(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6097730
(24)【登録日】2017年2月24日
(45)【発行日】2017年3月15日
(54)【発明の名称】光学レンズ
(51)【国際特許分類】
G02B 1/11 20150101AFI20170306BHJP
G02B 5/00 20060101ALI20170306BHJP
G02B 3/00 20060101ALI20170306BHJP
【FI】
G02B1/11
G02B5/00 B
G02B3/00 Z
【請求項の数】6
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2014-172615(P2014-172615)
(22)【出願日】2014年8月27日
(65)【公開番号】特開2015-106151(P2015-106151A)
(43)【公開日】2015年6月8日
【審査請求日】2014年8月27日
(31)【優先権主張番号】201310624519.2
(32)【優先日】2013年11月28日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】511027518
【氏名又は名称】エーエーシーアコースティックテクノロジーズ(シンセン)カンパニーリミテッド
【氏名又は名称原語表記】AAC Acoustic Technologies(Shenzhen)Co.,Ltd
(74)【代理人】
【識別番号】100120662
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 桂子
(74)【代理人】
【識別番号】100112715
【弁理士】
【氏名又は名称】松山 隆夫
(74)【代理人】
【識別番号】100104444
【弁理士】
【氏名又は名称】上羽 秀敏
(74)【代理人】
【識別番号】100125704
【弁理士】
【氏名又は名称】坂根 剛
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン・ホルメ
(72)【発明者】
【氏名】イェスパー・オファースゴー
【審査官】
池田 博一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2001−350003(JP,A)
【文献】
特開2006−201697(JP,A)
【文献】
特表2007−528021(JP,A)
【文献】
特開2015−99345(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 1/11
G02B 3/00
G02B 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面及び上面に対向する下面を有する光学基板と、
前記光学基板の上面を一部覆う黒色めっき層と、
前記黒色めっき層の上面を少なくとも一部覆う反射防止膜と、
を備え、
前記光学基板の上面の黒色めっき層が覆われていない表面に反射防止膜が設けられており、
前記光学基板の絶対屈折率が反射防止膜の絶対屈折率と等しいことを特徴とする光学レンズ。
【請求項2】
前記光学基板の下面に反射防止膜が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の光学レンズ。
【請求項3】
前記光学基板と黒色めっき層との間に1層のUV硬化型接着剤が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の光学レンズ。
【請求項4】
前記黒色めっき層と反射防止膜との間に1層のUV硬化型接着剤が設けられていることを特徴とする請求項1又は請求項3に記載の光学レンズ。
【請求項5】
前記光学基板と反射防止膜との間に1層のUV硬化型接着剤が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の光学レンズ。
【請求項6】
前記光学基板と黒色めっき層との間、黒色めっき層と反射防止膜との間、及び光学基板と反射防止膜との間のいずれにも1層のUV硬化型接着剤が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の光学レンズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズ、特に、カメラにおける光学レンズに関する発明である。
【背景技術】
【0002】
レンズはデジタルカメラ等の類似設備内の重要なモジュールであり、レンズはイメージング性能の優劣を決定するため、レンズ性能はカメラ等の設備を設計する時に考慮すべき重要な要素である。同時に、近年、レンズと携帯電話等の携帯型電子装置との組み合わせに伴い、レンズに対する要求は高くなっている。
【0003】
レンズは、通常、光学収差を補正するために、複数枚のレンズによって構成されている。また、レンズは、通常、いずれも光学基板及び光学基板の表面に覆われる黒色めっき層を備え、光線が黒色めっき層に達した際に、大部分の光線が黒色めっき層に吸収される。しかし、黒色めっき層の表面のフレネル反射の発生によって、一部の光線は黒色めっき層内に入られず、黒色めっき層の表面によって反射され、吸収されることができない。空気の絶対屈折率に比べ、黒色めっき層の絶対屈折率が光学基板の絶対屈折率により近いため、光線が外部の空気から黒色めっき層に伝達されても、内部の光学基板から黒色めっき層に伝達されても、黒色めっき層の表面にはフレネル反射が発生される。このようなフレネル反射による光汚染は、レンズイメージング品質の向上を厳重に制限してしまう。
【0004】
そのため、新しいレンズを研究し、フレネル反射のイメージング品質に対する影響を低減する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、従来レンズにおいて、レンズのフレネル反射がレンズのイメージング品質に対して影響する技術課題を解決するための光学レンズを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、上面及び上面に対向する下面を有する光学基板と、前記光学基板の上面を一部覆う黒色めっき層と、少なくとも前記黒色めっき層の上面を一部覆う反射防止膜とを備えることを特徴とする光学レンズを提供している。
【0007】
好ましくは、前記光学基板の下面に反射防止膜が設けられている。
【0008】
好ましくは、前記光学基板の上面であり、且つ黒色めっき層が覆われていない表面に反射防止膜が設けられている。
【0009】
好ましくは、前記光学基板と黒色めっき層との間に1層のUV硬化型接着剤が設けられている。
【0010】
好ましくは、前記黒色めっき層と反射防止膜との間に1層のUV硬化型接着剤が設けられている。
【0011】
好ましくは、前記光学基板と反射防止膜との間に1層のUV硬化型接着剤が設けられている。
【0012】
好ましくは、前記光学基板と黒色めっき層との間、黒色めっき層と反射防止膜との間、及び光学基板と反射防止膜との間のいずれにも1層のUV硬化型接着剤が設けられている。
【0013】
好ましくは、前記光学基板の絶対屈折率が反射防止膜の絶対屈折率と等しい。
【発明の効果】
【0014】
従来技術と比べて、本発明が提供する光学レンズは、レンズの光学基板の表面の黒色めっき層上に1層の反射防止膜を覆うことによって、レンズのフレネル反射を大きく低減し、レンズのイメージング品質を向上している。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図3】本発明の一つの実施例の光学レンズの断面図。
【
図4】本発明の他の一つの実施例の光学レンズの断面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に係る実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0017】
図1及び
図2は、両種の従来の黒色めっき層、反射防止膜及び光学基板の積層順序の構造断面図である。
図1に示される構造において、前記光学基板10’上に黒色めっき層20’のみを設けている。黒色めっき層20’の絶対屈折率を1.5とし、空気の絶対屈折率を1とし、光学基板10’の絶対屈折率を1.6とすると、実験による測定から分かるように、光線が空気から黒色めっき層20’に入射する時、黒色めっき層20’の表面の反射率は略4%であり、光線が光学基板10’から黒色めっき層20’に入射する時、黒色めっき層20’の表面の反射率は略0.1%である。そして、
図2に示される構造において、前記光学基板10’上に反射防止膜30’を設けた後、前記反射防止膜30’の表面上に黒色めっき層20’を設けている。同様に、黒色めっき層20’の絶対屈折率を1.5とし、空気の絶対屈折率を1とし、光学基板10’の絶対屈折率を1.6とし、反射防止膜30’の絶対屈折率を1とすると、この際に、光線が空気から黒色めっき層20’に入射する時、黒色めっき層20’の表面の反射率は略4%であり、光線が光学基板10’から反射防止膜30’を透過した後、黒色めっき層20’の表面に更に入射する時、黒色めっき層20’の表面の反射率は略4%である。これによれば、黒色めっき層20’の上面、下面の反射率はいずれも略4%である。
【0018】
図3に示されるように、黒色めっき層20の表面に入射して反射される光線の多すぎる上記欠陥を解決するために、本発明は光学レンズ1を提供している。前記光学レンズ1は、上面101及び上面101に対向する下面102を有する光学基板10と、前記光学基板10の上面101を一部覆う黒色めっき層20と、少なくとも前記黒色めっき層20の上面を一部覆う反射防止膜30とを備えている。黒色めっき層20の目的は、光線が光学基板10を通すことを防止し、不必要な光線がセンサに受信されることを防止すると共に、迷光(stray light)のレンズに対する影響を低減するためである。反射防止膜30の目的は、光学基板10の表面及び黒色めっき層20の表面の反射を低減すると共に、光学基板10の光線伝送率を強めるためである。本実施例において、前記光学基板10の絶対屈折率が反射防止膜30の絶対屈折率と等しいことが好ましい。
【0019】
この時に、同様に、黒色めっき層20の絶対屈折率を1.5とし、空気の絶対屈折率を1とし、光学基板10の絶対屈折率を1.6とする。光線が光学基板10から黒色めっき層20に入射する時に、黒色めっき層20の表面の反射率が略0.1%であるため、反射防止膜30の絶対屈折率を1.6とすればよく、この際に、反射防止膜30と黒色めっき層20との間の反射率の比は略1.1である。この際に、光線が空気方向から反射防止膜30を透過した後、黒色めっき層20に更に入射する時に、黒色めっき層20の表面反射率は略0.2%であり、光線が光学基板10から黒色めっき層20の表面に入射する時に、黒色めっき層20の表面反射率は略0.1%である。これによれば、黒色めっき層20の上面、下面の光線の絶対屈折率は大きく低減される。従って、本発明において新たに設計された反射防止膜30、黒色めっき層20及び光学基板10の積層順序は、簡単的な積層順序の改変ではなく、反射防止膜30を黒色めっき層20上に設けた後、絶対屈折率が光学基板10とほぼ同一の反射防止膜30を選択することによって、黒色めっき層20の上面、下面の光線反射率を大きく低減し、予想できない技術効果を取得している。
【0020】
光学レンズ1の光学性能を増加させるために、実際のニーズに応じて、前記光学基板10の下面102に反射防止膜30を設けることもでき、前記光学基板10の上面101の黒色めっき層20が覆われていない表面に、反射防止膜30を設けることもできる。勿論、光学基板10の下面102とその上面101の黒色めっき層20が覆われていない表面に、反射防止膜30を設けることもできる。
【0021】
図4に示されるように、本発明の好ましい実施形態において、前記光学基板10と黒色めっき層20との間に1層のUV硬化型接着剤40を設け、又は、前記黒色めっき層20と反射防止膜30との間のみに1層のUV硬化型接着剤40を設け、又は、前記光学基板10と反射防止膜30との間に1層のUV硬化型接着剤を設け、又は、前記光学基板10と黒色めっき層20との間、黒色めっき層20と反射防止膜30との間、及び光学基板10と反射防止膜30との間のいずれにも1層のUV硬化型接着剤40を設けることができる。
【0022】
本発明が提供している光学レンズ1は、レンズの光学基板10の表面上の黒色めっき層20の表面上に1層の反射防止膜30を増加して設けることによって、レンズのフレネル反射を大きく低減し、レンズのイメージング品質を向上している。また、反射防止膜30の存在によって、光学基板10の表面と黒色めっき層20の表面上の張力を向上させ、接着剤の性能に対する要件がより容易に満たされる。
【0023】
上記に記述しているのは、本発明の実施形態だけであり、当業者にとって、本発明の思想から離れない前提下で、更に改良することもできるが、これらはいずれも本発明の保護範囲に属する。