(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
両端部のうち少なくとも一方の端部に環状鍔部を有する略円筒状の芯体と、芯体における環状鍔部を除いた部分の表面に被せられる表層体とを備えてなり、環状鍔部および表層体の互いに向かい合う面全体のうち少なくとも周方向長さの一部によって、糸条を把持する把持溝の両側面が構成され、把持溝の両側面のうちいずれか一方に、把持溝に挿入される糸条の長さの一部を乗り上げさせるための側方凸部が形成され、同他方に側方凸部に対応する側方凹部が形成されていることを特徴とする、糸条巻き取り用ボビン。
側方凸部が、環状鍔部の軸方向内側面によって構成される把持溝の側面に、平面より見てドーム状に形成されていることを特徴とする、請求項1記載の糸条巻き取り用ボビン。
側方凸部が、環状鍔部の軸方向内側面によって構成される把持溝の側面に、平面より見て三角形状に形成されていることを特徴とする、請求項1記載の糸条巻き取り用ボビン。
側方凸部が、環状鍔部の軸方向内側面によって構成される把持溝の側面に、平面より見て方形状に形成されていることを特徴とする、請求項1記載の糸条巻き取り用ボビン。
両端部のうち少なくとも一方の端部に環状鍔部を有する略円筒状の芯体と、芯体における環状鍔部を除いた部分の表面に被せられる表層体とを備えてなり、環状鍔部および表層体の互いに向かい合う面のうち少なくとも周方向長さの一部によって、糸条を把持する把持溝の両側面が構成され、環状鍔部に、把持溝に挿入される糸条の長さの一部を露出させるための切欠部が形成されており、切欠部は、環状鍔部の軸方向全幅にわたる長さを有しかつ把持溝の深さと同じ深さを有する横断面凹溝形のものであることを特徴とする、糸条巻き取り用ボビン。
【背景技術】
【0002】
例えばナイロン、ポリエステル等の合成繊維の紡糸工程において、紡出された糸条の巻き取りには、紙管よりなるボビンが一般に使用されている。
ボビン用の紙管には、通常、その表面の一端部近傍に、糸条を捕捉するための捕捉溝と、捕捉された糸条を把持するための把持溝とが、周方向に連続して形成されている(下記の特許文献1参照)。
ここで、例えば合成繊維を高次加工する場合、複数の原糸ボビン間で巻始めの糸端部と巻終りの糸端部とを結び合わせて連続処理することが行われるが、それには、糸条の巻始め段階で、ボビンの端部にいわゆるテール糸(トランスファー・テール)を形成しておく必要がある。
ボビンへの糸条の巻き取り工程の一例を説明すると、まず、所定方向に引き出された糸条を、これと反対方向に回転している空のボビンに接近させ、ボビンに設けられた捕捉溝および把持溝によって、糸条を捕捉し把持する。すると、把持された部分よりも下流側の糸条は、ボビンと同調する方向に反転させられるので、その際の衝撃力等により、把持された部分よりも上流側において糸条が切断される。次いで、糸条は、ボビン表面における捕捉溝および把持溝からこれより10mm〜10数mm程度内側までの領域において螺旋状に巻かれ、同部分の糸条がテール糸となされる。その後、糸条は、ボビン表面の更に内側の領域において、トラバース装置等により巻き取られていく。巻き取り完了後、ボビンの把持溝に把持されていた糸条の端部が、把持溝から取り出されて所定長さに切断された後、ボビン表面の端部にシール等で止められる(下記の特許文献2参照)。
しかしながら、紙管製の糸条巻き取り用ボビンの場合、表面が損傷し易く、リユース(再使用)することができないという問題があった。
一方、紙管製以外のボビンとして、FRP等の剛性材料よりなる筒状芯材の表面にゴム等の弾性材料が積層されるとともに、芯材の一端部に環状部材が取り付けられてなり、弾性材料の端面と環状部材の軸方向内側面との間の部分によって捕捉溝および把持溝が構成されているものがある(下記の特許文献3参照)。
このボビンの場合、紙管製のボビンと比べてリユース性は向上するが、捕捉溝および把持溝がボビンの全周にわたって連続するものとなるため、テール糸を形成するためにボビンの把持溝に把持されている糸条の端部を把持溝から取り出す際、糸条の端部が把持溝に深く入り込んで取り出すことができないおそれがあった。
【発明の概要】
【0004】
この発明の目的は、リユース性に優れている上、把持溝から糸条の端部を取り出すのが容易な糸条巻き取り用ボビンを提供することにある。
【0005】
この発明による第1の糸条巻き取り用ボビンは、両端部のうち少なくとも一方の端部に環状鍔部を有する略円筒状の芯体と、芯体における環状鍔部を除いた部分の表面に被せられる表層体とを備えてなり、環状鍔部および表層体の互いに向かい合う面全体のうち少なくとも周方向長さの一部によって、糸条を把持する把持溝の両側面が構成され、把持溝の両側面のうちいずれか一方に、把持溝に挿入される糸条の長さの一部を乗り上げさせるための側方凸部が形成され、同他方に側方凸部に対応する側方凹部が形成されているものである。
この発明の第1の糸条巻き取り用ボビンによれば、構成要素として芯体と表層体とを備えているので、例えば表面に傷がついたとしても、表層体のみを交換すればよいので、リユースが可能である。また、上記ボビンによれば、把持溝に挿入される糸条の長さの一部が側方凸部に乗り上げられるため、同部分を引っ張れば、把持溝から糸条の端部を容易に取り出すことができる。
【0006】
この発明の第1の糸条巻き取り用ボビンにおいて、側方凸部が、環状鍔部の軸方向内側面によって構成される把持溝の側面に、平面より見てドーム状に形成されている場合がある。
側方凸部は、環状鍔部の軸方向内側面によって構成される把持溝の側面に、三角形状に形成されている場合もある。この場合、より好ましくは、側方凸部が、平面より見てボビン回転方向前側の短辺とボビン回転方向後側の長辺とを有する三角形状となされる。
また、側方凸部は、環状鍔部の軸方向内側面によって構成される把持溝の側面に、平面より見て方形状に形成されている場合もある。
側方凸部を上記のような態様とすれば、ボビン表面における把持溝の内側領域に、テール糸を構成する糸条を螺旋状に巻き取る際、側方凸部と側方凹部との間隙に糸条が落ち込むおそれが少なく、巻き取りが良好に行われる。
【0007】
次に、この発明による第2の糸条巻き取り用ボビンは、両端部のうち少なくとも一方の端部に環状鍔部を有する略円筒状の芯体と、芯体における環状鍔部を除いた部分の表面に被せられる表層体とを備えてなり、環状鍔部および表層体の互いに向かい合う面のうち少なくとも周方向長さの一部によって、糸条を把持する把持溝の両側面が構成され、環状鍔部に、把持溝に挿入される糸条の長さの一部を露出させるための切欠部が形成されているものである。
この発明の第2の糸条巻き取り用ボビンによれば、構成要素として芯体と表層体とを備えているので、例えば表面に傷がついたとしても、表層体のみを交換すればよいので、リユースが可能である。また、上記ボビンによれば、把持溝に挿入される糸条の長さの一部が切欠部を通じて露出するため、同部分を引っ張れば、把持溝から糸条の端部を容易に取り出すことができる。
【0008】
また、この発明による第3の糸条巻き取り用ボビンは、両端部のうち少なくとも一方の端部に環状鍔部を有する略円筒状の芯体と、芯体における環状鍔部を除いた部分の表面に被せられる表層体とを備えてなり、環状鍔部および表層体の互いに向かい合う面のうち少なくとも周方向長さの一部によって、糸条を把持する把持溝の両側面が構成され、把持溝の両側面に、把持溝に挿入される糸条の長さの一部を乗り上げさせるための接合部が形成されているものである。接合部を形成するための手段としては、接着、融着等が挙げられる。
この発明の第3の糸条巻き取り用ボビンによれば、構成要素として芯体と表層体とを備えているので、例えば表面に傷がついたとしても、表層体のみを交換すればよいので、リユースが可能である。また、上記ボビンによれば、把持溝に挿入される糸条の長さの一部が接合部に乗り上げられるため、同部分を引っ張れば、把持溝から糸条の端部を容易に取り出すことができる。
【0009】
この発明による第1ないし第3の糸条巻き取り用ボビンにおける好ましい態様として、芯体が硬質樹脂よりなり、表層体が樹脂発泡体よりなる場合がある。
上記の場合、ボビン全体の重量を軽減することができる上、紙管のように水分を吸収することがないので、細やかな重量管理が要求される高価な糸条の巻き取りに好適に使用されうる。また、上記材料の組合せによれば、把持溝に挿入される糸条に対して表層体の弾性力を作用させることができるため、把持溝による糸条の把持力を向上させることができる。
もっとも、芯体および表層体の材料は、上記に限定されるわけではなく、例えば金属、紙等その他の材料であってもよく、また、芯体および表層体を同一材料によって構成することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】この発明の第1の実施形態に係る糸条巻き取り用ボビンの全体斜視図である。
【
図2】
図1のII−II線に沿う糸条巻き取り用ボビンの断面図である。
【
図3】
図1のIII−III線に沿う糸条巻き取り用ボビンの部分拡大断面図である。
【
図4】
図1の糸条巻き取り用ボビンの部分拡大平面図である。
【
図5】
図4のV−V線に沿う糸条巻き取り用ボビンの部分拡大断面図である。
【
図6】この発明の第2の実施形態に係る糸条巻き取り用ボビンの部分拡大平面図である。
【
図7】この発明の第3の実施形態に係る糸条巻き取り用ボビンの部分拡大平面図である。
【
図8】この発明の第4の実施形態に係る糸条巻き取り用ボビンの部分拡大平面図である。
【
図9】
図8のIX−IX線に沿う糸条巻き取り用ボビンの部分拡大断面図である。
【
図10】この発明の第5の実施形態に係る糸条巻き取り用ボビンの部分拡大平面図である。
【
図11】
図10のXI−XI線に沿う糸条巻き取り用ボビンの部分拡大断面図である。
【
図12】この発明の第6の実施形態に係る糸条巻き取り用ボビンの部分拡大平面図である。
【
図13】
図12のXIII−XIII線に沿う糸条巻き取り用ボビンの部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1〜
図5は、この発明の第1の実施形態を示したものである。
この実施形態の糸条巻き取り用ボビン(1)は、一方の端部に環状鍔部(21)を有する略円筒状の芯体(2)と、芯体(2)における環状鍔部(21)を除いた円筒状部分(20)の表面に被せられる表層体(3)とよりなる。
芯体(2)は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ABS等の硬質樹脂よりなる。芯体(2)のサイズは特に限定されないが、例えば、長さ=200mm、内径=110mm、円筒部分(22)の厚み=2mm、環状鍔部(21)の高さ=3mm、環状鍔部(21)の幅=約8mmとなされる。
表層体(3)は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリウレタン、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、PET、ポリ塩化ビニル等の樹脂発泡体よりなる。この表層体(3)は、樹脂発泡体シートを丸めて円筒状に接合したものによって構成される他、押出成形や射出成形によって円筒状に形成されたもので構成することもできる。表層体(3)の厚みは、環状鍔部(21)の高さとほぼ等しくなされ、また、表層体(3)の長さは、芯体の円筒部分(22)の長さとほぼ等しくなされる。
表層体(3)は、素材自体の弾性力を利用して芯体の円筒部分(22)の表面にきつく嵌められることにより、芯体(2)と一体化されており、両者(2)(3)は接着されていない。これは、表層体(3)の交換を容易にして、ボビン(1)のリユース性を高めるためである。
【0012】
ボビン(1)表面の一端部近傍、具体的には、芯体(2)の環状鍔部(21)と表層体(3)との間の部分に、糸条を捕捉するための捕捉溝(41)と、捕捉された糸条を把持するための把持溝(42)とが、全周にわたって連続するように形成されている。
環状鍔部(21)の軸方向内側面には、その周方向長さの一部に傾斜面(23)が形成されており、傾斜面(23)と、これに対応する表層体(3)の端面部分とによって、横断面略V形をした捕捉溝(41)の両側面が形成されている(
図3参照)。捕捉溝は、上記構成の他、表層体(3)の端面に傾斜面を形成する場合や、環状鍔部(21)の軸方向内側面および表層体(3)の端面の双方に傾斜面を形成する場合もありうる。なお、捕捉溝は、ボビン(1)表面に必須のものではなく、例えば、巻き取られる糸条のテンションが高い場合等には省略できることもある。
捕捉溝(41)の側面を構成する表層体(3)の端面部分には、ボビン回転方向(D)後端寄りの位置に、略V字形の切り込みが入れられることにより、糸条を引っ掛けるための引っ掛け部(32)が形成されている(
図1参照)。この引っ掛け部(32)は、捕捉溝(41)と同様に、糸条を捕捉するためのものであって、捕捉溝(41)を補助する役割を担っている。この引っ掛け部(32)も、ボビン(1)に必須のものではなく、場合によっては省略可能である。
把持溝(42)の両側面は、環状鍔部(21)の軸方向内側面およびこれと向かい合う表層体(3)の端面のうち捕捉溝(41)を構成している部分を除いた残りの周方向長さ部分によって構成されている。
図示は省略したが、把持溝(42)の一方の側面を構成している環状鍔部(21)の軸方向内側面部分は、後述する側方凸部を除いて、周方向に沿って緩やかな波形をなすように形成されている。このような波形の形状を有する環状鍔部(21)の軸方向内側面部分に、把持溝(42)の他方の側面を構成している表層体(3)の端面部分が圧接されることにより、糸条(L)が確実に把持されるようになっている。
【0013】
図4および
図5に詳しく示すように、把持溝(42)の一方の側面を構成している環状鍔部(21)の軸方向内側面部分に、把持溝(42)に挿入される糸条(L)の長さの一部を乗り上げさせるための側方凸部(22A)が形成され、把持溝(42)の他方の側面を構成している表層体(3)の端面部分に、側方凸部(22A)と対応する側方凹部(30A)が形成されている。
側方凸部(22A)は、環状鍔部(21)の軸方向内側面に、平面より見てドーム状に形成されている(
図4参照)。一方、側方凹部(30)は、表層体(3)の端面に、側方凸部(22A)と対応するように、平面より見て凹弧状に形成されている。このような形状の側方凸部(22A)および側方凹部(30A)によれば、ボビン(1)表面における把持溝(42)の内側に隣接する領域にテール糸として螺旋状に巻き取られる糸条(L)が、側方凸部(22A)と側方凹部(30A)との隙間に落ち込むおそれがない。側方凸部(22A)のサイズは、上記作用が奏される範囲内であれば、特に限定されないが、例えば、周方向長さ=40〜50mm程度、軸方向突出幅=5mm程度となされる。
側方凸部(22A)および側方凹部(30A)は、この実施形態では、捕捉溝(41)のボビン回転方向(D)前端に近い方の把持溝(42)の端部寄り位置に形成されているが、この位置に限定されるものではない。但し、側方凸部(22A)および側方凹部(30A)を捕捉溝(41)のボビン回転方向(D)後端に近い方の把持溝(42)の端部寄り位置に形成すると、糸条(L)が把持溝(42)に挿入される際の邪魔になるおそれがあるので、ここには形成しない方がよい。また、この実施形態では、側方凸部(22A)および側方凹部(30A)が1組だけ形成されているが、2組以上形成してもよい。但し、側方凸部(22A)および側方凹部(30A)が多すぎると、把持溝(42)による糸条(L)の把持に支障が生じるおそれがあるため、ボビン(1)のサイズにもよるが、2〜3組程度までとするのが適当と考えられる。
【0014】
上記の構成よりなる糸条巻き取り用ボビン(1)は、例えば次のようにして糸条の巻き取りに使用される。
即ち、まず、所定方向に引き出されている糸条(L)を、これと反対方向(D)に回転している空のボビン(1)に接近させ、ボビン(1)に設けられた捕捉溝(41)および引っ掛け部(32)によって捕捉する。捕捉溝(41)等に捕捉された糸条(L)は、把持溝(42)に挿入され、把持溝(42)の両側面によって把持される。
すると、把持された部分よりも下流側の糸条(L)が、ボビン(1)と同調する方向に反転させられ、その際の衝撃力等により、把持された部分の上流側において切断される。
次いで、糸条(L)は、ボビン(1)表面における捕捉溝(41)および把持溝(42)に隣接する内側の領域において、テール糸として螺旋状に巻かれる。
その後、糸条(L)は、ボビン(1)表面の更に内側の正規巻き取り領域において、トラバース装置(図示略)等により巻き取られていく。
巻き取り完了後、ボビン(1)の把持溝(42)に把持されている糸条(L)の端部が、把持溝(42)から取り出され、所定長さに切断された後、ボビン(1)の環状鍔部(21)表面にシール(図示略)等で止められる。この際、把持溝(42)に把持されている糸条(L)の長さの一部は、側方凸部(22A)に乗り上げられているので、同部分を引っ張ることにより、把持溝(42)から糸条(L)の端部を容易に取り出すことができる。
【0015】
以上の通り、この実施形態の糸条巻き取り用ボビン(1)によれば、把持溝(42)から糸条(L)の端部を容易に取り出すことができるので、作業性が向上する。また、上記ボビン(1)は、非接着状に組み合わせられる芯体(2)と表層体(3)とで構成されているので、例えば表面に傷が付いたとしても、表層体(3)のみを交換すればよく、リユース性に優れている。しかも、上記ボビン(1)では、芯体(2)が硬質樹脂から形成され、表層体(3)が樹脂発泡体から形成されており、ボビン(1)全体の重量を軽減することができる上、紙管のように水分を吸収することがないので、細やかな重量管理が要求される高価な糸条の巻き取りに好適に使用され、さらには、把持溝(42)による糸条(L)の把持力を向上させることもできる。
【0016】
図6は、この発明の第2の実施形態を示したものである。
この実施形態の糸条巻き取り用ボビン(1)は、以下の点を除いて、
図1〜
図5に示す第1の実施形態の糸条巻き取り用ボビン(1)と実質的に同一である。
即ち、
図6に示すボビン(1)では、側方凸部(22B)が、環状鍔部(21)の軸方向内側面によって構成される把持溝(42)の一方の側面に、平面より見て三角形状、より具体的には、ボビン回転方向(D)前側の短辺とボビン回転方向(D)後側の長辺とを有する三角形状に形成されている。一方、側方凹部(30B)も、表層体(3)の端面によって構成される把持溝(42)の他方の側面に、側方凸部(22B)と対応するように、平面より見て略V字状に形成されている。
従って、この実施形態のボビン(1)においても、第1の実施形態の場合と同様に、ボビン(1)表面における把持溝(42)の内側に隣接する領域にテール糸として螺旋状に巻き取られる糸条(L)が、側方凸部(22B)と側方凹部(30B)との隙間に落ち込むおそれがない。
なお、
図6では、側方凸部(22B)の短辺が把持溝(42)と直交する方向にのびているが、把持溝(42)に対して斜めに交わるようなものとしてもよい。また、側方凸部(22B)は、その寸法にもよるが、略二等辺三角形状とすることもできる。
【0017】
図7は、この発明の第3の実施形態を示したものである。
この実施形態の糸条巻き取り用ボビン(1)は、以下の点を除いて、
図1〜
図5に示す第1の実施形態の糸条巻き取り用ボビン(1)と実質的に同一である。
即ち、
図7に示すボビン(1)では、側方凸部(22C)が、環状鍔部(21)の軸方向内側面によって構成される把持溝(42)の一方の側面に、平面より見て長方形状に形成されている。一方、側方凹部(30C)も、表層体(3)の端面によって構成される把持溝(42)の他方の側面に、側方凸部(22C)と対応するように、平面より見て略コ字状に形成されている。
この実施形態のボビン(1)によれば、第1の実施形態の場合と同様に、ボビン(1)表面における把持溝(42)の内側に隣接する領域にテール糸として螺旋状に巻き取られる糸条(L)が、側方凸部(22C)と側方凹部(30C)との隙間に落ち込むおそれがない。
なお、側方凸部(22C)および側方凹部(30C)のサイズは、特に限定されるものではないが、周方向長さが長くなりすぎると、把持溝(42)と平行な長辺部分どうしの隙間に、糸条(L)が入り込むおそれがあるので、ボビン(1)のサイズにもよるが、周方向長さを40〜50mm程度までとするのが好ましい。
【0018】
図8および
図9は、この発明の第4の実施形態を示したものである。
この実施形態の糸条巻き取り用ボビン(1)は、以下の点を除いて、
図1〜
図5に示す第1の実施形態の糸条巻き取り用ボビン(1)と実質的に同一である。
即ち、この実施形態の糸条巻き取り用ボビン(1)の場合、把持溝(42)の一方の側面を構成している表層体(3)の端面部分に、把持溝(42)に挿入される糸条(L)の長さの一部を乗り上げさせるための側方凸部(31)が形成され、把持溝(42)の他方の側面を構成している環状鍔部(21)の軸方向内側面部分に、側方凸部(31)と対応する側方凹部(220)が形成されている。
側方凸部(31)は、表層体(3)の端面に、平面より見てドーム状に形成されている(
図8参照)。一方、側方凹部(220)は、環状鍔部(21)の軸方向内側面に、側方凸部(31)と対応するように、平面より見て凹弧状に形成されている。もっとも、この実施形態の場合、側方凸部(31)および側方凹部(220)の形状は、上記に限定されず、側方凸部(31)に糸条(L)の長さの一部を乗り上げさせることが可能であれば、どのようなものでも構わない。
【0019】
図10および
図11は、この発明の第5の実施形態を示したものである。
この実施形態の糸条巻き取り用ボビン(1)は、以下の点を除いて、
図1〜
図5に示す第1の実施形態の糸条巻き取り用ボビン(1)と実質的に同一である。
即ち、この実施形態の糸条巻き取り用ボビン(1)にあっては、第1の実施形態の側方凸部(22A)および側方凹部(30A)に代えて、環状鍔部(21)に、把持溝(42)に挿入される糸条(L)の長さの一部を露出させるための切欠部(25)が形成されている。
切欠部(25)は、環状鍔部(21)を軸方向全幅にわたって所定の周方向長さ分だけ切り取ることにより形成されている。切欠部(25)のサイズは、把持溝(42)による糸条(L)の把持を損なわない範囲において、糸条(L)の長さの一部を把持溝(42)露出させてその取り出しを容易にしうるものであれば、特に限定されないが、例えば、40〜50mm程度の周方向長さを有するものとなされる。また、この実施形態では、切欠部(25)が環状鍔部(21)の軸方向全幅にわたるものであるが、把持溝(42)からの糸条(L)の取り出しが可能であれば、環状鍔部(21)の軸方向外側面側を残すようなものであってもよい。
切欠部(25)の位置は、第1の実施形態の側方凸部(22A)および側方凹部(30A)と同様に、通常、捕捉溝(41)のボビン回転方向(D)前端に近い方の把持溝(42)の端部寄り位置に形成されているが、この位置に限定されるものではない。また、切欠部(25)は、1つに限らず、周方向に間隔をおいて複数形成されてもよい。もっとも、切欠部(25)が多すぎると、把持溝(42)による糸条(L)の把持に支障が生じるおそれがあるため、ボビン(1)のサイズにもよるが、2〜3個程度までとするのが適当と考えられる。
この実施形態の糸条巻き取り用ボビン(1)によれば、把持溝(42)に挿入される糸条(L)の長さの一部が切欠部(25)を通じて露出するため、同部分を引っ張ることにより、把持溝(42)から糸条(l)の端部を容易に取り出すことができる。
【0020】
図12および
図13は、この発明の第6の実施形態を示したものである。
この実施形態の糸条巻き取り用ボビン(1)は、以下の点を除いて、
図1〜
図5に示す第1の実施形態の糸条巻き取り用ボビン(1)と実質的に同一である。
即ち、この実施形態の糸条巻き取り用ボビン(1)にあっては、第1の実施形態の側方凸部(22A)および側方凹部(30A)に代えて、把持溝(42)の両側面に、把持溝(42)に挿入される糸条(l)の長さの一部を乗り上げさせるための接合部(5)が形成されている。
接合部(25)は、把持溝(42)の両側面を構成する環状鍔部(21)の軸方向内側面部分および表層体(3)の端面部分を、所定の周方向長さ位置において、接着剤等による接着、融着、あるいはその他の接合手段を用いて部分的に接合することにより形成される。
接合部(25)のサイズは、上記作用が奏される範囲内であれば、特に限定されないが、例えば、周方向長さが40〜50mm程度となされる。
接合部(25)の位置は、通常、捕捉溝(41)のボビン回転方向(D)前端に近い方の把持溝(42)の端部寄り位置に形成されるが、この位置に限定されるものではない。但し、接合部(25)を捕捉溝(41)のボビン回転方向(D)後端に近い方の把持溝(42)の端部寄り位置に形成すると、糸条(L)が把持溝(42)に挿入される際の邪魔になるおそれがあるので、ここには形成しない方がよい。
また、接合部(25)は、少なくとも1つあれば足りるが、2つ以上形成してもよい。もっとも、接合部(25)が多すぎると、把持溝(42)による糸条(L)の把持に支障が生じるおそれがあるため、ボビン(1)のサイズにもよるが、2〜3個程度までとするのが適当と考えられる。
この実施形態のボビン(1)によれば、把持溝(42)に挿入される糸条(L)の長さの一部が接合部(25)に乗り上げられるため、同部分を引っ張ることにより、把持溝(42)から糸条(L)の端部を容易に取り出すことができる。