【実施例】
【0027】
以下、本発明を実施例、比較例をもって具体的に説明する。本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0028】
[実施例1]
ニッケルアルミニウム合金粉末の調製
ニッケル5.0kg及びアルミニウム5.0kgを高周波溶解炉により1500℃で溶解し、ニッケルアルミニウム合金に得た。このニッケルアルミニウム合金に機械粉砕を施し、直径が約5〜200μmとなるよう調製し、ニッケルアルミニウム合金粉末9.5kgを得た。
【0029】
展開
30%水酸化ナトリウム水溶液4.9kgに、キレート剤としてグルコン酸ナトリウム100gを溶解させ、ここに上記ニッケルアルミニウム合金粉末1kgを投入して展開を行った。展開後デカンテーションによる洗浄を繰り返して、pHを11.0以下まで下げ、スポンジニッケル触媒を得た。
【0030】
評価
得られたスポンジニッケル触媒の組成、比表面積、触媒活性を測定した。触媒活性の測定方法は、スポンジニッケル触媒の存在下、30℃及び常圧のH2雰囲気下でアセトンの接触水素化反応を行い、その際の水素吸収速度を測定した。この触媒活性値は、数値の高いほど触媒活性が優れていることを示す。
測定結果を表1に示す。
【0031】
[実施例2]
実施例1で調製したニッケルアルミニウム合金粉末を使用して、キレート剤をトリエタノールアミン25gに変更し、他は実施例1と同条件で展開を行った。
測定結果を表1に示す。
【0032】
[比較例1]
実施例1で調製したニッケルアルミニウム合金粉末を使用して、キレート剤を添加せずに実施例1、または実施例2と同様に展開を行った。測定結果を表1に示す。
【0033】
スポンジニッケル触媒ではキレート剤を添加しても組成では差がみられなかった。しかし比表面積は増加し、また触媒活性も上昇していることが観察された。これはキレート剤を添加しない場合は、触媒表面上に微量ではあるが水酸化アルミニウムが析出し、反応物質と触媒の接触を阻害してしまうが、キレート剤を添加した場合は、触媒表面上での水酸化アルミニウムの生成が抑制され、反応物質と触媒の接触が容易になる為と推測される。
【0034】
実施例1、実施例2を比較する限りでは、キレート剤の種類の影響は見られなかった。
【0035】
【表1】
【0036】
[実施例3]
コバルトアルミニウム合金粉末の調製
コバルト5.0kg及びアルミニウム5.0kgを高周波溶解炉により1600℃で溶解し、コバルトアルミニウム合金に得た。このコバルトアルミニウム合金に機械粉砕を施し、直径が約5〜200μmとなるよう調製し、コバルトアルミニウム合金粉末9.4kgを得た。
【0037】
展開
30%水酸化ナトリウム水溶液4.9kgに、キレート剤としてグルコン酸ナトリウム100gを溶解させ、ここに上記コバルトアルミニウム合金粉末1kgを投入して展開を行った。展開後デカンテーションによる洗浄を繰り返して、pHを11.0以下まで下げ、スポンジコバルト触媒を得た。
【0038】
評価
得られたスポンジコバルト触媒の組成、比表面積、触媒活性を測定した。触媒活性の測定方法は、スポンジコバルト触媒の存在下、30℃及び常圧のH2雰囲気下でアセトンの接触水素化反応を行い、その際の水素吸収速度を測定した。この触媒活性値は、数値の高いほど触媒活性が優れていることを示す。
測定結果を表2に示す。
【0039】
[比較例2]
実施例3で調製したコバルトアルミニウム合金粉末を使用して、キレート剤を添加せずに実施例3と同様に展開を行った。
測定結果を表2に示す。
【0040】
スポンジコバルト触媒ではキレート剤を添加することで、組成、比表面積、触媒活性に飛躍的な効果がみられた。キレート剤を添加したことにより、触媒表面上での水酸化アルミニウムの生成が抑制され、反応物質と触媒の接触が容易になる為と推測される。
【0041】
【表2】
【0042】
[実施例4]
銅アルミニウム合金粉末の調製
銅5.0kg及びアルミニウム5.0kgを高周波溶解炉により1000℃で溶解し、銅アルミニウム合金に得た。この銅アルミニウム合金に機械粉砕を施し、直径が約5〜200μmとなるよう調製し、銅アルミニウム合金粉末9.4kgを得た。
【0043】
展開
30%水酸化ナトリウム水溶液4.9kgに、キレート剤としてグルコン酸ナトリウム100gを溶解させ、ここに上記銅アルミニウム合金粉末1kgを投入して展開を行った。展開後デカンテーションによる洗浄を繰り返して、pHを11.0以下まで下げ、スポンジ銅触媒を得た。
【0044】
評価
得られたスポンジ銅触媒の組成、比表面積、触媒活性を測定した。触媒活性の測定方法は、スポンジ銅触媒の存在下、70℃においてアクリロニトリルを加水分解させ、この時のアクリルアミド生成速度を測定した。
この触媒活性値は、数値の高いほど触媒活性が優れていることを示す。
測定結果を表3に示す。
【0045】
[比較例3]
実施例4で調製した銅アルミニウム合金粉末を使用して、キレート剤を添加せずに実施例4と同様に展開を行った。
測定結果を表3に示す。
【0046】
スポンジ銅触媒では、キレート剤を添加しても組成では差は見られなかった。しかし比表面積は上昇し、また触媒活性も上昇していることが確認された。スポンジ銅触媒の場合でも、キレート剤の添加効果は確認された。
【0047】
【表3】
【0048】
[実施例5]
鉄アルミニウム合金粉末の調製
鉄5.0kg及びアルミニウム5.0kgを高周波溶解炉により1600℃で溶解し、鉄アルミニウム合金に得た。この鉄アルミニウム合金に、機械粉砕を施し、直径が約5〜200μmとなるよう調製し、鉄アルミニウム合金粉末9.6kgを得た。
【0049】
展開
30%水酸化ナトリウム水溶液4.9kgに、キレート剤としてグルコン酸ナトリウム100gを溶解させ、ここに上記鉄アルミニウム合金粉末1kgを投入して展開を行った。展開後デカンテーションによる洗浄を繰り返して、pHを11.0以下まで下げ、スポンジ鉄触媒を得た。
【0050】
評価
得られたスポンジ鉄触媒の組成、比表面積、触媒活性を測定した。触媒活性の測定方法は、スポンジ鉄触媒の存在下、30℃及び常圧のH2雰囲気下で、アセトンの接触水素化反応を行い、その際の水素吸収速度を測定した。この触媒活性値は、数値の高いほど触媒活性が優れていることを示す。
測定結果を表4に示す。
【0051】
[比較例4]
実施例5で調製した鉄アルミニウム合金粉末を使用して、キレート剤を添加せずに実施例5と同様に展開を行った。
測定結果を表4に示す。
【0052】
スポンジ鉄触媒ではキレート剤を添加することで、組成、比表面積、触媒活性に飛躍的な効果がみられた。これら触媒のエックス線回折分析を行った。
キレート剤を添加した場合は、鉄のピークのみが観察された。しかしキレート剤を添加しない場合は鉄のピーク以外に、鉄アルミニウム合金とは異なる鉄-アルミニウム由来の化合物のピークが観察された。このことからスポンジ鉄触媒の場合は、水酸化アルミニウム以外にも、触媒活性を有する金属である鉄とアルミニウムからなる化合物も副生し、これも触媒表面を覆ってしまい、比表面積を低下させ、その結果、反応物質と触媒の接触が阻害され、触媒活性を低下させたと推測される。
【0053】
【表4】