特許第6097621号(P6097621)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6097621
(24)【登録日】2017年2月24日
(45)【発行日】2017年3月15日
(54)【発明の名称】ミキサ車
(51)【国際特許分類】
   B60P 3/16 20060101AFI20170306BHJP
【FI】
   B60P3/16 A
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-73534(P2013-73534)
(22)【出願日】2013年3月29日
(65)【公開番号】特開2014-196094(P2014-196094A)
(43)【公開日】2014年10月16日
【審査請求日】2015年11月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】KYB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】特許業務法人後藤特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100075513
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 政喜
(74)【代理人】
【識別番号】100120260
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅昭
(74)【代理人】
【識別番号】100137604
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100157473
【弁理士】
【氏名又は名称】武田 啓
(72)【発明者】
【氏名】高橋 良光
【審査官】 川村 健一
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/128291(WO,A1)
【文献】 特開2012−210929(JP,A)
【文献】 特開2012−201144(JP,A)
【文献】 特開2007−278430(JP,A)
【文献】 特開2005−343252(JP,A)
【文献】 特開2003−226192(JP,A)
【文献】 特開2003−232304(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/128174(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60P 3/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され生コンクリートを積載可能なミキサドラムを備えるミキサ車であって、
前記ミキサドラムを回転駆動する駆動装置と、
前記ミキサドラムに生コンクリートが積載されているか否かを検出する積載状態検出器と、を備え、
前記ミキサドラムは、前記車両が停止状態であり、かつ前記積載状態検出器が前記ミキサドラムに生コンクリートが積載されていないことを検出した場合に、前記駆動装置による回転が停止可能であることを特徴とするミキサ車。
【請求項2】
前記駆動装置は、
前記車両の走行用のエンジンによって駆動される流体圧ポンプと、
前記流体圧ポンプから吐出された作動流体によって作動して前記ミキサドラムを回転駆動する流体圧モータと、を備え、
前記積載状態検出器は、前記流体圧ポンプ又は前記流体圧モータの流体圧を検出する流体圧検出器であることを特徴とする請求項1に記載のミキサ車。
【請求項3】
前記ミキサドラムは、前記エンジンがアイドリング運転を停止することによって回転が停止することを特徴とする請求項2に記載のミキサ車。
【請求項4】
前記駆動装置は、
電力によって回転する電動機と、
前記電動機の回転によって駆動されて作動流体を吐出し、前記流体圧モータを作動させる補助流体圧ポンプと、を更に備え、
前記エンジンは、前記車両が走行状態である場合に前記流体圧ポンプを駆動し、
前記電動機は、前記車両が停止状態であり、かつ前記エンジンがアイドリング運転を停止した場合に、前記補助流体圧ポンプを駆動可能であることを特徴とする請求項2に記載のミキサ車。
【請求項5】
前記車両が停止状態であり、かつ前記積載状態検出器が前記ミキサドラムに生コンクリートが積載されていないことを検出した場合には、前記エンジンがアイドリング運転を停止可能となるとともに、前記電動機が停止することを特徴とする請求項4に記載のミキサ車。
【請求項6】
前記駆動装置の動作を制御する制御装置を更に備え、
前記制御装置は、前記車両が停止状態であり、かつ前記積載状態検出器が前記ミキサドラムに生コンクリートが積載されていないことを検出した場合に、前記エンジンのアイドリング運転の停止を許容する信号を前記エンジンを制御するエンジン制御部に送信することを特徴とする請求項2に記載のミキサ車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミキサ車に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、モルタルやレディミクストコンクリート等のいわゆる生コンクリートを積載可能なミキサドラムを備えるミキサ車が用いられている。
【0003】
特許文献1には、車両のエンジンによって駆動される油圧ポンプと、油圧ポンプから吐出された作動油によって作動してミキサドラムを回転駆動する油圧モータとを備えるミキサ車のミキサドラム駆動装置が開示されている。このミキサ車では、車両のエンジンが停止された場合にミキサドラムを回転駆動可能な電動モータが設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−278430号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のミキサ車は、車両のエンジンが運転されている場合にはエンジンによってミキサドラムを回転駆動し、エンジンが停止している場合には電動モータによってミキサドラムを回転駆動するものである。よって、ミキサドラムが常に回転状態であるため、エネルギの消費量が多かった。
【0006】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、ミキサドラムの回転駆動に用いられるエネルギを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、車両に搭載され生コンクリートを積載可能なミキサドラムを備えるミキサ車であって、前記ミキサドラムを回転駆動する駆動装置と、前記ミキサドラムに生コンクリートが積載されているか否かを検出する積載状態検出器と、を備え、前記ミキサドラムは、前記車両が停止状態であり、かつ前記積載状態検出器が前記ミキサドラムに生コンクリートが積載されていないことを検出した場合に、前記駆動装置による回転が停止可能である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、車両が停止状態であり、かつミキサドラムに生コンクリートが積載されてない場合には、ミキサドラムの回転が停止可能である。したがって、ミキサドラムが常に回転状態である場合と比較して、ミキサドラムの回転駆動に用いられるエネルギを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施の形態に係るミキサ車の平面図である。
図2】本発明の第一の実施の形態に係るミキサ車の駆動装置の構成図である。
図3】本発明の第一の実施の形態に係るミキサ車におけるミキサドラムの回転停止処理のフローチャートである。
図4】本発明の第二の実施の形態に係るミキサ車の駆動装置の構成図である。
図5】本発明の第二の実施の形態に係るミキサ車におけるミキサドラムの回転停止処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
【0011】
(第一の実施の形態)
以下、図1から図3を参照して、本発明の第一の実施の形態に係るミキサ車100について説明する。
【0012】
まず、図1を参照して、ミキサ車100の全体構成について説明する。
【0013】
ミキサ車100は、車両1の走行用のエンジン3と、車両1に搭載され生コンクリートを積載可能なミキサドラム2と、ミキサドラム2を回転駆動する駆動装置4(図2参照)とを備える。ミキサ車100は、ミキサドラム2内に積載された生コンクリートを運搬するものである。
【0014】
ミキサドラム2は、車両1に回転可能に搭載される有底円筒形の容器である。ミキサドラム2は、回転軸が車両1の前後方向を向くように搭載される。ミキサドラム2は、車両1の後部に向かって徐々に高くなるように、前後に傾斜して搭載される。ミキサドラム2は、その後端に開口部が形成され、開口部から生コンクリートの投入と排出とが可能である。
【0015】
ミキサドラム2は、駆動装置4の出力軸が連結される前部と、後部の左右との三点で車両1上に支持される。ミキサドラム2の後部は、ローラ(図示省略)によって回転自在に支持される。
【0016】
ミキサドラム2は、エンジン3を動力源として回転駆動される。ミキサドラム2は、車両1が停止状態であり、かつミキサドラム2に生コンクリートが積載されていない場合に、駆動装置4による回転が停止可能である。
【0017】
次に、図2を参照して、駆動装置4について説明する。
【0018】
駆動装置4は、エンジン3の回転によって駆動され、作動流体の流体圧によってミキサドラム2を回転駆動するものである。エンジン3におけるクランクシャフトの回転運動は、エンジン3から動力を常時取り出すための動力取り出し機構9(PTO:Power take−off)によって駆動装置4に伝達される。
【0019】
駆動装置4では、作動流体として作動油が用いられる。作動油に代えて、他の非圧縮性流体を作動流体として用いてもよい。駆動装置4は、エンジン3によって駆動される流体圧ポンプとしての油圧ポンプ5と、油圧ポンプ5から吐出された作動油によって作動してミキサドラム2を回転駆動する流体圧モータとしての油圧モータ6と、油圧モータ6の回転方向を切り換える切換弁8とを備える。駆動装置4は、ミキサドラム2を正逆転及び増減速させることが可能である。
【0020】
油圧ポンプ5は、動力取り出し機構9を介してエンジン3から常時取り出される動力によって回転駆動される。油圧ポンプ5は、容量が可変な斜板型アキシャルピストンポンプである。油圧ポンプ5は、斜板の傾転角を調整するためのパイロット弁(図示省略)を備える。油圧ポンプ5は、パイロット弁によって吐出容量が調整される。
【0021】
油圧ポンプ5から吐出された作動油は油圧モータ6に供給され、油圧モータ6が回転する。油圧モータ6には、減速機7を介してミキサドラム2が連結される。これにより、ミキサドラム2は、油圧モータ6の回転に伴って回転駆動される。
【0022】
油圧ポンプ5には、吐出される作動油の圧力を検出する流体圧検出器としての圧力センサ5aが設けられる。油圧ポンプ5に圧力センサ5aを設ける代わりに、油圧モータ6に供給される作動油の圧力を検出する圧力センサを設けてもよい。
【0023】
油圧ポンプ5から吐出される作動油の圧力は、ミキサドラム2に積載された生コンクリートの重量によって変化する。よって、圧力センサ5aが検出する作動油の圧力に基づいて、ミキサドラム2に生コンクリートが積載されているか否かを検出可能である。この圧力センサ5aが積載状態検出器に該当する。
【0024】
図2に示すように、圧力センサ5aは、検出した作動油の圧力に応じて、エンジン3を制御するエンジン制御部3aに電気信号を出力する。
【0025】
油圧モータ6は、容量が固定の斜板型アキシャルピストンモータである。油圧モータ6は、油圧ポンプ5から吐出された作動油の供給を受けて回転駆動される。油圧モータ6は、切換弁8が切り換えられることによって正逆転が可能である。なお、本実施形態では、油圧モータ6は、その容量が固定である斜板型アキシャルピストンモータとして説明したが、これに限定されず、油圧モータ6はその容量が可変である斜板型アキシャルピストンモータであっても構わない。
【0026】
切換弁8は、油圧ポンプ5が吐出した作動油をミキサドラム2を正転回転させるように油圧モータ6に導く正転位置8aと、油圧ポンプ5が吐出した作動油をミキサドラム2を逆転回転させるように油圧モータ6に導く逆転位置8bと、油圧ポンプ5と油圧モータ6との間の作動油の流れを遮断する遮断位置8cとを備える。切換弁8は、作業者の操作に基づいて切り換えられる。
【0027】
駆動装置4によってミキサドラム2が正転回転される場合には、ミキサドラム2内の生コンクリートが攪拌される。一方、駆動装置4によってミキサドラム2が逆転回転される場合には、ミキサドラム2内の生コンクリートが後端の開口部から外部へと排出される。
【0028】
次に、図3を参照して、ミキサ車100におけるミキサドラム2の回転停止処理について説明する。このルーチンは、エンジン制御部3aにて、例えば10ミリ秒ごとの一定時間隔で繰り返し実行される。
【0029】
ミキサ車100では、ミキサドラム2の回転停止は、エンジン3のアイドリング運転を停止すること(以下、「アイドリングストップ」と称する。)によって実行される。よって、以下で説明する処理は、ミキサ車100におけるアイドリングストップ処理である。
【0030】
ステップ101では、車両1が停止状態か否かを判定する。つまり、ステップ101では、車両1の速度が0か否かを判定する。この判定には、例えば、車両1の車軸の回転に応じて出力されるパルス信号が用いられる。
【0031】
ステップ101にて、車両1が停止状態であると判定された場合には、ステップ102へ移行する。一方、ステップ101にて、車両1が停止状態でない、即ち、車両1が走行状態であると判定された場合には、リターンして処理を抜ける。
【0032】
ステップ102では、圧力センサ5aによって油圧ポンプ5から吐出される作動油の圧力を検出する。
【0033】
ステップ103では、ミキサドラム2が空荷の状態か否かを判定する。上述したように、油圧ポンプ5から吐出される作動油の圧力は、ミキサドラム2に積載された生コンクリートの重量によって変化する。そこで、ステップ103では、ステップ102にて検出された作動油の圧力が予め設定された所定の大きさ以上であるか否かを判定する。
【0034】
ステップ103にて、ミキサドラム2が空荷の状態であると判定された場合には、ステップ104へ移行する。一方、ステップ103にて、ミキサドラム2が空荷の状態でない、即ち、ミキサドラム2に生コンクリートが積載されていると判定された場合には、リターンして処理を抜ける。
【0035】
ステップ104では、車両1にてエンジン3のアイドリングストップ処理を実行するための他の条件が充足されているか否かを判定する。他の条件は、例えば、バッテリ(図示省略)のSOC(State of charge:充電状態)が充分であること、エアコンの使用による負荷が比較的小さいこと、エンジン3の冷却水温度が適正温度範囲に達していること、などである。
【0036】
ステップ104にて、アイドリングストップ処理を実行するための他の条件を充足していると判定された場合には、ステップ105へ移行する。一方、ステップ104にて、アイドリングストップ処理を実行するための他の条件を充足していないと判定された場合には、リターンして処理を抜ける。
【0037】
ステップ105では、アイドリングストップ処理を実行する。具体的には、ステップ105では、エンジン制御部3aがエンジン3の運転を停止する。ステップ105にてアイドリングストップ処理が実行された後、リターンして処理を抜ける。
【0038】
以上のように、エンジン3は、車両1が停止状態であり、かつ圧力センサ5aがミキサドラム2に生コンクリートが積載されていないことを検出した場合に、アイドリングストップする。エンジン3がアイドリングストップすると、駆動装置4の油圧ポンプ5も停止するため、油圧モータ6に作動油が供給されなくなる。よって、ミキサドラム2は、エンジン3がアイドリングストップすることによって回転が停止する。したがって、ミキサドラム2が常に駆動状態である場合と比較して、ミキサドラム2の回転駆動に用いられるエネルギを抑制することができる。
【0039】
また、ミキサ車100では、ミキサドラム2に生コンクリートが積載されている状態では、エンジン3はアイドリングストップせず、ミキサドラム2の回転は停止しない。そのため、ミキサドラム2に積載された生コンクリートの撹拌が停止されることはない。
【0040】
ここで、ミキサ車100では、路面の凹凸などによって車両1が振動すると、ミキサドラム2にも振動が伝達される。このとき、ミキサドラム2は上下に移動しようとするため、ミキサドラム2の後部を支持するローラとの間に大きな力がかかる。
【0041】
これに対して、ミキサ車100では、ミキサドラム2に生コンクリートが積載されていない状態であっても、車両1が走行状態である場合には、ミキサドラム2の回転は停止しない。よって、路面の凹凸に起因する振動がミキサドラム2に伝達されても、ミキサドラム2にかかる力は全周に分散する。よって、ローラとの間にかかる力がミキサドラム2の特定の箇所のみに集中することが防止される。
【0042】
以上の第一の実施の形態によれば、以下に示す効果を奏する。
【0043】
ミキサ車100では、車両1が停止状態であり、かつミキサドラム2に生コンクリートが積載されてない場合には、エンジン3がアイドリングストップすることによってミキサドラム2の回転が停止可能である。したがって、ミキサドラム2が常に回転状態である場合と比較して、ミキサドラム2の回転駆動に用いられるエネルギを抑制することができる。
【0044】
(第二の実施の形態)
以下、図4及び図5を参照して、本発明の第二の実施の形態に係るミキサ車200について説明する。なお、第二の実施の形態では、上述した第一の実施の形態と同様の構成には同一の符号を付し、重複する説明は適宜省略する。
【0045】
第二の実施の形態は、エンジン3によって駆動される油圧ポンプ5だけでなく、電動機11によって駆動される補助油圧ポンプ12によってもミキサドラム2を回転駆動可能な点で、上述した第一の実施の形態とは相違する。
【0046】
ミキサ車200は、車両1の走行用のエンジン3と、車両1に搭載され生コンクリートを積載可能なミキサドラム2と、ミキサドラム2を回転駆動する駆動装置204とを備える。駆動装置204は、エンジン3の回転又は電動機11の回転によって駆動され、作動油の油圧によってミキサドラム2を回転駆動するものである。
【0047】
駆動装置204は、エンジン3によって駆動される油圧ポンプ5と、油圧ポンプ5から吐出された作動油によって作動してミキサドラム2を回転駆動する油圧モータ6と、油圧モータ6の回転方向を切り換える切換弁8とを備える。
【0048】
また、駆動装置204は、電力によって回転する電動機11と、電動機11の回転によって駆動されて作動油を吐出し、油圧モータ6を作動させる補助流体圧ポンプとしての補助油圧ポンプ12と、補助油圧ポンプ12から吐出された作動油を油圧モータ6に供給するか否かを切り換える切換弁13と、作動油が溜められるタンク14と、電動機11に電力を供給するバッテリ15と、電動機11の駆動状態を切り換えるスイッチ16と、スイッチ16の切換制御を実行する制御部17とを備える。
【0049】
電動機11は、バッテリ15に溜められた電力を用いて一方向のみに回転する。電動機11の出力軸は、補助油圧ポンプ12の回転軸に連結される。エンジン3は、第一の実施の形態に係るミキサ車100と同様に、車両1が走行状態である場合に油圧ポンプ5を駆動する。これに対して、電動機11は、車両1が停止状態であり、かつエンジン3がアイドリングストップした場合に、補助油圧ポンプ12を駆動可能である。
【0050】
補助油圧ポンプ12は、タンク14に溜められた作動油を吸い込んで油圧モータ6に向けて吐出する。補助油圧ポンプ12は、吐出した作動油によって、油圧モータ6を正転回転させることができる。
【0051】
電動機11及び補助油圧ポンプ12は、エンジン3がアイドリングストップしている場合に、ミキサドラム2に積載された生コンクリートの撹拌が停止しないようにミキサドラム2を回転駆動するものである。よって、電動機11及び補助油圧ポンプ12は、ミキサドラム2を逆転回転させる必要がないため、一方向にのみ回転する。
【0052】
切換弁13は、補助油圧ポンプ12が吐出した作動油をミキサドラム2を正転回転させるように油圧モータ6に導く正転位置13aと、補助油圧ポンプ12が吐出した作動油を油圧モータ6に供給せずにタンク14に還流する還流位置13bとを備える。切換弁13は、制御部17によって切り換え制御される電磁式切換弁である。
【0053】
スイッチ16は、電動機11とバッテリ15とを直列に接続可能である。スイッチ16が接続されると、電動機11とバッテリ15とが直列に接続され、電動機11が回転する。一方、スイッチ16が開放されると、電動機11とバッテリ15との接続が解除され、電動機11の回転は停止する。
【0054】
制御部17は、CPU(中央演算処理装置)、ROM(リードオンリメモリ)、RAM(ランダムアクセスメモリ)、及びI/Oインターフェース(入出力インターフェース)を備えたマイクロコンピュータで構成される。RAMはCPUの処理におけるデータを記憶し、ROMはCPUの制御プログラム等を予め記憶し、I/Oインターフェースは接続された機器との情報の入出力に使用される。
【0055】
制御部17は、スイッチ16の接続と開放とを切り換える。また、制御部17は、図示しないが、切換弁13と切換弁8とを切り換え可能である。ミキサ車200では、切換弁13だけでなく切換弁8も電磁式切換弁である。
【0056】
次に、図5を参照して、ミキサ車200におけるミキサドラム2の回転停止処理について説明する。このルーチンは、エンジン制御部3a及び制御部17にて、例えば10ミリ秒ごとの一定時間隔で繰り返し実行される。
【0057】
ステップ201では、車両1が停止状態か否かを判定する。ステップ201にて、車両1が停止状態であると判定された場合には、ステップ202へ移行する。一方、ステップ201にて、車両1が停止状態でない、即ち、車両1が走行状態であると判定された場合には、リターンして処理を抜ける。
【0058】
ステップ202では、車両1にてエンジン3のアイドリングストップ処理を実行するための他の条件が充足されているか否かを判定する。ステップ202にて、アイドリングストップ処理を実行するための他の条件を充足していると判定された場合には、ステップ203へ移行する。一方、ステップ202にて、アイドリングストップ処理を実行するための他の条件を充足していないと判定された場合には、リターンして処理を抜ける。
【0059】
ステップ203では、アイドリングストップ処理を実行する。具体的には、ステップ203では、エンジン制御部3aがエンジン3の運転を停止する。ステップ203にてアイドリングストップ処理が実行された後、ステップ204へ移行する。
【0060】
ステップ204では、圧力センサ5aによって油圧ポンプ5から吐出される作動油の圧力を検出する。
【0061】
ステップ205では、ミキサドラム2が空荷の状態か否かを判定する。ステップ205にて、ミキサドラム2が空荷の状態でない、即ち、ミキサドラム2に生コンクリートが積載されていると判定された場合には、ステップ206へ移行する。一方、ステップ205にて、ミキサドラム2が空荷の状態であると判定された場合には、リターンして処理を抜ける。
【0062】
ステップ206では、電動機11を作動させる。これにより、補助油圧ポンプ12が駆動されて作動油を吐出する。このとき、制御部17は、切換弁13を正転位置13aに切り換えるとともに、切換弁8を遮断位置8cに切り換える。よって、補助油圧ポンプ12から吐出された作動油が油圧モータ6に供給されるため、ミキサドラム2は正転回転することとなる。
【0063】
以上のように、エンジン3は、車両1が停止状態である場合に、アイドリングストップする。エンジン3がアイドリングストップすると、駆動装置4の油圧ポンプ5も停止する。しかしながら、エンジン3がアイドリングストップしても、圧力センサ5aがミキサドラム2に生コンクリートが積載されていることを検出した場合には、電動機11が作動する。よって、電動機11によって補助油圧ポンプ12が駆動され、補助油圧ポンプ12から吐出された作動油が油圧モータ6に供給される。したがって、ミキサドラム2は正転方向に回転し続けることができる。
【0064】
これに対して、車両1が停止状態であり、かつ圧力センサ5aがミキサドラム2に生コンクリートが積載されていないことを検出した場合には、エンジン3がアイドリングストップ可能となるとともに、電動機11は停止する。つまり、エンジン3がアイドリングストップし、圧力センサ5aがミキサドラム2に生コンクリートが積載されていないことを検出した場合には、電動機11は作動しない。よって、ミキサドラム2は、回転を停止する。したがって、ミキサドラム2が常に駆動状態である場合と比較して、ミキサドラム2の回転駆動に用いられるエネルギを抑制することができる。
【0065】
以上の第二の実施の形態によっても同様に、車両1が停止状態であり、かつミキサドラム2に生コンクリートが積載されてない場合には、エンジン3がアイドリングストップし電動機11が停止することによってミキサドラム2の回転が停止可能である。したがって、ミキサドラム2が常に回転状態である場合と比較して、ミキサドラム2の回転駆動に用いられるエネルギを抑制することができる。
【0066】
また、ミキサ車200では、ミキサドラム2に生コンクリートが積載されている状態では、エンジン3がアイドリングストップしても、電動機11が作動する。よって、電動機11によって補助油圧ポンプ12が駆動され、補助油圧ポンプ12から吐出された作動油が油圧モータ6に供給されるため、ミキサドラム2の回転は停止しない。そのため、ミキサドラム2に積載された生コンクリートの撹拌が停止されることはない。
【0067】
本発明は上記の実施の形態に限定されずに、その技術的な思想の範囲内において種々の変更がなしうることは明白である。
【0068】
例えば、上述したミキサドラム2の回転停止処理を、駆動装置4の動作を電子制御する制御装置を備える電子制御ミキサ車に適用してもよい。この場合、制御装置は、車両1が停止状態であり、かつミキサドラム2に生コンクリートが積載されていない場合に、アイドリングストップを許容する信号をエンジン制御部3aに送信する。エンジン制御部3aは、制御装置からの信号を受けて、アイドリングストップ処理を実行するための他の条件を充足している場合に、エンジン3をアイドリングストップさせることができる。
【0069】
また、上述した実施の形態では、エンジン制御部3aや制御部17によってミキサドラム2の回転停止制御を実行している。これに代えて、ミキサドラム2の回転停止制御を実行する制御部を別途設けてもよい。
【0070】
また、上述した実施の形態では、積載状態検出器として油圧ポンプ5の吐出圧を検出する圧力センサ5aが用いられている。これに代えて、ミキサドラム2の重量を検出する重量検出器を設け、積載状態検出器として用いてもよい。重量検出器としては、例えば、ミキサドラム2を支持する三点の少なくともいずれか一箇所に設けられるロードセル等のセンサが用いられる。
【符号の説明】
【0071】
100 ミキサ車
1 車両
2 ミキサドラム
3 エンジン
3a エンジン制御部
4 駆動装置
5 油圧ポンプ(流体圧ポンプ)
5a 圧力センサ(流体圧検出器)
6 油圧モータ(流体圧モータ)
8 切換弁
11 電動機
12 補助油圧ポンプ
13 切換弁
図1
図2
図3
図4
図5