特許第6097735号(P6097735)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ イー インク コーポレイションの特許一覧

<>
  • 特許6097735-エレクトロウェッティングディスプレイ 図000002
  • 特許6097735-エレクトロウェッティングディスプレイ 図000003
  • 特許6097735-エレクトロウェッティングディスプレイ 図000004
  • 特許6097735-エレクトロウェッティングディスプレイ 図000005
  • 特許6097735-エレクトロウェッティングディスプレイ 図000006
  • 特許6097735-エレクトロウェッティングディスプレイ 図000007
  • 特許6097735-エレクトロウェッティングディスプレイ 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6097735
(24)【登録日】2017年2月24日
(45)【発行日】2017年3月15日
(54)【発明の名称】エレクトロウェッティングディスプレイ
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/17 20060101AFI20170306BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20170306BHJP
【FI】
   G02F1/17
   G09F9/30 380
【請求項の数】3
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-246450(P2014-246450)
(22)【出願日】2014年12月5日
(62)【分割の表示】特願2013-188065(P2013-188065)の分割
【原出願日】2004年10月6日
(65)【公開番号】特開2015-52809(P2015-52809A)
(43)【公開日】2015年3月19日
【審査請求日】2014年12月5日
(31)【優先権主張番号】60/481,482
(32)【優先日】2003年10月8日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】500080214
【氏名又は名称】イー インク コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】ジョセフ エム. ジェイコブソン
(72)【発明者】
【氏名】トーマス エイチ. ホワイトサイデス
(72)【発明者】
【氏名】マイケル ディー. マクレアリー
(72)【発明者】
【氏名】リチャード ジェイ. パオリーニ
【審査官】 里村 利光
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭52−140233(JP,A)
【文献】 特開2001−228307(JP,A)
【文献】 特開2001−147451(JP,A)
【文献】 特開2000−194021(JP,A)
【文献】 特表平11−502950(JP,A)
【文献】 特表2007−500876(JP,A)
【文献】 特表2007−511782(JP,A)
【文献】 特表2006−500614(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0150683(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/17−1/19
G02B 26/02
G09G 3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
間隔を空けた、第一の電極および光透過性のある第二の電極と、
該第一の電極および該第二の電極との間に閉じ込められた第一の流体および第二の流体であって、互いに混和しない該第一の流体および該第二の流体と
を備えた、ディスプレイであって、
該第一の流体および該第二の流体が、光透過性でなく、異なる色であり、
該ディスプレイは、該第一の流体が該第一の電極に隣接して横たわることで、該第二の流体の色が、該第二の電極を通し、該ディスプレイを見ている観察者に見えるような第一の安定状態と、該第一の流体が該第二の電極に隣接して横たわることで、該第一の流体の色が、該観察者に見えるような第二の安定状態とを有することを特徴とする、ディスプレイ。
【請求項2】
前記第一の電極と前記第一の流体との間に配置された第一の誘電体層、および、前記第二の電極と前記第二の流体との間に配置された第二の誘電体層をさらに備える、請求項1に記載のディスプレイ。
【請求項3】
基板と、
少なくとも光の1波長を吸収し、該基板に隣接して配置された第一の流体と、
該第一の流体と混和しない光透過性の第二の流体と、
該第一の流体に電界を印加する少なくとも1つの電極と
を備え、
電界のない場合、該第一の流体は該基板の第一の領域を覆っているが、該少なくとも1つの電極によって該第一の流体に電界がかけられると、該第一の流体は、該第一の領域よりも小さな第二の領域に移動する、ディスプレイであって、
該ディスプレイは、該第一の流体が、色素パーティクルまたはナノパーティクルで着色されていることを特徴とし、
該ディスプレイは、
該基板から間隔を空けて、不透明な材料から形成された隠蔽材であって、
該電界をかけると、該第一の流体は、該隠蔽材と該基板との間に閉じ込められ、その結果、該隠蔽材の該基板に対して反対側から該ディスプレイを見ている観察者から、該隠蔽材は、該第一の流体を隠蔽する、隠蔽材と、
該基板と該隠蔽材との間に配置された誘電体層であって、該隠蔽材の第一の部分は、該誘電体層から離れた位置に拡がっており、該隠蔽材の第二の部分は、該誘電体層と平行に拡がっている、誘電体層と
を特徴とする、ディスプレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレクトロウェッティングディスプレイに関する。
【背景技術】
【0002】
二つの混和しない媒体間の界面張力は、これら媒体に電圧を印加することによって、制御されることは、例えば、Lippmann M.G.のAnn. Chim. Phys.、5,494(1875)などで、一世紀以上も前から知られている。また、加圧電位(V)と、その結果生じた表面張力(γ)との間の数学的関係は、リップマンの式として、
γ=γ−0.5cV
で、表されることも、古くから知られている。ここで、電荷層が対称的なヘルムホルツキャパシタのモデルであると仮定した場合、γは電荷がゼロ(固体表面に電荷がない場合)で、cは単位面積あたりの静電容量である。さらに、いわゆる電気浸透圧ディスプレイや電気毛管ディスプレイも、開発されてきた。こうした種類のディスプレイの全ては、電界存在下における液体の濡れ特性の変化を利用している。例えば、Sheridon N.K.の「Electrocapillary Imaging Devices for Display and Data Storage」、Xerox Disclosure Journal、1979、4、385−386や、米国特許第5,956,005号、米国特許第5,808,593号、米国特許第5,757,345号、米国特許第5,731,792号、米国特許第5,659,330号、米国特許第4,569,575号、米国特許第6,603,444号、米国特許第6,449,081号、を参照。この原理を用いた様々なディスプレイが、Duke大学のRichard B. Fairと、その共同研究者によっても、開発されてきた。例えば、http://www.ee.duke.edu/Research/microfluidicsを参照。
【0003】
最近、エレクトロウェッティング機器における電極と液体間の薄い誘電体層は、従来のエレクトロウェッティング機器に存在する電気二重層に匹敵しうることが、知られてきた。誘電体層は、界面で高電界が保たれている間、電子移動を阻止できるので、その結果、電圧が印加されると、電荷が再分布する。疎水性誘電体と水溶性液体とを使うと、初期接触角が大きくなり、エレクトロウェッティング上の接触角が大きく変化する余地が与えられる。さらに、液体と電極との間を誘電体層とすることで、界面の分極を考慮することなく、実質的に、いかなる種類の液体も使用されうる。Moon,H.らの「Low voltage electrowetting−on−dielectric」、J.Appl.Phys.、2002,92,4080を参照。
【0004】
オランダEindhovenのPhilips Research Laboratoriesの研究者らは、エレクトロウェッティングディスプレイが、ビデオレート(video rate)での応用が可能なことを述べている。Nature、425、383(2003)と、国際出願 WO 2004/068208、国際出願 WO 2004/027489、国際出願 WO 03/071346を参照。このディスプレイは、誘電体上をエレクトロウェッティングとしたタイプで、白色基板の一面に透明な電極を配置することをベースとしたセルを用いる。電極は、疎水性誘電体層に覆われている。セルには、さらに、着色(染色)された油と水を含む。電圧が印加されていない場合、着色された油は疎水性誘電体を濡らすので、見られる色は、着色された油の色に見える。しかしながら、透明な電極と、水と接触している第二の電極との間に、電圧が印加されると、着色された油は、その画素の小さな一部分に動き、その画素の大部分は、基板の白い色を見せる。CMYKカラー方式は、1画素を3つのサブ画素に分けることによって、実現されうる。ここで、サブ画素は、白色基板をそれぞれ有するが、異なる色(例えば、シアンとマゼンタ)の2つの油層をそれぞれ有する。
【0005】
このタイプのディスプレイは、数多くの問題を抱えている。ディスプレイは、双安定(bistable)でない。なぜなら、画素の小さな一部分に油を閉じ込めれるのは、電圧が印加されている間に、限られているからである。ディスプレイが画像を表示するために連続的な表示をしている場合には、これは深刻な不都合はない。しかし、ユーザーが画像を一時停止させて、個々の画面を確認したいと思うようなアプリケーションもあり、この場合、特に、これが携帯機器であれば、ディスプレイを双安定させて、電池を連続的に消耗することなく、個々の画面を確認できるようにすることは、大きな利点となるであろう。画素の小さな一部分から油が目に見えると、ディスプレイのコントラスト比が下がる。油に溶かした染料は、長期的に見れば、問題を生じうる。なぜなら、溶液中の染料は、長期にわたり、放射線に曝されると悪影響を受け、一般に染料の色あせを生じるからである。異なる色の複数の油を使用しているディスプレイにおいては、どの色も同じスピードで色あせしないため、色が時間とともにドリフトを生じ、特に問題となりうる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、エレクトロウェッティングディスプレイの様々な改善に関するもので、これによって、上述した問題を軽減し、解消するものである。
【0007】
一局面として、本発明は、
基板と、
少なくとも光の1波長を吸収し、該基板に隣接して配置された第一の流体と、
該第一の流体と混和しない光透過性第二の流体と、
該第一の流体に電界を印加する少なくとも1つの電極と、
該基板から間隔を空けて、実質的に不透明な材料から形成された隠蔽材と
を備え、
電界のない場合、該第一の流体は該基板の第一の領域を覆い、該少なくとも1つの電極によって該第一の流体に電界がかけられると、該第一の流体は、該第一の領域からより小さな第二の領域に移動し、実質上、該隠蔽材と該基板の間に閉じ込められ、その結果、該隠蔽材の該基板に対する反対側から該ディスプレイを見ている観察者から、該隠蔽材は、該第一の流体を隠蔽する、ディスプレイを提供する。
【0008】
「光透過性の」という語は、ここでは、第二の流体が十分な光を伝達し、第一の流体から第二の流体への動くのを見ている観察者が、この動きを見ることができなくてはならない。(非可視波長で、機械により読み取ることを意図したディスプレイでは、「光透過性の」という語は、当然、ディスプレイが読まれる電磁波放射線の波長の透過性を意味する。光に関して以下に使われる単語も、同様に解釈されるべきである。)一般的に、光透過性の第二の流体は、透明であるが、表示される色を調整するために、第二の流体に、何らかの色をしている可能性を排除するわけではない。例えば、厳密な中立的な白よりも、わずかに青みがかった「白」を好む人は多い。そのため、例えば、以下で、図1および図2とを参照して述べるタイプのディスプレイでは、色の変化が白から黒に変わる場合、わずかな青色を分け与えて、わずかに青白い状態の白とすることが、好都合である。
【0009】
便宜上、このディスプレイを本発明の「隠蔽材(concealment member)ディスプレイ」と呼ぶ。このようなディスプレイにおいては、基板には、第一の流体に隣接した誘電体表面を備えうるし、および/または、着色層または反射層を備えうる。このようなディスプレイの好ましい形態として、該基板は実質的に平坦な表面を有し、隠蔽材は該基板の該実質的に平坦な表面と実質的に平行に拡がるが、間隔を空けている実質的に平坦なセクションを含む。
【0010】
また、別の局面では、本発明は、
お互いに異なる第一の光学的特性および第二の光学的特性を有する第一の部分と第二の部分とを少なくとも有する基板と、
該第一の光学的特性および該第二の光学的特性のうちの少なくとも1つとは異なる第三の光学的特性を有し、少なくとも光の1波長を吸収する第一の流体と、
該第一の流体と混和しない光透過性の第二の流体と、
該第一の部分に隣接した第一の電極と、該第二の部分に隣接した第二の電極と
を備える、ディスプレイであって、
該第一の電極と該第二の電極への印加電圧を制御することで、該第一の流体が該基板の該第二の部分を実質的に覆い、該第一の部分を覆わないようにする第一の位置、および、該第一の流体が該基板の該第一の部分を実質的に覆い、該第二の部分を覆わないままにする第二の位置とを、該第一の流体が占めれるようにされる、ディスプレイを提供する。
【0011】
便宜上、このディスプレイを本発明の「色シフトディスプレイ」と呼ぶ。このようなディスプレイにおいては、第一の流体は、第一の部分と第二の部分との双方を覆う第三の位置を占めれることもある。
【0012】
色シフトディスプレイでは、基板は異なる色の部分を2より多く有しうる。例えば、基板は、第三の部分を有することもあり、第一、第二および第三の光学的特性とも異なる第三の部分を有しうるし、ディスプレイは、さらに、基板の第三の部分に隣接した第三の電極を有し、第一の電極、第二の電極および第三の電極への印加電圧を制御することで、第一の流体は、実質的に基板の第一の部分および第二の部分の少なくとも1つを覆い、第三の部分を覆わないままにする第三の位置を占めるようにされている。例えば、基板の第一、第二および第三の部分は、赤、緑および青、あるいは、黄、シアンおよびマゼンタが、任意の配列であってよい。さらに、第一、第二および第三の光学的特性とも異なり、かつ、基板の第三の部分とも異なる光学的特性を有する第四の部分を有し、ディスプレイは、さらに、基板の第四の部分に隣接した第四の電極を備え、第一、第二、第三および第四の電極への印加電圧を調整することで、第一の流体は、実質的に基板の第一、第二および第三の部分の少なくとも1つを覆い、第四の部分を覆わないままにする第四の位置を占めるようにされていることもある。例えば、基板の第一、第二、第三および第四の部分は、赤、緑、青および黒、あるいは、黄、シアン、マゼンタおよび黒が、任意の配列であってよい。
【0013】
本発明の色シフトディスプレイは、典型的には、基板の第一の部分と第二の部分(存在するとすれば、および第三の部分および第四の部分)は、同一平面上にある。これらの部分は、様々な幾何学的な位置を占めうる。例えば、これらの部分は、実質的に正三角形の形状を有しうる。その代わりに、第一および第二の部分は、実質的に円の形状を有し、実質的な該実質的に円状の第一および第二の部分は、各実質的に円状の部分の直径よりも小さい幅を有する首部分で接続されていることもありうる。電極は、この首部分の上あるいは隣接して配置され得る。
【0014】
また、別の側面では本発明は、
観察者がディスプレイを見る場合に介する第一の基板と、
該第一の基板と間隔を空けた第二の基板と、
ここで、該第一の基板と該第二の基板との間に延びる少なくとも1つの側壁と、該第一の基板と該第二の基板、および、該側壁が合わさって、第一の基板表面、第二の基板表面、および、少なくとも1つの側壁表面を有するチャンバーを規定し、
該チャンバー内に配置され、少なくとも光の1波長を吸収する第一の流体と、該第一の流体と混和しない、該チャンバーに配置された光透過性の第二の流体と、
該チャンバーの該第二の基板表面に隣接して配置された第一の電極と
該チャンバーの側壁表面に隣接して配置された第二の電極と、
該チャンバー内に延び、該第二の流体と電気的接触を有する第三の電極と
を備え、
該第一の電極、該第二の電極および該第三の電極への印加電圧を制御することで、該第一の流体は、該第一の流体が該チャンバーの該第二の基板表面に隣接して横たわる第一の位置と、該第一の流体が該チャンバーの1つの側壁表面に隣接して横たわる第二の位置とを占めるようにされているディスプレイを提供する。
【0015】
便宜上、このディスプレイを本発明の「マイクロセルディスプレイ」と呼ぶ。このようなディスプレイにおいては、基板には、第一の流体に隣接した誘電体表面を備えうるし、および/または、着色層または反射層を備えうる。さらに、第二の基板表面とチャンバーの側壁表面との間の接合部に隣接した絶縁体ブロックであって、第三の電極が該絶縁体ブロックを通り抜ける該絶縁体ブロックを備えうる。
【0016】
また、別の局面では本発明は、
流体と、
該流体による濡れに耐性のある露出表面を有する基板と、
該基板にを介して延び、該基板の露出表面に隣接して終端する少なくとも3つの導電性ビアと、
該露出表面の該導電性ビアの終端を覆うキャップ部であって、該流体によって濡れる材料から形成される該キャップ部と
を備えたディスプレイを提供する。
【0017】
便宜上、このディスプレイを本発明の「導電性ビアディスプレイ」と呼ぶ。このようなディスプレイにおいては、導電性ビアは、二次元配列で、配置されうる。また、流体は水溶性であり、露出表面は疎水性であり、キャップ部は親水性材料でありうる。
【0018】
また、別の局面では本発明は、
基板と、
少なくとも光の1波長を吸収し、該基板に隣接して配置された第一の流体と、
該第一の流体と混和しない光透過性の第二の流体と、
該第一の流体に電界を印加する少なくとも1つの電極と
を備える、ディスプレイであって、
電界のない場合、該第一の流体は基板の第一の領域を覆っているが、該少なくとも1つの電極から該第一の流体に電界がかけられると、該第一の流体は、該第一の領域より狭い第二の領域に移動し、ここで、該第一の流体は、色素パーティクルまたはナノパーティクルで着色されている、ディスプレイを提供する。
【0019】
便宜上、このディスプレイを本発明の「色素/ナノパーティクルディスプレイ」と呼ぶ。
【0020】
最後に、本発明は、
間隔を空けた、第一の電極および光透過性のある第二の電極と、
該第一の電極および該第二の電極との間に閉じ込められた第一の流体および第二の流体であって、互いに混和しない該第一の流体および該第二の流体と
を備える、ディスプレイであって、
該第一の流体および該第二の流体が、光透過性でなく、異なる色であり、
ディスプレイは、該第一の流体が該第一の電極に隣接して横たわることで、該第二の流体の色が、該第二の電極を通し、ディスプレイを見ている観察者に見えるような第一の安定状態と、該第一の流体が該第二の電極に隣接して横たわることで、該第一の流体の色が、該観察者に見えるような第二の安定状態とを有する、ディスプレイを提供する。
【0021】
便宜上、このディスプレイを本発明の「二色ディスプレイ」と呼ぶ。このようなディスプレイにおいては、第一の流体は油を含み、第二の流体は水性でありうる。さらに、第一の電極と第一の流体との間と、第二の電極と第二の流体との間に、それぞれ、第一の誘電体層と第二の誘電体層を備えうる。
(項目1)
基板(102)と、
少なくとも光の1波長を吸収し、該基板(102)に隣接して配置された第一の流体(108)と、
該第一の流体(108)と混和しない光透過性の第二の流体(110)と、
該第一の流体(108)に電界を印加する少なくとも1つの電極(104)と
を備え、
電界のない場合、該第一の流体(108)は該基板(102)の第一の領域を覆い、該少なくとも1つの電極(104)によって該第一の流体(108)に電 界がかけられる
と、該第一の流体(102)は、該第一の領域からより小さな第二の領域に移動する、ディスプレイであって、
該ディスプレイは、
該基板(102)から間隔を空けて、実質的に不透明な材料から形成された隠蔽材(112)を備え、
該第一の流体(108)に電界をかけると、該第一の流体(108’)は、実質上、該隠蔽材(112)と該基板(102)との間に閉じ込められ、その結 果、該隠蔽材(1
12)の該基板(102)に対して反対側から該ディスプレイを見ている観察者から、該隠蔽材(112)は、該第一の流体(108’)を隠蔽することを特徴とする、ディスプレイ。
(項目2)
上記基板(102)は、上記第一の流体(108)に隣接した誘電体表面(106)を備える、項目1に記載のディスプレイ。
(項目3)
上記基板(102)は、着色層または反射層を備える、項目1に記載のディスプレイ
(項目4)
上記基板(102)は、実質的に平坦な表面を有し、上記隠蔽材(102)は、上記基板(102)の該実質的に平坦な表面と、実質的に平行に拡がり、間隔を空けている実質的に平坦なセクションを含む、項目1に記載のディスプレイ。
(項目5)
基板と、
少なくとも光の1波長を吸収し、該基板に隣接して配置された第一の流体と、
該第一の流体と混和しない光透過性の第二の流体と、
該第一の流体に電圧を印加する少なくとも1つの電極と
を備える、ディスプレイであって、
該基板は、お互いに異なる第一の光学的特性および第二の光学的特性を有する第一の部分(R;602)と第二の部分(G;604)とを少なくとも有し、
該第一の流体は、該第一の光学的特性および該第二の光学的特性のうちの少なくとも1つとは異なる第三の光学的特性を有し、
該ディスプレイは、該第一の部分(R;602)に隣接した第一の電極と、該第二の部分(G;604)に隣接した第二の電極とを備え、
該第一の電極と該第二の電極への印加電圧を制御することで、該第一の流体が該基板の該第二の部分(G;604)を実質的に覆い、該第一の部分 (R;602)を覆わないままにする第一の位置、および、該第一の流体が該基板の該第一の部分(R;602)を実質的に覆い、該第二の部分(G;604)を覆わないままにする第二の位置を占めれるようにされていることを特徴とする、ディスプレイ。
(項目6)
上記第一の流体は、上記基板の第一の部分と第二の部分(G、R)の双方を覆う第三の位置を占めれるようにされている、項目5に記載のディスプレイ。
(項目7)
上記基板は、上記第一の光学的特性、上記第二の光学的特性および上記第三の光学的特性とは異なる光学的特性を有する第三の部分(B)を有し、
上記ディスプレイは、上記基板の該第三の部分(B)に隣接した第三の電極をさらに備え、
上記第一の電極、上記第二の電極および該第三の電極への印加電圧を制御することで、上記第一の流体は第三の位置を占めるようにされ、該第一の流体は、実 質的に上記基板
の上記第一の部分および上記第二の部分(R、G)の少なくとも1つを覆い、該第三の部分(B)を覆わないままにする、項目5に記載のディスプレイ。
(項目8)
上記基板は、上記第一の光学的特性、上記第二の光学的特性および上記第三の光学的特性とは異なり、かつ、上記基板の上記第三の部分(B)とも異なる光学的特性を有する第四の位置(K)を有し、
上記ディスプレイは、上記基板の該第四の部分(K)に隣接した第四の電極をさらに備え、
上記第一の電極、上記第二の電極、上記第三の電極および該第四の電極への印加電圧を制御することで、上記第一の流体は第四の位置を占めれるようにされ、 該第一の流体は
、実質的に上記基板の上記第一の部分、上記第二の部分および上記第三の部分(R、G、B)の少なくとも1つを覆い、該第四の部分(K)を覆わないままにする、項目7に記載のディスプレイ。
(項目9)
上記基板の上記第一の部分および上記第二の部分(R、G)は、実質的に正三角形の形状を有する、項目5に記載のディスプレイ。
(項目10)
上記基板の上記第一の部分および上記第二の部分(602、604)は、実質的に円の形状を有し、該実質的に円状の第一の部分および第二の部分(602、 604)は、各
実質的に円状の部分(602、604)の直径よりも小さい幅を有する首部分(606)で接続されている、項目5に記載のディスプレイ。
(項目11)
電極(612)が、上記首部分(606)上に配置されているか、あるいは、隣接されている、項目10に記載のディスプレイ。
(項目12)
観察者がディスプレイを見る場合に介する第一の基板(508)と、
該第一の基板(508)と間隔を空けた第二の基板(502)と、
ここで、該第一の基板と該第二の基板(502、508)との間に延びる少なくとも1つの側壁(504、506)と、該第一の基板と該第二の基板(502、 508)、およ
び、該側壁(504、506)が合わさって、第一の基板表面、第二の基板表面、および、少なくとも1つの側壁表面を有するチャンバーを規定し、
該チャンバー内に配置された第一の流体(522)と、
該第一の流体(522)と混和しない、該チャンバーに配置された光透過性の第二の流体(110)と、
該チャンバーの該第二の基板表面に隣接して配置された第一の電極(510)と
を備えた、ディスプレイであって、
該第一の流体(522)は、少なくとも光の1波長を吸収し、
第二の電極(514)が、該チャンバーの側壁表面に隣接して配置され、
第三の電極(520)が、該チャンバー内に延び、該第二の流体(110)と電気的接触を有し、
該第一の電極、該第二の電極および該第三の電極(510、514、520)への印加電圧を制御することで、該第一の流体(522)は、該第一の流体 (522)が該チャ
ンバーの該第二の基板表面に隣接して横たわる第一の位置と、該第一の流体(522)が該チャンバーの1つの側壁表面に隣接して横たわる第二の位置とを占めるようにされていることを特徴とする、ディスプレイ。
(項目13)
上記第二の基板(502)は、上記第一の流体(522)に隣接した誘電体層(512)を備える、項目12に記載のディスプレイ。
(項目14)
上記第二の基板(502)は、着色層または反射層を備える、項目12に記載のディスプレイ。
(項目15)
上記第二の基板表面と上記チャンバーの側壁表面との間の接合部に隣接した絶縁体ブロック(518)を、さらに備え、
上記第三の電極(520)が該絶縁体ブロック(518)を通り抜ける、項目12に記載のディスプレイ。
(項目16)
流体(708)と、
該流体(708)による濡れに耐性のある露出表面を有する基板(702)と、
該基板(702)を介して延び、該基板の露出表面に隣接して終端する少なくとも3つの導電性ビア(704)と、
該露出表面の該導電性ビア(704)の終端を覆うキャップ部(706)であって、該キャップ部(706)は、該流体(708)によって濡れる材料から形成されている、キャップ部と
を特徴とする、ディスプレイ。
(項目17)
基板と、
少なくとも光の1波長を吸収し、該基板に隣接して配置された第一の流体と、
該第一の流体と混和しない光透過性の第二の流体と、
該第一の流体に電界を印加する少なくとも1つの電極と
を備え、
電界のない場合、該第一の流体は該基板の第一の領域を覆っているが、該少なくとも1つの電極によって該第一の流体に電界がかけられると、該第一の流体は、該第一の領域から、より小さな第二の領域に移動する、ディスプレイであって、
該第一の流体が、色素パーティクルまたはナノパーティクルで着色されていることを特徴とする、ディスプレイ。
(項目18)
間隔を空けた、第一の電極(104)および光透過性のある第二の電極(116)と、
該第一の電極および該第二の電極(104、116)との間に閉じ込められた第一の流体(108)および第二の流体(110’)であって、互いに混和しない該第一の流体(108)および該第二の流体(110’)と
を備えた、ディスプレイであって、
該第一の流体および該第二の流体(108、110’)が、光透過性でなく、異なる色であり、
該ディスプレイは、該第一の流体(108)が該第一の電極(104)に隣接して横たわることで、該第二の流体(110’)の色が、該第二の電極 (116)を通し、該デ
ィスプレイを見ている観察者に見えるような第一の安定状態と、該第一の流体(108)が該第二の電極(116)に隣接して横たわることで、該第一の流体(108)の色が、該観察者に見えるような第二の安定状態とを有することを特徴とする、ディスプレイ。
(項目19)
上記第一の電極(104)と上記第一の流体(108)との間に配置された第一の誘電体層(106)、および、上記第二の電極(116)と上記第二の流体(110’)との間に配置された第二の誘電層(114)をさらに備える、項目18に記載のディスプレイ。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】添付図面の図1は、本発明による隠蔽材ディスプレイの模式側面図であり、第二の流体が基板の大きな第一の領域を覆っている。
図2図2は、図1と同様の模式側面図であるが、第二の流体が基板の小さな第二の領域に閉じ込められた状態を示している。
図3図3は、本発明による四色色シフトディスプレイの平面図である。
図4図4は、本発明による双安定な二色流体エレクトロウェッティングディスプレイの模式側面図である。
図5図5は、本発明によるマイクロセルディスプレイの模式側面図である。
図6図6は、本発明による第二の色シフトディスプレイの平面図である。
図7図7は、本発明による導電性ビアディスプレイの模式側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
前述のように、本発明は、幾つかの異なった側面を有する。これら様々な側面は、以下に、個別に記述されるが、単一のディスプレイは、本発明の複数の側面を用いたものでありうることは、理解されるべきである。例えば、本発明のマイクロセルディスプレイは、第一の流体に、本発明の色素パーティクル/ナノパーティクルディスプレイに従う色素パーティクルまたはナノパーティクルが、着色に利用されうる。
【0024】
本ディスプレイにおいて、第一の(移動)流体は、典型的には、油であり、第二の流体は水性である。分かりやすくするために、以下の記述では、第一の流体と第二の流体の代わりに、「油」と「水」の単語を用いることもあるが、これらの単語「油」と「水」は、限定的な意味で解釈してはならない。
【0025】
まず、前述のように、本発明は、電圧が印加されたとき、油を隠蔽するための隠蔽材を有する隠蔽材ディスプレイを提供する。また、このようなディスプレイの作動方法も提供する。本発明の特定の隠蔽材ディスプレイは、添付図面の図1図2に描かれている。図1に示すように、エレクトロウェッティングディスプレイ(描かれているのは、1つの単画素のみ)は、基板102(典型的には、白く着色されている)、透明な第一の電極104、および、誘電体層を備える。着色された第一の流体(油)の層が、誘電体層106の大きな第一の領域の上一面(全体として、描かれている)に拡がっており、透明な第二の流体(水)110は、油層108の上に横たわっている。このエレクトロウェッティングディスプレイは、さらに隠蔽材112を備え、その第一の部分は誘電体層106から離れた位置に拡がっており、その第二の部分は平面的な誘電体層106と平行に拡がっている。隠蔽材112の第二の部分の表面は、第二の電極(図示せず)を抱えている。
【0026】
図1は、2つの電極間に全く電界がないときのエレクトロウェッティングディスプレイで、着色された油層108が、誘電体層106の表面に均一に拡がっている状態を示す。したがって、ここに描かれた単画素は、油の色を表示する。図2は、2つの電極間に電圧が印加されたときのエレクトロウェッティングディスプレイを示す。油層は、誘電体層106の表面を、もはや均一に拡がっておらず、その代わりに、コンパクトな小滴108’となって集結し、隠蔽材112の下に横たわる第二の領域を覆っている。これは、意図された方向(すなわち、隠蔽材112の基板102に対して反対側から、つまり、図1および図2の上方から)からディスプレイを見る観察者が、主として白色基板102を、観察者から油の小滴108’を隠蔽する隠蔽材112とともに見るためである。
【0027】
画素のコントラスト比が、隠蔽材112(つまり、誘電体層106から離れた表面)の可視表面の色を変えれば、変化されることは、明らかである。例えば、この可視表面を白にすれば、画素の白色状態(図2に示すように)の輝度が上がるが、暗状態(図1に示すように)の暗さは幾分か犠牲になる。その代わりに、最大のコントラスト比が達成されうるのは、可視表面に中間的な灰色の陰影をつけることによってである。
【0028】
図1図2に示されるディスプレイには、数多くのバリエーションが可能である。例えば、第二の電極は水110と電気的に接触していれば、必ずしも隠蔽材の位置になくてもよい。実際、本ディスプレイの各画素が、分離した第二の電極を有する必要もない。その代わりに、本ディスプレイは、従来型のアクティブマトリックスディスプレイの電極配置と同じ電極配置、つまり(以下に記載するように、第一の流体の動きを適切に導くように成形されている共通の表面電極で、多数の画素にまたがるように拡がり、典型的には、ディスプレイ全体に拡がる)1つの共通表面電極を用いてもよいが、その代わりに、各画素に個別の第一の電極104を用いてもよい。また、本ディスプレイの一つの光学的状態は、基板の色を見せる必要はない。例えば、本ディスプレイが光モジュレータとして機能するために、基板が透明でもありうる。その代わりに、着色フィルターまたは反射板が、任意の適切な位置に配置されることになる。
【0029】
図3は、本発明による四色色シフトディスプレイの基板の1画素の平面図である。本図から分かるように、この画素は正三角形であり、4つの正三角形のサブ画素からなり、中央のサブ画素が黒(K)で、他のサブ画素は赤(R)、緑(G)および青(B)である。当然のことであるが、望むなら、赤、緑および青の代わりに、シアン、黄およびマゼンタを用いてもよい。この画素には、4つの電極(図示せず)が備えられ、正三角形画素の頂点のそれぞれ1つずつと、そして、4つ目が正三角形画素の中心にある。(望むなら、図1図2に示したのと、同様に、電極は、画素の横たわる部分に合うように着色された隠蔽材の露出表面を有する隠蔽材に備えられうる。)画素は、黒く着色された油と組み合わさって用いられ、図1図2で示したディスプレイと非常によく似た方式で機能する。どの電極によっても、電界がかかっていない場合、油は画素全体に均一に拡がり、こうして、全体が黒く見える。中央の電極のみを使って、電圧が印加されたら、油は中央の黒のサブ画素に集結されて、赤、緑および青のサブ画素は、露出されたままとなり、画素全体の外観は、「プロセス白(process white)」(実際には灰色)になる。例えば、中央の電極と赤のサブ画素に接した電極の双方を使って、電圧が印加されたら、油は黒と赤のサブ画素に集結されて、インクは黒と赤のサブ画素を覆い、シアンの色が表示される。1つ、2つ、あるいは、3つの電極に電圧を印加することで、様々な色が画素に表示されることは、容易に明らかである。
【0030】
また、双安定なエレクトロウェッティングディスプレイの製造も可能となる。従来技術によるエレクトロウェッティングディスプレイは、単安定でしかなかった。なぜなら、電界がかかっていない状態でのみ、安定であったため、(図2に示されるのと同様な)他の状態では、電界がかけられる限り、耐えるだけであった。しかしながら、本発明による二色流体エレクトロウェッティングディスプレイでは、2つの状態を有するようにできており、そのそれぞれが、図1に示すのと同様な状態である。このような二色流体からなる双安定なディスプレイの形式の一つの1画素を図4に示す。本ディスプレイは、基板102(以下に説明する理由から、着色される必要なし)、電極104(透明である必要なし)、および、誘電体層106を備える。特に指示のない限り、図1に相当する同じ整数で示す。ディスプレイは、さらに、着色された油層108と、油層108とは違う色で「着色された」水性層110’を備える。隠蔽材はないが、図4のディスプレイは、さらに、透明な表面誘電体層114と、透明な表面電極116を備える。実用にあたっては、ディスプレイの機械的支持と保護のために、表面基板(図示せず)を備えることが望ましい。
【0031】
図1に示す条件と同等な図4に示す条件で、油層108が誘電体層106上に広く均一に拡がっているとき、(電極116と誘電体層114を介して、つまり、図4の上から、ディスプレイを見る観察者からは)画素は水性層110’の色を表示し、油層108の色を不明瞭にしている。しかしながら、電極104と、水性層110’と接触している電極(図示せず)との間に、突然、電圧を印加すると、油層108は、誘電体層106から濡れをとり、図2に示す小滴108’と同様の部分的に楕円形の小滴を形成し、それから、(駆動電圧が解除されるにしたがって)表面の透明な誘電体層114を濡らす。その結果、第二の安定状態に入り、この状態は、一般的に、油層が表面の透明な誘電体層114に隣接して横たわっている点を除けば、図4に示されるのと、同様である。この第二の安定状態では、画素は油層の色を表示し、水性層110’の色を不明瞭にする。望めば何度でも、画素をこれら2つの安定状態間でスイッチできるは、容易に明らかにされる。さらに、相当な電圧がディスプレイに印加されると、画素はこの2つの安定な状態の間をスイッチできなくてはならないので、ディスプレイは、そのスイッチングに閾値を有する。このような閾値は、より複雑なアクティブマトリックスアプローチの使用を必須とすることなく、パッシブマトリックスアプローチを使って駆動されるディスプレイを可能とするものである。
【0032】
図4に示す油層108と水性層110’の着色に、染料が使われる場合、ディスプレイの長期安定性のため、2つの層の間で、これらの染料が移動しないようにすることが重要である。実用にあたっては、水性で非油性の染料も、逆に、油性で非水性の染料も様々に利用できるため、このことは大きな困難性を伴わない。しかしながら、着色剤として、染料を使うより、色素パーティクルやナノパーティクルを用いるほうが、メリットが多い。このような画素パーティクルやナノパーティクルは、コーティング付きで(例えば、米国特許公開番号第2002/0185378号参照)、調達されうる。コーティングは、強い親水性や親油性を持たすことで、これらパーティクルが、油と水との間を移動しないようにするためである。
【0033】
添付図面の図5は、図4と概ね同様の模式側面図で、図4と概ね同様の方式で作動するマイクロセルディスプレイを表している。図5は、ディスプレイの1つの単マイクロセルで、後ろ壁(第二の基板)502、側壁504と506、および、前壁(第一の基板)508を有し、ディスプレイは、この前壁を介して見られる。マイクロセルは、さらに、透明な後ろ電極510と、後ろ誘電体層512を有する。これらは、図1図4に示された相当する整数と同様に、マイクロセルの第二の基板表面に隣接して配置される。しかしながら、マイクロセルは、また、側面(第二の)電極514(透明である必要なし)と、側壁表面に隣接して配置され、付随する側面誘電体層516とを備える。電極510と514は、絶縁体ブロック518によって、互いに絶縁されている。この絶縁体ブロック518から、第三の電極520が、マイクロセルを実質的に満たしている無着色の水性媒体110に出ている。マイクロセルは、さらに、着色された油相522を含む。
【0034】
図5に示すマイクロセルの第一の安定状態は、図1図4の状態と同様である。電極間に電圧が印加されていないとき、着色された油相522は、誘電体層512を濡らし、前壁508を介し、マイクロセルを見ている観察者は、無着色の水性媒体110を介し、油相522を見る。しかしながら、後ろ電極510と、第三の電極520との間に、突然、電圧を印加すると、油相522は、誘電体層512を濡らすのを止め、小滴を形成し、電極520の方向へ、動いていき、側面誘電体層516を濡らすところで、第二の安定状態となって、終了する。この第二の安定状態で、マイクロセルを前壁を介して見ている観察者は、後ろ電極510の色(着色があれば)、後ろ誘電体層512の色(着色があれば)、あるいは、着色されているもののいずれかの色(着色があれば)を見る(側面誘電体層516に隣接して横たわる油相522は、マイクロセルの断面積で小さな比率しか占めず、観察者からは実質上、見えない)。代替として、後ろ電極510と、後ろ誘電体層512とは、着色されていなくてもよいし、また、着色された裏板または反射板がマイクロセルの後方で、提供されてもよい。これは、マイクロセルは、いわゆる「シャッターモード」で作動できるようにするためである。米国特許番号第6,130,774号、第6,172,798号を参照。
【0035】
着色された油相を用いれば、図1図5を参照して、上述した実施形態に加え、さらに数多くの種類のカラーのエレクトロウェッティングディスプレイが製造されうることは、高く評価すべきである。ここで、他の色を有し且つ領域において異なリ得る電極を覆うために移動する、着色された油相が使用される。同一平面状で隣接する電極間に電界が、油相が静止している電極に隣接する電極への電圧印加によって作られると、液体の滴が移動可能となることは、周知である。このような動きは、当然、逆向きとすることも可能である。色が異なり、かつ、オプションとして、大きさの異なる電極と、着色された油相とを用いることで、様々な効果が得られる。シンプルなモノクロディスプレイは、大きな白い電極と、小さな黒い電極の間で、黒い油相を動かすことで、提供される。黒い油相が白い電極を覆うとき、黒い電極と白い電極の双方とも黒く見え、黒い油相が小さな黒い電極に閉じ込められたとき、画素の全体の外観が本質的に白く見えることは、明らかである。カラーを含むより複雑な効果は、(例えば)小さな電極と実質的に同じ色を有する油相を用いる一方で、これに隣接する大きな電極は補色を用いることで、形成されうる。こうして、カラーディスプレイは、個々の画素が、以下の油/電極の組合せを有するものを利用してもよい。
【0036】
赤い油/小さな赤い電極/大きなシアンの電極;
緑の油/小さな緑の電極/大きなマゼンタの電極;および、
青い油/小さな青い電極/大きな黄色い電極。
【0037】
このようなディスプレイでは、図6に示すような本発明の第二の色シフトディスプレイは、非常に有用でありうる。このディスプレイは、本質的にダンベル型で、中央の実質的に四角い「首」部分606によって繋がれた2つの円状部分602と604を有する誘電性表面となっている。そこには、3つの独立して制御可能な電極、すなわち、円状部分の中心に位置する602と604の中心に円状の2つの電極608と610、および、首部分606の中心に位置する1つの四角い電極612がある。
【0038】
図6に示すディスプレイは、以下のような方式で作動する。着色された油相が円状部分602に配置され、水相がその油相の上に横たわり、四角い電極612と円状部分604とに接するように拡がっていると、仮定する。油相が円状部分604の位置を占めるように、動かしたいと望むなら、電極608に電圧が印加され、こうして、この電極が親水性になり、電極612には電圧が印加されずに、この電極は疎水性になる。したがって、油相は、部分602から首部分606に移動する。次いで、電極612に電圧が印加され、その間、電極608に印加された電圧は維持され、電極610には電圧は印加されない。したがって、油相は首部分606から、円状部分604に動く。円状部分604にある油相の配置は、典型的には、安定であって、一度、油相が部分604に位置したら、電圧はどの電極にも電圧を印加する必要はない。
【0039】
円状部分602と604は、図6では同じ大きさで示されているが、これら部分は、形状(例えば、一方が円状より楕円状でありうる)、大きさ、および/または、色が異なっていてもよい。さらに、円状部分の一つが、図1に示す隠蔽材112と同様の隠蔽材を備え、その円状部分にある油相が不明瞭になるようになっていてもよい。
【0040】
図7は、本発明による導電性ビアディスプレイの模式側面図である。
本ディスプレイは、その機能性流体として、水性(典型的には着色された)媒体を使う。図7のディスプレイは、疎水性誘電体材料から形成された基板を備える。この目的のためには、例えば、ポリ(ビニリデン、フルオライド)といった極性ポリマー(polar polymer)中に、チタン酸バリウムといったセラミックhigh K(高誘電率)誘電体の入った懸濁液のように、非常にhigh Kの誘電体が好ましい。以下に記される理由から、基板702全体が絶縁性であれば、基板702の上方の露出表面(図7に示すように)の性質のみが、ディスプレイの作動に影響を与える。こうして、基板702は、例えば、ポリエチレンやポリ(エチレンテレフタレート)のようなlow K材ベースの上に、high Kの疎水性誘電性露出表面層を備えうる。
【0041】
間隔を空けて複数のビア704が、基板702に拡がり、該ビアは基板の露出表面に接して終端となっている。各ビア704は、基板702の上方の露出表面に接する導電性ビア704の終端を覆う親水性コーティング形式の薄い終端キャップ部706で、蓋されている。図7で示されているのは、一列に並んだ3つのビア704のみであるが、実用的には、非常に多数のビアが用いられるし、二次元的に配列されるであろう。
【0042】
滴708として描かれている水性の機能性流体は、基板702の露出表面で静止している。ビア704のいずれにも電圧が印加されていない状態では、滴708は、基板702の疎水性表面を濡らさないが、ビア704の1つのキャップ部706の周囲で、「丸くなる(ball up)」(これは、図7で示す状況ではない)。しかしながら、隣接し合う2つのビア(例えば、図7の中央と右のビア)に電圧を印加すると、これら両ビア間の基板702の表面部分は、疎水性が弱まり、その結果、滴708は、電圧を印加された2つのビアのキャップ部を横切って拡がり、図7に示すように、またぐような位置となる。キャップ部706と基板702の露出表面の特性が適切に選択されれば、滴708は、図7に示す位置で安定になる。つまり、その両電極から電圧を除去した後も、その滴は同じ位置にとどまる。なぜなら、その滴は、2つのビアのキャップ部706で両端を「ピン止め(pinned)」されているからである。
【0043】
この滴708を別の位置に移動させるには、電圧を、(例えば)中央と左のビア704に印加するとよい。これにより、これら両ビア間での基板702の露出表面部分の疎水性が弱まり、その結果、滴は表面の疎水性の弱い部分に流れ、図7に示す形状708’の位置を占める。水性流体に、さらに手の込んだ操作を行うことも、特に二次元配列のビアを用いた場合は、可能である。
【0044】
既に述べたように、本発明は、エレクトロウェッティングディスプレイに、着色剤として、色素やナノパーティクルを使って、広く適用できる。エレクトロウェッティングディスプレイでは、この点に関して、油相および/または水性相に溶かした染料が使われてきた。しかし、溶液中の染料は、電磁気照射、特に、紫外線照射の長期的影響を受けやすく、染料の退色および/または脱色を招く傾向にあり、その結果、エレクトロウェッティングディスプレイの動作寿命を制限することで、よく知られている。溶解染料を色素あるいはナノパーティクルに置き換えることは、動作寿命を長くするのに有効である。さらに、色素あるいはナノパーティクルの使用は、色素あるいはナノパーティクルの表面性質の制御を、例えば、その上に荷電した基(group)または荷電可能な基、あるいは、ポリマーなどを形成することで、可能とする。(例えば、米国特許公開番号第2002/0185378号参照)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7