特許第6097600号(P6097600)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6097600
(24)【登録日】2017年2月24日
(45)【発行日】2017年3月15日
(54)【発明の名称】スポンジ金属触媒及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 25/02 20060101AFI20170306BHJP
   B01J 25/00 20060101ALI20170306BHJP
   B01J 37/00 20060101ALI20170306BHJP
【FI】
   B01J25/02 Z
   B01J25/00 Z
   B01J37/00 Z
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-46217(P2013-46217)
(22)【出願日】2013年3月8日
(65)【公開番号】特開2014-171958(P2014-171958A)
(43)【公開日】2014年9月22日
【審査請求日】2016年3月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】591180130
【氏名又は名称】日興リカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162961
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100105429
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 尚孝
(74)【代理人】
【識別番号】100146927
【弁理士】
【氏名又は名称】船越 巧子
(72)【発明者】
【氏名】樋渡達雄
(72)【発明者】
【氏名】高田祐之
(72)【発明者】
【氏名】若林正樹
【審査官】 佐藤 哲
(56)【参考文献】
【文献】 英国特許出願公開第00939383(GB,A)
【文献】 特開昭50−088022(JP,A)
【文献】 特開平05−023597(JP,A)
【文献】 米国特許第03941720(US,A)
【文献】 特表平09−505770(JP,A)
【文献】 米国特許第05840989(US,A)
【文献】 特開平09−131535(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0153837(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0199019(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00 − 38/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒活性を有する金属とアルミニウムとからなるアルミニウム合金からスポンジ金属触媒を製造する方法において、アルミニウムを溶出させる展開する方法として、トリエタノールアミン、エデト酸ナトリウム、クエン酸塩、及びグルコン酸塩からなる群より選択される1種又は2種以上のキレート剤を添加したアルカリ水溶液を使用し、当該展開後に洗浄する方法として、上澄水がpH8〜11の範囲になるまで水洗することを特徴とするスポンジ金属触媒の製造方法。
【請求項2】
上記キレート剤がグルコン酸塩又はトリエタノールアミンからなる請求項1記載のスポンジ金属触媒の製造方法。
【請求項3】
上記触媒活性を有する金属がニッケル、コバルト、銅、鉄、銀からなる群より1種又は2種以上の元素からなる請求項1記載のスポンジ金属触媒の製造方法。
【請求項4】
上記触媒活性を有する金属が更に助触媒としてバナジウム、マンガン、モリブデン、チタン、ジルコニウム、マグネシウム、クロム、スズ、及びガリウムからなる群より選択される1種又は2種以上の元素を含む請求項3記載のスポンジ金属触媒の製造方法。
【請求項5】
上記アルカリ水溶液が、アルカリの量は上記アルミニウム合金中のアルミニウム量に対して、モル比で0.01〜3.0倍、アルカリ水溶液の濃度は40%以下とすることを特徴とする請求項1〜4のいずれか記載のスポンジ金属触媒の製造方法。
【請求項6】
上記キレート剤を添加したアルカリ水溶液を使用するが、上記キレート剤の添加量は、アルカリ水溶液の量に対して、0.1〜10%とすることを特徴とする請求項1〜5のいずれか記載のスポンジ金属触媒の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学反応に用いられるスポンジ金属触媒、並びにそれらの製造に関する。
【背景技術】
【0002】
スポンジ金属触媒とは、ニッケルやコバルト、銅、鉄などの触媒活性を有する金属と、アルミニウム、亜鉛、ケイ素等の両性金属とからなる合金を、アルカリで両性金属を溶出させることで得られる多孔質状の金属触媒である。
スポンジ金属触媒は、触媒活性を有する金属の特性に応じて、水素化反応、脱水素反応、水和反応など、多様な有機化学の反応に広く用いられており、その種類は多い。たとえばニッケルとアルミニウムから得られるスポンジニッケル触媒は、貴金属触媒に比べ安価であることから、工業的に幅広く使用されおり、糖の水素化反応や、カルボニルからアルコールを得る水素化反応、ニトリルから1級アミンを得る水素化反応、不飽和結合の水素化反応などで使用されている。
【0003】
しかしスポンジ金属触媒は、貴金属触媒に比べ安価ではあるものの、一般的に触媒活性の劣化が大きい触媒であること、製品に占める触媒コストが高くなること、等があり、触媒の改良が求められている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の事情に鑑みて、本発明は、高活性なスポンジ金属触媒の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記課題を解決するため、鋭意研究を重ねた結果、触媒活性を有する金属とアルミニウム溶製鋳造してアルミニウム合金を調製し、これを粉砕、分級を行い目的に応じた粒度に調製し、得られた合金粉末を、適切な条件下においてアルミニウムを溶出させるところに工夫を加えることにより、高活性で高耐性の触媒が得られる技術を見出し、かかる知見をもとにして、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明は、触媒活性を有する金属とアルミニウムとからなるアルミニウム合金から、アルミニウムを溶出させる展開方法として、キレート剤を添加したアルカリ水溶液を使用することを特徴とするスポンジ金属触媒、及びその製造方法である。
【発明の効果】
【0007】
本発明にかかるスポンジ金属触媒の調製方法は、展開工程において、キレート剤を添加することにより、展開工程で溶出したアルミニウム化合物が触媒表面での析出を防ぐことができる。その結果、比表面積が高くなり、初期活性に優れた触媒を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明のスポンジ金属触媒の特徴は、触媒活性を有する金属とアルミニウムからなるアルミニウム合金から、アルミニウムを溶出させる展開方法として、キレート剤を添加したアルカリ水溶液を使用することにある。
【0009】
従来のスポンジ金属触媒は、アルカリ水溶液でアルミニウム合金からアルミニウムを溶出させていた。溶出したアルミニウムはアルミン酸イオンとしてアルカリ水溶液中に存在するが、一部は水酸化アルミニウムとして析出し、触媒表面上に存在する。
【0010】
本発明者は、この触媒表面を覆う水酸化アルミニウムの析出を抑制することで触媒活性が上がるものと推測し、鋭意研究を重ねた。その結果、アルミニウム合金からアルミニウムを溶出させる展開工程において、アルカリ水溶液にキレート剤を添加することで、比表面積の高い、高活性なスポンジ金属触媒が得られることを見出した。
【0011】
本発明に使用される合金は、触媒活性を有する金属とアルミニウムとからなる。その配合比は、その触媒活性を有する金属に応じ、各々配合比に応じた金属間化合物を形成させるものであり、一般的にアルミニウムが、70〜30%、触媒活性を有する金属が30〜70%である。
【0012】
本発明に使用される触媒活性を有する金属は、ニッケル、コバルト、銅、鉄、銀からなる群より1種または2種以上の元素から選ばれる。
【0013】
上記合金には、さらに助触媒として、バナジウム、マンガン、モリブデン、チタン、ジルコニウム、マグネシウム、クロム、スズ、及びガリウムからなる群より選択される1種又は2種以上の元素を添加することができる。これらは、スポンジ金属触媒の反応選択性や耐久性を向上させる目的で、実験によって選択される。添加量は合金に対し、0.1〜10%程度が良く、0.1%より少ないと、助触媒としての効果が発揮されず、また10%より多いと活性が阻害される。
【0014】
これら助触媒元素を添加する方法としては、合金鋳造時に直接添加する方法や、アルミニウム合金を展開後、修飾する方法が挙げられる。
【0015】
上記合金粒子の形状については、特に限定はなく、例えば、合金インゴットを破砕して得られる不規則形状であっても、ガスアトマイズ法、水アトマイズ法、回転円板遠心噴霧法などにより得られる球形状であってもよい。
【0016】
上記合金粒子の大きさも限定はされないが、粒子径分布の中心粒子径が10μm以上1mm以下であるのが好ましい。合金粒子の中心粒子径が1mmより大きいと、反応で使用される際、反応物質との接触が不利となり、活性は低下する。一方、中心粒子径が10μmよりも小さいと、反応終了後、沈降性及び濾過性が低下し、ハンドリング面で不利となる。
【0017】
本発明のスポンジ金属触媒を製造するには、アルミニウム合金からアルカリ水溶液でアルミニウムを溶出させる。この操作を展開というが、展開により、アルカリに不溶な触媒活性を有する金属を主体とする多孔質金属触媒が形成される。本発明ではこの展開方法に特徴があり、キレート剤の存在下、アルカリ水溶液でアルミニウム合金を展開する。展開する方法は予めキレート剤を含有するアルカリ水溶液に合金を投入する方法や、予めキレート剤、及びアルミニウム合金を分散させた水に、アルカリを添加していく方法が挙げられる。
【0018】
展開に使用するアルカリの種類は特に限定されないが、水酸化ナトリウムや、水酸化カリウムの水溶液が好ましく、アルカリの量は通常アルミニウム合金中のアルミニウム量に対して、モル比で0.01〜3.0倍であるが、好ましくは1.0〜2.0倍である。1.0倍を下回ると、展開途中でアルカリが不足し、アルミニウムが残存し、十分な活性が得られない。活性を抑制する目的で、意図的にアルミニウムを残存させる場合は、アルカリ量をモル比で1.0倍以下とすることもあるが、通常は1.0倍以上である。
【0019】
またアルカリ量が1.0倍以上であれば理論上展開は進行するが、コスト面を考慮すると実用的な範囲は1.0〜3.0倍である。
【0020】
アルカリ水溶液の濃度は40%以下で適宜選択される。40%以上でも展開は進行するが、アルカリ水溶液が高粘度となる為、ハンドリング面で不利となる。
【0021】
添加するキレート剤はアルミニウムイオンを捕集するものであればよく、トリエタノールアミンや、エデト酸ナトリウム、クエン酸塩、グルコン酸塩が挙げられるが、コスト面を考慮するとグルコン酸ナトリウムが優位である。
【0022】
キレート剤の添加量は、実験によれば、アルカリ水溶液に対し、0.1〜10%とするのが良い。0.1%以下では添加効果が低く、また10%以上では効果は同様であるものの、溶液の粘性が増すためハンドリング面で不利となり、またコスト面でも不利となる。
【0023】
展開温度は、110℃以下が好ましく、さらには10〜110℃の範囲がより好ましい。
展開時間は温度にもよるが、一般に10〜300分間程度で良い。
【0024】
展開終了後、水洗をする。水洗方法としては、デカンテーション法が一般的であり、上澄水のpHが8〜11の範囲になるまで水洗する。これにより、本発明のスポンジ金属触媒が得られる。
【0025】
本発明のスポンジ金属触媒は、上記の方法により、実質的に1mm程度以下の粉末として得られる。上記スポンジ金属触媒は、粉末状態のままで使用するほか、押出成形や打錠成形して成形体としたり、固定床触媒等として使用することもできる。
【0026】
スポンジ金属触媒は、通常、水封状態で保管する。使用にあたっては水系でそのまま使用できるが、必要に応じて不活性ガス中で乾燥させてから使用したり、また溶剤等で置換を行ってから使用することもできる。
【実施例】
【0027】
以下、本発明を実施例、比較例をもって具体的に説明する。本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0028】
[実施例1]
ニッケルアルミニウム合金粉末の調製
ニッケル5.0kg及びアルミニウム5.0kgを高周波溶解炉により1500℃で溶解し、ニッケルアルミニウム合金に得た。このニッケルアルミニウム合金に機械粉砕を施し、直径が約5〜200μmとなるよう調製し、ニッケルアルミニウム合金粉末9.5kgを得た。
【0029】
展開
30%水酸化ナトリウム水溶液4.9kgに、キレート剤としてグルコン酸ナトリウム100gを溶解させ、ここに上記ニッケルアルミニウム合金粉末1kgを投入して展開を行った。展開後デカンテーションによる洗浄を繰り返して、pHを11.0以下まで下げ、スポンジニッケル触媒を得た。
【0030】
評価
得られたスポンジニッケル触媒の組成、比表面積、触媒活性を測定した。触媒活性の測定方法は、スポンジニッケル触媒の存在下、30℃及び常圧のH2雰囲気下でアセトンの接触水素化反応を行い、その際の水素吸収速度を測定した。この触媒活性値は、数値の高いほど触媒活性が優れていることを示す。
測定結果を表1に示す。
【0031】
[実施例2]
実施例1で調製したニッケルアルミニウム合金粉末を使用して、キレート剤をトリエタノールアミン25gに変更し、他は実施例1と同条件で展開を行った。
測定結果を表1に示す。
【0032】
[比較例1]
実施例1で調製したニッケルアルミニウム合金粉末を使用して、キレート剤を添加せずに実施例1、または実施例2と同様に展開を行った。測定結果を表1に示す。
【0033】
スポンジニッケル触媒ではキレート剤を添加しても組成では差がみられなかった。しかし比表面積は増加し、また触媒活性も上昇していることが観察された。これはキレート剤を添加しない場合は、触媒表面上に微量ではあるが水酸化アルミニウムが析出し、反応物質と触媒の接触を阻害してしまうが、キレート剤を添加した場合は、触媒表面上での水酸化アルミニウムの生成が抑制され、反応物質と触媒の接触が容易になる為と推測される。
【0034】
実施例1、実施例2を比較する限りでは、キレート剤の種類の影響は見られなかった。
【0035】
【表1】
【0036】
[実施例3]
コバルトアルミニウム合金粉末の調製
コバルト5.0kg及びアルミニウム5.0kgを高周波溶解炉により1600℃で溶解し、コバルトアルミニウム合金に得た。このコバルトアルミニウム合金に機械粉砕を施し、直径が約5〜200μmとなるよう調製し、コバルトアルミニウム合金粉末9.4kgを得た。
【0037】
展開
30%水酸化ナトリウム水溶液4.9kgに、キレート剤としてグルコン酸ナトリウム100gを溶解させ、ここに上記コバルトアルミニウム合金粉末1kgを投入して展開を行った。展開後デカンテーションによる洗浄を繰り返して、pHを11.0以下まで下げ、スポンジコバルト触媒を得た。
【0038】
評価
得られたスポンジコバルト触媒の組成、比表面積、触媒活性を測定した。触媒活性の測定方法は、スポンジコバルト触媒の存在下、30℃及び常圧のH2雰囲気下でアセトンの接触水素化反応を行い、その際の水素吸収速度を測定した。この触媒活性値は、数値の高いほど触媒活性が優れていることを示す。
測定結果を表2に示す。
【0039】
[比較例2]
実施例3で調製したコバルトアルミニウム合金粉末を使用して、キレート剤を添加せずに実施例3と同様に展開を行った。
測定結果を表2に示す。
【0040】
スポンジコバルト触媒ではキレート剤を添加することで、組成、比表面積、触媒活性に飛躍的な効果がみられた。キレート剤を添加したことにより、触媒表面上での水酸化アルミニウムの生成が抑制され、反応物質と触媒の接触が容易になる為と推測される。
【0041】
【表2】
【0042】
[実施例4]
銅アルミニウム合金粉末の調製
銅5.0kg及びアルミニウム5.0kgを高周波溶解炉により1000℃で溶解し、銅アルミニウム合金に得た。この銅アルミニウム合金に機械粉砕を施し、直径が約5〜200μmとなるよう調製し、銅アルミニウム合金粉末9.4kgを得た。
【0043】
展開
30%水酸化ナトリウム水溶液4.9kgに、キレート剤としてグルコン酸ナトリウム100gを溶解させ、ここに上記銅アルミニウム合金粉末1kgを投入して展開を行った。展開後デカンテーションによる洗浄を繰り返して、pHを11.0以下まで下げ、スポンジ銅触媒を得た。
【0044】
評価
得られたスポンジ銅触媒の組成、比表面積、触媒活性を測定した。触媒活性の測定方法は、スポンジ銅触媒の存在下、70℃においてアクリロニトリルを加水分解させ、この時のアクリルアミド生成速度を測定した。
この触媒活性値は、数値の高いほど触媒活性が優れていることを示す。
測定結果を表3に示す。
【0045】
[比較例3]
実施例4で調製した銅アルミニウム合金粉末を使用して、キレート剤を添加せずに実施例4と同様に展開を行った。
測定結果を表3に示す。
【0046】
スポンジ銅触媒では、キレート剤を添加しても組成では差は見られなかった。しかし比表面積は上昇し、また触媒活性も上昇していることが確認された。スポンジ銅触媒の場合でも、キレート剤の添加効果は確認された。
【0047】
【表3】
【0048】
[実施例5]
鉄アルミニウム合金粉末の調製
鉄5.0kg及びアルミニウム5.0kgを高周波溶解炉により1600℃で溶解し、鉄アルミニウム合金に得た。この鉄アルミニウム合金に、機械粉砕を施し、直径が約5〜200μmとなるよう調製し、鉄アルミニウム合金粉末9.6kgを得た。
【0049】
展開
30%水酸化ナトリウム水溶液4.9kgに、キレート剤としてグルコン酸ナトリウム100gを溶解させ、ここに上記鉄アルミニウム合金粉末1kgを投入して展開を行った。展開後デカンテーションによる洗浄を繰り返して、pHを11.0以下まで下げ、スポンジ鉄触媒を得た。
【0050】
評価
得られたスポンジ鉄触媒の組成、比表面積、触媒活性を測定した。触媒活性の測定方法は、スポンジ鉄触媒の存在下、30℃及び常圧のH2雰囲気下で、アセトンの接触水素化反応を行い、その際の水素吸収速度を測定した。この触媒活性値は、数値の高いほど触媒活性が優れていることを示す。
測定結果を表4に示す。
【0051】
[比較例4]
実施例5で調製した鉄アルミニウム合金粉末を使用して、キレート剤を添加せずに実施例5と同様に展開を行った。
測定結果を表4に示す。
【0052】
スポンジ鉄触媒ではキレート剤を添加することで、組成、比表面積、触媒活性に飛躍的な効果がみられた。これら触媒のエックス線回折分析を行った。
キレート剤を添加した場合は、鉄のピークのみが観察された。しかしキレート剤を添加しない場合は鉄のピーク以外に、鉄アルミニウム合金とは異なる鉄-アルミニウム由来の化合物のピークが観察された。このことからスポンジ鉄触媒の場合は、水酸化アルミニウム以外にも、触媒活性を有する金属である鉄とアルミニウムからなる化合物も副生し、これも触媒表面を覆ってしまい、比表面積を低下させ、その結果、反応物質と触媒の接触が阻害され、触媒活性を低下させたと推測される。
【0053】
【表4】
【産業上の利用可能性】
【0054】
以上の記述から、本発明のスポンジ金属触媒は触媒活性が高く、且つ、耐久性もあって、工業的有用性は、極めて高い。