特許第6097616号(P6097616)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本電産コパル株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6097616-レンズ駆動装置 図000002
  • 特許6097616-レンズ駆動装置 図000003
  • 特許6097616-レンズ駆動装置 図000004
  • 特許6097616-レンズ駆動装置 図000005
  • 特許6097616-レンズ駆動装置 図000006
  • 特許6097616-レンズ駆動装置 図000007
  • 特許6097616-レンズ駆動装置 図000008
  • 特許6097616-レンズ駆動装置 図000009
  • 特許6097616-レンズ駆動装置 図000010
  • 特許6097616-レンズ駆動装置 図000011
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6097616
(24)【登録日】2017年2月24日
(45)【発行日】2017年3月15日
(54)【発明の名称】レンズ駆動装置
(51)【国際特許分類】
   G03B 5/00 20060101AFI20170306BHJP
【FI】
   G03B5/00 J
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-71945(P2013-71945)
(22)【出願日】2013年3月29日
(65)【公開番号】特開2014-197069(P2014-197069A)
(43)【公開日】2014年10月16日
【審査請求日】2015年7月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001225
【氏名又は名称】日本電産コパル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】特許業務法人 英知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡部 博之
(72)【発明者】
【氏名】町田 卓也
(72)【発明者】
【氏名】色摩 和雄
【審査官】 荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−185893(JP,A)
【文献】 特開2014−174491(JP,A)
【文献】 特開2014−174490(JP,A)
【文献】 特開2014−174324(JP,A)
【文献】 特開2014−174427(JP,A)
【文献】 特開2002−196382(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズを保持すると共に、枠体内で光軸に直交する平面内で移動自在に支持されたレンズ保持枠を有するレンズ駆動装置であって、
前記レンズ保持枠を前記光軸に直交する平面内で移動させる駆動部と、
前記枠体または前記レンズ保持枠のどちらか一方に設けられる第1凹部と、
前記枠体または前記レンズ保持枠のどちらか他方に設けられる第2凹部と、
前記第1凹部と前記第2凹部とで形成された空間内に配置されて、前記光軸方向で前記枠体に対して前記レンズ保持枠を支持する球体と、を備え、
前記空間内において、前記第1凹部は、前記球体を支持する底面と前記底面から立ち上がる側面とで形成される円柱状の第1の球収容部と、前記第1の球収容部の開放側で前記第1の球収容部より大径の円柱状の第2の球収容部と、を有していることを特徴とするレンズ駆動装置。
【請求項2】
前記球体の半径を「r」、前記第1の球収容部の半径を「X」、前記球体の前記第1の球収容部の中心からの移動量を「a」、としたときに、
r<X<r+a
を満たしている、ことを特徴とする請求項に記載のレンズ駆動装置。
【請求項3】
前記第1凹部は、前記第1の球収容部の側面と前記第2の球収容部の底面とによって形成される段差部をさらに有する、請求項1または2のいずれかに記載のレンズ駆動装置。
【請求項4】
前記第2凹部は、円形の底面と、当該第2凹部の開放側に向かうに従って徐々に拡径された側面とを有している、請求項1ないしのいずれかに記載のレンズ駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズを光軸に対して直交する方向に移動させて像振れ補正を行うレンズ駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、このような分野の技術文献として特開2002−196382号公報がある。この公報には、撮影装置や観察装置に組み込むことが可能な振れ補正装置が記載されている。この振れ補正装置は、光軸に直交する平面内で移動して振れ補正動作を行う振れ補正レンズと、装置本体に対して振れ補正レンズを光軸に直交する平面内でシフト移動させるシフト部材と、を備えている。装置本体とシフト部材との間にはボールが配置されており、このボールは装置本体内で凹状に形成された制限枠内で移動可能となっている。制限枠を光軸方向から見たときの形状は正方形となっており、ボールの半径をr、ボールの移動量をb、機械的な余裕量をcとしたときに、制限枠の一辺の長さは(r+b+c)となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−196382号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、上述したような制限枠では、装置本体とシフト部材の間に球体が配置されているため、光軸に直交する平面内でシフト部材を滑らかに移動させることができる。しかしながら、球体が配置される制限枠は、装置本体で凹状に形成されているので、装置本体における制限枠が形成されている部分の肉厚が薄くなっている。よって、球体が移動可能な制限枠の領域を大きくすると肉厚が薄い部分の領域が拡大するため、装置本体の強度が低下する虞がある。
【0005】
そこで、本発明は、球体の移動量を確保すると共に、肉厚が薄い部分の領域を低減させることが可能なレンズ駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明は、レンズを保持すると共に、枠体内で光軸に直交する平面内で移動自在に支持されたレンズ保持枠を有するレンズ駆動装置であって、レンズ保持枠を光軸に直交する平面内で移動させる駆動部と、枠体とレンズ保持枠とで形成された空間内に配置されて、光軸方向で枠体に対してレンズ保持枠を支持する球体と、を備え、枠体に形成された凹部又はレンズ保持枠に形成された凹部は、球体を支持する底面と底面から立ち上がる側面とで形成される円柱状の第1の球収容部と、第1の球収容部の開放側で拡径された円柱状の第2の球収容部と、を有していることを特徴とする。
【0007】
本発明に係るレンズ駆動装置によれば、球体を収容するための凹部が枠体又はレンズ保持枠に設けられている。枠体の凹部又はレンズ保持枠の凹部は、円柱状の第1の球収容部と、第1の球収容部の開放側で拡径された円柱状の第2の球収容部とを有し、小径の第1の球収容部と大径の第2の球収容部とを備えた段付き円柱形状になっている。このように、本発明では、球体を収容するための凹部が段付き部分を有する円柱状となっており、その下段には第2の球収容部に対して縮径された第1の球収容部を有しているので、第1の球収容部を有しない場合よりも、光軸方向及び光軸に直交する方向の肉厚が薄い領域を段付き部分の高さだけ少なくすることができ、これによって、肉厚が薄くなりがちな厚みの領域を低減させることができる。また、第1の球収容部の開放側には、第1の球収容部の側面に対して拡径された第2の球収容部が設けられているので、第2の球収容部を有しない場合と比較して光軸の直交方向への球体の移動量を大きくすることができる。
【0008】
また、球体の半径を「r」、第1の球収容部の半径を「X」、球体の第1の球収容部の中心からの移動量を「a」、としたときに、r<X<r+aを満たしている。
【0009】
上記の構成にあっては、円柱状となっている第1の球収容部の半径を、球体の半径と球体の移動量の和よりも短くすることによって、第1の球収容部の径を必要最小限としている。このように、第1の球収容部の径を必要最小限とすることで、肉厚が薄い部分の領域も必要最小限とすることができるので、枠体又はレンズ保持枠の部品精度と強度が低下する虞を確実に回避することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、球体の移動量を確保すると共に、肉厚が薄い部分の領域を低減させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に係るレンズ駆動装置の一実施形態を示す斜視図である。
図2図1のレンズ駆動装置の蓋部を外した状態を示す斜視図である。
図3図1のレンズ駆動装置を示す分解斜視図である。
図4図1のレンズ駆動装置を示す分解斜視図である。
図5】可動枠及びFPCを示す斜視図である。
図6】ベース部及び可動枠を示す断面図である。
図7】可動枠及びレンズ保持枠を示す断面図である。
図8】レンズ保持枠を示す斜視図である。
図9】吸引部を示す断面図である。
図10】可動枠の球受容凹部とレンズ保持枠の球受容凹部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しつつ本発明に係るレンズ駆動装置の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0013】
図1に示されるレンズ駆動装置は、像振れ補正を行うデジタルカメラ、携帯電話機あるいはスマートフォン等に用いられ、撮像素子であるCCD[Charge Coupled Device]イメージセンサやCMOS[Complementary Metal Oxide Semiconductor]イメージセンサの前方に配置されて利用される。
【0014】
図1図3に示されるように、レンズ駆動装置1は、直方体状の蓋体2と、蓋体2の開口を塞ぐための矩形状のベース部3と、焦点の調節を行う焦点調節駆動部4と外部回路との間の電気的接続を確保するための焦点調節用のフレキシブルプリント基板(以下、FPCとする)5と、像振れ補正駆動部(駆動部)6と外部回路との電気的接続を確保するための像振れ補正用のFPC7と、少なくとも1枚以上のレンズRを収容する略円柱状のレンズバレル8と、を備えている。なお、以下では、レンズRの光軸Cに対して直交する方向をX軸、光軸C方向及びX軸に直交する方向をY軸として説明する。
【0015】
蓋体2は、レンズRの光軸Cを中心とする円形の開口部2aを有する箱状の部材であり、ベース部3は、光軸Cを中心とする円形の開口部3aを有する矩形枠状の部材である。レンズバレル8は、レンズRを、開口部2a及び開口部3aから露出させた状態で保持している。ベース部3は、ベース部3の周縁部の一辺から光軸Cの方向に突出する突起部3bを有しており、突起部3bの中央部には矩形状の開口部3cが形成されている。この開口部3cには、FPC5の先端部5aに固定されたH形の樹脂製絶縁板9が入り込み、開口部3cを塞いでいる。
【0016】
FPC7は、蓋体2及びベース部3から外方に延在する延長部7cを有すると共に、蓋体2及びベース部3に近接した部分では二股に分かれた分岐部7aになっている。FPC7の二股に分かれた分岐部7aは、図2に示されるように、蓋体2の内部においてベース部3の係止突起3gに挟まれて固定されている。また、各分岐部7aの先端部7bは、その内側が可動枠(枠体)10に固定され、先端部7bの外側には像振れ補正駆動部6のマグネット6a,6bの吸着力を増幅させるリターンヨーク11が固定されている。先端部7bには、リターンヨーク11が固定されている面の反対側の面に、磁気検出のためのホール素子12が固定されている(図3参照)。
【0017】
可動枠10は、ベース部3に光軸C方向に移動自在に支持されている。図3図5に示されるように、可動枠10は、光軸Cを中心とする円形の開口部10aと、片側の各隅部に形成された長円状のコイル装填部10bと、可動枠10の外周面に形成された球体13が入り込む3個の第1の球受容凹部70(図5参照)と、を有している。開口部10aにはレンズバレル8が入り込むようになっており、コイル装填部10bには、像振れ補正駆動部6の長円状を成すコイル6c,6dが嵌合されて固定される。また、可動枠10は、可動枠10の周縁部の片側で光軸Cの方向に突出するマグネット保持部10eと、可動枠10の隅部であって光軸Cを挟んでマグネット保持部10eの対向側に設けられた2個の突起部10fと、を備えている。
【0018】
マグネット保持部10eは、光軸C方向から見て三日月状に形成されており、マグネット保持部10eの両端部10gには、その外側において半円柱状に切り欠かれて光軸C方向に延在する球受け部10hが設けられている。一方の球受け部10hには2個の球体15が入り込み、他方の球受け部10hには1個の球体15が入り込んでいるが、他方の球受け部10hに2個の球体15が入り込み、一方の球受け部10hに1個の球体15が入り込んでいてもよい。
【0019】
ところで、図4に示されるように、ベース部3の突起部3bの両端に形成された支柱部3fには、半円柱状に切り欠かれた球受け部3dが3個形成されており、それぞれの球受け部3dは、上記の球受け部10hに対応した位置に形成されている。また、ベース部3には、図6に示されるように、ベース部3の突起部3bの内側にコイル4a及びヨーク16を嵌合させるための嵌合凹部3eが形成されており、この嵌合凹部3eに焦点調節駆動部4のコイル4aと2個のヨーク16とが嵌合される。コイル4aは、光軸C方向から見て台形の上底部4b及び脚部4cを成すように形成されており、上底部4bの両端側に形成された脚部4cの外側にそれぞれヨーク16が配置される。
【0020】
また、図5に示されるように、可動枠10のマグネット保持部10eの外周には、光軸C方向及びY軸方向に延在する平坦状のマグネット固定部10iと、マグネット固定部10iに対して45度傾いて形成されるマグネット固定部10jと、マグネット固定部10iに対してマグネット固定部10jの逆側に45度傾いて形成されるマグネット固定部10kと、が設けられている。マグネット固定部10i,10j,10kのそれぞれには、焦点調節駆動部4のマグネット4d,4e,4fが固定される。可動枠10がベース部3に保持された状態では、図6に示されるように、マグネット4dの外側に台形状のコイル4aの上底部4bが対面し、マグネット4e,4fの外側にコイル4aのそれぞれの脚部4cが対面している。
【0021】
また、コイル4aの上底部4bの内側には磁場検出素子であるホール素子17(図3参照)が配置され、ホール素子17はFPC5の先端部5aに固定されている。ホール素子17の両端側には、上底部4bから脚部4cにかけて延在する2つの鉄製のリード18が配置されており、脚部4c側のリード18の端部18aは、図6に示されるように、脚部4cの外側に延出された状態で脚部4cのコイル線に電気的に接続されている。
【0022】
上記のコイル4a及びマグネット4d,4e,4fが協働することによって、可動枠10は、ベース部3に対して光軸C方向に移動し、焦点の調節及び焦点距離の変更を行うことが可能となる。また、ヨーク16がコイル4aの脚部4cの外側に設けられることにより、ベース部3に嵌合されたヨーク16が可動枠10に固定されたマグネット4d,4e,4fに吸引されて、ベース部3に対する可動枠10の吸引力が光軸Cに直交する方向に発生する。また、可動枠10の球受け部10h(図5参照)とベース部3の球受け部3d(図4参照)との間に球体15が介在した状態でベース部3と可動枠10とが吸引されるので、可動枠10が球体15を介してベース部3に摺動自在に支持される。
【0023】
また、図4に示されるように、可動枠10の隅部に設けられた2個の突起部10fは係合突起10mを有しており、突起部10fの光軸Cを挟んで対向側に設けられるマグネット保持部10eの両端部10gには、その外側にそれぞれ係合突起10nが設けられている。各係合突起10mは、レンズ保持枠20の浮き上がりを防止するための押さえ板21の係合孔21aにそれぞれ係合され、各係合突起10nは押さえ板21の係合孔21bにそれぞれ係合される。これにより、可動枠10と押さえ板21とがレンズ保持枠20を挟んだ状態で固定される。
【0024】
図7に示されるように、レンズバレル8を保持するレンズ保持枠20は、可動枠10に対して、光軸Cの直交方向に移動自在に支持されている。レンズ保持枠20は、レンズバレル8を嵌合させる円形の開口部20aと、マグネット6a,6bを固定させるマグネット嵌合孔20bと、レンズ保持枠20と可動枠10とを互いに吸引させるための吸引マグネット22a,22bを固定するためのマグネット嵌合凹部20cと、球体13を受け入れる第2の球受容凹部80(図4参照)と、を備えている。
【0025】
マグネット嵌合孔20bは、可動枠10のコイル装填部10b(図6参照)に対応する位置に2個設けられている。マグネット嵌合孔20bに嵌め込まれたマグネット6a,6bは、光軸C方向に、コイル装填部10bに嵌め込まれたコイル6c,6dと対面する。レンズ保持枠20は、コイル6c,6dとマグネット6a,6bとの協働によって、可動枠10に対して光軸Cの直交方向に移動して像振れ補正を行うことが可能となる。
【0026】
図8に示されるように、マグネット嵌合凹部20cは3個設けられており、それぞれのマグネット嵌合凹部20cには、4極着磁された2個の吸引マグネット22aと、吸引マグネット22aより大きいサイズの4極着磁された吸引マグネット22bとが嵌め込まれる。各吸引マグネット22aは、光軸Cに対して対称となる位置に配置され、吸引マグネット22bは、レンズ保持枠20の周方向で吸引マグネット22a間に配置されている。
【0027】
また、図5に示されるように、可動枠10は、フォーク状の鉄片14a,14bを挿入するための孔部である金属片挿入部10dを3個有しており、それぞれの金属片挿入部10dはマグネット嵌合凹部20cに対応する位置に設けられている。それぞれの金属片挿入部10dには、2個の鉄片14aと、鉄片14aより大きいサイズの鉄片14bとが挿入される。各鉄片14aは、光軸Cに対して互いに対称となる位置に配置され、鉄片14bは、可動枠10の周方向で鉄片14a間に配置されている。なお、各鉄片14aと鉄片14bが配置される位置は、像振れ補正駆動部6のコイル6c,6dから離れた位置となっている。
【0028】
可動枠10に配置された鉄片14a,14bは、それぞれレンズ保持枠20に配置された吸引マグネット22a,22bと光軸C方向で対面する。図9に示されるように、可動枠10の金属片挿入部10dに挿入された鉄片14aは、二股に分かれて、レンズ保持枠20の吸引マグネット22aと対面するようになっており、光軸C方向で吸引マグネット22aと鉄片14aとが引きつけ合うことによって、可動枠10及びレンズ保持枠20を互いに吸引させる。このように、吸引マグネット22aと鉄片14aとで、レンズ保持枠20が可動枠10を吸引する吸引部30aを構成している。これと同様に、鉄片14bは吸引マグネット22bと対面するようになっており、鉄片14bと吸引マグネット22bとで吸引部30bを構成している(図7参照)。また、吸引部30a,30bの磁気吸引力は、像振れ補正駆動部6のマグネット6a,6bとリターンヨーク11との磁気吸引力より強くなっているので、レンズ保持枠20を可動枠10に対して光軸Cの直交方向に移動させた際に、確実にレンズ保持枠20を可動枠10内の定位置に移動させることができる。
【0029】
また、図3に示されるように、光軸C方向におけるレンズ保持枠20の押さえ板21側には、光軸C方向から見たときの形状が三日月状のバックヨーク25が設けられている。このバックヨーク25は、組み立て時には、レンズ保持枠20のマグネット6a,6b,22a,22b(図7参照)に密着される。
【0030】
次に、レンズ保持枠20の動作について説明する。
【0031】
レンズ駆動装置1が組み込まれた機器(例えばカメラ)で撮影しているときに手振れが発生すると、光軸Cの位置が変化することがある。この場合、ジャイロセンサ等の手振れ検出センサが手振れを検知し、制御手段(不図示)は、光軸Cの位置が所定位置に維持されるように、レンズ保持枠20の駆動信号をFPC7を介してコイル6c,6dに出力する。
【0032】
そして、マグネット6a及びコイル6cは、図7に示されるように、マグネット6a,コイル6cと開口部20a(レンズR)の中心Oとを結ぶ直線の方向に働く駆動力F1を発生させ、レンズ保持枠20を可動枠10に対して駆動力F1が働く方向に移動させる。マグネット6b及びコイル6dは、マグネット6b,コイル6dと中心Oとを結ぶ直線の方向に働く駆動力F2を発生させ、レンズ保持枠20を可動枠10に対して駆動力F2が働く方向に移動させる。この駆動力F1,F2が働く方向へのレンズ保持枠20の移動により、光軸Cの位置が定位置に移動され、手振れが補正される。
【0033】
次に、レンズ保持枠20の第2の球受容凹部80と可動枠10の第1の球受容凹部70について説明する。第2の球受容凹部80は、図4に示されるように、可動枠10における第1の球受容凹部70(図5参照)に対応する位置に3個設けられている。レンズ保持枠20が可動枠10に配置された状態では、第2の球受容凹部80と第1の球受容凹部70とにより、球体13が入る程度の大きさの空間が形成される。この第2の球受容凹部80と第1の球受容凹部70とで形成される空間に球体13を入れることにより、吸引部30a,30bはこれらの球体13でレンズ保持枠20を移動自在に支持させる。また、光軸Cに直交する平面において、3個の球体13を結ぶと二等辺三角形となり、レンズ保持枠20が可動枠10に三点支持されることとなる。よって、レンズ保持枠20を可動枠10に対して安定した状態で移動させることができる。
【0034】
図10に示されるように、レンズ保持枠20の球受容凹部80は、円形の底面82と、球受容凹部80の開放側に向かうに従って徐々に拡径された側面81とで円錐台形状になっている。また、可動枠10の球受容凹部70は、球体13を支持し光軸Cの直交方向に延在する底面73を備えた円柱状の第1の球収容部71と、第1の球収容部71の開放側で拡径された円柱状の第2の球収容部72と、を有する段付き円柱形状になっている。第1の球収容部71は底面73から光軸C方向に立ち上がる側面71aを有しており、第2の球収容部72は、第1の球収容部71における側面71aの開放側の端部から拡径し光軸Cに対して直交方向に延在する底面72aと、底面72aから光軸C方向に立ち上がる側面72bとを有している。球受容凹部70では、第1の球収容部71の側面71aと第2の球収容部72の底面72aとによって段差部75が形成されている。
【0035】
ここで、レンズ保持枠20の球受容凹部80と可動枠10の球受容凹部70との間に介在した球体13の第1の球収容部71の中心からの移動量を「a」とすると、中心O(図7参照)に対するレンズ保持枠20の移動量は「2a」である。レンズ保持枠20が中心Oから「2a」移動したときに球体13が第1の球収容部71の側面71aの上端に当接するようになっており、球体13の移動可能量(移動可能範囲)は第1の球収容部71の中心から「a」である。このように球受容凹部70では、球体13の半径を「r」としたときに、球収容部71の半径「X」は、r<X<r+aを満たす。また、第1の球収容部71における側面71aの高さと、第2の球収容部72における底面72aの径方向の幅と、第2の球収容部72における側面72bの高さは「r/2」となっている。
【0036】
レンズ保持枠20が中心Oから移動して球体13が第1の球収容部71の側面71aの上端、すなわち側面71aのエッジに当接した後、レンズ保持枠20が中心Oに向かって移動すると球体13は第1の球収容部71の側面71aから離れる。球受容凹部70にはグリス等を塗布しているが、球体13は側面71aの面ではなく側面71aのエッジに当接するので、球体13が側面71aから離れるときに、球体13がグリス等によって側面71aに張り付くことが低減されている。
【0037】
以上のようにレンズ駆動装置1では、可動枠10が球体13を収容するための第1の球受容凹部70を有している。そして、可動枠10の球受容凹部70は、円柱状の第1の球収容部71と、第1の球収容部71の開放側で拡径された円柱状の第2の球収容部72とを有し、小径の第1の球収容部71と大径の第2の球収容部72を備えた段付き円柱形状になっている。
【0038】
このように、球体13を収容するための球受容凹部70が段差部75を有する円柱状となっており、その下段には第2の球収容部72に対して縮径された第1の球収容部71を有しているので、第1の球収容部71を有しない場合よりも、可動枠10における光軸C方向の肉厚P1(図9参照)の領域S1を段差部75の高さH分だけ少なくすることができ、これによって、肉厚が薄くなりがちな厚みP1の領域S1を低減させることができる。さらに、可動枠10における光軸Cの直交方向において球受容凹部70とコイル装填部10bや金属片挿入部10dとの肉厚P2の領域S2を段差部75の高さH分だけ少なくすることができ、これによって、肉厚が薄くなりがちな厚みP2の領域S2を低減させることができる。スマートフォン等に用いられるレンズ駆動装置1は非常に小さく、少しでも肉厚を厚くすることは非常に重要である。また、第1の球収容部71の開放側に、第1の球収容部71の側面71aに対して拡径された第2の球収容部72が設けられているので、第2の球収容部72を有しない場合と比較して光軸Cの直交方向への球体13の移動量を大きくすることができる。
【0039】
また、レンズ駆動装置1では、球体13の半径を「r」、球受容凹部70の第1の球収容部71の半径を「X」、球体13の第1の球収容部71の中心からの移動量を「a」、としたときにr<X<r+aを満たしている。このように、円柱状となっている第1の球収容部71の半径「X」を、球体13の半径「r」と球体13の移動量「a」の和よりも短くすることによって第1の球収容部71の径を必要最小限とし、第1の球収容部71の径を必要最小限とすることで可動枠10における肉厚P1,P2(図9参照)の領域S1,S2も必要最小限とすることができる。従って、球体13が配置される可動枠10の部品精度と強度が球受容凹部70を形成することによって低下する虞を回避することができる。
【0040】
更に、球受容凹部70において、仮に、底面73に対する側面71aの高さが低すぎると球体13が球収容部71上に乗り上げてしまい、底面73に対する側面71aの高さが高すぎると球体13の移動量が小さくなってしまう。しかしながら、球受容凹部70では、第1の球収容部71における側面71aの高さを「r/2」としているので、球体13が球収容部71上に乗り上がりにくくなっており且つ球体13の移動量を確保することができる。
【0041】
本発明は、上述した実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0042】
上記実施形態では、可動枠10の球受容凹部70が小径の球収容部71と大径の球収容部72を備えた段付き円柱状となっていたが、レンズ保持枠20の球受容凹部80が段付き円柱状となっていてもよい。また、段付き円柱状としない球受容凹部70,80は、凹部に代えて平面としてもよい。
【0043】
また、レンズ保持枠20の移動量が「2a」を超えていてもよい。この場合は球体13が側面71aに当接した後もレンズ保持枠20が移動することとなるが、球体13が側面71aの上端、すなわちエッジに当接していることにより、球体13と側面71aとの摩擦が低減されている。また、レンズ保持枠20が「2a」を超える移動量の場合は、球受容凹部70,80のうちの一方の球受容凹部のみが、球収容部の半径Xについて、r<X<r+aを満たす。
【0044】
また、第1の球収容部71における側面71aの高さの値と、第2の球収容部72における底面72aの径方向の幅の値と、第2の球収容部72における側面72bの高さの値を「r/2」としたが、上記各値を適宜変更することも可能である。
【0045】
また、吸引マグネット22aと鉄片14aとでレンズ保持枠20を可動枠10に吸引させる吸引部30aを構成していたが、吸引部の構成は上記に限定されず、例えばバネによってレンズ保持枠を可動枠に吸引させてもよい。
【0046】
更に、3個の球体13によってレンズ保持枠20を可動枠10内で三点支持させたが、球体の数は3個に限定されない。
【符号の説明】
【0047】
1…レンズ駆動装置、6…像振れ補正駆動部(駆動部)、10…可動枠(枠体)、13…球体、20…レンズ保持枠、C…光軸、70…第1の球受容凹部(凹部)、71…第1の球収容部、71a…側面、72…第2の球収容部、73…底面、80…第2の球受容凹部(凹部)、R…レンズ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10