特許第6097454号(P6097454)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6097454液晶表示素子用シール剤、上下導通材料、及び、液晶表示素子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6097454
(24)【登録日】2017年2月24日
(45)【発行日】2017年3月15日
(54)【発明の名称】液晶表示素子用シール剤、上下導通材料、及び、液晶表示素子
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/1339 20060101AFI20170306BHJP
   C08F 20/28 20060101ALI20170306BHJP
【FI】
   G02F1/1339 505
   C08F20/28
【請求項の数】8
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2016-555795(P2016-555795)
(86)(22)【出願日】2016年8月25日
(86)【国際出願番号】JP2016074778
【審査請求日】2016年12月26日
(31)【優先権主張番号】特願2015-173014(P2015-173014)
(32)【優先日】2015年9月2日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 秀幸
【審査官】 磯野 光司
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/034684(WO,A1)
【文献】 特開2008−065064(JP,A)
【文献】 特開2009−058933(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/120998(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/1339
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化性樹脂と、重合開始剤及び/又は熱硬化剤とを含有する液晶表示素子用シール剤であって、
前記硬化性樹脂は、1分子中に3個以上の重合性官能基と1個以上のε−カプロラクトンの開環構造とを有し、環状構造を有さない化合物を含有し、
前記1分子中に3個以上の重合性官能基と1個以上のε−カプロラクトンの開環構造とを有し、環状構造を有さない化合物は、1分子中に1個以上の水素結合性官能基を有する
ことを特徴とする液晶表示素子用シール剤。
【請求項2】
1分子中に3個以上の重合性官能基と1個以上のε−カプロラクトンの開環構造とを有し、環状構造を有さない化合物の有する重合性官能基が(メタ)アクリロイル基であることを特徴とする請求項1記載の液晶表示素子用シール剤。
【請求項3】
1分子中に3個以上の重合性官能基と1個以上のε−カプロラクトンの開環構造とを有し、環状構造を有さない化合物は、1分子中に2個以上のε−カプロラクトンの開環構造を有することを特徴とする請求項1又は2記載の液晶表示素子用シール剤。
【請求項4】
1分子中に3個以上の重合性官能基と1個以上のε−カプロラクトンの開環構造とを有し、環状構造を有さない化合物は、1分子中に4個以上のε−カプロラクトンの開環構造を有することを特徴とする請求項3記載の液晶表示素子用シール剤。
【請求項5】
1分子中に3個以上の重合性官能基と1個以上のε−カプロラクトンの開環構造とを有し、環状構造を有さない化合物は、デンドリマー構造を有することを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の液晶表示素子用シール剤。
【請求項6】
硬化性樹脂100重量部中における、1分子中に3個以上の重合性官能基と1個以上のε−カプロラクトンの開環構造とを有し、環状構造を有さない化合物の含有量が1〜80重量部であることを特徴とする請求項1、2、3、4又は5記載の液晶表示素子用シール剤。
【請求項7】
請求項1、2、3、4、5又は6記載の液晶表示素子用シール剤と導電性微粒子とを含有することを特徴とする上下導通材料。
【請求項8】
請求項1、2、3、4、5若しくは6記載の液晶表示素子用シール剤又は請求項7記載の上下導通材料を有することを特徴とする液晶表示素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着性及び透湿防止性に優れ、液晶汚染を抑制することができる液晶表示素子用シール剤に関する。また、本発明は、該液晶表示素子用シール剤を用いてなる上下導通材料及び液晶表示素子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶表示セル等の液晶表示素子の製造方法は、タクトタイム短縮、使用液晶量の最適化といった観点から、従来の真空注入方式から、例えば、特許文献1、特許文献2に開示されているような光熱併用硬化型のシール剤を用いた滴下工法と呼ばれる液晶滴下方式が主流となっている。
【0003】
滴下工法では、まず、2枚の電極付き透明基板の一方に、ディスペンスにより長方形状のシールパターンを形成する。次いで、シール剤が未硬化の状態で液晶の微小滴を透明基板の枠内全面に滴下し、すぐに他方の透明基板を重ね合わせ、シール部に紫外線等の光を照射して仮硬化を行う。その後、液晶アニール時に加熱して本硬化を行い、液晶表示素子を作製する。基板の貼り合わせを減圧下で行うようにすれば、極めて高い効率で液晶表示素子を製造することができる。
【0004】
タブレット端末や携帯端末の普及に伴い、液晶表示素子には高温高湿環境下での駆動等における耐湿信頼性がますます要求されており、シール剤には外部からの水の浸入を防止する性能が一層求められている。液晶表示素子の耐湿信頼性を向上させるためには、シール剤と基板等との接着性を向上させ、かつ、シール剤の硬化物を透湿防止性に優れるものとする必要性がある。しかしながら、シール剤において、接着性と透湿防止性とを両立させることは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−133794号公報
【特許文献2】特開平5−295087号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、接着性及び透湿防止性に優れ、液晶汚染を抑制することができる液晶表示素子用シール剤を提供することを目的とする。また、本発明は、該液晶表示素子用シール剤を用いてなる上下導通材料及び液晶表示素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、硬化性樹脂と、重合開始剤及び/又は熱硬化剤とを含有する液晶表示素子用シール剤であって、前記硬化性樹脂は、1分子中に3個以上の重合性官能基と1個以上のε−カプロラクトンの開環構造とを有し、環状構造を有さない化合物を含有し、前記1分子中に3個以上の重合性官能基と1個以上のε−カプロラクトンの開環構造とを有し、環状構造を有さない化合物は、1分子中に1個以上の水素結合性官能基を有する液晶表示素子用シール剤である。
以下に本発明を詳述する。
【0008】
本発明者らは、硬化性樹脂として、1分子中に3個以上の重合性官能基と1個以上のε−カプロラクトンの開環構造とを有し、環状構造を有さない化合物を用いることにより、接着性及び透湿防止性に優れ、液晶汚染を抑制することができる液晶表示素子用シール剤が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
本発明の液晶表示素子用シール剤は、硬化性樹脂を含有する。
上記硬化性樹脂は、1分子中に3個以上の重合性官能基と1個以上のε−カプロラクトンの開環構造とを有し、環状構造を有さない化合物(以下、「本発明にかかる重合性化合物」ともいう)を含有する。本発明にかかる重合性化合物を含有することにより、本発明の液晶表示素子用シール剤は、接着性及び透湿防止性に優れ、液晶汚染を抑制することができるものとなる。
【0010】
本発明にかかる重合性化合物は、1分子中に3個以上の重合性官能基を有する。
本発明にかかる重合性化合物の有する重合性官能基としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、エポキシ基、エピスルフィド基等が挙げられる。なかでも、本発明にかかる重合性化合物は、重合性官能基として(メタ)アクリロイル基を有することが好ましく、有する全ての重合性官能基が(メタ)アクリロイル基であることより好ましい。
なお、本明細書において上記「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイル又はメタクリロイルを意味する。
【0011】
本発明にかかる重合性化合物は、硬化性と透湿防止性との両立等の観点から、1分子中に4〜8個の重合性官能基を有することが好ましく、1分子中に6個の重合性官能基を有することが最も好ましい。
【0012】
本発明にかかる重合性化合物は、1分子中に1個以上のε−カプロラクトンの開環構造を有する。上記ε−カプロラクトンの開環構造を有することにより、本発明にかかる重合性化合物は、接着性に優れるものとなる。
【0013】
本発明にかかる重合性化合物は、1分子中に2個以上のε−カプロラクトンの開環構造を有することが好ましく、1分子中に4個以上のε−カプロラクトンの開環構造を有することがより好ましく、1分子中に4〜8個のε−カプロラクトンの開環構造を有することが更に好ましく、1分子中に6個のε−カプロラクトンの開環構造を有することが最も好ましい。
【0014】
本発明にかかる重合性化合物は、環状構造を有さないことにより、配合後の粘度上昇を抑制することができ、得られる液晶表示素子用シール剤が作業性に優れるものとなる。
【0015】
本発明にかかる重合性化合物は、液晶汚染を抑制する効果により優れるものとなることから、1分子中に1個以上の水素結合性官能基を有することが好ましい。
上記水素結合性官能基としては、例えば、水酸基(−OH)、一級アミノ基(−NH)、二級アミノ基(−NHR(Rは、芳香族又は脂肪族炭化水素、及び、これらの誘導体を表す))、カルボキシル基(−COOH)、一級アミド基(−CONH)、ヒドロキシアミノ基(−NHOH)、アミド結合(−NHCO−)、イミノ結合(−NH−)、イミド結合(−CONHCO−)、ヒドラゾ結合(−NH−NH−)等が挙げられる。なかでも、水酸基が好ましい。
【0016】
本発明にかかる重合性化合物を製造する方法としては、例えば、1分子中に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有し、環状構造を有さない(メタ)アクリレートをε−カプロラクトン変性する方法等が挙げられる。
なお、本明細書において上記「(メタ)アクリレート」は、アクリレート又はメタクリレートを意味し、上記「(メタ)アクリレートをε−カプロラクトン変性する」とは、(メタ)アクリレートのアルコール由来部位と(メタ)アクリロイル基との間に、ε−カプロラクトンの開環体又は開環重合体を導入することを意味する。
【0017】
上記(メタ)アクリレートをε−カプロラクトン変性する方法としては、具体的には例えば、触媒の存在下に高温でアルコールとε−カプロラクトンとを反応させ、ε−カプロラクトン変性アルコールを合成した後に、該ε−カプロラクトン変性アルコールと(メタ)アクリル酸とを酸性触媒の存在下で脱水溶媒を使用してエステル化反応させる方法や、(メタ)アクリル酸とε−カプロラクトンとを反応させ、ε−カプロラクトン変性(メタ)アクリル酸を合成した後に、該ε−カプロラクトン変性(メタ)アクリル酸とアルコールとをエステル化反応させる方法等が挙げられる。
なお、本明細書において上記「(メタ)アクリル」は、アクリル又はメタクリルを意味する。
【0018】
本発明にかかる重合性化合物は、複数の分子鎖が中心原子又は中心分子から規則的に分岐してなるデンドリマー構造を有することが好ましく、具体的には例えば、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等のε−カプロラクトン変性体が挙げられる。なかでも、下記式(1)で表されるε−カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートが好ましい。
【0019】
【化1】
【0020】
式(1)中、l、m、n、o、p、及び、qは、それぞれ独立に、1〜12の整数を表す。
得られる液晶表示素子用シール剤が接着性、透湿防止性、低液晶汚染性の全てにより優れるものとなることから、上記式(1)中、l、m、n、o、p、及び、qは、それぞれ1又は2であることが好ましく、それぞれ1であることが最も好ましい。
【0021】
上記硬化性樹脂は、本発明にかかる重合性化合物に加えて、その他の重合性化合物を含有してもよい。
上記その他の重合性化合物を含有する場合、本発明にかかる重合性化合物の含有量は、硬化性樹脂全体100重量部に対して、好ましい下限が1重量部、好ましい上限が80重量部である。本発明にかかる重合性化合物の含有量が1重量部以上であることにより、得られる液晶表示素子用シール剤が接着性により優れるものとなる。本発明にかかる重合性化合物の含有量が80重量部以下であることにより、得られる液晶表示素子用シール剤が透湿防止性により優れるものとなる。本発明にかかる重合性化合物の含有量のより好ましい下限は10重量部、より好ましい上限は70重量部であり、更に好ましい下限は30重量部、更に好ましい上限は60重量部である。
【0022】
上記その他の重合性化合物としては、本発明にかかる重合性化合物に含まれるもの以外の、その他のエポキシ化合物やその他の(メタ)アクリル化合物等が挙げられる。
【0023】
上記その他のエポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、2,2’−ジアリルビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノール型エポキシ樹脂、プロピレンオキシド付加ビスフェノールA型エポキシ樹脂、レゾルシノール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、スルフィド型エポキシ樹脂、ジフェニルエーテル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルトクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレンフェノールノボラック型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、アルキルポリオール型エポキシ樹脂、ゴム変性型エポキシ樹脂、グリシジルエステル化合物等が挙げられる。
【0024】
上記ビスフェノールA型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、jER828EL、jER1004(いずれも三菱化学社製)、エピクロン850CRP(DIC社製)等が挙げられる。
上記ビスフェノールF型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、jER806、jER4004(いずれも三菱化学社製)等が挙げられる。
上記ビスフェノールE型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、R710(プリンテック社製)等が挙げられる。
上記ビスフェノールS型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、エピクロンEXA1514(DIC社製)等が挙げられる。
上記2,2’−ジアリルビスフェノールA型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、RE−810NM(日本化薬社製)等が挙げられる。
上記水添ビスフェノール型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、エピクロンEXA7015(DIC社製)等が挙げられる。
上記プロピレンオキシド付加ビスフェノールA型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、EP−4000S(ADEKA社製)等が挙げられる。
上記レゾルシノール型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、EX−201(ナガセケムテックス社製)等が挙げられる。
上記ビフェニル型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、jER YX−4000H(三菱化学社製)等が挙げられる。
上記スルフィド型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、YSLV−50TE(新日鉄住金化学社製)等が挙げられる。
上記ジフェニルエーテル型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、YSLV−80DE(新日鉄住金化学社製)等が挙げられる。
上記ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、EP−4088S(ADEKA社製)等が挙げられる。
上記ナフタレン型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、エピクロンHP4032、エピクロンEXA−4700(いずれもDIC社製)等が挙げられる。
上記フェノールノボラック型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、エピクロンN−770(DIC社製)等が挙げられる。
上記オルトクレゾールノボラック型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、エピクロンN−670−EXP−S(DIC社製)等が挙げられる。
上記ジシクロペンタジエンノボラック型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、エピクロンHP7200(DIC社製)等が挙げられる。
上記ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、NC−3000P(日本化薬社製)等が挙げられる。
上記ナフタレンフェノールノボラック型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、ESN−165S(新日鉄住金化学社製)等が挙げられる。
上記グリシジルアミン型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、jER630(三菱化学社製)、エピクロン430(DIC社製)、TETRAD−X(三菱ガス化学社製)等が挙げられる。
上記アルキルポリオール型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、ZX−1542(新日鉄住金化学社製)、エピクロン726(DIC社製)、エポライト80MFA(共栄社化学社製)、デナコールEX−611(ナガセケムテックス社製)等が挙げられる。
上記ゴム変性型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、YR−450、YR−207(いずれも新日鉄住金化学社製)、エポリードPB(ダイセル社製)等が挙げられる。
上記グリシジルエステル化合物のうち市販されているものとしては、例えば、デナコールEX−147(ナガセケムテックス社製)等が挙げられる。
上記エポキシ化合物のうちその他に市販されているものとしては、例えば、YDC−1312、YSLV−80XY、YSLV−90CR(いずれも新日鉄住金化学社製)、XAC4151(旭化成社製)、jER1031、jER1032(いずれも三菱化学社製)、EXA−7120(DIC社製)、TEPIC(日産化学社製)等が挙げられる。
【0025】
また、上記硬化性樹脂は、上記その他のエポキシ化合物として、1分子中にエポキシ基と(メタ)アクリロイル基とを有する化合物を含有してもよい。このような化合物としては、例えば、2以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物の一部分のエポキシ基を(メタ)アクリル酸と反応させることによって得られる部分(メタ)アクリル変性エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0026】
上記部分(メタ)アクリル変性エポキシ樹脂のうち、市販されているものとしては、例えば、UVACURE1561(ダイセル・オルネクス社製)等が挙げられる
【0027】
上記その他の(メタ)アクリル化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸とエポキシ化合物とを反応させることにより得られるエポキシ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸に水酸基を有する化合物を反応させることにより得られる(メタ)アクリル酸エステル化合物、イソシアネート化合物に水酸基を有する(メタ)アクリル酸誘導体を反応させることにより得られるウレタン(メタ)アクリレート等が挙げられる。なかでも、エポキシ(メタ)アクリレートが好ましい。また、上記その他の(メタ)アクリル化合物は、反応性の高さから分子中に(メタ)アクリロイル基を2個以上有するものが好ましい。
なお、本明細書において上記「エポキシ(メタ)アクリレート」とは、エポキシ化合物中の全てのエポキシ基を(メタ)アクリル酸と反応させた化合物のことを表す。
【0028】
上記エポキシ(メタ)アクリレートとしては、例えば、エポキシ化合物と(メタ)アクリル酸とを、常法に従って塩基性触媒の存在下で反応することにより得られるもの等が挙げられる。
【0029】
上記エポキシ(メタ)アクリレートを合成するための原料となるエポキシ化合物としては、上記その他の重合性化合物として含有してもよいものとして上述したその他のエポキシ化合物と同様のものが挙げられる。
【0030】
上記エポキシ(メタ)アクリレートのうち市販されているものとしては、例えば、EBECRYL860、EBECRYL3200、EBECRYL3201、EBECRYL3412、EBECRYL3600、EBECRYL3700、EBECRYL3701、EBECRYL3702、EBECRYL3703、EBECRYL3708、EBECRYL3800、EBECRYL6040、EBECRYLRDX63182(いずれもダイセル・オルネクス社製)、EA−1010、EA−1020、EA−5323、EA−5520、EA−CHD、EMA−1020(いずれも新中村化学工業社製)、エポキシエステルM−600A、エポキシエステル40EM、エポキシエステル70PA、エポキシエステル200PA、エポキシエステル80MFA、エポキシエステル3002M、エポキシエステル3002A、エポキシエステル1600A、エポキシエステル3000M、エポキシエステル3000A、エポキシエステル200EA、エポキシエステル400EA(いずれも共栄社化学社製)、デナコールアクリレートDA−141、デナコールアクリレートDA−314、デナコールアクリレートDA−911(いずれもナガセケムテックス社製)等が挙げられる。
【0031】
上記(メタ)アクリル酸エステル化合物のうち単官能のものとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ビシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、2−ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2−フェノキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、1H,1H,5H−オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、イミド(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチル2−ヒドロキシプロピルフタレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチルホスフェート、グリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0032】
また、上記(メタ)アクリル酸エステル化合物のうち2官能のものとしては、例えば、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド付加ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、ジメチロールジシクロペンタジエニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性イソシアヌル酸ジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイロキシプロピル(メタ)アクリレート、カーボネートジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエーテルジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエステルジオールジ(メタ)アクリレート、ポリカプロラクトンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリブタジエンジオールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0033】
また、上記(メタ)アクリル酸エステル化合物のうち3官能以上のものとしては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド付加トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド付加グリセリントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリス(メタ)アクリロイルオキシエチルフォスフェート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0034】
上記ウレタン(メタ)アクリレートとしては、例えば、2つのイソシアネート基を有するイソシアネート化合物1当量に対して水酸基を有する(メタ)アクリル酸誘導体2当量を、触媒量のスズ系化合物存在下で反応させることによって得ることができる。
【0035】
上記ウレタン(メタ)アクリレートの原料となるイソシアネート化合物としては、例えば、イソホロンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート(MDI)、水添MDI、ポリメリックMDI、1,5−ナフタレンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、水添XDI、リジンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリス(イソシアネートフェニル)チオフォスフェート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、1,6,11−ウンデカントリイソシアネート等が挙げられる。
【0036】
また、上記ウレタン(メタ)アクリレートの原料となるイソシアネート化合物としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ソルビトール、トリメチロールプロパン、カーボネートジオール、ポリエーテルジオール、ポリエステルジオール、ポリカプロラクトンジオール等のポリオールと過剰のイソシアネート化合物との反応により得られる鎖延長されたイソシアネート化合物も使用することができる。
【0037】
上記ウレタン(メタ)アクリレートの原料となる、水酸基を有する(メタ)アクリル酸誘導体としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートや、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ポリエチレングリコール等の二価のアルコールのモノ(メタ)アクリレートや、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセリン等の三価のアルコールのモノ(メタ)アクリレート又はジ(メタ)アクリレートや、ビスフェノールA型エポキシアクリレート等のエポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0038】
上記ウレタン(メタ)アクリレートのうち市販されているものとしては、例えば、M−1100、M−1200、M−1210、M−1600(いずれも東亞合成社製)、EBECRYL210、EBECRYL220、EBECRYL230、EBECRYL270、EBECRYL1290、EBECRYL2220、EBECRYL4827、EBECRYL4842、EBECRYL4858、EBECRYL5129、EBECRYL6700、EBECRYL8402、EBECRYL8803、EBECRYL8804、EBECRYL8807、EBECRYL9260(いずれもダイセル・オルネクス社製)、アートレジンUN−330、アートレジンSH−500B、アートレジンUN−1200TPK、アートレジンUN−1255、アートレジンUN−3320HB、アートレジンUN−7100、アートレジンUN−9000A、アートレジンUN−9000H(いずれも根上工業社製)、U−2HA、U−2PHA、U−3HA、U−4HA、U−6H、U−6HA、U−6LPA、U−10H、U−15HA、U−108、U−108A、U−122A、U−122P、U−324A、U−340A、U−340P、U−1084A、U−2061BA、UA−340P、UA−4000、UA−4100、UA−4200、UA−4400、UA−5201P、UA−7100、UA−7200、UA−W2A(いずれも新中村化学工業社製)、AH−600、AI−600、AT−600、UA−101I、UA−101T、UA−306H、UA−306I、UA−306T(いずれも共栄社化学社製)等が挙げられる。
【0039】
本発明の液晶表示素子用シール剤は、硬化性樹脂中の(メタ)アクリロイル基とエポキシ基との含有割合をモル比で50:50〜95:5とすることが好ましい。
【0040】
本発明の液晶表示素子用シール剤は、重合開始剤及び/又は熱硬化剤を含有する。
上記重合開始剤としては、例えば、ラジカル重合開始剤やカチオン重合開始剤等が挙げられる。
【0041】
上記ラジカル重合開始剤としては、光照射によりラジカルを発生する光ラジカル重合開始剤や、加熱によりラジカルを発生する熱ラジカル重合開始剤等が挙げられる。
【0042】
上記光ラジカル重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン系化合物、アセトフェノン系化合物、アシルフォスフィンオキサイド系化合物、チタノセン系化合物、オキシムエステル系化合物、ベンゾインエーテル系化合物、チオキサントン系化合物等が挙げられる。
【0043】
上記光ラジカル重合開始剤のうち市販されているものとしては、例えば、IRGACURE 184、IRGACURE 369、IRGACURE 379、IRGACURE 651、IRGACURE 819、IRGACURE 907、IRGACURE 2959、IRGACURE OXE01、ルシリンTPO(いずれもBASF社製)、NCI−930(ADEKA社製)、SPEEDCURE EMK(日本シーベルヘグナー社製)、ベンソインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル(いずれも東京化成工業社製)等が挙げられる。
【0044】
上記熱ラジカル重合開始剤としては、例えば、アゾ化合物、有機過酸化物等からなるものが挙げられる。なかでも、高分子アゾ化合物からなる開始剤(以下、「高分子アゾ開始剤」ともいう)が好ましい。
なお、本明細書において高分子アゾ化合物とは、アゾ基を有し、熱によって(メタ)アクリロイル基を硬化させることができるラジカルを生成する、数平均分子量が300以上の化合物を意味する。
【0045】
上記高分子アゾ開始剤の数平均分子量の好ましい下限は1000、好ましい上限は30万である。上記高分子アゾ開始剤の数平均分子量がこの範囲であることにより、液晶汚染を抑制しつつ、硬化性樹脂と容易に混合することができる。上記高分子アゾ開始剤の数平均分子量のより好ましい下限は5000、より好ましい上限は10万であり、更に好ましい下限は1万、更に好ましい上限は9万である。
なお、本明細書において、上記数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定を行い、ポリスチレン換算により求められる値である。GPCによってポリスチレン換算による数平均分子量を測定する際のカラムとしては、例えば、Shodex LF−804(昭和電工社製)等が挙げられる。
【0046】
上記高分子アゾ開始剤としては、例えば、アゾ基を介してポリアルキレンオキサイドやポリジメチルシロキサン等のユニットが複数結合した構造を有するものが挙げられる。
上記アゾ基を介してポリアルキレンオキサイド等のユニットが複数結合した構造を有する高分子アゾ開始剤としては、ポリエチレンオキサイド構造を有するものが好ましい。このような高分子アゾ開始剤としては、例えば、4,4’−アゾビス(4−シアノペンタン酸)とポリアルキレングリコールの重縮合物や、4,4’−アゾビス(4−シアノペンタン酸)と末端アミノ基を有するポリジメチルシロキサンの重縮合物等が挙げられ、具体的には例えば、VPE−0201、VPE−0401、VPE−0601、VPS−0501、VPS−1001(いずれも和光純薬工業社製)等が挙げられる。
また、高分子ではないアゾ化合物の例としては、V−65、V−501(いずれも和光純薬工業社製)等が挙げられる。
【0047】
上記有機過酸化物としては、例えば、ケトンパーオキサイド、パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、パーオキシエステル、ジアシルパーオキサイド、パーオキシジカーボネート等が挙げられる。
【0048】
上記カチオン重合開始剤としては、光カチオン重合開始剤を好適に用いることができる。上記光カチオン重合開始剤は、光照射によりプロトン酸又はルイス酸を発生するものであれば特に限定されず、イオン性光酸発生タイプのものであってもよいし、非イオン性光酸発生タイプであってもよい。
上記光カチオン重合開始剤としては、例えば、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ハロニウム塩、芳香族スルホニウム塩等のオニウム塩類、鉄−アレン錯体、チタノセン錯体、アリールシラノール−アルミニウム錯体等の有機金属錯体類等が挙げられる。
【0049】
上記光カチオン重合開始剤のうち市販されているものとしては、例えば、アデカオプトマーSP−150、アデカオプトマーSP−170(いずれもADEKA社製)等が挙げられる。
【0050】
上記重合開始剤の含有量は、硬化性樹脂100重量部に対して、好ましい下限が0.01重量部、好ましい上限が10重量部である。上記重合開始剤の含有量がこの範囲であることにより、得られる液晶表示素子用シール剤が液晶汚染を抑制しつつ、保存安定性や硬化性により優れるものとなる。上記重合開始剤の含有量のより好ましい下限は0.1重量部、より好ましい上限は5重量部である。
【0051】
上記熱硬化剤としては、例えば、有機酸ヒドラジド、イミダゾール誘導体、アミン化合物、多価フェノール系化合物、酸無水物等が挙げられる。なかでも、有機酸ヒドラジドが好適に用いられる。
【0052】
上記有機酸ヒドラジドとしては、例えば、セバシン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド等が挙げられる。
上記有機酸ヒドラジドのうち市販されているものとしては、例えば、SDH、ADH(いずれも大塚化学社製)、アミキュアVDH、アミキュアVDH−J、アミキュアUDH、アミキュアUDH−J(いずれも味の素ファインテクノ社製)等が挙げられる。
【0053】
上記熱硬化剤の含有量は、上記硬化性樹脂100重量部に対して、好ましい下限が1重量部、好ましい上限が50重量部である。上記熱硬化剤の含有量がこの範囲であることにより、得られる液晶表示素子用シール剤の塗布性等を悪化させることなく、より熱硬化性に優れるものとすることができる。上記熱硬化剤の含有量のより好ましい上限は30重量部である。
【0054】
本発明の液晶表示素子用シール剤は、粘度の向上、応力分散効果による接着性の改善、線膨張率の改善、硬化物の透湿防止性の向上等を目的として充填剤を含有することが好ましい。
【0055】
上記充填剤としては、例えば、シリカ、タルク、ガラスビーズ、石綿、石膏、珪藻土、スメクタイト、ベントナイト、モンモリロナイト、セリサイト、活性白土、アルミナ、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化マグネシウム、酸化錫、酸化チタン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化珪素、硫酸バリウム、珪酸カルシウム等の無機充填剤や、ポリエステル微粒子、ポリウレタン微粒子、ビニル重合体微粒子、アクリル重合体微粒子等の有機充填剤が挙げられる。
【0056】
本発明の液晶表示素子用シール剤100重量部中における上記充填剤の含有量の好ましい下限は10重量部、好ましい上限は70重量部である。上記充填剤の含有量がこの範囲であることにより、塗布性等を悪化させることなく、接着性の改善等の効果により優れるものとなる。上記充填剤の含有量のより好ましい下限は20重量部、より好ましい上限は60重量部である。
【0057】
本発明の液晶表示素子用シール剤は、シランカップリング剤を含有することが好ましい。上記シランカップリング剤は、主にシール剤と基板等とを良好に接着するための接着助剤としての役割を有する。
【0058】
上記シランカップリング剤としては、基板等との接着性を向上させる効果に優れ、硬化性樹脂と化学結合することにより液晶中への硬化性樹脂の流出を抑制することができることから、例えば、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン等が好適に用いられる。
【0059】
本発明の液晶表示素子用シール剤100重量部中における上記シランカップリング剤の含有量の好ましい下限は0.1重量部、好ましい上限は10重量部である。上記シランカップリング剤の含有量がこの範囲であることにより、液晶汚染の発生を抑制しつつ、接着性を向上させる効果により優れるものとなる。上記シランカップリング剤の含有量のより好ましい下限は0.3重量部、より好ましい上限は5重量部である。
【0060】
本発明の液晶表示素子用シール剤は、遮光剤を含有してもよい。上記遮光剤を含有することにより、本発明の液晶表示素子用シール剤は、遮光シール剤として好適に用いることができる。
【0061】
上記遮光剤としては、例えば、酸化鉄、チタンブラック、アニリンブラック、シアニンブラック、フラーレン、カーボンブラック、樹脂被覆型カーボンブラック等が挙げられる。なかでも、チタンブラックが好ましい。
【0062】
上記チタンブラックは、波長300〜800nmの光に対する平均透過率と比較して、紫外線領域付近、特に波長370〜450nmの光に対する透過率が高くなる物質である。即ち、上記チタンブラックは、可視光領域の波長の光を充分に遮蔽することで本発明の液晶表示素子用シール剤に遮光性を付与する一方、紫外線領域付近の波長の光は透過させる性質を有する遮光剤である。本発明の液晶表示素子用シール剤に含有される遮光剤としては、絶縁性の高い物質が好ましく、絶縁性の高い遮光剤としてもチタンブラックが好適である。
【0063】
上記チタンブラックは、表面処理されていないものでも充分な効果を発揮するが、表面がカップリング剤等の有機成分で処理されているものや、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化ゲルマニウム、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム等の無機成分で被覆されているもの等、表面処理されたチタンブラックを用いることもできる。なかでも、有機成分で処理されているものは、より絶縁性を向上できる点で好ましい。
また、遮光剤として上記チタンブラックを含有する本発明の液晶表示素子用シール剤を用いて製造した液晶表示素子は、充分な遮光性を有するため、光の漏れ出しがなく高いコントラストを有し、優れた画像表示品質を有する液晶表示素子を実現することができる。
【0064】
上記チタンブラックのうち市販されているものとしては、例えば、12S、13M、13M−C、13R−N、14M−C(いずれも三菱マテリアル社製)、ティラックD(赤穂化成社製)等が挙げられる。
【0065】
上記チタンブラックの比表面積の好ましい下限は13m/g、好ましい上限は30m/gであり、より好ましい下限は15m/g、より好ましい上限は25m/gである。
また、上記チタンブラックの体積抵抗の好ましい下限は0.5Ω・cm、好ましい上限は3Ω・cmであり、より好ましい下限は1Ω・cm、より好ましい上限は2.5Ω・cmである。
【0066】
上記遮光剤の一次粒子径は、液晶表示素子の基板間の距離以下であれば特に限定されないが、好ましい下限は1nm、好ましい上限は5000nmである。上記遮光剤の一次粒子径がこの範囲であることにより、得られる液晶表示素子用シール剤の塗布性等を悪化させることなく遮光性により優れるものとすることができる。上記遮光剤の一次粒子径のより好ましい下限は5nm、より好ましい上限は200nm、更に好ましい下限は10nm、更に好ましい上限は100nmである。
なお、上記遮光剤の一次粒子径は、NICOMP 380ZLS(PARTICLE SIZING SYSTEMS社製)を用いて、上記遮光剤を溶媒(水、有機溶媒等)に分散させて測定することができる。
【0067】
本発明の液晶表示素子用シール剤100重量部中における上記遮光剤の含有量の好ましい下限は5重量部、好ましい上限は80重量部である。上記遮光剤の含有量がこの範囲であることにより、得られる液晶表示素子用シール剤の基板に対する密着性や硬化後の強度や描画性を低下させることなくより優れた遮光性を発揮することができる。上記遮光剤の含有量のより好ましい下限は10重量部、より好ましい上限は70重量部であり、更に好ましい下限は30重量部、更に好ましい上限は60重量部である。
【0068】
本発明の液晶表示素子用シール剤は、更に、必要に応じて、応力緩和剤、反応性希釈剤、揺変剤、スペーサー、硬化促進剤、消泡剤、レベリング剤、重合禁止剤、その他添加剤等を含有してもよい。
【0069】
本発明の液晶表示素子用シール剤を製造する方法としては、例えば、ホモディスパー、ホモミキサー、万能ミキサー、プラネタリーミキサー、ニーダー、3本ロール等の混合機を用いて、硬化性樹脂と、重合開始剤及び/又は熱硬化剤と、必要に応じて添加するシランカップリング剤等の添加剤とを混合する方法等が挙げられる。
【0070】
本発明の液晶表示素子用シール剤に、導電性微粒子を配合することにより、上下導通材料を製造することができる。このような本発明の液晶表示素子用シール剤と導電性微粒子とを含有する上下導通材料もまた、本発明の1つである。
【0071】
上記導電性微粒子としては、金属ボール、樹脂微粒子の表面に導電金属層を形成したもの等を用いることができる。なかでも、樹脂微粒子の表面に導電金属層を形成したものは、樹脂微粒子の優れた弾性により、透明基板等を損傷することなく導電接続が可能であることから好適である。
【0072】
本発明の液晶表示素子用シール剤又は本発明の上下導通材料を有する液晶表示素子もまた、本発明の1つである。
【0073】
本発明の液晶表示素子を製造する方法としては、液晶滴下工法が好適に用いられる。具体的には例えば、ITO薄膜等の電極付きのガラス基板やポリエチレンテレフタレート基板等の2枚の基板の一方に、本発明の液晶表示素子用シール剤を、スクリーン印刷、ディスペンサー塗布等により塗布して枠状のシールパターンを形成する工程、本発明の液晶表示素子用シール剤が未硬化の状態で液晶の微小滴を基板のシールパターンの枠内に滴下塗布し、真空下で別の基板を重ね合わせる工程、及び、本発明の液晶表示素子用シール剤のシールパターン部分に紫外線等の光を照射してシール剤を仮硬化させる工程、及び、仮硬化させたシール剤を加熱して本硬化させる工程を有する方法等が挙げられる。
【発明の効果】
【0074】
本発明によれば、接着性及び透湿防止性に優れ、液晶汚染を抑制することができる液晶表示素子用シール剤を提供することができる。また、本発明によれば、該液晶表示素子用シール剤を用いてなる上下導通材料及び液晶表示素子を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0075】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されない。
【0076】
(ε−カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートAの作製)
ジペンタエリスリトール25.4重量部(0.1モル)にε−カプロラクトン68.4重量部(0.6モル)、アクリル酸43.2重量部(0.6モル)を反応させ、重合禁止剤としてヒドロキノン0.01重量部、触媒としてp−トルエンスルホン酸0.1重量部、及び、溶媒として酢酸プロピレングリコールメチルエーテル(PGMEA)200重量部をフラスコに仕込み、窒素フローしながら加熱を行った。
120℃の油浴で6時間反応させた後、室温まで放冷して、本発明にかかる重合性化合物としてε−カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートAを得た。
H−NMR、13C−NMR、及び、FT−IR分析により、得られたε−カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートAは、上記式(1)中における、l、m、n、o、p、及び、qが、1である化合物であることを確認した。
【0077】
(ε−カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートBの作製)
ジペンタエリスリトール25.4重量部(0.1モル)にε−カプロラクトン137重量部(1.2モル)、アクリル酸43.2重量部(0.6モル)を反応させ、重合禁止剤としてヒドロキノン0.01重量部、触媒としてp−トルエンスルホン酸0.1重量部、及び、溶媒として酢酸プロピレングリコールメチルエーテル(PGMEA)200重量部をフラスコに仕込み、窒素フローしながら加熱を行った。
120℃の油浴で6時間反応させた後、室温まで放冷して、本発明にかかる重合性化合物としてε−カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートBを得た。
H−NMR、13C−NMR、及び、FT−IR分析により、得られたε−カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートBは、上記式(1)中における、l、m、n、o、p、及び、qが、2である化合物であることを確認した。
【0078】
(カルボン酸付加ε−カプロラクトン変性ペンタエリスリトールトリアクリレートの作製)
ε−カプロラクトン変性ペンタエリスリトールトリアクリレート(ペンタエリスリトール1モルにε−カプロラクトン8モルを反応させ、更に、アクリル酸3モルをエステル化反応させた化合物)20重量部(16.8mmol)、酸無水物として無水コハク酸1.98重量部(16.8mmol)、重合禁止剤としてヒドロキノン0.01重量部、及び、溶媒として酢酸プロピレングリコールメチルエーテル(PGMEA)20重量部をフラスコに仕込み、窒素フローしながら加熱を行った。
次に、無水コハク酸が完全に溶けたところで、触媒としてトリエチルアミン0.02重量部を添加した後、窒素雰囲気下にて、120℃の油浴で6時間反応させた後、室温まで放冷して、本発明にかかる重合性化合物としてカルボン酸付加ε−カプロラクトン変性ペンタエリスリトールトリアクリレートを得た。
【0079】
実施例1、参考例1〜9、及び、比較例1〜5)
表1、2に記載された配合比に従い、各材料を遊星式撹拌機(シンキー社製、「あわとり練太郎」)を用いて混合した後、更に3本ロールを用いて混合することにより実施例1、参考例1〜9、及び、比較例1〜5の液晶表示素子用シール剤を調製した。
【0080】
<評価>
実施例、参考例及び比較例で得られた液晶表示素子用シール剤について以下の評価を行った。結果を表1、2に示した。
【0081】
(保存安定性)
実施例、参考例及び比較例で得られた各液晶表示素子用シール剤について、製造直後の初期粘度と、25℃で1週間保管したときの粘度とを測定し、(25℃、1週間保管後の粘度)/(初期粘度)を粘度変化率とし、粘度変化率が1.1未満であったものを「○」、1.1以上2.0未満であったものを「△」、2.0以上であったものを「×」として保存安定性を評価した。
なお、シール剤の粘度は、E型粘度計(BROOK FIELD社製、「DV−III」)を用い、25℃において回転速度1.0rpmの条件で測定した。
【0082】
(接着性)
実施例、参考例及び比較例で得られた各液晶表示素子用シール剤100重量部に対して平均粒子径5μmのスペーサー粒子(積水化学工業社製、「ミクロパールSP−2050」)1重量部を遊星式撹拌装置によって均一に分散させ、極微量をコーニングガラス1737(20mm×50mm×厚さ0.7mm)の中央部に取り、同型のガラスをその上に重ね合わせて液晶表示素子用シール剤を押し広げ、メタルハライドランプを用いて100mW/cmの紫外線を30秒照射した後、120℃で1時間加熱してシール剤を硬化させ、接着試験片を得た。
得られた接着試験片について、テンションゲージを用いて接着強度を測定した。接着強度が330N/cm以上であった場合を「◎」、接着強度が300N/cm以上330N/cm未満であった場合を「○」、接着強度が270N/cm以上300N/cm未満であった場合を「△」、接着強度が270N/cm未満であった場合を「×」として接着性を評価した。
【0083】
(透湿防止性)
実施例、参考例及び比較例で得られた各液晶表示素子用シール剤を、平滑な離型フィルム状にコーターで厚さ200〜300μmに塗行した後、メタルハライドランプを用いて100mW/cmの紫外線を30秒照射した後、120℃で1時間加熱することによって透湿度測定用硬化フィルムを得た。JIS Z 0208の防湿包装材料の透湿度試験方法(カップ法)に準じた方法で透湿度試験用カップを作製し、得られた透湿度測定用硬化フィルムを取り付け、温度80℃湿度90%RHの恒温恒湿オーブンに投入して透湿度を測定した。得られた透湿度の値が50g/m・24hr未満であった場合を「○」、50g/m・24hr以上70g/m・24hr未満であった場合を「△」、70g/m・24hr以上であった場合を「×」として透湿防止性を評価した。
【0084】
(液晶表示素子の表示性能(低液晶汚染性))
実施例、参考例及び比較例で得られた各液晶表示素子用シール剤100重量部に対して平均粒子径5μmのスペーサー粒子(積水化学工業社製、「ミクロパールSP−2050」)1重量部を遊星式撹拌装置によって均一に分散させ、得られたシール剤をディスペンス用のシリンジ(武蔵エンジニアリング社製、「PSY−10E」)に充填し、脱泡処理を行ってから、ディスペンサー(武蔵エンジニアリング社製、「SHOTMASTER300」)にて、2枚のITO薄膜付きの透明電極基板の一方にシール剤を枠状に塗布した。続いて、TN液晶(チッソ社製、「JC−5001LA」)の微小滴を液晶滴下装置にてシール剤の枠内に滴下塗布し、他方の透明電極基板を、真空貼り合わせ装置にて5Paの真空下にて貼り合わせ、セルを得た。得られたセルに、メタルハライドランプを用いて100mW/cmの紫外線を30秒照射した後、120℃で1時間加熱してシール剤を硬化させ、液晶表示素子を得た。
得られた液晶表示素子について、シール部周辺の液晶(特にコーナー部)に生じる表示むらを目視にて観察し、表示むらが確認されなかった場合を「○」、わずかな表示むらが確認された場合「△」、酷い表示むらが確認された場合を「×」として液晶表示素子の表示性能(低液晶汚染性)を評価した。
【0085】
【表1】
【0086】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明によれば、接着性及び透湿防止性に優れ、液晶汚染を抑制することができる液晶表示素子用シール剤を提供することができる。また、本発明によれば、該液晶表示素子用シール剤を用いてなる上下導通材料及び液晶表示素子を提供することができる。
【要約】
本発明は、接着性及び透湿防止性に優れ、液晶汚染を抑制することができる液晶表示素子用シール剤を提供することを目的とする。また、本発明は、該液晶表示素子用シール剤を用いてなる上下導通材料及び液晶表示素子を提供することを目的とする。
本発明は、硬化性樹脂と、重合開始剤及び/又は熱硬化剤とを含有する液晶表示素子用シール剤であって、前記硬化性樹脂は、1分子中に3個以上の重合性官能基と1個以上のε−カプロラクトンの開環構造とを有し、環状構造を有さない化合物を含有する液晶表示素子用シール剤である。