(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置などの表示画面の前方に静電センサを備えた表示入力装置は、表示画面と静電センサの操作面との間に距離があるため、表示画面を斜め前方から見たときの視差により、指などの操作体で操作面を触れたときの接触検知位置と、表示画面に表示されているボタン表示などの操作目標表示との間に操作誤差が発生する。
【0003】
この操作誤差により、目標のボタン表示に操作体を接触させたつもりでも、そのボタン表示が操作されていると検知されず、むしろその隣のボタン表示が操作されたものと誤って検知されることがある。
【0004】
以下の特許文献1には、操作者の視差に基づく前記操作誤差について記載されている。特許文献1に記載された入力装置は、ディスプレイの前方に複数の発光部と受光部とを備えた三次元入力装置が設けられている。この三次元入力装置で、ディスプレイから離れた位置でのホバー検知と、ディスプレイに接触したときのタッチ検知が可能となっている。
【0005】
操作者の視差に基づく前記操作誤差については、ホバー検知のときに、表示画面に表示されるアイコンを大きくすることで対応している。
【0006】
さらに、ホバー検知からタッチ検知に至るまでの時間を監視し、その時間が短いときはタッチされた場所にあるアイコンが操作されたものと判定され、前記時間が長いときはホバー検知で選択されたアイコンが操作されたものであると判定される。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1と
図2に、本発明の実施の形態の表示入力装置1の基本構造が示されている。
図1に示すように、表示入力装置1は表示装置2を有している。表示装置2は、カラー液晶表示パネルやエレクトロルミネッセンス表示パネルなどである。表示装置2は金属製の枠体3の内部に保持されており、表示画面2aが枠体3の前面3aよりも後方(Z2方向)に後退して位置している。枠体3の前方にガラス板またはポリカーボネート板あるいはアクリル板などの透明なカバー板4が固定されており、その裏面(Z2側の面)に静電センサ10が貼着されている。
【0022】
静電センサ10は、PETなどの透明な樹脂フィルム11の表面に透明な電極層12が形成されている。
【0023】
または、前記カバー板4の裏面に電極層12が形成されて静電センサ10が構成されていてもよい。
【0024】
表示入力装置1は、カバー板4のZ1側に向く最表面が操作面4aとなっている。
図3ないし
図5には、表示入力装置1が上方から見た状態で示されている。これらの図に示されているように、表示装置2の表示画面2aとカバー板4の表面の静電センサ10の操作面4aとの間には、奥ゆき距離L1が存在している。
【0025】
図2に電極層12の配置が示されている。電極層12はITOなどの透明電極材料で形成されている。電極層12は配置に応じて第1の電極層12aと第2の電極層12bに区分される。第1の電極層12aと第2の電極層12bは同じ面積の菱形形状であり、互いに独立して形成されている。
【0026】
第1の電極層12aは、Y1列、Y2列、Y3列、Y4列上に一定のピッチで並んで配置されている。第2の電極層12bは、X1列、X2列、X3列上に一定のピッチで並んで配置されている。
【0027】
静電センサ10には、電極層12a,12bのそれぞれと絶縁された複数の配線層13が形成されている。複数の配線層13のそれぞれは、第1の電極層12aと第2の電極層12bに個別に導通している。
【0028】
図2に、静電センサ10に付随する回路がブロック図で示されている。
この回路には、複数の配線層13を選択する切換回路14が設けられ、切換回路14に駆動回路15と検出回路16が接続されている。検出回路16はA/D変換部17を介して制御部18に接続されている。
【0029】
静電センサ10による検知動作の一例としては、切換回路14の切換え動作により、駆動回路15から第1の電極層12aに対してY1列、Y2列、Y3列、Y4列の順番で矩形波のパルス電圧が与えられる。このとき、切換回路14の切換え動作により、全ての第2の電極層12bが検出回路16に接続される。
【0030】
隣接する第1の電極層12aと第2の電極層12bとの間に静電容量が形成されているため、駆動回路15から第1の電極層12aに与えられるパルス電圧の立ち上がり時と立下り時に第2の電極層12bに電流が流れ、その電流量が検出回路16で検出される。操作面4aのいずれかの箇所に、ほぼ接地電位の導電体の操作体である人の指が接近すると、第1の電極層12aまたは第2の電極層12bと指との間の静電容量が付加されることになり、第2の電極層12bを経て検出回路16で検出される電流量が変化する。
【0031】
検出回路16の検知信号はA/D変換部17でディジタル値に変換されて制御部18に与えられる。駆動回路15からY1列、Y2列、Y3列、Y4列の順で第1の電極層12aにパルス電圧が与えられているときに、第2の電極層12bからの検知電流の変化を監視することで、Y1列、Y2列、Y3列、Y4列のそれぞれの列毎の検出値が得られる。Y1列、Y2列、Y3列、Y4列のそれぞれの列の検出値は分布曲線として得られ、分布曲線のピーク位置がY方向での指の接近位置として求められる。
【0032】
次に、切換回路14の切換え動作によって、第2の電極層12bに対してX1列、X2列、X3列の順番で駆動電力が印加されるとともに、全ての第1の電極層12aから検出される電流値が検出回路16に与えられる。その結果、X1列、X2列、X3列のそれぞれの列の検出値が分布曲線として得られ、分布曲線のピーク位置がX方向での指の接近位置として求められる。
【0033】
この動作を繰り返すことで、操作面4aに設定されるX−Y座標上のどの位置に指が接近しているかを算出できる。
【0034】
なお、静電センサ10の電極層12の配置は、
図2に示す実施の形態に限られるものではなく、例えば、X方向に連続するX電極層とY方向に延びるY電極層が互いに絶縁されて形成されているものであってもよい。この場合の駆動・検出方法は、X電極層とY電極層の一方の電極層に順番にパルス電圧が印加され、このとき他方の電極層で検知される電流値が検出回路に与えられる。
【0035】
本実施の形態での静電センサ10は、電極12a,12bの検知感度が高い、いわゆるホバータイプである。ホバータイプの静電センサは、第1の電極層12aまたは第2の電極層12bにパルス電圧が与えられたときに、操作面4aの前方(Z1方向)に強い電界が広がり、指Fが操作面4aの前方に離れた位置にあっても、指Fの位置をX−Y座標上の位置(座標点)として検出することができる。
【0036】
検出回路16で検出される電流値の変化は、指が操作面4aから遠ざかっているほど小さく、操作面4aに接近するにしたがって大きくなる。そこで、制御部18では、2つのしきい値を設定して検出回路16からの検出出力を監視する。
【0037】
検出出力が第1のしきい値を超えたときに、操作面4aから前方Z1へ向けて予め決められた測定距離L2だけ離れた空間検知帯Hに指Fが至ったと判断され、さらに、空間検知帯Hに位置している指FのX−Y座標上の座標点である空間検知位置が算出される。
【0038】
検出出力が第2のしきい値を超えたときに、指Fが操作面4aに接触したと判断され、指Fが操作面4aに接触したときの座標点である接触検知位置が算出される。指Fが操作面4aに接触したときの検出出力は非常に大きいため、指Fの接触により、メニュー表示やアイコン表示に対する確定操作の認識を確実に行うことができる。
【0039】
なお、
図3に示すように、操作面4aよりも距離L3だけ離れた位置での検出出力を第2のしきい値としてもよい(L3<L2)。この場合には、指Fを操作面4aに接触させることなく、操作面4aの前方において例えば円を描くように動作させることで、メニュー表示やアイコン表示に対する確定動作などを行うことができる。
【0040】
図3には、表示入力装置1を自動車の車室内に設置した例が示されている。表示入力装置1は車室内の前方に固定され、表示画面2aと操作面4aが車室内に向けて前方(Z1方向)へ向けられている。
【0041】
図3に、運転席に着座している人Paと助手席に着座している人Pbならびに後部座席の中央部に着座している人Pcが示され、これらの人Pa,Pb,Pcと、表示入力装置1との位置関係が示されている。本発明の表示入力装置1では、前記第1のしきい値と第2のしきい値を使用することで、どの人が操作しようとしているのかを判定することができる。
【0042】
図3では、助手席に着座している人Pbが表示入力装置1を見るときの視線が線VLで示されている。人Pcが表示入力装置1を操作しようとするとき、操作面4aに向けて移動させる指Fの移動方向は視線VLとほぼ一致することが多い。そこで、以下では、線VLを視線として説明することもあるし、指による操作方向線として説明することもある。
【0043】
指Fを操作面4aへ接近させるとき、制御部18では、検出出力が第1のしきい値を超えたときに指Fが空間検知帯Hに至ったと判断され、その指Fの位置が空間検知位置として認識され、その後、第2のしきい値を超えたときに指Fが操作面4aに触れたと判断され、指Fの接触検知位置が認識される。制御部18では、検出出力が第1のしきい値を超えたときと、第2のしきい値を超えたときの検出座標位置の変化から指Fがどの方向から接近しているのかを知ることができる。
【0044】
図3の例では、X−Y座標上で空間検知位置S1が検知され、その後に接触検知位置S2が検知されており、制御部18では、助手席に着座している人Pcが指Fを操作方向線VLに沿って移動させて操作したと認識される。
【0045】
なお、
図3に示すように、指Fが操作面4aの前方へ距離L3の位置に接近したときの検出出力が第2のしきい値とされているときは、指Fが空間検知帯Hを通過したときから、距離L3の位置に至るまでの検出座標点の変化を算出することで、指Fがどの方向から接近しているのかを知ることができる。
【0046】
人の指Fは、操作面4aに向けて三次元空間を移動し、制御部18ではその移動方向が操作面4aに設定されるX−Y座標内の二次元方向のベクトルとして認識される。ただし、以下では説明を簡単にするため、指Fの移動方向を示すベクトルのうちのX方向に向く成分のみを指Fの移動方向ならびに移動距離とする。
【0047】
また、以下では、操作面4aに接近する指Fが空間検知帯Hに至ったときと、指Fが操作面4aに接触したときの2つの検出出力を用いて指Fの接近方向を検出する例について説明するが、指Fが操作面4aに接触したときの検出出力に代えて、指Fが、操作面4a前方の距離L3の位置に接近したときの検出出力を使用することもできる。さらには、指Fが操作面4aに接近するときの複数の検出出力を使用することも可能である。あるいは、指Fが操作面4aに接近するときに、X−Y座標上で移動する検知出力の座標点の軌跡を連続的に追跡して、指Fの移動方向を算出してもよい。
【0048】
指Fを操作面4aに接近させるときの指Fの移動方向を知ることにより、以下の制御が可能になる。
第1の制御としては、視線LVの視差による誤操作を防止することが可能である。
【0049】
図4(A)は、
図3と同様に表示入力装置1を上方から見た平面図であり、
図4(B)は表示入力装置1を正面から見た正面図である。
【0050】
図3と
図4に示すように、助手席に着座している人Pbの視線VLでは、操作面4aと表示画面2aとの間にX−Y座標上の視差が発生する。この視差により、指Fで表示画面2aのボタン表示やアイコン表示などの操作目標表示V1に触れたつもりでも、指Fによる実際の接触検知位置S2と操作目標表示V1との間にX−Y座標面上での操作誤差距離W2が発生する。
【0051】
表示入力装置1では、表示画面2aの表示内容と、静電センサ10で設定されるX−Y座標上での検知位置とが、視差の無い方向から見たときに、互いに一致するように設定されている。そのため、指Fによる接触検知位置S2が操作目標表示V1の中心位置から大きくずれてしまうと、制御部18では操作目標表示V1が操作されたものと判別できず、むしろ操作目標表示V1の左に隣接する他の操作目標表示が操作されたと判断されることもある。
【0052】
そこで、制御部18では、指Fが操作面4aに接触したときに、操作面4aまたは表示画面2aと平行な面内での空間検知位置S1と接触検知位置S2との検知ずれ距離W1が算出され、検知ずれ距離W1が予め決められている許容範囲を超えている場合に、検知位置の補正が行なわれる。
【0053】
図3と
図4の例では、操作面4aから空間検知帯Hまでの測定距離L2と、検知ずれ距離W1とから、操作面4aまたは表示画面2aに対する指Fの進入角度θが算出される。そして、表示画面2aと操作面4aとの奥ゆき距離L1と進入角度θとから、補正すべき操作誤差距離W2が算出される。
【0054】
図4の場合の補正としては、制御部18において、指Fが接触検知位置S2に接触したときに静電センサ10で検出された座標点のX座標(Xa)に対して、算出後の操作誤差距離W2が加算される。加算後の検出座標点のX座標は(Xa+W2=Xb)となり、静電センサ10で検出されたものとして処理される座標点(Xb)と操作目標表示V1とをデータ上で一致させることができる。
【0055】
または、
図4(B)に示すように、操作面4aに設定されている初期のX0−Y0座標の原点O0を、接触検知位置S2に近づけるよう図示左方向へ、算出された操作誤差距離W2だけ移動させる。そして、移動後の点O1を原点とする新たなX1−Y1座標上で、接触検知位置S2の座標点を求める。移動後の原点O1から実際の接触検知位置S2までの距離は、初期の原点O0から操作目標表示V1までの距離と同じあるため、データ上で接触検知位置S2を操作目標表示V1に一致させることができる。
【0056】
この補正により、人Pbの視線VLの視差によってあたかも操作しているかのように見えている操作目標表示V1に、接触検知位置S2をデータ上で一致させることができる。制御部18では、操作目標表示V1が操作されたものと認識して、操作目標表示V1であるボタン表示やアイコン表示に相当する制御動作が実行される。
【0057】
図5は、前記操作誤差距離W2が算出されたときの、他の補正方法を示している。
図5に示す補正方法では、表示画面2aと操作面4aとの奥ゆき距離L1と指Fの進入角度θとから、補正すべき操作誤差距離W2が算出されたときに、表示画面2aの表示画像の全体を図示右方向へ操作誤差距離W2だけ移動させる。
【0058】
図5(A)に示す状態では、人Pbは、斜めの視線VLによって、指Fが操作を希望する第1の操作目標表示V1に触れていると誤解しているが、
図5(B)に示すように、実際の接触検知位置S1は、第1の操作目標表示V1ではなくその隣の第2の操作目標表示V2の前方に位置している。そこで、
図5(C)に示すように、表示画面の全体を図示右方向へ移動させると、視線VLで見ている人Pbには、指Fが第1の操作目標表示V1ではなく、第2の操作目標表示V2に誤って触れていると気づくことができる。
【0059】
よって、人Pbは指Fを操作面4aから離すことになり、改めて指Fで希望している第1の操作目標表示V2に指Fを触れる操作をやり直せるようになる。そのためには、指Fが操作面4aから離れたときに、表示画面を図示左方向へ距離W2だけ移動させて、元の表示状態に復帰させることが好ましい。
【0060】
なお、
図4の補正方法において、接触検知位置S2の座標に、算出された操作誤差距離W2の正確な値を加算するのではなく、予め用意されている固定値を加算して、接触検知位置S2と操作目標表示V1とをデータ上で接近させるだけでもよい。または、X0−Y0座標の原点O0を移動させるときも、予め決められている固定値だけ移動させて、接触検知位置S2と操作目標表示V1とをデータ上で接近させてもよい。同様に、
図5の補正においても、算出された操作誤差距離W2の正確な値で表示画像を移動させるのではなく、予め用意されている固定値だけ移動させてもよい。
【0061】
固定値を使用した場合であっても、
図4に示す補正方法では、接触検知位置S2と操作目標表示V1とをデータ上で接近させることができ、人Pbが操作しようとしている操作目標表示V1が操作されたものと判断される確率を高くすることができる。また、
図5の補正方法では、人Pbが第1の操作目標表示V1以外の場所を操作していると気づくことができるようになる。
【0062】
次に、第2の制御としては、操作した人がどの方角にいるかを認識して、操作者の方角に基づいた環境の条件を設定することが可能になる。
【0063】
図3は自動車の車室内の配置を示しているが、この場合には、操作面4aを操作する可能性のある人P1,P2,P2が着座している方角が3方向に限られている。そこで、操作面4aの前方に境界B1,B2で区切られた3つの領域が設定され、どの領域からの操作であるかを認識できるようにする。
【0064】
制御部18では、空間検知位置S1の座標点と接触検知位置S2の座標点との検知ずれ距離W1が算出されるが、この値が所定値よりも小さいときは、境界B1とB2で挟まれた中央領域に着座している人Pcが操作面4aを操作したと判別される。検知ずれ距離W1が所定値よりも大きいときは、中央領域以外からの操作であると判定される。この場合には、空間検知位置S1の座標点から接触検知位置S2の座標点に至る座標点の移動方向に基づいて、境界B1よりも右側の領域にいる人Paの操作であるのか、境界B2よりも左側の人Pbによる操作であるのかが判別される。
【0065】
この判別に基づいて、例えば、操作された操作目標表示V1が空調設備の温度設定や風量設定などであるときに、操作した人が着座していると判定された領域に近い送風口からの送風温度や風量を設定された値に設定することができる。または、操作された操作目標表示V1が音響装置の場合には、操作した人が着座していると判定された領域に向けての音量を操作された値に設定することなどが可能になる。
【0066】
図6は本発明の他の実施の携帯の表示入力装置101を示す平面図である。
表示入力装置101に使用されている表示装置2と静電センサ10の構造は、
図1ないし
図5に示されたものと実質的に同じである。
【0067】
図6では、表示入力装置101の表示画面2aと操作面4aとが上向きの姿勢で使用されている例を示している。
【0068】
操作しようとする人PA,PBは、操作面4aに対して異なる方角に位置している。前述のように、人の指が操作面4aに接触したときに、空間検知位置S1の座標点と接触検知位置S2の座標点とを検知することでどの方向から操作されたのかを知ることができる。
図6の場合には、人PAが操作したのか人PBが操作したのかを判別することができる。
【0069】
例えば、人PAが操作したと判定されたときは、人PAの指Fが接触した箇所の画像の説明文Eaが、人PAにとって読みやすい向きとなるように表示内容が切換えられる。また、人PBが操作したと判定されたときは、人PBの指Fで接触した箇所の画像の説明文Ebが、人PBにとって読みやすい向きとなるように表示内容が切換えられる。
【0070】
また、この表示入力装置101をゲーム装置として使用することができる。この場合には、どの方角の人が操作したかに応じて、ゲームの表示内容などが変更される。