特許第6097558号(P6097558)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6097558-マーキングペン 図000004
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6097558
(24)【登録日】2017年2月24日
(45)【発行日】2017年3月15日
(54)【発明の名称】マーキングペン
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/16 20140101AFI20170306BHJP
   C09D 11/20 20060101ALN20170306BHJP
【FI】
   C09D11/16
   !C09D11/20
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-285676(P2012-285676)
(22)【出願日】2012年12月27日
(65)【公開番号】特開2014-125616(P2014-125616A)
(43)【公開日】2014年7月7日
【審査請求日】2015年12月1日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 展示日 平成24年11月12〜16日 展示会名 株式会社良品計画展示会 開催場所 株式会社良品計画 本社
(73)【特許権者】
【識別番号】000108328
【氏名又は名称】ゼブラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100145012
【弁理士】
【氏名又は名称】石坂 泰紀
(72)【発明者】
【氏名】辻本 麻友子
(72)【発明者】
【氏名】宇賀神 真
(72)【発明者】
【氏名】石田 原子
【審査官】 佐藤 貴浩
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−083267(JP,A)
【文献】 特開2003−034768(JP,A)
【文献】 特開2003−155434(JP,A)
【文献】 特開2006−225627(JP,A)
【文献】 特開2004−026926(JP,A)
【文献】 特開2003−277670(JP,A)
【文献】 国際公開第03/091037(WO,A1)
【文献】 特開2002−030235(JP,A)
【文献】 特開2007−084807(JP,A)
【文献】 特開2010−228405(JP,A)
【文献】 特開2006−263984(JP,A)
【文献】 特開2002−069340(JP,A)
【文献】 SB(スチレン・ブタジエン)ラテックスカタログ,JSR株式会社,2016年 9月 5日,URL,http://www.jsr.co.jp/pd/em_sb.shtml
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 11/00−13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維芯又はプラスチック芯からなるペン先と、インキ収容部とを備え、前記インキ収容部に水性インキ組成物が収容されている、マーキングペンであって、
前記水性インキ組成物は、スチレンブタジエンゴム粒子としてガラス転移温度が0〜50℃であるスチレンブタジエンゴム粒子のみを含むラテックスと、着色剤とを含有し、
前記着色剤は顔料であり、当該顔料の平均粒子径が50〜400nmである、マーキングペン
【請求項2】
前記スチレンブタジエンゴム粒子の含有量は、前記水性インキ組成物全量を基準として、15〜30質量%である、請求項1に記載のマーキングペン
【請求項3】
前記スチレンブタジエンゴム粒子の平均粒子径は100〜200nmである、請求項1又は2に記載のマーキングペン
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水性インキ組成物及びマーキングペンに関する。
【背景技術】
【0002】
蛍光マーカー等のマーキングペンの役割は、主として特定の狙いの箇所を目立たせることである。そのため、マーキングペンにおいて、発色性は筆記線の視認性を高めて狙いの箇所を目立たせるための重要な特性である。しかし、優れた発色性を示すマーキングペンでは、筆記線が筆記した紙面の裏側から意図せず視認される現象(裏写り)が生じやすいという問題があった。この裏写りの問題は、辞書等の薄い紙又は密度が低くインキが浸透しやすい紙上に筆記をした場合に顕著である。裏写りを軽減することを目指したマーキングペンとしては、たとえば、特許文献1及び2に記載の水性インキ組成物を用いたマーキングペンが挙げられる。ところが、裏写りがしにくいマーキングペンは、インキ排出量が抑えられていることが多く、発色の良さも抑えられてしまっている。したがって、これらのマーキングペンでは、裏写りの軽減又は発色性の少なくとも一方が不十分となりやすい。
【0003】
また、インキの粘度を上げた固形インキを備える固形蛍光マーカーも知られている。しかし、固形蛍光マーカーは、裏写りはしにくいものの、液状のインキを用いた蛍光マーカーと比べると発色性が劣り、また、狙いの箇所にマークしにくい、クレヨンのような筆記機構のため線幅のブレが大きいといった問題があり、蛍光マーカーの本来の役割を十分に果たすことができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−150331号公報
【特許文献2】特開2006−206640号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、紙面の裏写りを軽減しつつ筆記線の良好な発色性を得ることができ、更に、光沢感があって目立つ筆記線を描くことが可能な水性インキ組成物、及びそれを用いたマーキングペンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、スチレンブタジエンゴム粒子を含むラテックスと、着色剤とを含有し、上記スチレンブタジエンゴム粒子のガラス転移温度が0〜50℃である、水性インキ組成物を提供する。
【0007】
本発明の水性インキ組成物によれば、裏写りが生じにくく、優れた発色及び光沢を有する筆記線を形成することが可能なマーキングペンを得ることができる。
【0008】
上記スチレンブタジエンゴム粒子の含有量は、水性インキ組成物全量を基準として、15〜30質量%であることが好ましい。
【0009】
上記スチレンブタジエンゴム粒子の平均粒子径は100〜200nmであることが好ましい。
【0010】
本発明はまた、繊維芯又はプラスチック芯からなるペン先と、インキ収容部とを備え、上記水性インキ組成物がインキ収容部に収容されている、マーキングペンを提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、辞書のような薄い紙又は密度が低く浸透しやすい紙上に筆記しても、裏写りが生じにくく、かつ、優れた発色及び光沢を有する筆記線を形成することが可能なマーキングペン、及び水性インキ組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の一実施形態に係るマーキングペンの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、必要に応じて図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0014】
(水性インキ組成物)
本実施形態の水性インキ組成物は、スチレンブタジエンゴム粒子を含むラテックスと着色剤とを含有する。上記スチレンブタジエンゴム粒子のガラス転移温度は0〜50℃である。
【0015】
ラテックスは、スチレン及びブタジエン等のモノマーを水中で乳化重合することにより得られる合成ゴム粒子のエマルションである。上記ラテックスは、合成ゴムラテックスということもある。本実施形態において、ラテックスは合成ゴム粒子として上記スチレンブタジエンゴム粒子を含む。水性インキ組成物が上記ラテックスを含有することにより、水性インキ組成物中のスチレンブタジエンゴム粒子同士が筆記後に乾燥して融着し、平滑な膜を形成する。このため、本実施形態の水性インキ組成物を用いて得られた筆記線は光沢を有することとなる。また、水性インキ組成物が上記ラテックスを含有することにより、インキ組成物が筆記後に紙に浸透することを抑制することができる。そのため、良好な発色及び光沢を有しつつ裏写りを軽減することができる。本実施形態の水性インキ組成物によれば、上記光沢及び浸透抑制の効果を得ながら水性インキ組成物の粘度の過度な増加を抑えることができ、インキの粘度を低くする必要があるマーキングペン等にも適用可能となる。
【0016】
上記スチレンブタジエンゴム粒子は非着色粒子である。上記スチレンブタジエンゴム粒子のガラス転移温度(以下、Tgという)は0〜50℃である。スチレンブタジエンゴム粒子のTgが50℃以下であることにより、筆記線が乾燥する際のスチレンブタジエンゴム粒子同士の融着が起こりやすく、優れた光沢を有する筆記線を得ることが可能となる。また、スチレンブタジエンゴム粒子のTgが0℃以上であると、筆記線のべたつきの発生が抑制される傾向がある。上記スチレンブタジエンゴム粒子の上記Tgの上限値は、筆記線の光沢感をより増大させる観点から、40℃であることが好ましく、30℃であることがより好ましい。また、上記Tgの下限値は、筆記線のべたつきの観点から、10℃であることが好ましく、20℃であることがより好ましい。なお、本明細書において、Tgは示差走査熱量測定により求められる。
【0017】
スチレンブタジエンゴム粒子の平均粒子径は、10〜800nmであることが好ましく、50〜300nmであることがより好ましく、100〜200nmであることがさらに好ましい。スチレンブタジエンゴム粒子の平均粒子径が10nm以上であることにより、耐裏写り性と発色性の効果が十分得られる傾向がある。また、スチレンブタジエンゴム粒子の平均粒子径が800nm以下であることにより、経時安定性が向上し、インクが排出しやすくなる傾向がある。さらに、スチレンブタジエンゴム粒子の平均粒径が10〜800nmの範囲にあることにより、スチレンブタジエンゴム粒子が融着しやすく、筆記線の表面の平滑性が得られやすい傾向がある。なお、本明細書において、ラテックス中のポリマー粒子の平均粒子径は体積平均粒子径である。また、ラテックス中のポリマー粒子の平均粒子径は、たとえば、乾燥したポリマー粒子を透過型電子顕微鏡で写真撮影することにより求める方法(写真撮影法)、一定の濃度に希釈したラテックスの濁り度を測定することにより求める方法(濁度法)、ラテックスにレーザー光を照射し、ポリマー粒子のブラウン運動による散乱光のゆらぎを測定して、光子相関法で解析することにより求める方法(動的光散乱法)、ラテックスをキャピラリー中に流し、ポリマー粒子の粒子径によって生じるキャピラリー中での移動速度差から求める方法(CHDF法)等の、公知の方法により求められる。
【0018】
スチレンブタジエンゴム粒子の表面は平滑であることが好ましい。スチレンブタジエン粒子の表面が平滑であることにより、筆記線の表面に平滑性が出易く、高い光沢性が得られる傾向がある。
【0019】
スチレンブタジエンゴム粒子はスチレンとブタジエンとの共重合体(スチレンブタジエン共重合体)の粒子であり、スチレンに由来する共重合成分とブタジエンに由来する共重合成分とを有する。スチレンに由来する共重合成分の含有量は、スチレンブタジエン共重合体を構成する共重合成分全体を基準として、50〜85モル%であることが好ましく、60〜75モル%であることがより好ましい。スチレンブタジエン共重合体は、スチレン及びブタジエンに由来する共重合成分以外の別の共重合成分を有していてもよい。スチレンブタジエン共重合体の別の共重合成分としては、アクリロニトリル等に由来する共重合成分が挙げられる。スチレンブタジエン共重合体が上記別の共重合成分を有する場合、上記別の共重合成分の含有量は、1〜30モル%であることが好ましい。スチレンブタジエン共重合体は、ランダム共重合体であってもよく、ブロック共重合体であってもよく、グラフト共重合体であってもよい。また、スチレンブタジエン共重合体はカルボキシ変性されていてもよい。
【0020】
水性インキ組成物におけるスチレンブタジエンゴム粒子の含有量は、水性インキ組成物全量を基準として、10〜40質量%であることが好ましく、15〜30質量%であることがより好ましい。スチレンブタジエンゴム粒子の含有量が40質量%以下であることにより、インクの排出性がより向上する傾向がある。また、スチレンブタジエンゴム粒子の含有量が10質量%以上であることにより、耐裏写り性、発色性及び光沢性の効果が十分得られる傾向がある。
【0021】
着色剤は、顔料であることが好ましく、蛍光顔料であることがより好ましく、有機蛍光顔料であることが特に好ましい。有機蛍光顔料は樹脂粒子を蛍光染料で着色したものである。上記樹脂粒子としては、アクリル樹脂粒子、アクリロニトリルブタジエン樹脂粒子等が挙げられる。
【0022】
着色剤が顔料である場合、その平均粒子径(D50)は、一般的な方法で求められ、50〜400nmであることが好ましく、100〜300nmであることがより好ましい。顔料の平均粒子径が50nm以上であることにより、インク組成物の紙への浸透が抑制され、耐浦写り性、発色性及び光沢性の効果が向上する傾向がある。また、顔料の平均粒子径が400nm以下であることにより、経時安定性が低下し、ペン先からのインクの排出が困難となる傾向がある。
【0023】
水性インキ組成物における着色剤の含有量は、水性インキ組成物全量を基準として、3〜40質量%であることが好ましく、10〜30質量%であることがより好ましい。着色剤の含有量が40質量%以下であることにより、経時安定性が向上する傾向がある。また、着色剤の含有量が3質量%以上であることにより、発色性が向上する傾向がある。
【0024】
本実施形態に係る水性インキ組成物は、さらに、保湿剤、防腐剤、pH調整剤、及び表面張力調整剤等の添加剤を含んでいてもよい。上記保湿剤としては、グリセリン、プロピレングリコール、エチレングリコール、及びジエチレングリコール等が挙げられる。
【0025】
水性インキ組成物の粘度は、5〜50mPa・sであることが好ましい。特に、本実施形態に係る水性インキ組成物をマーキングペンに用いる場合には、水性インキ組成物の粘度は、5〜20mPa・sであることが好ましい。
【0026】
(水性インキ組成物の製造方法)
本実施形態の水性インキ組成物は、上記スチレンブタジエンゴム粒子を含むラテックス、上記着色剤、及び他の添加剤を混合することにより得られる。スチレンブタジエンゴム粒子を含むラテックス、着色剤、及び他の添加剤の混合方法は特に制限されない。ただし、後述するように、着色剤として顔料の水分散液を使用する場合には、顔料の水分散液を導入した後に、スチレンブタジエンゴム粒子を含むラテックス及びその他の添加剤を加え、これらを混合することが好ましい。最初に顔料の水分散液を導入することにより、顔料の分散性及び分散安定性がより向上する傾向がある。
【0027】
水性インキ組成物を製造する際に使用するラテックスの不揮発分は35〜65質量%であることが好ましい。ラテックスの不揮発分が65質量%以下であることにより、経時安定性が維持できる傾向がある。また、ラテックスの不揮発分が35質量%以上であることにより、水性インキ組成物の紙への浸透を抑え、耐裏写り性及び発色性を維持できる傾向がある。ラテックスの粘度は30〜300mPa・sであることが好ましい。ラテックスの粘度が300mPa・s以下であることにより、水性インキ組成物全体の粘度を低く抑える傾向がある。また、ラテックスの粘度が30mPa・s以上であることにより、水性インキ組成物の紙への浸透を抑え、耐裏写り性および発色性を維持できる傾向がある。
【0028】
水性インキ組成物を製造する際に、着色剤は、顔料の水分散液として使用することが好ましい。上記水分散液の不揮発分は20〜50質量%であることが好ましい。水分散液の不揮発分が20質量%以上であることにより、発色性が向上する傾向がある。また、水分散液の不揮発分が50質量%以下であることにより、経時安定性が向上する傾向があり、また、着色剤が蛍光顔料である場合に、十分な蛍光性が得られる傾向がある。
【0029】
(マーキングペン)
本実施形態のマーキングペンは、繊維芯又はプラスチック芯からなるペン先と、インキ収容部とを備え、上記水性インキ組成物が上記インキ収容部に収容されている。
【0030】
図1は本発明の一実施形態に係るマーキングペンの断面図である。図1のマーキングペン10は直液式であるが、本発明のマーキングペンは中綿式であってもよい。マーキングペン10は、インキ収容部1、バルブ2、ペン先3、軸体4、及びキャップ(図示しない)を備える。マーキングペン10においては、軸体4内部の空隙がインキ収容部1となっており、このインキ収容部1に水性インキ組成物5が収容される。なお、軸体4とは別に、軸体4内部に円筒状の中軸を設け、その中軸内部の空隙をインキ収容部1としてもよい。インキ収容部1とペン先3はバルブ2を介して接続されており、インキ収容部1中の水性インキ組成物5はバルブ2を介してペン先3に供給される。
【0031】
ペン先3は、一般的なマーキングペンのペン先であり、水性インキ組成物5を供給できるような繊維芯又はプラスチック芯で形成されている。マーキングペン10において、ペン先3の先端形状は、軸体4の中心線に対して傾斜した傾斜面を有するチゼル形状となっている。ペン先3の上記傾斜面が紙面と接触することで筆記線を描くことができる。このとき、上記傾斜面の長手方向の長さが筆記線の線幅となる。上記傾斜面の長手方向の長さは、マーキングのし易さの観点から、2mm以上であることが好ましく、2〜5mmであることがより好ましい。なお、マーキングペン10において、ペン先3の先端形状はチゼル形状に限定されず、砲弾形状、筆ペン形状等であってもよい。
【0032】
バルブ2、軸体4及びキャップを構成する材料、又は形状は特に制限されず、一般的なものが適宜用いられる。
【実施例】
【0033】
以下に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。
【0034】
[水性インキ組成物の調製]
(実施例1)
スチレンブタジエンゴム粒子を含むラテックスとして、カルボキシ変性スチレンブタジエン系ラテックス(日本エイアンドエル株式会社製、商品名:ナルスターSR−100、不揮発分:51質量%、粘度:150mPa・s、スチレンブタジエンゴム粒子のTg:27℃、スチレンブタジエンゴム粒子の平均粒子径:180nm)50.0質量部、有機蛍光顔料(着色剤)として、着色アクリル樹脂エマルション(日本蛍光化学株式会社製、商品名:NKW3205、不揮発分:37質量%、)29.8質量部、保湿剤として、グリセリン(日油株式会社製)20.0質量部、防腐剤(日本エンバイロケミカルズ株式会社製、商品名:スラウト99N)0.2質量部を混合し、水性インキ組成物を得た。ここで、スチレンブタジエンゴム粒子の上記平均粒子径は濁度法で求められた粒子径である。
【0035】
(実施例2〜4及び比較例1〜3)
混合する材料の種類、及び量(質量部)を下記表1に示すとおりに変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例2〜4及び比較例1〜3の水性インキ組成物を得た。
【0036】
実施例1〜4及び比較例1〜3の水性インキ組成物の組成、水性インキ組成物全量を基準とした非着色粒子の含有量、及び水性インキ組成物の粘度をまとめて表1に示す。なお、水性インキ組成物の粘度は下記条件での測定値である。
【0037】
<粘度測定条件>
装置: 回転粘度計
温度: 25℃
回転数: 12rpm(せん断速度:90s−1
【0038】
【表1】
【0039】
なお、表1中の商品名の特性は下記のとおりである。
ナルスターSR−100:非着色粒子としてカルボキシ変性スチレンブタジエンゴム粒子を含むラテックス、日本エイアンドエル株式会社製、不揮発分51質量%、粘度150mPa・s、スチレンブタジエンゴム粒子のTg27℃、スチレンブタジエンゴム粒子の平均粒子径180nm
ナルスターSR−102:非着色粒子としてカルボキシ変性スチレンブタジエンゴム粒子を含むラテックス、日本エイアンドエル株式会社製、不揮発分48質量%、粘度70mPa・s、スチレンブタジエンゴム粒子のTg21℃、スチレンブタジエンゴム粒子の平均粒子径200nm
Nipol1571H:非着色粒子としてカルボキシ変性アクリロニトリルブタジエンゴム粒子を含むラテックス、日本ゼオン株式会社製、不揮発分40質量%、粘度15mPa・s、アクリロニトリルブタジエンゴム粒子のTg−8℃、アクリロニトリルブタジエンゴム粒子の平均粒子径120nm
Nipol1571CL:非着色粒子としてアクリロニトリルブタジエンゴム粒子を含むラテックス、日本ゼオン株式会社製、不揮発分38質量%、粘度12mPa・s、アクリロニトリルブタジエンゴム粒子のTg−11℃、アクリロニトリルブタジエンゴム粒子の平均粒子径100nm
NKW3205:アクリル樹脂系着色粒子(黄色)を含む水分散型蛍光顔料、日本蛍光化学株式会社製、不揮発分37質量%、アクリル樹脂系着色粒子の平均粒子径100nm
SF−3015N:アクリル樹脂系着色粒子(黄色)を含む水分散型蛍光顔料、シンロイヒ株式会社製、不揮発分40質量%、アクリル樹脂系着色粒子の平均粒子径100nm
スラウト99N:含窒素硫黄系化合物、日本エンバイロケミカルズ株式会社製
【0040】
[水性インキ組成物の評価]
図1に示した構造を有するマーキングペンのインキ収容部に、実施例1〜4及び比較例1〜3で得られた各水性インキ組成物を充填し、ペン先に水性インキ組成物を染み込ませた。ペン先にはチゼル形状のポリエステル繊維芯を用いた。得られた蛍光マーキングペンを用いて、後述の評価を行った。なお、実施例1で得られた水性インキ組成物の評価は、実施例1で得られた各水性インキ組成物と、上記各水性インキ組成物中のNKW3205(黄色)を、それぞれNKW3207ZE(桃色)、NKW3204ZE(橙色)、NKW3208ZE(青色)、及びNKW3202ZE(緑色)に変えた水性インキ組成物とを併せた、合計5種類の水性インキ組成物に対して行った。実施例2〜3及び比較例1〜3で得られた水性インキ組成物の評価も、実施例1と同様に合計5種類の水性インキ組成物に対して行った。また、実施例4で得られた水性インキ組成物の評価は、実施例4で得られた水性インキ組成物と、上記水性インキ組成物中のSF−3015N(黄色)を、SF3017N(桃色)、SF−3014N(橙色)、及びSF−3022(緑色)に変えた水性インキ組成物とを併せた、合計4種類の水性インキ組成物に対して行った。水性インキ組成物の評価結果を表2に示す。表2の評価結果は、上記5種類又は4種類の水性インキ組成物すべてに対する総合評価結果である。
【0041】
(耐裏写り性)
実施例1〜4及び比較例1〜3で得られた水性インキ組成物を用いた蛍光マーキングペンで、厚さ100μmの紙面に、7cm/秒で筆記を行った。筆記した上記紙面の裏面から筆記線を下記基準に従って視認し、耐裏写り性を評価した。
A:裏面から筆記線を視認できない。
B:裏面から筆記線をやや視認できる。
C:裏面から筆記線が視認できる。
【0042】
(発色性)
実施例1〜4及び比較例1〜3で得られた水性インキ組成物を用いた蛍光マーキングペンで、上質紙面に筆記を行った。上記紙面上の筆記線の濃度を視認し、下記基準に従って発色性を評価した。
A:筆記線の濃度が高く、発色性に優れる。
B:A評価に比べると筆記線の濃度がやや低く、発色性にやや劣る。
C:筆記線の濃度が低く、発色性に劣る。
【0043】
(光沢感)
実施例1〜4及び比較例1〜3で得られた水性インキ組成物を用いた蛍光マーキングペンで、上質紙面に筆記を行った。上記紙面上の筆記線を視認し、下記基準に従って光沢感を評価した。
A:筆記線に顕著な光沢があり、目立つ。
B:筆記線に光沢があるが、A評価に比べるとやや劣る。
C:筆記線にほとんど光沢がない。
【0044】
(定着性)
実施例1〜4及び比較例1〜3で得られた水性インキ組成物を用いた蛍光マーキングペンで、上質紙面に筆記を行った。筆記線の紙面への定着性を評価するために、紙面上の筆記線が消しゴムで消去されないかどうかを、下記基準に従って評価した。
A:筆記線が消去できず、定着性に優れる。
B:筆記線がわずかに消去でき、A評価に比べると定着性がやや劣る。
C:筆記線が消去でき、定着性が劣る。
【0045】
【表2】
【0046】
表2の評価結果から、実施例1〜4で得られる水性インキ組成物は、耐裏写り性と発色性という相反する特性を両立することができ、さらに、光沢感があって目立つ筆記線を描くことができることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明に係る水性インキ組成物は、筆記用具、マーキング用具、及びインキジェット等の印字用具に適用され、特にマーキングペンに好適に適用される。
【符号の説明】
【0048】
1・・・インキ収容部、2・・・バルブ、3・・・ペン先、4・・・軸体、5・・・水性インキ組成物、10・・・マーキングペン。
図1