(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
近年、交差点などの高いトラヒックが発生するスポットに対して、高品質な通信を提供することを目的として、ピコ局などの小セル構成が提案されている。このようなスポットとしては、交差点や駅前などの低層階が多い。このような領域(エリア)に対しては、従来の屋上設置の基地局と比較して、低層階に基地局アンテナや基地局装置を配置することで、伝搬損失やフィーダ損失を軽減し、緻密なエリア設計を行うことができる。
【0003】
図10は、ピコ局の置局配置の例を示す図である。
図10には、ビル1001と、ビル1001の屋上に設置された基地局アンテナ1011と、ビル1002と、ビル1002の窓ガラス1012と、基地局により無線通信を可能とする目的の領域(ターゲットエリア)1021を示してある。
一般に、ビル1001の屋上に設置された基地局アンテナ1011を用いて、ビル1001上からスポット(この例では、ターゲットエリア1021)を狙うと、伝搬損失が大きい。
また、低層階からスポットを狙うと、基地局の設置場所を確保できない場合が多い。また、基地局の設置のために、ビル1002の窓ガラス1012を利用することが希望される。
【0004】
例えば、上記のような無線通信可能なエリア(無線通信エリア)を形成する基地局アンテナとして、壁掛け型や窓貼り型の基地局アンテナが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
特に、窓貼り型の基地局アンテナは、屋内から屋外への無線通信エリアを構築することができる。この場合、基地局装置を屋内に配置することができ、基地局の補修などにおいて効率化が図られる。
【0005】
一方、屋外から屋内への干渉電力を軽減することを目的として、電波(電磁波)遮断用の窓ガラスなどがある(例えば、特許文献2、3参照。)。
また、電磁波遮断用の窓ガラスや断熱窓ガラスなどの窓面にアンテナを配置して、レピータ用のアンテナを配置した構成が提案されている(例えば、特許文献4参照。)。
【0006】
図11〜
図13を参照して、窓ガラス越しの基地局の構成の例を示す。
図11は、基地局アンテナ1112が壁面1101(窓ガラスを含む、または、窓ガラスのみであってもよい。)に設置された基地局の構成例を示す図である。
図11の例では、ビルの屋内に基地局装置1111が設置され、当該ビルの壁面1101の屋外側に基地局アンテナ1112が設置され、基地局装置1111と基地局アンテナ1112がケーブル1113を介して接続されている。
この場合、エリアの構築は容易であるが、基地局の設置が困難である。具体的には、基地局アンテナ1112を建物外部の壁面1101に配置する場合、電源やファイバを屋外に引き出すためにビル壁面などに工事を必要とするほか、ビル壁の景観を損ねる可能性がある。
【0007】
図12は、電磁波遮断窓に設置された基地局の構成例を示す図である。
図12の例では、電磁波遮断窓が設けられたビルの壁面1201(電磁波遮断用の窓ガラスを含む、または、電磁波遮断用の窓ガラスのみであってもよい。)に対して屋内に、基地局装置1211および基地局アンテナ1212を接続したものが設置される。
この場合、基地局の設置は容易であるが、屋内からのエリアの形成は困難である。具体的には、屋内に基地局装置1211および基地局アンテナ1212が配置され、窓材が電磁波遮断用のものであることから、屋外のエリアの形成が困難である。
【0008】
図13は、レピータを用いた基地局の構成例を示す図である。
図13の例では、ビルの屋内に基地局装置1311および基地局アンテナ1312を接続したものが設置され、当該ビルの壁面1301(窓ガラスを含む、または、窓ガラスのみであってもよい。)の屋内側にアンテナ1321が設置され、当該壁面1301の屋外側にアンテナ1322が設置され、これらのレピータ用のアンテナ1321、1322がケーブル(図示せず。壁面1301の内部に設けられる。)を介して接続されている。
この場合、基地局の設置は容易であるが、伝搬損失が大きくなる。具体的には、窓上にレピータが設置されている構成では、レピータを介して屋内から屋外のエリアを形成することができるが、基地局からレピータを経由して通信することによるレピータ間の伝搬損失が大きく、また、レピータにおいて増幅器(アンプ)などの損失補償回路が必要となる。
【0009】
なお、地上への無線通信エリアを形成する場合、例えば、窓貼り型の基地局アンテナを用いると、屋上に基地局アンテナを配置した場合と比較して、より精度の高いエリア形成が可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照し、本発明の実施形態について説明する。
実施形態に係るアンテナ装置は、電磁波遮断窓の構造(あるいは、それと同様な構造)を利用して構成される。
【0021】
[電磁波遮断窓の一般的な構成例]
まず、電磁波遮断窓の一般的な構成例を説明する。
図14は、電磁波遮断窓の構成の一例を示す図である。
図14の例では、二重金属膜ガラスの窓の構造について示す。なお、断熱用のエコガラスと呼ばれるものも、同様の構造を有する。
【0022】
図14の例では、電磁波遮断窓は、2枚のガラス2001、2002と、それぞれのガラス2001、2002の対向側に設けられた特殊金属膜2003、3004と、これらの特殊金属膜2003、3004の間に設けられた空気層2008を備える。屋内側から屋外側への順序で説明すると、本例の電磁波遮断窓は、屋内側のガラス2001、屋内側の特殊金属膜2003、空気層2008、屋外側の特殊金属膜2004、屋外側のガラス2002が並んだ構造を有する。
【0023】
このように、電磁波遮断窓は、それぞれのガラス2001、2002の一方の面に特殊金属膜2003、2004を配置し、これら2枚のガラス板を空気層2008で挟み込む形で対面に配置して構成される。
この構成により、電磁波遮断窓を透過する電磁波の電力を10000分の1(約40dB)程度に軽減することができる。例えば、屋外側から電磁波遮断窓に入射する電磁波2101に対して、その透過後(遮断後)の屋内側における電磁波2012の電力を小さくすることができる。
ここで、各特殊金属膜2003、2004としては、金属と金属酸化物との合成物が用いられる。
【0024】
(第1実施形態)
本実施形態に係るアンテナ装置は、
図14に示されるような電磁波遮断窓と同様な構成のものにアンテナ素子が組み込まれるように設計して、基地局のアンテナ(基地局アンテナ)として構成したものである。
基地局アンテナは、基地局における送受信などにおける信号処理を実行する装置(基地局装置)とケーブルなどを介して接続される。基地局装置は、例えば、送信対象となる信号を送信処理して基地局アンテナへ出力することで当該信号を基地局アンテナから無線送信し、また、基地局アンテナにより無線受信された信号を入力して受信処理する。
【0025】
図1は、本実施形態に係るアンテナ装置の概略的な構成を示す図(側面図)である。
図2は、本実施形態に係るアンテナ装置の概略的な構成を示す図(一部を分解した斜視図)である。
図3は、本実施形態に係るアンテナ装置の概略的な構成を示す図(屋内側の面の図)である。
【0026】
本実施形態に係るアンテナ装置は、2枚のガラス1、2と、それぞれのガラス1、2の対向側に設けられた特殊金属膜3、4と、これらの特殊金属膜3、4の間に設けられた空気層8を備える。また、本実施形態に係るアンテナ装置は、屋内側のガラス1の屋内側の面に給電部5を備え、その電源6を備える。また、本実施形態に係るアンテナ装置は、屋内側の特殊金属膜3に形成した1次放射器21を備え、屋外側の特殊金属膜4に形成した2次放射器22を備え、屋外側のガラス2の屋外側の面に設けられた3次放射器(本実施形態では、外界へのアンテナ)23を備え、そのカバー(アンテナカバー)31を備える。
【0027】
屋内側から屋外側への順序で説明すると、電源6の配置を除いて、本実施形態に係るアンテナ装置は、給電部5、屋内側のガラス1、屋内側の特殊金属膜3およびそれに形成された1次放射器21、空気層8、屋外側の特殊金属膜4およびそれに形成された2次放射器22、屋外側のガラス2、3次放射器23、アンテナカバー31が並んだ構造を有する。
【0028】
屋内側のガラス1は、窓ガラスを構成する1枚のガラスであり、屋内側に配置される。
屋外側のガラス2は、窓ガラスを構成する1枚のガラスであり、屋外側に配置される。
ここで、本実施形態では、2枚のガラス1、2は、実質的に同じものであり、同じ形状を有し、同じ厚さを有し、同じ材質で構成される。他の構成例として、2枚のガラス1、2としては、形状、厚さ、材質などのうちの1つ以上が異なるものが用いられてもよい。
【0029】
屋内側の特殊金属膜3は、金属、または金属酸化物、または金属と金属酸化物との合成物から構成されている。屋内側の特殊金属膜3は、屋内側のガラス1の屋外側の面に接合されている。例えば、特殊金属膜3の面は、接合されるガラス1の面と同じ形状を有し、また、特殊金属膜3の厚さは、接合されるガラス1の厚さよりも薄い。
屋外側の特殊金属膜4は、金属、または金属酸化物、または金属と金属酸化物との合成物から構成されている。屋外側の特殊金属膜4は、屋外側のガラス2の屋内側の面に接合されている。例えば、特殊金属膜4の面は、接合されるガラス2の面と同じ形状を有し、また、特殊金属膜4の厚さは、接合されるガラス2の厚さよりも薄い。
なお、
図2では、説明の便宜上、屋外側のガラス2と屋外側の特殊金属膜4とを分解して示してある。
【0030】
1次放射器21は、屋内側の特殊金属膜3に形成されたアンテナ素子であり、本実施形態では、スロット状のアンテナ素子である。
2次放射器22は、屋外側の特殊金属膜4に形成されたアンテナ素子であり、本実施形態では、スロット状のアンテナ素子である。
ここで、1次放射器21は、屋内側の特殊金属膜3の面において、例えば、四角い枠の部分をくり抜くことで形成される。
同様に、2次放射器22は、屋外側の特殊金属膜4の面において、例えば、四角い枠の部分をくり抜くことで形成される。
1次放射器21の枠や、2次放射器22の枠としては、それぞれ、例えば、1重の枠(1重のスロット)が用いられてもよく、または、2重以上の枠(2重以上のスロット)が用いられてもよい。一般に、枠の多重の数を増やすと、無線通信に使用することが可能な周波数帯域を広げることが可能である。
また、1次放射器21の枠と、2次放射器22の枠としては、一例として、四角い枠の大きさが異なる構成を用いることが好ましい。この理由は、1次放射器21と2次放射器22との間の電磁結合を効率化するためである。
なお、「スロット」という語の代わりに、「スリット」という語が用いられても同様なものであり、また、他の用語が用いられてもよい。
【0031】
3次放射器23は、屋外側のガラス2の屋外側に設けられたアンテナ素子であり、本実施形態では、屋外側のガラス2の屋外側の面の上に配置された四角い形状のパッチ状のアンテナ素子である。
ここで、3次放射器23としては、例えば、平面状に構成されるが、他の構成例として、それよりも屋外側のガラス2の屋外側に出っ張るような形状であってもよい。他の構成例として、屋外側のガラス2の屋外側の面に、3次放射器23の面と同じあるいはそれよりも大きい面を有する窪み(空間)を形成し、この窪みに3次放射器23を嵌めて備える構成が用いられてもよい。また、一例として、3次放射器23の一面をシール状に構成して、そのシール状の面を屋外側のガラス2の屋外側の面に貼って備える構成が用いられてもよい。
また、3次放射器23と2次放射器22とで対向する面について、3次放射器23の面の方が2次放射器22の面よりも大きい構成が好ましい。この理由は、2次放射器22のスロットのエッジ部分に強い電流が流れることから、そのエッジ部分が3次放射器23の面に被ることが好ましいためである。
【0032】
アンテナカバー31は、3次放射器23をカバーするものであり、任意の形状や大きさのものが用いられてもよい。
アンテナカバー31は、例えば、3次放射器23を外界から保護するためのものであり、必要でなければ、備えられなくてもよい。また、アンテナカバー31としては、屋外側のガラス2の屋外側の面に対して、一体化されて備えられてもよく、または、着脱可能な構成で備えられてもよい。
【0033】
給電部5は、1次放射器21に対して電力を供給(給電)する線路であり、本実施形態では、屋内側のガラス1の屋内側の面に設けられたマイクロストリップラインである。
本実施形態では、給電部5を構成するマイクロストリップラインは、その一端が電源6と接続されており、その他端が屋内用のガラス1を介して対向する1次放射器21の面(本実施形態では、四角)の中心に位置している。他の構成例として、給電部5を構成するマイクロストリップラインは、その前記他端が屋内用のガラス1を介して対向する1次放射器21の面(本実施形態では、四角)の中心からずれて位置してもよい。
電源6は、給電部5へ電力を供給する。電源6は、任意のところに設置されてもよく、例えば、屋内における窓の近くに設置される。
【0034】
本実施形態では、電源6が給電部5へ電力を供給し、給電部5が屋内側のガラス1を介して対向する屋内側の特殊金属膜3上の1次放射器21を電磁結合により励振し、1次放射器21が空気層8を介して対向する屋外側の特殊金属膜4上の2次放射器22を電磁結合により励振し、2次放射器22が屋外側のガラス2を介して対向する3次放射器23を電磁結合により励振する。
これにより、3次放射器23を外界へのアンテナとして、屋内(例えば、屋内の基地局装置)からの電磁波(無線信号)を、電磁結合により、給電部5、1次放射器21、2次放射器22を介して、3次放射器23から屋外に向けて送信することができる。また、同様な原理により、屋外から到来した電磁波(無線信号)を、3次放射器23により受信して、電磁結合により、2次放射器22、1次放射器21、給電部5を介して、屋内(例えば、屋内の基地局装置)に入力することができる。
なお、基地局アンテナにデュプレクサを備えることで、送信と受信の両方(屋内から屋外への通信と、屋外から屋内への通信の両方)を共用することが可能である。
【0035】
ここで、給電部5と、1次放射器21と、2次放射器22と、3次放射器23は、互いに共振するように設計されている。
また、1次放射器21と、2次放射器22と、3次放射器23としては、一例として、互いに対向する面について、中心軸が一致する(そろっている)構成が好ましい。この理由は、この中心軸がずれると、偏波特性が偏るためである。
なお、本実施形態では、1次放射器21と、2次放射器22と、3次放射器23の形状として、四角形を用いたが、他の構成例として、円状など、他の様々な形状が用いられてもよい。
【0036】
他の構成例として、給電部5としては、1次放射器21に直接的に接続される線路(例えば、マイクロストリップラインなど)が用いられてもよい。この場合、接続の仕方としては、任意であってもよく、例えば、貼って接続する仕方などを用いることができる。
【0037】
また、一例として、アンテナ装置において、屋内側の特殊金属膜3の電位を基準の電位とする構成を用いることができる。屋外側の特殊金属膜4の電位は、例えば、インピーダンス調整の結果、給電中は、屋内側の特殊金属膜3の電位と比べて、高くなる。また、屋内側の特殊金属膜3の電位としては、特に限定はないが、例えば、屋内側の特殊金属膜3を接地部(グラウンド部)に接続して、接地電位(グラウンド電位)とする構成を用いることができる。
【0038】
また、他の構成例として、アンテナ素子としては、金属の細線を用いて構成されてもよい。具体例として、多数の電気的な線を設けて、全体として、疑似的な平面(電気的な平面)を形成してもよく、一例として、横に並ぶ複数の細線を設け、これら複数の細線の上端部を接続するとともに、これら複数の細線の下端部を接続したような構成を用いることができる。これにより、アンテナ素子を可視しづらくすることができる。
本実施形態に係るアンテナ装置は、例えば、ガラス1、2の面に特殊金属膜3、4が塗付された構造を有し、また、屋内から屋外(および、屋外から屋内)の光を遮断すると、窓ガラスとしての性質が劣化することから、アンテナ素子として細線などで見えにくく加工したものを用いることが好ましい。
【0039】
以上のように、本実施形態に係るアンテナ装置では、ガラス2上に設置したアンテナ素子(3次放射器23)と、その対面に配置した特殊金属膜3、4上に形成したスロット状のアンテナ素子(1次放射器21、2次放射器22)を有する。
また、本実施形態に係るアンテナ装置では、スロット状のアンテナ素子(1次放射器21、2次放射器22)を介して、電磁結合によりガラス2を通して、ガラス2上のアンテナ素子(3次放射器23)を励振する。
また、本実施形態に係るアンテナ装置では、アンテナ素子(3次放射器23)に対して対向して配置された特殊金属膜4上に形成されたスロット状のアンテナ素子(2次放射器22)からの電磁結合により励振し、スロット状のアンテナ素子(2次放射器22)に対して対向して配置された特殊金属膜3上に形成されたスロット状のアンテナ素子(1次放射器21)からの電磁結合により励振し、スロット状のアンテナ素子(1次放射器21)に対して対向して配置された給電部5からの電磁結合により励振する。また、他の構成例として、ワイヤレスな電磁結合の代わりに、ワイヤを用いて直接給電により励起してもよい。
また、本実施形態に係るアンテナ装置では、ガラス2上のアンテナ素子(3次放射器23)を金属の細線によって形成し、アンテナ素子を可視しづらくすることができる。
【0040】
以上のように、本実施形態に係るアンテナ装置によると、窓ガラスの付近に配置するアンテナ装置に関し、効率化を図ることができる。例えば、アンテナ装置の設置を容易にすることができ、アンテナ装置により無線通信エリアを形成することを容易にすることができ、伝搬損失を低く抑えることが可能である。
具体例として、本実施形態に係るアンテナ装置によると、屋内側のガラス1や、屋外側のガラス2や、あるいは壁材(ここでは、ガラス以外の部分)に、給電用の穴を開けなくとも、アンテナ素子を励振することができる。
【0041】
また、本実施形態に係るアンテナ装置によると、例えば、屋内側の特殊金属膜3をグラウンドなどの基準電位とすることで、この特殊金属膜3の面の大きさに応じて、この特殊金属膜3の屋内側への電磁波の透過を抑えることができる。これにより、ガラス2上のアンテナ素子(3次放射器23)から屋内側に放射される電磁波の電力を低減することができ、屋内側の無線品質に影響を与えずに、屋外側のエリアを形成することができる。
【0042】
ここで、本実施形態に係るアンテナ装置では、3次放射器23(および、アンテナカバー31)を備えたが、他の構成例として、3次放射器23(および、アンテナカバー31)を備えない構成が用いられてもよい。3次放射器23は、例えば、放射パターン(例えば、ビームの方向など)を調整するためや、固定的にインピーダンスを調整するためのものであり、必ずしも備えられなくてもよい。
【0043】
(第2実施形態)
図4は、本実施形態に係るアンテナ装置の概略的な構成を示す図(側面図)である。
本実施形態では、第1実施形態とは異なる点について詳しく説明し、同様な点については詳しい説明は省略する。本実施形態では、第1実施形態と対応する部材については、特に異なる説明がない限り、第1実施形態と同様な構成を用いることが可能である。
【0044】
本実施形態に係るアンテナ装置は、2枚のガラス101、102と、屋内側のガラス101の屋外側の面に設けられた特殊金属膜103と、特殊金属膜103と屋外側のガラス102との間に設けられた空気層108を備える。また、本実施形態に係るアンテナ装置は、屋内側のガラス101の屋内側の面に給電部105を備え、その電源106を備える。また、本実施形態に係るアンテナ装置は、特殊金属膜103に形成した1次放射器(図示せず)を備え、屋外側のガラス102の屋外側の面に設けられた2次放射器(本実施形態では、外界へのアンテナ)123を備え、そのカバー(アンテナカバー)131を備える。
【0045】
屋内側から屋外側への順序で説明すると、電源106の配置を除いて、本実施形態に係るアンテナ装置は、給電部105、屋内側のガラス101、特殊金属膜103およびそれに形成された1次放射器、空気層108、屋外側のガラス102、2次放射器123、アンテナカバー131が並んだ構造を有する。
ここで、本実施形態に係る2次放射器123は、第1実施形態に係る3次放射器23に対応するものである。
【0046】
本実施形態に係るアンテナ装置では、第1実施形態に係るアンテナ装置と比べて、2枚の特殊金属膜3、4のうちの1枚およびそれに形成される放射器(本実施形態では、第1実施形態における特殊金属膜4および2次放射器22)を備えない構成となっている。
【0047】
以上のように、本実施形態に係るアンテナ装置によると、窓ガラスの付近に配置するアンテナ装置に関し、効率化を図ることができる。
ここで、本実施形態に係るアンテナ装置では、2次放射器123(および、アンテナカバー131)を備えたが、他の構成例として、2次放射器123(および、アンテナカバー131)を備えない構成が用いられてもよい。
【0048】
(第3実施形態)
図5は、本実施形態に係るアンテナ装置の概略的な構成を示す図(側面図)である。
本実施形態では、第1実施形態とは異なる点について詳しく説明し、同様な点については詳しい説明は省略する。本実施形態では、第1実施形態と対応する部材については、特に異なる説明がない限り、第1実施形態と同様な構成を用いることが可能である。
【0049】
本実施形態に係るアンテナ装置は、2枚のガラス201、202と、屋外側のガラス202の屋内側の面に設けられた特殊金属膜204と、特殊金属膜204と屋内側のガラス201との間に設けられた空気層208を備える。また、本実施形態に係るアンテナ装置は、屋内側のガラス201の屋内側の面に給電部205を備え、その電源206を備える。また、本実施形態に係るアンテナ装置は、特殊金属膜204に形成した1次放射器(図示せず)を備え、屋外側のガラス202の屋外側の面に設けられた2次放射器(本実施形態では、外界へのアンテナ)223を備え、そのカバー(アンテナカバー)231を備える。
【0050】
屋内側から屋外側への順序で説明すると、電源206の配置を除いて、本実施形態に係るアンテナ装置は、給電部205、屋内側のガラス201、空気層208、特殊金属膜204およびそれに形成された1次放射器、屋外側のガラス202、2次放射器223、アンテナカバー231が並んだ構造を有する。
ここで、本実施形態に係る1次放射器は、第1実施形態に係る2次放射器22に対応するものであり、また、本実施形態に係る2次放射器223は、第1実施形態に係る3次放射器23に対応するものである。
【0051】
本実施形態に係るアンテナ装置では、第1実施形態に係るアンテナ装置と比べて、2枚の特殊金属膜3、4のうちの1枚およびそれに形成される放射器(本実施形態では、第1実施形態における特殊金属膜3および1次放射器21)を備えない構成となっている。
【0052】
以上のように、本実施形態に係るアンテナ装置によると、窓ガラスの付近に配置するアンテナ装置に関し、効率化を図ることができる。
ここで、本実施形態に係るアンテナ装置では、2次放射器223(および、アンテナカバー231)を備えたが、他の構成例として、2次放射器223(および、アンテナカバー231)を備えない構成が用いられてもよい。
【0053】
(第4実施形態)
図6は、本実施形態に係るアンテナ装置の概略的な構成を示す図(側面図)である。
本実施形態では、第1実施形態とは異なる点について詳しく説明し、同様な点については詳しい説明は省略する。本実施形態では、第1実施形態と対応する部材については、特に異なる説明がない限り、第1実施形態と同様な構成を用いることが可能である。
【0054】
本実施形態に係るアンテナ装置は、2枚のガラス301、302と、これら2枚のガラス301、302の間に設けられた特殊金属膜303を備える。また、本実施形態に係るアンテナ装置は、屋内側のガラス301の屋内側の面に給電部305を備え、その電源306を備える。また、本実施形態に係るアンテナ装置は、特殊金属膜303に形成した1次放射器(図示せず)を備え、屋外側のガラス302の屋外側の面に設けられた2次放射器(本実施形態では、外界へのアンテナ)323を備え、そのカバー(アンテナカバー)331を備える。
【0055】
屋内側から屋外側への順序で説明すると、電源306の配置を除いて、本実施形態に係るアンテナ装置は、給電部305、屋内側のガラス301、特殊金属膜303およびそれに形成された1次放射器、屋外側のガラス302、2次放射器323、アンテナカバー331が並んだ構造を有する。
ここで、本実施形態に係る2次放射器323は、第1実施形態に係る3次放射器23に対応するものである。
【0056】
本実施形態に係るアンテナ装置では、第1実施形態に係るアンテナ装置と比べて、2枚の特殊金属膜3、4のうちの1枚およびそれに形成される放射器(例えば、第1実施形態における特殊金属膜4および2次放射器22)を備えず、空気層(第1実施形態における空気層8)を備えない構成となっている。本実施形態に係るアンテナ装置では、屋内側のガラス301と、特殊金属膜303と、屋外側のガラス302が、この順に、接合されている。
【0057】
以上のように、本実施形態に係るアンテナ装置によると、窓ガラスの付近に配置するアンテナ装置に関し、効率化を図ることができる。
ここで、本実施形態に係るアンテナ装置では、2次放射器323(および、アンテナカバー331)を備えたが、他の構成例として、2次放射器323(および、アンテナカバー331)を備えない構成が用いられてもよい。
【0058】
(第5実施形態)
図7は、本実施形態に係るアンテナシステムの概略的な構成を示す図である。
本実施形態に係るアンテナシステムは、第1実施形態〜第4実施形態のいずれかに係るアンテナ装置を複数並べて備えることで、アレーアンテナを構成したものである。
ここで、アレーアンテナを構成する複数のアンテナ装置としては、例えば、第1実施形態〜第4実施形態のうちの同一の実施形態に係るアンテナ装置で統一されてもよく、または、2つ以上の異なる実施形態に係るアンテナ装置が混合されて用いられてもよく、また、第1実施形態〜第4実施形態に示されるもの以外のアンテナ装置が用いられてもよい。
【0059】
図7には、ビル501のある面の壁面全体のうちの連続した3階分の壁面511を示してある。3階分の壁面511には、上下(垂直)方向に3個の窓ガラス(例えば、窓ガラス521、621、721など)が並んでおり、左右(水平)方向に複数の窓ガラス(例えば、窓ガラス521、522、523など)が並んでいる。
本実施形態に係るアンテナシステムでは、上下左右に連続して並んでいる複数の窓ガラスを組として、これら複数の窓ガラスのそれぞれにアンテナ装置を備えることで、全体として、壁面511の平面上にアレーアンテナを構成する。
【0060】
本実施形態に係るアンテナシステムでは、アレーアンテナを構成する複数のアンテナ装置により形成する放射パターンにより、例えば、ビーム(アレーアンテナ全体として放射する電磁波)の方向を細く絞ることや、ビームの方向を傾けることができ、これにより、スポット(例えば、ターゲットエリア)に対して鋭い指向性を向けることができる。
【0061】
ここで、ビル501のある壁面全体においては、例えば、特殊金属膜(第1実施形態に係るアンテナ装置のように2枚以上の特殊金属膜3、4が用いられる場合には、それぞれの特殊金属膜3、4ごと)を、その一面の壁面全体で1枚に共通化することが可能である。特に、接地するなどして基準の電位とする特殊金属膜については、ある一面の壁面全体で1枚に共通化すると、その壁面に備えられる全てのアンテナ装置において、基準の電位を一致させることができる。
【0062】
図8および
図9を参照して、放射パターンの例を示す。
図8は、素子単体放射パターンの一例を示す図である。
図8の例の放射パターン801は、第1実施形態に係る単体のアンテナ装置により形成される放射パターンである。なお、第2実施形態〜第4実施形態に係る単体のアンテナ装置により形成される放射パターンについても、アレーアンテナとの対比においては、同様な傾向を有する。
図9は、平面アレーパターンの一例を示す図である。
図9の例の放射パターン811は、本実施形態に係るアンテナシステムとして、上下(垂直)方向に3個のアンテナ装置を並べ、左右(水平)方向に8個のアンテナ装置を並べた、3素子×8素子のアレーアンテナの放射パターンである。
【0063】
図8および
図9には、XYZ直交座標系を示してあり、Z方向が上下(垂直)方向であり、X方向が左右(水平)方向である。
また、Y軸方向は、ビル501の壁面511に対して直交する方向である。
図8および
図9では、0°の方向が屋外の正面(屋内の裏面)の方向であり、180°の方向が屋外の裏面(屋内の正面)の方向である。
【0064】
図8および
図9に示されるように、アンテナ装置において特殊金属膜が基準の電位(例えば、グラウンド)として機能するため、屋内側への放射が小さくなり、これにより、アンテナ装置を設置しても、屋内側の無線通信品質はほとんど変化しないことが期待される。
また、
図9に示されるように、本実施形態に係るアンテナシステムでは、ガラス面の全体にアンテナ素子を配置することが可能となるため、例えば、屋上や屋内に基地局アンテナを配置する場合と比較して、設置可能なアンテナ素子の数の自由度が大きくなり、より細いビーム形成やビームチルトの調整が可能となる。
【0065】
以上のように、本実施形態に係るアンテナシステムでは、複数の窓ガラスがある面上に複数のアンテナ装置を配置してアレーアンテナを構成した。
本実施形態に係るアンテナシステムによると、窓ガラスの付近に配置するアンテナ装置に関し、効率化を図ることができる。例えば、本実施形態に係るアンテナシステムでは、窓ガラスや壁面(窓ガラス以外の部分)に給電用の穴を開けなくてもよいことから、ガラス強度を劣化することなく、屋内の基地局装置より屋外の無線通信エリアを形成することが可能な基地局アンテナを設計することができ、さらに、アレーアンテナにより良好な放射パターンを形成することができる。
【0066】
[以上の実施形態に係る構成例]
一構成例として、ガラスと、前記ガラスの面に設けられ放射器(例えば、1次放射器)が形成された特殊金属膜と、前記放射器に対して電力を供給する給電部と、を備えるアンテナ装置(例えば、第1実施形態〜第4実施形態に係るアンテナ装置)である。
【0067】
一構成例として、互いに対向して配置される第1のガラス(例えば、屋内側のガラス1)および第2のガラス(例えば、屋外側のガラス2)と、前記第1のガラスにおける前記第2のガラスの側の面に設けられ第1の放射器(例えば、1次放射器21)が形成された第1の特殊金属膜(例えば、屋内側の特殊金属膜3)と、前記第1の放射器に対して電力を供給する給電部(例えば、給電部5)と、前記第2のガラスにおける前記第1のガラスの側の面に設けられ第2の放射器(例えば、2次放射器22)が形成された第2の特殊金属膜(例えば、屋外側の特殊金属膜4)と、前記第2のガラスにおける前記第1のガラスとは反対の側の面に設けられた第3の放射器(例えば、3次放射器23)と、を備えるアンテナ装置(例えば、第1実施形態に係るアンテナ装置)である。
一構成例として、前記第1の特殊金属膜を基準の電位とするアンテナ装置(例えば、第1実施形態に係るアンテナ装置)である。
【0068】
一構成例として、前記給電部は、電磁結合により、または、直接接続により、電力を供給するアンテナ装置(例えば、第1実施形態〜第4実施形態に係るアンテナ装置)である。
【0069】
一構成例として、ガラスと、前記ガラスの面に設けられ放射器が形成された特殊金属膜と、前記放射器に対して電力を供給する給電部と、を備えるアンテナ装置を複数有し、これら複数のアンテナ装置によりアレーアンテナを構成した、アンテナシステム(例えば、第5実施形態に係るアンテナシステム)である。
【0070】
ここで、以上の実施形態では、屋内と屋外との間に設置される窓ガラスにアンテナ装置を組み込む例を示し、「屋内(側)」および「屋外(側)」という表現により配置関係を特定したが、「屋内(側)」および「屋外(側)」という配置関係以外のものに本発明が適用されてもよい。また、以上の実施形態では、建物(例えば、ビル)の窓ガラスにアンテナ装置を組み込む例を示したが、他の構成例として、建物以外(例えば、乗り物など)の窓ガラスにアンテナ装置が組み込まれてもよく、また、窓ガラス以外のガラスにアンテナ装置が組み込まれてもよい。
【0071】
[以上の実施形態のまとめ]
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【0072】
また、以上に示した実施形態に係る各装置(例えば、基地局装置)の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより、処理を行ってもよい。
【0073】
なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、オペレーティング・システム(OS:Operating System)や周辺機器等のハードウェアを含むものであってもよい。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ等の書き込み可能な不揮発性メモリ、DVD(Digital Versatile Disk)等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。
【0074】
さらに、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(例えばDRAM(Dynamic Random Access Memory))のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。
また、上記のプログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。
また、上記のプログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、上記のプログラムは、前述した機能をコンピュータシステムに既に記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。