(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した特許文献1に記載の位置調整機構においては、外側パイプ及びこの外側パイプの内側で車体の前後方向に移動可能な内側パイプを横軸パイプとして備え、サドルを支持する縦軸パイプの一部を内側パイプに取り付けてサドルを前後移動可能に構成する。このため、一般的な自転車が備える部品と大幅に異なる部品が必要となり、サドルを前後移動させるための構成が複雑になるという問題がある。
【0007】
また、上述した特許文献2に記載の角度調整機構においては、角度調整装置が、車体フレームに結合されるフレーム結合部と、下端部がフレーム結合部に結合される一方、上端部がサドルに結合されるサドル結合部と、このサドル結合部の外側に配置される左右一対の角度固定板と、サドル結合部及び角度調整板の双方に着脱される角度変更部とを備え、角度固定板に対する角度変更部の装着位置を変更することでサドルの角度を調整可能に構成される。このため、一般的な自転車が備える部品と大幅に異なる部品が必要となり、サドルの角度を調整するための構成が複雑になるという問題がある。
【0008】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、複雑な構成を必要とすることなくサドルの前後方向の位置及び角度を調整することができる自転車用サドルの位置調整機構及び自転車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の自転車用サドルの位置調整機構は、サドルに固定されるスライド部材と、車体の前後方向に延在し前記スライド部材をガイドするガイドレールと
、前記スライド部材を駆動する駆動機構と、を備え、前記ガイドレールは、前記スライド部材の位置に応じて前記サドルの角度を変化させる傾斜部を有
し、前記スライド部材は、前記駆動機構の駆動力を受ける第1のスライダと、前記ガイドレールの傾斜部を移動する第2のスライダと、を有することを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、スライド部材をガイドするガイドレールに、スライド部材の位置に応じてサドルの角度を変化させる傾斜部が設けられることから、ガイドレールに沿ってスライド部材を移動させるだけでサドルの前後方向の位置及び角度を調整することができる。これにより、複雑な構成を必要とすることなくサドルの前後方向の位置及び角度を調整することができる。
また、駆動機構によりスライド部材が駆動されることから、駆動機構から発生する駆動力に応じてサドルの前後方向の位置及び角度を調整することができる。これにより、調整後のサドルの位置を固定するための作業等を省略することができ、サドルの位置調整作業を簡素化することができる。
さらに、スライド部材が、駆動力を受ける部分と、ガイドレールの傾斜部を移動する部分とを分割して備えることから、ガイドレールの傾斜部を駆動機構から離れた位置に配置することができる。これにより、ガイドレールの設計の自由度を確保しつつ、効果的にサドルの角度を調整することができる。
【0012】
特に、上記自転車用サドルの位置調整機構において、前記駆動機構は、車体の前後方向に延在するネジ軸を有し、当該ネジ軸の回転に応じて前記スライド部材を駆動することが好ましい。この構成によれば、ネジ軸を回転させるだけでスライド部材が駆動されることから、簡単な構成の駆動機構を利用してサドルの前後方向の位置及び角度を調整することができる。
【0013】
また、上記自転車用サドルの位置調整機構において、前記駆動機構は、前記ネジ軸に駆動力を供給する電動モータを有することが好ましい。この構成によれば、電動モータによりネジ軸が回転されることから、電動モータが生成する駆動力に応じてサドルの前後方向の位置及び角度を調整することができる。これにより、サドルの調整作業時における運転者の負担を軽減することができる。
【0014】
例えば、上記自転車用サドルの位置調整機構において、前記ガイドレールは、車体の幅方向に離間して配置された一対のレール部を有し、前記スライド部材は、前記一対のレール部の間で前記駆動機構からの駆動力を受ける。この構成によれば、車体の幅方向に離間して配置された一対のレール部の間で駆動機構からの駆動力がスライド部材に供給される。このため、ガイドレールの間に形成される空間を有効に活用しながら、駆動機構の駆動力をスライド部材に伝達することができる。
【0015】
また、上記自転車用サドルの位置調整機構において、前記ガイドレールは、車体の幅方向に延在する軸部を有し、前記駆動機構は、前記軸部の軸心を中心に揺動可能に前記ガイドレールに取り付けられる。この構成によれば、ガイドレールに設けられた軸部の軸心を中心に駆動機構を揺動可能に構成することができるので、駆動機構からスライド部材に駆動力を伝達する上で必要な構成部品間の位置精度を確保しつつ、スライド部材を駆動することができる。
【0017】
また、上記自転車用サドルの位置調整機構において、前記第1のスライダ及び前記第2のスライダは、一方が前記サドルを支持する支柱部の前方側に配置され、他方が前記支柱部の後方側に配置される。この構成によれば、サドルを支持する支柱部を挟んで第1のスライダと第2のスライダとが反対側の位置に配置されることから、支柱部の前方側及び後方側の空間を有効に活用することができる。これにより、サドルの周辺に大きな空間を必要とすることなく位置調整機構を組み込むことができる。
【0018】
特に、上記自転車用サドルの位置調整機構において、前記第1のスライダを前記支柱部の後方側に配置すると共に、前記駆動機構を前記第1のスライダの後方側に配置することが好ましい。この構成によれば、第1のスライダが支柱部の後方側に配置されると共に、駆動機構が第1のスライダの後方側に配置されることから、比較的大きなスペースが必要となる駆動機構をサドルの後方側に配置することができる。これにより、乗車時や運転時などに駆動機構が運転者の邪魔になるのを防止することができる。
【0019】
本発明の自転車は、上記したいずれかの自転車用サドルの位置調整機構を備えたことを特徴とする。この構成によれば、自転車において上記した自転車用サドルの位置調整機構により得られる効果を享受することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の自転車用サドルの位置調整機構及び自転車によれば、複雑な構成を必要とすることなくサドルの前後方向の位置及び角度を調整することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。なお、以下においては、本発明に係る自転車用サドルの位置調整機構を電動アシスト自転車に適用した例について説明するが、適用対象となる自転車はこれに限定されるものではなく、電動アシスト機能を有しない自転車に適用することもできる。また、本発明に係る自転車用サドルの位置調整機構は、ロードレーサー、マウンテンバイク、シティサイクルを含む任意のタイプの自転車に適用することができる。
【0023】
図1は、本実施の形態に係る自転車用サドルの位置調整機構が適用される自転車1の側面図である。なお、
図1においては、説明の便宜上、本実施の形態に係る自転車用サドルの位置調整機構と直接的に関連しない自転車1の構成要素を適宜省略するが、一般的な自転車が備える構成要素については備えているものとする。また、
図1においては、説明の便宜上、本実施の形態に係る自転車1の車体前方を矢印FR、車体後方を矢印REでそれぞれ示す。
図2以降の図面においても同様である。
【0024】
図1に示すように、自転車1は、車体フレーム2を備えている。車体フレーム2は、その前端に位置するヘッドチューブ21と、ヘッドチューブ21から後方側に延びるトップチューブ22と、トップチューブ22の後端部から前方斜め下向きに延びるシートチューブ23と、トップチューブ22の後端部から後方斜め下向きに延びるシートステー24とを有している。また、車体フレーム2は、ヘッドチューブ21から後方斜め下向きに延びるダウンチューブ25と、ダウンチューブ25の下端部から後方側に延びるチェーンステー26とを有している。シートチューブ23の下端部は、ダウンチューブ25の下端部とチェーンステー26の前端部に連結される。シートステー24の下端部は、チェーンステー26の後端部に連結される。
【0025】
ヘッドチューブ21の下端には、前方斜め下向きに延びるフロントフォーク3が設けられている。このフロントフォーク3の下端部には、前輪4が回転自在に支持されている。前輪4の上方はフロントフォーク3に設けられたフロントフェンダ31によって覆われている。ヘッドチューブ21の上端には、ステム51を介してハンドルバー5が取り付けられる。ハンドルバー5には、前輪4及び後述する後輪7用のブレーキレバーや、電動アシスト機能のオン/オフ等の指示を受け付ける操作部やサイクルコンピュータなどが取り付けられる。また、ヘッドチューブ21の上端近傍には、車体前方側を照らすライト21aが取り付けられている。
【0026】
シートチューブ23の上端には、シートポスト23aを介してサドル6が取り付けられる。なお、シートポスト23aは、特許請求の範囲における支柱部を構成する。シートポスト23aは、シートチューブ23に対して高さ調整可能に取り付けられる。例えば、シートポスト23aの高さ調整は、シートチューブ23の上端部近傍に設けられ、シートチューブ23の内径を調整するシートクランプにより行うことができる。シートポスト23aには、車体後方から照射された光を反射する反射鏡23bが取り付けられている。詳細について後述するように、サドル6には、サドル6の前後方向の位置及び角度を調整する位置調整機構60が設けられている(
図2参照)。
【0027】
チェーンステー26の後端部には、後輪7が回転自在に支持されている。後輪7の上方はシートステー24に設けられたリアフェンダ241によって覆われている。シートチューブ23の下端には、クランクセット8が装着されている。クランクセット8は、クランク81と、スプロケット82とが一体化して構成される。なお、クランクセット8は、チェーンセットと呼ぶこともできる。クランク81の先端には、ペダル811が取り付けられている。クランクセット8のスプロケット82と、後輪7に設けられたスプロケット71とにはチェーン9が取り付けられている。運転者がペダル811を踏むことで得られる駆動力(主駆動力)がチェーン9を介して後輪7に伝達されて、後輪7が駆動するように構成される。
【0028】
後輪7の中央には、電動アシスト機能がオン状態とされた場合に駆動される電動機10が設けられている。電動機10は、ペダル811からの運転者の踏力による主駆動力に応じた補助駆動力を生成する。電動機10の内部には、後輪7に補助駆動力を供給する電動モータが備えられている。シートチューブ23の前方には、この電動機10(電動モータ)に電力を供給するバッテリ11が着脱可能に取り付けられている。クランクセット8の近傍には、運転者の踏力による主駆動力を検出する不図示のトルクセンサが設けられている。電動機10は、このトルクセンサで検出された主駆動力に応じた補助駆動力を後輪7に供給する。したがって、電動アシスト機能がオン状態とされた場合、後輪7には主駆動力に補助駆動力が加えられた駆動力が供給されることとなる。
【0029】
ここで、本実施の形態に係る自転車1のサドル6に適用される位置調整機構60の構成について、
図2〜
図4を参照しながら説明する。
図2及び
図3は、それぞれ本実施の形態に係る自転車1のサドル6に適用される位置調整機構60の側面図及び斜視図である。
図2及び
図3においては、説明の便宜上、サドル6を構成するサドル本体を省略している。
図4は、本実施の形態に係る自転車1のサドル6に適用される位置調整機構60の構成部品の説明図である。
図4においては、説明の便宜上、
図3に示す位置調整機構60の一部の構成部品を省略している。
【0030】
図2及び
図3に示すように、位置調整機構60は、シートポスト23aの上端部に着脱可能に取り付けられる。位置調整機構60は、クランプ部材61と、ガイドレール62と、第1スライダ63及び第2スライダ64と、駆動機構65と、サドル固定板(以下、「固定板」という)66とを含んで構成される。なお、ガイドレール62は、特許請求の範囲におけるガイドレールを構成する。また、第1スライダ63及び第2スライダ64は、それぞれ特許請求の範囲における第1のスライダ及び第2のスライダを構成する。これらの第1スライダ63及び第2スライダ64により、例えば、特許請求の範囲におけるスライド部材が構成されるが、これに限定されない。特許請求の範囲におけるスライド部材は、これらの第1スライダ63及び第2スライダ64と、固定板66とを一体化した部材を含む概念である。
【0031】
クランプ部材61は、概して円筒形状を有する円筒形状部611と、この円筒形状部611の後部から後方側に延びる左右一対の支持壁部612と、これらの支持壁部612の外側に設けられる左右一対のレール保持部613と、これらのレール保持部613に挿通される固定ネジ614とを有する(支持壁部612について
図4参照)。クランプ部材61は、円筒形状部611の内側にシートポスト23aの上端部を収容した状態で、左右のレール保持部613の外側から固定ネジ614で締め付けることにより、円筒形状部611の内壁面が縮小されてシートポスト23aに固定される。
【0032】
レール保持部613の上端近傍には、概して車体前後方向に延在した貫通孔615が形成されている(
図3参照)。この貫通孔615は、ガイドレール62を構成する棒材の外径と略同一の内径を有している。ガイドレール62を構成する棒材が貫通孔615に挿通された状態で、固定ネジ614でクランプ部材61がシートポスト23aに固定されることにより、レール保持部613は、ガイドレール62を位置ずれすることなく保持することができる。
【0033】
ガイドレール62は、例えば、剛性を有する1本の金属棒材を折り曲げて構成される。ガイドレール62は、前後方向に延在する一対のレール部621と、これらのレール部621の前端部に連続して設けられ車幅方向に延在する連結部622と、これらのレール部621の後端部からそれぞれ車幅方向外側に延びる一対の軸部623とを有している(
図4B参照)。左右のレール部621は、互いに平行に配置されている。連結部622は、左右に配置されたレール部621の前端部同士を連結する。軸部623は、車体の幅方向に延在し、その中心(軸心)が同一直線上に配置されている。なお、レール部621及び軸部623は、それぞれ特許請求の範囲におけるガイドレールのレール部及び軸部を構成する。
【0034】
図2に示すように、レール部621は、側面視にて、クランプ部61のレール保持部613よりも後方側の一部が略水平に延びている。一方、クランプ部61のレール保持部613よりも前方側の一部には、該当するレール部621の中央付近に頂部621aが設けられると共に、その前方側に下向きに延在する傾斜部621bが設けられている。傾斜部621bは、詳細について後述するように、第2スライダ64の位置に応じてサドル6の座面の角度を変化させる役割を果たす。なお、傾斜部621bは、特許請求の範囲における傾斜部を構成する。
【0035】
第1スライダ63は、固定板66の後端部近傍の下面に取り付けられる。第1スライダ63は、固定板66の下面との間にクッション部材67を介在した状態で、固定板66の上面側から左右一対の固定ネジ68により固定板66に取り付けられている。固定板66に取り付けられた状態において、第1スライダ63は、クランプ部材61の後方側であって、駆動機構65の前方側に配置されている。なお、クッション部材67は、固定板66の下方側であって後端部近傍の左右に配置されており、サドル6から固定板66を介して作用する荷重を吸収する役割を果たす。
【0036】
ここで、
図4を参照して第1スライダ63の構成について説明する。なお、
図4Aにおいては、
図3から固定板66、クッション部材67及び固定ネジ68を取り外した状態を示している。
図4Bにおいては、更に後述する第1スライダ63のカバー部632及び駆動機構65の一部(より具体的には、ケース651及びケース651内に収容される伝達機構)を取り外した状態を示している。
【0037】
図4A、
図4Bに示すように、第1スライダ63は、ベース631と、ベース部631の上方に被せられるカバー部632と、カバー部632内に配置されるナット部633及び複数(本実施の形態では4個)のローラ634とを有する。第1スライダ63は、内部にナット部633及び複数のローラ634を収容した状態でカバー部632がベース部631の上面に固定されることで構成される。第1スライダ63は、これらの構成要素を有し、駆動機構65の駆動力を受ける。
【0038】
ベース部631は、車体の幅方向(車幅方向)に延在する長尺部631aと、この長尺部631aの両端に設けられた円板形状部631bとを有する(
図4B参照)。円板形状部631bの中央には、貫通孔631cが形成されている。貫通孔631cには、ベース部631の下方側から固定ネジ69が挿通される。この固定ネジ69は、上述した固定ネジ68と共に第1スライダ63を固定板66に固定する役割を果たす。
【0039】
カバー部632は、下方側に開口した箱状体632aと、この箱状体632aの側面から延出して設けられた円板形状部632bとを有する(
図4A参照)。箱状体632aは、概して車幅方向に長辺を配置した直方体形状を有している。円板形状部632bは、箱状体632aの車幅方向の側面の一部が下方側に延出する腕部632cの先端に設けられている。また、箱状体632aには、この腕部632cに対向して支持壁部632dが下方側に延びて設けられている。ガイドレール62のレール部621は、これらの腕部632cと支持壁部632dとの間の空間に配置される。円板形状部632bは、ベース部631の円板形状部631bと略同一寸法に設けられ、その中央には固定ネジ69が挿通される貫通孔632eが形成されている。
【0040】
ナット部633は、平板形状を有している(
図4B参照)。ナット部633の前後方向の寸法は、カバー部632の内壁面間の寸法よりも僅かに小さく構成されている。また、ナット部633の車幅方向の寸法は、カバー部632の支持壁部632d間の寸法よりも僅かに小さく構成されている。したがって、カバー部632内に収容された状態で、ナット部633の前面及び後面は微小なギャップを有した状態でカバー部632の内壁面と対向し、左右の側面は微小なギャップを有した状態で支持壁部632dの内壁面と対向する。ナット部633の中央には、車体の前後方向に貫通孔633aが形成されている。貫通孔633aは、その内周面にネジ溝が形成されており、後述する駆動機構65のリードネジ653の一部と螺合可能に構成されている。
【0041】
複数のローラ634は、ガイドレール62のレール部621を構成する棒材を収容可能な溝部が外周面に形成されたガイドローラで構成される(
図4B参照)。これらのローラ634は、カバー部632内に収容された状態で、カバー部632の腕部632cと支持壁部632dとの間の空間に回転可能に軸支される。これらのローラ634は、位置調整機構60が組み立てられた状態にて、ガイドレール62のレール部621を上下方向から挟み込む位置に配置されている。
【0042】
第2スライダ64は、
図2及び
図3に示すように、固定板66の前端部に設けられた後述するノーズ部662に揺動自在に取り付けられている。第2スライダ64は、概して直方体形状を有する本体部641と、この本体部641の側面に回転可能に支持される複数(本実施の形態では6個)のローラ642とを有する。第2スライダ64は、本体部641に車幅方向に貫通する貫通孔641aに挿通された固定ネジ70によって固定板66のノーズ部662に揺動自在に取り付けられる(
図4A、
図4B参照)。
【0043】
本体部641は、ガイドレール62の左右一対のレール部621の間に配置される。本体部641は、第2スライダ64が固定板66に取り付けられた状態において、レール部621の傾斜部621bに対応する位置に配置される。複数のローラ642は、第1スライダ63のローラ634と同様に、ガイドレール62のレール部621を構成する棒材を収容可能な溝部が外周面に形成されたガイドローラで構成される(
図4B参照)。複数のローラ642は、ガイドレール62のレール部621を上下方向から挟み込む位置に配置されている。なお、ローラ642は、第1スライダ63のローラ634と異なり、レール部621の延在方向の異なる位置にて、レール部621を上下方向から挟み込むように構成されている。
【0044】
駆動機構65は、
図2に示すように、駆動機構65の構成部品を支持、収容するケース651と、ケース651から一部が前方側に突出するように支持されたステッピングモータ652と、ケース651に回転自在に軸支されるリードネジ653と、ステッピングモータ651の駆動力をリードネジ652に伝達する図示しない伝達機構とを有する。なお、駆動機構65及びステッピングモータ652は、それぞれ特許請求の範囲における駆動機構及び電動モータを構成する。ここでは、電動モータの一例としてステッピングモータ652を示しているが、電動モータを構成するモータについてはこれに限定されるものではない。駆動機構65は、例えば、上述した操作部を介して運転者からサドル6の位置調整が指示された場合に駆動される。
【0045】
ケース651は、概して前方側に開口した形状を有する(
図4A参照)。ケース651には、下方側部分にステッピングモータ652を支持するモータ支持部651aと、上方側部分にリードネジ653を回転自在に支持するネジ支持部651bとが設けられている。また、このネジ支持部651bの側方には、ガイドレール62の軸部623を保持するレール保持部651cが設けられている。レール保持部651cの端部近傍の前面には、内部に収容した軸部623の脱落を防止する一対のストッパ651dが設けられている。
【0046】
ステッピングモータ652は、本実施の形態に係る位置調整機構60の駆動源を構成する。ステッピングモータ652は、図示しない駆動軸をケース651内に位置させると共に、モータ本体部652aをケース651の前方側に露出させた状態でモータ支持部651aに支持されている(
図2参照)。ステッピングモータ652の駆動軸には駆動ギヤが固定されており、この駆動ギヤがケース651に収容された伝達機構の入力ギヤに噛合するように構成されている。なお、ステッピングモータ652は、上述したバッテリ11から電力の供給を受けて駆動される。
【0047】
ケース651に収容される伝達機構は、複数のギヤで構成されている。伝達機構は、上述した入力ギヤにステッピングモータ652から入力された駆動力を、中間ギヤを介して出力ギヤに伝達する。この伝達機構の出力ギヤは、後述するリードネジ653のギヤ653cに噛合するように構成されている。したがって、ステッピングモータ652から入力された駆動力は、伝達機構を構成する複数のギヤを介してリードネジ653に伝達される。
【0048】
リードネジ653は、頭部653aと、頭部653aから前方側に延びるネジ軸部653bと、ネジ軸部653bの外周に設けられたギヤ部653cとを有する(
図4参照)。なお、リードネジ653のネジ軸部653bは、特許請求の範囲におけるネジ軸を構成する。リードネジ653は、ネジ軸部653bを前後方向に延在させた状態でケース651のネジ支持部651bに回転自在に支持されている。リードネジ653は、ギヤ部653cがケース651内の伝達機構の出力ギヤと噛合する位置に配置される。ネジ軸部653bは、ガイドレール62の一対のレール部621の間で前後方向に延在し、第1スライダ63のナット部633に形成された貫通孔633aに挿通される。ナット部633の貫通孔633aとネジ軸部653bとの間には複数の微小なボールが収容されている。すなわち、駆動機構65は、ボールネジ機構を有する。
【0049】
固定板66は、平面視にて概してY字形状を有する平面部661を備える(
図3参照)。この平面部661の前端部には、下方側及び後方側に開口した形状を有するノーズ部662が設けられている。ノーズ部662は、その内側の空間に第2スライダ64の一部を収容可能に構成されている。また、平面部661の後端部には、固定ネジ69が挿通される一対の固定孔663が形成されている。固定板66の上方には、図示しないサドル本体が装着される。このサドル本体の上面に配置される座面は、固定板66の平面部661と平行に配置される。
【0050】
位置調整機構は、このような構成部品を有し、
図2に示すように、クランプ部材61のレール保持部613でガイドレール62を保持する。ガイドレール62には、第1スライダ63及び第2スライダ64がスライド移動可能に取り付けられる。これらの第1スライダ63及び第2スライダ64には固定板66が固定されている。第1スライダ63及び第2スライダ64を介してガイドレール62に取り付けられた状態において、固定板66の平面部661と傾斜部621bとは一定以上の角度差を有して配置される。
【0051】
固定板66に固定された状態において、第1スライダ63は、シートポスト23aの後方側に配置される。一方、第2スライダ64は、シートポスト23aの前方側に配置されている。このように第1スライダ63をシートポスト23aの後方側に配置し、第2スライダ64をシートポスト23aの前方側に配置することにより、シートポスト23aの前方側及び後方側の空間を有効に活用することができる。これにより、サドル6の周辺に大きな空間を必要とすることなく位置調整機構60を組み込むことができる。
【0052】
駆動機構65は、第1スライダ63の後方側に配置されている。このため、比較的大きなスペースが必要となる駆動機構65をサドル6の後方側に配置することができる。これにより、乗車時や運転時などに駆動機構65が運転者の邪魔になるのを防止することができる。駆動機構65は、ガイドレール62の一対のレール部621の間に配置されたネジ軸部653bを回転させることで第1スライダ63のナット部633に駆動力を供給する。これにより、ガイドレール62の間に形成される空間を有効に活用しながら、駆動機構65の駆動力を第1スライダ63に伝達することができる。
【0053】
駆動機構65は、ガイドレール21の軸部623をケース651のレール保持部651cで保持している(
図4参照)。レール保持部651cで軸部623を保持することにより、駆動機構65は、軸部623の軸心を中心に揺動可能にガイドレール62の後端部に取り付けられた状態となっている。このため、駆動機構65から第1スライダ63に駆動力を伝達する上で必要な構成部品間の位置精度を確保しつつ、第1スライダ63を駆動することができる。これにより、例えば、運転者の体重等によりガイドレール62が瞬間的に歪むような場合でも、駆動機構65がガイドレール62に対して揺動することによりその歪みを吸収しながら第1スライダ63を駆動することができる。
【0054】
ガイドレール62に駆動機構65が取り付けられた状態において、ケース651のネジ支持部651bに支持されたリードネジ653は、第1スライダ63のナット部633の貫通孔633aに挿通される(
図4B参照)。ケース651内に収容された伝達機構は、出力ギヤがリードネジ653のギヤ部653cに噛合する一方、入力ギヤがステッピングモータ652の駆動ギヤと噛合している。この状態において、ステッピングモータ652が駆動されると、その駆動力が伝達機構を介してギヤ部653cに伝達され、ネジ軸部653bが軸心回りに回転する。
【0055】
ネジ軸部653bが回転することにより、第1スライダ63のナット部633が前後方向に移動する。例えば、前面視にてネジ軸部653bが反時計回り方向に回転することにより、ナット部633が前方側に移動する一方、前面視にてネジ軸部653bが時計回り方向に回転することにより、ナット部633が後方側に移動する。ナット部633の移動に応じて第1スライダ63が前後方向に移動する。この第1スライダ63の移動に伴い、固定板66を移動すると共に、固定板66のノーズ部662に固定された第2スライダ64も移動する。
【0056】
第2スライダ64は、ガイドレール62の傾斜部621b上を移動する。したがって、第2スライダ64が前方側に移動する場合には、傾斜部621bに沿って下降しながら移動する。一方、第2スライダ64が後方側に移動する場合には、傾斜部621bに沿って上昇しながら移動する。固定板66に固定されるサドル本体は、傾斜部621bにおける第2スライダ64の位置に応じて角度が変化する。
【0057】
ここで、本実施の形態に係る位置調整機構60の動作について、
図5を参照して説明する。
図5は、本実施の自転車1のサドル6に適用される位置調整機構60の動作の説明図である。なお、
図5Aにおいては、第1スライダ63が駆動されていない状態(初期状態)を示している。
【0058】
図5Aに示すように、初期状態においては、第1スライダ63が最も後方側に配置されている。この場合、第1スライダ63は、側面視にて駆動機構65の近傍の位置に配置されている。また、第2スライダ64は、ガイドレール62の傾斜部621bの頂部621a寄りの位置に配置されている。すなわち、第2スライダ64は、傾斜部621bのうち、上方側部分に配置されている。このとき、第1スライダ63及び第2スライダ64に固定される固定板66の平面部661は、自転車1が走行する地面と平行に配置される。
【0059】
図5Aに示す状態から、駆動機構65のステッピングモータ652が駆動されると、上述したように、駆動力が伝達機構を介してリードネジ653のネジ軸部653bに伝達され、ネジ軸部653bが回転する。このネジ軸部653bの回転に応じてナット部633が前方側に送り出され、このナット部633の移動に伴い第1スライダ63が前方側に移動する。そして、この第1スライダ63の移動に伴い、これに固定された固定板66が前方側に移動する。この固定板66の移動に伴い、ノーズ部662に取り付けられた第2スライダ64は、ガイドレール62の傾斜部621bに沿って下降しながら前方側に移動する。このとき、固定板66の平面部661は、前端部が後端部よりも下がった状態となっている。
【0060】
図5Bにおいては、第1スライダ63が最も前方側まで移動された状態を示している。この場合、第1スライダ63は、側面視にてクランプ部材61のレール保持部613の近傍の位置に配置されている。また、第2スライダ64は、ガイドレール62の傾斜部621bの連結部622寄りの位置に配置されている。すなわち、第2スライダ64は、傾斜部621bのうち、下方側部分に配置されている。このとき、第1スライダ63及び第2スライダ64に固定される固定板66の平面部661は、自転車1が走行する地面に対して前方側には傾斜した状態となる。
【0061】
すなわち、本実施の形態に係る位置調整機構60においては、第1スライダ63が
図5Aに示す状態から
図5Bに示す状態まで移動する過程において、固定板66(より具体的には、固定板66に固定されたサドル6)の前後方向の位置を移動しながら、その平面部661(より具体的には、サドル6の座面部)を水平状態から前傾した状態に調整することができる。
【0062】
以上説明したように、本実施の形態に係る位置調整機構60においては、ガイドレール62に、第1スライダ63及び第2スライダ64の位置に応じてサドル6の角度を変化させる傾斜部621bが設けられることから、ガイドレール62に沿って第1スライダ63及び第2スライダ64を移動させるだけでサドル6の前後方向の位置及び角度を調整することができる。これにより、複雑な構成を必要とすることなくサドル6の前後方向の位置及び角度を調整することができる。
【0063】
また、本実施の形態に係る位置調整機構60においては、第1スライダ63及び第2スライダ64(特に、第1スライダ63)を駆動機構65により駆動する。これにより、駆動機構65から発生する駆動力に応じてサドル6の前後方向の位置及び角度を調整することができる。この結果、調整後のサドル6の位置を固定するための作業等を省略することができ、サドル6の位置調整作業を簡素化することができる。
【0064】
ここで、駆動機構65は、車体の前後方向に延在するリードネジ653のネジ軸部653bを有し、このネジ軸部653bの回転に応じて第1スライダ63を駆動する。これにより、ネジ軸部653bを回転させるだけで第1スライダ63が駆動されることから、簡単な構成の駆動機構65を利用してサドル6の前後方向の位置及び角度を調整することができる。
【0065】
また、駆動機構65は、ネジ軸部653bに駆動力を供給するステッピングモータ652を有している。このため、ステッピングモータ652によりネジ軸部653bが回転されることから、ステッピングモータ652が生成する駆動力に応じてサドル6の前後方向の位置及び角度を調整することができる。これにより、サドル6の調整作業時における運転者の負担を軽減することができる。
【0066】
さらに、本実施の形態に係る位置調整機構60においては、サドル65をスライドさせるスライド部材に、駆動機構65の駆動力を受ける第1スライダ63と、ガイドレール62の傾斜部621bを移動する第2スライダ64とを有する。この場合、スライド部材が、駆動力を受ける部分と、ガイドレール62の傾斜部621bを移動する部分とを分割して備えることから、ガイドレール62の傾斜部621bを駆動機構65から離れた位置に配置することができる。これにより、ガイドレールの設計の自由度を確保しつつ、効果的にサドルの角度を調整することができる。
【0067】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。上記実施の形態において、添付図面に図示されている大きさや形状などについては、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
【0068】
例えば、上記実施の形態においては、駆動機構65がステッピングモータ652を備える場合について説明する。しかしながら、駆動機構65の構成については、これに限定されるものではなく適宜変更が可能である。第1スライダ63を前後方向に駆動できることを前提として、例えば、運転者から供給される回転力に応じて第1スライダ63を駆動する手動式の駆動機構65を備えることも可能である。このように手動式の駆動機構65を備える場合でも、電動式の駆動機構65を備えることによる効果を除き、上記実施の形態に係る位置調整機構60で得られる効果を奏することができる。
【0069】
また、上記実施の形態においては、位置調整後の第1スライダ63、第2スライダ64及び固定板66の位置を固定する構成を駆動機構65により実現している。しかしながら、これらの部材の位置を固定する構成については、これに限定されるものではなく適宜変更が可能である。例えば、シートポスト23aに位置固定用の基準面を設ける一方、この基準面に形成された固定孔と、固定板66に形成された固定孔とに固定ピン等を挿通し、これらの部材の位置を固定するようにしてもよい。
【0070】
さらに、上記実施の形態においては、第1スライダ63シートポスト23aの後方側に配置する一方、第2スライダ64をシートポスト23aの前方側に配置している。しかしながら、第1スライダ63、第2スライダ64の配置は、これに限定されるものではなく両者を入れ替えて配置してもよい。この場合においても、上記実施の形態と同様に、シートポスト23aの前方側及び後方側の空間を有効に活用でき、サドル6の周辺に大きな空間を必要とすることなく位置調整機構60を組み込むことができる。