特許第6097595号(P6097595)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6097595
(24)【登録日】2017年2月24日
(45)【発行日】2017年3月15日
(54)【発明の名称】桟橋の構造と再構築方法
(51)【国際特許分類】
   E02B 3/06 20060101AFI20170306BHJP
   E01D 15/24 20060101ALI20170306BHJP
【FI】
   E02B3/06
   E01D15/24
【請求項の数】1
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-38928(P2013-38928)
(22)【出願日】2013年2月28日
(65)【公開番号】特開2014-167216(P2014-167216A)
(43)【公開日】2014年9月11日
【審査請求日】2015年10月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】595059377
【氏名又は名称】株式会社日本ピーエス
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 朔生
(72)【発明者】
【氏名】原 幹夫
(72)【発明者】
【氏名】松本 正之
(72)【発明者】
【氏名】青木 治子
【審査官】 竹村 真一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−063822(JP,A)
【文献】 特開2007−217952(JP,A)
【文献】 実開平03−046524(JP,U)
【文献】 特開2008−075408(JP,A)
【文献】 特開平10−152822(JP,A)
【文献】 特開2008−014083(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 3/04−3/14、17/00−17/08
E01D 1/00−24/00
E02D 5/22−5/80、27/00−27/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設の矢板壁の頭部にプレキャスト型枠を設置し、
型枠内にコンクリートを打設して矢板壁の頭部を一体化した矢板頭ブロックを形成し、
一方前記の矢板壁と対向する位置にある既設の支持杭の頭部にも独立したプレキャスト型枠を設置し、
型枠内にコンクリートを打設して杭の頭部に杭頭ブロックを形成し、
矢板頭ブロックと杭頭ブロックの間にプレキャスト梁を設置し、
矢板頭ブロック、杭頭ブロックと、プレキャスト梁との間に配置したPC鋼線を緊張して一体化し、
その後に矢板頭ブロックと杭頭ブロックの上に、プレキャスト床版を設置して行うことを特徴とする、
桟橋の再構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は桟橋の構造と再構築方法に関するものである。
特に本発明の対象は、岸壁に沿って鋼管などを打設した矢板壁がすでに構築してある場合であって、その矢板壁に支持力を得て構築した桟橋を再構築する方法、あるいは桟橋の構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
全国の港湾の既設桟橋が構築から30年以上経過しているために塩害などによるコンクリートの劣化が著しく、特に震災の可能性の高い近時は、早急な架け替えが望まれている。
しかし既存桟橋の架け替えは、すでに海底に打設してある既存の杭をそのまま利用する必要があり、工期の制限や潮位変化への対応など、多くの制約がある。
そのために、それらの要求に対応した新たな技術が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−248526号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記したような従来の桟橋の改修方法にあっては、次のような問題点がある。
<1> 桟橋を新設する施工の場合には、海水を締切して施工することが一般的である。しかし既存桟橋の再構築工法の場合には、桟橋の供用を維持しながらの部分的施工となるために、海水を締め切ることができない。
<2> このために満干の潮位の変化を受けながら行う、拘束の多い施工となるために、現地での鉄筋の配置、型枠の設置、コンクリート打設などの作業が不可能であるか、困難である。
<3> すでに打設してある既存の杭をそのまま利用して上部工のみの施工となるが、一般に既存杭の打設位置の誤差が大きく、これを前提とした上部工の施工を行わなければならない。
<4> 既存桟橋を供用しながらの再構築工事となるために、工期に制約があり、できるだけ迅速な施工が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記のような課題を解決する本発明の桟橋の再構築方法は、既設の矢板壁の頭部にブラケットを取り付け、このブラケットを介して、プレキャスト型枠を設置し、型枠内にコンクリートを打設して矢板壁の頭部を一体化した矢板頭ブロックを形成し、一方前記の矢板壁と対向する位置にある既設の支持杭の頭部にもブラケットを介して独立したプレキャスト型枠を設置し、型枠内にコンクリートを打設して杭の頭部に杭頭ブロックを形成し、矢板頭ブロックと杭頭ブロックの間にプレキャスト梁を設置し、矢板頭ブロック、杭頭ブロックと、プレキャスト梁との間に配置したPC鋼線を緊張して一体化し、その後に矢板頭ブロックと杭頭ブロックの上に、プレキャスト床版を設置して行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明の桟橋の構造と再構築方法は以上説明したようになるから次のような効果の少なくともひとつを得ることができる。
<1> 既設の杭は必ずしも正確な位置に打設されているとは限らず、位置の誤差が大きい場合もある。このような実情を前提として、杭頭の位置の誤差が存在しても、それらの矢板壁を利用して桟橋の再構築が可能である。
<2> 現場打設のコンクリートと、プレキャストコンクリートとを併用するので、迅速な工事を行うことができ、供用中の桟橋を全面的に早期に開放することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の桟橋再構築工程の説明図。
図2】本発明の桟橋再構築工程の説明図。
図3】本発明の桟橋再構築工程の説明図。
図4】本発明の桟橋再構築工程の説明図。
図5】本発明の桟橋再構築工程の説明図。
図6】本発明の桟橋再構築工程の説明図。
図7】本発明の桟橋再構築の完成した状態の説明図。
図8】本発明の桟橋再構築の完成した状態の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下図面を参照にしながら本発明の桟橋再構築工程の好適な実施の形態を詳細に説明する。
【実施例】
【0009】
<1>前提条件
特に本発明の対象は、岸壁に沿って鋼管などを打設した矢板壁1が構築してあり、その矢板壁1に支持力を得て構築した桟橋を再構築する方法、あるいはその場合の桟橋の構造に関するものである。
したがって本発明の桟橋の再構築方法は、矢板壁1の杭や、矢板壁1とは独立した位置に打設してある支持杭3など、既設の矢板壁1や支持杭3をそのまま利用する工法である。
その場合に前記したように、杭頭の位置は必ずしも設計図通りに正確ではなく、誤差が生じている可能性が高いことを前提としている。
【0010】
<2>ブラケットの取り付け(図1
既設の矢板壁1の頭部にブラケット2を取り付ける。
この矢板壁1は、鋼管杭、コンクリート杭を並べて打設して構築した壁体である。
矢板壁1の頭部に取り付けるブラケット2は、後述する型枠を支持するための鋼製部材である。
既設の杭が鋼管杭の場合には、その側面に溶接して取り付ける。
既設の杭がコンクリート杭の場合には側面に削孔してボルトなどを挿入してブラケット2を取り付ける。
このブラケット2を、複数本の矢板壁1に共通した高さに取り付ける。
矢板壁1と対向する位置には独立した支持杭3が打設してある。
この支持杭3の頭部にも、前記と同様にブラケット2を取り付ける。
矢板壁1の海側に位置する控え杭4にも同様にブラケット2を取り付ける。
【0011】
<3>底板の設置(図2
このブラケット2を介して、矢板壁1に共通する底板5を設置する。
矢板壁1と独立した支持杭3のブラケット2にも底板5を設置する。
この底板5は、後述するプレキャスト型枠を支持するための薄板であるから、その加工が容易である。
そのために杭頭の平面視の位置が不ぞろいでも、底板5の形状を加工することによって、複数の杭群に共通した状態で、水平面を維持した底板5を設置することができる。
【0012】
<4>プレキャスト型枠の設置(図3
矢板壁1の杭頭に取り付けた底板5の上に、工場で生産したプレキャスト型枠6を設置する。
プレキャスト型枠6とは工場生産したコンクリート板であり、鋼製型枠のようにコンクリート打設後に解体する必要がなく、コンクリート構造物の表面として一体となる。
このプレキャスト型枠6は、1枚の板体だけでなく、平面視矩形の容器状の型枠として構成することも可能である。
同様に、支持杭3の杭頭に取り付けた底板5の上にも、プレキャスト型枠6を設置する。
底板5群は前記した様に水平面を維持した状態で設置してあるから、プレキャスト型枠6の設置は簡単に行うことができる。
型枠6は杭頭を囲む状態で、その両側に設置するが、杭頭の位置が不ぞろいでも、型枠6の間隔を広くとっておけば、杭頭の位置が型枠6設置の障害となることがない。
このプレキャスト型枠6で包囲した空間には鉄筋を組み立てる。
【0013】
<5>矢板頭ブロックの形成(図4
矢板壁1の杭頭に共通した状態で設置したプレキャスト型枠6内に、間詰コンクリート7を投入、打設する。
間詰コンクリート7が硬化して、矢板壁1の頭部を一体化した矢板頭ブロック8を形成する。
矢板頭ブロック8にはコンクリート7打設前に、鉄筋とは別に、シース、PC鋼線、鋼棒を配置しておく。
コンクリート7の硬化後に、この鋼線、鋼棒を緊張することによって、多数本の杭群を一体化した矢板頭ブロック8を強固に一体化することができる。
【0014】
<6>杭頭ブロックの形成(図4
前記の矢板壁1と対向する位置に支持杭3が打設してある。
この支持杭3の頭部にも、前記と同様の工程でブラケット2を介して独立したプレキャスト型枠6を設置し、この型枠内に鉄筋を組み立てて、間詰コンクリート7を打設する。
この間詰コンクリート7が硬化して、支持杭3の頭部の杭頭ブロック9が形成される。
【0015】
<7>ブロック間の距離
前記したように、既設の矢板壁1の杭頭と支持杭3の杭頭との間の距離は、打設時の施工誤差があって一定ではない。
しかしブラケット2に取り付けるプレキャスト型枠6の位置を、多少前後に変化させて微調整することによって、コンクリート7打設後の、矢板頭ブロック8と、杭頭ブロック9間の距離を調整することができる。
そのために、後述するように矢板頭ブロック8と杭頭ブロック9の間にプレキャスト梁10を設置する場合に、工場製品であるプレキャスト梁10の長さと、両ブロック間の距離を正確に一致させることができる。
【0016】
<8>プレキャスト梁の設置(図5
矢板頭ブロック8と杭頭ブロック9は対向した位置に設置してあり、前記したように対抗するブロック面間の距離は正確である。
そこで両者の間に、工場生産したプレキャスト梁10を設置する。
このプレキャスト梁10の内部には、長手方向に鉄筋とは別に、シース、PC鋼線、鋼棒を配置しておく。
その後に、矢板頭ブロック8、杭頭ブロック9と、プレキャスト梁10との間を貫通させて配置したPC鋼線Pを緊張して一体化する。
プレキャスト梁10は、杭頭ブロック9の両側に、矢板壁1と平行方向にも取り付ける。
その場合にも、杭頭ブロック9とプレキャスト梁10とを貫通させたPC鋼線Pを緊張させることによって強固に一体化することができる。
【0017】
<9>プレキャスト床版の設置(図6、7、8)
矢板頭ブロック8と杭頭ブロック9、およびプレキャスト梁10の上に、沓座モルタルを打設し、ゴム支承を設置し、アンカーバーを設置する。
その上に、工場製品であるプレキャスト床版11を搭載設置する。
こうして、既設の杭頭の位置が正確な設計線上にない場合でも、それらの誤差を吸収して、短時間で桟橋の再構築を終了することができる。
【符号の説明】
【0018】
1:矢板壁1
2:ブラケット
3:支持杭
6:プレキャスト型枠
8:矢板頭ブロック
9:杭頭ブロック
10:プレキャスト梁
11:プレキャスト床版
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8