(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6097448
(24)【登録日】2017年2月24日
(45)【発行日】2017年3月15日
(54)【発明の名称】カラーボール発射装置
(51)【国際特許分類】
F41B 11/80 20130101AFI20170306BHJP
F41B 11/682 20130101ALI20170306BHJP
F41B 11/72 20130101ALI20170306BHJP
F41B 11/723 20130101ALI20170306BHJP
F41B 11/71 20130101ALI20170306BHJP
F41B 15/00 20060101ALI20170306BHJP
B64C 39/02 20060101ALI20170306BHJP
【FI】
F41B11/80
F41B11/682
F41B11/72
F41B11/723
F41B11/71
F41B15/00 B
F41B15/00 Z
B64C39/02
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-517572(P2016-517572)
(86)(22)【出願日】2015年5月13日
(86)【国際出願番号】JP2015002435
【審査請求日】2016年3月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】515027772
【氏名又は名称】株式会社 スカイロボット
(74)【代理人】
【識別番号】100074169
【弁理士】
【氏名又は名称】広瀬 文彦
(72)【発明者】
【氏名】貝應 大介
【審査官】
諸星 圭祐
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−204864(JP,A)
【文献】
特開2009−24887(JP,A)
【文献】
特表2014−501903(JP,A)
【文献】
特開2013−63128(JP,A)
【文献】
特開2012−13379(JP,A)
【文献】
特開2007−78235(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2015/0226519(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2007/0131209(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2002/0046748(US,A1)
【文献】
米国特許第5727538(US,A)
【文献】
米国特許第5267501(US,A)
【文献】
欧州特許出願公開第2151660(EP,A1)
【文献】
特開2009−270740(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F41B 11/80−11/89
B64C 39/02
F41B 11/682
F41B 11/70−11/73
F41B 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮空気蓄圧タンクと、電磁バルブと、バレル(銃砲身)と、衝突による衝撃で破壊する外殻に塗料を封入させたカラーボールとからなる発射装置と、前記発射装置を搭載して空中を遠隔操作により滑空および/または停空飛翔する飛行制御機構を備えたドローン等の飛行体と、からなるカラーボール発射装置において、
前記圧縮空気蓄圧タンクは、タンク本体の一方端に電磁バルブに接合するタンク嵌合口が設けられた構成であり、
前記電磁バルブは、圧縮空気の蓄圧・噴出を制御する開閉弁と、前記開閉弁を電気信号でコントロールする電子発射制御機構と、圧縮空気を注入する空気注入口と、開閉弁と圧縮空気流出口との間に設けられた発射時の反動を軽減させるための長孔筒からなる高圧空気の後方噴出排気管とを備え、
前記バレルは、発射口と、電磁バルブを接合する圧縮空気流入口とを備えた筒体からなり、バレル内上部に流入する圧縮空気量を抑制することでバレル内下部に噴出する空気圧を高め、発射時にバレルに装填したカラーボールにバックスピンを生じさせて有効射程距離を延ばすために、バレル基部の内周上部に圧縮空気の噴出流速を制御する調整突起を設けたことを特徴とするカラーボール発射装置。
【請求項2】
前記圧縮空気蓄圧タンクは、タンク内部の圧縮空気の圧力をより高圧で噴出させるための圧縮空気押出弾性膜体がタンク嵌合口を覆って圧縮空気蓄圧タンク内に伸延するように設けられていることを特徴とする請求項1記載のカラーボール発射装置。
【請求項3】
前記圧縮空気蓄圧タンクは、タンク内部の圧力を上昇させる中空の硬質ゴムボールを内装したことを特徴とする請求項1記載のカラーボール発射装置。
【請求項4】
前記カラーボール発射装置は、遠隔操作でカラーボールの発射を制御する電気通信端末装置を装備したことを特徴とする請求項1記載のカラーボール発射装置。
【請求項5】
前記カラーボールは、事故・災害時にレスキュー用にマーキングを行う蓄光塗料からなることを特徴とする請求項1記載のカラーボール発射装置。
【請求項6】
前記カラーボールは、暴動等の鎮圧や防犯用の催涙剤を封入させたボールからなることを特徴とする請求項1記載のカラーボール発射装置。
【請求項7】
圧縮空気蓄圧タンクと、電磁バルブと、バレル(銃砲身)と、衝突による衝撃で破壊する外殻に塗料を封入させたカラーボールとからなる発射装置と、前記発射装置を搭載して空中を遠隔操作により滑空および/または停空飛翔する飛行制御機構を備えたドローン等の飛行体と、からなるカラーボール発射装置において、
前記圧縮空気蓄圧タンクは、タンク本体の一方端に電磁バルブに接合するタンク嵌合口が設けられた構成であり、
前記電磁バルブは、圧縮空気の蓄圧・噴出を制御する開閉弁と、前記開閉弁を電気信号でコントロールする電子発射制御機構と、圧縮空気を注入する空気注入口とを備え、
前記バレルは、発射口と、電磁バルブを接合する圧縮空気流入口とを備えた筒体からなり、バレル内上部に流入する圧縮空気量を抑制することでバレル内下部に噴出する空気圧を高め、発射時にバレルに装填したカラーボールにバックスピンを生じさせて有効射程距離を延ばすために、バレル基部の内周上部に圧縮空気の噴出流速を制御する調整突起を設けたことを特徴とするカラーボール発射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗料を封入したカラーボールを発射して構造体・建造物の検査や事故・災害時等にターゲットとなる箇所に着弾破裂させて着色特定するためのマーキングシステムに関するものであり、特に、電磁バルブで圧縮空気の蓄圧・解放を電子制御し、圧縮空気の噴出流速を調整突起でコントロールすることにより、バレル内に噴出する圧縮空気の流出圧力に変化を与えてカラーボールにバックスピンを生じさせて、有効射程距離を延ばして確実に着弾させ、変色したターゲットを継続的に目視可能な状態に保持するカラーボール発射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
構造体・建造物の検査や事故・災害時等に、検出したポイントを明確に表示し、その後の作業を容易にするためにマーキングを施すことが従来から行われている。近年では離れた場所からターゲットを目視により検出することを可能にするために、塗料などを封入した弾性体カプセルなどのカラーボールを、空気やガスの圧縮圧力で発射して着弾破裂させてマーキングをする方法が開発されている。また、防犯などの目的でも犯人の識別のために同様の機器が開発されている。
【0003】
検出箇所にマーキングを行う作業において、目標とした箇所に近接する距離まで到達することが困難な場合や、ドローン・トラック等の移動体にカラーボール発射装置を搭載して作業を行う際には、目標物から一定の距離を保ったままカラーボールを発射することになる。発射後にある程度の距離を飛翔させて着弾させなければならないため、カラーボールを発射する手段として圧縮空気やガス圧等の膨張力が利用されている。発射式のマーキング装置は、人間がターゲットに接近して目標物に直接マーキングを行わなくてよいため、危険な場所や災害時等に非常に有効な手段となり、また、犯人特定などの目的や、その他にも多種多様な場面で採用されている。
【0004】
カラーボールの飛翔精度については、圧縮空気・ガス圧などの膨張の力で発射された球形の弾丸が、飛行速度の低下と引力により放物線を描いて地面に向けて降下して行くのを防止するために、球形弾丸にバックスピンをかけて揚力を発生させて有効射程距離を延ばすという方法が用いられている。これにより、引力に逆らう効果が発生するため、発射の初速は若干低下するものの、発射威力を増大せずにより長い距離を飛翔させることが可能となっている。
【0005】
球形弾丸にバックスピンを生じさせるために、バレル内に突起やパッキンなどを設けることにより、バレル内を通過する弾丸をひっかけて回転を発生させる方法等が用いられてきた。しかしながら、突起に弾丸をひっかけることにより、弾丸の発射エネルギーが僅かなりとも低下してしまい飛距離が短くなってしまうという問題が生じていた。また、バックスピンを発生させるための突起やパッキンなどが長期に亘る使用により摩耗してしまい弾丸に十分な回転をかけられなくなってしまい有効射程距離が低下するという問題も生じていた。
【0006】
カプセル状の外殻に塗料を封入して形成されたカラーボールは、着弾した衝撃で外殻が破壊されることにより離れた場所からターゲットにマーキングを行うことを可能としている。上記の構成であるため、大きな膨張圧力を加えると発射前または発射時にカラーボールの外殻が破壊されてしまうため、発射時に弾丸に過大な圧力を加えることが出来ないという問題が生じることになる。そのため、外殻を破壊しない程度の発射威力に抑えなければならないが、現実のマーキング作業においては、同じ発射圧力でより長い飛距離を保つ発射装置の開発が要請されている。
【0007】
また、近年ではドローンなどの飛行体を無人探査や検査の目的で飛翔させることが様々な分野において行われているが、ドローンなどの飛行体は地面に設置された構造物とは異なり、カラーボール発射装置が搭載されている物体(ドローン)自体が空中に浮揚した状態で滞空していることとなる。そのため、発射の衝撃を受容する力または反作用を生み出す力が極めて低くなり、カラーボール発射時に高圧ガスの噴出により生ずる衝撃の影響を多大に受けてしまうため、カラーボール等の発射物をターゲットに正確に命中させるのは困難を極めていた。
【0008】
そこで、ドローン等の飛翔する移動体にカラーボール発射装置を搭載した状態においても、カラーボール発射の衝撃の反動の影響を受けずに、精度の高いマーキングが行える反動吸収形の発射装置の開発が望まれていた。
【0009】
発射の圧力でカラーボールの外殻を破壊することなく、長期に亘る発射動作の反復においても摩耗によるバックスピン効果の低減が発生せず、従来の膨張圧力と同じ圧力で有効射程距離を延ばし、発射の衝撃を抑えて反動に影響されることなくマーキングを行う事が可能であり、ターゲットを継続的に目視可能な状態に維持することが可能なカラーボール発射装置の開発が望まれていた。
【0010】
【特許文献1】特開2000−97595号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、上記の課題を解決するため、圧縮空気蓄圧タンクから電磁バルブで圧縮空気をバレル内に開放して、バレルに装填したカラーボールを発射するカラーボール発射装置であって、バレル基部の内周上部に圧縮空気の噴出流速の調整突起を設けたことにより、バレル内上部に流入する圧縮空気の流量を制御してバレル下部に流入する圧縮空気の流速を高めてカラーボールにバックスピンを生じさせて揚力を発生させ、有効射影距離を延ばすことを可能とし、また、後方噴出排気管を設けて発射と同時に後方に向けて圧縮空気を排気噴出させることにより発射の反動を軽減することが可能なカラーボール発射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため本発明に係るカラーボール発射装置は、圧縮空気蓄圧タンクと、電磁バルブと、バレル(銃砲身)と、衝突による衝撃で破壊する外殻に塗料を封入させたカラーボールとからなる発射装置と、前記発射装置を搭載して空中を遠隔操作により滑空および/または停空飛翔する飛行制御機構を備えたドローン等の飛行体と、からなるカラーボール発射装置であって、前記圧縮空気蓄圧タンクは、タンク本体の一方端に電磁バルブに接合するタンク嵌合口が設けられた構成であり、前記電磁バルブは、圧縮空気の蓄圧・噴出を制御する開閉弁と、前記開閉弁を電気信号でコントロールする電子発射制御機構と、圧縮空気を注入する空気注入口と、開閉弁と圧縮空気流出口との間に設けられた発射時の反動を軽減させるための長孔筒からなる高圧空気の後方噴出排気管とを備え、前記バレルは、発射口と、電磁バルブを接合する圧縮空気流入口とを備えた筒体からなり、バレル内上部に流入する圧縮空気量を抑制することでバレル内下部に噴出する空気圧を高め、発射時にバレルに装填したカラーボールにバックスピンを生じさせて有効射程距離を延ばすために、バレル基部の内周上部に圧縮空気の噴出流速を制御する調整突起を設けた構成である。
【0013】
前記圧縮空気蓄圧タンクは、タンク内部の圧縮空気の圧力をより高圧で噴出させるための圧縮空気押出弾性膜体がタンク嵌合口を覆って圧縮空気蓄圧タンク内に伸延するように設けられた構成である。
【0014】
また、前記圧縮空気蓄圧タンクは、タンク内部の圧力を上昇させる中空の硬質ゴムボールを内装した構成である。
【0015】
前記カラーボール発射装置は、遠隔操作でカラーボールの発射を制御する電気通信端末装置を装備した構成である。
【0016】
前記カラーボールは、事故・災害時にレスキュー用にマーキングを行う蓄光塗料からなる構成である。
【0017】
前記カラーボールは、暴動等の鎮圧や防犯用の催涙剤を封入させたボールからなる構成である。
また、本発明に係るカラーボール発射装置は、圧縮空気蓄圧タンクと、電磁バルブと、バレル(銃砲身)と、衝突による衝撃で破壊する外殻に塗料を封入させたカラーボールとからなる発射装置と、前記発射装置を搭載して空中を遠隔操作により滑空および/または停空飛翔する飛行制御機構を備えたドローン等の飛行体と、からなるカラーボール発射装置であって、前記圧縮空気蓄圧タンクは、タンク本体の一方端に電磁バルブに接合するタンク嵌合口が設けられた構成であり、前記電磁バルブは、圧縮空気の蓄圧・噴出を制御する開閉弁と、前記開閉弁を電気信号でコントロールする電子発射制御機構と、圧縮空気を注入する空気注入口とを備え、前記バレルは、発射口と、電磁バルブを接合する圧縮空気流入口とを備えた筒体からなり、バレル内上部に流入する圧縮空気量を抑制することでバレル内下部に噴出する空気圧を高め、発射時にバレルに装填したカラーボールにバックスピンを生じさせて有効射程距離を延ばすために、バレル基部の内周上部に圧縮空気の噴出流速を制御する調整突起を設けた構成でもある。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係るカラーボール発射装置は、上記詳述した通りの構成であるので、以下のような効果がある。
1.圧縮空気蓄圧タンクから噴出される圧縮空気の噴出流速をバレル基部の内周上部に設けた調整突起でコントロールし、ドローンに搭載されたカラーボール発射装置から発射されるカラーボールにバックスピンをかけて揚力を発生させることにより、従来と同じ圧縮空気の膨張圧力で、より長い有効射程距離を確保することが可能である。また、カラーボールの発射と同時に後方噴出排気管から圧縮空気を噴出させて発射の衝撃を打ち消すことにより、発射の反動による影響を最小限に抑えて正確にマーキングを行う事が可能となっている。
2.圧縮空気の注入により圧縮空気蓄圧タンク基部内壁に向けて引張された圧縮空気押出弾性膜体が、圧縮空気噴出時に収縮する力により圧縮空気の噴出圧力を高めることか可能である。
【0019】
3.圧縮空気蓄圧タンク内部に中空の硬質ゴムボールを内装したことにより、空気注入口から注入される圧縮空気のタンク内部圧力を高めることが可能である。
4.遠隔操作でカラーボールの発射を制御する電気通信端末装置を装備したことにより、搭載された可視画像カメラの画像等を基に遠隔地からカラーボール発射装置を操作することが可能である。
【0020】
5.カラーボールに封入した塗料を蓄光塗料とすることにより、マーキングを施した箇所を夜間でも容易に視認することが可能であり、また、昼間でも視認性が高いため、現場に向かう作業員に大まかな位置を指示するだけで迅速に着弾点を発見することが可能である。
6.カラーボールに催涙剤を封入することにより、暴動等が発生した際に、傷跡や後遺症を残すことがない催涙ガスを噴霧し、暴徒を鎮圧することが可能であり、また、同様に犯罪を未然に防止することが可能である。
7.バレル内上部に流入する圧縮空気の流量を制御してバレル下部に流入する圧縮空気の流速を高め、カラーボールにバックスピンを生じさせて揚力を発生させることにより、有効射影距離を延ばすことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明に係るカラーボール発射装置の圧縮空気押出弾性膜体を装備した圧縮空気注入前の断面図
【
図2】本発明に係るカラーボール発射装置の圧縮空気押出弾性膜体を装備した圧縮空気注入中の断面図
【
図3】本発明に係るカラーボール発射装置の硬質ゴムボール内装時の断面図
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明に係るカラーボール発射装置を図面に示す実施例に基づいて詳細に説明する。
本発明に係るカラーボール発射装置10は、バレル20と、カラーボール30と、電磁バルブ40と、圧縮空気蓄圧タンク50と、後方噴出排気管60とからなる。
バレル20は、発射口22と、調整突起24と、圧縮空気流入口26からなる。
電磁バルブ40は、開閉弁42と、電磁バルブ嵌合口44と、圧縮空気流出口46と、電子発射制御機構48と、空気注入口49を備えた構成である。
空気蓄圧蓄圧タンク50は、タンク嵌合口54と、圧縮空気押出弾性膜体56、または、硬質ゴムボール58を備えた構成である。
【0023】
図1は、本発明に係るカラーボール発射装置に圧縮空気押出弾性膜体を装備した状態の圧縮空気注入前の断面図である。本発明では、圧縮空気蓄圧タンク50の膨張圧力を電磁バルブ40で制御し、放出・噴出する圧縮空気の流出圧力を調整突起でコントロールしてバレル内下部の流速を高めることにより、バレルに装填したカラーボールにバックスピンをかける構成である。また、後方噴出排気管を設けたことにより、発射の反動を打ち消してバレルの跳ね上がりを抑えて正確にターゲットにマーキングを行うことが可能である。
【0024】
図2は、圧縮空気押出弾性膜体50を装備したカラーボール発射装置に、圧縮空気を注入し始めた状態を示す断面図である。空気注入口49から導入された圧縮空気により、圧縮空気押出弾性膜体56は拡張し、その収縮力により発射時に噴射される圧縮空気の噴出圧力を補強増大させる構成である。
【0025】
図3は、カラーボール発射装置に硬質ゴムボールを内装した状態の断面図である。圧縮空気蓄圧タンク50内の気圧により収縮させられている硬質ゴムボール58の膨張力により、発射時に噴射される圧縮空気の噴出圧力を補強増大させる構成である。
【0026】
カラーボール発射装置10のバレル20と電磁バルブ40と圧縮空気蓄圧タンク50とは、圧縮空気蓄圧タンク50のタンク嵌合口54と、電磁バルブ40の電磁バルブ嵌合口44とが互いに嵌合し、更に、電磁バルブ40の圧縮空気流出口46と、バレル20の圧縮空気流入口26が互いに結合してカラーボールを発射する装置を形成している。
【0027】
バレル20は、発射口22と、調整突起24と、圧縮空気流入口26とを備えた長筒体から形成されている銃身となる部分である。先端に発射口22を備え、基部の内周上部に調整突起24が設けられており、基部に圧縮空気流入口26が設けられている。圧縮空気流入口26から流入する圧縮空気の膨張圧力でバレル20内部に装填されたカラーボール30を発射する。バレル20の長さや口径は、圧縮空気の圧力やカラーボールのサイズに合わせて適宜に所望のサイズに形成することが可能である。
【0028】
発射口22は、バレル20の先端部分であり、圧縮空気の膨張圧力により、基部に装填されたカラーボール30が発射口側へと押し流され、最終的に発射口22からカラーボール30がバレル20の外部へと発射される。圧縮空気の膨張圧力を利用して発射する構造であるため、大きな爆発力や発熱がないため、バレルは軽合金や樹脂など、様々な材質で形成することが可能である。
【0029】
調整突起24は、バレル20の基部の内周上部から下部に向けて凸設された突起からなる。電磁バルブ40の圧縮空気流出口46から、バレル20の圧縮空気流入口26へと噴出された圧縮空気のバレル内基部の上部の流入圧力を調整突起24で制御する。調整突起24を設けたことにより、バレル内基部の下部にかかる流入圧力を高めて下部の圧縮空気を優先的に流出させることが可能となる。圧縮空気がカラーボールをバレル内周上方に押上げながら、バレル先端の発射口22に向けてカラーボール30を押し出して発射し、カラーボール30にバックスピン回転を生じさせる構成である。調整突起24の圧力調整で生じるバックスピンにより、カラーボール30は大気中において回転力による揚力を生じる。そのため、引力によって放物線を描きながら落下して行く力に反発し、弾道が安定するため、直線的により長い有効射程距離を確保することが可能となっている。調整突起24は、装填するカラーボールの仕様や、バレルの内径や長さによって圧縮空気の流速の設定を変更可能にするために、外部から大きさ・形状等を変更することが可能な構造とすることも可能である。
【0030】
圧縮空気流入口26は、バレル20基部に設けられた開口部であり、電磁バルブ40の圧縮空気流出口46と接合される構成である。圧縮空気蓄圧タンク50から流入する圧縮空気は膨張力が強く、開閉弁42を解放することにより電磁バルブ40内部を通過して、バレル基部の圧縮空気流入口26からバレル20内部に噴出される。圧縮空気流入口26と圧縮空気流出口46の接合部は十分に密閉結合され、圧縮空気が漏れないように構成されている。
【0031】
カラーボール30は、衝突による衝撃で破壊する外殻の中部に塗料を封入させた球状の弾丸からなり、カラーボール発射準備段階でバレル20の基部に装填される。カラーボール30は、目標物に衝突した衝撃で外殻が破壊して内部に封入されている塗料が飛散して目標物に付着することにより、ターゲットとなる対象物にマーキングを行う。発射口22から発射されたカラーボール30は、バックスピンによる揚力により、ターゲットまで直線的に飛翔して正確にマーキングを行うことが可能である。カラーボール30の外殻と、封入する塗料や薬剤(催涙剤)は、構造体の検査や、事故・災害時のレスキュー作業、または、暴動鎮圧・防犯などの用途に合わせて適宜変更することが可能である。また、カラーボールのサイズや形状は、目標物までの距離やバレルの内径・蓄圧空気の膨張噴射圧力などにより所望の態様に変更することが可能であり、本実施例に限定されるものではない。
【0032】
電磁バルブ40は、電磁バルブ嵌合口44と、圧縮空気流出口46と、電子発射制御機構48と、空気注入口49とからなるバルブシステムであり、電磁バルブ嵌合口44から流入する圧縮空気の膨張噴出力を電子発射制御装置48により制御し、発射時に開閉弁42を開放することによって、圧縮空気をバレル20の基部からバレル内腔に導入させる。
【0033】
開閉弁42は、圧縮空気蓄圧タンク50から電磁バルブ40内に流入した圧縮空気の蓄圧・噴射を制御する弁であり、電子バルブ40内に設けられている。また、電子発射制御機構48により電子操作で開閉弁42を開閉制御するシステムとなっている。開閉弁42を開放することにより圧縮空気がバレル20内に噴射され、装填されているカラーボール30が発射される。開閉弁42を閉じることにより圧縮空気蓄圧タンク50の圧縮空気の膨張力を電磁バルブ40内に保持する。開閉弁42は、圧縮空気を開放する弁であると同時に、圧縮空気をバレル20へと流出させないための密閉機構からなる開閉弁である。
【0034】
電磁バルブ嵌合口44は、電磁バルブ40の基部に設けられた開口部であり、圧縮空気蓄圧タンク50のタンク嵌合口54と嵌合している。圧縮空気蓄圧タンク50からの圧縮空気の膨張力は、電磁バルブ嵌合口44を通じて開閉弁42まで到達するため、電磁バルブ嵌合口44はタンク嵌合口54と密閉結合される構成となっている。螺合やパッキンを利用する従来の結合方法により結合される。
【0035】
圧縮空気流出口46は、電磁バルブ40の先端部に設けられた開口部であり、バレル20の圧縮空気流入口26と接合される。圧縮空気蓄圧タンク50からの圧縮空気の膨張力は、開閉弁42を解放することにより電磁バルブ40内部を通過して、圧縮空気流出口46からバレル基部の圧縮空気流入口26を通してバレル20内部に噴出導入される。
【0036】
電子発射制御装置48は、電磁バルブ40に設けられた開閉弁42の制御機構であり、外部からの電子的な信号により開閉弁42の開閉をコントロールする。電子発射制御装置48は、従来の電子回路によるスイッチであり、直接的に手動で操作することも可能である。また、カラーボール発射装置10を、ドローン等の飛行体
(移動動作の制御が可能な浮遊体)や、トラックなどの移動体に搭載して、遠隔地のコンピューターや手元の遠隔操作機器などで、遠隔操作でカラーボールを発射することも可能である。
【0037】
空気注入口49は、圧縮空気を注入するためのバルブ付き開口であり、電磁バルブ40の基部に設けられた構成である。空気注入口49は、蓄圧タンクにボンベなどから圧縮空気やガスなどを注入する際に使用される、逆止弁などの従来技術によるバルブであり、圧縮空気注入後に内圧を保持できるものであればよい。
【0038】
圧縮空気蓄圧タンク50は、圧縮空気の圧力を保持することが可能な蓄圧用容器からなり、先端部にタンク嵌合口54を備えた構造である。空気注入口49から注入された圧縮空気を蓄圧する剛性を備えていればよく、タンクの形状・サイズは必要とされる圧縮空気の量等によって適宜に変更することが可能であり、また、樹脂・金属などの様々な素材で形成することが可能である。
【0039】
タンク嵌合口54は、圧縮空気蓄圧タンク50の先端に設けられた接合部であり、電磁バルブ40の電磁バルブ嵌合口44に嵌合されている。圧縮空気蓄圧タンク50からの圧縮空気の膨張力は、タンク嵌合口54から電磁バルブ嵌合口44を通じて開閉弁42まで到達するため、タンク嵌合口54は電磁バルブ嵌合口44に密閉結合されている。
【0040】
圧縮空気押出弾性膜体56は、圧縮空気蓄圧タンク50内部に設けられた弾性を備えた膜体であり、圧縮空気蓄圧タンク50の中央よりタンク嵌合口54側の内周面に沿って圧縮空気蓄圧タンクを覆うように貼着されている。圧縮空気押出弾性膜体56は、圧縮空気を注入する前にあっては平坦な薄板形状をしており、圧縮空気の注入を開始することにより略半球形状へと拡大引張され(
図2参照)、圧縮空気注入完了時には圧縮空気蓄圧タンク50の内壁にまで押し付けられる形となる。開閉弁42を解放して圧縮空気を噴射する際には圧縮空気押出弾性膜体56が平坦な薄板形状に戻る収縮力を利用して、圧縮空気の噴射圧力を増大させる構成である。
【0041】
硬質ゴムボール58は、硬質ゴムからなる中空の弾性球状体であり、圧縮空気蓄圧タンク50の内部に装備される構成である。圧縮空気蓄圧タンク50への圧縮空気の注入による圧縮空気蓄圧タンク50内部の圧力の上昇に伴い、硬質ゴムボール58は圧縮縮小し、開閉弁42を解放して圧縮空気を噴射する際に硬質ゴムボール58が元の大きさに戻る膨張力を利用して、圧縮空気の噴射圧力を増大させる構成である。
【0042】
後方噴出排気管60は、電磁バルブの開閉弁42から圧縮空気流出口46の間に設けられた管状の排気噴射管であり、電磁バルブ40の略先端下部からカラーボール発射装置の後方に向けて圧縮空気蓄圧タンク50の基部まで延設される構成である。カラーボール発射時に開放弁40の解放により圧縮空気蓄圧タンクから噴出された圧縮空気をカラーボールに噴射すると同時に、後方噴出排気管60からも高圧空気を噴出させることにより、作用反作用の法則を利用して発射時の運動エネルギーによる反動を軽減させる効果を奏するものである。上記の構成としたことにより、発射の反動を軽減させて、照準を合わせたターゲットに的確にカラーボールを打ち当ててマーキングを施すことを可能にしたものである。
【0043】
本発明に係るカラーボール発射装置は、バレル20の基部内周の上部に、調整突起24が設けられており、これにより、圧縮空気流入口26から流れ込む圧縮空気の圧力をバレル上部において抑制させ、バレル下部において高圧な圧縮空気を噴射させることにより、カラーボール30にバックスピン(
図1、断面図上、時計回り)をかけることを可能としている。バックスピンがかかることにより、バレルから発射され飛翔するカラーボールの上部の大気中の空気の流れが下部より早くなり、ボールの上下の気圧差によって、発射されたカラーボール30に揚力が生じる。そのため、引力により放物線状にカラーボールが落下し始める時間を遅らせることが出来るので、発射角度を保ったまま飛翔する距離が延びるため、カラーボールの有効射程距離を延長することが可能となった。
【0044】
上記の構成としたことにより、マグヌス効果で揚力の発生したカラーボール30は発射後に直線軌道を保ったまま飛翔するため、ある程度距離の離れた目標物であっても照準器で合わせた位置に確実に着弾させることが可能である。また、飛翔距離が延びるため、任意の距離を飛翔させるのに必要となる圧縮空気の量が従来よりも少ない量でターゲットに着弾させることも可能となっている。カラーボール30の上部と下部に噴射される圧縮空気の圧力を制御して噴出圧力の差でバックスピンをかける構成であるため、突起やパッキンにひっかけて回転運動を与えていた従来の構造と比べて、発射初速の低下を防止することが可能となったものである。また、本発明に係る構造では、突起やパッキンなどの摩耗が発生しないため、長期に亘りカラーボールに正確にバックスピンをかけることが可能である。
【0045】
直線軌道を保ったままの有効射程距離を延ばすことが出来る構成としているため、離れた所からでも検査等で検出した故障個所を正確にマーキングして継続的に目視可能な状態を維持する事を可能としたものである。また、ドローン等の飛行体にカラーボール発射装置を搭載して、災害時に人間が容易に立ち入ることが出来ない場所での捜索の際に、ターゲットに合わせた照準に従って正確にマーキングを行うことを可能にしている。
【0046】
本発明に係るカラーボール発射装置は、後方噴出排気管60を設けたことにより、無反動砲と同様の効果が得られるため、頑丈な砲架等を備えない環境下でもカラーボールを正確に発射することが可能となった。反動を極めて小さなレベルにまで抑えることを可能にした構成であるため、非常に不安定かつ大きな反作用を発生させることが困難な軽量の飛行体(ドローン等)であっても、発射の衝撃の影響を受けずに正確にマーキングを行うことを可能にしたものである。また、反動を軽減したことにより、カラーボールの発射機構のみをトラック等の移動体に設置して発射する際に軽量で簡易な装備のみで砲台を構築してターゲットのマーキング作業に臨む事が可能となっている。
なお、後方噴出排気管60は、想定する射程距離の長さや要求される命中精度に応じて、取り外したり噴出量を適宜調整することはもちろん可能である。
【0047】
また、圧縮空気蓄圧タンク50の内部に圧縮空気押出弾性膜体56、または、硬質ゴムボール58を内装することにより、タンク内圧の上昇または下降による樹脂の弾性作用を利用して圧縮空気の噴射時の噴出圧力を高めることが可能となっている。噴出圧力を増大させることにより、従来と同じ圧縮空気の量で、より長い飛距離を確保することが可能である。
【0048】
カラーボールに封入する塗料を、蓄光塗料や自発光塗料とすることにより、夜間や暗い場所でもマーキング箇所を明確に目視で確認することが出来る状態に保つことが可能となる。また、カラーボールに催涙剤を封入して発射することにより、時間経過や自然分解で中和・除去することが可能な致死性の無い催涙剤を噴射拡散する催涙弾とすることも可能である。暴動が発生した際の暴徒の鎮圧や、犯罪を犯そうと企てている者に催涙剤を噴射することにより犯罪を未然に防ぐことが可能となる。本発明に係るドローンに搭載されたカラーボール発射装置は、遠隔操作で離隔した場所から様々な種類のカラーボール弾を発射することが可能であり、更に、安定した長い飛距離を確保することが出来るため、暴徒や犯罪者に接近することなく安全に暴動鎮圧や犯罪抑止を行う事が可能である。
【符号の説明】
【0049】
10 カラーボール発射装置
20 バレル
22 発射口
24 調整突起
26 圧縮空気流入口
30 カラーボール
40 電磁バルブ
42 開閉弁
44 電磁バルブ嵌合口
46 圧縮空気流出口
48 電子発射制御機構
49 空気注入口
50 圧縮空気蓄圧タンク
54 タンク嵌合口
56 圧縮空気押出弾性膜体
58 硬質ゴムボール
60 後方噴出排気管
【要約】
【課題】 遠隔操作可能なドローンにカラーボール発射装置を搭載し、発射されるカラーボールにバックスピンをかけて有効射程距離を延ばし、更に、発射時の反動を軽減することによって目標物に正確にマーキングを施すことが可能なカラーボール発射装置を提供する。
【解決手段】 圧縮空気蓄圧タンクと、電磁バルブと、バレル(銃砲身)からなる発射機構であり、バレル基部の内周上部に設けられた調整突起により、圧縮空気の噴出流速を調整し、カラーボールにバックスピンを生じさせて有効射程距離を延ばし、また、電磁バルブの開閉弁と圧縮空気流出口との間に設けられた後方噴出排気管から発射と同時に圧縮空気を排出させることにより、発射の反動を打ち消す構成である。
【選択図】
図1