(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記生物学的試料における抗HE4抗体の存在または量が、該生物学的試料を、SEQ ID NO:1の少なくとも20個の連続したヌクレオチドを含む配列に少なくとも90%同一である配列に選択的にハイブリダイズするポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドと接触させることにより決定される、請求項1記載の方法。
抗HE4抗体の決定された量を参照標準と比較する段階をさらに含み、該参照標準より多い検出された抗HE4抗体の量が、前記ヒト対象におけるHE4発現細胞の存在を示す、請求項1記載の方法。
抗HE4抗体を有する対象が第I/II期の卵巣癌のリスクがあるかどうかを決定するために、少なくとも1種の追加的な診断アッセイを行う段階をさらに含む、請求項1記載の方法。
ポリペプチドの抗HE4抗体への結合が、放射性核種、蛍光体、アビジン分子とビオチン分子との間の結合事象、ストレプトアビジン分子とビオチン分子との間の結合事象、および酵素反応の産物からなる群より選択されるシグナルを検出することを含む、請求項1記載の方法。
前記生物学的試料が、血液、血漿、血清、腹水、尿、唾液、涙、胸水、痰、膣液、および医学的手技中に取得された洗液からなる群より選択される生物学的体液である、請求項1記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
詳細な説明
本明細書において具体的に定義されない限り、本明細書において使用されるすべての用語は、本発明の当業者に対して有すると考えられるものと同一の意味を有する。
【0013】
「同一性パーセント」または「同一であるパーセント」という用語は、HE4ポリペプチドまたはその一部などのポリペプチド配列に適用される際、最大の同一性パーセントを達成するように候補および対象配列をアラインメントした後の、対象タンパク質配列(SEQ ID NO:2に示されるアミノ酸配列、または少なくとも10個の連続したアミノ酸残基を含むその一部など)と同一である候補タンパク質配列におけるアミノ酸残基のパーセンテージとして定義される。例えば、2種のタンパク質配列間の同一性パーセンテージは、National Center for Biotechnology Information (NCBI), U.S. National Library of Medicine, 8600 Rockville Pike, Bethesda, Maryland 20894, U.S.Aのウェブサイトのbl2seqインターフェイスを用いて、2種の配列の一対比較により確定することができる。bl2seqインターフェイスによって、Tatiana, A., et al, "Blast 2 Sequences--A New Tool for Comparing Protein and Nucleotide Sequences," FEMS Microbiol. Lett. 174:247-250 (1999)により記載されるBLASTツールを用いた配列アラインメントが可能になる。以下のアラインメントパラメータを使用する:Matrix=BLOSUM62;Gap open penalty=11;Gap extension penalty=1;Gap x_dropff=50;Expect=10.0;Word size=3;およびFilter=off。
【0014】
「同一性パーセント」または「同一であるパーセント」という用語は、核酸分子に適用される際、最大の同一性パーセントを達成するように配列をアラインメントし、かつ配列同一性の部分としていかなる核酸残基置換も考慮しない後の、対象核酸分子配列(SEQ ID NO:1に示される核酸分子配列、または少なくとも20個の連続したヌクレオチドを含むその一部など)と同一である候補核酸配列におけるヌクレオチドのパーセンテージである。最良のアラインメントを達成するために、候補核酸配列中にギャップを導入しない。核酸配列同一性は、以下の様式において確定することができる。対象ポリヌクレオチド分子配列を使用し、プログラムBLASTNバージョン2.1(Altschul, et al., Nucleic Acids Research 25:3389-3402 (1997)に基づく)を用いて、Genbankデーターベースなどの核酸配列データベースを検索する。プログラムを、ギャップを入れない(ungapped)モードで使用する。Wootton, J.C., and S. Federhen, Methods in Enzymology 266:554-571 (1996)において定義されるような、低複雑度の領域による配列相同性を除去するために、デフォルトのフィルタリングを使用する。BLASTNのデフォルトのパラメータを利用する。
【0015】
本明細書において使用される際、「健常なヒト対象」という用語は、癌を患っていないことが知られている個体を指し、そのような知見は、本明細書において記載されるものとは異なる癌アッセイを含むがそれに限定されない、個体についての臨床データに由来する。健常な個体はまた、好ましくは、例えば、直腸圧迫、腹部膨満、および腫脹を含む、卵巣癌などのHE4発現腫瘍と関連する初期症候について無症候であり;かつまた、好ましくは、他の生殖性疾患または状態についても無症候である。
【0016】
本明細書において使用される際、「HE4発現腫瘍」という用語は、卵巣癌、肺腺癌(Bingle et al., Respiratory Research 7:61-80 (2006))、および唾液腺腫瘍を含むがそれらに限定されない、正常組織と比較した際に増加したHE4の発現と関連する新生物状態を有すると同定される任意のタイプの癌細胞および/または腫瘍を指し、HE4は、SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:2、およびその哺乳動物ホモログ、または、タンパク質(SEQ ID NO:2)の少なくとも10個の連続した残基、もしくはcDNA(SEQ ID NO:1)の少なくとも20個の連続したヌクレオチドを含むその断片の、少なくとも一つを指す。
【0017】
本明細書において使用される際、「卵巣癌」という用語は、漿液性卵巣癌、非侵襲性卵巣癌、混合表現型卵巣癌、粘液性卵巣癌、子宮内膜様卵巣癌、透明細胞卵巣癌、乳頭状漿液性卵巣癌、ブレンナー細胞、および未分化腺癌を含むがそれらに限定されない、任意のタイプの卵巣癌を指す。
【0018】
本明細書において使用される際、「HE4を発現する腫瘍の再発」という用語は、本明細書において記載されるものとは異なる癌アッセイを含むがそれに限定されない、個体についての臨床データに基づく、HE4を発現する細胞、例えば、卵巣癌、またはそれ由来の腫瘍細胞に関連した癌の臨床的証拠を指す。
【0019】
本明細書において使用される際、1種または複数のHE4発現腫瘍と関連する癌(例えば、卵巣癌)の文脈における「予後良好」という用語は、疾患から治癒するか、または、最初の診断後、少なくとも5年の腫瘍の無い生存期間を有する可能性が高い患者を指す。
【0020】
本明細書において使用される際、1種または複数のHE4発現腫瘍と関連する癌(例えば、卵巣癌)の文脈における「予後不良」という用語は、最初の診断後、5年の期間内に疾患により死亡する可能性が高い患者を指す。
【0021】
ヒト精巣上体4-ジスルフィドコアタンパク質(「HE4」)(SEQ ID NO:2)は、SEQ ID NO:1(Genbankアクセッション番号AY212888に対応する)に示されるmRNA配列によりコードされる。HE4 cDNAは、最初にヒト精巣上体から単離され(Kirchhoff et al., 1991)、後に、卵巣癌から構築されたcDNAライブラリーにおいて高頻度で検出された(Wang et al., Gene 229:101 (1999))。HE4タンパク質は、「可溶性HE4関連ペプチド」(SHRP)と呼ばれる、多岐にわたる機能を有する小さな酸性かつ熱安定性の分子の異種グループを含む、タンパク質の「4-ジスルフィドコア」ファミリーに属する(Kirchhoff, et al., Biol. Reprod. 45:350-357 (1991))。4-ジスルフィドコアファミリーメンバーポリペプチドのアミノ酸配列における8個のコアシステイン残基の保存された間隔(SEQ ID NO:2のアミノ酸領域32〜73および76〜123)は、これらの分子の緻密なかつ安定な構造へのフォールディングを方向付けると考えられる。4-ジスルフィドコアファミリーの多くのメンバーは、プロテアーゼインヒビターである;しかしながら、HE4を含むいくつかのファミリーメンバーについては、機能がまた同定されていない。
【0022】
本明細書において使用される際、「HE4」タンパク質という用語は、ヒト対象から取得された生物学的試料より単離される天然に存在するHE4タンパク質、および、HE4を作る培養細胞(例えば、培養卵巣癌細胞)から単離された、または組み換えDNA技術により(例えば、真核細胞発現系(例えば、COS細胞)において)、酵母、哺乳動物中で、もしくは細菌発現系において作製されたHE4タンパク質を包含する。
【0023】
上記の通り、本発明者らは、実施例2に記載されるように、生物学的試料(例えば、血漿または血清)における天然のHE4タンパク質(SEQ ID NO:2)に対する抗体を検出するための再現性のあるアッセイを作製した。実施例2〜3にさらに記載されるように、本発明者らは、ヒト対象におけるHE4に対する抗体の存在を検出するためにこのアッセイを使用し、卵巣癌を患っていると臨床的に同定された対象が、正常の健常な女性対象と比較した際に有意により高い抗HE4抗体の発生率を有することを見出した。
【0024】
上記の通り、一つの局面において、ヒト対象におけるHE4発現細胞の存在を検出するための方法が提供される。方法は、ヒト対象から取得された生物学的試料における抗HE4抗体の存在または量を確定する段階を含み、生物学的試料における抗HE4抗体の存在または量は、ヒト対象におけるHE4発現細胞の存在を示す。一つの態様において、生物学的試料における抗HE4抗体の存在または量は、生物学的試料を、SEQ ID NO:1の少なくとも20個の隣接したヌクレオチドを含む配列に少なくとも80%同一、または少なくとも90%同一、または少なくとも95%同一、または少なくとも98%同一、または少なくとも99%同一である配列に選択的にハイブリダイズするポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドと接触させることにより確定される。いくつかの態様において、生物学的試料における抗HE4抗体の存在または量は、生物学的試料を、SEQ ID NO:2の少なくとも10個の隣接したアミノ酸を含む配列に少なくとも80%同一、または少なくとも90%同一、または少なくとも95%同一、または少なくとも98%同一、または少なくとも99%同一である配列を含むポリペプチドと接触させることにより確定される。一つの態様において、参照標準(例えば、陰性対照)との比較における抗HE4抗体の存在または量が、ヒト対象における、腫瘍細胞などのHE4発現細胞の存在を示す。別の態様において、あらかじめ設定された閾値量を超える抗HE4抗体の量が、ヒト対象におけるHE4発現細胞の存在を示す。方法のいくつかの態様において、ヒト対象におけるHE4発現細胞の存在は、対象が卵巣癌を患っているか、または発症するリスクがあることを示す。
【0025】
生物学的体液を含む、多種多様の生物学的試料が、本発明の方法において使用されてもよい。生物学的体液の非限定的な例は、血液、血漿、血清、腹水、尿、唾液、涙、胸水、痰、膣液(分泌物)、および医学的手技中に取得された洗液(例えば、生検、内視鏡検査、または外科手術中に取得された骨盤のまたは他の洗液)を含む。
【0026】
本発明の本局面の方法は、HE4の発現と関連する疾患または状態を患っている対象と、HE4の発現と関連しない疾患または状態を患っている対象との間を区別するための診断ツールとして使用されてもよい。方法の一つの態様において、生物学的試料は、卵巣癌と関連する少なくとも1種の症候を患っているヒト対象から取得される。卵巣癌と関連する症候は、医学の分野における当業者に公知である。そのような症候の非限定的な例は、腹部の腫脹/膨満、腹部/骨盤の疼痛または圧迫、胃腸の症候(例えば、ガス、消化不良、悪心、もしくは便通における変化)、膣出血または分泌物、泌尿器の問題(例えば、緊急性、灼熱感、または痙攣)、疲労、発熱、背痛、および呼吸困難を含む。
【0027】
いくつかの態様において、本発明の本局面の方法は、抗HE4抗体を有する対象が卵巣腫瘍を有するかどうかを確定するために少なくとも1種の追加的な診断アッセイを行う段階を、さらに含む。いくつかの態様において、本発明の本局面の方法は、例えば、生物学的試料におけるCA125の存在の検出、超音波、CTスキャン、MRIスキャン、生検、吸引などのような、卵巣癌についての少なくとも1種の追加的な診断アッセイを対象に対して行う段階を、さらに含む。
【0028】
本明細書においてより詳細に記載されるように、いくつかの態様において、HE4発現腫瘍細胞の存在を検出するため、卵巣癌などのHE4発現腫瘍と関連する癌の再発の存在もしくは可能性を確定するため、HE4発現腫瘍と関連する癌を患っている患者の臨床状態および/もしくは予後を評価するため、ならびに/または、患者における癌の処置の有効性をモニタリングするために、天然のHE4に対する抗体の検出を含む本発明の方法が使用されてもよく、かつ任意で、SHRP抗原を検出するアッセイと組み合わされてもよい。生物学的試料において検出されたSHRP抗原の量は、抗原参照値などの参照標準と比較されてもよく、参照標準と比較した際に増加した試料におけるSHRP抗原の量の検出は、ヒト対象におけるHE4発現腫瘍細胞の存在を示す。
【0029】
別の態様において、HE4発現腫瘍について治療的処置を受けているヒト癌患者の処置の有効性をモニタリングするための方法が提供される。方法は、(a)HE4発現腫瘍と関連する癌について治療的処置を受けているヒト患者から、生物学的試料を提供する段階;(b)生物学的試料を、SEQ ID NO:1の少なくとも20個の隣接したヌクレオチドを含む配列に少なくとも90%同一である配列に選択的にハイブリダイズするポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドと接触させることにより、生物学的試料における抗HE4抗体の存在または量を確定する段階;および(c)抗HE4抗体の確定された存在または量を、抗体参照値と比較する段階であって、抗体参照値より多い抗HE4抗体の量が、癌についての治療的処置に対する正の応答を示す、段階を含む。
【0030】
別の態様において、HE4発現腫瘍と関連する癌について治療的処置を受けているヒト患者における、HE4発現腫瘍の再発の可能性を確定するための方法が提供される。方法は、(a)HE4発現腫瘍と関連する癌について治療的処置を受けているヒト患者から、生物学的試料を提供する段階;(b)生物学的試料を、SEQ ID NO:1の少なくとも20個の隣接したヌクレオチドを含む配列に少なくとも80%、例えば少なくとも90%同一である配列に選択的にハイブリダイズするポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドと接触させることにより、生物学的試料における抗HE4抗体の存在または量を確定する段階;および(c)段階(b)において抗HE4抗体の確定された存在または量を、抗体参照値と比較する段階であって、抗体参照値より多い抗HE4抗体の量が、HE4発現腫瘍再発のより低いリスクを示し、かつ、参照値より少ない抗HE4抗体の量が、ヒト患者におけるHE4発現腫瘍再発のより高いリスクを示す、段階を含む。
【0031】
本発明の方法の一つの態様に従って、HE4発現腫瘍と関連する癌について治療的処置を受けているヒト患者は、その臨床状態および癌の再発の可能性について評価される。本態様に従う方法は、卵巣癌、肺腺癌、または唾液腺腫瘍などのHE4発現腫瘍について以前に診断され、かつ処置された(例えば、外科手術で処置された、および/または、以前にもしくは現在、化学療法、放射線療法、抗体を含むタンパク質治療法、遺伝子治療、癌ワクチン療法、幹細胞移植、または他の療法などの治療的処置を受けている)患者で実施されてもよい。卵巣癌の再発は、例えば、転移などの、卵巣癌の1種または複数の臨床症候の存在により確定されるか、あるいは、生化学的試験、免疫学的試験、またはCA125抗体に対する生物学的試料における交差反応性などの血清学的試験、または他の診断試験において確定されるような、臨床的再発である。好ましくは、卵巣癌の再発は、処置から少なくとも約2年、より好ましくは、処置から約2〜3年、およびさらにより好ましくは、処置から約4または5または10年で検出することができる。
【0032】
外科手術後に取得された情報を使用するInternational Federation of Gynecology and Obstetrics(「FIGO」)病期分類システムにより示されるような、1〜4の病期分類システムが、卵巣癌を説明するために使用される。外科手術は、腹式子宮全摘出術、1個もしくは両方の卵巣および卵管、網の除去、ならびに/または、細胞診のための骨盤洗浄を含み得る。
第I期‐1個または両方の卵巣に限局している
IA‐1個の卵巣に関わる;無傷の被膜;卵巣表面上に腫瘍が無い;腹水または腹膜洗液中に悪性細胞が無い
IB‐両方の卵巣に関わる;無傷の被膜;卵巣表面上に腫瘍が無い;陰性の洗液
IC‐以下のいずれかを伴う、卵巣に限局した腫瘍:破裂した被膜、卵巣表面上の腫瘍、陽性の洗液
第II期‐骨盤への進展または移植性転移
IIA‐子宮または卵管上への進展または移植性転移;陰性の洗液
IIB‐他の骨盤構造上への進展または移植性転移;陰性の洗液
IIC‐陽性の腹膜洗液を伴う、骨盤への進展または移植性転移
第III期‐骨盤の外側への顕微鏡的な腹膜への移植性転移;または骨盤に限局しているが小腸もしくは網への進展を伴う
IIIA‐骨盤を超える顕微鏡的な腹膜転移
IIIB‐サイズが2 cm未満の骨盤を超える肉眼的な腹膜転移
IIIC‐>2 cmの骨盤を超える腹膜転移またはリンパ節転移、注:大動脈周囲リンパ節転移は所属リンパ節とみなされる
第IV期‐遠隔転移--肝臓中、または腹腔の外側へ
【0033】
本発明のいくつかの態様に従って、生物学的試料は、ヒト患者(卵巣癌について以前に診断されかつ以前に処置されたか、または、現在卵巣癌について処置を受けている)から取得され、かつ、抗HE4抗体の存在または濃度についてアッセイされる。本発明の方法における使用のための生物学的試料は、生物学的体液を含む。生物学的体液の非限定的な例は、血液、血漿、血清、腹水、尿、唾液、涙、胸水、痰、膣液(分泌物)、および医学的手技中に取得された洗液(例えば、生検、内視鏡検査、または外科手術中に取得された骨盤のまたは他の洗液)を含む。HE4発現腫瘍(卵巣癌または他のHE4発現腫瘍など)に関して対象の臨床状態を評価するために生物学的体液の試料を使用できることは、腫瘍の組織生検試料を取得することと比較した際に、相対的な容易性を提供する。さらに、処置中および/または処置後の患者のモニタリングを可能にし、かつ、重要なことに、卵巣癌(または他のHE4発現腫瘍)の再発および/または進行のより早期の検出を可能にする。
【0034】
本発明の本局面の方法に従って、ヒト患者から取得された生物学的試料において抗HE4抗体の濃度が測定される。任意の免疫検定法;例えば、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)および放射性免疫検定法(RIA)、ウエスタンブロッティング、FACS解析などが、抗HE4抗体の濃度を測定するために使用されてもよい。より好ましくは、アッセイは、定量的結果を生成することができるであろう。生物学的試料は、解析の前に適当な緩衝液において希釈されてもよく、例えば、試料は、少なくとも1:2、1:5、1:10、1:20、1:30、1:40、1:50、1:80、1:100、1:200、またはより大きい係数で希釈されてもよい。
【0035】
一つの態様において、生物学的試料における抗HE4抗体の存在または量は、生物学的試料を、SEQ ID NO:1、またはSEQ ID NO:1の少なくとも20個の連続したヌクレオチド(または少なくとも25もしくは30個、または少なくとも40、60、もしくは80個の連続したヌクレオチド)を含むその断片に少なくとも80%同一(例えば、少なくとも85%同一、または少なくとも90%同一、または少なくとも95%同一、または少なくとも99%同一)である配列に選択的にハイブリダイズするポリヌクレオチドによりコードされるHE4ポリペプチドと接触させることにより、確定される。
【0036】
別の態様において、生物学的試料における抗HE4抗体の存在または量は、生物学的試料を、SEQ ID NO:2として提供されるヒト可溶性HE4関連タンパク質、またはSEQ ID NO:2の少なくとも10個の連続したアミノ酸残基(または少なくとも20個または少なくとも30個、例えば、少なくとも50個の連続したアミノ酸残基)を含むその断片に少なくとも80%同一(例えば、少なくとも85%同一、または少なくとも90%同一、または少なくとも95%同一、または少なくとも99%同一)であるHE4ポリペプチドと接触させることにより、確定される。
【0037】
HE4ポリペプチドの断片は、SEQ ID NO: 2に示されるような完全長HE4アミノ酸配列よりも少ないアミノ酸を含有するアミノ酸配列を有する。いくつかの態様において、断片は、N末端ドメインN-WFDCを含み得る。
図2に示されるように、N-WFDC(SEQ ID NO: 5)は、SEQ ID NO: 2のアミノ酸31からアミノ酸75に及ぶ。いくつかの態様において、断片は、C末端ドメインC-WFDCを含み得る。
図2に示されるように、C-WFDC(SEQ ID NO: 6)は、SEQ ID NO: 2のアミノ酸76からアミノ酸124に及ぶ。HE4の他の例示的な断片は、SEQ ID NO: 2の31〜52位(SEQ ID NO: 7);42〜63位(SEQ ID NO: 8);53〜75位(SEQ ID NO: 9);76〜100位(SEQ ID NO: 10);89〜112位(SEQ ID NO: 11);89〜
102位(SEQ ID NO: 12);または101〜124位(SEQ ID NO: 13)に及ぶアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を有するポリペプチドを含み得る。いくつかの態様において、HE4の断片は、N-WFDCおよびC-WFDCドメインにわたり得る。例示的な断片は、SEQ ID NO: 2の53〜100位
(SEQ ID NO: 14)に及ぶアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を有するポリペプチドを含む。SEQ ID NO:1の少なくとも20個の連続したヌクレオチド(または少なくとも25もしくは30個、または少なくとも40、60、もしくは80個の連続したヌクレオチド)を含む断片は、例えば、SEQ ID NO: 5〜13をコードするSEQ ID NO: 1の断片であり得る。
【0038】
本発明の抗HE4抗体は、HE4ポリペプチド上のエピトープに特異的に結合する。エピトープとは、パラトープ、すなわち抗体の結合部位により特異的に結合される標的上の抗原決定基を指す。エピトープ決定基は、通常、アミノ酸または糖側鎖などの分子の化学的に活性を有する表面配置からなり、かつ典型的に、特異的な三次元構造特性、および特異的な電荷特性を有する。エピトープは、一般に、約4個〜約10個の隣接したアミノ酸を有し(連続エピトープ)、あるいは、特定の構造(例えば、立体配座エピトープ)を規定する不連続のアミノ酸のセットであり得る。従って、エピトープは、少なくとも4個、少なくとも6個、少なくとも8個、少なくとも10個、および少なくとも12個の、そのようなアミノ酸からなり得る。アミノ酸の空間的立体配座を確定する方法は、当技術分野において公知であり、例えば、x線結晶学および2次元核磁気共鳴を含む。
【0039】
抗HE4抗体の結合は、標準的な方法を用いて解析することができる。エピトープをマッピングする方法は、当技術分野において周知であった。エピトープのタイプ、すなわち、直鎖状または立体配座依存的エピトープは、変性および還元されたHE4に対する抗体の反応性を、変性および還元されていないHE4に対する抗体の反応性と比較することにより、確定することができる。ファージ融合タンパク質に対する抗HE4抗体の反応性を、HE4の特異的な断片への結合を同定するために使用することができる。そのような方法は、実施例4、および、全体として参照により本明細書に組み入れられるPCT/US11/25321に記載されている。
【0040】
特異的に結合する抗体は、1)閾値レベルの結合活性を呈する;および/または2)公知の関連ポリペプチド分子と有意に交差反応しない抗体であり得る。抗体の結合親和性は、例えば、スキャッチャード(Scatchard)解析(Scatchard, Ann. NY Acad, Sci.
51:660-672, 1949)によって、当業者により容易に確定され得る。
【0041】
いくつかの態様において、抗HE4抗体は、HE4にいくらかの相同性を有すると予測される他のタンパク質に対してよりも、HE4について、その標的エピトープまたは模倣デコイに対して、少なくとも1.5倍、2倍、5倍、10倍、100倍、10
3倍、10
4倍、10
5倍、10
6倍、またはより強く結合し得る。
【0042】
いくつかの態様において、抗HE4抗体は、10
-4M以下、10
-7M以下、10
-9M以下の高親和性で、または1nM以下(0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3、0.2、0.1 nMもしくはさらにより低い)の親和性で結合する。いくつかの態様において、抗体の結合親和性は、少なくとも1×10
6 Ka、少なくとも5×10
6 Ka、少なくとも1×10
7 Ka、少なくとも2×10
7 Ka、少なくとも1×10
8 Kaであるか、またはより大きい。抗体はまた、HE4に対するそれらの結合親和性の観点で記載されるかまたは特定化されてもよい。いくつかの態様において、結合親和性は、5×10
-2 M、10
-2 M、5×10
-3 M、10
-3 M、5×10
-3M、10
-4 M、5×10
-5 M、10
-5 M、5×10.
-6 M、10
-6 M、5×10
-7 M、10.
-7 M、5×10.
-8 M、10
-8 M、5×10.
-9 M、5×10.
-10 M、10
-10 M、5×10
-11 M、10
-11M、5×10
-12M、10
-12 M、5×10
-13 M、10
-13 M、5×10
-14M、10
-14M、5×10
-15M、もしくは10
-15M以下より低いKdを有するものを含む。
【0043】
一つの態様において、抗HE4抗体の存在または量は、ELISAアッセイの使用を通して、生物学的試料において測定される。標準的な固相ELISAフォーマットは、血清などの、様々な生物学的試料由来のタンパク質または抗体の濃度を確定するのに特に有用である。一つの形態において、そのようなアッセイは、HE4ポリペプチドまたはその断片を、例えば、ポリスチレンもしくはポリカルボナートのマイクロウェルもしくはディップスティック、膜、またはガラス支持体(例えば、スライドガラス)などの固体マトリクス上へ固定化する段階を含む。例えば、ELISAプレートのHE4コーティングされたウェルが利用されてもよい。生物学的試料がHE4コーティングされたウェルと接触され、試料中の抗HE4抗体が結合および捕捉される。結合、および非特異的に結合した免疫複合体を除去するための洗浄の後、抗体抗原複合体を検出する。検出は、標識に連結された二次抗体の添加などの、任意の適当な方法で行ってもよい。
【0044】
本発明の本局面の方法の種々の態様に従って、例えば、実施例2および3に記載されるように、明らかに健常な対象の対照群から、抗HE4抗体参照値が取得されてもよい。いくつかの態様において、抗体参照値は、健常な対象から取得され、少なくとも1:20で希釈された血清を用いて、ELISAアッセイにおいて確定される。一つの態様において、抗体参照値は、HE4発現腫瘍細胞を含む癌と診断され、および/またはそれについて以前に処置された患者から取得された血清を用いて、確定される。血液試料における抗HE4抗体レベルを検出するための例示的なELISAアッセイが、実施例2に記載される。
【0045】
本発明の予後判定適用に従って、一つの態様において、卵巣癌患者から取得された生物学的試料における抗HE4抗体のレベルを、次に、抗体参照値と比較する。試験した患者における抗体濃度が、参照値より高く、例えば、少なくとも1.5倍、より好ましくは少なくとも2倍またはより高く、0.05未満のP値を伴い、かつ、患者が以前に卵巣癌について処置を受けたことがある場合、その時患者は、卵巣癌の再発の可能性が減少している。卵巣癌患者における抗体濃度が、参照値より低く、例えば、少なくとも1.5倍または2倍またはより低く、0.05未満のP値を伴い、かつ、患者が以前に卵巣癌について処置を受けたことがある場合、その時患者は、卵巣癌の再発の可能性が増加している。別の態様において、抗HE4抗体の存在は、陰性抗体対照試料に対する比較、および任意でまた陽性抗体対照試料に対する比較により確定される。
【0046】
別の局面において、本発明は、HE4発現腫瘍を患っているヒト癌患者の予後を評価する方法を提供する。方法は、(a)HE4発現腫瘍を患っているヒト患者由来の生物学的試料における抗HE4抗体の存在または量を、生物学的試料を、SEQ ID NO:1の少なくとも20個の隣接したヌクレオチドを含む配列に少なくとも80%同一、例えば少なくとも90%同一である配列に選択的にハイブリダイズするポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドと接触させることにより、確定する段階;(b)段階(a)において試験したヒト患者由来の生物学的試料において、SEQ ID NO:1の少なくとも20個の隣接したヌクレオチドを含む配列に少なくとも80%、例えば少なくとも90%同一である配列に選択的にハイブリダイズするポリヌクレオチドによりコードされる可溶性HE4関連ペプチド(SHRP)の存在または量を確定する段階;ならびに(c)段階(a)において確定された抗HE4抗体の量を抗体参照レベルと比較する段階、および段階(b)において確定されたSHRPの量を抗原参照レベルと比較する段階、を含み、抗原参照レベルより低い量の試料におけるSHRPの検出が、抗体参照レベルより高い量の試料における抗HE4抗体の検出との組み合わせで、患者の良好な予後を示す。
【0047】
本発明の本局面に従って、方法は、卵巣癌患者などの、HE4発現腫瘍を患っている患者から取得された生物学的試料におけるSHRPの存在および/または量を確定する段階を含む。上述のように、SHRPは、健常者および癌患者の両方の循環において見出されている可溶性タンパク質である。SHRPの存在または量は、SHRPポリペプチドの量を検出および/または測定することができる任意のアッセイを用いて確定されてもよい。
【0048】
一つの態様において、SEQ ID NO:1、またはSEQ ID NO:1の少なくとも20個の連続したヌクレオチド(または少なくとも25もしくは30個、または少なくとも40、60、もしくは80個の連続したヌクレオチド)を含むその断片に少なくとも80%同一(例えば、少なくとも85%同一、または少なくとも90%同一、または少なくとも95%同一、または少なくとも99%同一)である配列に選択的にハイブリダイズするポリヌクレオチドによりコードされるSHRPポリペプチドの濃度が、生物学的試料において測定される。
【0049】
別の態様において、SEQ ID NO:2として提供されるヒト可溶性HE4関連タンパク質、またはSEQ ID NO:2の少なくとも10個の連続したアミノ酸残基(または少なくとも20個または少なくとも30個、例えば、少なくとも50個の連続したアミノ酸残基)を含むその断片に少なくとも80%同一(例えば、少なくとも85%同一、または少なくとも90%同一、または少なくとも95%同一、または少なくとも99%同一)であるSHRPポリペプチドの量が、生物学的試料において測定される。
【0050】
生物学的体液試料中に存在する可溶性HE4関連タンパク質(SHRP)の濃度および/もしくは相対量、または検出は、SHRPに特異的に結合する抗体を含む、ELISA、放射性免疫検定法、化学発光検定法、免疫蛍光染色などを含むがそれらに限定されない、SHRPを測定するための任意の好都合な方法を用いて確定されてもよい。質量分析法、ウェスタンブロット、FACSなどを含む他のタンパク質検出法もまた、SHRPを測定するために使用されてもよい。適当な生物学的試料は、血液、血漿、血清、腹水、および尿からなる群より選択される生物学的体液を含む。
【0051】
SHRPに対するモノクローナル抗体を含む特異的な抗体およびその変異体は、従来の技術を用いて容易に調製することができ、かつそのような方法において使用してもよい。例えば、Hellstrom, I., et al., Cancer Research 63:3695-3700 (2003)に記載されるような、2H5および3D8の2種のMAb(同一抗原上の2種の異なるエピトープを認識する)を用いる二重決定基(「サンドイッチ」)ELISAアッセイを、血清中のSHRPを検出するために使用してもよい。上述の抗体、またはHE4に対する他の抗体を用いて、HE4の1種または複数の変異体を検出するために、他のELISAアッセイを使用してもよい。
【0052】
本発明の本局面の方法の種々の態様に従って、例えば、実施例3に記載されるように、明らかに健常な対象の対照群から、SHRP抗原参照値が取得されてもよい。いくつかの態様において、抗原参照値は、健常な対象から取得された血清を用いて、ELISAアッセイにおいて確定される。例えば、血清試料において、血清を1:100まで希釈し、かつELISAアッセイにおいて測定してもよく、健常な対象から取得された陰性対照は<0.2の吸光度値を与え、かつ卵巣癌患者から取得された陽性対照は>0.2の吸光度値を与える。Hellstrom, I., et al., Cancer Research 63:3695-3700 (2003)を参照されたい。吸光度値は、当技術分野において公知である任意の方法により確定されてもよい。例えば、しばしば光学密度(OD)と呼ばれる450ナノメートルでの光の吸収度が、一般的に使用される。一つの態様において、抗原参照値は、HE4発現腫瘍細胞を含む癌と診断され、および/またはそれについて以前に処置された患者から取得された血清を用いて、確定される。
【0053】
いくつかの態様において、本発明の方法は、対象から取得された生物学的試料において、インテグリン結合キナーゼ(INK)、CA125、TADG-12、カリクレイン10、プロスタシン(prostasin)、オステオポンチン、クレアチンキナーゼβ、セロトランスフェリン、好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン(NGAL)、CD163、またはGc-グロブリンなどの別の卵巣癌マーカーのレベルを確定する段階を、さらに含む。第2のマーカーは、当技術分野において公知である従来の方法を用いて、DNA、RNA、またはタンパク質レベルで検出されてもよい。
【0054】
別の局面において、本発明は、HE4発現腫瘍と診断されたヒト患者の処置の有効性をモニタリングする方法を提供する。方法は、(a)癌についての処置の開始前に、HE4発現腫瘍と診断されたヒト患者から採取された第1の生物学的試料におけるHE4-メソテリン(mesothelin)抗体の第1の濃度を確定する段階;(b)癌についての処置の開始後に採取された、ヒト患者由来の第2の生物学的試料における抗HE4抗体の第2の濃度を確定する段階;ならびに(c)抗HE4抗体の第1および第2の濃度を比較する段階、を含み、第1の生物学試料において確定された抗HE4抗体の第1の濃度と比較した際の抗HE4抗体の第2の濃度の増大が、癌についての処置に対する正の応答を示す。
【0055】
本発明の本局面の方法に従って、第1の生物学的試料は、処置の開始前に癌患者から採取され、かつ第2の生物学的試料は、処置の開始後に少なくとも1回、患者から採取される。いくつかの態様において、対象(例えば、前臨床試験における対象)由来の複数の処置された生物学的試料が、処置の開始後に周期的な時間の間隔にわたって採取される。
【0056】
本明細書において使用される際、「処置」という用語は、外科的介入、または、癌と関連する症候の軽減、または症候のさらなる進行もしくは悪化の停止のための1種または複数の癌阻害剤の投与を指す。例えば、処置の成功は、腫瘍の増殖速度の低下;腫瘍の増殖の停止;腫瘍のサイズの低下;癌の部分寛解もしくは完全寛解;または、生存もしくは臨床的有益性の増加により測定されるような、HE4発現腫瘍などの腫瘍の除去;症候の軽減または疾患の進行の停止を含み得る。例えば、HE4発現腫瘍を患っている対象の処置は、1種または複数の以下を含んでもよい:1つまたは複数の腫瘍を除去するための外科手術、および/または、化学療法、放射線療法、タンパク質治療法(例えば、抗体、遺伝子治療、癌ワクチン療法、幹細胞移植、または他の療法)などの治療剤の投与。
【0057】
例えば、卵巣癌についての処置に関して、外科手術は好ましい処置である。外科手術のタイプは、診断された時に癌がどれほど広がっているか(癌の病期)、ならびに癌のタイプおよび悪性度に依存する。外科医は、1個の卵巣(片側卵巣摘出術)または両方の卵巣(両側卵巣摘出術)、卵管(卵管切除術)、および子宮(子宮摘出術)を除去し得る。いくつかの非常に初期の腫瘍(第1期、低悪性度のまたは低リスクの疾患)について、特に妊性を保つことを希望する若い女性においては、関与している卵巣および卵管のみが除去されるであろう(「片側卵管卵巣摘出術」または「USO」と呼ばれる)。疾患の進行期においては、できるだけ多くの腫瘍が除去される(減量手術)。このタイプの外科手術が成功した症例においては、大きな腫瘍量(直径が1 cmより大きい)が取り残された患者と比較して予後が改善される。化学療法は、典型的に、任意の残存疾患を処置するために外科手術後に使用される。白金誘導体(例えば、タキサン)などの化学療法剤が、全身に投与されてもよく、または、腹腔中への直接注入を介して腹腔内に投与されてもよい。卵巣癌の処置における使用のための治療剤の他の例は、タンパク質治療法(例えば、抗体)、遺伝子治療、癌ワクチン療法、および幹細胞移植を含むが、それらに限定されない。本発明の本局面の方法はまた、卵巣癌の処置について候補治療剤の有効性を測定するために使用されてもよい。
【0058】
本発明の本局面の方法はまた、腫瘍を除去するための外科手術などの処置を受けた後の患者の臨床状態を確定するために使用されてもよい。本態様に従って、HE4発現腫瘍について処置されたことがある癌患者から取得された生物学的試料における抗HE4抗体のレベルを、次に、抗体参照値と比較する。試験した患者における抗体濃度が、参照値より高く、例えば、少なくとも1.5倍、より好ましくは少なくとも2倍またはより高く、0.05未満のP値を伴う場合、その時患者の臨床状態は、処置で改善されていると期待される(すなわち、患者は、卵巣癌の再発の可能性が減少している)。処置された癌患者における抗体濃度が、参照値より低く、例えば、少なくとも1.5倍または2倍またはより低く、0.05未満のP値を伴う場合、その時患者の臨床状態は、処置で改善されているとは期待されない(すなわち、患者は、卵巣癌の再発の可能性が増加している)。
【0059】
別の局面において、ヒト対象におけるHE4発現細胞の存在を検出するためのキットが提供される。キットは、ヒト対象から取得された生物学的試料における抗HE4抗体の検出に特異的な試薬、および、抗HE4抗体の検出された存在または量の参照標準との比較のための印刷された指示書を含む。本明細書にお記載される抗HE4抗体の検出のための方法は、本発明のキットを用いて行われてもよい。一つの態様において、キットは、SEQ ID NO:1の少なくとも20個の隣接したヌクレオチドを含む配列に少なくとも80%同一、または少なくとも90%同一、または少なくとも95%同一、または少なくとも98%同一、または少なくとも99%同一である配列に選択的にハイブリダイズするポリヌクレオチドによりコードされるHE4ポリペプチドを含む抗HE4抗体を検出するための検出試薬を含む。いくつかの態様において、キットは、SEQ ID NO:2の少なくとも10個の隣接したアミノ酸を含むアミノ酸配列に少なくとも80%同一、または少なくとも90%同一、または少なくとも95%同一、または少なくとも98%同一、または少なくとも99%同一であるHE4ポリペプチドを含む抗HE4抗体を検出するための検出試薬を含む。いくつかの態様において、キットは、例えば、ポリスチレンもしくはポリカルボナートのマイクロウェルもしくはディップスティック、膜、またはガラス支持体(例えば、スライドガラス)などの固体マトリクス上へ固定化されているHE4ポリペプチド、またはその断片を含む。例えば、ELISAプレートのHE4コーティングされたウェルが利用されてもよく、生物学的試料がHE4コーティングされたウェルと接触され、試料中の抗HE4抗体が結合および捕捉される。
【0060】
いくつかの態様において、キットは、特異的な数値的閾値、同時評価のための陰性対照試料、または、検出された抗HE4抗体の量を対象におけるHE4発現癌細胞の存在の可能性と相関させる統計的情報からなる群より選択される参照標準を、さらに含む。いくつかの態様において、参照標準は陰性対照試料であり、かつここにおいて陰性対照試料はキットに含まれる。
【0061】
好ましい態様において、本発明の方法およびキットは、試験結果を迅速に得るために、診療所(例えば、医院)または病院などの、ポイント・オブ・ケアの場所で使用することができる。ポイント・オブ・ケア検査(POCT)は、中央検査室の外で任意のタイプの臨床検査を行う、任意の病院または診療所(医院)の従業員にあてはまる。POCTは、HIV検査、尿ディップスティックなどのような種々の試験について患者の枕もとで効率的に検査結果を提供することにより、患者の看護過程の連続に革命をもたらしている。例えば、高性能の実験設備および高度に訓練された技術者を必要とせずに、酵素免疫測定法のものに匹敵する感度および特異性を実証する、HIV抗体を検出するための迅速試験が開発されている。POCTは、加工処理されていない全血または口腔液検体で使用することができる。Branson, B.M., J. Lab. Medicine 27(7/8):288-295 (2003)を参照されたい。POCTアッセイは、粒子凝集、免疫濃縮(immunoconcentration)、および免疫クロマトグラフィーなどの、迅速検査を可能にする任意のアッセイフォーマットであってもよい。
【0062】
例えば、抗HE4抗体を検出するための粒子凝集POCTアッセイは、抗HE4抗体を含有する患者検体を、HE4ポリペプチド(抗原)でコーティングされたラテックス粒子と混合することにより行われてもよく、抗HE4抗体が存在する場合、10〜60分以内に架橋が起こり、視覚的に解釈される結果を伴う凝集をもたらす。
【0063】
抗HE4抗体を検出するためのPOCTアッセイフォーマットの別の例において、多孔性膜上のHE4ポリペプチド(抗原)の固定化を含む固相捕捉技術を利用する、免疫濃縮装置(フロースルー)が使用されてもよい。患者検体は、膜を通り抜け、吸収性パッド中へ吸収される。抗HE4抗体が検体中に存在する場合、シグナル試薬(例えば、コロイド状金またはセレン結合体)で顕色した時に膜上に点または線が可視的に形成する。手順対照がまた、膜上に含まれてもよい。
【0064】
抗HE4抗体を検出するPOCTアッセイフォーマットのさらに別の例において、ニトロセルロースストリップ中に抗原(HE4)およびシグナル試薬の両方を組み込む免疫クロマトグラフィー(側方流動)ストリップが使用されてもよい。患者検体が吸収性パッドに適用されるか、または、試験装置が挿入される緩衝液のバイアルにおいて検体が希釈され得る。検体は、ストリップを通って移動し、シグナル試薬と混ざる。陽性反応は、HE4抗原が適用されている膜上に可視的な線をもたらす。手順対照の線が、HE4抗原の線に加えてストリップに適用されてもよい。
【0065】
以下の実施例は、単に本発明を実践するために現在企図されている最良の形態を例証するに過ぎないが、本発明を限定するように解釈されるべきではない。
【実施例】
【0066】
実施例1
本実施例は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞における組み換えヒト精巣上体タンパク質4(HE4)タンパク質の産生および精製を記載する。
【0067】
方法:
HE4-CIHDpaプラスミドの構築
組み換えHE4タンパク質(SEQ ID NO:2)を、以下のように作製した。
【0068】
ヒト精巣上体タンパク質4(HE4)(SEQ ID NO:2)をコードするcDNA断片を、以下のプライマーを用いて、忠実度の高いポリメラーゼ連鎖反応により増幅した:
フォワードセンスプライマー:
を設計し、クローニングのために適切な遺伝子の5'端にAge I制限酵素認識部位を導入した。
リバースアンチセンスプライマー:
を設計し、クローニングのために適切な遺伝子の3'端にSbf I制限酵素認識部位を導入した。
【0069】
HE4 cDNAを含有する増幅されたDNA断片を、Age IおよびSbf Iで消化し、CIHDpa哺乳動物発現ベクター中に(IFN-γをHE4断片で置換することにより)クローニングした。National University of SingaporeのSay Kong Ng博士により提供されたCIHDpaベクターは、参照により本明細書に組み入れられるNg et al., Metab Eng 9:304 (2007)に記載されるように、CHO-DB44細胞における改善された組み換えタンパク質生産性のために、選択マーカー上の不安定化配列を利用する。簡潔に記載すると、CIHDpa発現ベクターは、cDNA挿入部位の上流に標準的なサイトメガロウイルス(CMV)プロモーターを含有する。単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(HSV-th)プロモーターが、ジヒドロ葉酸還元酵素(dhfr)遺伝子の上流に位置し、該遺伝子は、成功したトランスフェクタントのための選択マーカーとして働く(すなわち、dhfrが欠損した細胞は、生存するためにヒポキサンチンおよびチミジン補給物を必要とする)。dhfrマーカーのすぐ下流は、マウスオルニチン脱炭酸酵素PEST(MODC PEST)領域、および一連のAUに富んだ要素(ARE)であり、それらは、dhfrタンパク質のカルボキシ末端に融合成分として発現される。MODC PESTペプチドは、マーカータンパク質の不安定性をもたらす分解シグナルとして働く。ARE領域は、マーカータンパク質をコードするmRNAを不安定化するために働く。転写および翻訳レベルで不安定化されたdhfrマーカーでもって、プラスミドにコードされたタンパク質の高効率の産生を有するトランスフェクションされた細胞のみが生存すると考えられ、従って、選択後に組み換えHE4タンパク質の改善された生産性をもたらす。
【0070】
「HE4-CIHDpa」と呼ばれる、結果として生じたHE4を含有する発現ベクターを、制限酵素解析により確認し、挿入されたHE4 cDNAもまた、完全なcDNA挿入物を配列決定することにより確認した。
【0071】
チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞中へのHE4-CIHDpaプラスミドのトランスフェクション
ジヒドロ葉酸還元酵素を欠損した(DHFR-)チャイニーズハムスター卵巣(CHO-DG44)細胞を、37℃で、無血清CHO培地(Hyclone, Logan, Utah; SH30333)、5%CO
2において増殖させた。50万個または100万個のCHO-DG44細胞を、ウェル当たり500μlの無血清培地を有する24ウェルプレートの各ウェルに播種し、上述の条件で一晩インキュベーションした。1μgまたは5μgの、エンドトキシンを含まないHE4-CIHDpaプラスミドを、100μl Opti-MEM無血清培地において2μl Lipofectamine(商標)2000(Invitrogen)と混合した。20分間インキュベーションした後、DNA-Lipofectamine(商標)複合体を、CHO-DG44細胞を含有する各ウェル中に添加した。細胞を次に、ヒポキサンチンおよびチミジン(「HT」)を補給したHyQ PF-CHO培地中に移し、トランスフェクタントを選択するためにHT補給物を含まないHyQ PF-CHO培地に移す前に、2日間回復させた。選択培地において28日後、1μgプラスミドをトランスフェクションした100万個の細胞は増殖し、>95%の細胞生存率で回復した。
【0072】
トランスフェクションしたCHO細胞によるHE4タンパク質の産生および精製
HE4-CIHDpaプラスミドをトランスフェクションしたCHO細胞由来の培養上清におけるHE4タンパク質の産生を、参照により本明細書に組み入れられるHellstrom I., et al., Cancer Research 63:3695-3700 (2003)に記載されるように、二重決定基(サンドイッチ)ELISAアッセイに基づき、Fujirebio Diagnostics, Inc.により販売されている市販のキットを用いて評価した。
【0073】
Hellstrom et al. (2003)に記載されるように、モノクローナル抗体3D8(HE4上の1個のエピトープに特異的である)を、アッセイプレートのウェル上に一晩コーティングし、その後、HE4-CIHDpaプラスミドをトランスフェクションしたCHO培養由来の上清100μlをセルに添加して、1時間インキュベーションした。アッセイプレートを次に、ビオチン化された二次抗HE4モノクローナル抗体2H5(異なるHE4エピトープに特異的である)と1時間インキュベーションした。
【0074】
ペルオキシダーゼについての色素産生性基質であるTMB(3,3',5,5'-テトラメチルベンジジン)(KPL, Gaithersburg, MD)を添加して、15分間インキュベーションさせた。光学密度(OD)読み取りを450 nmで行った。培地のみについての0.078と比較して、CHO上清由来のOD450は3.1であり、HE4タンパク質がCHO細胞により高発現され、かつ培養培地中に分泌されることを示した。
【0075】
親和性クロマトグラフィーによるHE4組み換えタンパク質の精製
組み換えHE4タンパク質を、以下のように親和性クロマトグラフィーにより、HE4-CIHDpaプラスミドをトランスフェクションしたCHO細胞の高産生株から精製した。
【0076】
抗HE4モノクローナル抗体3D8および2H5を、6-アミノヘキサン酸N-ヒドロキシスクシンイミドエステルで活性化されたSepharose 4B(Sigma, St. Louis, Missouri; #A9019)に結合させた。簡潔に記載すると、0.5 gの粉末を、1 mM HCl中で15分間、膨張させた。ビーズの水気を切り、1 mlの0.5 M NaCl/0.1 M NaHCO
3 (pH 8.3)溶液中の3 mg抗HE4モノクローナル抗体に再懸濁した。カラムを、4℃で一晩保管した。次の日、樹脂を、1 Mトリス-HClで2時間ブロックした。樹脂をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄することにより、結合していない抗HE4モノクローナル抗体を除去した。HE4-CIHDpaプラスミドをトランスフェクションしたCHO細胞の大規模培養由来の上清を収集し、pHをNaHCO
3でpH 8.0に調整した。調整した細胞上清をカラムにアプライし、結合したHE4タンパク質を0.1 Mグリシン-HCl (pH 2.7)で溶出して、200μl 2Mトリス-HClで中和した。溶出したHE4タンパク質を、10 kD遠心濾過チューブ(Millipore, Billerica, MA)で濃縮した。カラム精製したHE4組み換えタンパク質を、上述のように行ったサンドイッチELISAによりアッセイした。ELISAアッセイの結果を、下記の表1に示す。
【0077】
(表1)サンドイッチELISAにより確定されたHE4タンパク質の存在
【0078】
CHO細胞から得られるカラム精製したヒト組み換えHE4タンパク質を、上述のように取得し、実施例2に記載されるような、患者試料における抗HE4抗体を検出するELISAアッセイの開発における使用のためにプールした。組み換えヒトHE4タンパク質をまた、マウス抗HE4抗体に対する結合についてのELISAアッセイにおいても試験し、マウス抗HE4抗体が、天然および組み換えヒトHE4タンパク質の両方を認識することが確定された(データは示されていない)。
【0079】
結論:
これらの結果は、CHO細胞由来の組み換えヒトHE4タンパク質のクローニング、発現、および精製の成功を実証する。
【0080】
実施例2
本実施例は、ヒト血清中に天然に存在するヒト抗HE4抗体を検出することができるELISAアッセイの開発の成功を記載する。
【0081】
方法:
抗HE4抗体を検出するためのELISAアッセイの開発:
血清中の抗HE4抗体の量を検出/測定するためのELISAアッセイを、以下のように開発した。0.6μg/mLの精製した組み換えヒトHE4タンパク質(実施例1に記載されるように産生された)を、ELISAアッセイプレートのウェル上に一晩コーティングした。バックグラウンドのための対照として、対応するウェルをコーティングしないままにした。3%BSA/PBSで2時間ブロッキングした後、1:20および1:40の希釈のヒト血清または血漿(下記に記載されるように取得された)を、ELISAアッセイプレート上のウェルのすべてに添加した。試料および試薬両方のすべての希釈は、3%BSA/PBSにおいて行った。
【0082】
HRP結合マウス抗ヒトIgG抗体およびTMB基質とインキュベーションした後、アッセイプレートを、Dynatech MR 5000プレートリーダーを用いて450 nmでスキャンした。バックグラウンド対照(ELISAアッセイプレートの対照ウェルに非特異的に粘着するIgGの固有の性質による粘着性)を、平行対照ウェル(抗原が付着していない)におけるOD450として測定し、バックグラウンド対照値を、最終的なIgGレベルを与えるコーティングされたウェルにおける読み取り値から差し引いた。
【0083】
卵巣癌患者から取得された血漿試料
天然に存在する抗HE4抗体の存在について試験するために、大部分が進行した(第III〜IV期)疾患を有する10人の卵巣癌患者、および1人の健常な女性対象から血漿試料を取得し、抗HE4 ELISAアッセイにおいて試験する予備的研究を行った。ヒト血漿試料を、1:20および1:40希釈でELISAプレートの各ウェルに添加し、室温で1時間インキュベーションした。ウェルをPBS-Tween 20で洗浄し、次に、1:1000希釈したHRP結合マウス抗ヒトIgG抗体(Invitrogen, Carlsbad, California)を各ウェルに添加して、1時間室温でインキュベーションした。プレートを再びPBS-Tween 20で洗浄した後、SureBlue(商標)TMB Microwell Peroxidase Substrate(KPL)を各ウェルに添加して、15分間室温でインキュベーションし、その後、TMB停止液(KPL)を添加することにより相互作用を終結させた。450ナノメートルでの光学密度(OD)を、DynaTech MR 5000プレートリーダー(DynaTech Laboratories, Inc.)を用いて測定した。
【0084】
結果:
ヒト血清試料由来の抗HE4抗体の存在/量を試験するELISAアッセイの結果を、
図1に呈する。
図1に示されるように、卵巣癌を有する10人の患者のうちの1人(対象He213)は、両方の希釈についてOD450≧1.0を有し、従って、抗HE4抗体の存在を示す。患者He213由来の血漿は(抗HE4抗体について陽性であった血漿と共に)、参照により本明細書に組み入れられる米国特許第7,270,960号に記載されるようなHE4抗原の存在を検出するアッセイを用いたHE4抗原の存在について、陰性であることが見出された(データは示されていない)。しかしながら、患者He213の腫瘍に由来する培養腫瘍細胞は、HE4抗原を発現することが示された(データは示されていない)。
【0085】
結論:
本実施例に記載される結果は、ヒト血清中に天然に存在するヒト抗HE4抗体を検出することができるELISAアッセイの開発の成功を実証する。結果はまた、卵巣癌を有する対象における抗HE4抗体の存在も実証する。メソテリアン(mesothelian)に対する抗体についての本発明者らの以前の研究に基づいて(Hellstrom I. et al., Cancer Epidemiol Biomarkers Prev. 17(6):1520-1526 (2008)を参照されたい)、処置(外科手術、化学療法、放射線、および/または免疫療法を介した)を受けているか、または受けたことがある卵巣癌患者において同定されるHE4に対する抗体の存在、またはその力価の増加は、単独で、または、HE4抗原の減少した量(処置の開始時のベースライン量と比較した際)もしくは循環していないHE4抗原の知見との組み合わせで、癌療法が腫瘍に損傷を与えるのに有効であると示すであろうことが期待される。処置を受けている卵巣癌患者におけるHE4に対する抗HE4抗体の力価の減少、または検出できない抗HE4抗体は、単独で、または、循環するHE4抗原の増加した量(処置の開始時のベースライン量と比較した際)との組み合わせで、癌療法が腫瘍に損傷を与えるのに無効であると示し、および/または再発を示すであろうことがさらに期待される。
【0086】
実施例3
本実施例は、HE4に対する抗体の存在/量を検出するために開発されたELISAアッセイ(実施例2に記載される)を使用して、3人の卵巣癌を有する患者、および20人の健常な対照となる女性対象由来の血清中に存在する抗HE4抗体の量を決定した研究を記載する。
【0087】
方法:
卵巣癌患者から取得された血清試料
下記の表2に示されるように、3人の初期(I/II)の卵巣癌を有する患者、および20人の健常なヒト女性対象(そのうち4人を下記の表2に示す)由来の血清試料を、Fred Hutchinson Cancer Research Center(Seattle, Washington)で取得した。血清を対象から抜き取り、実施例2に記載されるような方法を用いてアッセイした。
【0088】
結果:
上述のように取得された血清を、実施例2に記載されるELISA法を用いて、1:20および1:40希釈でアッセイした。結果を、下記の表2に要約する。
【0089】
(表2)HE4抗体を検出/測定するためのELISAアッセイを用いた、3人の卵巣癌患者および4人の健常対照由来の血清のHE4抗体解析の結果
【0090】
表2に要約されるように、卵巣癌を有する患者由来の3種の血清試料のすべて、および健常な女性対象由来の24種の血清試料のうち3種は、1:20希釈についてOD450≧0.5を有した。表2に示されるように、3人の卵巣癌を有する患者のすべては、1:20希釈でのOD450≧0.5により示されるように血清中に抗HE4抗体を有した。これらの結果は、実施例2に記載される結果と一致し、ヒト血清中に天然に存在するヒト抗HE4抗体を検出することができるELISAアッセイの開発の成功をさらに実証する。結果はまた、初期および後期両方の卵巣癌を有する対象における抗HE4抗体の存在も実証する。
【0091】
実施例4
ファージ融合タンパク質として提示されるHE4断片との反応性
ヒト抗HE4抗体のエピトープ特異性を、ファージELISAにおいて、ファージコートタンパク質pVIIIとの融合タンパク質として発現されたHE4断片に対して抗HE4反応性を提示するヒト試料の反応性を試験することにより、確定した。
【0092】
f88-4におけるHE4断片のクローニング
OvCar-3細胞から単離したmRNAより調製したcDNAが、ファージ提示ベクターf88-4におけるクローニングのための、HE4ドメインをコードする遺伝子部分のPCR増幅用の鋳型として働いた。表3に列挙されるPCRプライマーペアを、
図xに示されるコード領域の増幅のために構築した。5'端に、pVIIIシグナルペプチドおよびpVIII成熟コートタンパク質との融合におけるクローニングのために、HindIIIおよびPstIの制限部位を挿入した。
【0093】
(表3)HE4断片の増幅のために使用したPCRプライマー
(上から順に、それぞれSEQ ID NO: 15〜26)
【0094】
HE4断片を、25μlの最終容積中に1μMの各フォワードおよびリバースプライマー、75 mMトリス-HCl(25℃でpH 8.8)、20 mM (NH
4)
2SO
4、0.1%(v/v)Tween 20、2 mM MgCl
2、0.02 u/μl Taqポリメラーゼ(Abgene, Surrey, UK)、ならびに0.1 mMの各デオキシヌクレオチドを含有する反応混合物において、0,5μlのcDNAから、95℃、50℃、および72℃での30秒のインキュベーションを30回繰り返す温度サイクルで、別々に増幅した。
【0095】
HindIIIおよびPstIで消化したPCR産物およびf88-4を、共にライゲーションして、大腸菌(E. coli)JM109中にトランスフェクションし、その後テトラサイクリンを含むLBプレート上でクローンを選択した。各構築物の2個のクローンを、大腸菌JM109において増幅し、DNA配列決定のために二本鎖DNAを調製した。DNA配列決定は、Big dye terminator v1.1 cycle sequencing kitおよびf88-4ベクター特異的プライマーを用いて行った。配列決定反応物を、解析のためにCyberGene AB(Huddinge, Sweden)に送付した。配列生データを、フリーのソフトウェアであるChromas version 1.45(Technelysium Pty Ltd., Australia)を用いて解析した。ヌクレオチド配列決定により、リーダーペプチドおよび成熟ファージコートタンパク質pVIIIを伴うインフレームの挿入を検証した。HE4挿入物は、期待されたHE4断片配列(アクセッション番号AY212888)との同一性を実証した。表1に示されるプライマーを用いてコートタンパク質pVIIIとの融合タンパク質として発現されたHE4断片の位置を、
図2に示す。アミノ酸の数字は、SEQ ID NO: 2に示されるHE4アミノ酸配列における位置を指す。
【0096】
ファージELISA
配列を検証したファージクローンを、増幅し、精製し、PEG/NaClで濃縮して、直接ファージELISAアッセイにおけるコーティング抗原としての使用のためにPBSにおいて、あるいは、サンドイッチファージELISAにおける抗原としてPBS中1%BSAにおいて希釈した。
【0097】
直接ファージELISAにおいては、HE4断片ファージを、炭酸緩衝液pH 9.2において希釈し、マイクロタイターウェルにコーティングした。PBS-1%BSAにおける患者血清の希釈、およびHE4ファージコーティングされたプレートにおけるインキュベーションの後、ヒト抗HE4抗体の結合を確定した。結合したhIgは、HRP抗hIg抗体とのインキュベーションにより確定した。
【0098】
サンドイッチHE4ファージELISAにおいては、患者試料を、PBS-1%BSAで希釈し、hIgGの吸着のために抗ヒトIgGでコーティングされたマイクロプレートにおいてインキュベーションした。コーティングされたプレートを、100μl/ウェルの容積において様々なHE4 pVIIIファージ粒子とインキュベーションした。2時間のインキュベーション後、ウェルを洗浄し、ウサギ抗M13抗体(構内で確立された)を添加した。インキュベーションおよび洗浄の後、HRP標識されたブタ抗ウサギ抗体(Dako)を添加した。最終的な洗浄の後、TMB基質を添加し、5分のインキュベーション後に620 nmでプレートを測定した。野生型M-13ファージを、両方のELISAアッセイにおいて陰性対照として使用した。
【0099】
本発明の好ましい態様が例証および記載されてきたが、本発明の精神および範囲から逸脱すること無く種々の変化がその中で作製され得ることが、認識されるであろう。
【0100】
配列表