特許第6097615号(P6097615)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6097615
(24)【登録日】2017年2月24日
(45)【発行日】2017年3月15日
(54)【発明の名称】水晶発振器
(51)【国際特許分類】
   H03B 5/32 20060101AFI20170306BHJP
【FI】
   H03B5/32 J
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-71670(P2013-71670)
(22)【出願日】2013年3月29日
(65)【公開番号】特開2014-197744(P2014-197744A)
(43)【公開日】2014年10月16日
【審査請求日】2016年1月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000232483
【氏名又は名称】日本電波工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100093104
【弁理士】
【氏名又は名称】船津 暢宏
(72)【発明者】
【氏名】石嶺 真人
【審査官】 鬼塚 由佳
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−320413(JP,A)
【文献】 特開平11−289221(JP,A)
【文献】 特開2001−156633(JP,A)
【文献】 特開2000−269739(JP,A)
【文献】 特開平07−183805(JP,A)
【文献】 米国特許第05963098(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03B 5/30−5/42
H03B 1/00−5/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水晶振動子と前記水晶振動子の発振周波数信号を増幅する発振用トランジスタとを備えた発振回路と、前記発振回路の出力を増幅する増幅用トランジスタを備えた増幅回路とを有する水晶発振器であって、
前記発振回路及び前記増幅回路はセラミックコンデンサを備え、
振動環境下において前記セラミックコンデンサが発生する雑音と同等の雑音を発生するセンサと、
前記センサの出力を位相反転増幅する反転増幅回路とを備え、
前記センサからの雑音と前記発振回路及び前記増幅回路のセラミックコンデンサで発生する雑音とが相殺するように、前記反転増幅回路の出力が、前記増幅回路に入力されていることを特徴とする水晶発振器。
【請求項2】
水晶振動子が発振用トランジスタのベースに接続され、前記発振用トランジスタのコレクタが増幅用トランジスタのベースに接続され、
反転増幅回路の出力が、前記増幅用トランジスタのベースに接続されていることを特徴とする請求項1記載の水晶発振器。
【請求項3】
センサがコンデンサで構成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の水晶発振器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水晶発振器に係り、特に小型化を妨げず、振動環境下において出力周波数信号の位相雑音特性を向上させることができる水晶発振器に関する。
【背景技術】
【0002】
[従来の水晶発振器の概略構成:図3
従来の水晶発振器の概略構成について図3を用いて説明する。図3は、従来の水晶発振器の概略構成図である。
図3に示すように、従来の水晶発振器は、発振回路21と、増幅回路22とを備えている。
発振回路21は、水晶振動子と発振用トランジスタとを備え、特定周波数の振動を発生する。
増幅回路22は、増幅用トランジスタを備え、発振回路21からの周波数信号を増幅して高周波信号として出力する。
尚、各部の上に、出力される雑音波形を模式的に示している。
【0003】
高周波回路である発振回路21や増幅回路22には、バイパスコンデンサや同調回路が含まれる。
一般に、バイパスコンデンサや同調回路としては、セラミックコンデンサが用いられている。
【0004】
セラミックコンデンサに用いられるセラミックは圧電材料であるため、振動が加わった場合に圧電効果によって電圧が発生し、雑音の原因となる。
圧電材料に圧縮する力を加えると、材料の一方の端がプラスの電気を帯び、他方の端がマイナスの電気を帯びる。振動中の加速度が最大になる点で圧電材料の圧縮が最大となり、振動周波数に依存した周期で電圧が発生するものである。
【0005】
このように、振動環境下においては、セラミックコンデンサに起因する雑音が出力周波数信号に重畳されるため、位相雑音特性が劣化してしまう。
図3に示すように、発振回路21で発生した雑音は、増幅回路22で増幅され、位相雑音特性が劣化する。
【0006】
また、フィルム系コンデンサやタンタルコンデンサは、圧電効果を持たないため、電子雑音は発生しないが、サイズが大きく、高周波性能が劣ってしまう。
更に、セラミックコンデンサに振動を与えないよう、ダンパーゴム等で高周波回路を保持して振動を吸収する方法も考えられるが、構造的に大型化を避けることができず、好ましくない。
【0007】
[関連技術]
尚、出力周波数の位相雑音特性を良好にする技術としては、特開2000−269739号公報「水晶発振器」(株式会社富士通ゼネラル、特許文献1)、特開2001−36344号公報「水晶発振器」(株式会社富士通ゼネラル、特許文献2)、特開2012−156920号公報「温度補償型水晶発振器」(日本電波工業株式会社、特許文献3)がある。
【0008】
特許文献1には、外的な振動により水晶発振器で発生する側波帯を打ち消し、発振周波数のみが出力されるようにして、位相雑音の劣化を抑止することが記載されている。
特許文献2には、第1の水晶振動子と同一特性を有する第2の水晶振動子を同一方向に近接して取り付け、第2の水晶振動子の出力を反転増幅して出力し、当該出力信号で第1の水晶振動子を備えた電圧制御発振器を制御することで、機械的振動による発振周波数の変動をキャンセルすることが記載されている。
【0009】
また、特許文献3には、温度補償電圧生成部からの出力信号を分岐して、その一方を遅延し、他方から直流成分を除去し、位相を反転し、遅延された一方の信号と加算することで温度補償電圧発生部で発生した位相雑音が除去された温度補償電圧をVCO(Voltage Controlled Oscillator;電圧制御発振器)に印加する温度補償型水晶発振器が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2000−269739号公報
【特許文献2】特開2001−36344号公報
【特許文献3】特開2012−156920号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
以上のように、セラミックコンデンサを用いた従来の水晶発振器は、振動によって電圧が発生してしまい、位相雑音特性が劣化するという問題点があった。
また、フィルム系コンデンサやタンタルコンデンサを用いた場合、小型化の妨げになるという問題点があった。
【0012】
本発明は、上記実状に鑑みて為されたもので、小型化を妨げず、位相雑音特性を向上させることができる水晶発振器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記従来例の問題点を解決するための本発明は、水晶振動子と水晶振動子の発振周波数信号を増幅する発振用トランジスタとを備えた発振回路と、発振回路の出力を増幅する増幅用トランジスタを備えた増幅回路とを有する水晶発振器であって、発振回路及び増幅回路はセラミックコンデンサを備え、振動環境下においてセラミックコンデンサが発生する雑音と同等の雑音を発生するセンサと、センサの出力を位相反転増幅する反転増幅回路とを備え、センサからの雑音と発振回路及び増幅回路のセラミックコンデンサで発生する雑音とが相殺するように、反転増幅回路の出力が、増幅回路に入力されていることを特徴としている。
【0014】
また、本発明は、上記水晶発振器において、水晶振動子が発振用トランジスタのベースに接続され、発振用トランジスタのコレクタが増幅用トランジスタのベースに接続され、反転増幅回路の出力が、増幅用トランジスタのベースに接続されていることを特徴としている。
【0015】
また、本発明は、上記水晶発振器において、センサがコンデンサで構成されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、水晶振動子と水晶振動子の発振周波数信号を増幅する発振用トランジスタとを備えた発振回路と、発振回路の出力を増幅する増幅用トランジスタを備えた増幅回路とを有する水晶発振器であって、発振回路及び増幅回路はセラミックコンデンサを備え、振動環境下においてセラミックコンデンサが発生する雑音と同等の雑音を発生するセンサと、センサの出力を位相反転増幅する反転増幅回路とを備え、センサからの雑音と発振回路及び増幅回路のセラミックコンデンサで発生する雑音とが相殺するように、反転増幅回路の出力が、増幅回路に入力されている水晶発振器としているので、振動環境下で発振回路及び増幅回路のセラミックコンデンサが発生する雑音を、センサで発生する雑音で増幅回路において打ち消すことができ、小型化を妨げず、出力周波数信号における位相雑音特性を向上させることができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施の形態に係る水晶発振器の概略構成図である。
図2】本水晶発振器の回路構成例を示す回路図である。
図3】従来の水晶発振器の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
[実施の形態の概要]
本発明の実施の形態に係る水晶発振器は、高周波回路で使用されているセラミックコンデンサと同等の特性を備えたセンサと、センサからの出力を入力して位相反転増幅するオペアンプとを備え、オペアンプの出力を増幅用トランジスタのベースに接続した構成であり、増幅回路において高周波回路のセラミックコンデンサから発生した雑音を、センサで発生させた同等の雑音を反転して混合することで打ち消すことができ、特にAM雑音を効果的に補償して、出力周波数信号における位相雑音を向上させることができるものである。
【0019】
[実施の形態に係る水晶発振器の概略構成:図1
本発明の実施の形態に係る水晶発振器の概略構成について図1を用いて説明する。図1は、本発明の実施の形態に係る水晶発振器の概略構成図である。
図1に示すように、本発明の実施の形態に係る水晶発振器(本水晶発振器)は、従来と同様の部分として、水晶振動子及び発振用トランジスタを備えた発振回路31と、増幅用トランジスタを備えた増幅回路32と、本水晶発振器の特徴部分であるセンサ33と、反転増幅回路34とを備えている。
【0020】
そして、センサ33で発生させた雑音を、反転増幅回路34で反転増幅して、増幅回路32において、入力信号と混合(ミキシング)して増幅させることにより、発振回路31及び増幅回路32のセラミックコンデンサによって生じる雑音をキャンセルするものである。
また、本水晶発振器は、発振回路31及び増幅回路32にセラミックコンデンサを用いることで、小型化を図ることができるものである。
【0021】
本水晶発振器の特徴部分について具体的に説明する。
センサ33は、振動環境下において、発振回路31及び増幅回路32で使用されているコンデンサから発生する雑音と同等の雑音を発生する圧電素子であり、例えば、発振回路31及び増幅回路32のコンデンサと同等のセラミックコンデンサで実現される。
【0022】
反転増幅回路34は、センサ33からの出力を位相反転して増幅するものであり、オペアンプ等で実現される。
本水晶発振器では、反転増幅回路34の出力は、増幅回路32に入力されて発振回路31の出力信号に混合されて増幅される。
【0023】
各部における雑音波形について簡単に説明する。
センサ33では、発振回路31と増幅回路32のセラミックコンデンサで発生する雑音と同等の雑音が発生する。尚、ここでは便宜的に発振回路31と増幅回路32で発生する雑音を合わせたものを発振回路31の上に記載している。
【0024】
反転増幅回路34では、センサ33の出力波形を反転して増幅した波形が得られる。
そして、反転増幅回路34からの出力が混合された増幅回路32の出力信号では、高周波回路のセラミックコンデンサからの雑音とセンサ33からの雑音とが相殺されるため、増幅回路32の出力は雑音成分を含まないものとなる。
【0025】
[本水晶発振器の回路構成例:図2
次に、本水晶発振器の回路構成例について図2を用いて説明する。図2は、本水晶発振器の回路構成例を示す回路図である。
図2に示すように、本発振器はコルピッツ型の発振器として構成され、基本的な構成部分として、水晶振動子X1と、水晶振動子X1の発振周波数を増幅するトランジスタ(発振用トランジスタ)Q1と、増幅回路を構成するトランジスタ(増幅用トランジスタ)Q2とを備えている。
【0026】
そして、トランジスタQ1のベースに水晶振動子X1が接続され、トランジスタQ1のコレクタには並列接続のコイルL1とコンデンサC3から成る共振回路が接続され、電源電圧に接続されている。電源電圧は図示を省略している。
更に、電源電圧は、抵抗R1を介してトランジスタQ1のベースに印加され、ベースは抵抗R2を介して接地されている。
【0027】
また、トランジスタQ1のエミッタは、抵抗R4を介して接地され、トランジスタQ1のベースは直列接続のコンデンサC1とコンデンサC2を介して接地され、コンデンサC1とコンデンサC2との間の点がエミッタに接続している。
【0028】
そして、トランジスタQ1のコレクタから増幅された発振周波数がトランジスタQ2のベースに印加され、トランジスタQ2のコレクタには、並列接続のコイルL2とコンデンサC4から成る共振回路を介して電源電圧が印加され、更に、コレクタには、コンデンサC6を介して出力端子が設けられている。
【0029】
また、トランジスタQ2のベースは、抵抗R5を介して電源電圧が印加され、抵抗R7を介して接地されている。
トランジスタQ2のエミッタには、抵抗R6及びコンデンサC5が並列に接続され、それぞれ他端が接地されている。
更に、抵抗R5と抵抗R7の間の点が、コンデンサC7を介してトランジスタQ1のコレクタに接続されている。
【0030】
そして、本水晶発振器の特徴部分として、センサ33と、反転増幅回路(オペアンプ)34とが設けられており、センサ33を構成するコンデンサC8は、一端が抵抗R8を介してオペアンプ34の反転入力端子(−端子)に接続され、他端が接地されている。
また、オペアンプ34の出力端子と反転入力端子(−端子)とは、抵抗R9を介して接続され、非反転入力端子(+端子)は接地されている。
更に、オペアンプ34の出力端子は、抵抗R10を介して増幅用トランジスタQ2のベースに接続されている。
【0031】
すなわち、本水晶発振器では、センサ33で発生した雑音が、オペアンプ34によって位相反転されて増幅され、増幅回路32のトランジスタQ2のベースに入力される。これにより、発振回路31のトランジスタQ1から出力される信号と、オペアンプ34からの出力信号とが増幅回路32において混合される。
センサ33で発生する雑音は、発振回路31及び増幅回路32を構成するセラミックコンデンサと同等の雑音であり、センサ33からの雑音と発振回路31及び増幅回路32のセラミックコンデンサで発生する雑音とが相殺されて増幅され、増幅回路32の出力段において雑音をキャンセルできるものである。
【0032】
尚、図2に示した本水晶発振器の構成では、位相雑音の内、特にAM雑音を効果的に除去することができるものである。
このようにして、本水晶発振器では出力周波数信号における位相雑音特性を向上させることができるものである。
また、ここでは、センサ33としてコンデンサを用いているが、高周波回路で用いられているセラミックコンデンサと同等の雑音を発生するものであれば、他のセンサ用素子を使用してもよい。水晶振動子をセンサとして用いることも可能である。
【0033】
[実施の形態の効果]
本発明の実施の形態に係る水晶発振器によれば、高周波回路にセラミックコンデンサを備え、高周波回路で使用されているセラミックコンデンサと同等の特性を備えたセンサ33と、センサ33からの出力を入力して位相反転増幅するオペアンプ34とを備え、オペアンプ34の出力を増幅用トランジスタQ2のベースに接続した構成であり、振動環境下において高周波回路のセラミックコンデンサから発生した雑音を、センサ33で発生させた同等の雑音を反転して増幅回路32に混合して重畳させることで打ち消すことができ、特にAM雑音を効果的に補償して、出力周波数信号における位相雑音を向上させることができ、また、小型化を妨げない効果がある。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は、小型化を妨げず、振動環境下において出力周波数信号の位相雑音特性を向上させることができる水晶発振器に適している。
【符号の説明】
【0035】
21,31...発振回路、 22,32...増幅回路、 33...センサ、 34...反転増幅回路、 X1...水晶振動子、 R1〜R10...抵抗、 C1〜C8...コンデンサ、 L1,L2...コイル、 Q1...発振用トランジスタ、 Q2...増幅用トランジスタ
図1
図2
図3