(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記レンズ部をズームレンズで構成し、前記携帯装置側は、前記入力装置に画像の拡大又は縮小に関する前記画像条件の変更の指示が入力されたとき、前記ズームレンズの撮像倍率を調整する撮像制御部をさらに含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の医療用撮影システム。
前記モニターに表示されている画像から特定の領域が指定されたとき、前記DSPは、前記特定の領域を切り出して、前記切り出した領域を前記画像のサイズに拡大処理した画像の前記映像信号を生成することを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の医療用撮影システム。
前記携帯装置側は、音声入力装置をさらに備えて、前記DSPは、前記映像信号と共に、前記音声入力装置からの信号を処理して音声信号を生成し、前記モニターは前記映像信号及び前記音声信号を再生することを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の医療用撮影システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、撮像装置のズームや画像を鮮明にするなどの画像調整を行う場合に、ヘッドバンドや双眼ルーペを利用して施術を行うオペレーターの身体に撮像装置を取り付ける医療用撮影装置においては、施術の作業中でそのときに映し出されている画像を目視できない状況下にあるオペレーターは、補助者からの指示に従って調整せざるを得ない。しかし、施術の作業中のオペレーターにとってこの操作は非常に煩わしい行為であり、オペレーターの施術に対する集中を阻害し、施術に悪影響を及ぼすことになる。
【0007】
上記課題に鑑みて、施術対象部の画像の画像条件を遠隔操作で調整可能な医療用撮影システムの提供を目的としている。そして、医療施術作業の実情に即して、作業の様子を高解像度で撮影可能な医療用撮影システムの提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、医療施術時にオペレーターの身体に装着される携帯装置側と、前記携帯装置側で撮像された画像を表示する管理装置側とを備える医療用撮影システムであって、前記携帯装置側は、医療施術の対象部を撮影するレンズ部と、前記レンズ部を通しての前記対象部の画像をデジタル信号に光電変換する撮像素子と、前記撮像素子からの信号を処理して前記管理装置側に送信する映像信号を生成するデジタル・シグナル・プロセッサー(DSP)と、
前記対象部に光を照射するLED素子によって構成される照光部と、前記LED素子への駆動電流の供給量を制御する制御装置と、を備え、前記管理装置側は、
前記携帯装置側から送信される前記映像信号から画像を表示するモニターと、前記映像信号を記録する情報記録装置と、前記モニターに表示されている画像
の露出を修正するために
前記照光部の光量の調整を指示する入力装置と、を備え、
前記制御装置は、前記入力装置から前記光量の修正の指示があると、前記駆動電流の供給量を調整する医療用撮影システムを提供するものである。
【0009】
前記メモリには、前記画像条件として画像のコントラスト、輝度、ホワイト・バランスの少なくとも一つに関する前記基準値が設定されている。
【0010】
また、前記レンズ部はズームレンズであり、前記音声認識装置が画像の拡大又は縮小に関する前記特定の入力音声による指示であることを認識したときに前記レンズ部の撮像倍率を調整する撮像制御部をさらに含む。
【0011】
一方、前記モニターに表示されている画像から特定の領域が指定されたとき、前記DSPは、前記特定の領域を切り出して、前記切り出した領域を前記画像のサイズに拡大処理した画像の前記映像信号を生成する。これにより、施術中におけるオペレーターの視線の位置と撮像装置が捉える画像のズレを解消することができる。
【0012】
前記携帯装置側は、音声入力装置をさらに備えて、前記DSPは、前記映像信号と共に、前記音声入力装置からの信号を処理して音声信号を生成し、前記モニターは前記映像信号及び前記音声信号を再生する。同時に、前記映像信号及び前記音声信号を情報記録装置に記録しておくとよい。
【0013】
また、前記携帯装置側は、前記対象部に光を照射するLED素子により構成された照光部をさらに備え、前記照光部は、前記レンズ部及び前記撮像素子と同じ又は別々にオペレーターの身体に着用される。このとき、前記制御装置は、前記特定の入力音声の指示に沿って前記照光部への供給電流を制御することで、スイッチ操作を行わずに照光のオン・オフ及び調光を行うことができる。このとき、前記照光部と前記レンズ部とは、オペレーターが顔面に着用する双眼ルーペ又は頭部に被る帽子又はヘッドバンドで保持するとよい。
【0014】
そして、前記DSPからの前記映像信号及び前記音声信号を、前記モニターと前記情報記録装置の動作を制御する管理側制御装置に無線によって送信する構成とすることで、オペレーターが管理側とが伝送信号線で繋ぐ必要が無く、オペレーターによる施術による動作が規制されることがない。
【0015】
また、前記DSPからの前記映像信号及び前記音声信号を無線LANによりインターネット上に配信することで、施術の現場以外からもリアルタイムで施術の様子を確認することができる。
【0017】
そして、前記携帯装置側は、加速度センサーをさらに備えて、前記加速度センサーが加速度を検知したとき、前記制御装置は前記駆動電流の供給量を修正させると共に、前記撮像制御部は前記シャッタースピードを調整する制御を行う。よって、撮像装置が動いて画像への「手ブレ」の影響が生じたときは、前記制御装置が駆動電流の供給量を増大させると共に、前記撮像制御部が前記シャッタースピードを
速めることで「手ブレ」が防止される。
【発明の効果】
【0018】
本発明による医療用撮影システムによれば、医療施術中で撮影画像を確認できないオペレーターに代わって、補助者がモニターに表示された表示画像を確認しながら画像条件の変更をリアルタイムで指示することができる。よって、施術の関係者が最適化した画像で施術状況を確認しつつ、記録として保存することができるために、医療施術に有効な医療用撮影システムを提供し得る。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の最適な実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明に係る医療用撮影システムの概略構成をブロック図によって示すもので、携帯装置側100と管理装置側200とから構成されて、両者は携帯装置側I/F14と管理装置側I/F15間で信号を授受する。
【0021】
携帯装置側100の構成を説明する。撮像装置1は、デジタル・スチル・カメラまたはデジタル・ビデオ・カメラであり、レンズ部2と、レンズ部2を通しての撮影対象部の画像をデジタル信号に光電変換するCCDやCMOSによる撮像素子3と、予め設定される画像のホワイト・バランスやコントラストの画質条件の基準値を記憶しているメモリ4と、撮像素子3からの出力信号から映像信号を生成するデジタル・シグナル・プロセッサー(DSP)5と、レンズ部2の絞りを制御する撮像制御部6と、加速度センサー19と、を備えている。この加速度センサー19については後に詳述する。
【0022】
撮像装置1において、DSP5は、メモリ4に記憶されている基準値を基にして撮像素子3からの出力信号を処理して、予め設定されたホワイト・バランス、コントラスト及び輝度などの画質条件を満足する画像を再生するためのスチル画像又はビデオ画像の映像信号を生成する。
【0023】
音声入力装置7は、オペレーターが音声入力するマイクロフォンを含み、DSP5は、上記した映像信号と共に、マイクロフォンに発声される音声から音声信号を生成する。音声入力装置7は、オペレーターが施術について音声で説明するのに利用される。そして、DSP5は、生成した映像信号及び音声信号をI/F14から伝送経路Lを介してI/F15に伝送する。本実施形態においては、この伝送をRF接続の無線通信によって行い、DSP5からの映像信号及び音声信号は、I/F14によってRF変調されて送信され、I/F15は受信した映像信号及び音声信号を復調する。
【0024】
照光部9は、LED素子によって構成されており、オペレーターが医療施術中に施術対象部を照射するためにオペレーターの身体に装着される。そして、照光部9は、電流駆動回路10を通してバッテリー電源11から電流がLED素子に供給されると発光する。電流駆動回路10は、LED素子のオン・オフと共に通電する電流量を制御することで発光量を調整して調光を行うことができる。
【0025】
本実施形態では、施術時におけるオペレーターの音声を集音する音声入力装置7のマイクロフォンを利用して、音声により照光部9のオン・オフ及び発光量を調整可能にしている。よって、音声認識装置8には、主にオペレーターが発声する照光部9での照光に関する数種類程度の入力音声の音声パターンが登録されており、これについての具体的な説明は後述する。
【0026】
次に管理装置側200について説明する。管理装置側200は、管理側制御装置13と、モニター16と、ディスク記録装置などの情報記録装置17と、入力装置18とを含むパーソナル・コンピュータによって構成されている。管理側制御装置13は、I/F15に伝送されて復調された映像信号と音声信号とをモニター16で再生する。したがって、モニター16は、映像装置1がデジタル・スチル・カメラまたはデジタル・ビデオ・カメラであるかに応じて、スチル画像又はビデオ画像を再生する。同時に、管理側制御装置13は、情報記録装置17を制御して送られてくるこの映像信号及び音声信号を記録する。
【0027】
前述したように、画像のホワイト・バランス、コントラスト及び輝度などの画像条件は、DSP5がメモリ4に記憶されている基準値により予め設定されているが、オペレーターによる施術の様子をモニター16の再生画像で確認している補助者によってこの基準の画像を修正し最適化することができる。そして、本実施形態では、撮像のレンズ部2にズームレンズを用いることで、画像条件の修正としてホワイト・バランス、コントラスト、輝度以外に画像の撮像倍率を調整することができる。具体的には、管理側制御装置13は画像修正ソフトウェアの実行の下で
図2に示す画像修正処理画面をモニター16に表示しており、補助者はこの画面に基づいて修正処理を行う。
【0028】
図2の画像修正処理画面で、映像領域Pは、DSP5からの映像信号による画像を表示しており、補助者は、この映像領域Pの画像を確認しながらスイッチ表示部S1乃至S11を入力装置18によって操作しながら修正の指示を行う。
【0029】
まず、補助者は、スイッチ表示部S1を入力装置18のマウスの操作によって押すことにより、「ホワイト・バランス」・「コントラスト」・「輝度」・「倍率」の各項目はスイッチ表示部S4乃至S7をそれぞれ操作することで選択されて修正を指示することができる。スイッチ表示部S8乃至S11は、それぞれ対応する各項目が選択されると、インジケータIを「+」方向又は「−」方向に動かすことで調整が可能となる。
【0030】
スイッチ表示部S8乃至S10において、初期状態でインジケータIが位置している「0」は、予め設定されてメモリ4が記憶している基準値を基にしたホワイト・バランス、コントラスト及び輝度の状態を示している。また、スイッチ表示部S11での「0」は、撮像制御部6によって制御されているレンズ部2の初期状態での倍率を示している。
【0031】
そして、モニター16の画像修正処理画面で映像領域Pの画像を確認している補助者は、「ホワイト・バランス」・「コントラスト」・「輝度」・「倍率」ごとに必要に応じてスイッチ表示部S4乃至S7を入力装置18のマウス操作により選択し、対応しているスイッチ表示部S8乃至S10のインジケータIを「+」方向又は「−」方向にマウス操作により動かすことで所望する画像条件への変更を指示する。
【0032】
インジケータIの移動により画像条件の変更が指示されると、管理制御装置13は、画像条件の変更量に応じたデータ信号をI/F15で変調してI/F14に送信する。この場合の変更量は、「ホワイト・バランス」・「コントラスト」・「輝度」の場合には予めメモリ4が記憶している基準値からのプラス又はマイナスの変化量を示しており、「倍率」の場合には撮像制御部6が設定している初期状態での倍率からのプラス又はマイナスの変化量を示している。
【0033】
携帯装置側100では、制御装置12がI/F14で受信されて復調されたこのデータ信号を受け取ると、「ホワイト・バランス」・「コントラスト」・「輝度」に関する画像変更であればその変更データをDSP5に出力する。そして、DSP5は、修正の指示のあった画像条件に関してメモリ4が記憶している基準値から指示された変化量分だけプラス又はマイナスに補正して、レンズ部2がリアルタイムで撮影している対象部の画像を補正した基準値に基づいて修正した映像信号を生成する。また、制御装置12は、「倍率」に関する画像変更であればその変更データを撮像制御部6に出力し、撮像制御部6はレンズ部2を変更した倍率で撮像素子3にて結像するよう制御する。よって、DSP5は変更した倍率での映像信号を生成する。
【0034】
DSP5が修正した映像信号は、I/F14及びI/F15を通して管理側制御装置13へ導入され、モニター16の画像修正処理画面の映像領域Pには修正された画像が再生されて補助者は修正の結果を確認することができる。このようにして、スイッチ表示部S4乃至S7による画像条件の選択と、スイッチ表示部S8乃至S11のインジケータIの操作による修正指示が行われるたびに、それに応じて修正された映像信号が携帯装置側100から送信されてきて、映像領域Pにはこの映像信号に基づく修正された画像が表示される。そして、補助者は画像が最適化されたことを確認すると、スイッチ表示部S3を操作して画像修正を終了し、現在の施術箇所の状況がモニター16の画面全体による表示に切り替わる。
【0035】
照光部9のオン・オフ及び発光量の調整について説明する。音声認識装置8が認識する照光に関する入力音声としては、例えば、「点灯」・「消灯」・「明るく」・「最大明るく」の語句があり、主にオペレーターが音声入力装置7に発声する指示音声の内容を音声認識装置8が認識したとき、制御装置12は、それに応じて電流駆動回路10を介して照光部9のLED素子への通電電流を制御する。この場合の電流駆動回路10は、例えば、トランジスタ、MOSFET等によってデューティー比を制御することでLED照光部1へ流れる電流を制御している。
【0036】
図3は、電流駆動回路10の構成を示しており、この例ではパルス駆動方式によりLED素子への通電電流を制御する。同図において、スイッチデバイス41には、例えばMOSFETを使用し、そのゲート側にパルス発生器42からのPWM(Pulse Width Modulation)信号が入力するよう接続し、制御装置12からの制御信号によってパルス発生器42がPWM信号を高レベルにしたときスイッチデバイス41がオンとなり、バッテリー電源11の電圧Vccが印加されて入力側から負荷側へ電流が流れる。
【0037】
スイッチデバイス41の負荷側には照光部9のLED素子43と保護抵抗R4とを接続してアースし、その前段にはコイルとLとコンデンサCとから成る平滑回路を設けて、スイッチング動作によるパルス出力を平均化して出力する。コイルLの更に前段には、スイッチデバイス41がOFFになってもコイルLに電流を供給し続けるためにダイオード44を設けている。これにより、スイッチデバイス41のON時間(OFF時間)を制御すれば、照光部9へ流れる電流を調節することができる。よって、制御装置12は、音声認識装置8が照明に関する指示音声を認識したとき、その命令内容に従ってパルス発生器42のデューティー比を変えて、スイッチデバイス41のオン時間(オフ時間)を調整することにより、照光部9のLED素子43の点灯・消灯や光量を調節できる。
【0038】
次に、撮像装置1と照光部9とをオペレーターの身体に装着する実施例を説明する。
図4に示す実施例では、オペレーターが施術時に顔面に掛ける双眼ルーペ20に撮像装置1と照光部9とが共に取り付けられてオペレーターに装着される。このような双眼ルーペ20以外にも、帽子やヘッドバンドであっても良い。
図5はヘッドバンド21に撮像装置1と照光部9とを取り付けている。このヘッドバンド21は樹脂部材で構成されており、オペレーターの頭部にその弾性により保持して固定される。ヘッドバンド21はこのような構成に限らず、また材質も布やゴム等による種々な形態がある。また、撮像装置1と照光部9は、別々に例えば、撮像装置1はヘッドバンド21に、照光部9は双眼ルーペ20に取り付けて、オペレーターがこれらを着用して医療施術時に使用してもよい。
【0039】
また、オペレーターは、
図6に示すように腰にバッテリー保持ベルト22を巻いて、このバッテリー保持ベルト22によってバッテリー電源11を保持するとよい。同図において、バッテリー電源11は互いに接続された複数の充電式のバッテリー23を備えており、バッテリー保持ベルト22はこれらのバッテリー23と共に、コントロールユニット24が装着されている。コントロールユニット24は、音声入力装置7、音声認識装置8、電流駆動回路10、制御装置12及びI/F14を格納している。なお、
図5の例においては、音声入力装置7はコントロールユニット24には格納されておらず、オペレーターの口許に位置するようヘッドバンド21に取り付けられている。
【0040】
図6で、バッテリー電源11のバッテリー23は、コントロールユニット24に繋がっており、コントロールユニット24は、ケーブル・ハーネス25に含まれる電源コードを通して撮像装置1及び照光部9へ駆動電流を供給する。また、
図6に示す例では、オペレーターの肩に撮像装置1を配置して、着用ベルト29によって固定している。この場合、図示しないが、撮像装置1への電源コードはケーブル・ハーネス25から一部が分離されて撮像装置1に接続されている。また、ケーブル・ハーネス25は、制御装置12が撮像制御部5に出力する制御信号線及びDSP5に出力する画像条件の変更データの信号線と、音声入力装置7がDSP5への音声出力の信号線と、後述する加速度センサー9からの入力信号線と、を包含している。
【0041】
このようにして、携帯装置側100を構成する撮像装置1をはじめとする各装置はオペレーターの身体に装着される。このとき、コントロールユニット24は、コンセント27にプラグが差し込まれた充電器26を接続して、バッテリー23への充電を行いながら撮像装置1による撮影動作と照光部9による照光動作を行うとよい。これにより、長時間の施術においても撮影と照光とを十分に確保される。
【0042】
撮像装置1の取り付け位置に関して、オペレーターが
図4又は
図5に示す双眼ルーペ20やヘッドバンド21を装着したとき、撮像装置1はオペレーターの顔の上下方向の中心線上にあって目の位置より上方に位置している。よって、オペレーターが手術中に凝視する視線の箇所と撮像装置1が捉える画像の中心位置とではズレがあるために、施術対象部の画像とオペレーターが視認している状況とは必ずしも一致しておらず、肝心な施術箇所の一部又は全部が画像に捉え切れていないか、捉えていても隅にしか表示されていないことがある。
【0043】
特に、
図4の場合では、ルーペ本体28の取り付け位置と撮像装置1の取り付け位置とでは設計上で寸法差があるために、オペレーターがルーペ本体28を通して医療施術の対象部を凝視したとき、その視線の位置と画像の中心位置とでは明確なズレが生じている。そのため、撮像装置1によって撮影された画像に対して、次に説明する処理を行うことで、オペレーターの身体に装着した場合に生じるこのズレを制御処理により解消することができる。
【0044】
図7は、管理側制御装置13がこのズレを解消するために、上記の画像修正ソフトウェアの実行の下で行う処理を画像によって模式的に説明する図である。
図7(a)において、画像30は、モニター16が撮像装置1によって撮影されてDSP5により生成された映像信号を、
図2の画像修正処理画面の映像領域Pに再生している画像である。この画像30では、撮像装置1の取り付け位置とオペレーターの視線の位置との上下方向でのズレにより、オペレーターが凝視している対象部31は画像30の中心枠32より下方に位置するために、その一部は表示されていない。
【0045】
このような画像30における対象部31のズレを修正するには、補助者は、スイッチ表示部S2を入力装置18のマウスの操作によって押すことにより、管理側制御装置13はズレの修正処理を開始する。
【0046】
ズレの修正処理では、補助者は、一部表示されていない対象部31の全体が画面に表示されるように、スイッチ表示部S7を操作した後、スイッチ表示部S11のインジケータIを「−」方向に移動させて画像30を低倍率にする。この操作により携帯装置側100では、制御装置12が撮像制御部6を制御してスイッチ表示部S11のインジケータIの移動量に応じてレンズ部2を調整する。したがって、DSP5は調整された倍率での映像信号を生成し、管理側装置200のモニター16の画像修正処理画面の映像領域Pには変更した倍率の画像が表示される。
【0047】
これにより、
図7(b)で示すように、対象部31の全体が映像領域Pに表示する画像33が表示されると、補助者は、入力装置18のマウス操作により、対象部31が中心となる四角の領域Aを映像領域Pの画像上に任意に指定する。
【0048】
管理側制御装置13は、領域Aが指定されると、この範囲を示す画像範囲のデータをI/F15及びI/F14を通して携帯装置側100に送信する。そして、I/F14から領域Aの範囲データを受信した制御装置12は、DSP5にこの範囲データを出力する。DSP5は、現在、レンズ部2が撮像素子3に結像している画像から領域Aに相当する部分を切り出し、この切り出した画像を電子ズームにより拡大処理して元の画像の大きさに拡大した画像の映像信号を生成する。DSP5が生成した映像信号をI/F14及びI/F15を通して管理装置側200に送信すると、管理側制御装置13では、対象部31が中心枠32内に収められた
図7(c)に示す補正の画像34がモニター16の画像修正処理画面の映像領域Pに表示される。
【0049】
そして、補助者が画像の修正を確認しスイッチ表示部S3を操作することで画像のズレ修正が終了すると、ズレを修正した画像34がモニター16の画面全体による表示に切り替わる。これにより、オペレーターが視認しているのと同じ視点で施術の様子をモニター16で確認することができる。
【0050】
このような補正処理機能を設定しておけば、撮像装置1は、施術箇所に臨む身体の部位であれば肩(
図6に図示)や胸等のように目から遠く離れた身体の部位に装着して大きなズレを生じていても、補助者によって画面上で修正処理を行うことができる。このズレを光学的に処理するには、例えば、双眼ルーペの対物光学系から延長光学系を経て導いた光束を、光分岐手段により2つに分けて、一方をオペレーターの眼に他方を撮像装置1に導くことで施術対象部の画像とオペレーターが視認している状況とを一致させる、上記特許文献2に開示されているような方法がある。しかしながら、光学的に処理する構成は、光分岐手段や撮像装置に導く撮影用の光学系が別に必要となって装置が大型化し、オペレーターの身体に装着するには重量が重くなり過ぎるという不具合がある。しかし、管理装置側200によってモニター16の画面上で補正することで、撮像措置1を大型化することなくズレの修正が実現される。
【0051】
画像条件の変更を指示する変形例としては、音声入力装置7を利用して音声指示を行ってもよい。この場合、音声入力装置7のマイクロフォンを2通り設けて一つを管理装置側200に配置するのが好ましい。そして、ホワイト・バランスの調整に関しては、「ホワイト・バランス・プラス」及び「ホワイト・バランス・マイナス」の語句の音声パターンを音声認識装置8に予め登録しておき、制御装置12は、音声認識装置8が「ホワイト・バランス」に関する指示音声が音声入力装置7に発声されたことを認識したとき、その指示に応じてメモリ4に記憶されているホワイト・バランスの基準値を所定数値分だけプラス又はマイナスして映像信号を生成するようDSP5に対して制御信号を出力する。したがって、補助者は、所望のホワイト・バランスが得られるまで「ホワイト・バランス・プラス」又は「ホワイト・バランス・マイナス」の音声指示の発声を繰り返すことでホワイト・バランスが調整される。
【0052】
同様に、画像のコントラストに関しては、例えば、「コントラストを高く」及び「コントラストを低く」の語句の音声パターンをそれぞれ音声認識装置8に登録しておくことで、制御装置12は、音声認識装置8がこれらの指示音声が補助者から音声入力装置7に発声されたことを認識したとき、その指示に応じてメモリ4に記憶されているコントラストに関する基準値を所定数値分だけプラス又はマイナスしてコントラストを修正するようDSP5に対して制御信号を出力する。よって、補助者は、所望のコントラストが得られるまで「コントラストを高く」又は「コントラストを低く」の音声指示の発声を繰り返すことでコントラストが調整される。
【0053】
そして、画像の輝度に関しても、例えば、「輝度を高く」及び「輝度を低く」の語句の音声パターンをそれぞれ音声認識装置8に登録しておくことで、制御装置12は、音声認識装置8がこれらの指示音声が音声入力装置7に補助者から発声されたことを認識したとき、その指示に応じてメモリ4に記憶されている輝度に関する基準値に関する基準値を所定数値分だけプラス又はマイナスして輝度を修正するようDSP5に対して制御信号を出力する。よって、補助者は、所望の輝度が得られるまで「輝度を高く」又は「輝度を低く」の音声指示の発声を繰り返すことで輝度が調整される。
【0054】
さらに、画像の撮像倍率の調整に関しては、例えば、「拡大」及び「縮小」の語句の音声パターンをそれぞれ音声認識装置8に予め登録しておくことで、制御装置12は、音声認識装置8がこれらの指示音声が音声入力装置7に発声されたことを認識したとき、その音声指示内容に基づいて撮像制御部6の動作を制御する。この場合、制御装置12は、「拡大」又は「縮小」の指示音声が入力されるごとに、撮像制御部6を制御してレンズ部2の焦点距離を所定段階ずつ変化するように構成されている。よって、補助者は、「拡大」の発声を繰り返すことで段階的に撮像倍率が拡大し、また「縮小」の発声を繰り返すことで段階的に撮像倍率が縮小される。
【0055】
また、撮像装置1にはWi−Fiによるネットワーク・カメラを使用すれば、インターネットを通じて管理側制御装置13に映像を配信し、モニター16でモニタリングを行うことができる。この場合、管理側制御装置13は、WEBブラウザでネットワーク・カメラのURLを指定することで、施術の状況をリアルタイムでインターネットを通じてネットワーク・カメラの撮影画像を取り込むことができる。このように無線LANを使用すれば、施術を行う現場以外の端末装置においてもリアルタイムで施術のモニタリングを行える利点がある。
【0056】
次に、医療施術作業の実情に即して、撮像装置1に設定する適正な露出条件について説明する。医療用撮影システムでは、医療施術の対象部の映像を画面全体でピントの合った解像度の高い画像で表示すると共に、情報記録装置17に記録し保存する必要がある。このため画像の解像度を高めるには、(1)絞り値(F値)、(2)シャッタースピード、(3)ISO感度、の三つの要素がある。まず、絞り値(F値)とシャッタースピードとの関係については、F値を大きくすると被写界深度が深くピントの合う領域が拡大して解像度が高まる。しかし、F値を大きくして絞りを絞ると、レンズ部2を通る光が少なくなり撮像素子3に映る画像が暗くなる。これにはシャッタースピードを遅くすることで解決されるが、いわゆる「手ブレ」の問題がある。ここで言う「手ブレ」とは、オペレーターの身体や頭部の動きにより撮像装置1が揺れて映像にブレを生じることを意味している。すなわち、医療施術のような精緻な作業では細かい手の動きによる小刻みな動作を伴うために、オペレーターの身体に装着されている撮像装置1はシャッターが開いている間に動かされると、映像にブレを生じてしまい医療施術の記録映像としては不適格となる。
【0057】
ここで、本実施形態におけるシャッタースピードについて説明しておく。レンズ部2には機械式シャッターを設けておらず、撮像素子3には常に光が入射していて受けた光を電気信号にして溜めておき、一定時間後に撮像素子3から溜まった電気量を取り出すという電子シャッター方式を採用している。よって、撮像素子3は、電気を放電した後にレンズ部2からの光を受けると、画素ごとに明るさに比例した電荷に変換して溜めておき、一定時間後にDSP5が溜まった電気量を取り出して映像信号の生成処理をしており、このとき光を溜めている時間をシャッタースピードとしている。
【0058】
したがって、本実施形態では、光を溜めている時間に撮像装置1が動かされると、画像にブレが生じる。そのため、撮像装置1は、F値を大きくしてもそれに応じてシャッタースピード(光を溜めている時間を)を遅くするのは、撮像装置1がデジタル・スチル・カメラやデジタル・ビデオ・カメラの何れの場合であっても好ましくない。さらに、一般的なデジタル・ビデオ・カメラの場合では、1秒間に撮影されるコマ数であるフレームレートは30に設定されており、この場合のシャッタースピードは1/60秒が適切とされている。よって、デジタル・ビデオ・カメラでは、シャッター速度を調整する自由度はデジタル・スチル・カメラに比べて低く、シャッタースピードを固定にしておくのがよい。
【0059】
また、ISO感度を高めてレンズ部2が取り込んだ光を電気信号に変換する撮像素子3の反応速度を高くすることも考えられるが、このような高感度撮影では画質がざらつき施術対象である生体組織の色の再現性が悪くなる。よって、ISO感度も100で固定しておくのが好ましい。
【0060】
上記の点から本発明の医療用撮影システムでは、撮像装置1のF値を大きくすると共に照光部9からの光量も高くして、例えば撮像場所に最適な10万ルクス以上の照度を選択する。このときレンズ部2もF2.8以下の明るいレンズが好ましい。
図8は、画面全体でピントの合った解像度の高い画像を得るために、撮像装置1に上記条件で適正露出を選定する手順を示している。
【0061】
同図において、まずステップST1は、照光部9の照度を決定するが、上記したように撮像場所に最適な10万ルクス以上の照度を有する照光装置を選定する。そして、ステップST2では、レンズ部2を通った光を撮像素子3で測光し、次のステップST3において、F値とシャッター速度の組み合わせによる露出を決定する。本例では、撮像装置1の露出を自動で行なう機能(AE:Automatic Exposure)によって、このときの被写体の明度に応じた露光が得られるようにF値やシャッタースピードが自動設定される。例えば、ISO感度を100として、F値が8、シャッタースピードが1/60秒がそれぞれ設定される。
【0062】
ステップST4では、この露出条件で撮像装置1が撮像した画像を保存する。続いて、ステップST5では、撮像した画像に応じて露出条件を選択する。選択方法としては、例えば表1では、ISO感度を100に固定にして最大F値及び最速シャッタースピードの両方を変更しながら最適な組み合わせを選択する(i)の方法と、ISO感度を100及び最大F値をF11の固定にして最速シャッタースピード変更しながら最適な組み合わせを選択する(ii)の方法とを示している。
【0064】
上記選択方法において、最大F値と最速シャッタースピードの組み合わせについては、(i)の方法では、F8(被写界深度4cm)、F11(被写界深度6cm)、F16(被写界深度8cm)の各最大F値と、1/60秒、1/125秒、1/250秒の各最速シャッタースピードとの9通りから選択するもので、(ii)の方法では、最大F値をF11に固定して最速シャッタースピードを1/60秒、1/125秒、1/250秒の何れかに選択するものである。なお、上記したように、撮像装置1がデジタル・ビデオ・カメラの場合には、シャッタースピードは1/60秒に固定しておくのが好ましいために、1/60秒で固定したときは、(i)の方法のみを採用してF値を選択することになる。
【0065】
このようにして露出条件の選択を行うと、ステップST6で再び測光して画像の解像度が適格であるときは、ステップST7で撮像制御部6にこの露出条件を設定して終了する。しかし、露出不足で画像の解像度が不適格であるときは次のステップST6からステップST8に進み、この露出条件で撮像装置1が撮像した画像を保存し、次のステップST9で照光部9をより明るい照度の照光装置に変更して、ステップST1からの処理を繰り返す。
【0066】
上記したように、本発明の医療用撮影システムでは、オペレーターが医療施術の対象部に照射する照光部9からの光量を明るく設定することで、撮像装置1の被写界深度を深めて画像の解像度を高めている。しかし、撮像装置1を使用する周囲条件によって撮像画像の解像度が不足することがあり、その場合には、管理装置側200でオペレーターから照射する照光部9の照度をさらに明るくする方向に調整することで解像度を高くすることができる。
【0067】
具体的には、
図2に示すモニター16の画像修正処理画面において、補助者が映像領域Pに表示されている撮像画面から解像度の不足を判断したとき、スイッチ表示部S1を入力装置18のマウスの操作で押して、次にスイッチ表示部S12を操作すると、管理側制御装置13の前記の画像修正ソフトウェアは「解像度」を修正するプログラムを実行する。そして、スイッチ表示部S13のインジケータIを「+」方向に動かすことで、インジケータIの移動量に応じて照光部9の照度が明るくなるよう照度変更量のデータ信号が発生する。このとき、スイッチ表示部S13の「0」の位置は、オペレーターによって設定されている現状の照度であり、この位置からの移動量に応じて照度を明るくする。
【0068】
照度変更のデータ信号は、I/F15で変調されてI/F14に送信され、復調されて携帯側装置100の制御装置12へ伝送されると、制御装置12は、このデータ信号値に応じて電流駆動回路10を制御して照光部9への供給電流を増大させる。これにより、施術対象部の明るさが補正され、補正された露出による映像信号がDSP5から管理側装置200に送信されてモニター16の画像修正処理画面の映像領域Pに表示される。そして、補助者はこの画面を確認して、必要に応じてさらに照度を上げて解像度を調整することができ、所望する解像度が得られると、スイッチ表示部S3を操作して画像修正を終了する。これにより、現在の施術箇所の状況がモニター16の画面全体による表示に切り替わる。
【0069】
また、本発明による医療用撮影システムでは、加速度センサー19によってオペレーターの動きを検知し、オペレーターが頻繁に身体を動かしている間だけ照光部9の照度を明るくし、その分、シャッタースピードを速くすることで「手ブレ」を防止している。撮像装置1に内蔵されている加速度センサー19は、施術でのオペレーターの動きによる撮像装置1の上下や前後左右の加速度を検知する。そして、制御装置12は、加速度センサー19で計測したデータをもとに、撮像装置1が動いている間は電流駆動回路10を制御して照光部9への供給電流を増大させると共に、撮像制御部6を制御してシャッタースピードを速くする。そして、オペレーターの身体の動きが静止するのを加速度センサー19が検知すると、制御装置12は、電流駆動回路10を制御して照光部9への供給電流量を減少させてもとの照度に戻し、シャッタースピードも遅くする制御を行う。
【0070】
これによりシャッター間隔が短くなり「手ブレ」に影響されない画像を作成することができる。加速度センサー19は撮像装置1に内蔵されるだけとは限らず、オペレーターの身体に別に取り付けてもよい。但し、好ましくは撮像装置1に近い位置に取り付けるのがよく、撮像装置1と共に
図4に示す双眼レンズ20や
図5に示すヘッドバンド21などが好適である。
【0071】
しかし、この場合でも、撮像装置1がデジタル・ビデオ・カメラであるときは、前述したようにシャッタースピードの調整の自由度が低く、フレームレートの倍程度のシャッター速度までが好ましい。
【0072】
このように、加速度センサー19をオペレーターの身体に取り付けることで、「手ブレ」を想定して、常時、オペレーターが作業するのに必要な光量を超えて照光部9を発光させておく必要がなくなり、バッテリー電源11の容量保全の面及びLED素子の熱劣化の防止の面からも多いに有効である。
【0073】
このように加速度センサー19を用いることで、照度を上げると共にシャッタースピードを速くして「手ブレ」を解消するが、スチル画像の場合には、加速度センサー19によってオペレーターの身体の動きを検知すると低露光での連写を行い、連写した画像から「手ブレ」による各画像間の動きを計算して明るい一枚の画像を生成することでも対処できる。一方、ビデオ画像の場合には、加速度センサー19によってオペレーターの身体の動きを検知すると「前フレーム」と「現フレーム」とから「手ブレ」の量を検出し、それを補正して「現フレーム」を切り出してリアルタイムに出力する。
【0074】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づき種々の変形が可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。また、上記した電子シャッターを用いずにレンズ部に機械式のシャッターを採用した場合でも、本発明から逸脱するものではない。