特許第6097561号(P6097561)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エスペイエクス エペイヴィ デンマーク アクティーゼルスカブの特許一覧

<>
  • 特許6097561-食品加熱処理装置及び食品加熱処理方法 図000002
  • 特許6097561-食品加熱処理装置及び食品加熱処理方法 図000003
  • 特許6097561-食品加熱処理装置及び食品加熱処理方法 図000004
  • 特許6097561-食品加熱処理装置及び食品加熱処理方法 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6097561
(24)【登録日】2017年2月24日
(45)【発行日】2017年3月15日
(54)【発明の名称】食品加熱処理装置及び食品加熱処理方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 3/22 20060101AFI20170306BHJP
【FI】
   A23L3/22
【請求項の数】6
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-512260(P2012-512260)
(86)(22)【出願日】2010年5月28日
(65)【公表番号】特表2012-527869(P2012-527869A)
(43)【公表日】2012年11月12日
(86)【国際出願番号】EP2010003279
(87)【国際公開番号】WO2010136217
(87)【国際公開日】20101202
【審査請求日】2013年4月30日
【審判番号】不服2015-15317(P2015-15317/J1)
【審判請求日】2015年8月17日
(31)【優先権主張番号】09007154.9
(32)【優先日】2009年5月28日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】511287938
【氏名又は名称】エスペイエクス エペイヴィ デンマーク アクティーゼルスカブ
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103609
【弁理士】
【氏名又は名称】井野 砂里
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(72)【発明者】
【氏名】ポールセン オレ
(72)【発明者】
【氏名】シューベルト ヴォルフガング
【合議体】
【審判長】 田村 嘉章
【審判官】 大山 広人
【審判官】 窪田 治彦
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第99/21442(WO,A1)
【文献】 特開2003−289838(JP,A)
【文献】 特開2008−121937(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱に敏感な流体食品を加熱処理するための食品加熱処理装置であって、該食品加熱処理装置は、
前記食品を供給するための入口と、
加熱処理済み食品を排出するための排出口と、
前記入口と流体連通している加熱注入装置と、
前記加熱注入装置の下流側に設けられ、少なくとも前記加熱注入装置及び前記入口と流体連通しているローブポンプである保持装置と、
前記ローブポンプである保持装置の少なくとも一部の下流側に設けられ、少なくとも前記ローブポンプである保持装置及び前記排出口と流体連通している背圧装置と、
前記背圧装置に取り付けられた冷却用装置と、を含み、
前記入口は、熱に敏感な流体食品を受け入れ、前記加熱注入装置は、前記ローブポンプである保持装置の上流側で熱に敏感な流体食品を加熱し、
前記ローブポンプである保持装置は、前記加熱注入装置から熱に敏感な流体食品を受け入れ、前記ローブポンプが作動し、前記ローブポンプは、該ローブポンプの作動に対応する時間、熱に敏感な流体食品を保持し、前記ローブポンプの作動は、前記ローブポンプが熱に敏感な液体食品を前記背圧装置に移動させ、それによって、前記ローブポンプである保持装置から熱に敏感な流体食品を排出することを含み、
前記ローブポンプである保持装置は、熱交換器を含み、
前記背圧装置は、容積式ポンプ装置を含む、食品加熱処理装置。
【請求項2】
前記冷却用装置は、
冷却剤入口と、
冷却剤排出口と、
前記冷却剤入口及び前記冷却剤排出口と流体連通している流体通路と、を含み、
前記流体通路は、前記背圧装置を取り囲み、前記背圧装置は、前記流体通路中の冷却剤によって冷却される、請求項1に記載の食品加熱処理装置。
【請求項3】
前記ローブポンプである保持装置の下流側かつ前記背圧装置の上流側で、前記ローブポンプである保持装置及び前記背圧装置と流体連通している接続手段をさらに含む、請求項1に記載の食品加熱処理装置。
【請求項4】
前記背圧装置は、バルブを含む、請求項1に記載の食品加熱処理装置。
【請求項5】
前記冷却用装置は、流体通路を含み、
前記背圧装置は、バルブを含み、
前記流体通路は、前記冷却用装置及び前記バルブが、冷却されるバルブを提供するように前記バルブに対して位置決めされている、請求項1に記載の食品加熱処理装置。
【請求項6】
前記背圧装置は、前記ローブポンプである保持装置の出口内に組み込まれている、請求項1に記載の食品加熱処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前文に記載の食品加熱処理装置、及び請求項12の前文に記載の食品を加熱処理する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
請求項1の前文に記載の食品加熱処理装置は、欧州特許第0794706号から公知であり、該特許の内容全体は引用により本明細書に組み入れられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】欧州特許第0794706号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
既知の装置では、食品の殺菌を行うために、短時間で食品を高温処理することができる。しかしながら、食品を加熱処理する時間は、わずかに変動することがある。このため、十分な殺菌を確実にするために、保持時間をわずかに延長する必要がある。
【0005】
従って、本発明の目的は、保持時間を最短化することができる請求項1の前文に記載の食品加熱処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の目的は、請求項1の特徴に基づく食品加熱処理装置、及び請求項12の特徴に基づく方法によって達成される。従属請求項には、本発明の好ましい実施形態を開示する。
【0007】
本発明の実施形態によれば、濃縮乳清たんぱく質、離乳食及びチーズミルクなどの熱に敏感な流体食品を加熱処理するための食品加熱処理装置が提供され、この装置は、食品を供給するための入口と、加熱処理済み食品を排出するための排出口と、食品を特定の時間にわたって特定の温度で保持するための、入口の下流の保持装置と、保持装置の下流の背圧装置とを備え、背圧装置(24)は冷却されたバルブであり、及び/又は保持装置(23)は、容積移送式保持装置及び/又は時限装置及び/又は自己洗浄式保持装置である。
【0008】
本発明は、食品加熱処理装置に関するものであるため、冷却されたバルブという用語を、バルブを通過する加熱処理済み食品によってバルブが冷却されると解釈することはできない。むしろ、「冷却されたバルブ」という用語は、このバルブが、バルブを外部から冷却する手段を有すると理解すべきである。例えば、冷却されたバルブ内に設けられた冷却路に冷却液を通すことができる。これとは別に、及び/又はこれに加えて、バルブを外部から冷却するその他の手段を提供することもできる。加熱処理済み食品が通過する他の冷却装置についても同様であり、すなわちこのような冷却装置は、加熱処理済み食品によって冷却されるのではなく、外部の冷却手段によって冷却される。換言すれば、冷却されたバルブ(cooled valve)は、冷却バルブ(cooling valve)又は外部より冷却されたバルブ(externally cooled valve)として示すこともできる。同様に、冷却装置(cooled device)は、冷却用装置(cooling device)又は外部より冷却された装置(externally cooled device)として示すことができる。
【0009】
背圧装置を保持装置の下流に設けることにより、保持装置は、保持装置の入口における圧力が保持装置の排出口における圧力と一致することに起因して保持装置の圧力低下を回避することができ、又は少なくとも原則的に抑えることができるという利点を有する。従って、食品が、保持装置を通る通常の移動経路を迂回していずれかの狭い通路又は間隙を擦り抜けることを原則的に、又はほぼ完全に、或いは事実上完全に無くすことができる。通常の移動経路を迂回する食品の保持時間は、通常の移動経路を通過する食品の保持時間よりも短くなる。通常の移動経路を迂回する食品が相当量存在する場合、全ての食品が十分に加熱処理されることを確実にするために、全ての食品の保持時間を延長する必要がある。従って、本発明の実施形態によれば、保持装置に圧力差が存在しないことにより、保持時間を最短化することができる。
【0010】
意図する短い時間にわたって加熱処理した後に食品が保持装置を離れようとする時点で食品を冷却するために、背圧装置を冷却することが好ましい。食品を冷却すると、加熱された食材が背圧装置の内面上を覆って付着する問題が低減されるという利点がある。
【0011】
好ましい実施形態によれば、保持装置がローブポンプである。食品が保持装置を通して容積移送されるので、食品を保持装置内で加熱処理する時間を非常に高い精度で決定することができる。また、迂回路が存在しないので、食品全部が確実に保持装置を通過しなければならなくなる。従って、不完全な殺菌というリスクを伴わずに保持時間を最短化することができる。
【0012】
本発明によれば、背圧装置を冷却背圧装置とするのがよい。
【0013】
本発明によれば、冷却背圧装置を、バルブ、ベンチュリ管、オリフィス又は同等の手段などの、圧力低下を引き起こすあらゆる冷却装置とすることができる。
【0014】
本発明によれば、保持装置を、ローブポンプ、及び/又は確動ポンプ(positive pump)、及び/又は容積式ポンプ(positive displacement pump)とすることができ、或いは保持装置がこれらのポンプを含んでもよい。
【0015】
本発明によれば、保持装置をパイプとすることができ、或いは保持装置がパイプを含んでもよい。
【0016】
本発明によれば、保持装置を熱交換器とすることができ、或いは保持装置が熱交換器を含んでもよい。
【0017】
本発明によれば、熱交換器をかき取り面型熱交換器とすることができ、このかき取り面型熱交換器を多管式熱交換器とすることができ、又はこのかき取り面型熱交換器が多管式熱交換器を含んでもよい。或いは、熱交換器は、その他の形状を有してもよい。
【0018】
本発明によれば、保持装置をスクリュー型移送ポンプとすることができ、或いは保持装置がスクリュー型移送ポンプを含んでもよい。
【0019】
本発明によれば、スクリュー型移送ポンプを、押出機又は同等の手段とすることができる。
【0020】
本発明によれば、背圧装置をバルブとすることができ、或いは背圧装置がバルブを含んでもよい。
【0021】
本発明によれば、このバルブを背圧バルブとすることができる。
【0022】
本発明によれば、背圧装置を冷却されるバルブとすることができ、或いは背圧装置が冷却されるバルブを含んでもよい。
【0023】
本発明によれば、バルブのハウジングを冷却し、及び/又はバルブコーンを冷却し、及び/又はバルブの軸を冷却し、及び/又はバルブの台座を冷却するのがよい。
【0024】
本発明によれば、バルブを背圧バルブとすることができる。
【0025】
本発明によれば、背圧装置を容積式ポンプ装置とすることができ、或いは背圧装置が容積式ポンプ装置を含んでもよい。
【0026】
本発明によれば、背圧装置を、例えばギアポンプなどの容積式ポンプとすることができる。本発明によれば、ポンプのハウジングを冷却するのがよい。
【0027】
本発明によれば、背圧装置が保持装置のすぐ下流に存在するのがよく、及び/又は背圧装置を保持装置の排出口に組み込むことができる。
【0028】
本発明によれば、保持装置と背圧装置の間に接続部又はパイプを設けるのがよい。
【0029】
本発明によれば、食品加熱処理装置が、保持装置の上流に注入加熱装置をさらに含むのがよい。
【0030】
本発明によれば、注入加熱装置を保持装置に、好ましくは保持装置の入口に組み込むのがよい。
【0031】
好ましい実施形態によれば、排出口に冷却バルブを組み込んだローブポンプを有する背圧装置が開示される。
【0032】
本発明によれば、濃縮乳清たんぱく質、離乳食及びチーズミルクなどの熱に敏感な流体食品を加熱処理するための方法が提供され、この方法は、
(a)食品を入口(21)に供給するステップと、
(b)食品を保持装置内に特定の時間にわたって特定の温度で保持することにより食品を加熱処理するステップと、
(c)保持装置の下流に背圧装置を設けるステップと、
(d)加熱処理済み食品を排出口(22)を通じて排出するステップと、
を含み、背圧装置は冷却されるバルブであり、又は冷却されるバルブを含み、及び/又は食品が保持装置を通して容積移送される。
【0033】
本発明の方法は、保持装置内の圧力低下が実質的に排除されるという利点を有する。
【0034】
従って、保持装置内の保持時間を最短化することができる。
【0035】
本発明によれば、背圧装置を冷却するのがよい。この冷却は、更に、処理済み食材が内面に付着することを排除し、好ましくは回避できるという利点を有する。
【0036】
本発明によれば、食品を保持装置に供給する前に及び/又は供給時に、食品に蒸気を注入するのがよい。
【0037】
本発明によれば、上述したような本発明による装置を使用して、本発明の方法を実施することができる。
【0038】
以下の参照番号を使用する図面を参照しながら本発明についてさらに詳述する。
21 食品入口
22 食品排出口
23 保持装置
24 背圧装置
25 冷却用装置
26 冷却剤入口
27 冷却剤排出口
28 処理の流れ方向
29 接続手段
30 注入加熱装置
【0039】
本発明の好ましい実施形態を添付図面に示す。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】本発明の実施形態による食品加熱処理装置の概略図である。
図2】本発明の別の実施形態による食品加熱処理装置の概略図である。
図3】本発明の別の実施形態による食品加熱処理装置の概略図である。
図4】本発明の別の実施形態による食品加熱処理装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
図1は、本発明の第1の実施形態による、濃縮乳清たんぱく質、離乳食及びチーズミルクなどの熱に敏感な流体食品を加熱処理するための食品加熱処理装置の概略図である。
【0042】
この食品加熱処理装置は、食品加熱処理装置内に食品を供給するための食品入口21と、加熱処理済み食品を排出するための食品排出口22と、食品を特定の時間にわたって特定の温度で保持するための、食品入口21の下流の保持装置23と、保持装置23の下流に位置する背圧装置24とを含む。
【0043】
加熱処理済み食品の焼き焦げ及び膨張が低減され、好ましくは回避されるように、背圧装置24を冷却するための冷却用装置25を設ける。冷却用装置は、冷却剤入口26及び冷却剤排出口27を備える。
【0044】
図の上部の矢印は、処理の流れ方向28を示す。
【0045】
保持装置23は、容積移送式保持装置、及び/又は時限装置、及び/又は自己洗浄式保持装置である。
【0046】
保持装置は、ローブポンプであることが好ましい。保持装置23を、当業者に公知のいずれかの種類の確動ポンプ、容積式ポンプとすることができ、又は保持装置23がこれらのポンプを含んでもよい。保持装置23をパイプとすることもでき、又は保持装置23がパイプを含んでもよい。保持装置を、保持装置23内の一定の加熱処理温度を維持する熱交換器とすることもでき、又は保持装置がこのような熱交換器を含むこともできる。保持装置を、押出機などのスクリュー型移送ポンプとすることもでき、又は保持装置がこのようなポンプを含んでもよい。本発明によれば、保持装置内における食品の特定の保持時間を提供するあらゆる保持装置を使用することができる。
【0047】
背圧装置24は、冷却されるバルブであることが好ましい。バルブの冷却は、バルブのハウジング、及び/又はバルブコーン、及び/又はバルブの軸を冷却する形で行うのがよい。このような冷却されるバルブは当業者に公知であり、これを例えばローブと統合することは、当業者の技術及び知識の範囲内である。
【0048】
本発明によれば、背圧装置24を、保持装置の圧力低下を回避し、及び/又は少なくとも原則的に圧力低下を低減できるように背圧装置の圧力低下を引き起こすあらゆる好ましい冷却装置とすることができる。例えば、背圧装置を、バルブ、ベンチュリ管、オリフィス、又はより小さな断面直径の管と同様の手段などとすることができる。背圧装置24を容積移送式ポンプとすることもでき、又は背圧装置24が容積移送式ポンプを含んでもよい。
【0049】
好ましい実施形態によれば、背圧装置24が、保持装置23の排出口に組み込まれる。保持装置23がローブポンプであり、背圧装置24が好ましくは冷却バルブであることが好ましい。
【0050】
図2図4に、本発明の変形実施形態の概略図を示す。同じ又は同様の部分は同じ参照番号で示している。説明は、図1の実施形態のものを参照する。以下では、図1の実施形態との差異についてのみ説明する。
【0051】
図2の概略図による実施形態では、背圧装置24が保持装置に組み込まれず、すなわち保持装置の直後に続くが、接続手段29によって接続される。
【0052】
図3の概略図による実施形態では、保持装置23に瞬間注入装置が設けられる。この瞬間注入装置では、保持装置内で特定の時間にわたって食品を保つべき所望の温度まで食品を瞬時に加熱するために、食品に熱蒸気が注入される。図4の概略図による実施形態は、図2及び図3の実施形態の組み合わせに対応し、すなわち接続手段29及び瞬間注入加熱装置30が設けられる。
【0053】
食品を加熱するための他のあらゆる加熱手段を使用することができる。例えば、熱交換器を使用して、保持装置のハウジングを加熱することができる。
【符号の説明】
【0054】
21 食品入口
22 食品排出口
23 保持装置
24 背圧装置
25 冷却用装置
26 冷却剤入口
27 冷却剤排出口
28 処理の流れ方向
図1
図2
図3
図4