの交差汚染を抑制するように構成することが可能である。例えば、図3に示されるように、区画52を、ピストンロッド24のストロークよりも長い軸長55で設けることが可能であり、これにより、ピストンロッド24のいかなる部分もワイパ54とパッキン体64の両方に入らないようにすることができる。さらに、図5に示されるように、ピストンロッド24上の潤滑剤がパッキン体64の方向へ移動するのを防ぐために、ピストンロッド24は油切り98を伴って設置され得る。
【0023】
図5にさらに示されるように、第2区画52が第1のパッキン体64aによって第1区画102から密閉されている。図5からわかるように、区画102と区画52との間の密閉を強化するために、第1のパッキン体64aが追加のシールリング66を含むことができる。
【0024】
図5図7にさらに示されるように、圧力パッキン38のさまざまな通路を圧縮機10の外側に延ばすために、ケース46の継手112とディスタンスピース26の継手116を管114によって接続することが可能である。前述のように、パージガス通路76は、圧力パッキン38内でパッキンリング74の開口部78に延びている。圧縮機10の動作中、窒素等のパージ用不活性ガスが、通路76を通って第1区画102へ送られることが可能である。図5図7に示されるように、他の通路は、圧縮機10の外側と圧力パッキン38との間に延びている管によって提供され得る。例えば、潤滑剤通路122(図7および図9)は、ディスタンスピース26の外側から、空洞42を通って、パッキンケース46内の通路(不図示)とパッキン体64a〜64eの中へ、そしてパッキン体64eの潤滑剤開口部124(図3)へと延びることができる。この特徴により、パッキン体64a〜64eとピストンロッド24との間の摩擦を減少させるために、潤滑剤がその場で適用されることが可能となる。同様に、通気通路126(図7および図9)のペアは、それぞれ、第1区画102または第2区画52の1つ以上の開口部(不図示)に延びることができる。各通気通路126は、例えば、ディスタンスピース26の外側に配置される処理容器(不図示)に、パージガス、プロセスガス、および/または潤滑剤を排出するために、使用されてもよい。
【0025】
図7図10は、圧縮機10のディスタンスピース26を示している。図8に示されるように、ディスタンスピース26は、第1区画102のためのドレン118を含み得る。ディスタンスピース26は、クロスヘッドガイドから潤滑剤を受け入れるためのドレン120と、ワイパ54のドレン56(図3)を含み得る。さらに、ディスタンスピース26は、第2区画52のためのパッキンケースの通気口/ドレン126も含むことが可能であり、これにより、圧縮機の外側の安全な場所に、潤滑剤、不活性ガスおよび漏洩したプロセスガスまたはその混合物を除去することができる。
【0026】
図3から理解され得るように、圧力パッキン38は単一の構成機器を示すため、圧縮機10に設置する際に人員によって容易に取り扱われる。圧力パッキン38は、もともとの機器のまま提供されるか、または、もともと単一区画のディスタンスピースで構成された圧縮機を、2区画から成る機能に容易に変換することを可能にするレトロフィットとして提供されてもよい。
【0027】
例えば、圧力パッキン38のレトロフィットの設置は、ディスタンスピース26からサイドカバー94(図2)を除去し、ピストンロッド24からクロスヘッド止めナット96(図2)を除去し、シリンダ28の方向にピストンロッド24をスライドし、そして、設置されている圧力パッキン(不図示)を除去することを含み得る。次に、図5に示されるように、圧力パッキン38をディスタンスピース26に挿入することができる。図5に示される実施形態では、パッキンケースのボルト穴82およびフランジ84のボルト穴86が、ディスタンスピース26のねじ穴92と一直線になっている。Oリング70およびガスケット80は、それぞれ、ディスタンスピース26およびシリンダ28と係合する。次に、ねじ付きボルト88は、圧力パッキン38をディスタンスピース26に固定するために、穴82および穴86を通って、ディスタンスピース26のねじ穴92と螺合するように挿入される。図示されていない他の実施形態では、圧縮機10内で圧力パッキン38を固定するさまざまな他の手段が用いられてもよい。例えば、圧力パッキン38を締結具によってシリンダ28に取り付ける可能性があり、また、別の例として、第1のパッキン体のフランジ84をディスタンスピース26上のねじ山と係合してもよい。圧力パッキン38の貫通ボア48がピストンロッド軸25と同軸になった後、ピストンロッド24は、クロスヘッド22と係合するように、圧力パッキン38を通って戻されることが可能であり、クロスヘッド止めナット96は、ピストンロッド24に接続され得る。
【0028】
任意の構成要素である油切り98は、完全なリングまたは分割リング構成のいずれかで提供され得る。設置は、ケース46をパッキン体64aから分離し、そして油切り98をピストンロッド24に固定することを含み得る。図5に示される実施形態において、区画52は、圧縮機の動作中に油切り98が区画52の両端に接触することを防ぐのに十分な軸長54を有する。ディスタンスピース26にボルトで固定された圧力パッキンと共に、ケース46の継手112(図6)とディスタンスピース26の継手116(図6)との間に延びている管114が設置され得る。
【0029】
動作中に、パッキン体64a〜64fとピストンロッドシールリング66は、シリンダ28からのプロセスガスの流れを抑制することが可能である。シールリング66を通じて漏洩するプロセスガスは第1区画102に受け入れられ、第1区画に出る開口部78を有する第1ガス通路76を通って流れる不活性ガスにより、このプロセスガスをパージすることが可能である。次に、例えばサワーガスである、プロセスガスと混合されたパージガスは、通路126の1つを通って指定された処理容器に通気され得る。また、第1のパッキン体64aによって第1区画102から密閉されている第2区画52は、油がプロセスガスと交差汚染するのを防ぐことができる。なぜなら、ピストンロッドのいかなる部分もワイパ54とパッキン体64の両方に入らないためであり、さらに、油切り98は第2区画52の外側に汚染された潤滑剤が移動することを防ぐためである。このように、単一区画のディスタンスピースを有する圧縮機が、2つの区画を伴うディスタンスピースを備えた圧縮機の動作機能を提供することを可能にし得るため、サワーガス等の、危険な、腐食性がある、および/または有毒なガスと共に使用するために変換される。なお、もともとのディスタンスピース26を利用することができるので、2区画から成る機能を提供するために、圧縮機10をレトロフィットする際の圧縮機の設置面積およびディスタンスピースの継手116の位置は変わらないままであることが可能であり、この結果、利便性の向上とコスト削減を提供することができることに留意すべきである。
【0030】
したがって、図11のフロー図に示される例示的な実施形態に従って、スウィートガスの往復動圧縮機をサワーガスの往復動圧縮機に変換する方法(1000)であって、このスウィートガスの往復動圧縮機が単一区画を伴うディスタンスピースを有し、この方法が、圧縮機のピストンロッドのストロークと少なくとも同じ長さの軸長を有する第2区画を有する圧力パッキンをディスタンスピースに挿入するステップ(1002)であって、これにより、ディスタンスピース内の区画がプロセスガスを受け入れるための第1区画として機能し、圧力パッキン内の区画が交差汚染を抑制するための第2区画として機能するステップと、ディスタンスピースからのガスラインを圧力パッキンのガス通路に接続するステップ(1004)であって、圧力パッキンがディスタンスピースに挿入される際、通路が第1区画に開いた出口を有するステップとを含むことができる。
【0031】
上記の実施形態は、本発明のすべての点を例示することを意図したものではなく、限定的である。このような変形および修正形態のすべては、以下の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲および趣旨の範囲であると考えられる。それ自体としての明示的な記載がない限り、本出願の記述に用いられる要素、行為、または指示は、本発明に重要または本質的と解釈されるべきではない。また、本明細書で使用されている冠詞「a」は、1つまたは複数の項目を含むことが意図されている。
【符号の説明】
【0032】
10 往復動圧縮機
12 クランクケース
14 クランク軸
16 クロスヘッドガイド
18 コンロッド
22 クロスヘッド
24 ピストンロッド
25 ピストンロッド軸
26 ディスタンスピース
28 シリンダ
32 ピストン
34 ピストン
36 バルブ
38 圧力パッキン
42 空洞
46 ケース
48 ピストンロッド貫通ボア
52 区画(第2区画)
54 ピストンロッドワイパ
55 軸長
56 ドレン
58 ワイパ本体
62 ワイパリング
64 パッキン体
64a パッキン体(第1のパッキン体)
64b パッキン体(第2のパッキン体)
64c パッキン体
64d パッキン体
64e パッキン体
64f パッキン体
66 シールリング
68 タイロッド
70 Oリング
72 締結具
74 パッキンリング
76 ガス通路
78 開口部
80 ガスケット
82 穴
84 フランジ
86 穴
88 ねじ付きボルト
92 ねじ穴
94 サイドカバー
96 クロスヘッド止めナット
98 油切り
102 区画(第1区画)
108 内面
112 継手
114 管
116 継手
118 ドレン
120 ドレン
122 潤滑剤通路
124 潤滑剤開口部
126 通気通路、通気口/ドレン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11