(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ピークホールド部から出力された電気信号のレベルと前記フィルター部から出力された電気信号のレベルの差分値を表示する差分表示部を追加的に備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載の部分放電検出装置。
前記フィルター部が、少なくとも前記特定周波数の上下10%の周波数成分の電気信号を選択的に通過させるバンドパスフィルタであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の部分放電検出装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に記載の装置によれば、部分放電の発生源を、電力機器のどの箇所であるかという細かい点まで特定することができる。
【0007】
しかし、一方で、この装置は4本以上のアンテナを備えた据置型の装置であるため、装置を設置するための適切な場所を設定した上で、各アンテナに対して信号線を引き回す必要がある。計測場所を変えたい場合には、アンテナに接続された各信号線を巻き取った後、同様の作業を行う必要がある。つまり、計測前のセッティングに多くの作業量が発生するため、短時間で多くの場所で部分放電の発生検出を行うには不向きであるという課題がある。
【0008】
このため、本出願人は、第1の段階として、まず簡易な装置によって検査対象箇所で部分放電が生じているか否かの検査を行い、この第1の段階で部分放電の検出が確認された場合に、第2の段階として例えば特許文献1の技術を用いて詳細な放電源の特定を行うという処理を行なっていた。
【0009】
ここで、従来、前記第1の段階として、部分放電の発生を検出するためのアンテナと、このアンテナで受信した受信電圧の波形を検知するためのオシロスコープを検査対象の現場に持参し、作業員がオシロスコープの波形を確認することで部分放電の有無を判断していた。
【0010】
しかし、オシロスコープはあくまで汎用品であるため、電力機器から生じる部分放電の有無を判断するには、その都度レンジを調整したり、トリガやチャンネルを設定するという作業が必要となり、作業員に対して多くの作業を課してしまうという問題があった。また、オシロスコープは、汎用品であるゆえに多様な操作が可能な構成であり、作業員が操作に習熟するまでに多くの時間を要してしまう。更には、オシロスコープに表示される波形データから、部分放電の有無を判断するに際しても、実際に電力機器から生じている部分放電由来の電磁波(電波)であるか、それとも例えばアマチュア無線等の他の無線由来の電磁波(電波)であるかということを識別するには、作業員の習熟が要求される。
【0011】
図10Aは、ある検査対象箇所で、アンテナで受信した受信電磁波の電圧波形とスペクトル波形をオシロスコープにて表示させた画面の一例である。150MHz付近で高い強度を示す電磁波を受信しているが、習熟度の高い作業員によれば、電圧波形により、ほぼ常時同等レベルの電圧が確認されることから、この受信電磁波はアマチュア無線由来のものであると判断できる。しかし、電圧波形を見る時間スケールを細かく設定して画面を確認していた場合には、高い電圧値を示す瞬間と低い電圧値を示す瞬間を有する電圧波形が確認されてしまい、この結果と150MHz付近の高いスペクトルデータとに基づいて、経験の少ない作業員は部分放電が発生していると誤判断する可能性がある。
【0012】
図10Bは、
図10Aとは別の検査対象箇所で、アンテナで受信した受信電磁波の電圧波形とスペクトル波形の一例である。データ取得方法が異なるため、
図10Aとは異なり、受信電圧とスペクトル波形を別図として表示しているが、実際には
図10Aと同様に、オシロスコープ上にて2つの波形を一画面にて確認することが可能である。
【0013】
図10B(a)に示す電圧波形によれば、ある瞬間に電圧値が上昇し、その後、電圧値が徐々に低下している様子が見える。これは、放電発生時に瞬間的に電圧値が上昇し、その後低下する部分放電の場合と波形が近似している。一方、
図10B(b)に示すスペクトル波形によれば、50MHz近傍に極めて高いレベルが示されている。このため、習熟者であれば、両方の波形を参照して、この受信電磁波が油中部分放電由来のものではなく、架線コロナ放電由来のものであると判断できる。しかし、スペクトル波形を見る周波数のスケールを130MHz〜170MHz近傍に調整して画面を確認していた場合、140MHz近傍に高いレベルが表示されたスペクトル波形が確認されてしまい、この結果と、(a)に示す電圧波形データに基づいて、経験の少ない作業員は部分放電が発生していると誤判断する可能性がある。
【0014】
このように、オシロスコープを用いて検査対象機器から部分放電が発生しているかどうかを判断する場合には、時間レンジや周波数レンジを正しく設定することが要求され、また、そのように設定した状態で、表示される波形を視覚的に判断する能力が要求される。このため、作業員の習熟度によっては、部分放電が発生しているかどうかを誤って判断してしまうおそれがあった。
【0015】
本発明は、上記のような課題に鑑み、電力機器から生じる部分放電の有無を簡易に検出できる専用の装置を提供することを目的とする。また、本発明は、このような装置を用いて、簡易に電力機器から生じる部分放電の有無を検出する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の部分放電検出装置は、電力機器にて生じる部分放電を検出するための装置であって、
他の周波数と比較して特定周波数に感度を有する所定のアンテナで受信された電磁波の受信電圧が入力される入力部と、
前記入力部に入力された受信電圧から、所定の周波数帯成分の電気信号を選択的に通過させるフィルター部と、
前記フィルター部から出力された電気信号のピーク値を一時的に保持するピークホールド部と、
前記ピークホールド部から出力された電気信号のレベルと前記フィルター部から出力された電気信号のレベルの差分値を演算すると共に、当該差分値が所定の閾値を上回っている場合に検出信号を出力する判定部と、
前記判定部からの前記検出信号が入力されると、その旨の表示を行う判定表示部を備えたことを特徴とする。
【0017】
更に、上記構成に加えて、前記ピークホールド部から出力された電気信号のレベルを表示する第1表示部と、
前記フィルター部から出力された電気信号のレベルを表示する第2表示部を追加的に備える構成としても構わない。
【0018】
また、上記構成に加えて、前記ピークホールド部から出力された電気信号のレベルと前記フィルター部から出力された電気信号のレベルの差分値を表示する差分表示部を追加的に備えた構成としても構わない。
【0019】
また、本発明の部分放電検出装置は、電力機器にて生じる部分放電を検出するための装置であって、
他の周波数と比較して特定周波数に感度を有する所定のアンテナで受信された電磁波の受信電圧が入力される入力部と、
前記入力部に入力された受信電圧から、所定の周波数帯成分の電気信号を選択的に通過させるフィルター部と、
前記フィルター部から出力された電気信号のピーク値を一時的に保持するピークホールド部と、
前記ピークホールド部から出力された電気信号のレベルを表示する第1表示部と、
前記フィルター部から出力された電気信号のレベルを表示する第2表示部を備えたことを特徴とする。
【0020】
ここで、前記フィルター部は、少なくとも前記特定周波数の上下10%の周波数成分の電気信号を選択的に通過させるバンドパスフィルタとすることができる。
【0021】
また、前記所定のアンテナは、他の周波数と比較して150MHzの電気信号に感度を有する指向性アンテナであって、
前記フィルター部は、130MHz以上170MHz以下の周波数成分の電気信号を選択的に通過させるバンドパスフィルタとすることができる。
【0022】
この前記所定のアンテナを、上記部分放電検出装置の一部品として構成することもできる。
【0023】
また、本発明の部分放電検出方法は、上記の部分放電検出装置を用いて検出する方法であり、
前記所定のアンテナを、検出対象電力機器から部分放電が生じている場合に当該部分放電由来の電磁波が受信可能な場所に位置させ、
前記第1表示部と前記第2表示部の表示内容を視覚的に比較して、表示される電気信号のレベルの差が所定値以上である場合に、前記検出対象電力機器から部分放電が生じていると判定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明の構成によれば、受信された電磁波の電圧波形とスペクトル波形に基づいて、視覚的に判断していた従来方法とは異なり、単に判定表示部の表示態様を視覚的に確認するだけで、又は第1表示部と第2表示部の表示態様の差異を視覚的に確認するだけで電力機器からの部分放電の有無の判断ができる。よって、作業員の習熟度に応じて判断結果が異なるということがない。また、この装置は、部分放電の有無を検出するための専用品であるため、従来のオシロスコープなどの汎用品とは異なり、細かい設定が不要である。また、簡易な構成であるため、従来より極めて少ない作業量でセッティングが可能である。
【0025】
つまり、本発明の装置によれば、従来よりも簡易な構成によって、従来よりも正確に部分放電の有無の判断を行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の部分放電検出装置及び検出方法につき、図面を参照して説明する。
【0028】
[第1実施形態]
図1は部分放電検出装置の模式的な外観正面図である。
図2は、部分放電検出装置を用いて、電力機器から部分放電が発生しているかどうかを検出する際の模式的なイメージ図である。
図3は、実際に作業員が使用している一例の写真である。
図4は、部分放電検出装置の内部構成を模式的に示すブロック図である。
【0029】
図1に示すように、部分放電検出装置1は、入力部2、第1表示部3、第2表示部4、操作ツマミ5、電源表示灯6及び演算処理部7を備える。なお、操作ツマミ5は、電源ツマミを兼ねており、このツマミを操作することで電源が入ると、電源表示灯6に所定の点灯が表示される構成である。ただし、この電源の投入方法や電源表示灯6の有無については、この形態に限定されるものではない。
【0030】
図2及び
図3に示すように、この部分放電検出装置1を用いて電力機器10からの内部放電の検出を行う場合には、アンテナ11を電力機器10の位置に向け、このアンテナ11に接続されたケーブル8を入力部2の端子に接続する。このとき、アンテナ11で受信された電磁波の受信電圧が入力部2より部分放電検出装置1に入力され、演算処理部7によって後述する処理が施された後、電気信号のレベルに応じた値が、第1表示部3及び第2表示部4に表示される。
【0031】
なお、
図1では、第1表示部3及び第2表示部4は、目盛が付された表示板上において針部が指し示す位置によって各表示部が指し示す値を視認することで、アナログ的に読み取る構成であるが、値そのものをデジタル的に表示する構成としても構わない。
【0032】
図3に示す写真に関して、(a)は作業員30の後方から電力機器10の方向に撮影されたものであり、(b)は電力機器10側から作業員30の方向に撮影されたものである。
図3に示されている部分放電検出装置1は、紐状のもので作業員30の首からぶら下げて使用される形態のものとなっているが、これは一実施例であり、この形態に限られるものではない。ただし、このような構成とすることで、作業員30はアンテナ11を手にして電力機器10の方向に向けつつ、部分放電検出装置1の第1表示部3及び第2表示部4を視認して部分放電の有無の判断を行うことができるので、単独の作業員によって作業が容易にできる点で好適である。
【0033】
アンテナ11は、部分放電時に生ずる特徴周波数帯域の電磁波を感度良く受信することができるように構成されている。ここで、本出願人の研究により、部分放電発生源が「油中」であれば、電磁波の周波数特性が150MHz帯に特徴が生じることが分かっている(上記特許文献1参照)。この周波数帯が「特定周波数」に対応する。電力機器10が、部分放電の発生源が油中であると想定される、変圧器や避雷器のブッシング等である場合には、アンテナ11として、150MHz帯を含む帯域の電磁波を受信できるような構成のもの(例えば、超短波帯域<VHF>)を採用する。
【0034】
更に、本実施形態では、アンテナ11を指向性のある微小ループアンテナを用いている。この場合、例えば直径10cm程度の大きさで重量も100g以下とすることができる。よって、作業員30はアンテナ11を片手で保持して、容易に方向の操作を行いつつ、部分放電検出装置1の第1表示部3及び第2表示部4を視認することができる。指向性があるため、アンテナ11の指向性のある方向からの電磁波を高効率で受信する一方、他の方向からの電磁波の受信感度は非常に低くなる。これにより、対象となる電力機器10を指向方向に向けることで、他の発生源由来の電磁波の受信強度が大きく抑制され、実際に電力機器10において内部放電が生じているかどうかの判断をしやすくすることができる。
【0035】
ただし、アンテナ11は、特定周波数に感度を有するアンテナであれば、無指向性のものであっても、部分放電検出装置1によって部分放電の有無の判断を行うことは可能である。アンテナ11として指向性のアンテナを利用した場合には、その判断精度を更に向上させることができる。
【0036】
図4に示すように、電力機器10から発生した電磁波20がアンテナ11によって受信されると、この受信電圧が入力部2を介して部分放電検出装置1に取り込まれる。部分放電検出装置1の演算処理部7は、プリアンプ部21、フィルター部22及びピークホールド部23を有している。
【0037】
入力部2より取り込まれた受信電圧は、プリアンプ部21によって所定の大きさに増幅された後、フィルター部22において、所定の周波数帯成分の電気信号が選択的に通過される。このフィルター部22は、前述した特定周波数の少なくとも上下10%の周波数成分の電気信号を選択的に通過させるバンドパスフィルタとして構成される。例えば、電力機器10が変圧器や遮断器のブッシング等である場合には、特定周波数が150MHz帯であるため、フィルター部22としては、少なくとも135MHz以上165MHz以下の周波数成分の電気信号を通過させるバンドパスフィルタで構成するのが好ましい。更に余裕を見て、130MHz以上170MHz以下の周波数成分の電気信号を通過させるバンドパスフィルタで構成するのがより好ましい。なお、受信電圧のレベルによっては、後述する第1表示部3及び第2表示部4にて読み取り可能な指示値を示すことができる場合があるが、このような場合プリアンプ部21は必ずしも備えなくても構わない。
【0038】
第2表示部4は、このフィルター部22を通過した電気信号のレベルを表示する。部分放電は連続的に生じるのではなく、断続的に生じるため、受信電圧の強度も極めて微小な時間間隔で変動する。第2表示部4では、この変動する受信電圧の値がそのまま表示される。しかし、この微小な時間は、極めて短い時間(n秒〜μ秒オーダー)であるため、その変動を動的に追従することは困難である。つまり、第2表示部4では、仮に部分放電が生じていたとしても、あるレベルの値に留まっているかのように表示される。
【0039】
ピークホールド部23は、フィルター部22を通過した変動する電気信号に関し、所定の時間だけピーク値をホールドさせる機能を有しており、例えば時定数を有したピークホールド回路で構成される。そして、第1表示部3は、このピークホールド部23から出力される電気信号のレベル値が表示される。
【0040】
前述したように、電力機器10から部分放電が生じていた場合、フィルター部22を通過した電気信号のレベルは、微小な時間間隔で上昇した値を示すことになる。ピークホールド部23は、この微小な時間だけ上昇した瞬間の値を一時的に保持することができるため、第1表示部3においては、この保持された値を表示することができる。
【0041】
ここで、電力機器10から内部放電が生じておらず、他の発生源(例えばアマチュア無線等)からの電磁波をアンテナ11が受信していた場合について検討する。この場合、電磁波の受信電圧が、瞬間的に上昇するという変動がある時間間隔で繰り返されるということはなく、常時ほぼ所定範囲内のレベルの受信電圧となる。従って、仮にフィルター部22を通過する周波数成分の電磁波をアンテナ11が受信していた場合、第1表示部3と第2表示部4の表示値には大きな差は生じず、常時ほぼ同程度の値を示すこととなる。なお、フィルター部22を通過する周波数成分の電磁波をアンテナ11がほとんど受信していない場合には、第1表示部3と第2表示部4は、低いレベルで常時ほぼ同程度の値を示すこととなる。
【0042】
これに対し、電力機器10から内部放電が生じている場合には、上述したように、第2表示部4では、瞬間的な内部放電が追従できずに低い値を示す一方、第1表示部3では、瞬間的な内部放電由来の高い受信電圧が維持されるため、第2表示部4よりも高い値を示すこととなる。
【0043】
つまり、部分放電検出装置1によれば、作業員30は、単に第1表示部3と第2表示部4の指示値を視覚的に比較して、ある一定レベル以上(例えば5dB以上)の差が生じているか否かを判断すればよい。そして、差が生じていれば電力機器10からの内部放電が生じていると判断し、差がほとんど生じていなければ内部放電が生じていないと判断することができる。
【0044】
図5は、部分放電検出装置1の2つの表示部(3,4)を示す写真である。
図5(a)では、第1表示部3と第2表示部4では、2dB程度の極めて小さい差しか生じていない。これに対し、
図5(b)では、第1表示部3と第2表示部4では、10dBもの差が生じている。よって、作業員30は、
図5(a)の表示態様であれば、電力機器10からの内部放電は生じていないと判断でき、
図5(b)の表示態様であれば、電力機器10から内部放電が生じていると判断できる。
【0045】
なお、本実施例では、第1表示部3と第2表示部4の双方が、アナログ的な表示態様であるため、指示値の差を、針の指し示す目盛位置によって視覚的に読み取ることとなる。このため、目視でも十分差異の存在が判断できる程度、例えば5dB以上の差異が生じている場合に、内部放電が発生していると判断するものとすればよい。
【0046】
そして、この部分放電検出装置1は、電力機器10から部分放電が生じているか否かを検出するための専用装置であるため、汎用品であるオシロスコープを利用していた従来の検知方法と異なり、使用時に複雑な設定等をする必要がない。また、スペクトル波形と電圧波形に基づいて、視覚的に判断していた従来方法とは異なり、単に2つの表示部(3,4)の表示態様を比較するのみで部分放電の有無の判断ができるので、作業員の習熟度に応じて判断結果が異なるということがない。つまり、従来よりも簡易な構成によって、従来よりも正確な判断を行うことができる。
【0047】
なお、上記の実施形態では、油中部分放電を検出する場合を例に挙げて説明したが、部分放電検出装置1は、部分放電発生源に応じて特定周波数を変えることで、他の発生源から生じる部分放電の検出に利用することも可能である。例えば、部分放電発生源が「架線」であれば、電磁波の特定周波数は50MHz近傍となり、「碍子外面」であれば、電磁波の特定周波数は25MHz近傍となる。このため、このような特定周波数に感度を有するアンテナ11を用い、また、この特定周波数の少なくとも上下10%の周波数成分の電気信号を選択的に通過させるバンドパスフィルタをフィルター部22として用いることで、油中以外の発生源からの部分放電を検出することが可能である。
【0048】
[第2実施形態]
上述した第1実施形態では、第1表示部3と第2表示部4の表示態様を作業員30が視覚的に比較して、一定レベル以上の差が生じている場合に電力機器10からの内部放電が生じていると判断する構成であった。本実施形態は、この判断処理についても部分放電検出装置1が行う構成である。
【0049】
図6は、本実施形態における部分放電検出装置の模式的な外観正面図の一例である。また、
図7は、本実施形態における部分放電検出装置の内部構成を模式的に示すブロック図である。
図6では、第1表示部3及び第2表示部4を、レベルの大きさに応じてゲージが大きくなるようなデジタル式表示態様としているが、表示態様はこれに限定されるものではない。
【0050】
図7に示すように、本実施形態の部分放電検出装置1は、演算処理部7としてプリアンプ部21、フィルター部22、ピークホールド部23に加えて、判定部31を備える。この判定部31は、差分演算部32、比較部33、閾値記憶部34を備える。
【0051】
差分演算部32は、フィルター部22を通過した電気信号のレベルと、ピークホールド部23から出力される電気信号のレベルの差分を演算する。比較部33は、閾値記憶部34から予め記憶されている所定の閾値を読み出すと共に、この閾値と差分演算部32によって算出された差分値の大小関係を比較し、差分値が閾値を上回っている場合にはその旨の検出信号を判定表示部35に出力する。
【0052】
図6では、判定表示部35を表示灯で実現しており、比較部33より検出信号が入力されると、所定の色(例えば赤色)に点灯する。なお、表示方法は表示灯に限定されずに、例えば部分放電が検出された旨の情報が文字や記号などで表示されても構わない。
【0053】
第1実施形態において上述したように、電力機器10から内部放電が生じている場合には、フィルター部22から出力される電気信号のレベルと、ピークホールド部23から出力される電気信号のレベルにはある一定レベル以上(例えば5dB以上)の差が生じている。このため、閾値記憶部34においてこの値(ここでは5dB)を記憶しておき、比較部33で両電気信号のレベル差がこの閾値を上回っているかどうかを判定することで、検出装置1自体で部分放電が生じているか否かの判定も行うことが可能となる。
【0054】
この構成の場合、作業員30は、単に判定表示部35の表示灯が所定の色に点灯しているかどうかを確認することのみで、部分放電が生じているか否かの判断ができるので、第1実施形態の構成と比較して、部分放電の判定が極めて容易化される。
【0055】
ここで、比較部33は、差分演算部32から送られる差分値が閾値記憶部34に記憶された閾値よりも上回っている時間が所定時間以上継続した段階で、部分放電が生じている旨の検出信号を判定表示部35に出力する構成としても構わない。このような構成とすることで、何らかの外乱や誤作動の発生によって瞬間的に差分値が上昇したような場合に、装置1によって部分放電が存在すると誤って判定されることが防止される。
【0056】
本実施形態では、
図6及び
図7に示すように、差分値そのものを表示する差分表示部42を備える構成としている。これにより、フィルター部22から出力される電気信号のレベルと、ピークホールド部23から出力される電気信号のレベルの差分値の大きさ自体を、作業員30に認識させることができる。ただし、この差分表示部42は、必ずしも必要というわけではない。
【0057】
なお、差分表示部42を備える構成の場合には、この差分表示部42に差分値そのものを表示させておくと共に、この値が所定の閾値を上回った段階で、差分値の表示態様(例えば表示色)を変化させることで、差分表示部42を判定表示部35として機能させることも可能である。
【0058】
更に、
図8に示すように、部分放電検出装置1が、検出結果を記憶するための記憶部36を備える構成としても構わない。具体的には、部分放電検出作業を行う対象となっていた現場が特定できるような情報(位置情報)と共に、比較部33から出力される信号を記憶部36に記憶させる。これにより、後で記憶部36に記憶されたデータを電子データとして外部出力することで、当該現場における検出結果を証拠として残すことができる。ここで、部分放電検出装置1が、当該装置に対して位置情報を外部から入力させるための情報入力部を更に備えるものとしても構わない。
【0059】
[第3実施形態]
上述した第2実施形態では、部分放電検出装置1が、第1表示部3と第2表示部4に加えて、部分放電の有無の判定結果を表示させる判定表示部35を備える構成であった。これに対し、本実施形態の部分放電検出装置1は、
図9に示すように、判定表示部35を備える一方で、第1表示部3及び第2表示部4を備えない構成である。なお、本実施形態における模式的な外観正面図としては、例えば、
図6に示す構成から、第1表示部3及び第2表示部4を外した構成とすることができる。
【0060】
このような構成とした場合においても、作業員30は、判定表示部35の表示内容を確認するだけで、当該現場にて部分放電が生じているかどうかを知ることができる。ただし、この実施形態の構成では、作業員30は、部分放電が発生しているか否かについては知ることができるが、部分放電の大きさを知ることができない。これに対し、第2実施形態の構成であれば、第1表示部3及び第2表示部4を備えているので、この表示態様を併せて確認することで、作業員30は部分放電の発生の有無とその大きさを知ることができる。
【0061】
[別実施形態]
第1実施形態に対し、差分演算部32及び差分表示部42を追加的に備えた構成としても構わない。この場合、作業員30は、差分表示部42に表示された差分値が、予め認識している閾値を上回っているか否かの判断を行うことで、部分放電の有無を判定することができる。