(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
正回転と逆回転の回転方向に回転可能であり、外気を取り込んで冷却対象を当該外気により冷却し、回転方向が当該逆回転時に当該冷却対象への風量を当該正回転時よりも低減させる油圧駆動冷却ファンと、
前記油圧駆動冷却ファンの回転方向を前記正回転と前記逆回転とに切り替える回転方向切替バルブと、
前記油圧駆動冷却ファンの回転数を制御する回転数制御バルブと、
前記冷却対象の温度を検出する温度検出器と、
前記温度検出器により検出された温度が下限閾値温度よりも高い場合には、前記油圧駆動冷却ファンの回転方向が前記正回転になるように前記回転方向切替バルブに回転方向指令を出力し、前記温度検出器により検出された温度に応じて前記油圧駆動冷却ファンの回転数を調整するための回転数指令を前記回転数制御バルブに出力する第一制御と、
前記温度検出器により検出された温度が下限閾値温度よりも低い場合には、前記油圧駆動冷却ファンの回転数が最小回転数になるように回転数指令を前記回転数制御バルブに出力した状態で、前記油圧駆動冷却ファンの回転方向が前記逆回転になるように回転方向指令を前記回転方向切替バルブに出力する第二制御と、を行う制御装置と、
を備える油圧駆動冷却ファン制御システム。
前記制御装置は、前記第二制御を行っている間に、各前記温度検出器により検出された複数の温度のうち少なくとも1つの温度が上限閾値温度よりも高くなった場合には、前記第二制御から前記第一制御への切り替えを行う、請求項2に記載の油圧駆動冷却ファン制御システム。
前記油圧駆動冷却ファンの前記制御装置における前記第一制御と前記第二制御とを、前記温度検出器により検出された温度によらず、手動操作で切り替える切り替え手段を備えている、請求項1又は2に記載の油圧駆動冷却ファン制御システム。
前記油圧駆動冷却ファン制御システムは、エンジンと、ラジエータと、前記冷却対象としてのエンジン冷却水と、当該エンジンから当該ラジエータへと当該エンジン冷却水を供給して当該ラジエータにより冷却された当該エンジン冷却水を当該エンジンに戻すよう当該エンジン冷却水を循環させるエンジン冷却水冷却機構と、を備えた産業用車両に適用可能であり、
前記油圧駆動冷却ファンは、前記ラジエータ内を流れる前記エンジン冷却水を冷却するように配置されている、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の油圧駆動冷却ファン制御システム。
前記産業用車両は、前記エンジンの動力によって作動する油圧ポンプと、当該油圧ポンプから吐出された前記冷却対象としての作動油により前記油圧駆動冷却ファンを含む負荷を駆動する油圧アクチュエータと、を含む油圧回路と、前記作動油を冷却する作動油用オイルクーラと、当該油圧回路内を流れる前記作動油を当該作動油用オイルクーラに供給して当該作動油用オイルクーラにより冷却された当該作動油を当該油圧回路に戻すよう当該作動油を循環させる作動油冷却機構と、をさらに備え、
前記油圧駆動冷却ファンは、前記作動油用オイルクーラ内を流れる前記作動油を冷却するように配置されている、請求項5に記載の油圧駆動冷却ファン制御システム。
前記産業用車両は、前記冷却対象としてのトランスミッション油を用いて前記エンジンの動力を伝達するように構成されているトランスミッションと、トランスミッション油用オイルクーラと、当該トランスミッションから当該トランスミッション油用オイルクーラへと当該トランスミッション油を供給して当該トランスミッション油用オイルクーラにより冷却された当該トランスミッション油を当該トランスミッションに戻すよう当該トランスミッション油を循環させるトランスミッション油冷却機構と、をさらに備え、
前記油圧駆動冷却ファンは、前記トランスミッション油用オイルクーラ内を流れる前記トランスミッション油を冷却するように配置されている、請求項6に記載の油圧駆動冷却ファン制御システム。
正回転と逆回転の回転方向に回転可能であり、外気を取り込んで冷却対象を当該外気により冷却し、回転方向が逆回転時に当該冷却対象への風量を当該正回転時よりも低減させる油圧駆動冷却ファンと、当該油圧駆動冷却ファンの回転方向を前記正回転と前記逆回転とに切り替える回転方向切替バルブと、前記油圧駆動冷却ファンの回転数を制御する回転数制御バルブと、前記冷却対象の温度を検出する温度検出器と、を備えた冷却システムにおける当該油圧駆動冷却ファンの制御方法であって、
前記温度検出器により検出された検出温度を取得することと、
前記検出温度が下限閾値温度未満であるか否かを判定することと、
前記検出温度が前記下限閾値温度未満でないことを判定したとき、前記油圧駆動冷却ファンの回転方向が前記正回転になるように前記回転方向切替バルブに回転方向指令を出力し、前記検出温度に応じて前記油圧駆動冷却ファンの回転数を調整するための回転数指令を前記回転数制御バルブに出力することと、
前記検出温度が前記下限閾値温度未満であることを判定したとき、前記油圧駆動冷却ファンの回転数が最小回転数になるように回転数指令を前記回転数制御バルブに出力した状態で、前記油圧駆動冷却ファンの回転方向が前記逆回転になるように回転方向指令を前記回転方向切替バルブに出力することと、
を含む油圧駆動冷却ファンの制御方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、油圧駆動冷却ファンは、ファン用油圧ポンプがエンジンに接続されて常時油圧を吐出しており、その油圧を利用して作動する。このため、油圧駆動冷却ファンは、エンジンが稼働している間、送風回転を停止することなく継続している。したがって、特許文献1のように、エンジン冷却水や作動油等といった冷却対象の温度に応じて冷却ファンの回転数が制御されている場合には、油圧駆動冷却ファンの回転数を最小回転数に設定して油圧駆動冷却ファンの冷却能力を低減させるだけでは、外気の温度によっては冷却対象の過冷却が生じるおそれがあった。
【0006】
本発明は、このような課題を解決するためになされたもので、その目的は、油圧駆動冷却ファンによる冷却対象の過冷却を防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明のある態様に係る油圧駆動冷却ファン制御システムは、正回転と逆回転の回転方向に回転可能であり、外気を取り込んで冷却対象を当該外気により冷却し、回転方向が当該逆回転時に当該冷却対象への風量を当該正回転時よりも低減させる油圧駆動冷却ファンと、前記油圧駆動冷却ファンの回転方向を前記正回転と前記逆回転とに切り替える回転方向切替バルブと、前記油圧駆動冷却ファンの回転数を制御する回転数制御バルブと、前記冷却対象の温度を検出する温度検出器と、前記温度検出器により検出された温度が下限閾値温度よりも高い場合には、前記油圧駆動冷却ファンの回転方向が前記正回転になるように前記回転
方向切替バルブに回転方向指令を出力し、前記温度検出器により検出された温度に応じて前記油圧駆動冷却ファンの回転数を調整するための回転数指令を前記回転数制御バルブに出力する第一制御と、前記温度検出器により検出された温度が下限閾値温度よりも低い場合には、前記油圧駆動冷却ファンの回転数が最小回転数になるように回転数指令を前記回転数制御バルブに出力した状態で、前記油圧駆動冷却ファンの回転方向が前記逆回転になるように回転方向指令を前記回転方向切替バルブに出力する第二制御と、を行う制御装置と、を備えるものである。
【0008】
前記構成によれば、外気の温度低下等により冷却対象の検出温度が下限閾値温度(例えば氷点下)よりも低くなったときには、油圧駆動冷却ファンの回転数を最小回転数に設定することに加えて、油圧駆動冷却ファンを正回転から逆回転に切り替えて正回転時よりも当該冷却対象への風量を低減させる。この結果、油圧駆動冷却ファンの冷却能力のさらなる低減を図り、当該冷却対象の過冷却を防止することができる。
【0009】
前記油圧駆動冷却ファン制御システムにおいて、前記冷却対象として複数の冷却対象を有するとともに、前記温度検出器として各前記冷却対象毎に複数の温度検出器を有し、前記制御装置は、各前記温度検出器により検出された複数の温度のうち少なくとも1つの温度がそれぞれに対応した下限閾値温度よりも低い場合には、前記第二制御を行う、としてもよい。
【0010】
前記構成によれば、油圧駆動冷却ファンにより複数の冷却対象を冷却させるシステムにおいて、外気の温度低下等により、少なくとも1つの冷却対象の温度が下限閾値温度よりも低くなれば、油圧駆動冷却ファンの回転数を最小回転数に設定するとともに正回転から逆回転に切り替える制御を行うことで、複数の冷却対象すべての過冷却を防ぐことができる。
【0011】
前記油圧駆動冷却ファン制御システムにおいて、前記制御装置は、前記第二制御を行っている間に、各前記温度検出器により検出された複数の温度のうち少なくとも1つの温度が上限閾値温度よりも高くなった場合には、前記第二制御から前記第一制御への切り替えを行う、としてもよい。
【0012】
前記構成によれば、油圧駆動冷却ファンの回転数を最小回転数に設定するとともに当該油圧駆動冷却ファンを正回転から逆回転に切り替える制御を行うことで、当該油圧駆動冷却ファンの冷却能力が低減されている状況下で、少なくとも1つの冷却対象の温度が上限閾値温度よりも高くなれば、前述の制御を解除することで、油圧駆動冷却ファンによる冷却対象の冷却を再開することができる。
【0013】
前記油圧駆動冷却ファン制御システムにおいて、前記油圧駆動冷却ファンの前記制御装置における前記第一制御と前記第二制御とを、前記温度検出器により検出された温度によらず、手動操作で切り替える切り替え手段を備えている、としてもよい。
【0014】
前記構成によれば、オペレータが外気の温度や流体のモニター検出温度から判断して、油圧駆動冷却ファンの制御を手動操作に切り替えることができる。
【0015】
前記油圧駆動冷却ファン制御システムは、エンジンと、ラジエータと、前記冷却対象としてのエンジン冷却水と、当該エンジンから当該ラジエータへと当該エンジン冷却水を供給して当該ラジエータにより冷却された当該エンジン冷却水を当該エンジンに戻すよう当該エンジン冷却水を循環させるエンジン冷却水冷却機構と、を備えた産業用車両に適用可能であり、前記油圧駆動冷却ファンは、前記ラジエータ内を流れる前記エンジン冷却水を冷却するように配置されている、としてもよい。
【0016】
前記構成によれば、外気の温度低下等によりエンジン冷却水の検出温度が下限閾値温度(例えば氷点下)よりも低くなったときには、油圧駆動冷却ファンの回転数を最小回転数に設定するとともに油圧駆動冷却ファンを正回転から逆回転に切り替えることで、油圧駆動冷却ファンの冷却能力を最大限に低減させて、エンジン冷却水のさらなる温度低下を防止することができる。この結果、エンジンが過冷却となってエンジンの効率が低下することを防止することができる。
【0017】
前記油圧駆動冷却ファン制御システムにおいて、前記産業用車両は、前記エンジンの動力によって作動する油圧ポンプと、当該油圧ポンプから吐出された前記冷却対象としての作動油により前記油圧駆動冷却ファンを含む負荷を駆動する油圧アクチュエータと、を含む油圧回路と、前記作動油を冷却する作動油用オイルクーラと、当該油圧回路内を流れる前記作動油を当該作動油用オイルクーラに供給して当該作動油用オイルクーラにより冷却された当該作動油を当該油圧回路に戻すよう当該作動油を循環させる作動油冷却機構と、をさらに備え、前記油圧駆動冷却ファンは、前記作動油用オイルクーラ内を流れる前記作動油を冷却するように配置されている、としてもよい。
【0018】
前記構成によれば、エンジン冷却水と同様に、外気の温度低下等により作動油の検出温度が下限閾値温度よりも低くなったときには油圧駆動冷却ファンの冷却能力を最大限に低減させて、作動油用オイルクーラを介した作動油の過冷却を防止することができる。また、作動油の過冷却を防止することにより、作動油の粘度の上昇を防ぎ、ひいては油圧回路が作動した時の負荷抵抗の上昇を防止することができる。
【0019】
前記油圧駆動冷却ファン制御システムにおいて、前記産業用車両は、前記冷却対象としてのトランスミッション油を用いて前記エンジンの動力を伝達するように構成されているトランスミッションと、トランスミッション
油用オイルクーラと、当該トランスミッションから当該トランスミッション用オイルクーラへと当該トランスミッション油を供給して当該トランスミッション油
用オイルクーラにより冷却された当該トランスミッション油を当該トランスミッションに戻すよう当該トランスミッション油を循環させるトランスミッション油冷却機構と、をさらに備え、前記油圧駆動冷却ファンは、前記トランスミッション油用オイルクーラ内を流れる前記トランスミッション油を冷却するように配置されている、としてもよい。
【0020】
前記構成によれば、作動油と同様に、外気の温度低下等によりトランスミッション油の検出温度が下限閾値温度よりも低くなったときには、油圧駆動冷却ファンの冷却能力を最大限に低減させて、トランスミッション油用オイルクーラを介したトランスミッション油の過冷却を防止することができる。また、トランスミッション油の過冷却を防止することにより、トランスミッション油の粘度の上昇を防ぎ、ひいてはトランスミッションが作動した時の負荷抵抗の上昇を防止することができる。
【0021】
前記目的を達成するために、その他の態様に係る油圧駆動冷却ファンの制御方法は、正回転と逆回転の回転方向に回転可能であり、外気を取り込んで冷却対象を当該外気により冷却し、回転方向が逆回転時に当該冷却対象への風量を当該正回転時よりも低減させる油圧駆動冷却ファンと、当該油圧駆動冷却ファンの回転方向を前記正回転と前記逆回転とに切り替える回転方向切替バルブと、前記油圧駆動冷却ファンの回転数を制御する回転数制御バルブと、前記冷却対象の温度を検出する温度検出器と、を備えた冷却システムにおける当該油圧駆動冷却ファンの制御方法であって、前記温度検出器により検出された検出温度を取得することと、前記検出温度が下限閾値温度未満であるか否かを判定することと、前記検出温度が前記下限閾値温度未満でないことを判定したとき、前記油圧駆動冷却ファンの回転方向が前記正回転になるように前記回転
方向切替バルブに回転方向指令を出力し、前記検出温度に応じて前記油圧駆動冷却ファンの回転数を調整するための回転数指令を前記回転数制御バルブに出力することと、前記検出温度が前記下限閾値温度未満であることを判定したとき、前記油圧駆動冷却ファンの回転数が最小回転数になるように回転数指令を前記回転数制御バルブに出力した状態で、前記油圧駆動冷却ファンの回転方向が前記逆回転になるように回転方向指令を前記回転方向切替バルブに出力することと、を含むものである。
【0022】
前記方法によれば、油圧駆動冷却ファンの冷却能力のさらなる低減を図り、冷却対象の過冷却を防止することができる。
【0023】
前記目的を達成するために、さらにその他の形態に係る産業用車両は、前述したいずれかの油圧駆動冷却ファン制御システムを備えたものである。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、油圧駆動冷却ファンによる冷却対象の過冷却を防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、好ましい実施の形態を、図面を参照しながら説明する。なお、以下では全ての図を通じて同一又は相当する要素には同一の参照符号を付して、その重複する説明を省略する。
(産業用車両の構成例)
本実施の形態に係る産業用車両は、ホイールローダやタイヤローラ等の建設機械、フォークリフトや高所作業車等の産業車両、その他の産業用として使用される車両を全て含むものである。
【0027】
図1は、本実施の形態に係る産業用車両の一例としてのホイールローダの概略的な構成例を示す図である。
図1に示すホイールローダは車体602を備え、車体602の下前部及び下後部には左右一対の車輪603,604が設けられている。車体602の前部にはアーム605の基端部が揺動可能に取り付けられ、アーム605の先端部にはバケット606が揺動可能に取り付けられている。以下では説明便宜のため、これらアーム605及びバケット606を纏めて「作業機」と呼ぶこともある。
【0028】
作業機のアクチュエータは、ホイストシリンダ607及びバケットシリンダ609から構成される。ホイストシリンダ607は車体602とアーム605との間に架け渡されており、ホイストシリンダ607の伸縮に応じてアーム605は車体602に対して左右の軸線周りに揺動する。バケット606の後部にはレバー608が固設され、レバー608とアーム605との間にバケットシリンダ609が架け渡されている。このバケットシリンダ609の伸縮に応じてバケット606はアーム605に対して左右の軸線周りに揺動する。
【0029】
車体602の後部には動力を発生するエンジン100が搭載され、エンジン100はトランスミッション120、プロペラシャフト613、及びアクスル614,615を介して車輪603,604と接続されている。エンジン100が発生する動力が車輪603,604に伝達されることにより、車体602に水平方向の牽引力が発生してホイールローダが走行可能となる。なお、エンジン100は、往復動内燃機関単体から構成されてもよく、これに電気モータ/ジェネレータを付設した所謂ハイブリッド型であってもよい。トランスミッション120は複数の前進用変速段と、複数の後進用変速段とを設定可能である。
【0030】
また、エンジン100の出力軸には、トランスミッション120を介して後述の油圧駆動冷却ファン1等を駆動する油圧ポンプ5が接続されており、エンジン100が発生する動力に基づいて油圧ポンプ5が駆動されるようになっている。
【0031】
車体602の上部に設けられたキャビン617には、作業員が走行操作や掘削作業を行うための各種操作器618が配備されている。この操作器618には、例えば操舵用のステアリング619、エンジン100の出力を操作するためのアクセルペダル620、変速操作用のシフトレバー621、アーム605及びバケット606の揺動を操作するための作業機操作レバー622等が含まれる。
(産業用車両のエンジン室内の全体構成例)
図2は実施の形態に係る油圧駆動冷却ファン制御システムを含む産業用車両のエンジン室内の全体構成例を示すブロック図である。
【0032】
===エンジン冷却系統===
図2に示す産業用車両のエンジン室500内には、エンジン冷却系統として、エンジン100と、ラジエータ200と、エンジン100の熱を吸収する冷却対象としてのエンジン冷却水WCと、エンジン100からラジエータ200へとエンジン冷却水WCを供給してラジエータ200により冷却されたエンジン冷却水WCをエンジン100に戻すようエンジン冷却水WCを循環させるエンジン冷却水冷却機構(101,102,105等)と、油圧駆動冷却ファン1と、が備えられている。また、
図2に示すエンジン室500内においては、油圧駆動冷却ファン1が正回転の場合、外気を室内に吸入する第1の外気口510と、第1の外気口510から吸入された外気を室外に排出する2つの第2の外気口520とが備えられている。なお、第1の外気口510と第2の外気口520との配置は、
図2に示すものに限られない。
【0033】
エンジン冷却水冷却機構(101,102,105等)は、水配管101と、水配管102と、水配管201と、エンジン100内に配置されたエンジン冷却水WCの配管(図示せず)と、ウォータポンプ(図示せず)と、サーモスタット105等により構成されている。
【0034】
水配管101は、エンジン100からエンジン冷却水WCをラジエータ200に供給するためのものである。水配管102は、ラジエータ200において外気との熱交換がなされたエンジン冷却水WCをエンジン100に戻すためのものである。水配管201は、水配管101と水配管102とを接続し、ラジエータ200内にエンジン冷却水WCを流すためのものである。また、水配管201は、内部を流れるエンジン冷却水WCを冷却するため、ラジエータ200内で外気と接触するように配置されている。エンジン100内に配置されたエンジン冷却水WCの配管は、エンジン100内の熱を吸収するためのものであり、エンジン100内に配置されている。上述したウォータポンプは、上述の配管(101,102,201等)内のエンジン冷却水WCを循環させるためのものである。サーモスタット105は、エンジン100のエンジン冷却水WCの入口近傍に配置されている。
【0035】
なお、サーモスタット105は、エンジン冷却水WCの温度を検出する温度検出器を備えている。このサーモスタット105の温度検出器により検出された温度が設定温度(例えば78°)以上の場合には、サーモスタット105は「開」となり、ラジエータ200から水配管102を通るエンジン冷却水WCを、エンジン100内に流入させる。つまり、サーモスタット105が開いている場合、エンジン冷却水WCは、水配管101、および、水配管102を介して、エンジン100(エンジン100内に配置されたエンジン冷却水WCの配管)とラジエータ200(水配管201)との間を循環することとなる。
【0036】
また、サーモスタット105の温度検出器により検出された温度が設定温度(例えば78°)未満の場合には、サーモスタット105は「閉」となり、ラジエータ200から水配管102を通ってエンジン100内に流入するエンジン冷却水WCを遮断する。サーモスタット105が閉じている場合、エンジン冷却水WCは、水配管101、および、水配管102と並行してそれぞれ設けられたバイパス管(図示せず)を介して、エンジン100(エンジン100内に配置されたエンジン冷却水WCの配管)とラジエータ200(水配管201)との間を循環することとなる。これらのバイパス管は、水配管101、および、水配管102よりも、それらの内部を流れるエンジン冷却水WCの流量は少なくなるように構成されている。このように、サーモスタット105が閉じている場合であっても、サーモスタット105が開いている場合に比べて流量が少ないものの、所定の量のエンジン冷却水WCがエンジン100とラジエータ200との間を循環することとなる。なお、
図2に示すサーモスタット105は、エンジン100のエンジン冷却水WCの入口近傍に配置されているが、エンジン100のエンジン冷却水WCの出口近傍に配置されてもよい。
【0037】
油圧駆動冷却ファン1は、正回転時において、第1の外気口510から外気を取り込んで該ラジエータ200内のエンジン冷却水WCの水配管201を該外気により冷却(熱交換)し、熱交換後の外気をエンジン室500内の後述の冷却対象を介して第1の外気口510とは異なる位置にそれぞれ設けられた2箇所の第2の外気口520に向けて排出するように配置されている。具体的には、油圧駆動冷却ファン1は、ラジエータ200に対して、油圧駆動冷却ファン1の正回転時の外気排気側(正回転時の外気流路における下流側)に配置された外気誘導板であるファンシュラウド202により覆われて、ラジエータ200と対向するように配置されている。この他、油圧駆動冷却ファン1は、ラジエータ200に対して、油圧駆動冷却ファン1の正回転時の外気吸気側(正回転時の外気流路における上流側)に配置されてもよい。この場合、ファンシュラウド202は油圧駆動冷却ファン1とともにラジエータ200に対して、油圧駆動冷却ファン1の正回転時の外気吸気側(正回転時の外気流路における上流側)に配置される。
【0038】
また、油圧駆動冷却ファン1は、「正回転」と「逆回転」との回転方向に回転できるように構成されている。そして、油圧駆動冷却ファン1は、「正回転」の回転方向に回転している場合は、第1の外気口510から外気を取り込んで、エンジン冷却水WC(冷却対象)を冷却する。この場合、第1の外気口510から取り込まれた外気は、第2の外気口520から排出されることとなる。また、油圧駆動冷却ファン1は、「逆回転」の回転方向に回転している場合は、第2の外気口520から外気を取り込んで、エンジン冷却水WC(冷却対象)を冷却する。そして、この場合、第2の外気口520から取り込まれた外気は、第1の外気口510から排出されることとなる。また、油圧駆動冷却ファン1は、正回転の時に、冷却対象への風量が多くなるように羽根の傾きが設定されている。つまり、油圧駆動冷却ファン1は、その回転方向が正回転の時に、最も冷却能力が高くなる。一方、逆回転の時には、油圧駆動冷却ファン1の羽根の傾きが、回転方向に対応したものとなっていないため、油圧駆動冷却ファン1の風量は、正回転の時よりも減少する。つまり、油圧駆動ファン1は、その回転方向が逆回転の時は、正回転の時よりも、エンジン室500内の冷却対象への風量が少なくなり、冷却能力が低くなる。なお、冷却対象への風量とは、油圧駆動冷却ファン1の回転により取り込まれて、冷却対象に供給される空気の量をいう。
【0039】
===作動油及びトランスミッション油冷却系統===
エンジン室500内には、エンジン100の出力軸に接続するトランスミッション120が備えられている。トランスミッション120は、トルクコンバータ(図示せず)を有しており、冷却対象としてのトランスミッション油OMを用いて、エンジン100の動力を各種機器・装置等(例えば、後述の油圧回路110のポンプ5)へ伝達する。
【0040】
また、エンジン室500内には、油圧駆動冷却ファン1の駆動系統として、油圧回路110がさらに備えられている。詳細は後述するが、油圧回路110は、油圧ポンプ5(
図3参照)と、油圧ポンプ5から吐出された冷却対象としての作動油OHにより油圧駆動冷却ファン1を含む被駆動体を駆動する油圧アクチュエータ(荷役合流バルブ50,ファン制御バルブ60)と、を有している。ポンプ5は、トランスミッション120に接続されており、トランスミッションを介して伝達されるエンジン100の動力により作動し、作動油OHを吐出する。
【0041】
ここで、作動油OH及びトランスミッション油OMは、高負荷時等において、温度上昇に伴って粘度低下する。すると、作動油OH及びトランスミッション油OMのリーク量が増大し、油圧回路110及びトランスミッション120の作動効率の低下を引き起こすこととなる。また、潤滑性が悪化して、焼き付きや磨耗等の原因となる。一方、作動油OH及びトランスミッション油OMは、温度低下に伴って粘度上昇する。すると、作動油OH及びトランスミッション油OMの流動抵抗が増大し、油圧回路110及びトランスミッション120の損失エネルギーの増大を引き起こすこととなる。このため、作動油OH及びトランスミッション油OMを適切な温度に制御する必要があり、エンジン室500内には、作動油OH及びトランスミッション油OMの冷却系統として、作動油OH用のオイルクーラ210と、トランスミッション油OM用のオイルクーラ220と、油圧回路110内を流れる作動油OHをオイルクーラ210に供給してオイルクーラ210により冷却された作動油OHを油圧回路110に戻すよう作動油OHを循環させる作動油冷却機構(111,211,112)と、トランスミッション120からオイルクーラ220へとトランスミッション油OMを供給してオイルクーラ220により冷却されたトランスミッション油OMをトランスミッション120に戻すようトランスミッション油OMを循環させるトランスミッション油冷却機構(121,212,122)と、油圧駆動冷却ファン1と、が備えられている。
【0042】
なお、作動油冷却機構(111,211,112)は、油圧回路110から作動油OH(戻り油)をオイルクーラ210に供給する油配管111と、オイルクーラ210において外気との熱交換がなされた作動油OHを油圧回路110に戻す油配管112と、油配管111及び油配管112と接続されて作動油OHをオイルクーラ210内に流して、かつオイルクーラ210内で外気と接触するように配置された油配管211と等により構成されている。
【0043】
また、トランスミッション油冷却機構(121,212,122)は、トランスミッション120からトランスミッション油OM(戻り油)をオイルクーラ220に供給する油配管121と、オイルクーラ220において外気との熱交換がなされたトランスミッション油OMをトランスミッション120に戻す油配管122と、油配管121及び油配管122と接続されてオイルクーラ220内にトランスミッション油OMを流して、かつオイルクーラ220内で外気と接触するように配置された油配管212と等により構成されている。
【0044】
オイルクーラ210及びオイルクーラ220は、ラジエータ200と並列的に列を成すように配置され、かつ油圧駆動冷却ファン1と対向するように配置される。言い換えると、油圧駆動冷却ファン1は、外気を取り込んで、ラジエータ200内を流れるエンジン冷却水と、オイルクーラ210内を流れる作動油OHと、オイルクーラ220内を流れるトランスミッション油OMと、を冷却するように配置されている。なお、オイルクーラ210及びオイルクーラ220とラジエータ200との位置関係としては、オイルクーラ210及びオイルクーラ220に対して、油圧駆動冷却ファン1の正回転時の外気吸気側(正回転の時の外気流路における上流側)にラジエータ200が配置されてもよい。
【0045】
===インタクーラ===
図2には、エンジン100が過給機付エンジンである場合の構成を例示している。つまり、エンジン室500内には、油圧駆動冷却ファン1による冷却対象としての圧縮空気ATをエンジン100に向けて供給する過給機131と、過給機131からエンジン100に向けて供給される圧縮空気ATを冷却するインタクーラ130とが備えられている。
【0046】
過給機131は、エンジン100に送り込む空気を事前に圧縮することでエンジン100の燃費や出力を向上させる目的で設けられている。過給機131の空気の圧縮方式としては、排気ガスにより圧縮するターボチャージャ式やエンジン100により圧縮するスーパーチャージャ式が挙げられる。
【0047】
インタクーラ130は、過給機131からエンジン100に供給される前の高温高圧の圧縮空気ATを冷却して、エンジン100の燃費と出力をさらに向上させる目的で設けられている。インタクーラ130は、ラジエータ200、オイルクーラ210、及びオイルクーラ220よりもさらに油圧駆動冷却ファン1の正回転時の外気吸気側(正回転時の外気流路の上流側)に、後述のエアコンコンデンサ151と並列的に列を成すように配置され、かつ油圧駆動冷却ファン1と対向するように配置されている。そして、インタクーラ130は、オイルクーラ210、オイルクーラ220及びラジエータ200をそれぞれ通過して熱交換がなされる前に、油圧駆動冷却ファン1により取り込まれた外気により圧縮空気ATを冷却するように構成されている。言い換えると、油圧駆動冷却ファン1は、外気を取り込んで、インタクーラ130内を流れる圧縮空気ATを冷却するように配置されている。
【0048】
オイルクーラ210、オイルクーラ220、ラジエータ200、及びインタクーラ130においては、通常、冷却対象(作動油OH、トランスミッション油OM、エンジン冷却水WC、圧縮空気AT)の上限閾値温度(後述)を超えないように、それぞれの冷却対象を冷却するようになっている。この上限閾値温度は、例えば、作動油OHであれば100℃以下、トランスミッション油OMであれば120℃以下、エンジン冷却水WCであれば100℃、圧縮空気ATであれば外気の温度+20℃以下に設定される。
【0049】
===エンジン周辺のその他の構成例===
図2には、エンジン100がさらにDPF(Diesel Particulate Filter)付ディーゼルエンジン(Diesel Engine)である場合の構成を例示している。つまり、エンジン室500内には、エンジン100の排気口付近に、エンジン100の排気ガス中の粒子状物質を捕捉するフィルタであるDPF140が装着されている。DPF140に所定量の粒子状物質が捕捉されるとDPF140の機能低下を招く。この機能低下を防ぐため、DPF140は、所定の契機でエンジン100の高温の排気ガス等を利用して、捕捉した粒子状物質が燃焼され、フィルタが再生される。したがって、DPF140を再生する際には、エンジン100に負荷を与えて排気ガス温度を上昇させる必要があり、エンジン冷却水WCの温度が上昇する。なお、エンジン100がDPF付ディーゼルエンジンでない場合、以上に説明した構成を省略してもよい。
【0050】
また、
図2に示すエンジン室500内には、車内用のエアコン(150が備えられている。エアコン150の冷房向けの構成としては、一般的に、エンジン100によって駆動されて冷媒(気相)を圧縮して高温高圧化するコンプレッサと、当該コンプレッサにより高温高圧化された冷媒(気相)を外気により冷却して液相化するコンデンサと、コンデンサにより冷却された冷媒を気液分離するレシーバと、レシーバによって分離された冷媒(液相)を気化して当該コンプレッサに供給するエバポレータと、エバポレータに向けて送風して冷風を生成するブロアモータ等が備えられている。
【0051】
図2に示すエアコンコンデンサ151は、上述したエアコン150のコンデンサのことであり、オイルクーラ210、オイルクーラ220、及びラジエータ200よりも油圧駆動冷却ファン1の正回転時の外気吸気側(正回転時の外気流路の上流側)に配置され、インタクーラ130と並列的に列を成すよう配置されている。つまり、油圧駆動冷却ファン1によって取り込まれた外気により、オイルクーラ210内を流れる作動油OH及びオイルクーラ220内を流れるトランスミッション油OM、ラジエータ200内を流れるエンジン冷却水WC、及びインタクーラ130内を流れる圧縮空気ATが冷却されるのと併行して、エアコンコンデンサ151内を流れる冷媒(気相)が冷却される。
【0052】
また、エアコン150の暖房向けの構成としては、一般的に、エンジン100から排出されるエンジン冷却水WCを利用して暖気を生成するヒートコアが備えられている。なお、このヒートコアにおいて熱交換がなされたエンジン冷却水WCは、ラジエータ200において熱交換がされたエンジン冷却水WCと合流して、エンジン100へと戻る。このように、エンジン冷却水WCはエアコン150の暖房用として利用されるためには、エンジン冷却水WCをある程度の温度まで上昇する必要がある。
【0053】
===油圧駆動冷却ファン制御システムの構成例===
図2には、実施の形態に係る油圧駆動冷却制御システムの構成例が示されている。
【0054】
図2に示す油圧駆動冷却制御システムは、エンジン冷却水WCの温度T1を検出する温度検出器304と、作動油OHの温度T2を検出する温度検出器305と、トランスミッション油OMの温度T3を検出する温度検出器306と、インタクーラ130を流れる圧縮空気ATの温度T4を検出する温度検出器307と、制御装置300とを備えている。
【0055】
温度検出器304は、例えば、エンジン100からラジエータ200に向けてエンジン冷却水WCが流れる水配管101上に配置されるが、エンジン100内のエンジン冷却水WCが流れている配管(図示せず)上に配置されてもよい。
【0056】
温度検出器305は、例えば、後述する作動油OHの油タンク2(
図3参照)に配置されてもよい。
【0057】
温度検出器306は、例えば、オイルクーラ220からトランスミッション120に向けてトランスミッション油OMが流れる油配管122上に配置されてもよい。また、トランスミッション用ポンプサクションラインに配置されてもよい。
【0058】
温度検出器307は、例えば、インタクーラ130からエンジン100に向けて圧縮空気ATが流れる配管上に配置される。
【0059】
制御装置300は、温度検出器304により検出されたエンジン冷却水WCの温度T1、温度検出器305により検出された作動油OHの温度T2、温度検出器306により検出されたトランスミッション油OMの温度T3、温度検出器307により検出された圧縮空気ATの温度T4に基づいて、油圧駆動冷却ファン1の回転駆動を制御する。
【0060】
以上、
図2に示す油圧駆動冷却ファン制御システムを含む産業用車両のエンジン室内の全体構成例を系統ごとに説明した。なお、前述した実施の形態の中でも一部説明しているが、油圧駆動冷却ファン1、ラジエータ200、オイルクーラ210,220、インタクーラ130、エアコンコンデンサ151等の各機器の配置については、
図2に示した実施の形態に限定されるものではない。ホイールローダの車体602の状態、エンジン室500の風の流れ、及び各機器の大きさに基づいて、各機器の配置を適宜変更してもよい。
【0061】
(油圧回路の構成例)
図3は
図2に示す油圧回路110の詳細な構成例を示す図である。
図3に示す油圧回路110は、基本的には、油タンク2、油圧ポンプ5、アンローダ機構10、ブレーキ制御回路30、荷役合流バルブ50、ファン制御バルブ60、高圧選択機構20、容量調整機構9から成る。
【0062】
具体的には、油圧ポンプ5から供給される作動油OHは、油配管4を介してアンローダ機構10の入力ポート11に供給されている。この入カポート11に供給された作動油OHは、絞り12及び第1の出力ポート13を介してブレーキ制御回路30に供給されて、ブレーキ制御回路30の所定のアキュムレータに蓄積される。
【0063】
油圧ポンプ5は、エンジン100で駆動されるトランスミッション120を介して駆動される。また、油圧ポンプ5は、後述するロードセンシング圧(Pls)によって切り換えられる制御バルブ7と、制御バルブ7によって制御される傾転角調整部8とを有する容量調整機構9を備えている。この容量調整機構9によって、油圧ポンプ5の傾転角が制御される。
【0064】
アンローダ機構10は、ブレーキ制御回路30の回路圧(Pbreak)が設定圧以下に低下する場合には第1の出力ポート13から優先的にブレーキ制御回路30に作動油OHを供給し、回路圧(Pbreak)が設定圧以上になる場合には第2の出力ポート14へ作動油OHを供給するように構成された第1のバルブ15及び第2のバルブ16を備える。
【0065】
アンローダ機構10の動作としては、まず、パイロット油配管36を介して第1のバルブ15に導かれたブレーキ制御回路30の回路圧(Pbreak)が設定圧以下の場合は、入力ポート11に供給された作動油OHは、絞り12、第1の出力ポート13を介してブレーキ制御回路30に供給される。
【0066】
つぎに、ブレーキ制御回路30に作動油OHが蓄積されていくことでその回路圧(Pbreak)が設定圧に達すると、第1のバルブ15とドレン配管19とが導通するため、第1のバルブ15の1次側圧力が油タンク圧まで低下する。これに伴い、入カポート11に供給された作動油OHは第2のバルブ16を介して第2の出力ポート14へ供給されるので、アンローダ機構10からブレーキ制御回路30に作動油OHを供給しないカットアウト状態となる。
【0067】
つぎに、ブレーキ制御回路30に蓄積された作動油OHのエネルギーが消費されると、ブレーキ制御回路30の回路圧(Pbreak)がアンローダ機構10の設定圧よりも低下する。このとき、アンローダ機構10からブレーキ制御回路30に作動油OHを供給するカットイン状態となる。このように、油圧ポンプ5から吐出された作動油OHはブレーキ制御回路30側へ優先的に流れると、後述するように油圧ポンプ5の吐出量が増えてブレーキ制御回路30の回路圧(Pbreak)が再上昇する。
【0068】
荷役合流バルブ50には、切替バルブ51が設けられている。切替バルブ51は、可変絞り52の2次側から分岐した分岐管55に設けられた電磁切替バルブ56によって、アンローダ機構10の第2の出力ポート14から吐出された作動油OHの供給先を、ファン制御バルブ60(電磁切換バルブ56がOFF)、または荷役合流配管54を介した荷役(図示せず)に切換える。
【0069】
ファン制御バルブ60には、電磁制御バルブ61が設けられている。電磁制御バルブ61は、油圧駆動冷却ファン1の回転方向を制御するために、油圧駆動冷却ファン1に対する作動油OHが流れる向きを切り替える。さらに、ファン制御バルブ60には、油圧駆動冷却ファン1の回転数を制御する電磁逆比例弁64が設けられている。
【0070】
油圧回路110において、アンローダ機構10の回路圧(Pun)がパイロット配管21を介して高圧選択機構20に導かれている。また、荷役合流バルブ50からの荷役合流圧(Pload)がパイロット配管57を介して高圧選択機構20に導かれている。さらに、ファン制御バルブ60のファン回転数制御圧(Pfan)がパイロット配管63を介して高圧選択機構20に導かれている。
【0071】
高圧選択機構20は、アンローダ機構10の回路圧(Pun)、荷役合流バルブ50の荷役合流圧(Pload)、及びファン制御バルブ60のファン回転数制御圧(Pfan)のうち、最も高い圧力をロードセンシング圧(Pls)として選択する。そして、このロードセンシング圧(Pls)により応じた流量の作動油OHが吐出されるように、油圧ポンプ5の傾転角が傾転角調整部8で制御される。
【0072】
例えば、ブレーキ制御回路30の回路圧(Pbreak)の低下に伴い、アンローダ機構10がカットアウト状態からカットイン状態に切り替わることで、アンローダ機構10の回路圧(Pun)が再上昇してロードセンシング圧(Pls)として選択される。これにより、油圧ポンプ5の傾転角が大きくなるように制御されて、油圧ポンプ5からの吐出流量が増加する。そして、ブレーキ制御回路30の回路圧(Pbreak)が設定圧に達するまでは、ロードセンシング圧(Pls)に応じた流量が油圧ポンプ5から吐出され、ブレーキ制御回路30に必要流量の作動油OHが迅速に蓄積される。
【0073】
その後、ブレーキ制御回路30に設定圧力の作動油OHが蓄積されると、第2のバルブ16を介して第2の出力ポート14から作動油OHが吐出されるので、アンローダ機構10の状態はカットイン状態からカットアウト状態に切り替わる。このとき、第2の出力ポート14から吐出される作動油OHは、荷役合流バルブ50及びファン制御バルブ60に供給される。そして、高圧選択機構20において、アンローダ機構10の回路圧(Pun)、荷役合流バルブ50の荷役合流圧(Pload)、及びファン制御バルブ60のファン回転数制御圧(Pfan)の中で最も高い圧力がロードセンシング圧(Pls)として選択される。この結果、油圧ポンプ5から吐出される流量が荷役合流バルブ50やファン制御バルブ60にとって必要最小限の流量となるように、容量調整機構9の傾転角調整部8が制御される。
【0074】
なお、油圧ポンプ5がトランスミッション120を介してエンジン100に直結されて常時油圧を吐出しており、油圧ポンプ5から常時吐出されている油圧を利用してロードセンシング圧(Pls)に基づく油圧ポンプ5の傾転角制御等が遂行される。このため、油圧駆動冷却ファン1は常時動作することとなる。
【0075】
(油圧駆動冷却ファン制御システムの動作例)
図4は
図2に示す油圧駆動冷却ファン制御システムの動作例を示すフローチャートである。
【0076】
まず、制御装置300は、エンジン100が始動されたことを検知すると(ステップS400)、温度検出器304により検出されたエンジン冷却水WCの温度T1、温度検出器305により検出された作動油OHの温度T2、温度検出器306により検出されたトランスミッション油OMの温度T3、温度検出器307により検出された圧縮空気ATの温度T4をそれぞれ取得する(ステップS401)。
【0077】
つぎに、制御装置300は、エンジン冷却水WCの温度T1、作動油OHの温度T2、トランスミッション油OMの温度T3、圧縮空気ATの温度T4のうち少なくとも1つの温度がそれぞれに対応した上限閾値温度以上であるか否かを判定する(ステップS402)。温度T1〜T4が1つも上限閾値以上でない場合(ステップS402:NO)、ステップS403に進む。なお、上限閾値温度とは、冷却対象(エンジン冷却水WC、作動油OH、トランスミッションOM、圧縮空気AT)の種類や使用状況によって定まる所定の温度であり、冷却対象の温度がこの温度以上である場合には、冷却対象は過熱状態にあると判断される。
【0078】
ステップS403では、制御装置300は、エンジン冷却水WCの温度T1、作動油OHの温度T2、トランスミッション油OMの温度T3、圧縮空気ATの温度T4のうち少なくとも1つの温度がそれぞれに対応した下限閾値温度未満であるか否かを判定する。温度T1〜T4全てが下限閾値以上である場合、この判定は偽であるため(ステップS403:NO)、ステップS404に進む。なお、下限閾値温度とは、冷却対象(エンジン冷却水WC、作動油OH、トランスミッションOM、圧縮空気AT)の種類や使用状況によって定まる所定の温度であり、冷却対象の温度がこの温度未満である場合には、冷却対象は過冷却状態にあると判断される。
【0079】
ステップS404では、エンジン冷却水WCの温度T1、作動油OHの温度T2、トランスミッション油OMの温度T3、及び圧縮空気ATの温度T4はそれぞれに対応する上限閾値温度未満であり、かつそれぞれに対応する下限閾値温度以上である。したがって、制御装置300は、油圧駆動冷却ファン1の回転数が、エンジン冷却水WCの温度T1、作動油OHの温度T2、トランスミッション油OMの温度T3、及び圧縮空気ATの温度T4に応じて決まる回転数の中で、一番高い回転数NRとなるように、油圧回路110のファン制御バルブ60(電磁逆比例弁64)に回転数指令を出力する(ステップS404)。なお、温度に応じて回転数を調整する制御とは、温度が高ければ回転数を増加させて風量を増やし、逆に温度が低ければ回転数を減少させて風量を減らすような制御のことをいう。ここでは、この制御を「第一制御」と称する。なお、この制御を行う際の油圧駆動冷却ファン1の回転方向は正回転である。そして、ステップS401に戻る。
【0080】
エンジン100や油圧回路110等が過負荷になる等の原因により、エンジン冷却水WCの温度T1、作動油OHの温度T2、トランスミッション油OMの温度T3、圧縮空気ATの温度T4のうち少なくとも1つの温度がそれぞれに対応した上限閾値温度以上であるか否かの判定が真となる場合がある(ステップS402:YES)。この場合、制御装置300は、油圧駆動冷却ファン1の冷却能力を最大限にして、エンジン冷却水WC、作動油OH、トランスミッション油OM、及び圧縮空気ATを共通に冷却させる。具体的には、制御装置300は、油圧駆動冷却ファン1の回転数が最大回転数NMAXとなるように、油圧回路110のファン制御バルブ60(電磁逆比例弁64)に回転数指令を出力する(ステップS405)。さらに、制御装置300は、油圧駆動冷却ファン1の回転方向が正回転となるように、油圧回路110のファン制御バルブ60(電磁制御バルブ61)に回転方向指令を出力する(ステップS405)。そして、ステップS401に戻る。
【0081】
また、外気の温度が例えば氷点下である等の原因により、エンジン冷却水WCの温度T1、作動油OHの温度T2、トランスミッション油OMの温度T3、圧縮空気ATの温度T4のうち少なくとも1つの温度がそれぞれに対応した下限閾値温度未満であるか否かの判定が真となる場合がある(ステップS403:YES)。この場合、制御装置300は、油圧駆動冷却ファン1の冷却能力を最低限にして、エンジン冷却水WC、作動油OH、トランスミッション油OM、及び圧縮空気ATを共通に冷却させる。具体的には、制御装置300は、油圧駆動冷却ファン1の回転数が最小回転数NMINとなるように、油圧回路110のファン制御バルブ60(電磁逆比例弁64)に回転数指令を出力する(ステップS406)。さらに、制御装置300は、油圧駆動冷却ファン1の回転方向が逆回転となるように、油圧回路110のファン制御バルブ60(電磁制御バルブ61)に回転方向指令を出力する(ステップS406)。ここでは、この制御を「第二制御」と称する。なお、逆回転とは、前述したとおり、正回転時とは油圧駆動冷却ファン1の回転方向を逆にして、正回転時とは外気流路の方向が逆となり、冷却対象(エンジン冷却水WC、作動油OH、トランスミッション油OM、圧縮空気AT)への風量が正回転時よりも減少する方向である。そして、ステップS401に戻る。
【0082】
ここで、温度T1、T2、T3、T4のうち少なくとも1つの温度がそれぞれに対応した下限閾値温度未満であり(ステップS403:YES)、かつ温度T1、T2、T3、T4のうち少なくとも1つの温度がそれぞれに対応した上限閾値温度以上である場合(ステップS402:YES)、ステップS402の判定がステップS403の判定よりも先行するため、ステップS405の制御がステップS406の制御よりも優先して実行される。
【0083】
なお、以上の説明では、制御装置300は、エンジン冷却水WCの温度T1、作動油OHの温度T2、トランスミッション油OMの温度T3、及び圧縮空気ATの温度T4を取得しているが、これらに限られない。例えば、制御装置300は、エアコンコンデンサ151内を流れる冷媒(気相)の圧力を更に取得して、前述の制御(ステップS400〜S406)を実行してもよい。また、制御装置300は、エンジン冷却水WCの温度T1、作動油OHの温度T2、トランスミッション油OMの温度T3、及び圧縮空気ATの温度T4のうちいずれか1つの温度のみを取得して、前述の制御(ステップS400〜S406)を実行してもよい。例えば、エンジン室500内の熱源のうち主要なエンジン100を冷却するエンジン冷却水WCの温度T1のみで前述の制御(ステップS400〜S406)を実行してもよい。
【0084】
(作用効果)
以上のとおり、温度検出器(304〜307)により検出された温度全て(T1〜T4全て)が下限閾値温度以上である場合には、当該温度検出器により検出された温度に応じて油圧駆動冷却ファン1の回転数が設定され、かつ、当該温度検出器により検出された温度のうち少なくとも1つが、それぞれの冷却対象に対応した下限閾値温度よりも低い場合には、油圧駆動冷却ファン1の回転数が最小回転数NMINに設定されるとともに、油圧駆動冷却ファン1の回転方向が逆回転とされる。
図3に示すような、ロードセンシング圧(Pls)に基づいて油圧駆動冷却ファン1の回転数を制御しているような油圧回路を用いている場合、油圧ポンプ5の圧をロードセンシング圧(Pls)より低くすることができないため、油圧駆動冷却ファン1の冷却能力を十分に低下させることができない。そのため、冷却対象(エンジン冷却水WC,作動油OH,トランスミッション油OM,圧縮空気AT等)の過冷却が引き起こされるおそれがあった。一方、本実施形態では、外気の温度低下等により冷却対象の検出温度が下限閾値温度(例えば氷点下)よりも低い場合には、油圧駆動冷却ファン1の回転数を最小回転数に設定することに加えて、油圧駆動冷却ファンの回転方向を逆回転とすることで正回転時よりも当該冷却対象への風量を低減させている。この結果、油圧駆動冷却ファン1の冷却能力のさらなる低減を図り、当該冷却対象の過冷却を防止することができる。
【0085】
また、複数の温度検出器(304〜307等)それぞれにおいて検出された複数の温度(T1〜T4等)のうち少なくとも1つの温度がそれぞれに対応した下限閾値温度よりも低い場合、油圧駆動冷却ファン1の回転数が最小回転数に設定されるとともに、油圧駆動冷却ファン1の回転方向が逆回転とされる。これにより、複数の冷却対象すべての過冷却を防止することができる。
【0086】
また、油圧駆動冷却ファン1の回転数を最小回転数に設定するとともに、油圧駆動冷却ファン1の回転方向を逆回転とする制御を行っている間に、複数の温度検出器(304〜307等)それぞれにおいて検出された複数の温度のうち少なくとも1つの温度が上限閾値温度よりも高くなった場合、この制御が解除される。これにより、油圧駆動冷却ファン1の冷却能力が低減されている状況下で、少なくとも1つの冷却対象の温度が上限閾値温度よりも高くなれば、前述の油圧駆動冷却ファン1の回転数を最小回転数に設定するとともに、油圧駆動冷却ファン1の回転方向を逆回転とする制御が解除されることで、油圧駆動冷却ファン1による冷却対象の冷却を再開することができる。
【0087】
また、油圧駆動冷却ファン1の制御(第一制御と第二制御)を温度検出器により検出された温度によらず手動操作で切り替えることができる。これにより、オペレータが外気の温度や流体のモニター検出温度から判断して、油圧駆動冷却ファン1の制御を手動操作に切り替えることができる。
【0088】
また、外気の温度が低い等によりエンジン冷却水WCの検出温度T1が下限閾値温度(例えば氷点下)よりも低い場合には、油圧駆動冷却ファン1の回転数が最小回転数NMINに設定されるとともに、油圧駆動冷却ファン1の回転方向が逆回転とされる。これにより、油圧駆動冷却ファン1の冷却能力を最大限に低減させて、エンジン冷却水のさらなる温度低下を防止することができる。この結果、エンジン100が過冷却となってエンジン100の効率が低下することを防止することができる。また、副次的な効果として、エンジン冷却水WCの温度T1がある所定の温度以上でないとDPF再生が遂行できなくなるという問題を解消することができる。
【0089】
また、エアコン150は、暖房の際にエンジン冷却水WCの熱を用いているため、エンジン冷却水WCの温度T1が低い場合には、暖房機能が低下するという問題があった。これに対し、実施形態に係る油圧駆動冷却ファン制御システム(油圧駆動冷却ファンの制御方法)を用いることで、エンジン冷却水WCの過冷却を防止でき、エアコン150の暖房機能の低下を抑制することができる。
【0090】
また、エンジン冷却水WCと同様に、外気の温度が低い等により作動油OHの検出温度T2が下限閾値温度よりも低い場合には、油圧駆動冷却ファン1の冷却能力を最大限に低減させて、オイルクーラ210を介した作動油OHの過冷却を防止することができる。また、作動油OHの過冷却を防止することにより、温度低下に伴う作動油OHの粘度の上昇を防ぎ、ひいては油圧回路110が作動した時の負荷抵抗の上昇を防止することができる。また、油圧ポンプ5がロードセンシング圧(Pls)に基づいて傾転角制御するように構成されている場合、油圧ポンプ5を止めることができず油圧駆動冷却ファン1の回転を停止することは困難であるが、基本的な油圧回路110の変更や機器の追加等を行わずに、制御装置300による制御のみで油圧駆動冷却ファン1の冷却能力の低減を実現することができる。
【0091】
また、作動油OHと同様に、外気の温度が低い等によりトランスミッション油OMの検出温度T3が下限閾値温度よりも低い場合には、油圧駆動冷却ファン1の冷却能力を最大限に低減させて、オイルクーラ210を介したトランスミッション油OMの過冷却を防止することができる。
【0092】
また、ファン用の油圧モータには、最低回転数があり、それよりも低い回転数で回転させることを確実に行うことはできない。そのため、最低回転数で回転させたとしても、冷却対象の過冷却が引き起こされるおそれがあった。これに対し、実施形態に係る油圧駆動冷却ファン制御システム(油圧駆動冷却ファンの制御方法)を用いることで、油圧駆動冷却ファン1の冷却能力のさらなる低減を図り、当該冷却対象の過冷却を防止することができる。
【0093】
上記説明から、当業者にとっては、本発明の多くの改良や他の実施形態が明らかである。従って、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本発明を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本発明の精神を逸脱することなく、その構造及び/又は機能の詳細を実質的に変更できる。