特許第6097508号(P6097508)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6097508
(24)【登録日】2017年2月24日
(45)【発行日】2017年3月15日
(54)【発明の名称】回転式屋根
(51)【国際特許分類】
   E04B 7/16 20060101AFI20170306BHJP
   E04B 1/32 20060101ALI20170306BHJP
【FI】
   E04B7/16 A
   E04B1/32 102J
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-203053(P2012-203053)
(22)【出願日】2012年9月14日
(65)【公開番号】特開2014-58780(P2014-58780A)
(43)【公開日】2014年4月3日
【審査請求日】2015年6月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】藤井 英二
(72)【発明者】
【氏名】車 創太
(72)【発明者】
【氏名】中井 政義
(72)【発明者】
【氏名】油川 真広
(72)【発明者】
【氏名】三木 重人
(72)【発明者】
【氏名】伊谷 峰
【審査官】 星野 聡志
(56)【参考文献】
【文献】 特開平01−163369(JP,A)
【文献】 特開平03−084139(JP,A)
【文献】 特開平02−308034(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 7/16
E04B 1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドーム型屋根を構成する回転可能な屋根部と、
前記屋根部の下端部外周を構成し、テンションリングとなる閉塞した円環状のリング部と、
前記リング部の内側に配置されるとともに、前記屋根部の回転中心に対して非対称に該屋根部に設けられた採光部と、
を有する回転式屋根。
【請求項2】
前記採光部は、前記屋根部の回転中心を含む大きさである請求項1に記載の回転式屋根。
【請求項3】
前記屋根部は、前記リング部に作用する鉛直荷重を受ける駆動部の走行によって回転する請求項1又は2に記載の回転式屋根。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋根内側への採光が可能な回転式屋根に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、競技場や音楽堂等の施設を開閉式屋根によって覆った建物が建設されている。これらの建物では、開閉式屋根を開放することによって、開閉式屋根が閉じられているときに遮光されていた所定の領域(例えば、競技場において天然芝が敷設されている領域)へ採光することができる。例えば、特許文献1には、固定屋根に設けられたヒンジに頂部が支持された4枚の移動屋根を、このヒンジを中心にして回動することにより開閉する開閉式屋根が開示されている。しかし、このような開閉式屋根は、屋根構造が複雑になってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4−323446号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は係る事実を考慮し、複雑な屋根構造を用いることなく、屋根で遮光された領域へ採光することができる回転式屋根を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1態様の発明は、回転可能な屋根部と、前記屋根部の回転中心に対して非対称に該屋根部に設けられた採光部と、を有する回転式屋根である。
【0006】
第1態様の発明では、屋根部を回転させることによって採光部を移動し、採光部から光が照射される領域の位置を変更することができる。すなわち、複雑な屋根構造を用いることなく、屋根で遮光された領域へ採光することができる。
【0007】
第2態様の発明は、第1態様の回転式屋根において、前記採光部は、前記屋根部の回転中心を含む大きさである。
【0008】
第2態様の発明では、大きな面積の採光部を屋根部に設けることができる。
【0009】
第3態様の発明は、第1又は第2態様の回転式屋根において、前記屋根部は、ドーム型屋根であり、該屋根部の下端部外周を構成するリング部に作用する鉛直荷重を受ける駆動部の走行によって回転する。
【0010】
第3態様の発明では、ドーム型屋根(円形屋根)である屋根部の下端部外周を構成するリング部がテンションリングとなって、屋根部の下端部に発生するスラスト力(屋根部の下端部が外側へ広がろうとする力)を処理することができる。すなわち、駆動部にスラスト力や曲げモーメントが作用しないので、駆動部は屋根部の鉛直荷重を主に支持すればよい。よって、屋根部を回転する装置構成が簡易になる。
【発明の効果】
【0011】
本発明は上記構成としたので、複雑な屋根構造を用いることなく、屋根で遮光された領域へ採光することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態に係る建物を示す斜視図である。
図2】本発明の実施形態に係る回転式屋根の駆動機構を示す拡大図である。
図3】本発明の実施形態に係る施設を示す平面図である。
図4】本発明の実施形態に係る回転式屋根を示す平面図である。
図5】本発明の実施形態に係る回転式屋根の作用を示す平面図である。
図6】本発明の実施形態に係る回転式屋根の作用を示す平面図である。
図7】本発明の実施形態に係る建物の変形例を示す斜視図である。
図8】本発明の実施形態に係る回転式屋根の変形例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。まず、本発明の実施形態に係る回転式屋根を備えた建物について説明する。
【0014】
図1の斜視図に示すように、建物10は、施設12と回転式屋根14とを有している。回転式屋根14は、施設12全体を覆う屋根部16を有している。屋根部16は、大きな曲率半径を有する球面状に形成された平面視にて円形のドーム型屋根であり、施設12を囲むようにして基盤18の上に立設された環状の外周壁20に、回転可能に支持されている。
【0015】
外周壁20の上端部を拡大して描いた図2に示すように、屋根部16の外縁を構成する裾部22には、駆動部としての移動台車24が複数設けられている。裾部22は、平面視にて閉塞した円環状のリング部を構成している。
【0016】
また、移動台車24に設けられモータ(不図示)により回転する車輪26が、外周壁20の上端面28に敷設されたレール30の上に載置されている。レール30は、外周壁20の上端面28の上に、平面視にて円環状に敷設されている。そして、モータにより車輪26を回転させてレール30の上を転動させることにより、レール30に沿って移動台車24が走行する。
【0017】
このような構成により、屋根部16は、移動台車24及びレール30を介して外周壁20の上端面28に支持されており、レール30に沿って移動台車24を走行させることにより水平回転する。すなわち、屋根部16は、この屋根部16の下端部外周を構成するリング部(裾部22)に作用する鉛直荷重を受ける移動台車24の走行によって水平回転する。
【0018】
施設12は、サッカー競技場であり、図3の平面図に示すように、施設12には、サッカーコート32と、多数の観覧席が備えられたスタンド34、36、38、40とが備えられている。サッカーコート32のエリアA1と、このサッカーコート32の周囲のエリアA2とによって構成される競技エリアAの全域には、天然芝が敷設されている。
【0019】
スタンド34は、競技エリアAの全周を取り囲むようにして配置されており、スタンド36は、スタンド34の全周を取り囲むようにして配置されている。また、スタンド34の内側には、間にサッカーコート32を配置するようにして移動式のスタンド38、40が対向して配置されている。
【0020】
さらに、スタンド38の後方に位置するスタンド36の一部が、メインスタンド36Aとなっており、スタンド40の後方に位置するスタンド36の一部が、バックスタンド36Bとなっている。
【0021】
図4の平面図に示すように、屋根部16には、屋根部16の回転中心Mに対して非対称に、採光部としての開口部42が楕円状に形成されている。開口部42は、回転中心Mを含む大きさになっており、この開口部42を通じて、屋根部16の外側から内側(施設12側)へ光が採り込まれる。なお、図4では、説明の都合上、回転中心Mを黒点で描いているが、回転中心Mに支柱等の回転支持部材が存在しているものではない。
【0022】
次に、本発明の実施形態に係る回転式屋根を備えた建物の作用と効果について説明する。
【0023】
本実施形態の建物10では、図1に示すように、屋根部16を回転させることによって開口部42を移動し、開口部42から光が照射される位置を変更して、屋根部16の外側から施設12の必要とする領域へ光を照射させ採光することができる。すなわち、複雑な屋根構造を用いることなく、屋根で遮光された領域へ採光することができる。
【0024】
例えば、図5の平面図には、サッカーコート32、スタンド40、及びバックスタンド36Bが開口部42を介して建物10の外部へ開放される配置となるように、屋根部16を回転させてセットした状態が示されている。
【0025】
サッカーコート32で試合が開催されているときにおいて、屋根部16の配置をこのようにすれば、日中であればサッカーコート32を日光によって明るく照らすことができ、また、建物10の外部の風を開口部42からサッカーコート32へ送り込むことができる。さらに、屋根部16(開口部42が形成されていない部分)により覆われているメインスタンド36Aやスタンド34、36の一部に対しては、この屋根部16が雨除けや日除けになる。
【0026】
また、例えば、図6の平面図には、開口部42を南方へ向けた配置となるように、屋根部16を回転させてセットした状態が示されている。図6に描かれている「N」の文字は、北の方位を示している。
【0027】
サッカーコート32で試合が開催されていないときにおいて、屋根部16の配置をこのようにすれば、エリアAに敷設されている天然芝に日光を照射させるとともに、建物10の外部の風を開口部42からエリアAへ送り込むことができる。これにより、エリアAに敷設されている天然芝の育成に必要な日射や通風を確保することができる。なお、時間とともに屋根部16を回転させて、開口部42が常に太陽に向かうようにしてもよい。
【0028】
さらに、本実施形態の建物10では、図4に示すように、採光部としての開口部42が、屋根部16の回転中心Mを含む大きさであるので、大きな面積の採光部を屋根部16に設けることができる。
【0029】
また、本実施形態の建物10では、ドーム型屋根(円形屋根)である屋根部16の下端部外周を構成するリング部(裾部22)がテンションリングとなって、屋根部16の下端部に発生するスラスト力(屋根部16の下端部が外側へ広がろうとする力)を処理することができる。すなわち、駆動部としての移動台車24にスラスト力や曲げモーメントが作用しないので、移動台車24は屋根部16の鉛直荷重を主に支持すればよい。さらに、屋根部16の移動動作は回転動作なので、小さな駆動力で屋根部16を移動させることができる。よって、屋根部16を移動させるための装置構成を簡易にすることができる。
【0030】
以上、本発明の実施形態について説明した。
【0031】
なお、本実施形態では、採光部を開口部42とした例を示したが、屋根部16の外側から内側(施設12側)へ採光できるものであればよい。例えば、本実施形態で示した開口部42を、光を透過する透明又は半透明の部材(例えば、ガラス部材)で塞いで、この塞いだ部分を採光部としてもよい。図7の斜視図には、開口部42を塞ぐ透明のガラス部材44によって採光部が構成されている例が示されている。
【0032】
また、本実施形態では、屋根部16を平面視にて円形のドーム型屋根とした例を示したが、採光部を有する回転可能な屋根であれば、どのような形状であってもよい。例えば、平面視にて多角形状の屋根であってもよいし、水平で平坦な屋根であってもよい。
【0033】
さらに、本実施形態では、屋根部16を水平回転させた(屋根部16の回転軸が鉛直になっている)例を示したが、傾斜した状態で屋根部16が回転する(屋根部16の回転軸が斜めに傾いている)ようにしてもよい。
【0034】
また、本実施形態では、採光部としての開口部42を楕円状に形成した例を示したが、採光部の形状は、屋根部16の回転中心Mに対して非対称の形状であればよい。ここで、回転中心Mに対して非対称の形状とは、回転中心Mに対して屋根部16を回転させたといきに、どの回転角においても採光部が同じ形状にならないことを意味する。
【0035】
さらに、本実施形態では、開口部42が屋根部16の回転中心Mを含む大きさになっている例を示したが、図8の平面図に示すように、開口部42を屋根部16の回転中心Mから外れるようにしてもよい。
【0036】
また、屋根部16の屋根仕上げ材として太陽電池パネルを用いれば、屋根部16の回転に必要な電力の一部又は全部をこの太陽電池パネルから供給することができる。
【0037】
さらに、本実施形態では、施設12をサッカー競技場とした例を示したが、施設は、野球、サッカー、陸上競技場等のスポーツ施設、音楽堂等の文化施設、ショッピングセンター、展示場等の商業施設などであってもよい。本実施形態の回転式屋根14をこれらの施設に備えることにより、屋根部16を回転させることによって採光部(開口部42)を移動し、屋根部16自体を開閉させずに、屋根部16に覆われる施設の用途(サッカー、野球、陸上競技等)、目的(天然芝の育成、雨除け、日除け等)、状況(雨天時の風向き等)、時間帯などに応じて、採光部から光が照射される領域の位置(光が照射される施設の部分)を変更することができる。
【0038】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0039】
14 回転式屋根
16 屋根部
24 移動台車(駆動部)
42 開口部(採光部)
44 ガラス部材(採光部)
M 回転中心
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8